マスキングプログラムおよびマスキングシステム
【課題】 コンピュータディスプレイ上の文書データ中の隠したい部分を簡単な手順で隠し、秘密を保持する。
【解決手段】 コンピュータに、文書データ中にマスクデータを挿入することによって、ディスプレイに表示された文書データの目的の位置にマスク掛けを行なう機能と、マスクデータを挿入した文書データの変更を禁止する文書保護設定機能と、マスクパスワードを設定する機能とを実行させるとともに、マスクパスワードに対応した剥がしパスワードが入力されたときにのみ、特定のマスクデータを削除する機能を実行させる。
【解決手段】 コンピュータに、文書データ中にマスクデータを挿入することによって、ディスプレイに表示された文書データの目的の位置にマスク掛けを行なう機能と、マスクデータを挿入した文書データの変更を禁止する文書保護設定機能と、マスクパスワードを設定する機能とを実行させるとともに、マスクパスワードに対応した剥がしパスワードが入力されたときにのみ、特定のマスクデータを削除する機能を実行させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、文書データの一部を隠すためのマスキングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
個人情報や社内情報など、第三者には見られたくない文書データが、勝手に見られないようにするために、従来、次のようなことが行なわれている。
例えば、秘密の文書データを暗号化してから保存したり、通信したりして、暗号を解読できない他人にデータを見られないようにする。この場合には、上記文書を読むときに、復号化が必要になる。
また、別の方法として、例えば文書ファイルを、パスワードを設定して保存したり、パスワード付で通信したりし、このパスワードの入力なしでは、その文書ファイルを開けないようにする方法もある。
【特許文献1】特開2002−259305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、暗号化を利用する方法では、暗号化用の特別なソフトが必要であり、文書作成者がいちいち必要箇所を暗号化しなければならないという問題があった。
また、パスワードを設定して保存する処理は、文書全体に対して行なわなければない。そのため、一つの文書中、隠したい部分が限られていて、本来なら公開してもかまわない部分があったとしても、文書全体を隠すことになる。反対に、パスワード入力をしてファイルを開いた場合には、その文書データ全体が一度に見られるようになってしまう。
つまり、文書データ中の隠したい部分のみを隠すことができなかった。
この発明の目的は、コンピュータのディスプレイ上に表示されている文書データの中で、隠したい部分だけを簡単な手順で隠すことができ、秘密が保持できるマスキングプログラムおよびマスキングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明のマスキングプログラムは、コンピュータに、文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能および文書保護設定を解除する保護設定解除機能とを実現させる文書表示プログラムと相まって機能するマスキングプログラムであって、このマスキングプログラムは、コンピュータに、不透明なマスクをパターン化してなる複数のマスクデータを記憶する機能と、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク選択信号に基づいてその信号に対応するマスクデータを特定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面へのマスクパターンのドラッグアンドドロップ信号に応じて文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記特定したマスクデータを上記特定したマスク位置座標に挿入して対応するマスクパターンを表示させる機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記マスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを実現させる点に特徴を有する。
【0005】
第2の発明のマスキングプログラムは、コンピュータに、文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能および保護設定を解除する文書保護設定解除機能とを実現させる文書表示プログラムと相まって機能するマスキングプログラムであって、このマスキングプログラムは、コンピュータに、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面を介して入力されたマスク範囲特定信号に基づいて、不透明なマスクパターンとなるマスクデータを生成する機能と、上記文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記生成したマスクデータを上記マスク位置座標に挿入してマスクパターンを表示させる機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記特定のマスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを実現させる点に特徴を有する。
【0006】
第3の発明のマスキングプログラムは、上記第1または第2の発明のマスキングプログラムを前提とし、コンピュータに、パスワードを記録し、そのパスワードを上記コンピュータで読み取り可能にした記録媒体からマスクパスワードおよび剥がしパスワードを自動的に読み取る機能を実行させる点に特徴を有する。
【0007】
第4の発明のマスキングシステムは、コンピュータを備え、このコンピュータは、文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能と、この文書保護設定を解除する文書保護設定解除機能と、不透明なマスクをパターン化してなる複数のマスクデータを記憶する機能と、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク選択信号に基づいてその信号に対応するマスクデータを特定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面へのマスクパターンのドラッグアンドドロップ信号に応じて文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記特定したマスクデータを上記特定したマスク位置座標に挿入して対応するマスクパターンを表示させる機能と、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記マスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを備えた点に特徴を有する。
【0008】
第5の発明のマスキングシステムは、コンピュータを備え、このコンピュータは、文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能と、文書保護設定を解除する文書保護設定解除機能と、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面を介して入力されたマスク範囲特定信号に基づいて、不透明なマスクパターンとなるマスクデータを生成する機能と、上記文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記生成したマスクデータを上記マスク位置座標に挿入してマスクパターンを表示させる機能と、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記特定のマスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを備えた点に特徴を有する。
【0009】
第6の発明は、上記第4または第5の発明を前提とし、パスワードを記録した記録媒体を備えるとともに、上記コンピュータが、上記記録媒体からパスワードを読み取る機能と、読み取ったパスワードをマスクパスワードまたは剥がしパスワードとして設定する機能を備えた点に特徴を有する。
なお、上記マスクパスワードと剥がしパスワードとの対応関係には、両者が一致する関係のほか、予めプログラムに設定しておく関係が含まれる。
【発明の効果】
【0010】
第1〜第6の発明によれば、表示された文書データの任意の場所を、マスクを掛けることよって隠し、そのマスクの移動を禁止することができる。
また、マスクを剥がすためには、マスク掛けの際に用いたマスクパスワードと対応関係を持ったパスワードの入力が必要なので、パスワードを知らない者に対して秘密を守ることができる。
さらに、作成された文書データを表示した状態で、秘密にしたい箇所のみを隠すようにしているので、秘密にする必要のない箇所まで隠すことがないだけでなく、隠された場所が一目でわかる。そのため、特定の箇所を秘密にしたい者にとって、その箇所が隠されていることが感覚的に理解でき、安心感がある。
【0011】
第3および第6の発明によれば、パスワードを記録した記録媒体を、コンピュータに接続するだけで、パスワードを入力することができる。これにより、ユーザーは、マスク掛けやマスク剥がしの際に、パスワードを手入力する手間が省けるだけでなく、パスワードの入力間違いもなくなる。
また、パスワードを保持する者の人数を、記録媒体の数に制限することができる。マスク掛けを行った文書作成者が、マスク剥がしを許可する者に対し、口頭でパスワードを伝える場合には、人から人へパスワードが伝わって、それが意図した範囲以上に広まってしまう可能性もあるが、この発明では、そのようなこともなく、セキュリティ性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図9に、この発明の第1実施形態を示す。
この第1実施形態は、コンピュータがこの請求項1に記載のマスキングプログラムを用いて、ディスプレイに表示された文書データの所定の位置にマスク掛けをする例で、以下にそれを詳細に説明する。なお、ここでいうマスク掛けとは、上記文書データ上に、不透明なマスクパターンの画像を重ねて表示させ、対応する位置にある文書データを隠す処理のことである。また、このマスク掛けされた画面から、マスクパターンを取り除いて、そこに対応する文書データを表示させる処理をマスク剥がしと定義する。
そして、この発明のマスキングプログラムに基づいて機能するコンピュータが、この発明のマスキングシステムを構成する。
【0013】
また、上記コンピュータには、OS(operating system)はもちろん、アプリケーションソフトとして上記マスキングプログラムと連携可能な文書表示プログラムを設定している。
上記文書表示プログラムは、コンピュータのディスプレイに、文書データを表示させるとともに、コンピュータに、文書上に図形を貼り付けたり、あるいはそれを剥がしたりする機能を実現させるものである。
さらに、この文書表示プログラムには、表示した文書データに貼り付けた画像の移動を禁止するために、一旦作成した文書データに変更を加えることができないようにするための文書保護設定機能と、その文書保護設定を解除する設定解除機能とを備えている。ただし、文書保護設定解除を行なうためには、特別な信号入力が必要で、誰でもが、簡単に文書保護設定解除ができないようにしている。例えば、文書保護設定を行なったときに入力したパスワードなどを入力しなければ解除できないようにしている。
【0014】
そして、ディスプレイに表示した文書データに対してマスクがけをしたり、マスク剥がしをしたりする際には、上記文書表示プログラムが、上記マスキングプログラムの手順に従って、文書表示プログラムの機能を実行して、コンピュータにマスク掛けやマスク剥がしに必要な機能を実現させるのである。
また、上記マスキングプログラムは、文書上にマスク掛けをする際に、コンピュータに、マスクデータを挿入すべき、文書データ中のマスク位置座標を特定する機能を実現させる。このマスク位置座標を特定する方法は、後で詳しく説明するが、この実施形態では、文書データを表示した文書画面上に座標を有する透明レイヤーを設定して、その座標を利用して位置座標を特定するようにする。
【0015】
次に、実際のマスク掛け手順に従って、このシステムの作用を説明する。
図1は、コンピュータのディスプレイ1を示した図である。このディスプレイ1に表示された文書画面2には、このコンピュータのユーザーが、特定の商品を販売店に注文するために作成した注文書が、文書の例として示されている。この文書は、どのようなソフトを用いて作成されたものであってもかまわないが、これから説明するマスク掛けやマスク剥がしを行なうためには、上記したようにマスキングプログラムと連係可能な文書データ表示プログラムを用いて、上記文書をディスプレイ1に表示する必要がある。
この文書画面2中には、商品名2aのほか、注文者の氏名2b、住所2c、電話番号2d、クレジットカード番号2eなどが含まれている。
【0016】
この第1実施形態では、上記ユーザーは、上記注文書を電子メールに添付して販売店へ送るが、この送信中や、販売店での保管中などに、文書画面2内の氏名2b、住所2c、電話番号2dおよびクレジットカード番号2eなどの個人情報が、不特定の人に見られることがないように、その部分にマスク掛けをする。例えば、図2に示すように、氏名2b、住所2c、電話番号2dの部分に不透明なマスクパターンM1を掛けて覆い、クレジットカード番号2eの表示箇所をマスクパターンM2で覆い隠すものとする。
【0017】
また、上記マスクパターンM1、M2によるマスク掛けを行なうために、ユーザーが、マスク掛けをしたい位置を、マウスなどを用いて画面上で指示した場合、その位置に対応する文書データ中のマスク位置座標を特定する方法を、図3を用いて説明する。なお、上記文書データ中のマスク位置座標とは、文書データ内の位置を特定する座標であって、ディスプレイ上の位置や、文書画面上の位置座標ではない。例えば、図3に示すように、ディスプレイ1内の文書画面2内に表示されている文書は、実際には表示されていない部分も含んだ文書データ12の一部である。この表示されていない部分も含めた文書データ全体の中での位置を表す座標系があり、この座標系を図3では、x,y軸で示している。この座標系は、上記文書表示プログラムが管理している座標系である。そこで、文書データ内の特定の位置座標は、上記文書表示プログラムの機能を実行して特定することができる。
【0018】
また、文書画面2部分だけの座標を特定するために、この実施形態では、文書画面2上に、文書画面2と同じ大きさの透明レイヤー13を設定し、この透明レイヤー13には、上記(x,y)座標とは別の(X2,Y2)座標を備えている。そして、この(X2,Y2)座標系は、マスキングプログラムが管理する座標系である。
さらに、ディスプレイ1上の座標は、OSが管理する座標であって、図3にX1,Y1軸で示した(X1,Y1)座標系である。そこで、コンピュータは、OSの機能によってディスプレイ上に表示された文書画面2の位置を、(X1,Y1)座標系で特定することができる。従って、コンピュータは、上記透明レイヤー13を文書画面2上に設定する際には、設定すべき位置と、透明レイヤー13の大きさをOSの機能を実行して取得し、取得した大きさの透明レイヤー13を文書画面2に重ねて設定することができる。
【0019】
以上の関係から、例えば、ユーザーが指定したポイントP1の、文書データ内の(x,y)座標を特定することができる。まず、OSの機能を利用して、マウスポインタのディスプレイ上の位置と、透明レイヤー13の座標軸のディスプレイ上の位置を、(X1,Y1)座標で特定してから、ポイントP1の位置座標を、透明レイヤー13上の(X2,Y2)座標で特定する。さらに、文書表示プログラムの機能を実行することによって、文書画面2に表示されている文書データ中の表示部分の座標を(x,y)座標で特定する。コンピュータは、この文書表示部分の座標と透明レイヤー13の座標系とを総合して、上記ポイントP1の文書データ内の(x,y)座標を特定する。
【0020】
以下に、コンピュータが、マスキングプログラムに基づいて図1に示す文書画面2上に、図2に示すようにマスクパターンM1およびM2を重ねて文書画面2を作成する手順を説明する。
