説明

マスクホルダ、円筒型マスク、露光装置、基板処理装置及びデバイス製造方法

【課題】メンテナンス性に優れたマスクホルダを提供すること。
【解決手段】円筒状に形成された固定部と、円筒状に形成され、前記固定部と同軸に該固定部の周囲に設けられるとともに前記固定部に対して回転可能に接続される回転部と、前記回転部に設けられ、シート状のマスク部材を取り外し可能に保持する保持部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクホルダ、円筒型マスク、露光装置、基板処理装置及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置などの表示装置を構成する表示素子として、例えば液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子、電子ペーパに用いられる電気泳動素子などが知られている。現在、これらの表示素子として、基板表面に薄膜トランジスタと呼ばれるスイッチング素子(Thin Film Transistor:TFT)を形成し、その上にそれぞれの表示デバイスを形成する能動的素子(アクティブデバイス)が主流となってきている。
【0003】
近年では、シート状の基板(例えばフィルム部材など)上に表示素子を形成する技術が提案されている。このような技術として、例えばロール・トゥ・ロール方式(以下、単に「ロール方式」と表記する)と呼ばれる手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。ロール方式は、基板供給側の供給用ローラーに巻かれた1枚のシート状の基板(例えば、帯状のフィルム部材)を送り出すと共に送り出された基板を基板回収側の回収用ローラーで巻き取りながら基板を搬送する。
【0004】
基板が送り出されてから巻き取られるまでの間、複数の処理装置により、TFTを構成するゲート電極、ゲート酸化膜、半導体膜、ソース・ドレイン電極等が形成される。その後、表示素子の他の構成要素が基板上に順次形成される。例えば基板上に有機EL素子を形成する場合には、発光層や陽極、陰極、電気回路などが基板上に順次形成される。これらの構成要素は、例えばマスクを介した露光光で基板を露光する露光装置などを用いて、例えばフォトリソグラフィ法を用いて形成される場合がある。
【0005】
露光装置のマスクの一例として、例えば円筒型のマスクが知られている。このような円筒型マスクは、パターンを有する回転体を有している。この回転体は、例えば円筒形状又は円柱形状に形成されており、その円筒面上にパターンが形成されている。円筒型のマスクを用いることにより、ステージを往復運動させたり、マスクを保持する複数のステージを用いたりする必要が無く、コストを低減することができる。また、被露光体を一方向に移動させることで被露光体上の複数箇所にパターンを転写することができるため、ステージの加減速の回数を低減させることができる。その結果として、露光精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/100868号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の円筒型マスクでは、回転体の円筒面上にパターンが一体的に形成されているため、マスクを交換する際に回転体ごと交換する必要がある。このため、円筒型マスクを用いる場合、メンテナンス動作が煩雑になる虞がある。
【0008】
上記のような事情に鑑み、本発明は、メンテナンス性に優れたマスクホルダ、円筒型マスク、露光装置、基板処理装置及びデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従えば、円筒状に形成された固定部と、円筒状に形成され、固定部と同軸に該固定部の周囲に設けられるとともに固定部に対して回転可能に接続される回転部と、回転部に設けられ、シート状のマスク部材を取り外し可能に保持する保持部とを備えるマスクホルダが提供される。
【0010】
本発明の第2の態様に従えば、本発明のマスクホルダと、当該マスクホルダの保持部に取り外し可能に保持され、パターンを有するシート状のマスク部材とを備える円筒型マスクが提供される。
【0011】
本発明の第3の態様に従えば、マスクに形成されたパターンの像を基板に投影する露光装置であって、本発明のマスクホルダの固定部を保持する保持装置と、マスクホルダの回転部を固定部に対して回転させる駆動装置と、マスクホルダの保持部が保持するマスク部材に形成されたパターンの像を基板に投影する投影光学系とを備える露光装置が提供される。
【0012】
本発明に第4の態様に従えば、帯状のシート基板を搬送する基板搬送部と、シート基板を処理する基板処理部と、を備え、基板処理部は、本発明の露光装置を有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様によれば、メンテナンス性に優れたマスクホルダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る露光装置の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る円筒型マスクの構成を示す斜視図。
【図4】本実施形態に係る円筒型マスクの一部の構成を示す斜視図。
【図5】本実施形態に係る円筒型マスクの一部の構成を示す斜視図。
