説明

マスクの製造方法

【課題】歩留まりの低下を抑制できるマスクの製造方法を提供すること。
【解決手段】実施形態のマスクの製造方法は、被処理基板上に転写するべきデバイスパターンに対応するパターン面を含むパターン面を基板に形成する工程(S1)を含む。次に、前記パターン面を液体により処理する工程を行う(S3)。この工程(S3)において、前記パターン面のうち修正が不要である領域は第1の条件で液体により洗浄し、前記パターン面のうち修正が必要である領域は前記第1の条件と異なる第2の条件で液体により修正することを含む。また、前記修正は、前記マスクパターンの前記被処理基板上への転写特性に影響を及ぼす、前記パターン面に係る物理パラメータの修正である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造に使用されるマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のリソグラフィ工程で使用するフォトマスクは、パターン寸法、透過率等の物理パラメータの精度を管理する必要がある。フォトマスクを用いて一定の領域上にパターンを転写するためには、これらの物理パラメータは当該領域内で所定の均一性を保つ必要がある。
【0003】
フォトマスクの作製が完了した後、フォトマスクの出荷検査の段階で物理パラメータの分布は測定される。この分布が所定の均一性に達していないフォトマスクは、被転写基板上のパターンの均一性に影響を及ぼすために廃棄される。
【0004】
半導体素子の微細化がすすむと、物理パラメータの分布が満たすべき均一性の値は厳しくなるため、マスクの製造歩留まりが低下する。製造歩留まりの低下はフォトマスクのコスト上昇につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−295840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、歩留まりの低下を抑制できるマスクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のマスクの製造方法は以下を含む。被処理基板上に転写するべきデバイスパターンに対応するマスクパターンを含むパターン面を基板に形成する。次に、前記パターン面を液体により処理する工程を行う。この工程において、前記パターン面のうち修正が不要である領域は第1の条件で液体により洗浄し、前記パターン面のうち修正が必要である領域は前記第1の条件と異なる第2の条件で液体により修正することを含む。また、前記修正は、前記パターン面の前記被処理基板上への転写特性に影響を及ぼす、前記パターン面に係る物理パラメータの修正である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態のマスクの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】図2は、第1の実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中のマスクを上から見た図である。
【図3】図3は、図2に続く第1の実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中のマスクを上から見た図である。
【図4】図4は、図3に続く第1の実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中のマスクを上から見た図である。
【図5】図5は、図4に続く第1の実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中のマスクを上から見た図である。
【図6】図6は、図5に続く第1の実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中のマスクを上から見た図である。
【図7】図7は、図6に続く第1の実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中のマスクを上から見た図である。
【図8】図8は、図7に続く第1の実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中のマスクを上から見た図である。
【図9】図9は、図8に続く第1の実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中のマスクを上から見た図である。
【図10】図10は、図9に続く第1の実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中のマスクを上から見た図である。
【図11】図11は、図10に続く第1の実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中のマスクを上から見た図である。