なお、この第1実施形態では、USBメモリにマスキングプログラムを記憶させ、このUSBメモリをコンピュータのUSBポートに接続すると、自動的にコンピュータがマスキングプログラムを起動させるようにしている。そして、この第1実施形態においては、上記マスキングプログラムを動作させている間、上記USBメモリをUSBポートに接続しておかなければならない。
【0021】
次に、このマスキングプログラム起動後のコンピュータの処理手順を図4〜図7のフローチャートに従って説明する。
図4に示すフローチャートは、コンピュータにマスキングプログラムを設定するまでのフローである。なお、以下の処理は、全て、マスキングプログラムに基づいてコンピュータが実行するものである。
まず、上記USBメモリをUSBポートに接続すると、コンピュータは、自動的にUSBメモリのマスキングプログラムを読み取る。ステップS1で、コンピュータは、このマスキングプログラムを起動させる。ステップS2で、コンピュータは、コンピュータ上で今読み取ったマスキングプログラムと同じプログラムが既に起動しているかどうかを、OSの機能を実行して確認する。もしも同じマスキングプログラムが起動していた場合には、ステップS8へ進み、コンピュータは、今起動したマスキングプログラムを終了する。つまり、一つのコンピュータ内で同じマスキングプログラムが2つ以上同時に起動しないようにしている。一方、マスキングプログラムが重複して起動していない場合には、ステップS2からステップS3へ進む。
【0022】
このように、同じマスキングプログラムが2つ以上同時に起動しないようにしている理由は、起動しているマスキングプログラム間で矛盾が発生してしまう危険を避けるためである。マスキングプログラム間の矛盾としては、例えば、ユーザーが、2つのマスキングプログラムを立ち上げて、最初に立ち上げた第1のマスキングプラグラムを用いて特定の文書に対してマスク掛けを行なうために特定のマスクパターンを選択しながら、次に立ち上げた第2のマスキングプログラムを用いて、同じ文書に対して、別のマスクパターンを選択してしまうというような、ユーザーの操作によって起こる矛盾などが考えられる。ただし、このような危険性を考慮しなければ、上記ステップS2は不要である。
【0023】
そして、ステップS3でコンピュータは、OSの機能を実行し、このマスキングプログラムが正常に作業できる環境があるかどうかを判断し、作業環境がなければステップS8へ進んで終了し、上記作業環境があれば、ステップS4へ進む。次に、ステップS4で、コンピュータは、OSの機能を実行して、自身に上記マスキングプログラムと連係可能な特定の文書表示プログラムAがインストールされているかどうかを判断する。この文書表示プログラムAは、文書データを表示するためのプログラムで、この発明のマスキングプログラムと連係してマスク掛けやマスク剥がしの処理ができるプログラムである。つまり、上記マスキングプログラムが適用可能な文書表示プログラムで、その判断基準は予めマスキングプログラムに設定されている。
【0024】
そして、この文書表示プログラムAがコンピュータにインストールされていた場合には、ステップS5で、コンピュータはOSの機能を実行し、マスキングプログラム用プラグインを上記文書表示プログラムAに登録する。これにより、上記マスキングプログラムと文書表示プログラムAとが、連係してコンピュータを機能させることができるようになる。このように、上記プラグインが登録されたら、ステップS6で、コンピュータは、OSの機能を実行して、マスキングプログラムのアイコン11(図1参照)をタスクトレイ3に登録し、ステップS7の待機状態になる。
【0025】
以上の手順で、コンピュータに、マスキングプログラムが準備され、待機状態となる。この時点で、コンピュータのディスプレイ1には、図1のように文書画面2が表示されていても、表示されていなくてもかまわない。ただし、実際にマスク掛けを行なうときには、マスク掛けの対象となる文書画面2を表示させておかなければならない。
【0026】
なお、この第1実施形態では、上記マスキングプログラムをUSBメモリに記憶させているが、USBメモリ以外の記録媒体、例えばコンパクトディスクなどに記憶させて、それをコンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
また、ここでは、マスキングプログラムをUSBメモリに記憶させ、このプログラムを立ち上げるときには、USBメモリの接続を必要としているが、全ての機能を予めコンピュータにインストールしておくようにしてもよい。このように、コンピュータに上記文書表示プログラムAを含めた全ての機能をインストールした場合には、図4に示す処理は不要になる。マスキング作業や、剥がし作業を行なう場合には、図5〜図7に示す手順のみが必要である。
【0027】
次に、実際に、マスクを掛けたり剥がしたりするための手順を、図5〜図7のフローチャートに従って説明する。ただし、図5に示す手順は、マスク掛けおよび剥がし作業に共通の処理手順であり、図6はマスク掛け作業の処理手順、図7はマスク剥がし作業の処理手順を示している。そして、これらのステップはOSと連係してマスキングプログラムが、コンピュータに実行させる処理ステップである。
先に、マスク掛けを行なう方法を説明する。
ユーザーは、マスク掛けを行なう場合、まず、マスク掛けの対象となる文書、例えば、図1のように文書画面2を表示させる。なお、上記文書画面2は、上記文書表示プログラムAで表示されなければならない。
【0028】
そして、ユーザーは、上記タスクトレイ3上のマスキングプログラムアイコン11をクリックする。
上記マスキングプログラムアイコン11がクリックされたとき、コンピュータは、図5のステップS7の待機状態から、ステップS11〜ステップS15までの一連の処理を実行する。すなわち、ステップS11で、コンピュータは、OSの機能を実行してマウスポインタがタスクトレイ3のマスキングプログラムアイコン11上にあることを認識するとともに、ステップS12で、アクティブウインドウが文書表示プログラムAのウインドウかどうかを判断する。つまり、コンピュータは、文書データが、ユーザーの操作を受け付ける状態で表示されているかどうかを判断する。
【0029】
なお、マウスポインタの位置や、マウスボタンのクリックの検出は、OSが備えている機能なので、マスキングプログラムは、コンピュータにOSの機能を実行させて、検出結果を取得するようにしている。また、文書データを表示させる文書プログラムAもOSが管理しているので、マスキングプログラムは、コンピュータに、OSの機能を実行させることによって、ステップS12で、アクティブウインドウがプログラムAのものであるかどうかを判断させることができる。
【0030】
上記ステップS11で、マウスポインタがアイコン11上にない場合、ステップS12でアクティブウインドウが文書表示プログラムAでない場合、ステップS13でマウスが左クリックされていない場合のいずれの場合にも、コンピュータの処理はステップS7に戻る。つまり、マスキングプログラムアイコン11がクリックされないか、マスク掛け対象となる文書ウインドウがアクティブでない場合には、コンピュータの処理はステップS7に戻り、待機状態を保つ。
【0031】
上記ステップS11〜13を経由してステップS14に進んだら、コンピュータは、文書表示プログラムAで表示された文書、すなわち、図1に示す文書画面2のディスプレイ1上の位置を特定する。このウインドウの位置は、先に説明したように、コンピュータが、OSの機能を実行することによって特定することができる。次に、ステップS15へ進み、コンピュータは、マスキングプログラムに基づいてディスプレイ1上にマスク準備ウインドウ4を表示させ、ステップS16で作業待機状態となる。
【0032】
上記マスク準備ウインドウ4は、図8に示すウインドウで、マスク表示部5と、マスク選択矢印6a,6bと、マスク名表示部7と、パスワード入力欄8と、「剥がし」ボタン9と、「閉じる」ボタン10とを備えたウインドウである。
上記マスク表示部5には、文書上に表示させて、文書を覆うためのマスクパターンが表示される。マスクパターンの形状や色、大きさはどのようなものでもかまわないが、ここでは、色つきの長方形のマスクパターンが表示されている。そして、長方形のマスクパターンの大きさを、例えば、「50(mm)×30(mm)」と、サイズ表示部5aに表示させている。
【0033】
なお、この実施形態では、上記マスクの形態や大きさをパターン化しているが、これらパターン化したマスクをマスキングプログラムのマスクデータとして記憶している。また、ここでいうマスクのパターンは、何種類あってもよく、それらをマスクデータとして記憶しておくことが可能である。これらのマスクデータは、マスキングプログラムととともに、コンピュータに登録されるようにしている。そして、これらのマスクデータは、画面表示されたとき、不透明なマスクパターンとなり、その下の文書を見えないようにするものである。
【0034】
そして、ユーザーは、図8に示すマスク準備ウインドウ4の上記マスク表示部5の下に表示されるマスク選択矢印6aまたは6bをクリックすると、コンピュータが記憶している複数のマスクデータに対応するマスクパターンを順番に表示させることができるようにしている。このとき、上記マスク名表示部7には、マスク表示部5に表示されたマスクパターン名を表示させるようにしている。
また、上記パスワード入力欄8は、マスク掛けおよびマスク剥がしを行なう際に、ユーザーがパスワードを入力するための欄である。
さらに、上記「剥がし」ボタン9は、マスク剥がしを行なうときにユーザーがクリックするボタンで、このボタンがクリックされると、コンピュータにこの発明のマスク解除信号が入力されるようにしている。また、「閉じる」ボタン10は、このマスク準備ウインドウ4を閉じるためのボタンである。
【0035】
上記図5に示すステップS15で、上記マスク準備ウインドウ4が、図9に示すようにディスプレイ1上に表示されたら、ユーザーは、マスク掛けまたはマスク剥がしのいずれかを選択することができる。
ここでは、図1に示す文書画面2内の氏名2b、住所2c、電話番号2dを、マスクパターンM1(図2参照)によって隠す手順について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
上記文書画面2内の氏名2b、住所2c、電話番号2dに、マスクパターンM1を掛けようとする場合、ユーザーは、次のような操作を行なう。
まず、マスク準備ウインドウ4のマスク表示部5にマスクパターンM1を表示させてから、上記パスワード入力欄8にパスワードを入力する。そして、マスク表示部5に表示されたマスクパターンM1の上にマウスポインタを置き、このマスクパターンM1をドラッグして、上記文書画面2上の、隠したい位置にドロップさせる。
【0037】
上記のユーザーの操作手順にともなうコンピュータの処理手順を、図6のフローチャートに従ってさらに詳しく説明する。
すなわち、上記のように、ユーザーが、パスワードを入力してから、マスクパターンM1をドラッグするためにマスク表示部5上にマウスポインタを置いて左クリックすると、コンピュータは、この左クリックにより入力される信号をこの発明のマスク掛け信号およびマスク選択信号として受信する。マスク掛け信号とは、マスク掛けおよびマスク剥がしの作業のうち、ユーザーがマスク掛けを選択したことを入力する信号である。ここでは、マスク選択信号を兼ねているが、図8に示している「剥がし」ボタン9のように、マスク掛けボタンを設けて、それをクリックしたときに入力されるようにしてもよい。
【0038】
そして、コンピュータは、ステップS21で、マスク掛け信号である上記マスク選択信号を受信したら、ステップS22へ進む。ステップS22で、コンピュータは、マスク選択信号に対応したマスクパターンM1に対応するマスクデータを特定するとともに、上記パスワード入力欄8から入力されたパスワードをこの発明のマスクパスワードとして設定する。コンピュータは、パスワード入力欄8からパスワードが入力されたとき、その直前にマスク掛け信号が入力されていれば、このパスワードがマスク掛け信号とともに入力されたと判断し、上記パスワードをマスクパスワードとして設定する。
【0039】
また、ステップS23で、コンピュータは、マスク掛けを目的とした文書画面2上に、図3に示すように座標(x,y)を有する透明レイヤー13を設定する。この透明レイヤー13の設定は、上記マスク掛け信号が入力されたときに行なう処理で、ステップS22とステップS23はどちらが先でもかまわない。
【0040】
次に、ユーザーの操作によって、図9に示す矢印のように、上記マスクパターンM1が、マスク準備ウインドウ4からドラッグされ、文書画面2上の隠したい部分、つまり、氏名2b、住所2c、電話番号2dが表示されている二点鎖線で示した場所へ移動し、ユーザーの操作でドロップされると、コンピュータへドラッグアンドドロップ信号が入力される。この信号に基づいて、コンピュータは、ステップS24で、上記ドロップ位置を、透明レイヤー13上のマスクパターン表示位置を、透明レイヤーの(X2,Y2)座標によって特定する。このように、マスクパターン表示位置を、透明レイヤーの(X2,Y2)座標で特定するために、コンピュータは、OSの機能を実行してドロップ位置をディスプレイ1上の(X1,Y1)座標で特定し、さらに、透明レイヤー13のディスプレイ上の位置もOSの機能を実行して特定し、上記ドロップ位置の座標と透明レイヤー位置との関係から、マスクパターンM1の表示位置座標を透明レイヤー13の(X1,Y1)座標で特定する。
【0041】
なお、面積を持ったマスクパターンM1の表示位置の位置座標は、予め決められたマスクパターン内の代表点で特定される。この代表点は、例えば、マスクパターンの中心ポイントP1(図3参照)や、長方形の特定の頂点など、マスクパターンとの関係が特定できる点ならどのように決めたポイントでもかまわない。つまり、特定のマスクパターンが選択された時点で、コンピュータは、そのマスクパターンの代表点の位置を特定できるので、マスクパターンがドラッグされた際には、上記代表点が移動されるとみなし、ドロップ位置を、その代表点の位置で特定するようにしている。
【0042】
このようにコンピュータは、ステップS24で、透明レイヤー13上におけるマスクパターンM1の表示位置の位置座標を特定したら、ステップS25で文書表示プログラムAの機能を実行して、文書画面2の位置を文書データ内の座標で特定する。文書画面2の座標とは、文書データ12のうち文書画面2に表示されている部分を特定する座標である。そして、ステップS26で、マスクデータを貼り付けるべき位置であるマスク位置座標を、文書データ内の座標系によって特定する。このマスク位置座標は、文書データ内の(x,y)座標系で特定した座標であるが、その特定方法は先に説明したとおりである。すなわち、ステップS25において特定した文書データの表示部分の座標と、透明レイヤー13上に設定されている(X2,Y2)座標系とを対応付けることによって、ステップS24で特定した上記透明レイヤー13上の座標を、文書データ内の座標に変換する。
【0043】
以上のステップで、上記マスクデータ、マスク位置座標およびマスクパスワードの特定ができたら、コンピュータは、上記マスクデータを、上記マスク位置座標に挿入してマスクパターンを表示させるとともに、上記マスクデータにマスクパスワードを付加して登録する処理を、文書表示プログラムAの機能を実行して行なう。ただし、文書表示プログラムAは、一旦登録した文書データの変更を誰でもが行なうことができないようにする文書保護設定機能を備えているため、マスクデータを挿入する際にも、この文書保護設定機能を解除する必要がある。
【0044】
従って、コンピュータは、ステップS27で、文書表示プログラムAの機能を実行して、画面表示している文書データに対し、文書保護設定解除を行なう。このステップS27で、コンピュータが、文書表示プログラムAの文書保護設定を解除するために必要な特定の信号は、予めマスキングプログラムに設定されていて、自動的に文書保護設定解除が行なわれるようにしている。
【0045】
上記のように、ステップS27で、コンピュータが文書保護設定解除を行なったら、コンピュータは、文書表示プログラムAの機能を実行して、ステップS28で、先に特定した文書データにおけるマスク位置座標にマスクデータを挿入して対応するマスクパターンM1を表示させるとともに、ステップS29で、先に設定したマスクパスワードを上記マスクデータの付加情報として登録する。このとき登録するマスクパスワードを、コンピュータが、暗号化してから登録させるようにしてもよい。この場合、暗号化のルールも、マスキングプログラムに設定しておく。