【図6】本実施形態に係る照明光学系の構成を示す斜視図。
【図7】本実施形態に係るマスク部材の構成を示す斜視図。
【図8】本実施形態に係る露光装置の一部の構成を示す斜視図。
【図9】本実施形態に係る露光装置の一部の構成を示す斜視図。
【図10】本実施形態に係る露光装置のメンテナンスの様子を示す図。
【図11】本実施形態に係る露光装置の露光動作を示す図。
【図12】マイクロデバイスの製造工程の一例を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る基板処理装置FPAの構成を示す図である。
図1に示すように、基板処理装置FPAは、シート基板(例えば、帯状のフィルム部材)FBを供給する基板供給部SU、シート基板FBの表面(被処理面)に対して処理を行う基板処理部PR、シート基板FBを回収する基板回収部CL、及び、これらの各部を制御する制御部CONTを有している。基板処理装置FPAは、例えば工場などに設置される。
【0016】
基板処理装置FPAは、基板供給部SUからシート基板FBが送り出されてから、基板回収部CLでシート基板FBを回収するまでの間に、シート基板FBの表面に各種処理を実行するロール・トゥ・ロール方式(以下、単に「ロール方式」と表記する)の装置である。基板処理装置FPAは、シート基板FB上に例えば有機EL素子、液晶表示素子等の表示素子(電子デバイス)を形成する場合に用いることができる。勿論、これらの素子以外の素子を形成する場合において基板処理装置FPAを用いても構わない。
【0017】
基板処理装置FPAにおいて処理対象となるシート基板FBとしては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。
【0018】
シート基板FBのY方向(短尺方向)の寸法は例えば1m〜2m程度に形成されており、X方向(長尺方向)の寸法は例えば10m以上に形成されている。勿論、この寸法は一例に過ぎず、これに限られることは無い。例えばシート基板FBのY方向の寸法が50cm以下であっても構わないし、2m以上であっても構わない。また、シート基板FBのX方向の寸法が10m以下であっても構わない。
【0019】
シート基板FBは、例えば可撓性を有するように形成されている。ここで可撓性とは、例えば基板に少なくとも自重程度の所定の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、例えば上記所定の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、シート基板FBとしては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0020】
シート基板FBは、例えば200℃程度の熱を受けても寸法が変わらないように熱膨張係数が小さい方が好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。
【0021】
基板供給部SUは、例えばロール状に巻かれたシート基板FBを基板処理部PRへ送り出して供給する。基板供給部SUには、例えばシート基板FBを巻きつける軸部や当該軸部を回転させる回転駆動源などが設けられている。この他、例えばロール状に巻かれた状態のシート基板FBを覆うカバー部などが設けられた構成であっても構わない。
【0022】
基板回収部CLは、基板処理部PRからのシート基板FBを例えばロール状に巻きとって回収する。基板回収部CLには、基板供給部SUと同様に、シート基板FBを巻きつけるための軸部や当該軸部を回転させる回転駆動源、回収したシート基板FBを覆うカバー部などが設けられている。なお、基板処理部PRにおいてシート基板FBが例えばパネル状に切断される場合などには例えばシート基板FBを重ねた状態に回収するなど、ロール状に巻いた状態とは異なる状態でシート基板FBを回収する構成であっても構わない。
【0023】
基板処理部PRは、基板供給部SUから供給されるシート基板FBを基板回収部CLへ搬送すると共に、搬送の過程でシート基板FBの被処理面Fpに対して処理を行う。基板処理部PRは、例えば処理装置10、搬送装置30及びアライメント装置50などを有している。
【0024】
処理装置10は、シート基板FBの被処理面Fpに対して例えば有機EL素子を形成するための各種装置を有している。このような装置としては、例えば被処理面Fp上に隔壁を形成するための隔壁形成装置、有機EL素子を駆動するための電極を形成するための電極形成装置、発光層を形成するための発光層形成装置などが挙げられる。より具体的には、液滴塗布装置(例えばインクジェット型塗布装置、スピンコート型塗布装置など)、蒸着装置、スパッタリング装置などの成膜装置や、露光装置、現像装置、表面改質装置、洗浄装置などが挙げられる。これらの各装置は、例えばシート基板FBの搬送経路上に適宜設けられている。本実施形態では、処理装置10として、例えば露光装置を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0025】
搬送装置30は、基板処理部PR内において例えばシート基板FBを基板回収部CL側へ搬送するローラー装置Rを有している。ローラー装置Rは、シート基板FBの搬送経路に沿って例えば複数設けられている。複数のローラー装置Rのうち少なくとも一部のローラー装置Rには、駆動機構(不図示)が取り付けられている。このようなローラー装置Rが回転することにより、シート基板FBがX軸方向に搬送されるようになっている。複数のローラー装置Rのうち例えば一部のローラー装置Rが搬送方向と直交する方向に移動可能に設けられた構成であっても構わない。