【図12】図12は、実施形態で使用する洗浄用のノズルを模式的に示す図である。
【図13】図13は、ノズル圧力とマスクパターンの寸法変化量/secとの関係の一例を示す図である。
【図14】図14は、第2の実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中のマスクを上から見た図である。
【図15】図15は、第3の実施形態のマスクの製造方法を説明するための図である。
【図16】図16は、第4の実施形態のマスクの製造方法を説明するための図である。
【図17】図17は、第4の実施形態のマスクの製造方法が適用されるマスクの一例を示す図である。
【図18】図18は、第5の実施形態のマスクの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
光リソグラフィで使用される透過型マスクおよびEUVリソグラフィで使用される反射型マスクのさまざまな物理パラメータ(例えば、マスク寸法、位相シフト量、透過率、ギャップ層膜厚、反射率)は、洗浄工程で変化を生じる。そのため、洗浄回数には上限が設けられている。本実施形態は、上記の洗浄工程で光学パラメータが変化する現象(従来は不都合であると考えられている現象)をマスク修正(パターン面の被処理基板(例えば、ウエハ)上への転写特性の均一性向上)に積極的に利用する。
【0011】
以下はフォトマスク(透過型マスク)を想定した説明であるが、EUVマスク等の反射型マスクの場合も同様に実施できることは当業者であれば明らかであろう。
【0012】
図1は、本実施形態のマスクの製造方法を説明するためのフローチャートである。図2−図11は、本実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中(出荷前)のマスクを上から見た図である。実施形態のマスクは例えば2Xnm世代以降のデバイス(例えばNANDフラッシュメモリ)の製造に使用される。
【0013】
[図2、ステップS1]
周知の方法により、透明基板1上に、被処理基板上に転写するべきデバイスパターンに対応するマスクパターンを含むパターン面2を形成する。以下、パターン面2が形成された透明基板1をマスクという。
【0014】
パターン面2を形成する工程は、例えば、透明基板1上に遮光膜を形成する工程と、遮光膜上にレジスト膜を形成する工程と、電子線ビーム(EB露光)を用いてレジスト膜にパターン(上記マスクパターンに対応するパターン)を描画する工程と、レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンをマスクにして遮光膜をRIE(Reactive Ion Etching)プロセスによりエッチングする工程とを含む。
【0015】
本実施形態では、パターン面2の形状は矩形とし、パターン面2上の位置はX−Y直交座標で特定されるとする。X軸はパターン面2の横辺に平行な軸であり、Y軸はパターン面2の縦辺に平行な軸である。なお、パターン面2の形状は矩形には限定されず、また、座標系はパターン面2の形状に合わせて適宜変更しても構わない。
【0016】
[図3、ステップS2]
周知の方法(装置)を用いて、パターン面2内のマスク寸法(パターン面に係る物理パラメータ)としてCD(Critical Dimension)値の分布を取得する(面内分布測定)。本実施形態では、CD値が規定値(許容値)からずれている領域(修正領域)3が、パターン面2の中央部の破線で囲まれた領域として説明する。規定値は、例えば、20nmである。修正領域3のCD値は、例えば、21nmである。
【0017】
本実施形態では、図12に示すように、薬液10を吐出できるノズル11を用いて洗浄および寸法修正を行う。ノズル11は薬液10が吐出される吐出口を具備する。本実施形態はノズル数が1の場合であるが、複数のノズルを用いても構わない。
【0018】
パターン面2(マスク)とノズル11との相対的な位置をずらしながら、パターン面2に向けてノズル11から薬液10を吐出することにより、洗浄および寸法修正は行われる。マスクを載置するX−Yステージを動かすことにより、ノズル11を図示しない装置を動かすことにより、または、それらの両方を動かすことにより、マスクとノズル11との相対的な位置はずらすことができる。以下の説明では、ノズル11を動かすとする。
【0019】
吐出口のサイズ(例えば直径で規定される)は、修正領域3の大きさ(例えば面積で規定される)によって決まる。一般には、修正領域3が小さいほど吐出口のサイズも小さくなる。
【0020】
[図4−図12、ステップS3]
ステップS3は、パターン面2に対して薬液処理(洗浄、修正)を行う工程である。
【0021】
