説明

マスクアセンブリ

【課題】マスクとフードとが一体になったマスクアセンブリに対して、フードがマスクの前後にずれ動くことがないように改良を施す。
【解決手段】マスクアセンブリ1がマスク2とフード3とからなる。マスク2は、その周縁部の外面にマスク2を一周するリブ21を有し、フード3は、マスク着用者の顔を露出させる開口22の縁を形成する環状部材23を有する。環状部材23の内周面は、リブ21に対して離脱可能に嵌合する溝を成す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフルフェイス型のマスクとこれに着脱可能なフードとからなるマスクアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
口許と鼻孔の周辺と両眼の周辺とを覆うことが可能であるとともに、吸排気可能に形成されているフルフェイス型の防塵マスクや防毒マスクは周知である。また、マスク着用者の頭部を覆うことが可能で、その着用者の顔面を露出させるための開口部を有するフードも周知である。例えばAvon Rubber p.l.c のホームページhttp://www.avon-rubber.com(非特許文献1)には、ブチルゴム製のフルフェイス型マスクが紹介されている。マスク着用者の顔面周囲に密着させるマスク周縁部の外面には、その周縁部を一周するように延びるリブが形成されている。また、Remploy Frontlineのホームページhttp://www.remployfrontline.com(非特許文献2)には、このフルフェイス型マスクと組み合わせて着用することが可能なフード付き防護服が紹介されている。フードは顔面を露出させる開口を有し、その開口の周縁部にはギャザーが形成されていて開口はその周方向へ伸長・収縮可能であり、伸長したときには開口の径が大きくなる。かかるフードは、その開口の周縁部がマスクのリブの前方に位置するように着用すると、周縁部が弾性的に収縮してマスク周縁部外面に密着するとともに、リブに対しては前方から接触することが可能で、フードが頭部の後方へ動いて、その頭部から外れることを防止できる。
【非特許文献1】Avon Rubber p.l.c のホームページhttp://www.avon-rubber.com
【非特許文献2】Remploy Frontlineのホームページhttp://www.remployfrontline.com
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非特許文献1のマスクと非特許文献2のフードとのアセンブリでは、フードが頭部の後方へ向かって動くときに、そのフードが頭部から外れることをリブによって防止できるのだが、フードが前方へずれ動いたときには、フードがマスクに設けられたレンズ部を部分的に覆い、視界の妨げになったり、フードの気密性が低下したりするという場合がある。
【0004】
この発明は、マスクとフードとからなるマスクアセンブリに対して、そのフードが前方へ動いて視界の妨げになるということがないように改良を施すことを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、口許と鼻孔周辺と両眼周辺とを覆った状態で顔面の周囲に密着する吸排気可能なフルフェイス型のマスクと、前記マスクとは別体であって前記マスクの着用者頭部を覆うことが可能であるとともに前記頭部を覆ったときに前記顔面に密着している前記マスクの周縁部における外面にその外面との間における外気の通過を阻止可能な状態で当接するフードとからなるマスクアセンブリである。
【0006】
かかるマスクアセンブリにおいて、この発明が特徴とするところは、次のとおりである。前記マスクは、前記周縁部における外面に前記マスクを一周するリブを有し、前記フードは、前記マスクを介して前記着用者の顔面を露出させる開口と、前記開口の縁を形成している環状部材とを有し、前記環状部材が内周面と外周面とを有していて、前記内周面には前記リブに対して離脱可能に嵌合する溝部が形成されている。
【0007】
また、この発明の好ましい実施態様において、前記リブに嵌合している前記環状部材の前記外周面には前記環状部材の前記リブからの離脱を阻止する環状のクランプ部材が前記フードの外側から取り付け可能である(請求項2に対応)。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るマスクアセンブリでは、マスクの周縁部に形成されたリブに対して、フードにおける環状部材を嵌合させるから、フードの開口近傍はマスクに対する前後方向への動きが抑えられており、フードがずれ動いてマスク着用者の視界を妨げたり、フードの気密性を低下させたりするということがない。
【0009】
請求項2に係るこの発明の実施態様においては、リブに嵌合している環状部材の外周面に対してクランプ部材を取り付けることができるから、環状部材はリブから外れることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
添付の図面を参照して、この発明に係るマスクアセンブリの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0011】