そして、コンピュータは、ステップS30で、文書表示プログラムAの文書保護設定機能を実行して、貼り付けたマスクパターンM1を移動できないようにして文書データを登録する。
【0046】
以上のようにして、マスクパターンM1によって、氏名2b、住所2c、電話番号2dを隠すことができる。同様にして、文書画面2内のほかの部分にも、マスク掛けをすることができる。
このようにマスク掛けをされた文書データは、図2のように個人情報が隠された状態で表示される。さらに、このシステムでマスク掛けされたマスクパターンは、文書保護設定によって、移動が禁止されているので、マスクパターンを移動させて隠された文書データを表示させることはできない。そのため、このデータを、例えば、販売店へ送信する場合にも、送信中や、販売店側で不特定多数の人に、上記個人情報が見られてしまう心配はない。
【0047】
なお、上記文書表示プログラムAが、表示画面から文書を選択したり、コンピュータに文書を読み上げさせたりする機能を備えていた場合には、その機能を禁止する文書保護機能を付加する必要がある。なぜなら、図2のように、不透明なマスクパターンで文書データを覆ったとしても、その下の文書を選択できれば、他の画面に貼り付けて表示させることができるし、読み上げ機能があれば、画面上に表示しなくても読み上げさせることによってその内容を知られてしまうからである。従って、図6のステップS27における文書保護設定では、マスクパターンの移動禁止のほか、文書選択や、読み上げ機能も禁止する必要がある。
【0048】
次に、図2に示すように、マスク掛けされた状態の画面から、マスクを剥がして文書を表示させるマスク剥がし処理について説明する。
実際にマスク剥がしができるのは、文書作成者や、文書作成者に許可された、限られたユーザーであり、これらの者たちは、文書作成者がマスク掛けの際に入力したパスワードを用いてマスク剥がしを行なう。このパスワードは、メールや口頭で、文書作成者からマスク剥がしを行なうものへ伝えられているものとする。
【0049】
上記パスワードを知っている者がマスク剥がし処理を行なう手順を説明する。
まず、ユーザーは、図2に示すマスク掛けされた文書画面2を表示させる。文書画面2を表示させるだけなら、マスキングプログラムを立ち上げる必要はなく、文書表示プログラムAの機能だけで足りる。
次に、上記マスキングプログラムを立ち上げると、コンピュータが、上記図5に示す処理ステップを実行してステップS16(図5、図7参照)の作業待機状態となる。このとき、図2のディスプレイ1には、文書画面2とともに、図8に示すマスク準備ウインドウ4が表示されている。
【0050】
この状態から、図2のマスクパターンM1を剥がす処理を、図7のフローチャートに従って説明する。なお、以下に説明するコンピュータの処理ステップは、コンピュータが、上記マスキングプログラムに基づいて実行する処理ステップである。
まずユーザーは、ディスプレイ1上のマスク準備ウインドウ4(図8参照)の、「剥がし」ボタン9をクリックして、この発明のマスク解除信号をコンピュータへ入力するとともに、パスワード入力欄8にパスワードを入力する。
【0051】
このとき、コンピュータは、ステップS31でマスク解除信号を受信するとともに、ステップS32で、上記パスワード入力欄8から入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する。
ここで、コンピュータが、上記パスワード入力欄8から入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定したのは、このパスワードが上記マスク解除信号とともに入力されたためである。このように、コンピュータは、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを、剥がしパスワードとして設定する。
【0052】
次に、ユーザーは、文書画面2内の剥がしたいマスクパターン、例えば、マスクパターンM1の上でマウスを左クリックしてマスク位置特定信号を入力する。具体的には、マウスの左クリックに応じて入力される信号に基づいて、コンピュータは、OSの機能を実行してその位置座標を特定し、ステップS33で、その位置をマスク位置として特定する。このマスク位置も、マスクパターンM1の代表点の位置である。
また、ステップS34で、コンピュータは、先に特定したマスク位置が、文書表示プログラムAが表示している文書上かどうかをOSの機能を実行して確認し、文書表示プログラムAでない場合にはステップS16の作業待機状態へ戻る。
【0053】
上記マスク位置が文書表示プログラムAの文書上にあった場合には、コンピュータは、ステップS35へ進む。ステップS35で、コンピュータは、上記マスク位置に対応するマスクデータがあるかどうかを、文書表示プログラムAの機能を実行して確認し、マスクデータがなければ、ステップS16へ戻るが、マスクデータがあれば、ステップS36へ進む。つまり、コンピュータは、ユーザーが、マウスの左クリックした位置をマスク位置として特定したが、そこに本当にマスクパターンがあるかどうかを確認するのである。
【0054】
上記マスク位置にマスクデータがあった場合には、コンピュータは、ステップS36で、文書表示プログラムAの機能によって登録されているマスクデータを特定するとともに、そのマスクデータの付加情報としてのマスクパスワードを取得する。もしも、このマスクパスワードが暗号化されていた場合には、この時点で、コンピュータがマスキングプログラムに設定されたルールに従って復号化する。
次に、ステップS37で、コンピュータは、上記文書データから取得したマスクパスワードと、上記ステップS32で設定した剥がしパスワードとが一致するかどうかを判断し、一致しなければ、ステップS16へ戻るが、両パスワードが一致した場合には、ステップS38へ進む。
【0055】
ステップS37で、パスワードが一致した場合には、コンピュータは、ステップS38で、文書表示プログラムの文書保護設定解除機能を実行して文書データの文書保護設定を解除する。このように、文書保護設定を解除したので、文書データに挿入されたマスクデータの移動や削除が可能になる。そこで、コンピュータは、ステップS39で、ステップS36で特定したマスクデータを文書データから削除する。これにより、文書画面2からは、削除されたマスクデータに対応するマスクパターンM1の表示が消えて、その下に隠されていた文書が表示される。このステップS39の処理も、コンピュータが、マスキングプログラムの処理手順に従って、文書表示プログラムAの機能を実行して行なう処理である。
【0056】
また、ステップS40で、コンピュータは、文書表示プログラムAの機能を実行して、再び、文書保護設定を行なって、文書データを再登録する。従って、他のマスクパターンは移動不可能な状態のまま登録される。なお、文書表示プログラムAの機能を実行して文書データを登録するときには、自動的に文書保護設定機能が実行されるように、マスキングプログラムにプログラムしておく。
そして、他のマスクパターン、例えばマスクパターンM2を削除する場合にも、上記と同様に、上記ステップS16からステップS40までの処理を繰り返す。
【0057】
図10〜図12に示す第2実施形態は、請求項2に記載のマスキングプログラムを実行するコンピュータと、この発明のパスワードを記録した記録媒体であるUSBメモリとを備えたマスキングシステムである。また、上記コンピュータには、上記マスキングプログラムのほかに、OS(operating
system)と、文書データを表示させるとともにマスキングプログラムと連係可能な文書表示プログラムAとを備えている点は上記第1実施形態と同じである。そして、上記OSおよび文書表示プログラムAの機能も第1実施形態と同じである。
【0058】
この第2実施形態のマスキングプログラムが、上記第1実施形態のマスキングプログラムと異なるのは、以下の点である。第1実施形態では、マスキングプログラムによって、文書画面上に表示させるマスキングパターンを予めコンピュータに記憶させてから、ユーザーが、文書上のマスク掛けしたい箇所に応じて、マスクパターンを選択するようにしていたが、第2実施形態では、予め、コンピュータにマスクパターンを記憶させることはしない。ユーザーからマスク範囲特定信号が入力される都度、コンピュータがマスクパターンに対応したマスクデータを生成するようにしている。
【0059】
また、マスク掛けや、マスク剥がし処理の際に、ユーザーが入力するパスワードを、ユーザーの手入力ではなく、パスワードを記録したUSBメモリからコンピュータが読み取るようにしている。これらの点が、第1実施形態とは異なるが、その他は第1実施形態と同じである。従って、以下では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
なお、上記パスワードを記録した記録媒体は、USBメモリに限らず、コンピュータが読み取り可能な記録媒体ならどのような形態のものでもよい。
【0060】
この第2実施形態のシステムでも、上記第1実施形態と同様に、コンピュータのディスプレイに表示された文書上にマスク掛けをすることができる。そこで、この第2実施形態についても、図1に示す文書画面2内の氏名2b、住所2c、電話番号2dおよびクレジットカード番号2eの部分に、図2に示すように不透明なマスクパターンM1を掛けて覆い隠す例を用いて説明する。
【0061】
まず、マスキングプログラムをコンピュータに設定し、コンピュータを待機状態にするまでの手順は、図4に示す第1実施形態と全く同じである。従って、ここでは各手順の説明は省略する。図4の手順によって、マスキングプログラムと文書表示プログラムAとが、連係してコンピュータをマスク掛けおよびマスク剥がし用に機能させることができるようになる。そして、コンピュータは、マスキングプログラムのアイコン11(図1参照)をタスクトレイ3に登録し、図4のステップS7の待機状態になる。
【0062】
また、この第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、上記マスキングプログラムをUSBメモリに記憶させているものとするが、USBメモリ以外の記録媒体、例えばコンパクトディスクなどに記憶させて、それをコンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
さらに、このマスキングプログラムの全ての機能を予めコンピュータにインストールしておくようにしてもよいことは、第1実施形態と同様である。
なお、マスキングプログラムを記憶しているUSBメモリは、上記パスワードを記憶しているメモリとは別のものでも、同じものでもよい。
【0063】
次に、実際に、マスクを掛けたり剥がしたりするための手順を説明する。
まず、マスク掛けの手順を、図10〜図12を用いて説明する。ただし、図10のフローチャートに示す手順は、マスク掛けおよび剥がし作業に共通の処理手順である。
ユーザーは、マスク掛けを行なう場合、マスク掛けの対象となる文書、例えば、図1のように文書画面2を表示させる。なお、上記文書画面2は、上記文書表示プログラムAで表示されているものとする。
【0064】
そして、ユーザーは、上記タスクトレイ3上のマスキングプログラムアイコン11をクリックする。
上記マスキングプログラムアイコン11がクリックされたとき、コンピュータは、図10のステップS7の待機状態から、ステップS51〜ステップS55までの一連の処理を実行する。ただし、上記ステップS51〜ステップS54は、図5のステップS11〜S14と全く同じなので、ここではその説明は省略する。
【0065】
そして、上記ステップS51で、マウスポインタがアイコン11上にない場合、ステップS52でアクティブウインドウが文書表示プログラムAでない場合、ステップS53でマウスが左クリックされていない場合には、それぞれコンピュータの処理はステップS7の待機状態に戻る。つまり、マスキングプログラムアイコン11がクリックされないか、マスク掛け対象となる文書ウインドウがアクティブでない場合には、コンピュータの処理はステップS7に戻る。
【0066】
上記ステップS53で、マウスが左クリックされていた場合には、ステップS54に進み、コンピュータは、文書表示プログラムAで表示された文書ウインドウ、ここでは、図1の文書画面2を表示している位置を特定する。この文書画面2の表示位置は、OSの機能によって特定できる。次に、ステップS55へ進み、マスキングプログラムによってコンピュータが、ディスプレイ1上に作業選択ウインドウを表示させ、ステップS56で作業待機状態となる。
つまり、第2実施形態では、図8に示すマスク準備ウインドウを表示させないが、その代わりに、作業選択ウインドウを表示させる。この作業選択ウインドウは図示していないが、ユーザーが、マスク掛けかマスク剥がしかを選択できるように、「マスク掛け」ボタンや、「剥がし」ボタンを備えたウインドウである。
【0067】
そして、ユーザーが、上記作業選択画面の「マスク掛け」ボタンをクリックするとコンピュータにこの発明のマスク掛け信号が入力され、「剥がし」ボタンをクリックすると、コンピュータにこの発明のマスク解除信号が入力されるようにしている。
このように、上記ステップS55で作業選択ウインドウが表示されたら、ユーザーは、マスク掛けまたはマスク剥がしのいずれかを選択することができる。
【0068】
次に、図1に示す文書画面2内の氏名2b、住所2c、電話番号2dを、マスクパターンM1(図2参照)によって隠す具体的な手順について、図11のフローチャートおよび図12を用いて説明する。
上記文書画面2内の氏名2b、住所2c、電話番号2dに、マスクパターンM1を掛けようとする場合、ユーザーは、次のような操作を行なう。
まず、ユーザーは、パスワードを記録したUSBメモリをコンピュータのUSBポートに差し込んでから、上記作業選択ウインドウの「マスク掛け」ボタンをクリックする。それから、ユーザーは、文書画面2上で、マスク掛けをしたい範囲をマウスで特定する。具体的には、図12に示す文書画面2上のポイントP2からポイントP3までを矢印のようにドラッグする。これにより、二点鎖線で示したマスクパターンM1に対応するマスク範囲が特定され、この範囲に、対応するマスクパターンM1が表示されマスク掛けがされる。
【0069】
このとき、コンピュータは、図11のフローチャートに従った処理を行なう。以下の処理は、コンピュータがマスキングプログラムに従って実行する処理である。
ユーザーが「マスク掛け」ボタンをクリックすると、ステップS61で、コンピュータがマスク掛け信号を受信するとともに、コンピュータは、ステップS62で文書画面2に透明レイヤーを設定する。この透明レイヤーは、上記第1実施形態の透明レイヤー13と同様にマスキングプログラムが管理する座標を有するレイヤーである。また、透明レイヤーの大きさや設定位置は、上記第1実施例と同様に、コンピュータがOSの機能を実行して決定することができる。
【0070】
ユーザーが、文書画面2上で範囲指定をする場合、ユーザーは、ポイントP2でマウスを左クリックしてポイントP3までドラッグして、ポイントP3でマウスを放す。つまり、マウスによって、上記透明レイヤー上で上記ポイントP2,P3を特定することになる。
コンピュータは、ポイントP2上でマウスの左クリックがされた時点と、ポイントP3上でマウスが放された時点で、ディスプレイからコンピュータへ信号が入力される。これらの信号が、ステップS63でコンピュータが受信するマスク範囲特定信号にあたる。なお、コンピュータは、マウス位置をOSの機能を実行することによって特定することができる。
【0071】
また、ステップS64で、コンピュータはUSBメモリからパスワードを読み取って、それをマスクパスワードとして設定する。コンピュータは、マスク掛け信号を受信したら、USBメモリからパスワードを読み取って、それをマスク掛け信号とともに入力されたパスワードとみなし、マスクパスワードとして設定する。なお、透明レイヤーの設定と、パスワードを読み取るステップは、どちらもマスク掛け信号が入力された後に実行されるステップであるが、どちらが先でもかまわない。
【0072】
次に、コンピュータは、受信したマスク範囲特定信号に基づいて、ポイントP2,P3の位置座標を透明レイヤーの座標系で特定し、ステップS65で、上記ポイントP2とP3を対角とする長方形のマスクパターンM1を特定する。ステップS66で、コンピュータは、特定したマスクパターンM1に対応するマスクデータを生成する。このマスクデータは、上記マスク範囲の大きさに対応した不透明なマスクパターンM1を表示させるためのデータである。そして、コンピュータは、マスクデータを生成したら、このデータに対応するマスクパターンM1を透明レイヤー上に表示させる。
