説明

マスキング塗料及びこのマスキング塗料が塗布されたキャップ

【課題】 ポリウレタンエラストマーから成る密封材を有するキャップに用いられるマスキング塗料およびそのマスキング層であって、ポリウレタンエラストマーの一部を金属製のキャップシェルに非接着乃至弱接着にするためのマスキング塗料およびそのマスキング層を提供することである。
【解決手段】 ポリウレタンエラストマーから成る密封材の一部を金属製キャップシェルに非接着乃至弱接着とするためのマスキング塗料であって、シリコンアクリレートを含有して成ることを特徴とするマスキング塗料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンエラストマーから成る密封材を有するキャップに用いられるマスキング塗料であって、より詳細には、ポリウレタンエラストマーの一部を金属製のキャップシェルに対して非接着乃至弱接着にするためのマスキング塗料に関する。
また本発明はキャップシェルに形成された弱化ラインを破断して開封するタイプのキャップであって、上記マスキング塗料から成るマスキング層が弱化ラインをまたぐ位置に形成されている開封性に優れたキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
キャップには、その密封性を確保するために、少なくとも容器口部が当接する部分にガスケット等の密封材が形成されており、従来のキャップにおいては、適度な弾性を有すると共に加工性に優れていることから、塩化ビニルのプラスチゾルから成る密封材が広く使用されていた。
しかしながら、塩化ビニルはダイオキシン発生の原因となる物質であり、またその加工にはジオクチルフタレート等の人体に有害な可塑剤を利用する場合があり、特に食品用途に使用されるキャップにおいては、その使用を回避することが望まれている。
このような観点から、適度な弾性を有し、優れた機械的強度、耐磨耗性等を有し、しかも生体適合性をも有するポリウレタンエラストマーをキャップの密封材に使用することが知られている(特許文献1)。
【0003】
一方飲料用等に適用されるキャップの形状として、頂板部、頂板部から垂下するスカート部及びスカート部の下端から突出する把持部から成り、少なくとも頂板部及びスカート部には、スカート部下端の把持部付け根近傍からスカート部上端を経て頂板部に至り、次いで頂板部の周縁付近に延びる一対の弱化ラインが形成されているものが知られている。
このようなキャップの開封は、把持部を上方に引き上げ弱化ラインを破断することによりキャップシェルを破壊してキャップを容器口部から取り除くことによって行われるが、弱化ラインの破断を容易に行うためには、少なくとも弱化ラインをまたぐ位置の密封材がキャップシェルと非接着性乃至は弱接着性であることが必要であり、このためかかる部位には密封材とキャップシェルとの間にマスキング塗料(非接着性乃至弱接着性塗料)が設けられている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−193315号公報
【特許文献2】特開平11−115937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の塩化ビニルのプラスチゾルから成る密封材においては、マスキング塗料として一般にアルキド樹脂を主体とする塗料が用いられていたが、塩化ビニルから成る密封材に代わってポリウレタンエラストマーから成る密封材が用いられるキャップにおいては、かかるマスキング塗料ではポリウレタンエラストマーとマスキング層の界面での化学反応または強い界面凝集力により、キャップシェルと密封剤との間を非接着乃至弱接着に維持することができない。また、かかる塗料にポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、シリコンオイル等の滑剤を配合しても、ポリウレタンエラストマーを形成するためのイソシアネートとポリオールとの2液混合後加熱過程において、マスキング層表面の滑材がウレタンエラストマー表面層に移行して、ポリウレタンエラストマーとマスキング層界面での化学反応または強い界面凝集力が発現し、キャップシェルと密封材との間を非接着乃至弱接着に維持することができない。そのために、キャップ開封のために弱化ラインを容易に破断できず開封が困難であったり、或いはキャップがすっぽ抜けてしまい、内容液がこぼれてしまったり、満足する開封性を確保することが困難であった。
【0006】
従って本発明の目的は、ポリウレタンエラストマーから成る密封材を有するキャップに用いられるマスキング塗料およびそのマスキング層であって、ポリウレタンエラストマーの一部を金属製のキャップシェルに非接着乃至弱接着にするためのマスキング塗料およびそのマスキング層を提供することである。
本発明の他の目的は、ポリウレタンエラストマーから成る密封材を有するキャップであって、塩化ビニル、可塑剤の使用がなく環境性及び衛生的特性に優れていると共に、特にキャップシェルを弱化ラインに沿って破断して開封するタイプのキャップにおいて、弱化ラインが容易に破断可能であり、開封性及び密封性に優れたキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ポリウレタンエラストマーから成る密封材の一部を金属製キャップシェルに非接着乃至弱接着とするためのマスキング塗料であって、シリコンアクリレートを含有して成ることを特徴とするマスキング塗料が提供される。