図4−図6は、パターン面2のうち、修正領域3よりも下の領域で、X方向のスキャンにおいて修正領域3が存在しない領域(非修正領域)に対して薬液処理(洗浄)を行う様子を示している。この非修正領域内のCD値は規定値内に収まっているので、非修正領域の薬液処理は洗浄を目的とする処理である。
【0022】
非修正領域の薬液処理(洗浄)は、予め取得しておいた処理シーケンス1に基づいて行われる。処理シーケンス1は、言い換えれば、ノズル11が非修正領域上に位置する時の処理条件であって、使用する薬液(洗浄液)、ノズル11から吐出される薬液の圧力(ノズル圧力)、ノズル11のスキャンなどを規定している。
【0023】
ノズル11のスキャンは、例えば、図4−図6に示す通りである。まず、図4に示すように、矩形のパターン面2の左隅下から、X軸に沿って左から右にノズル11をスキャンする(右方向スキャン)。ノズル11が右端に到達したら、図5に示すように、ノズル11を上の方向(Y方向)に一定量だけシフト(上シフト)させ、その後、X軸に沿って右から左にノズル11をスキャンさせる(左方向スキャン)。以下、同様に、図6に示すように、修正領域3に達する直前まで、上シフト、右方向スキャン、上シフト、左方向スキャン・・・を繰り返す。ノズル11をスキャンしている最中、ノズル11からは薬液(例えば、アンモニア液)がパターン面2に向かって吐出している。
【0024】
図13は、ノズル圧力と、マスクパターンの寸法変化量(ΔCD)/secとの関係を示す図である。図13に示すように、ノズル圧力の増加に伴い単位時間当たりの寸法変化量は大きくなる。非修正領域の洗浄工程中に、非修正領域のCD値が規定値を超えては困る。したがって、図13に示す関係を予め取得し、非修正領域を洗浄するときに、非修正領域のCD値が規定値内に収まるノズル圧力を予め決定しておく。
【0025】
図7−図10は、パターン面2のうち、X方向のスキャンにおいて修正領域3が存在する領域であり、ノズル11の吐出口の位置が、非修正領域(図7)の上、修正領域3(図8)の上、非修正領域(図9)の上の順で変化する領域(修正/非修正領域)に対して薬液処理(洗浄、修正)を行う様子を示している。
【0026】
なお、ノズル11が、非修正領域と修正領域3との境界近くにある場合、ノズル11の吐出口は、非修正領域と修正領域3とにオーバーラップする。この場合、例えば、オーバーラップする領域の面積が大きい方をノズル11の吐出口の位置とする。
【0027】
非修正領域(図7)に対しての薬液処理(洗浄)は、図4−図6の場合と同様に、処理シーケンス1に基づいて行われる。
【0028】
非修正領域(図7)に対しての薬液処理(洗浄)の終了後、修正領域3(図8)に対しての薬液処理(修正、洗浄)が行われる。修正領域3内のCD値は規定値外なので、非修正領域の薬液処理は、主としてCD値(パターン寸法)を修正するための処理となるが、洗浄が全く行われない訳ではない。
【0029】
修正領域3の薬液処理は、予め取得しておいた処理シーケンス2に基づいて行われる。処理シーケンス2は処理シーケンス1とは異なる。処理シーケンス1は洗浄に適した条件を有するが、処理シーケンス2は修正に適した条件を有する。
【0030】
処理シーケンス2は、言い換えれば、ノズル11が修正領域3上に位置する時の処理条件であって、使用する薬液(修正液)、ノズル11から吐出される薬液の圧力(ノズル圧力)、ノズル11のスキャンなどを規定している。
【0031】
処理シーケンス2におけるノズル11のスキャンは、例えば、図8に示すように、右方向スキャンである。
【0032】
処理シーケンス2におけるノズル圧力は、規定のCD値(CD0)と修正領域3のCD値(CD1)との差(ΔCD=CD1−CD0)、および、図13に示したグラフに基づいて予め決定されている。図13には数値は示されてないが、例えば、CD0=20nm、CD1=21nmの場合、ノズル圧力は1MPaとなる。
【0033】
ノズル11から吐出される薬液は、例えば、アンモニア液である。本実施形態では、非修正領域の薬液処理と同じ薬液を修正領域の薬液処理で使用するが、両者は異なっていても構わない。薬液としては、アンモニアの他に、硫酸、過酸化水素、IPA(イソプロピルアルコール)などが使用可能である。
【0034】
修正領域3の後にX方向に続く非修正領域(図9)の薬液処理(洗浄)は、図7の非修正領域の薬液処理(洗浄)と同様に処理シーケンス1に基づいて行われる。
【0035】
ノズル11が右端に到達したら、図10に示すように、ノズル11を上シフトさせ、その後、ノズル11を左方向スキャンさせる。修正領域3に達する直前までは図7と同様に処理シーケンス1に基づいて薬液処理(洗浄)が行われ、修正領域3をスキャンする時は図8と同様に処理シーケンス2に基づいて薬液処理(修正)が行われ、そして、修正領域3を通過した後は図9と同様に処理シーケンス1に基づいて薬液処理(洗浄)が行われる。以下、同様に、X方向のスキャンにおいて修正領域3が存在する間は、処理シーケンス1に基づいた薬液処理(洗浄)と処理シーケンス2に基づいた薬液処理(修正)とが交互に繰り返される。