【0073】
次に、コンピュータは、ステップS67で、上記マスク範囲特定信号に基づいてマスクパターンに対応する位置を透明レイヤーの(X2,Y2)座標系(図3参照)で特定する。このとき、マスクパターンの位置は、マスクパターン内の代表点の座標で特定する。さらに、ステップS68で、コンピュータは、第1実施形態で説明したように、文書データ内の文書画面2の座標、すなわち、文書データのどの部分が文書画面2に表示されているのかを(x,y)座標系で特定する。
【0074】
次に、コンピュータは、ステップS69で、上ステップS67、S68で特定したマスクパターンの透明レイヤー上の座標と文書画面2の座標とから、マスクデータを挿入すべき文書データ内のマスク位置座標を特定する。このマスク位置座標の特定方法も、上記第1実施形態においてコンピュータが、OSおよび文書表示プログラムAの機能を実行して行なった処理と同じである(図6のステップS24〜S26参照)。
【0075】
以上のステップで、上記マスクデータ、マスク位置座標およびマスクパスワードの特定ができたら、コンピュータは、上記マスクデータを、上記マスク位置座標に挿入してマスクパターンを表示させるとともに、上記マスクデータにマスクパスワードを付加して登録する処理を、文書表示プログラムAの機能を実行して行なう。ただし、文書表示プログラムAは、一旦登録した文書データの変更を誰でもが行なうことができないようにする文書保護設定機能を備えているため、マスクデータを挿入する際にも、この文書保護設定機能を解除する必要がある。
【0076】
そこで、コンピュータは、ステップS70で、文書表示プログラムの文書表示プログラムAが、画面表示している文書データに対し、文書保護設定解除を行なう。上記文書保護設定とは、一旦作成した文書データに変更を加えることができないように設定する文書表示プログラムAが備えている機能である。このステップS70で、上記文書保護設定機能を解除して変更を可能にする。
【0077】
上記のように、コンピュータは、ステップS70で文書保護設定解除をしたら、ステップS71で、ステップS69で特定したマスク位置座標に、先に生成したマスクデータを挿入し、マスクパターンM1を表示させる。また、ステップS72で、コンピュータは、先に設定したマスクパスワードをマスクデータに付加情報として登録する。このとき、コンピュータが、上記マスクパスワードを暗号化して登録するようにしてもよい。
そして、ステップS73で、文書保護設定を行い、貼り付けたマスクパターンM1を移動できないようにして、文書データを登録する。
【0078】
以上のようにして、この第2実施形態でも、マスクパターンM1によって、氏名2b、住所2c、電話番号2dを隠すことができる。同様にして、文書画面2内のほかの部分にも、マスク掛けをすることができる。さらに、このシステムでマスク掛けされたマスクパターンは、文書保護設定によって、移動が禁止されているので、マスクパターンを移動させて隠された文書データを表示させることはできない。
このようにマスク掛けをされた文書データは、図2のように個人情報が隠された状態で表示される。そのため、このデータを、例えば、販売店へ送信する場合にも、送信中や、販売店側で、不特定多数の人に、上記個人情報が見られてしまう心配はない。
なお、マスク掛けした部分の内容を知られてしまうような機能を、上記文書表示プログラムAが備えていた場合には、その機能を禁止する文書保護機能を付加する必要がある点は、上記第1実施形態と同じである。
【0079】
また、この第2実施形態のマスキングプログラムでも、マスク掛けされた状態の画面から、マスクを剥がして文書を表示させることができるが、その手順は、図7のフローチャートに示す第1実施形態と同じである。従って、その手順の説明は省略する。そして、実際にマスク剥がしができるのは、文書作成者や、文書作成者に許可された者など、剥がしパスワードを入力できる、限られた者である点も第1実施形態と同じである。
【0080】
ただし、この第2実施形態では、上記パスワードを、第1実施形態のように、文書作成者から、メールや口頭で伝えられるのではない。文書作成者は、マスク剥がしを許可する者に、自分がマスク掛けのときに用いたパスワードを記録したUSBメモリを渡すようにする。そして、マスク剥がしを行なう者は、上記ステップS56の作業待機状態において、上記作業選択画面から「剥がし」作業を選択するとともに、USBポートに上記USBメモリを接続してコンピュータにパスワードを読み込ませる。つまり、図7のステップS32において、コンピュータが剥がしパスワードとして設定するパスワードはUSBメモリから読み取ったものである。そして、コンピュータは、このステップS32以外は、第1実施形態と全く同じ処理を行なって、文書画面2上のマスクデータを削除し、マスクパターンを剥がすことができる。
【0081】
なお、この第2実施形態のマスキングプログラムは、マスクパターンに対応したマスクデータを予め備えていて、コンピュータに記憶させるのではなく、コンピュータは、ユーザーのドラッグに基づいて、毎回、マスクデータを生成するようにしている。そのため、第1実施形態のように、固定化されたマスクパターンを表示させるのではなく、隠したい文書面積に応じて、適切な大きさのマスクパターンを表示させることができるというメリットがある。
また、マスクパターンを決めるためのマスク範囲特定信号の入力方法として、上記のようにマウスをドラッグするのではなく、上記ポイントP2とポイントP3とを別々にクリックして、マスク範囲を特定するようにしても良い。さらに、特定するポイント数を多くして、四角形以外の多角形のマスクパターンを生成するようにしてもよい。
【0082】
さらに、第2実施形態では、パスワードを専用のUSBメモリに記憶させ、これを持ったユーザーだけが、マスクパスワードや剥がしパスワードを入力できるようにしている。このようにすれば、ユーザーは、パスワードを手入力する手間が省けるとともに、パスワードの入力間違いや、自分で設定したパスワードを忘れてしまうというような心配もなくなる。また、マスキングプログラムとともに、予めパスワードを記録した記録媒体を提供するようにし、記録しているパスワードをユーザーに知らせないようにすれば、パスワードが人づてに知れ渡ってしまう可能性がなく、セキュリティ性が向上する。
ただし、同一パスワードを記録した媒体を複数用意して、マスク剥がしを許可する複数のユーザーに予め渡しておくようにしてもよい。
【0083】
また、このようなパスワードを記録した記録媒体は、第1実施形態のマスキングプログラムのように、マスクパターンを予め記憶しておくマスキングプログラムにも適用できる。反対に、第2実施形態のマスキングプログラムのように、その都度マスクデータを生成するマスキングプログラムを用いるシステムにおいても、パスワードを手入力するようにしてもよい。
【0084】
上記第1、第2実施形態のように、マスク掛けすることによって、文書画面の必要な部分を簡単に隠すことができるとともに、パスワードの設定によって秘密を守ることができる。
なお、この上記第1、第2実施形態では、マスクパスワードと剥がしパスワードとが同一であることが、この発明の、両パスワードの関係として予め設定した対応関係である。ただし、この対応関係は、必ずしも同一でなく、例えば、各パスワードの一部分が一致するとか、両者の和が特定の値になるというような関係を設定してもよい。
【0085】
また、複数のマスク掛けを行なう場合に、全てのマスクデータにそれぞれ異なるパスワードを設定するようにしてもよいし、複数のマスクデータに同一のマスクパスワードを設定するようにしてもよい。
複数のマスクデータに同一のマスクパスワードを設定した場合、一つの剥がしパスワードで複数のマスク剥がしができるようになる。
一方、マスクデータごとに異なるマスクパスワードを設定するようにすれば、特定の剥がしパスワードを与えられた者が、そのパスワードに対応したマスクパターンのみを剥がすことができることになる。
【0086】
また、マスク位置によって秘密のレベルを変えるとともに、剥がしパスワードにもレベルを設けて、剥がせる秘密レベルを異なるようにすることもできる。例えば、秘密レベルが上、中、下とあった場合、剥がしパスワードにも、上、中、下を設定するが、対応するレベルのマスクだけを剥がせるようにするのではなく、最上級の剥がしパスワードは、全秘密レベルのマスクを剥がせるようにし、下級レベルの剥がしパスワードでは、下級レベルの秘密文書を隠したマスクしか剥がせないようにすることができる。
なお、上記第1、第2実施形態では、文書画面上に透明レイヤーを設定して、文書画面上の座標系を利用して、画面上で特定されたポイントに対応するマスク位置座標を特定するようにしているが、この透明レイヤーを設定せずに、ディスプレイ上の座標を利用して、マスク位置座標を特定するようにしてもよい。
【0087】
さらに、この発明のマスキングプログラムを利用したマスク掛けは、上記のような個人情報の保護だけでなく、様々な文書データを隠す際に利用できる。
例えば、コンピュータを使った学習教材として、問題と正解とが含まれた文書データの正解部分をマスクパターンで隠して表示させ、生徒が自分で回答を出してから、マスク剥がしをして答え合わせをできるようにする。ただし、生徒が、初めから正解を見てしまわないように、剥がしパスワードを知らせるタイミングを工夫する必要がある。例えば、出題してから所定時間経過後や、生徒の回答を受け取ってから、剥がしパスワードをメールで送信するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】第1実施形態の文書画面を示した図で、マスク掛けしていない状態である。
【図2】第1実施形態の文書画面を示した図で、マスク掛け後の状態である。
【図3】透明レイヤー、ディスプレイおよび文書画面の位置関係を説明するための模式図である。
【図4】第1実施形態におけるコンピュータの処理手順のうち、マスキングプログラムを設定するまでのステップを示したフローチャートである。
【図5】第1実施形態におけるコンピュータの処理手順のうち、マスキングプログラムを待機状態にするまでのステップを示したフローチャートである。
【図6】第1実施形態におけるコンピュータが、マスクパターンを表示させる処理手順を示したフローチャートである。
【図7】第1実施形態におけるコンピュータが、マスクパターンを削除する処理手順を示したフローチャートである。
【図8】第1実施形態のマスク準備ウインドウを示した図である。
【図9】第1実施形態の文書画面を示した図で、マスク掛けを行なっているところを示している。
【図10】第2実施形態におけるコンピュータの処理手順のうち、マスキングプログラムを待機状態にするまでのステップを示したフローチャートである。
【図11】第2実施形態におけるコンピュータが、マスクパターンを表示させる処理手順を示したフローチャートである。
【図12】第2実形態の文書画面を示した図で、マスク掛けを行なうところを示している。
【符号の説明】
【0089】
1 ディスプレイ
2 文書画面
12 文書データ
13 透明レイヤー
M1,M2 マスクパターン
【技術分野】
【0001】
この発明は、文書データの一部を隠すためのマスキングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
個人情報や社内情報など、第三者には見られたくない文書データが、勝手に見られないようにするために、従来、次のようなことが行なわれている。
例えば、秘密の文書データを暗号化してから保存したり、通信したりして、暗号を解読できない他人にデータを見られないようにする。この場合には、上記文書を読むときに、復号化が必要になる。
また、別の方法として、例えば文書ファイルを、パスワードを設定して保存したり、パスワード付で通信したりし、このパスワードの入力なしでは、その文書ファイルを開けないようにする方法もある。
【特許文献1】特開2002−259305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、暗号化を利用する方法では、暗号化用の特別なソフトが必要であり、文書作成者がいちいち必要箇所を暗号化しなければならないという問題があった。
また、パスワードを設定して保存する処理は、文書全体に対して行なわなければない。そのため、一つの文書中、隠したい部分が限られていて、本来なら公開してもかまわない部分があったとしても、文書全体を隠すことになる。反対に、パスワード入力をしてファイルを開いた場合には、その文書データ全体が一度に見られるようになってしまう。
つまり、文書データ中の隠したい部分のみを隠すことができなかった。
この発明の目的は、コンピュータのディスプレイ上に表示されている文書データの中で、隠したい部分だけを簡単な手順で隠すことができ、秘密が保持できるマスキングプログラムおよびマスキングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明のマスキングプログラムは、コンピュータに、文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能および文書保護設定を解除する保護設定解除機能とを実現させる文書表示プログラムと相まって機能するマスキングプログラムであって、このマスキングプログラムは、コンピュータに、不透明なマスクをパターン化してなる複数のマスクデータを記憶する機能と、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク選択信号に基づいてその信号に対応するマスクデータを特定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面へのマスクパターンのドラッグアンドドロップ信号に応じて文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記特定したマスクデータを上記特定したマスク位置座標に挿入して対応するマスクパターンを表示させる機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記マスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを実現させる点に特徴を有する。
【0005】
第2の発明のマスキングプログラムは、コンピュータに、文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能および保護設定を解除する文書保護設定解除機能とを実現させる文書表示プログラムと相まって機能するマスキングプログラムであって、このマスキングプログラムは、コンピュータに、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面を介して入力されたマスク範囲特定信号に基づいて、不透明なマスクパターンとなるマスクデータを生成する機能と、上記文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記生成したマスクデータを上記マスク位置座標に挿入してマスクパターンを表示させる機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記特定のマスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを実現させる点に特徴を有する。
【0006】
第3の発明のマスキングプログラムは、上記第1または第2の発明のマスキングプログラムを前提とし、コンピュータに、パスワードを記録し、そのパスワードを上記コンピュータで読み取り可能にした記録媒体からマスクパスワードおよび剥がしパスワードを自動的に読み取る機能を実行させる点に特徴を有する。
【0007】
第4の発明のマスキングシステムは、コンピュータを備え、このコンピュータは、文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能と、この文書保護設定を解除する文書保護設定解除機能と、不透明なマスクをパターン化してなる複数のマスクデータを記憶する機能と、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク選択信号に基づいてその信号に対応するマスクデータを特定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面へのマスクパターンのドラッグアンドドロップ信号に応じて文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記特定したマスクデータを上記特定したマスク位置座標に挿入して対応するマスクパターンを表示させる機能と、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記マスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを備えた点に特徴を有する。