図1は、使用状態にあるマスクアセンブリ1の斜視図である。マスクアセンブリ1は、それを着用する者の口許と鼻孔周辺と両眼の周辺とを含む顔面の全体を覆うことができるフルフェイス型のマスク2と、その者の少なくとも頭部を覆うことができ、図では頭部からさらにその下方へ広がるフード3とからなる。マスク2は、透明な硬質プラスチックで形成された前面部6と、前面部6の後方にあって合成ゴム等の柔軟弾性材料で形成されており顔面の周囲に密着可能なリップ部7と、リップ部7から頭部の後方へ延びるヘッドバンド部8を有している。前面部6の左右には、防毒用や防塵用のフィルター部材11が取り付けられている他に、排気部12と伝声部13とが形成されている。外気は、フィルター部材11を通った後に吸気用逆止弁14を通ってマスク着用者の口許と鼻孔周辺へと進む一方、着用者の呼気は排気部12の逆止弁(図示せず)を通ってマスクの外へ出る。フード3では、マスク2を介して着用者の顔を露出させる開口22(図2参照)の縁を形成している環状部材23(図2参照)がクランプ部材18によって前面部6の周縁部分に対して好ましくは気密状態で固定されている。
【0012】
図2は、マスクアセンブリ1の分解斜視図である。ただし、マスク2は、ヘッドバンド部8の一部分の図示が省略されている。マスク2では、前面部6の後方部分がリップ部7の前方部分に気密状態で連結されている。リップ部7の前方部分における外面では、一条のリブ21が、マスク2をその周縁部において一周するように環状に延びている。フード3は、布やゴムシート、プラスチックシート等の適宜のシート材料によって形成されていてマスク着用者の頭部の他に頸部や胴部等の所要部位を覆うことが可能な被覆部25を有し、その被覆部25の前方部分に設けられた開口22の縁は被覆部25に対して縫合、溶着等の接合手段によって取り付けられた環状部材23によって形成されている。環状部材23は内周面と外周面とを有し、その内周面はリブ21と嵌合し得るような溝を成している。また好ましい環状部材23は、弾性変形させて径を大きくすることができるように作られている。径を大きくするように弾性変形させた状態でリブ21に嵌合させた環状部材23は、弾性的に収縮しようとする力によってリブ21に密着して、リブ21と環状部材23との間から外気がフード3の内部へ進入することを阻止できる。環状のクランプ部材18は、これも弾性変形させて径を大きくすることができるように合成ゴム等の弾性材料で作られている。クランプ部材18の内周面の形状は、マスク2のリブ21に嵌合している環状部材23に対して、マスク2の外側から嵌合し得る形状に作られている。
【0013】
マスクアセンブリ1において、リブ21に対して環状部材23が密着すると、より好ましくは強く密着すると、環状部材23はマスク2に対してその前後方向へずれ動くことがないようになる。さらに、このような環状部材23に対してクランプ部材18が嵌合すると、クランプ部材18は、弾性的に収縮しようとする力によって環状部材23を締め付けて、環状部材23がリブ21から外れることを確実に防ぐことができる。このように形成されるマスクアセンブリ1は、リブ21に環状部材23を嵌合させただけの状態で使用することもできるが、その環状部材23に対してクランプ部材18を嵌合させた状態で使用することがより好ましい。
【0014】
図3は、図1のIII−III線切断面を示す図である。マスク2において、前面部6とリップ部7とは、互いに外れることがないようにかつ気密状態で連結されている。フード3における被覆部25に取り付けられた環状部材23は、リップ部7に形成されているリブ21に離脱可能に嵌合している。この環状部材23は、それに対して取り外し可能に嵌合しているクランプ部材18によって締め付けられている。かような状態で着用されているマスクアセンブリ1は、マスク2に対して、フード3における開口22の近傍がマスク着用者の顔面に対して前後方向(図の左右方向)へ動くことがないので、従来技術のようにフード3が前方へ動いてマスク着用者の視界の妨げになったり、フード3の気密性を低下させたりするということがない。
【0015】
図4は、図2に例示のクランプ部材18に代えて使用するクランプ部材18の一例を示している。このクランプ部材18は、本体部分31とコネクタ部分32とからなり、コネクタ部分32は、開口33を有し本体部分31の一端部に設けられている第1コネクタ部36と、開口33に対して矢印Y方向において進入、退出可能であって本体部分31のもう一端部に形成された突起である第2コネクタ部37とを有する。本体部分31は、コネクタ部分32を図示のように第1コネクタ部36と第2コネクタ部37とに分離させた状態で、フード3の環状部材23に対して嵌合させることができる。嵌合させた本体部分31は、第2コネクタ部37を第1コネクタ部36の開口33へ進入させてコネクタ部分32を閉じると環を形成し、環状部材23をリブ21から外れることがないように締め付けることができる。かような本体部分31は、弾性材料によって作ることもできれば、金属等の非弾性材料によって作ることもできる。コネクタ部分32において、第2コネクタ部37は、図示例の如く本体部分31と一体に形成することもできれば、本体部分31とは別体の部材を適宜の取り付け手段を介して本体部分31に取り付けることもできる。第1コネクタ部36は、図示例の如く本体部分31とは別体のものを本体部分31に取り付けることもできれば、本体部分31と一体に形成することもできる。