【0036】
[ステップS4]
薬液処理後、パターン面2内のCD値の分布が再び取得される(再面内分布測定)。
【0037】
[ステップS5]
取得された面内のCD値が仕様を満たすか否かが判断される。
【0038】
[ステップS6]
ステップS5の判断の結果、仕様を満たさない場合(No)には、そのマスクは破棄されか、または、ステップS3の薬液処理による修正が再び行われる(再修正)。
【0039】
[ステップS7]
ステップS5の判断の結果、仕様を満たす場合(Yes)には、そのマスクは出荷される。
【0040】
かくして本実施形態によれば、ノズルの位置に応じてノズルから突出される薬液の圧力(ノズル圧力)を変えるという処理シーケンスを採用することにより、パターン面の洗浄工程時に、寸法修正工程(寸法の均一性の向上)を同時に行えるようになるので、工程数の増加を招かずに、マスクの製造歩留まりの低下を抑制できるマスクの製造方法を実現できるようになる。また、本実施形態の修正工程は薬液を用いたものなので、FIB(Focus Ion Beam)等の物理的な方法を用いた場合に比べてスループットが高い。
【0041】
なお、本実施形態では、ノズルの位置に応じてノズル圧力を変えるという処理シーケンスを採用したが、ノズルの位置に応じてノズルから突出される薬液の流量を変えるという処理シーケンスを採用しても構わない。
【0042】
ノズル11から吐出される薬液の量流については、例えば、ノズル圧力の場合と同様に、流量と単位時間当たりの寸法変化量との関係を予め取得し、処理シーケンス1の流量を決める。この場合、使用する薬液を考慮して処理シーケンス1の流量を決めても構わない。より洗浄力の強い薬液を使用すれば、一般には、流量は小さくて済むからである(流量以外のノズル圧力等の条件は同じ)。
【0043】
さらに、ノズルの位置に応じてノズル圧力および流量を変えるという処理シーケンスを採用しても構わない。この場合、より細かな修正が可能となる。
【0044】
さらに、ノズルの位置に応じて薬液の種類を変えるという処理シーケンスを採用しても構わない。例えば、ノズルの位置が修正領域上の場合にアンモニア水、ノズルの位置が非修正領域上の場合に純水とする。
【0045】
さらに、ノズルの位置に応じてノズル圧力、流量および薬液の少なくとも一つを変えるという処理シーケンスを採用しても構わない。
【0046】
さらに、複数のノズルを用いる場合には、一本のノズルを用いる場合と同様に、各ノズルの位置に応じてノズルから突出される薬液の圧力(ノズル圧力)等を変えるという処理シーケンスを採用することにより、ノズル数が1の場合と同様に実施できる。
【0047】
また、本実施形態では、マスクの転写特性に影響を及ぼすパターン面における物理パラメータとしてパターン寸法を例にあげて説明したが、上記物理パラメータは、透過率、反射率、遮光率または位相シフト量でも構わない。これらの物理パラメータの場合もパターン寸法の場合と同様に、面内分布を予め取得しておき、その面内分布に応じてノズルから突出される薬液の種類、圧力および流量の少なくとも一つを変えればよい。さらに、パターン寸法、透過率、反射率、遮光率および位相シフト量の少なくとも二つでも構わない。
【0048】
(第2の実施形態)
図14は、第2の実施形態のマスクの製造方法を説明するための製造中のマスクを上から見た図である。なお、以下の図において、既出の図と対応する部分には既出の図と同一符号を付してあり、詳細な説明は省略する。
【0049】
第1の実施形態は修正領域3内のCD値は全て同じ値(例えば21nm)という例であったが、本実施形態は、修正領域3内のCD値に分布がある例である。
【0050】
具体的には、修正領域3の中央部の円形領域(第1の修正領域)31のCD値と、その外側の輪帯領域領域(第2の修正領域)32のCD値と、最外周の輪帯領域領域(第3の修正領域)33のCD値とが異なっている例である。
【0051】
この場合、第1の修正領域31の薬液処理の条件と、第2の修正領域32の薬液処理の条件と、第3の修正領域33の薬液処理の条件と、修正領域の薬液処理の条件とは互いに異なる。言い換えれば、ノズルの位置が、第1の修正領域31、第2の修正領域32、第3の修正領域33または非修正領域かによって、処理シーケンスが異なる。
【0052】
第1の修正領域31のCD値をCD1、第2の修正領域32CD値をCD2、第3の修正領域33CD値をCD3とし、CD1>CD2>CD3の場合であれば、例えば、第1の修正領域31のノズル圧力が一番大きく、第2の修正領域32のノズル圧力が二番目に大きく、そして、第3の修正領域33のノズル圧力が一番小さくなる。非修正領域のノズル圧力は例えば第1の実施形態と同じである。
【0053】