【0008】
第5の発明のマスキングシステムは、コンピュータを備え、このコンピュータは、文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能と、文書保護設定を解除する文書保護設定解除機能と、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面を介して入力されたマスク範囲特定信号に基づいて、不透明なマスクパターンとなるマスクデータを生成する機能と、上記文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記生成したマスクデータを上記マスク位置座標に挿入してマスクパターンを表示させる機能と、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記特定のマスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを備えた点に特徴を有する。
【0009】
第6の発明は、上記第4または第5の発明を前提とし、パスワードを記録した記録媒体を備えるとともに、上記コンピュータが、上記記録媒体からパスワードを読み取る機能と、読み取ったパスワードをマスクパスワードまたは剥がしパスワードとして設定する機能を備えた点に特徴を有する。
なお、上記マスクパスワードと剥がしパスワードとの対応関係には、両者が一致する関係のほか、予めプログラムに設定しておく関係が含まれる。
【発明の効果】
【0010】
第1〜第6の発明によれば、表示された文書データの任意の場所を、マスクを掛けることよって隠し、そのマスクの移動を禁止することができる。
また、マスクを剥がすためには、マスク掛けの際に用いたマスクパスワードと対応関係を持ったパスワードの入力が必要なので、パスワードを知らない者に対して秘密を守ることができる。
さらに、作成された文書データを表示した状態で、秘密にしたい箇所のみを隠すようにしているので、秘密にする必要のない箇所まで隠すことがないだけでなく、隠された場所が一目でわかる。そのため、特定の箇所を秘密にしたい者にとって、その箇所が隠されていることが感覚的に理解でき、安心感がある。
【0011】
第3および第6の発明によれば、パスワードを記録した記録媒体を、コンピュータに接続するだけで、パスワードを入力することができる。これにより、ユーザーは、マスク掛けやマスク剥がしの際に、パスワードを手入力する手間が省けるだけでなく、パスワードの入力間違いもなくなる。
また、パスワードを保持する者の人数を、記録媒体の数に制限することができる。マスク掛けを行った文書作成者が、マスク剥がしを許可する者に対し、口頭でパスワードを伝える場合には、人から人へパスワードが伝わって、それが意図した範囲以上に広まってしまう可能性もあるが、この発明では、そのようなこともなく、セキュリティ性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図9に、この発明の第1実施形態を示す。
この第1実施形態は、コンピュータがこの請求項1に記載のマスキングプログラムを用いて、ディスプレイに表示された文書データの所定の位置にマスク掛けをする例で、以下にそれを詳細に説明する。なお、ここでいうマスク掛けとは、上記文書データ上に、不透明なマスクパターンの画像を重ねて表示させ、対応する位置にある文書データを隠す処理のことである。また、このマスク掛けされた画面から、マスクパターンを取り除いて、そこに対応する文書データを表示させる処理をマスク剥がしと定義する。
そして、この発明のマスキングプログラムに基づいて機能するコンピュータが、この発明のマスキングシステムを構成する。
【0013】
また、上記コンピュータには、OS(operating system)はもちろん、アプリケーションソフトとして上記マスキングプログラムと連携可能な文書表示プログラムを設定している。
上記文書表示プログラムは、コンピュータのディスプレイに、文書データを表示させるとともに、コンピュータに、文書上に図形を貼り付けたり、あるいはそれを剥がしたりする機能を実現させるものである。
さらに、この文書表示プログラムには、表示した文書データに貼り付けた画像の移動を禁止するために、一旦作成した文書データに変更を加えることができないようにするための文書保護設定機能と、その文書保護設定を解除する設定解除機能とを備えている。ただし、文書保護設定解除を行なうためには、特別な信号入力が必要で、誰でもが、簡単に文書保護設定解除ができないようにしている。例えば、文書保護設定を行なったときに入力したパスワードなどを入力しなければ解除できないようにしている。
【0014】
そして、ディスプレイに表示した文書データに対してマスクがけをしたり、マスク剥がしをしたりする際には、上記文書表示プログラムが、上記マスキングプログラムの手順に従って、文書表示プログラムの機能を実行して、コンピュータにマスク掛けやマスク剥がしに必要な機能を実現させるのである。
また、上記マスキングプログラムは、文書上にマスク掛けをする際に、コンピュータに、マスクデータを挿入すべき、文書データ中のマスク位置座標を特定する機能を実現させる。このマスク位置座標を特定する方法は、後で詳しく説明するが、この実施形態では、文書データを表示した文書画面上に座標を有する透明レイヤーを設定して、その座標を利用して位置座標を特定するようにする。
【0015】
次に、実際のマスク掛け手順に従って、このシステムの作用を説明する。
図1は、コンピュータのディスプレイ1を示した図である。このディスプレイ1に表示された文書画面2には、このコンピュータのユーザーが、特定の商品を販売店に注文するために作成した注文書が、文書の例として示されている。この文書は、どのようなソフトを用いて作成されたものであってもかまわないが、これから説明するマスク掛けやマスク剥がしを行なうためには、上記したようにマスキングプログラムと連係可能な文書データ表示プログラムを用いて、上記文書をディスプレイ1に表示する必要がある。
この文書画面2中には、商品名2aのほか、注文者の氏名2b、住所2c、電話番号2d、クレジットカード番号2eなどが含まれている。
【0016】
この第1実施形態では、上記ユーザーは、上記注文書を電子メールに添付して販売店へ送るが、この送信中や、販売店での保管中などに、文書画面2内の氏名2b、住所2c、電話番号2dおよびクレジットカード番号2eなどの個人情報が、不特定の人に見られることがないように、その部分にマスク掛けをする。例えば、図2に示すように、氏名2b、住所2c、電話番号2dの部分に不透明なマスクパターンM1を掛けて覆い、クレジットカード番号2eの表示箇所をマスクパターンM2で覆い隠すものとする。
【0017】
また、上記マスクパターンM1、M2によるマスク掛けを行なうために、ユーザーが、マスク掛けをしたい位置を、マウスなどを用いて画面上で指示した場合、その位置に対応する文書データ中のマスク位置座標を特定する方法を、図3を用いて説明する。なお、上記文書データ中のマスク位置座標とは、文書データ内の位置を特定する座標であって、ディスプレイ上の位置や、文書画面上の位置座標ではない。例えば、図3に示すように、ディスプレイ1内の文書画面2内に表示されている文書は、実際には表示されていない部分も含んだ文書データ12の一部である。この表示されていない部分も含めた文書データ全体の中での位置を表す座標系があり、この座標系を図3では、x,y軸で示している。この座標系は、上記文書表示プログラムが管理している座標系である。そこで、文書データ内の特定の位置座標は、上記文書表示プログラムの機能を実行して特定することができる。
【0018】
また、文書画面2部分だけの座標を特定するために、この実施形態では、文書画面2上に、文書画面2と同じ大きさの透明レイヤー13を設定し、この透明レイヤー13には、上記(x,y)座標とは別の(X2,Y2)座標を備えている。そして、この(X2,Y2)座標系は、マスキングプログラムが管理する座標系である。
さらに、ディスプレイ1上の座標は、OSが管理する座標であって、図3にX1,Y1軸で示した(X1,Y1)座標系である。そこで、コンピュータは、OSの機能によってディスプレイ上に表示された文書画面2の位置を、(X1,Y1)座標系で特定することができる。従って、コンピュータは、上記透明レイヤー13を文書画面2上に設定する際には、設定すべき位置と、透明レイヤー13の大きさをOSの機能を実行して取得し、取得した大きさの透明レイヤー13を文書画面2に重ねて設定することができる。
【0019】
以上の関係から、例えば、ユーザーが指定したポイントP1の、文書データ内の(x,y)座標を特定することができる。まず、OSの機能を利用して、マウスポインタのディスプレイ上の位置と、透明レイヤー13の座標軸のディスプレイ上の位置を、(X1,Y1)座標で特定してから、ポイントP1の位置座標を、透明レイヤー13上の(X2,Y2)座標で特定する。さらに、文書表示プログラムの機能を実行することによって、文書画面2に表示されている文書データ中の表示部分の座標を(x,y)座標で特定する。コンピュータは、この文書表示部分の座標と透明レイヤー13の座標系とを総合して、上記ポイントP1の文書データ内の(x,y)座標を特定する。
【0020】
以下に、コンピュータが、マスキングプログラムに基づいて図1に示す文書画面2上に、図2に示すようにマスクパターンM1およびM2を重ねて文書画面2を作成する手順を説明する。
なお、この第1実施形態では、USBメモリにマスキングプログラムを記憶させ、このUSBメモリをコンピュータのUSBポートに接続すると、自動的にコンピュータがマスキングプログラムを起動させるようにしている。そして、この第1実施形態においては、上記マスキングプログラムを動作させている間、上記USBメモリをUSBポートに接続しておかなければならない。
【0021】
次に、このマスキングプログラム起動後のコンピュータの処理手順を図4〜図7のフローチャートに従って説明する。
図4に示すフローチャートは、コンピュータにマスキングプログラムを設定するまでのフローである。なお、以下の処理は、全て、マスキングプログラムに基づいてコンピュータが実行するものである。
まず、上記USBメモリをUSBポートに接続すると、コンピュータは、自動的にUSBメモリのマスキングプログラムを読み取る。ステップS1で、コンピュータは、このマスキングプログラムを起動させる。ステップS2で、コンピュータは、コンピュータ上で今読み取ったマスキングプログラムと同じプログラムが既に起動しているかどうかを、OSの機能を実行して確認する。もしも同じマスキングプログラムが起動していた場合には、ステップS8へ進み、コンピュータは、今起動したマスキングプログラムを終了する。つまり、一つのコンピュータ内で同じマスキングプログラムが2つ以上同時に起動しないようにしている。一方、マスキングプログラムが重複して起動していない場合には、ステップS2からステップS3へ進む。
【0022】
このように、同じマスキングプログラムが2つ以上同時に起動しないようにしている理由は、起動しているマスキングプログラム間で矛盾が発生してしまう危険を避けるためである。マスキングプログラム間の矛盾としては、例えば、ユーザーが、2つのマスキングプログラムを立ち上げて、最初に立ち上げた第1のマスキングプラグラムを用いて特定の文書に対してマスク掛けを行なうために特定のマスクパターンを選択しながら、次に立ち上げた第2のマスキングプログラムを用いて、同じ文書に対して、別のマスクパターンを選択してしまうというような、ユーザーの操作によって起こる矛盾などが考えられる。ただし、このような危険性を考慮しなければ、上記ステップS2は不要である。
【0023】
そして、ステップS3でコンピュータは、OSの機能を実行し、このマスキングプログラムが正常に作業できる環境があるかどうかを判断し、作業環境がなければステップS8へ進んで終了し、上記作業環境があれば、ステップS4へ進む。次に、ステップS4で、コンピュータは、OSの機能を実行して、自身に上記マスキングプログラムと連係可能な特定の文書表示プログラムAがインストールされているかどうかを判断する。この文書表示プログラムAは、文書データを表示するためのプログラムで、この発明のマスキングプログラムと連係してマスク掛けやマスク剥がしの処理ができるプログラムである。つまり、上記マスキングプログラムが適用可能な文書表示プログラムで、その判断基準は予めマスキングプログラムに設定されている。
【0024】
そして、この文書表示プログラムAがコンピュータにインストールされていた場合には、ステップS5で、コンピュータはOSの機能を実行し、マスキングプログラム用プラグインを上記文書表示プログラムAに登録する。これにより、上記マスキングプログラムと文書表示プログラムAとが、連係してコンピュータを機能させることができるようになる。このように、上記プラグインが登録されたら、ステップS6で、コンピュータは、OSの機能を実行して、マスキングプログラムのアイコン11(図1参照)をタスクトレイ3に登録し、ステップS7の待機状態になる。
【0025】
以上の手順で、コンピュータに、マスキングプログラムが準備され、待機状態となる。この時点で、コンピュータのディスプレイ1には、図1のように文書画面2が表示されていても、表示されていなくてもかまわない。ただし、実際にマスク掛けを行なうときには、マスク掛けの対象となる文書画面2を表示させておかなければならない。
【0026】
なお、この第1実施形態では、上記マスキングプログラムをUSBメモリに記憶させているが、USBメモリ以外の記録媒体、例えばコンパクトディスクなどに記憶させて、それをコンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
また、ここでは、マスキングプログラムをUSBメモリに記憶させ、このプログラムを立ち上げるときには、USBメモリの接続を必要としているが、全ての機能を予めコンピュータにインストールしておくようにしてもよい。このように、コンピュータに上記文書表示プログラムAを含めた全ての機能をインストールした場合には、図4に示す処理は不要になる。マスキング作業や、剥がし作業を行なう場合には、図5〜図7に示す手順のみが必要である。
【0027】
次に、実際に、マスクを掛けたり剥がしたりするための手順を、図5〜図7のフローチャートに従って説明する。ただし、図5に示す手順は、マスク掛けおよび剥がし作業に共通の処理手順であり、図6はマスク掛け作業の処理手順、図7はマスク剥がし作業の処理手順を示している。そして、これらのステップはOSと連係してマスキングプログラムが、コンピュータに実行させる処理ステップである。
先に、マスク掛けを行なう方法を説明する。
ユーザーは、マスク掛けを行なう場合、まず、マスク掛けの対象となる文書、例えば、図1のように文書画面2を表示させる。なお、上記文書画面2は、上記文書表示プログラムAで表示されなければならない。
【0028】
そして、ユーザーは、上記タスクトレイ3上のマスキングプログラムアイコン11をクリックする。
上記マスキングプログラムアイコン11がクリックされたとき、コンピュータは、図5のステップS7の待機状態から、ステップS11〜ステップS15までの一連の処理を実行する。すなわち、ステップS11で、コンピュータは、OSの機能を実行してマウスポインタがタスクトレイ3のマスキングプログラムアイコン11上にあることを認識するとともに、ステップS12で、アクティブウインドウが文書表示プログラムAのウインドウかどうかを判断する。つまり、コンピュータは、文書データが、ユーザーの操作を受け付ける状態で表示されているかどうかを判断する。
【0029】
なお、マウスポインタの位置や、マウスボタンのクリックの検出は、OSが備えている機能なので、マスキングプログラムは、コンピュータにOSの機能を実行させて、検出結果を取得するようにしている。また、文書データを表示させる文書プログラムAもOSが管理しているので、マスキングプログラムは、コンピュータに、OSの機能を実行させることによって、ステップS12で、アクティブウインドウがプログラムAのものであるかどうかを判断させることができる。