【0016】
図5もまた、この発明において使用可能なクランプ部材18の一例を示す図面であるが、この図面ではクランプ部材18とフード3とが図示されていて、マスク2の図示が省略されている。このクランプ部材18は、環状部材23に沿って延びていて部材23に対して外側から嵌合する第1部分41と、環状部材23に形成されている突起部分43に引っ掛けることが可能であって第1部分41の両端部それぞれに形成されている第2部分42とを有する。
【0017】
図6は、図5におけるクランプ部材18とフード3との部分図であって、クランプ部材18は、第2部分42のそれぞれが突起部分43から外された状態にある。クランプ部材18において、第1部分41はその内周面がリブ21に嵌合できるような溝を成しており、第2部分42のそれぞれは突起43が進入・退出可能な透孔44を有する。クランプ部材18は、例えば一方の第2部分42の透孔44に突起43を進入させた後に、第1部分41を環状部材23に嵌合させ、しかる後にもう一方の第2部分42の透孔44に突起43を進入させることによって、図5の状態になる。かかるクランプ部材18は、図における周方向、つまりその長さ方向に弾性的に伸長可能なものであって、図5の如く使用されているときのクランプ部材18は、伸長状態にあることが好ましい。
【0018】
図7は、この発明の実施態様の一例を示す図2と同様な図であるが、マスクアセンブリ1はその一部分のみが示されている。図示例のマスクアセンブリ1では、マスク2の頂部において、リブ21に凸部71が形成されている。また、フード3の環状部材23には、環状部材23の頂部に、第1凸部71に対して上方から離脱可能に嵌合する凹部74を有する第2凸部72が形成されている。さらにクランプ部材18の頂部には、第2凸部72に対して上方から離脱可能に嵌合する凹部75を有する第3凸部73が形成されている。着用したマスク2に対して、第1凸部71を位置決めの案内にしてリブ21に環状部材23を取り付ければ、マスク2とフード3との位置関係が常に一定になる。また、第2凸部72を位置決めの案内にして環状部材23にクランプ部材18を取り付ければフード3とクランプ部材18との位置関係が常に一定になる。このような図7の態様は、図1,4,5に例示のマスクアセンブリ1において実施することが可能である。なお、図7の第2、第3凸部72,73は、一部分が破断して示されている。
【0019】
この発明において、マスク2と一体的に使用されるフード3は、マスク着用者の身体の所要部位を被覆することができるように、その上下方向の寸法を自由に設定することができる。即ち、フード3は、着用者の頭部のみを覆うように作ることもできれば、身体のほぼ全体を覆うように作ることもできる。また、図示例においてマスク2のリップ部7に形成されているリブ21は、前面部6に形成されたリブに代えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明によれば、マスクに対してフードが前後方向へずれ動くことのないマスクアセンブリの製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】マスクアセンブリの斜視図。
【図2】マスクアセンブリの分解斜視図。
【図3】図1のIII−III線切断面を示す図。
【図4】クランプ部材の一例を示す図。
【図5】クランプ部材の他の一例を示す図。
【図6】図5のクランプ部材の部分図。
【図7】実施態様の一例を示す図2と同様な図。
【符号の説明】
【0022】
1 マスクアセンブリ
2 マスク
3 フード
18 クランプ部材
21 リブ
22 開口
23 環状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口許と鼻孔周辺と両眼周辺とを覆った状態で顔面の周囲に密着する吸排気可能なフルフェイス型のマスクと、前記マスクとは別体であって前記マスクの着用者頭部を覆うことが可能であるとともに前記頭部を覆ったときに前記顔面に密着している前記マスクの周縁部における外面にその外面との間における外気の通過を阻止可能な状態で当接するフードとからなるマスクアセンブリであって、
前記マスクは、前記周縁部における外面に前記マスクを一周するリブを有し、
前記フードは、前記マスクを介して前記着用者の顔面を露出させる開口と、前記開口の縁を形成している環状部材とを有し、前記環状部材が内周面と外周面とを有していて、前記内周面には前記リブに対して離脱可能に嵌合する溝部が形成されていることを特徴とする前記マスクアセンブリ。
【請求項2】
前記リブに嵌合している前記環状部材の前記外周面には前記環状部材の前記リブからの離脱を阻止する環状のクランプ部材が前記フードの外側から取り付け可能である請求項1記載のマスクアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−20675(P2007−20675A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203895(P2005−203895)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000162940)興研株式会社 (75)
【Fターム(参考)】