薬液の流量の違いで修正の程度を制御する場合も同様である。すなわち、第1の修正領域31の流量が一番多く、第2の修正領域32の流量が二番目に多く、そして、第3の修正領域33の流量が一番少ない。
【0054】
第1−第3の修正領域31−33のCD値は幅を持っていても構わない。例えば、第1の修正領域31のCD値はCD1a〜CD1bの範囲、第2の修正領域32のCD値はCD2a〜CD2bの範囲、第3の修正領域33のCD値はCD3a〜CD3bの範囲である。大小関係は、CDa<CD1b<CD2a<CD2b<CD3a<CD3bである。
【0055】
本実施形態では、修正領域3が三つの分布を有する場合について説明したが、四つ以上の分布を有する場合も同様である。
【0056】
(第3の実施形態)
図15は、第3の実施形態のマスクの製造方法を説明するための図である。
【0057】
本実施形態が第1および第2の実施形態と異なる点は、液体41(第2の液体)中で、ステップS3(薬液処理(洗浄、修正))を行うことにある。液体41は、例えば、純水である。図15において、42は液体41を入れる容器を示している。
【0058】
ノズル11の吐出口から吐出された薬液10は、吐出口の直下のパターン面2aに供給される。薬液10(第1の液体)は、パターン面2aの近傍で飛散したり、パターン面2aから流出する可能性がある。そのため、薬液10は、さらに、吐出口の周辺のパターン面2b(所定領域以外の領域)に供給される可能性がある。これは洗浄や修正に影響を与える。
【0059】
そこで、本実施形態では、液体41中で、ステップS3(薬液処理(洗浄、修正))を行う。液体41の存在により、薬液10の飛散や流出は起こりにくくなる。また、薬液10の飛散や流出が起こっても、パターン面2b上の薬液10は液体41で薄まるので、所定領域以外の領域に供給される薬液10の影響は軽減される。
【0060】
なお、液体41にマスクを浸してマスク全体を洗浄した後(洗浄工程後)に、ノズル11から薬液を突出させて修正工程だけを行っても構わない。
【0061】
(第4の実施形態)
図16は、第4の実施形態のマスクの製造方法を説明するための図である。
【0062】
本実施形態が第3の実施形態と異なる点は、容器内42内に薬液10を入れ、ノズルから液体41を吐出させて、洗浄および修正を行うことにある。
【0063】
図17は、このような洗浄および修正が有効なマスクの一例を示す。このマスクの場合、中央が非修正領域、それ以外が修正領域3となっている。なお、非修正領域の位置は中央には限定されず、パターン面2内のどこにあっても構わない。
【0064】
本実施形態によれば、ノズルから吐出された液体41(例えば純水)により非修正領域を洗浄すると同時に、容器内42内の薬液10により修正領域3の全体を一度に修正できるので、洗浄および修正に要する時間を短縮できるようになる。
【0065】
(第5の実施形態)
図18は、第4の実施形態のマスクの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0066】
第1の実施形態では、パターン面2のCD値の面内分布(マスク面内分布)を取得し、そのマスク面内分布を許容値(ターゲット値)と照らし合わせて、ノズル11下の領域が修正領域または非修正領域であるかを判断した。
【0067】
本実施形態では、作成したマスク(ステップS1)を用いて、被処理基板の露光を行い(ステップS12)、測定により被処理基板上に形成されたパターンの寸法の分布(被処理基板の面内分布)を取得し(ステップS2’)、その被処理基板の面内分布の結果に基づいて、パターン面を修正領域と非修正領域とに分けて異なる条件の薬液処理を行う(ステップS3)。ステップS3の後は、被処理基板の面内分布を再度取得する(ステップ42’)。その後のステップS6,S7は第1の実施形態と同じである。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1…透明基板、2,2a,2b…パターン面、3…修正領域、10…薬液(第1の液体)、11…ノズル、31…第1の修正領域、32…第2の修正領域、33…第3の修正領域、41…液体(第2の液体)、42…容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板上に転写するべきデバイスパターンに対応するマスクパターンを含むパターン面を基板に形成する工程と、
前記パターン面に係る物理パラメータを測定し、前記パターン面における前記物理パラメータの分布を取得する工程と、