本発明のマスキング塗料においては、
シリコン(メタ)アクリレートを4乃至20重量%、ポリエステル(メタ)アクリレートを20乃至70重量%含有することが好ましい
【0008】
マスキング層の形成方法としては
1.活性エネルギー線照射により硬化されることにより、表面が非接着性乃至弱接着性を有するマスキング層が形成されることが好ましい。
2.活性エネルギー線照射により硬化後、さらに加熱硬化にされることにより、表面に非接着領域乃至着接着領域を有するマスキング層が形成されることが好ましい。
尚、本発明における活性エネルギー線とは、紫外線や電子線などのように分子を電子励起させる放射線をいう。
【0009】
本発明によればまた、金属製キャップシェルと金属製キャップシェル内面に施されたポリウレタンエラストマーから成る密封材から成るキャップにおいて、前記ポリウレタンエラストマー密封材と金属製キャップシェルの間に上記マスキング層から成る非接着領域乃至弱接着領域が形成されていることを特徴とするキャップが提供される。
【0010】
本発明のキャップにおいては、
1.金属製キャップシェルの頂板部内面には、ポリエステル系塗料から成る塗膜が形成されており、マスキング塗料から成る非接着領域乃至弱接着領域が該ポリエステル塗膜とポリウレタンエラストマー密封材の間に形成されていること、
2.キャップシェルが、頂板部、頂板部から垂下するスカート部及びスカート部の下端から突出する把持部から成り、少なくとも頂板部及びスカート部には、スカート部下端の把持部付け根近傍からスカート部上端を経て頂板部に至り、次いで頂板部の周縁付近に延びる一対の弱化ラインが形成されている金属製キャップシェルであり、前記非接着領域乃至弱接着領域が少なくとも把持部側のスカート部上部及び頂板部、並びに頂板部の外周縁であって弱化ラインをまたぐ位置に形成されていること、
3.金属製キャップシェルが、少なくとも容器口部を覆う頂板部が金属製であり、頂板部から垂下するスカート部には容器口部と係合する螺子部或いは螺子形成領域が形成されているキャップシェル、または頂板部とは別部材からなるスカート部に容器口部と係合する螺子部が形成されているキャップシェルであって、前記非接着領域乃至弱接着領域がポリウレタンエラストマー密封材の周縁部に形成されていること、
4.マスキング塗料が紫外線硬化により硬化された後、更に加熱硬化されることにより非接着領域乃至弱接着領域が形成されていること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマスキング塗料は、マスキング塗料を活性エネルギー線照射により硬化させる、もしくは照射後更に加熱硬化させることにより、ポリウレタンエラストマーから成る密封材に対し非接着性乃至弱接着性を有すると共に、金属製キャップシェル頂板部には接着性を有することが可能であり、このため、ポリウレタンエラストマーから成る密封材の一部を金属製キャップシェルに非接着乃至弱接着の状態に保持することができ、スカート部下端から頂板部周縁付近に設けられた弱化ラインを引き裂いて開封するタイプの金属製キャップにおいて、少なくとも把持部側のスカート部上部及び頂板部、並びに頂板部の外周縁であって弱化ラインをまたぐ位置に非接着領域乃至弱接着領域を設けておくことにより、弱化ラインの破断を容易にすることができ、開封性に優れたキャップを提供することが可能になる。
またこのようなマスキング塗料を採用することにより、塩化ビニル及び可塑剤の使用がなく、環境性及び衛生的特性、更に密封性にも優れたポリウレタンエラストマーから成る密封材を上記引き裂きタイプの金属製キャップに適用することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のマスキング塗料は、ポリウレタンエラストマーの一部が金属製キャップシェルに非接着乃至弱接着となるように、ポリウレタンエラストマーと金属製キャップシェルの間に施されるものであり、本発明のマスキング塗料は特にポリウレタンエラストマーとの間に接着性がないことが重要な特徴である。
本発明においては、シリコンアクリレートを含有するマスキング塗料により形成される塗膜が、密封材と成るポリウレタンエラスマーとの間で非接着乃至弱接着である一方、キャップ頂板部を形成する金属素材或いは樹脂被覆又は塗膜が形成された金属素材等には良好な接着性を有することから、金属製キャップシェルと金属製キャップシェル内面に施されたポリウレタンエラストマーから成る密封材の間にかかるマスキング塗料を施すことにより、ポリウレタンエラストマー密封材の金属製キャップシェルからの剥離が容易なキャップを提供することが可能になる。
【0013】