【0030】
上記ステップS11で、マウスポインタがアイコン11上にない場合、ステップS12でアクティブウインドウが文書表示プログラムAでない場合、ステップS13でマウスが左クリックされていない場合のいずれの場合にも、コンピュータの処理はステップS7に戻る。つまり、マスキングプログラムアイコン11がクリックされないか、マスク掛け対象となる文書ウインドウがアクティブでない場合には、コンピュータの処理はステップS7に戻り、待機状態を保つ。
【0031】
上記ステップS11〜13を経由してステップS14に進んだら、コンピュータは、文書表示プログラムAで表示された文書、すなわち、図1に示す文書画面2のディスプレイ1上の位置を特定する。このウインドウの位置は、先に説明したように、コンピュータが、OSの機能を実行することによって特定することができる。次に、ステップS15へ進み、コンピュータは、マスキングプログラムに基づいてディスプレイ1上にマスク準備ウインドウ4を表示させ、ステップS16で作業待機状態となる。
【0032】
上記マスク準備ウインドウ4は、図8に示すウインドウで、マスク表示部5と、マスク選択矢印6a,6bと、マスク名表示部7と、パスワード入力欄8と、「剥がし」ボタン9と、「閉じる」ボタン10とを備えたウインドウである。
上記マスク表示部5には、文書上に表示させて、文書を覆うためのマスクパターンが表示される。マスクパターンの形状や色、大きさはどのようなものでもかまわないが、ここでは、色つきの長方形のマスクパターンが表示されている。そして、長方形のマスクパターンの大きさを、例えば、「50(mm)×30(mm)」と、サイズ表示部5aに表示させている。
【0033】
なお、この実施形態では、上記マスクの形態や大きさをパターン化しているが、これらパターン化したマスクをマスキングプログラムのマスクデータとして記憶している。また、ここでいうマスクのパターンは、何種類あってもよく、それらをマスクデータとして記憶しておくことが可能である。これらのマスクデータは、マスキングプログラムととともに、コンピュータに登録されるようにしている。そして、これらのマスクデータは、画面表示されたとき、不透明なマスクパターンとなり、その下の文書を見えないようにするものである。
【0034】
そして、ユーザーは、図8に示すマスク準備ウインドウ4の上記マスク表示部5の下に表示されるマスク選択矢印6aまたは6bをクリックすると、コンピュータが記憶している複数のマスクデータに対応するマスクパターンを順番に表示させることができるようにしている。このとき、上記マスク名表示部7には、マスク表示部5に表示されたマスクパターン名を表示させるようにしている。
また、上記パスワード入力欄8は、マスク掛けおよびマスク剥がしを行なう際に、ユーザーがパスワードを入力するための欄である。
さらに、上記「剥がし」ボタン9は、マスク剥がしを行なうときにユーザーがクリックするボタンで、このボタンがクリックされると、コンピュータにこの発明のマスク解除信号が入力されるようにしている。また、「閉じる」ボタン10は、このマスク準備ウインドウ4を閉じるためのボタンである。
【0035】
上記図5に示すステップS15で、上記マスク準備ウインドウ4が、図9に示すようにディスプレイ1上に表示されたら、ユーザーは、マスク掛けまたはマスク剥がしのいずれかを選択することができる。
ここでは、図1に示す文書画面2内の氏名2b、住所2c、電話番号2dを、マスクパターンM1(図2参照)によって隠す手順について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
上記文書画面2内の氏名2b、住所2c、電話番号2dに、マスクパターンM1を掛けようとする場合、ユーザーは、次のような操作を行なう。
まず、マスク準備ウインドウ4のマスク表示部5にマスクパターンM1を表示させてから、上記パスワード入力欄8にパスワードを入力する。そして、マスク表示部5に表示されたマスクパターンM1の上にマウスポインタを置き、このマスクパターンM1をドラッグして、上記文書画面2上の、隠したい位置にドロップさせる。
【0037】
上記のユーザーの操作手順にともなうコンピュータの処理手順を、図6のフローチャートに従ってさらに詳しく説明する。
すなわち、上記のように、ユーザーが、パスワードを入力してから、マスクパターンM1をドラッグするためにマスク表示部5上にマウスポインタを置いて左クリックすると、コンピュータは、この左クリックにより入力される信号をこの発明のマスク掛け信号およびマスク選択信号として受信する。マスク掛け信号とは、マスク掛けおよびマスク剥がしの作業のうち、ユーザーがマスク掛けを選択したことを入力する信号である。ここでは、マスク選択信号を兼ねているが、図8に示している「剥がし」ボタン9のように、マスク掛けボタンを設けて、それをクリックしたときに入力されるようにしてもよい。
【0038】
そして、コンピュータは、ステップS21で、マスク掛け信号である上記マスク選択信号を受信したら、ステップS22へ進む。ステップS22で、コンピュータは、マスク選択信号に対応したマスクパターンM1に対応するマスクデータを特定するとともに、上記パスワード入力欄8から入力されたパスワードをこの発明のマスクパスワードとして設定する。コンピュータは、パスワード入力欄8からパスワードが入力されたとき、その直前にマスク掛け信号が入力されていれば、このパスワードがマスク掛け信号とともに入力されたと判断し、上記パスワードをマスクパスワードとして設定する。
【0039】
また、ステップS23で、コンピュータは、マスク掛けを目的とした文書画面2上に、図3に示すように座標(x,y)を有する透明レイヤー13を設定する。この透明レイヤー13の設定は、上記マスク掛け信号が入力されたときに行なう処理で、ステップS22とステップS23はどちらが先でもかまわない。
【0040】
次に、ユーザーの操作によって、図9に示す矢印のように、上記マスクパターンM1が、マスク準備ウインドウ4からドラッグされ、文書画面2上の隠したい部分、つまり、氏名2b、住所2c、電話番号2dが表示されている二点鎖線で示した場所へ移動し、ユーザーの操作でドロップされると、コンピュータへドラッグアンドドロップ信号が入力される。この信号に基づいて、コンピュータは、ステップS24で、上記ドロップ位置を、透明レイヤー13上のマスクパターン表示位置を、透明レイヤーの(X2,Y2)座標によって特定する。このように、マスクパターン表示位置を、透明レイヤーの(X2,Y2)座標で特定するために、コンピュータは、OSの機能を実行してドロップ位置をディスプレイ1上の(X1,Y1)座標で特定し、さらに、透明レイヤー13のディスプレイ上の位置もOSの機能を実行して特定し、上記ドロップ位置の座標と透明レイヤー位置との関係から、マスクパターンM1の表示位置座標を透明レイヤー13の(X1,Y1)座標で特定する。
【0041】
なお、面積を持ったマスクパターンM1の表示位置の位置座標は、予め決められたマスクパターン内の代表点で特定される。この代表点は、例えば、マスクパターンの中心ポイントP1(図3参照)や、長方形の特定の頂点など、マスクパターンとの関係が特定できる点ならどのように決めたポイントでもかまわない。つまり、特定のマスクパターンが選択された時点で、コンピュータは、そのマスクパターンの代表点の位置を特定できるので、マスクパターンがドラッグされた際には、上記代表点が移動されるとみなし、ドロップ位置を、その代表点の位置で特定するようにしている。
【0042】
このようにコンピュータは、ステップS24で、透明レイヤー13上におけるマスクパターンM1の表示位置の位置座標を特定したら、ステップS25で文書表示プログラムAの機能を実行して、文書画面2の位置を文書データ内の座標で特定する。文書画面2の座標とは、文書データ12のうち文書画面2に表示されている部分を特定する座標である。そして、ステップS26で、マスクデータを貼り付けるべき位置であるマスク位置座標を、文書データ内の座標系によって特定する。このマスク位置座標は、文書データ内の(x,y)座標系で特定した座標であるが、その特定方法は先に説明したとおりである。すなわち、ステップS25において特定した文書データの表示部分の座標と、透明レイヤー13上に設定されている(X2,Y2)座標系とを対応付けることによって、ステップS24で特定した上記透明レイヤー13上の座標を、文書データ内の座標に変換する。
【0043】
以上のステップで、上記マスクデータ、マスク位置座標およびマスクパスワードの特定ができたら、コンピュータは、上記マスクデータを、上記マスク位置座標に挿入してマスクパターンを表示させるとともに、上記マスクデータにマスクパスワードを付加して登録する処理を、文書表示プログラムAの機能を実行して行なう。ただし、文書表示プログラムAは、一旦登録した文書データの変更を誰でもが行なうことができないようにする文書保護設定機能を備えているため、マスクデータを挿入する際にも、この文書保護設定機能を解除する必要がある。
【0044】
従って、コンピュータは、ステップS27で、文書表示プログラムAの機能を実行して、画面表示している文書データに対し、文書保護設定解除を行なう。このステップS27で、コンピュータが、文書表示プログラムAの文書保護設定を解除するために必要な特定の信号は、予めマスキングプログラムに設定されていて、自動的に文書保護設定解除が行なわれるようにしている。
【0045】
上記のように、ステップS27で、コンピュータが文書保護設定解除を行なったら、コンピュータは、文書表示プログラムAの機能を実行して、ステップS28で、先に特定した文書データにおけるマスク位置座標にマスクデータを挿入して対応するマスクパターンM1を表示させるとともに、ステップS29で、先に設定したマスクパスワードを上記マスクデータの付加情報として登録する。このとき登録するマスクパスワードを、コンピュータが、暗号化してから登録させるようにしてもよい。この場合、暗号化のルールも、マスキングプログラムに設定しておく。
そして、コンピュータは、ステップS30で、文書表示プログラムAの文書保護設定機能を実行して、貼り付けたマスクパターンM1を移動できないようにして文書データを登録する。
【0046】
以上のようにして、マスクパターンM1によって、氏名2b、住所2c、電話番号2dを隠すことができる。同様にして、文書画面2内のほかの部分にも、マスク掛けをすることができる。
このようにマスク掛けをされた文書データは、図2のように個人情報が隠された状態で表示される。さらに、このシステムでマスク掛けされたマスクパターンは、文書保護設定によって、移動が禁止されているので、マスクパターンを移動させて隠された文書データを表示させることはできない。そのため、このデータを、例えば、販売店へ送信する場合にも、送信中や、販売店側で不特定多数の人に、上記個人情報が見られてしまう心配はない。
【0047】
なお、上記文書表示プログラムAが、表示画面から文書を選択したり、コンピュータに文書を読み上げさせたりする機能を備えていた場合には、その機能を禁止する文書保護機能を付加する必要がある。なぜなら、図2のように、不透明なマスクパターンで文書データを覆ったとしても、その下の文書を選択できれば、他の画面に貼り付けて表示させることができるし、読み上げ機能があれば、画面上に表示しなくても読み上げさせることによってその内容を知られてしまうからである。従って、図6のステップS27における文書保護設定では、マスクパターンの移動禁止のほか、文書選択や、読み上げ機能も禁止する必要がある。
【0048】
次に、図2に示すように、マスク掛けされた状態の画面から、マスクを剥がして文書を表示させるマスク剥がし処理について説明する。
実際にマスク剥がしができるのは、文書作成者や、文書作成者に許可された、限られたユーザーであり、これらの者たちは、文書作成者がマスク掛けの際に入力したパスワードを用いてマスク剥がしを行なう。このパスワードは、メールや口頭で、文書作成者からマスク剥がしを行なうものへ伝えられているものとする。
【0049】
上記パスワードを知っている者がマスク剥がし処理を行なう手順を説明する。
まず、ユーザーは、図2に示すマスク掛けされた文書画面2を表示させる。文書画面2を表示させるだけなら、マスキングプログラムを立ち上げる必要はなく、文書表示プログラムAの機能だけで足りる。
次に、上記マスキングプログラムを立ち上げると、コンピュータが、上記図5に示す処理ステップを実行してステップS16(図5、図7参照)の作業待機状態となる。このとき、図2のディスプレイ1には、文書画面2とともに、図8に示すマスク準備ウインドウ4が表示されている。
【0050】
この状態から、図2のマスクパターンM1を剥がす処理を、図7のフローチャートに従って説明する。なお、以下に説明するコンピュータの処理ステップは、コンピュータが、上記マスキングプログラムに基づいて実行する処理ステップである。
まずユーザーは、ディスプレイ1上のマスク準備ウインドウ4(図8参照)の、「剥がし」ボタン9をクリックして、この発明のマスク解除信号をコンピュータへ入力するとともに、パスワード入力欄8にパスワードを入力する。
【0051】
このとき、コンピュータは、ステップS31でマスク解除信号を受信するとともに、ステップS32で、上記パスワード入力欄8から入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する。
ここで、コンピュータが、上記パスワード入力欄8から入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定したのは、このパスワードが上記マスク解除信号とともに入力されたためである。このように、コンピュータは、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを、剥がしパスワードとして設定する。
【0052】
次に、ユーザーは、文書画面2内の剥がしたいマスクパターン、例えば、マスクパターンM1の上でマウスを左クリックしてマスク位置特定信号を入力する。具体的には、マウスの左クリックに応じて入力される信号に基づいて、コンピュータは、OSの機能を実行してその位置座標を特定し、ステップS33で、その位置をマスク位置として特定する。このマスク位置も、マスクパターンM1の代表点の位置である。
また、ステップS34で、コンピュータは、先に特定したマスク位置が、文書表示プログラムAが表示している文書上かどうかをOSの機能を実行して確認し、文書表示プログラムAでない場合にはステップS16の作業待機状態へ戻る。
【0053】
上記マスク位置が文書表示プログラムAの文書上にあった場合には、コンピュータは、ステップS35へ進む。ステップS35で、コンピュータは、上記マスク位置に対応するマスクデータがあるかどうかを、文書表示プログラムAの機能を実行して確認し、マスクデータがなければ、ステップS16へ戻るが、マスクデータがあれば、ステップS36へ進む。つまり、コンピュータは、ユーザーが、マウスの左クリックした位置をマスク位置として特定したが、そこに本当にマスクパターンがあるかどうかを確認するのである。
【0054】
上記マスク位置にマスクデータがあった場合には、コンピュータは、ステップS36で、文書表示プログラムAの機能によって登録されているマスクデータを特定するとともに、そのマスクデータの付加情報としてのマスクパスワードを取得する。もしも、このマスクパスワードが暗号化されていた場合には、この時点で、コンピュータがマスキングプログラムに設定されたルールに従って復号化する。
次に、ステップS37で、コンピュータは、上記文書データから取得したマスクパスワードと、上記ステップS32で設定した剥がしパスワードとが一致するかどうかを判断し、一致しなければ、ステップS16へ戻るが、両パスワードが一致した場合には、ステップS38へ進む。
【0055】
ステップS37で、パスワードが一致した場合には、コンピュータは、ステップS38で、文書表示プログラムの文書保護設定解除機能を実行して文書データの文書保護設定を解除する。このように、文書保護設定を解除したので、文書データに挿入されたマスクデータの移動や削除が可能になる。そこで、コンピュータは、ステップS39で、ステップS36で特定したマスクデータを文書データから削除する。これにより、文書画面2からは、削除されたマスクデータに対応するマスクパターンM1の表示が消えて、その下に隠されていた文書が表示される。このステップS39の処理も、コンピュータが、マスキングプログラムの処理手順に従って、文書表示プログラムAの機能を実行して行なう処理である。