前記パターン面に向けてアンモニア水、純水、硫酸、過酸化水素水またはイソピルアルコールの第1の液体を吐出するノズルを用いて行われ、かつ、前記ノズルと前記パターン面との相対的な位置をずらしながら、前記ノズルから前記パターン面に向けて前記第1の液体を吐出することにより、前記パターン面を前記第1の液体により処理する工程であって、前記ノズルから吐出される前記第1の液体とは異なる第2の液体中に前記マスクを浸した状態で、前記パターン面のうち修正が不要である領域上に前記ノズルが存在する時は第1の条件で前記第1の液体により洗浄し、前記パターン面のうち修正が必要である領域上に前記ノズルが存在する時は前記第1の条件と異なる第2の条件で前記第1の液体により修正することを含み、前記第1の条件と前記第2の条件とは、前記ノズルから突出される前記第1の液体の種類、圧力および流量の少なくとも一つが異なっており、前記修正は、前記パターン面の前記被処理基板上への転写特性に影響を及ぼす、前記パターン面に係るパターン寸法、透過率、遮光率および位相シフト量の少なくとも一つを含む物理パラメータの修正である前記工程とを含み、
前記パターン面を前記液体により処理する工程において、前記取得した物理パラメータの分布を前記パターン面における前記物理パラメータの許容値と照らし合わせて修正が不要である判断された領域については、前記第1の条件で前記第1の液体により洗浄し、修正が必要である領域と判断された領域については、前記第2の条件で前記第1の液体により洗浄することを特徴とするマスクの製造方法。
【請求項2】
被処理基板上に転写するべきデバイスパターンに対応するマスクパターンを含むパターン面を基板に形成する工程と、
前記パターン面を液体により処理する工程であって、前記パターン面のうち修正が不要である領域は第1の条件で液体により洗浄し、前記パターン面のうち修正が必要である領域は前記第1の条件と異なる第2の条件で液体により修正することを含み、前記修正は、前記パターン面の前記被処理基板上への転写特性に影響を及ぼす、前記パターン面に係る物理パラメータの修正である前記工程と、
を含むことを特徴とするマスクの製造方法。
【請求項3】
前記パターン面に係る物理パラメータを測定し、前記パターン面における前記物理パラメータの分布を取得する工程をさらに含み、
前記パターン面を液体により処理する工程において、前記取得した物理パラメータの分布を前記パターン面における前記物理パラメータの許容値と照らし合わせて修正が不要である判断された領域については、前記第1の条件で液体により洗浄し、修正が必要である領域と判断された領域については、前記第2の条件で液体により洗浄することを特徴とする請求項2に記載のマスクの製造方法。
【請求項4】
前記パターン面を液体により処理する工程は、前記パターン面に向けて液体を吐出するノズルを用いて行われ、かつ、前記ノズルと前記パターン面との相対的な位置をずらしながら、前記ノズルから前記パターン面に向けて前記液体を吐出することを特徴とする請求項2または3に記載のマスクの製造方法。
【請求項5】
前記パターン面を液体により処理する工程は、前記修正が不要である領域上に前記ノズルが存在する時と、前記修正が必要である領域上に前記ノズルが存在する時とで、前記ノズルから吐出される前記液体の条件を変えることを含むことを特徴とする請求項4に記載のマスクの製造方法。
【請求項6】
前記ノズルから吐出される前記液体の条件を変えることは、前記ノズルから吐出される前記液体の種類、圧力および流量の少なくとも一つを変えることであることを特徴する請求項5に記載のマスクの製造方法。
【請求項7】
前記パターン面を液体により処理する工程の後に、前記パターン面における前記物理パラメータの分布を再び取得し、この再び取得した前記物理パラメータの分布を前記許容値と照らし合わせて、前記パターン面が正しく修正された否かを決定する工程をさらに含むことを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1項に記載のマスクの製造方法。
【請求項8】
前記パターン面を液体により処理する工程は、前記ノズルから吐出される液体とは異なる液体中に前記マスクを浸した状態で行うことを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項に記載のマスクの製造方法。
【請求項9】
前記パターン面に係る物理パラメータは、パターン寸法、透過率、遮光率および位相シフト量の少なくとも一つであることを特徴とする請求項2ないし8のいずれか1項に記載のマスクの製造方法。
【請求項10】
前記パターン面を液体により処理する工程において、前記液体は、アンモニア水、純水、硫酸、過酸化水素水またはイソピルアルコールであることを特徴とする請求項2ないし9のいずれか1項に記載のマスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−73049(P2013−73049A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212334(P2011−212334)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】