また本発明のマスキング塗料は特に、頂板部、頂板部から垂下するスカート部及びスカート部の下端から突出する把持部から成り、少なくとも頂板部及びスカート部には、スカート部下端の把持部付け根近傍からスカート部上端を経て頂板部に至り、次いで頂板部の周縁付近に延びる一対の弱化ラインが形成されている金属製キャップシェル、及びこのキャップシェルの頂板部内面にポリウレタンエラストマー密封材を施して成るキャップに有効に使用することができる。すなわち、前述した通り弱化ラインを破断することによりキャップを破壊して容器口部からキャップを取り除くタイプのキャップにおいては、少なくとも把持部側のスカート部上部及び頂板部、並びに頂板部の外周縁であって弱化ライン形成位置及びその近傍が非接着乃至弱接着であることにより、弱化ラインを容易に破断することができ、開封性に優れたキャップを提供することが可能になる。
【0014】
本発明のマスキング塗料は、ポリウレタンエラストマーと非接着性乃至弱接着性を有する観点からシリコンアクリレートを必須成分とするラジカル重合により塗膜を形成可能な塗料であり、好適には、シリコンアクリレートの他、ポリエステルアクリレート等の光重合性プレポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤、滑剤、体質顔料等の添加剤、更に必要により光増感剤、熱硬化剤、重合禁止剤等を配合することができる。
【0015】
本発明のマスキング塗料においては、シリコン(メタ)アクリレートを必須の成分とするが、活性エネルギー線照射で十分な硬化塗膜を得るために他のラジカル重合性プレポリマーを配合することが好ましい。ラジカル重合性プレポリマーとしては、従来からUV硬化型インキ塗料に使用されている、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等を用いることができ、特に、ポリエステル(メタ)アクリレートを用いると、イソシアネートとマスキング層表面との反応性が少なく非接着性が良好になるので好ましい。
本発明のマスキング塗料においては、シリコン(メタ)アクリレートを4乃至20重量%、特に7乃至15重量%の範囲、ポリエステル(メタ)アクリレートを20乃至70重量%の範囲で含有することが好ましい。
【0016】
マスキング塗料の塗装適性または印刷適性を向上させるために高分子重合物を紫外線(UV)または電子線(EB)硬化性を損なわない範囲で配合してもよく、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、石油樹脂、ロジンエステル、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ウレタン樹脂、及びアルキッド樹脂などが挙げられる。
【0017】
上記光重合性プレポリマーの光重合開始剤としては、従来公知のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、ミヒラ−ケトン(4−4‘−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン)、ベンジル、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド及びその誘導体等を挙げることができる。光重合開始剤は、マスキング塗料中1乃至15重量%、特に3乃至10重量%の量で配合することが好ましい。
【0018】
本発明のマスキング塗料には従来公知の各種添加剤を配合することができる。
ポリウレタンエラストマーとの剥離性を向上させるために、滑剤を配合することが好ましい。滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、キャンデリラワックス等のワックス系の滑剤、特にポリテトラフルオロエチレンワックスを好適に使用することができる。滑剤はマスキング塗料中2乃至30重量%の量で配合することが好ましい。
【0019】
光重合開始剤と共に光増感剤(助剤)を使用することもでき、光増感剤としては従来公知のアントラキノン類及びその誘導体、尿素類、イオウ化合物、ニトリル類、リン化合物、窒素化合物、塩素化合物などを挙げることができる。光増感剤はマスキング塗料中1乃至5重量%の量で配合することが好ましい。また、公知の安息香酸系重合促進剤やトリエタノールアミンなどの三級アミン系重合促進剤を併用してもよい。
また、マスキング塗料の熱重合の防止や貯蔵安定性を保つために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、p−ベンゾキノン、2,5−t−ブチルハイドロキノン、フェノチアジン等の重合禁止剤を0.05乃至1重量%の量で配合することが好ましい。
【0020】
本発明のマスキング塗料は活性エネルギー線照射によるラジカル重合により硬化されるが、ポリウレタンエラストマーの密封剤層の形成に際して、ポリイソシアネートとポリオールとの2液混合して塗布した後の加熱過程において、ポリイソシアネートとマスキング層表面との化学反応を防ぐために、活性エネルギー線照射後更に加熱硬化させることが好ましく、熱硬化剤、熱硬化触媒を配合することが特に好ましい。好適な熱硬化剤としてはメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂、熱硬化触媒としてはパラトルエンスルホン酸等の有機酸を用いることができる。熱硬化剤はマスキング塗料中1乃至20重量%の量で配合することが好ましい。また熱硬化触媒はマスキング塗料中0.1重量%以下の量で配合することが好ましい。その加熱条件は130℃乃至180℃の温度で5分乃至20分間焼き付けることが好ましい。