【0056】
また、ステップS40で、コンピュータは、文書表示プログラムAの機能を実行して、再び、文書保護設定を行なって、文書データを再登録する。従って、他のマスクパターンは移動不可能な状態のまま登録される。なお、文書表示プログラムAの機能を実行して文書データを登録するときには、自動的に文書保護設定機能が実行されるように、マスキングプログラムにプログラムしておく。
そして、他のマスクパターン、例えばマスクパターンM2を削除する場合にも、上記と同様に、上記ステップS16からステップS40までの処理を繰り返す。
【0057】
図10〜図12に示す第2実施形態は、請求項2に記載のマスキングプログラムを実行するコンピュータと、この発明のパスワードを記録した記録媒体であるUSBメモリとを備えたマスキングシステムである。また、上記コンピュータには、上記マスキングプログラムのほかに、OS(operating
system)と、文書データを表示させるとともにマスキングプログラムと連係可能な文書表示プログラムAとを備えている点は上記第1実施形態と同じである。そして、上記OSおよび文書表示プログラムAの機能も第1実施形態と同じである。
【0058】
この第2実施形態のマスキングプログラムが、上記第1実施形態のマスキングプログラムと異なるのは、以下の点である。第1実施形態では、マスキングプログラムによって、文書画面上に表示させるマスキングパターンを予めコンピュータに記憶させてから、ユーザーが、文書上のマスク掛けしたい箇所に応じて、マスクパターンを選択するようにしていたが、第2実施形態では、予め、コンピュータにマスクパターンを記憶させることはしない。ユーザーからマスク範囲特定信号が入力される都度、コンピュータがマスクパターンに対応したマスクデータを生成するようにしている。
【0059】
また、マスク掛けや、マスク剥がし処理の際に、ユーザーが入力するパスワードを、ユーザーの手入力ではなく、パスワードを記録したUSBメモリからコンピュータが読み取るようにしている。これらの点が、第1実施形態とは異なるが、その他は第1実施形態と同じである。従って、以下では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
なお、上記パスワードを記録した記録媒体は、USBメモリに限らず、コンピュータが読み取り可能な記録媒体ならどのような形態のものでもよい。
【0060】
この第2実施形態のシステムでも、上記第1実施形態と同様に、コンピュータのディスプレイに表示された文書上にマスク掛けをすることができる。そこで、この第2実施形態についても、図1に示す文書画面2内の氏名2b、住所2c、電話番号2dおよびクレジットカード番号2eの部分に、図2に示すように不透明なマスクパターンM1を掛けて覆い隠す例を用いて説明する。
【0061】
まず、マスキングプログラムをコンピュータに設定し、コンピュータを待機状態にするまでの手順は、図4に示す第1実施形態と全く同じである。従って、ここでは各手順の説明は省略する。図4の手順によって、マスキングプログラムと文書表示プログラムAとが、連係してコンピュータをマスク掛けおよびマスク剥がし用に機能させることができるようになる。そして、コンピュータは、マスキングプログラムのアイコン11(図1参照)をタスクトレイ3に登録し、図4のステップS7の待機状態になる。
【0062】
また、この第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、上記マスキングプログラムをUSBメモリに記憶させているものとするが、USBメモリ以外の記録媒体、例えばコンパクトディスクなどに記憶させて、それをコンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
さらに、このマスキングプログラムの全ての機能を予めコンピュータにインストールしておくようにしてもよいことは、第1実施形態と同様である。
なお、マスキングプログラムを記憶しているUSBメモリは、上記パスワードを記憶しているメモリとは別のものでも、同じものでもよい。
【0063】
次に、実際に、マスクを掛けたり剥がしたりするための手順を説明する。
まず、マスク掛けの手順を、図10〜図12を用いて説明する。ただし、図10のフローチャートに示す手順は、マスク掛けおよび剥がし作業に共通の処理手順である。
ユーザーは、マスク掛けを行なう場合、マスク掛けの対象となる文書、例えば、図1のように文書画面2を表示させる。なお、上記文書画面2は、上記文書表示プログラムAで表示されているものとする。
【0064】
そして、ユーザーは、上記タスクトレイ3上のマスキングプログラムアイコン11をクリックする。
上記マスキングプログラムアイコン11がクリックされたとき、コンピュータは、図10のステップS7の待機状態から、ステップS51〜ステップS55までの一連の処理を実行する。ただし、上記ステップS51〜ステップS54は、図5のステップS11〜S14と全く同じなので、ここではその説明は省略する。
【0065】
そして、上記ステップS51で、マウスポインタがアイコン11上にない場合、ステップS52でアクティブウインドウが文書表示プログラムAでない場合、ステップS53でマウスが左クリックされていない場合には、それぞれコンピュータの処理はステップS7の待機状態に戻る。つまり、マスキングプログラムアイコン11がクリックされないか、マスク掛け対象となる文書ウインドウがアクティブでない場合には、コンピュータの処理はステップS7に戻る。
【0066】
上記ステップS53で、マウスが左クリックされていた場合には、ステップS54に進み、コンピュータは、文書表示プログラムAで表示された文書ウインドウ、ここでは、図1の文書画面2を表示している位置を特定する。この文書画面2の表示位置は、OSの機能によって特定できる。次に、ステップS55へ進み、マスキングプログラムによってコンピュータが、ディスプレイ1上に作業選択ウインドウを表示させ、ステップS56で作業待機状態となる。
つまり、第2実施形態では、図8に示すマスク準備ウインドウを表示させないが、その代わりに、作業選択ウインドウを表示させる。この作業選択ウインドウは図示していないが、ユーザーが、マスク掛けかマスク剥がしかを選択できるように、「マスク掛け」ボタンや、「剥がし」ボタンを備えたウインドウである。
【0067】
そして、ユーザーが、上記作業選択画面の「マスク掛け」ボタンをクリックするとコンピュータにこの発明のマスク掛け信号が入力され、「剥がし」ボタンをクリックすると、コンピュータにこの発明のマスク解除信号が入力されるようにしている。
このように、上記ステップS55で作業選択ウインドウが表示されたら、ユーザーは、マスク掛けまたはマスク剥がしのいずれかを選択することができる。
【0068】
次に、図1に示す文書画面2内の氏名2b、住所2c、電話番号2dを、マスクパターンM1(図2参照)によって隠す具体的な手順について、図11のフローチャートおよび図12を用いて説明する。
上記文書画面2内の氏名2b、住所2c、電話番号2dに、マスクパターンM1を掛けようとする場合、ユーザーは、次のような操作を行なう。
まず、ユーザーは、パスワードを記録したUSBメモリをコンピュータのUSBポートに差し込んでから、上記作業選択ウインドウの「マスク掛け」ボタンをクリックする。それから、ユーザーは、文書画面2上で、マスク掛けをしたい範囲をマウスで特定する。具体的には、図12に示す文書画面2上のポイントP2からポイントP3までを矢印のようにドラッグする。これにより、二点鎖線で示したマスクパターンM1に対応するマスク範囲が特定され、この範囲に、対応するマスクパターンM1が表示されマスク掛けがされる。
【0069】
このとき、コンピュータは、図11のフローチャートに従った処理を行なう。以下の処理は、コンピュータがマスキングプログラムに従って実行する処理である。
ユーザーが「マスク掛け」ボタンをクリックすると、ステップS61で、コンピュータがマスク掛け信号を受信するとともに、コンピュータは、ステップS62で文書画面2に透明レイヤーを設定する。この透明レイヤーは、上記第1実施形態の透明レイヤー13と同様にマスキングプログラムが管理する座標を有するレイヤーである。また、透明レイヤーの大きさや設定位置は、上記第1実施例と同様に、コンピュータがOSの機能を実行して決定することができる。
【0070】
ユーザーが、文書画面2上で範囲指定をする場合、ユーザーは、ポイントP2でマウスを左クリックしてポイントP3までドラッグして、ポイントP3でマウスを放す。つまり、マウスによって、上記透明レイヤー上で上記ポイントP2,P3を特定することになる。
コンピュータは、ポイントP2上でマウスの左クリックがされた時点と、ポイントP3上でマウスが放された時点で、ディスプレイからコンピュータへ信号が入力される。これらの信号が、ステップS63でコンピュータが受信するマスク範囲特定信号にあたる。なお、コンピュータは、マウス位置をOSの機能を実行することによって特定することができる。
【0071】
また、ステップS64で、コンピュータはUSBメモリからパスワードを読み取って、それをマスクパスワードとして設定する。コンピュータは、マスク掛け信号を受信したら、USBメモリからパスワードを読み取って、それをマスク掛け信号とともに入力されたパスワードとみなし、マスクパスワードとして設定する。なお、透明レイヤーの設定と、パスワードを読み取るステップは、どちらもマスク掛け信号が入力された後に実行されるステップであるが、どちらが先でもかまわない。
【0072】
次に、コンピュータは、受信したマスク範囲特定信号に基づいて、ポイントP2,P3の位置座標を透明レイヤーの座標系で特定し、ステップS65で、上記ポイントP2とP3を対角とする長方形のマスクパターンM1を特定する。ステップS66で、コンピュータは、特定したマスクパターンM1に対応するマスクデータを生成する。このマスクデータは、上記マスク範囲の大きさに対応した不透明なマスクパターンM1を表示させるためのデータである。そして、コンピュータは、マスクデータを生成したら、このデータに対応するマスクパターンM1を透明レイヤー上に表示させる。
【0073】
次に、コンピュータは、ステップS67で、上記マスク範囲特定信号に基づいてマスクパターンに対応する位置を透明レイヤーの(X2,Y2)座標系(図3参照)で特定する。このとき、マスクパターンの位置は、マスクパターン内の代表点の座標で特定する。さらに、ステップS68で、コンピュータは、第1実施形態で説明したように、文書データ内の文書画面2の座標、すなわち、文書データのどの部分が文書画面2に表示されているのかを(x,y)座標系で特定する。
【0074】
次に、コンピュータは、ステップS69で、上ステップS67、S68で特定したマスクパターンの透明レイヤー上の座標と文書画面2の座標とから、マスクデータを挿入すべき文書データ内のマスク位置座標を特定する。このマスク位置座標の特定方法も、上記第1実施形態においてコンピュータが、OSおよび文書表示プログラムAの機能を実行して行なった処理と同じである(図6のステップS24〜S26参照)。
【0075】
以上のステップで、上記マスクデータ、マスク位置座標およびマスクパスワードの特定ができたら、コンピュータは、上記マスクデータを、上記マスク位置座標に挿入してマスクパターンを表示させるとともに、上記マスクデータにマスクパスワードを付加して登録する処理を、文書表示プログラムAの機能を実行して行なう。ただし、文書表示プログラムAは、一旦登録した文書データの変更を誰でもが行なうことができないようにする文書保護設定機能を備えているため、マスクデータを挿入する際にも、この文書保護設定機能を解除する必要がある。
【0076】
そこで、コンピュータは、ステップS70で、文書表示プログラムの文書表示プログラムAが、画面表示している文書データに対し、文書保護設定解除を行なう。上記文書保護設定とは、一旦作成した文書データに変更を加えることができないように設定する文書表示プログラムAが備えている機能である。このステップS70で、上記文書保護設定機能を解除して変更を可能にする。
【0077】
上記のように、コンピュータは、ステップS70で文書保護設定解除をしたら、ステップS71で、ステップS69で特定したマスク位置座標に、先に生成したマスクデータを挿入し、マスクパターンM1を表示させる。また、ステップS72で、コンピュータは、先に設定したマスクパスワードをマスクデータに付加情報として登録する。このとき、コンピュータが、上記マスクパスワードを暗号化して登録するようにしてもよい。
そして、ステップS73で、文書保護設定を行い、貼り付けたマスクパターンM1を移動できないようにして、文書データを登録する。
【0078】
以上のようにして、この第2実施形態でも、マスクパターンM1によって、氏名2b、住所2c、電話番号2dを隠すことができる。同様にして、文書画面2内のほかの部分にも、マスク掛けをすることができる。さらに、このシステムでマスク掛けされたマスクパターンは、文書保護設定によって、移動が禁止されているので、マスクパターンを移動させて隠された文書データを表示させることはできない。
このようにマスク掛けをされた文書データは、図2のように個人情報が隠された状態で表示される。そのため、このデータを、例えば、販売店へ送信する場合にも、送信中や、販売店側で、不特定多数の人に、上記個人情報が見られてしまう心配はない。
なお、マスク掛けした部分の内容を知られてしまうような機能を、上記文書表示プログラムAが備えていた場合には、その機能を禁止する文書保護機能を付加する必要がある点は、上記第1実施形態と同じである。
【0079】
また、この第2実施形態のマスキングプログラムでも、マスク掛けされた状態の画面から、マスクを剥がして文書を表示させることができるが、その手順は、図7のフローチャートに示す第1実施形態と同じである。従って、その手順の説明は省略する。そして、実際にマスク剥がしができるのは、文書作成者や、文書作成者に許可された者など、剥がしパスワードを入力できる、限られた者である点も第1実施形態と同じである。
【0080】
ただし、この第2実施形態では、上記パスワードを、第1実施形態のように、文書作成者から、メールや口頭で伝えられるのではない。文書作成者は、マスク剥がしを許可する者に、自分がマスク掛けのときに用いたパスワードを記録したUSBメモリを渡すようにする。そして、マスク剥がしを行なう者は、上記ステップS56の作業待機状態において、上記作業選択画面から「剥がし」作業を選択するとともに、USBポートに上記USBメモリを接続してコンピュータにパスワードを読み込ませる。つまり、図7のステップS32において、コンピュータが剥がしパスワードとして設定するパスワードはUSBメモリから読み取ったものである。そして、コンピュータは、このステップS32以外は、第1実施形態と全く同じ処理を行なって、文書画面2上のマスクデータを削除し、マスクパターンを剥がすことができる。
【0081】
なお、この第2実施形態のマスキングプログラムは、マスクパターンに対応したマスクデータを予め備えていて、コンピュータに記憶させるのではなく、コンピュータは、ユーザーのドラッグに基づいて、毎回、マスクデータを生成するようにしている。そのため、第1実施形態のように、固定化されたマスクパターンを表示させるのではなく、隠したい文書面積に応じて、適切な大きさのマスクパターンを表示させることができるというメリットがある。
また、マスクパターンを決めるためのマスク範囲特定信号の入力方法として、上記のようにマウスをドラッグするのではなく、上記ポイントP2とポイントP3とを別々にクリックして、マスク範囲を特定するようにしても良い。さらに、特定するポイント数を多くして、四角形以外の多角形のマスクパターンを生成するようにしてもよい。
【0082】
さらに、第2実施形態では、パスワードを専用のUSBメモリに記憶させ、これを持ったユーザーだけが、マスクパスワードや剥がしパスワードを入力できるようにしている。このようにすれば、ユーザーは、パスワードを手入力する手間が省けるとともに、パスワードの入力間違いや、自分で設定したパスワードを忘れてしまうというような心配もなくなる。また、マスキングプログラムとともに、予めパスワードを記録した記録媒体を提供するようにし、記録しているパスワードをユーザーに知らせないようにすれば、パスワードが人づてに知れ渡ってしまう可能性がなく、セキュリティ性が向上する。
ただし、同一パスワードを記録した媒体を複数用意して、マスク剥がしを許可する複数のユーザーに予め渡しておくようにしてもよい。
【0083】
また、このようなパスワードを記録した記録媒体は、第1実施形態のマスキングプログラムのように、マスクパターンを予め記憶しておくマスキングプログラムにも適用できる。反対に、第2実施形態のマスキングプログラムのように、その都度マスクデータを生成するマスキングプログラムを用いるシステムにおいても、パスワードを手入力するようにしてもよい。
【0084】
上記第1、第2実施形態のように、マスク掛けすることによって、文書画面の必要な部分を簡単に隠すことができるとともに、パスワードの設定によって秘密を守ることができる。
なお、この上記第1、第2実施形態では、マスクパスワードと剥がしパスワードとが同一であることが、この発明の、両パスワードの関係として予め設定した対応関係である。ただし、この対応関係は、必ずしも同一でなく、例えば、各パスワードの一部分が一致するとか、両者の和が特定の値になるというような関係を設定してもよい。
【0085】
また、複数のマスク掛けを行なう場合に、全てのマスクデータにそれぞれ異なるパスワードを設定するようにしてもよいし、複数のマスクデータに同一のマスクパスワードを設定するようにしてもよい。
複数のマスクデータに同一のマスクパスワードを設定した場合、一つの剥がしパスワードで複数のマスク剥がしができるようになる。
一方、マスクデータごとに異なるマスクパスワードを設定するようにすれば、特定の剥がしパスワードを与えられた者が、そのパスワードに対応したマスクパターンのみを剥がすことができることになる。
【0086】
また、マスク位置によって秘密のレベルを変えるとともに、剥がしパスワードにもレベルを設けて、剥がせる秘密レベルを異なるようにすることもできる。例えば、秘密レベルが上、中、下とあった場合、剥がしパスワードにも、上、中、下を設定するが、対応するレベルのマスクだけを剥がせるようにするのではなく、最上級の剥がしパスワードは、全秘密レベルのマスクを剥がせるようにし、下級レベルの剥がしパスワードでは、下級レベルの秘密文書を隠したマスクしか剥がせないようにすることができる。
なお、上記第1、第2実施形態では、文書画面上に透明レイヤーを設定して、文書画面上の座標系を利用して、画面上で特定されたポイントに対応するマスク位置座標を特定するようにしているが、この透明レイヤーを設定せずに、ディスプレイ上の座標を利用して、マスク位置座標を特定するようにしてもよい。
【0087】
さらに、この発明のマスキングプログラムを利用したマスク掛けは、上記のような個人情報の保護だけでなく、様々な文書データを隠す際に利用できる。
例えば、コンピュータを使った学習教材として、問題と正解とが含まれた文書データの正解部分をマスクパターンで隠して表示させ、生徒が自分で回答を出してから、マスク剥がしをして答え合わせをできるようにする。ただし、生徒が、初めから正解を見てしまわないように、剥がしパスワードを知らせるタイミングを工夫する必要がある。例えば、出題してから所定時間経過後や、生徒の回答を受け取ってから、剥がしパスワードをメールで送信するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】第1実施形態の文書画面を示した図で、マスク掛けしていない状態である。
【図2】第1実施形態の文書画面を示した図で、マスク掛け後の状態である。
【図3】透明レイヤー、ディスプレイおよび文書画面の位置関係を説明するための模式図である。
【図4】第1実施形態におけるコンピュータの処理手順のうち、マスキングプログラムを設定するまでのステップを示したフローチャートである。
【図5】第1実施形態におけるコンピュータの処理手順のうち、マスキングプログラムを待機状態にするまでのステップを示したフローチャートである。
【図6】第1実施形態におけるコンピュータが、マスクパターンを表示させる処理手順を示したフローチャートである。
【図7】第1実施形態におけるコンピュータが、マスクパターンを削除する処理手順を示したフローチャートである。
【図8】第1実施形態のマスク準備ウインドウを示した図である。
【図9】第1実施形態の文書画面を示した図で、マスク掛けを行なっているところを示している。
【図10】第2実施形態におけるコンピュータの処理手順のうち、マスキングプログラムを待機状態にするまでのステップを示したフローチャートである。
【図11】第2実施形態におけるコンピュータが、マスクパターンを表示させる処理手順を示したフローチャートである。
【図12】第2実形態の文書画面を示した図で、マスク掛けを行なうところを示している。
【符号の説明】
【0089】
1 ディスプレイ
2 文書画面
12 文書データ
13 透明レイヤー
M1,M2 マスクパターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能および文書保護設定を解除する保護設定解除機能とを実現させる文書表示プログラムと相まって機能するマスキングプログラムであって、このマスキングプログラムは、コンピュータに、不透明なマスクをパターン化してなる複数のマスクデータを記憶する機能と、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク選択信号に基づいてその信号に対応するマスクデータを特定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面へのマスクパターンのドラッグアンドドロップ信号に応じて文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記特定したマスクデータを上記特定したマスク位置座標に挿入して対応するマスクパターンを表示させる機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記マスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを実現させるためのマスキングプログラム。
【請求項2】
コンピュータに、文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能および保護設定を解除する文書保護設定解除機能とを実現させる文書表示プログラムと相まって機能するマスキングプログラムであって、このマスキングプログラムは、コンピュータに、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面を介して入力されたマスク範囲特定信号に基づいて、不透明なマスクパターンとなるマスクデータを生成する機能と、上記文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記生成したマスクデータを上記マスク位置座標に挿入してマスクパターンを表示させる機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記特定のマスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを実現させるためのマスキングプログラム。
【請求項3】
コンピュータに、パスワードを記録し、そのパスワードを上記コンピュータで読み取り可能にした記録媒体からマスクパスワードおよび剥がしパスワードを自動的に読み取る機能を実行させる請求項1または2に記載のマスキングシステム。
【請求項4】
文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能と、この文書保護設定を解除する文書保護設定解除機能と、不透明なマスクをパターン化してなる複数のマスクデータを記憶する機能と、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク選択信号に基づいてその信号に対応するマスクデータを特定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面へのマスクパターンのドラッグアンドドロップ信号に応じて文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記特定したマスクデータを上記特定したマスク位置座標に挿入して対応するマスクパターンを表示させる機能と、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記マスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを備えたコンピュータからなるマスキングシステム。
【請求項5】
文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能と、文書保護設定を解除する文書保護設定解除機能と、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面を介して入力されたマスク範囲特定信号に基づいて、不透明なマスクパターンとなるマスクデータを生成する機能と、上記文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記生成したマスクデータを上記マスク位置座標に挿入してマスクパターンを表示させる機能と、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記特定のマスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを備えたコンピュータからなるマスキングシステム。
【請求項6】
パスワードを記録した記録媒体を備えるとともに、上記コンピュータが、上記記録媒体からパスワードを読み取る機能と、読み取ったパスワードをマスクパスワードまたは剥がしパスワードとして設定する機能とを備えた請求項4または5に記載のマスキングシステム。
【請求項1】
コンピュータに、文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能および文書保護設定を解除する保護設定解除機能とを実現させる文書表示プログラムと相まって機能するマスキングプログラムであって、このマスキングプログラムは、コンピュータに、不透明なマスクをパターン化してなる複数のマスクデータを記憶する機能と、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク選択信号に基づいてその信号に対応するマスクデータを特定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面へのマスクパターンのドラッグアンドドロップ信号に応じて文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記特定したマスクデータを上記特定したマスク位置座標に挿入して対応するマスクパターンを表示させる機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記マスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを実現させるためのマスキングプログラム。
【請求項2】
コンピュータに、文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能および保護設定を解除する文書保護設定解除機能とを実現させる文書表示プログラムと相まって機能するマスキングプログラムであって、このマスキングプログラムは、コンピュータに、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面を介して入力されたマスク範囲特定信号に基づいて、不透明なマスクパターンとなるマスクデータを生成する機能と、上記文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記生成したマスクデータを上記マスク位置座標に挿入してマスクパターンを表示させる機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記特定のマスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、上記文書表示プログラムの機能を実行して、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書表示プログラムの機能を実行して、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを実現させるためのマスキングプログラム。
【請求項3】
コンピュータに、パスワードを記録し、そのパスワードを上記コンピュータで読み取り可能にした記録媒体からマスクパスワードおよび剥がしパスワードを自動的に読み取る機能を実行させる請求項1または2に記載のマスキングシステム。
【請求項4】
文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能と、この文書保護設定を解除する文書保護設定解除機能と、不透明なマスクをパターン化してなる複数のマスクデータを記憶する機能と、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク選択信号に基づいてその信号に対応するマスクデータを特定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面へのマスクパターンのドラッグアンドドロップ信号に応じて文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記特定したマスクデータを上記特定したマスク位置座標に挿入して対応するマスクパターンを表示させる機能と、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記マスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを備えたコンピュータからなるマスキングシステム。
【請求項5】
文書データを表示する機能と、表示した文書データ上に画像データを貼り付けて表示する機能と、文書データおよび画像データの変更を禁止する文書保護設定機能と、文書保護設定を解除する文書保護設定解除機能と、マスク掛け信号とともに入力されたパスワードをマスクパスワードとして設定する機能と、マスク掛けを目的とした文書データの表示画面を介して入力されたマスク範囲特定信号に基づいて、不透明なマスクパターンとなるマスクデータを生成する機能と、上記文書データ内のマスクデータを挿入すべきマスク位置座標を特定する機能と、上記生成したマスクデータを上記マスク位置座標に挿入してマスクパターンを表示させる機能と、上記表示したマスクパターンの移動を禁止する文書保護設定を行なう機能と、上記マスクパスワードを上記特定のマスク位置座標に挿入したマスクデータの付加情報として記憶する機能と、マスク解除信号とともに入力されたパスワードを剥がしパスワードとして設定する機能と、入力されたマスク位置特定信号に基づいてすでにマスク掛けされている文書データ上のマスクデータを特定する機能と、この特定されたマスクデータに付加されたマスクパスワードを特定する機能と、このマスクパスワードと上記剥がしパスワードとを対比する機能と、両パスワードが予め設定された対応関係を満たしたときに、上記文書データに挿入された特定のマスクデータを削除する機能とを備えたコンピュータからなるマスキングシステム。
【請求項6】
パスワードを記録した記録媒体を備えるとともに、上記コンピュータが、上記記録媒体からパスワードを読み取る機能と、読み取ったパスワードをマスクパスワードまたは剥がしパスワードとして設定する機能とを備えた請求項4または5に記載のマスキングシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−115228(P2007−115228A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200967(P2006−200967)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(305044279)株式会社アイ・ティー・アイ (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(305044279)株式会社アイ・ティー・アイ (2)
【Fターム(参考)】
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