更に公知の着色剤、顔料、粘度調整剤等を本発明の効果を損なわない量で配合することが出来る。
【0021】
(マスキング層の形成)
本発明のマスキング塗料は、キャップシェルの頂板部内面にオフセット印刷、フレキソ印刷、パッド印刷等従来公知の印刷方式により転写し、これに紫外線又は電子線を照射して硬化させ、マスキング層を形成する。
上記紫外線硬化に際しては従来公知の低圧又は高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボン・アーク灯などを使用でき、紫外線硬化条件としては、これに限定されず市販のUV照射装置を使用できる。上記電子線硬化に際しては、市販の電子線照射装置を使用できる。
本発明のマスキング塗料は、後述するように、キャップシェルを構成する金属素材に直接施すこともできるが、ポリエステル塗料等から成る保護塗膜が形成された金属素材や樹脂被覆金属板等の被覆金属板に施すことができる。
【0022】
[キャップ]
本発明のキャップは、キャップシェルの頂板部にポリウレタンエラストマーから成る密封材を有し、該ポリウレタンエラストマー密封材とキャップシェル頂板部の内面との間に上記マスキング塗料から成る非接着領域乃至弱接着領域(マスキング層)が形成されて成ることを特徴とするものであるが、特に図1乃至図3に示す形態のキャップとすることが好適である。
図1は本発明のキャップの一例の平面図、図2は図1に示すキャップの側断面図(一部側面図)、図3は図1のX部分の側断面拡大図である。図4は図1に示したキャップにおいてキャップシェルに成形する前の平板の状態を示す平面図である。
図1乃至3に示すように、全体を1で示す本発明のキャップは、頂板部2、頂板部2から垂下するスカート部3、スカート部の下端4から斜め下方に延びる開封のための把持部5から成る金属製のキャップシェル6において、スカート部下端4の把持部付け根近傍7からスカート部上端8を経て頂板部2に至り、次いで頂板部2の周縁付近に延びる一対の弱化ライン9a,9bが形成されている。図1乃至3に示す具体例においては、頂板部2の中央部10がキャップ内方に凹んだ状態になっており、中央部10の外周に位置する環状部分11にポリウレタンエラストマーから成る密封材12が形成され、この環状部分11に容器口部20が当接するようになっている。
また把持部は金属製のキャップシェル6から一体に形成したものに限定されず、スカート部下端から斜め下方に延びるタブに、合成樹脂からなる把持部を一体に設けたものであっても良い。
【0023】
図1乃至図3に示すキャップは、ポリエステル塗料等から成る保護塗膜が形成された金属素材のキャップ内面側と成る面の所定の位置に前記マスキング塗料から成るマスキング層13、及びポリウレタンエラストマーから成る密封材が形成された平板状態に金属素材を打ち抜き(図4に示す状態)、これをプレス成形等することによりキャップに成形される。
図1乃至3に示す態様においては、図4に示すようにマスキング層13(図中、斜線で示す)は、弱化ライン9a,9bをまたぎ且つキャップ成形後頂板部周縁部及びスカート部上部と成る位置に環状に形成されている。
【0024】
本発明のキャップは上述したようなキャップシェルを引き裂くタイプのものに限定されるものでなく、容器口部に螺子係合するタイプのキャップであってもよく、この場合には、マスキング塗料による非接着領域乃至弱接着領域はキャップ頂板部外周縁に設けることが好ましい。これにより、密封材の容器口部への適合性が向上し、キャップの密封性を向上させることが可能になる。特に容器口部にキャップを適用した後、金属製キャップシェルの頂板部外周縁を下方に沈降させて容器口部形状に適合させるタイプのキャップにおいては、密封材の外周縁をマスキング塗料により非接着性及び弱接着性としておくことにより、密封性を顕著に向上することが可能となる。
また上記螺子係合タイプのキャップにおいては、螺子部は予めスカート部に形成されたものや、キャップを容器口部に被せた後、容器の螺子に沿ってスカート部に形成するものや、スカート部下端に設けた複数個のラグなども含むものである。
更に上記螺子係合タイプのキャップにおいて、キャップシェルは金属素材のみから成るものに限定されず、少なくとも容器口部を覆う頂板部が金属製であればよく、頂板部が金属製で、スカート部が合成樹脂から成る複合キャップにも同様に適用できる。
【0025】
(金属製キャップシェル)
本発明のキャップに用いる金属素材としては、従来金属製キャップに用いられている金属素材全てを用いることができ、例えば、これに限定されないが、アルミニウム、アルミニウム合金、各種表面処理鋼板等を挙げることができる。
また前述したように、少なくとも容器口部を覆う部分が金属製の複合キャップにおいて、スカート部を形成し得る合成樹脂としては、従来樹脂製キャップに用いられている合成樹脂を全て用いることができ、例えば、これに限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂を挙げることができる。
本発明のキャップにおいて、金属製キャップシェルの頂板部内面には、ポリエステル系塗料から成る保護塗膜或いはポリエステル樹脂等から成る保護被覆が形成されていることが望ましく、ポリエステルアクリレートを含有するマスキング塗料を使用することにより、かかるマスキング塗料から成るマスキング層が密封材とは非接着性乃至弱接着性を示すと共に、ポリエステル系塗膜とは優れた接着性を有することが可能となるので特に好ましい。
【0026】
(ポリウレタンエラストマー密封材)
本発明のキャップに用いるポリウレタンエラストマーとしては、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて得られる二液型のポリウレタンエラストマーを好適に用いることができ、以下のものを例示することができる。
イソシアネートしては、脂肪族系イソシアネート、脂環式系イソシアネートとしては、水素添加した芳香族系イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート、等が挙げられ、芳香族系ポリイソシアネートしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルエタンジイソシアネート等を挙げることができる。これらの中でも、HDI及び/又はIPDIを好適に使用することができる。
【0027】
ポリオールとしては、具体的には高分子ポリオール、低分子ポリオール又はこれらの混合物であり、物性を選択しやすい点から、高分子ポリオールと低分子ポリオールとの混合物が好ましい。高分子ポリオールとしては、数平均分子量が500以上、好ましくは500〜10000のポリオールであり、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール等を好適に使用できる。低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3‐プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3‐ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ジメチロールヘプタン、ダイマー酸ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、へキサントリオール、クオドロール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、及びこれらの化合物にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得られる数平均分子量500未満の化合物が挙げられる。
本発明におけるポリウレタンエラストマーの合成方法としては、公知のウレタン化反応技術のいずれも使用でき、プレポリマ一法、ワンショット法のいずれであってもよい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中の部は重量部である。
【0029】
表1の処方−1、2、3、4、5に従い、ジアリルフタレート樹脂に重合禁止剤を添加して、ポリエステルアクリレートまたはポリエーテルアクリレートを攪拌機により攪拌しながら加熱溶解させる。各処方量を攪拌機により均一混合後、3本ロールミルにより分散してマスキング塗料を作製した。
【0030】
【表1】

【0031】
表1中の成分は以下記載のものである。
シリコンアクリレート:ダイセルユーシービー(株)社製 EBECRYL 350
ポリエステルアクリレート:ペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート
東亜合成(株)社製 M−402
ポリエーテルアクリレート:トリプロピレングリコールジアクリレート
東亜合成(株)社製 M−402
ジアリルオルソフタレート樹脂:ダイソー(株)製 重量平均分子量 15,000
PTFE:微粒ポリテトラフルオロエチレンワックス 平均粒径 5μm
光開始剤:チバスペシャルティケミカル社製 ダロキュア1173
メラミン樹脂:三井サイテックス(株)社製 サイメル303
【0032】
アルミニウム板の表面にポリエステル系ニスを塗布し、オーブンで加熱して接着層を形成した。この上記接着層上の必要箇所に表1の処方−1乃至処方−4に示すマスキング塗料をローラで塗布した後、これを単位長さ当たりの出力が160Wの高圧水銀ランプ1灯を内蔵する集光型ミラー、照射距離15cmのランプハウス内をコンベアースピード60m/minの条件下で通過させて、マスキング層を形成した(実施例1〜4)。
また、実施例2で得られたマスキング層付きアルミニウム板をさらにオーブンを用いて150℃で10分間焼き付けた(実施例5)。
次いで、これら5種類のマスキング層付きアルミニウム板上にポリウレタンエラストマーからなる密封材を塗布し、加熱して樹脂層を形成し、樹脂層付アルミニウム板の形成を行った。
この樹脂層付アルミニウム板の樹脂層の引張強度を市販の引張試験機「TENSILON RTA−500」により(50mm/分)にて測定した。上記の通りの測定を各10個の樹脂層付アルミニウム板について遂行し、下記表2に示す剥離強度の結果を得た。
【0033】
また、この樹脂層付アルミニウム板を使用してセロテープ剥離試験を行い、試験後のマスキング層を観察してマスキング層の密着性を判定し、下記表2に示すインキ密着性の結果を得た。
次いで、先のアルミニウム板を使用して、図1〜3に示した形状の外径53mmのキャップを成形し、ポリウレタンエラストマーからなる密封材を形成させた。次いで、このマキシキャップを使用して60℃20%のエタノール水溶液を注入した広口瓶を密封した。このキャップのリング状把持部を保持しガラス瓶から剥ぎ取る際の開栓力を測定し、下記表2に示す開栓力の結果を得た。
【0034】
(比較例)
比較のために、表1の処方−5に示すシリコンアクリレートを含まないマスキング塗料を用いて実施例と同様な方法によって10個の樹脂層付アルミニウム板を製作し、実施例の場合と同様な測定を遂行した。その結果を下記表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
キャップシェルとポリウレタンエラストマー密封材との間にシリコンアクリレートを含むマスキング層を形成することにより、開栓性の良好なキャップを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のキャップの一例の平面図である。
【図2】図1に示すキャップの側断面図(一部側面図)
【図3】図2のX部分の拡大図である。
【図4】図1に示したキャップにおいてキャップシェルに成形する前の平板の状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 キャップ、2 頂板部、3 スカート部、4 スカート部下端、5 把持部5、
6 キャップシェル、7 把持部付け根近傍、8 スカート部上端、9 弱化ライン、
10 頂板部中央部、11 環状部分、12 密封材、13 マスキング層、
20 容器口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンエラストマーから成る密封材の一部を金属製キャップシェルに非接着乃至弱接着とするためのマスキング塗料であって、シリコンアクリレートを含有して成ることを特徴とするマスキング塗料。
【請求項2】
シリコン(メタ)アクリレートを4乃至20重量%、ポリエステル(メタ)アクリレートを20乃至70重量%含有する請求項1記載のマスキング塗料。
【請求項3】
請求項1又は2記載のマスキング塗料を紫外線又は電子線照射により硬化することにより形成される、表面が非接着乃至弱接着性を有するマスキング層。
【請求項4】
請求項1又は2記載のマスキング塗料を紫外線又は電子線照射後、さらに加熱硬化することにより形成される、表面が非接着乃至弱接着性を有するマスキング層。
【請求項5】
金属製キャップシェルと金属製キャップシェル内面に施されたポリウレタンエラストマーから成る密封材から成るキャップにおいて、前記ポリウレタンエラストマー密封材と金属製キャップシェルの間に請求項3又は4記載のマスキング層から成る非接着領域乃至弱接着領域が形成されていることを特徴とするキャップ。
【請求項6】
前記金属製キャップシェルの頂板部内面には、ポリエステル系塗料から成る塗膜が形成されており、マスキング層から成る非接着領域乃至弱接着領域が該ポリエステル塗膜とポリウレタンエラストマー密封材の間に形成されている請求項5記載のキャップ。
【請求項7】
前記金属製キャップシェルが、頂板部、頂板部から垂下するスカート部及びスカート部の下端から突出する把持部から成り、少なくとも頂板部及びスカート部には、スカート部下端の把持部付け根近傍からスカート部上端を経て頂板部に至り、次いで頂板部の周縁付近に延びる一対の弱化ラインが形成されている金属製キャップシェルであり、前記非接着領域乃至弱接着領域が少なくとも把持部側のスカート部上部及び頂板部、並びに頂板部の外周縁であって弱化ラインをまたぐ位置に形成されている請求項5又は6記載のキャップ。
【請求項8】
前記金属製キャップシェルが、少なくとも容器口部を覆う頂板部が金属製であり、頂板部から垂下するスカート部には容器口部と係合する螺子部或いは螺子形成領域が形成されているキャップシェル、または頂板部とは別部材からなるスカート部に容器口部と係合する螺子部が形成されているキャップシェルであって、前記非接着領域乃至弱接着領域がポリウレタンエラストマー密封材の周縁部に形成されている請求項5又は6記載のキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−241290(P2006−241290A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58347(P2005−58347)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【出願人】(592057961)マツイカガク株式会社 (8)
【Fターム(参考)】