【0026】
アライメント装置50は、シート基板FBに対してアライメント動作を行う。アライメント装置50は、シート基板FBの位置状態を検出するアライメントカメラ51と、当該アライメントカメラ51の検出結果に基づいてシート基板FBをX方向、Y方向、Z方向、θX方向、θY方向、θZ方向に微調整する調整装置52とを有している。
【0027】
アライメントカメラ51は、例えばシート基板FBに形成されたアライメントマークなどを検出し、検出結果を制御部CONTに送信する。制御部CONTは、当該検出結果に基づいてシート基板の位置情報を求め、当該位置情報に基づいて調整装置52による調整量を制御する。
【0028】
図2は、処理装置10として用いられる露光装置EXの構成を示す図である。
図2に示すように、露光装置EXは、マスクMに形成されたパターンの像をシート基板FBに投影する装置である。露光装置EXは、照明光学系IL、保持装置HD、回転駆動装置ACR、投影光学系PL及び基板ステージFSTを有している。
【0029】
本実施形態において、マスクMは、マスクホルダ40及びマスク部材41を有している。図3は、マスクMの構成を示す斜視図である。図2及び図3に示すように、マスクホルダ40は、保持装置HDに固定される固定部材42と、当該固定部材42の表面に沿って回転する回転部材43とを有している。
【0030】
回転部材43は、例えば回転駆動機構ACRに接続されている。回転駆動機構ACRは、回転部材43を駆動する。当該回転部材43の駆動量及び駆動のタイミングなどについては、例えば制御部CONTによって制御されるようになっている。マスク部材41は、例えばシート状に形成されている。マスク部材41は、回転部材43の保持部44上に保持されている。
【0031】
図4は、固定部材42の構成を示す斜視図である。図5は、回転部材43の構成を示す斜視図である。
図4に示すように、固定部材42は、例えば円筒状に形成されている。固定部材42には、窓部42a〜42dが形成されている。窓部42a〜42dは、例えば固定部材42の中心軸方向に一列に形成されており、例えば等間隔で配置されている。ここで、中心軸とは、例えば固定部材42の断面の円の中心を通り円筒面に沿った軸である。窓部42a〜42dは、固定部材42の内部と外部とを貫通して形成されている。
【0032】
固定部材42には、回転部材43の回転を案内する案内部42gが設けられている。案内部42gは、例えば固定部材42の円筒面42fに対して凹状に形成されている。案内部42gは、例えば円筒面42fの一周に亘って形成されている。案内部42gは、例えば固定部材42の中心軸方向に複数設けられている。
【0033】
図5に示すように、回転部材43は、例えば円筒状に形成されている。回転部材43は、固定部材42の円筒面42fを囲うように配置される。回転部材43は、固定部材42の案内部42gに沿って回転可能に設けられている。案内部42gと回転部材43との間には、例えば気体の層が形成されるようになっている。当該気体の層を介して回転部材43が固定部材42の周りをほぼ摩擦の無い状態で回転することができるようになっている。
【0034】
回転部材43には、例えば開口部43a〜43dが設けられている。各開口部43a〜43dは、回転部材43の円筒面43fの周方向に沿って形成されている。開口部43a〜43dは、回転部材43の中心軸方向に例えば等間隔に配置されている。ここで、中心軸とは、例えば回転部材43の断面の円の中心を通り円筒面に沿った軸である。より具体的には、開口部43a〜43dは、回転部材43が固定部材42に取り付けられた状態において、それぞれ固定部材42の窓部42a〜42dに重なる位置に配置されている。
【0035】
開口部43a〜43dは、回転部材43の周方向に互いにずれるように配置されている。例えば、開口部43a及び43cは、回転部材43の回転方向において等しい角度位置に配置されている。また、開口部43b及び43dは、回転部材43の回転方向において等しい角度位置に配置されている。そして、開口部43b及び43dは、開口部43a及び43cに対して、回転部材43の回転方向にずれて配置されている。
【0036】
回転部材43には、マスク部材41を保持する保持部44が設けられている。保持部44は、マスク部材41を吸着可能な構成になっている。例えば、不図示の吸引口を有しており、当該吸引口にマスク部材41を吸着させる構成であっても構わない。保持部44は、例えば開口部43a〜43dの周囲に配置されている。
【0037】
照明光学系ILは、マスクM上の所定の照明領域を均一な照度分布の露光光ELIで照明する。照明光学系ILから射出される露光光ELIとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)等が用いられる。照明光学系ILは、例えばマスクMの内部から露光光ELIをマスク部材41に対して照射する。
【0038】
照明光学系ILは、一対の導光装置12a及び12bを有している。導光装置12a及び12bは、導光部材13と、当該導光部材13に接続された光分割器16及び全反射鏡15とを有している。導光装置12aは、光を射出する光射出筒14a及び14bを有している。導光装置12bは、光を射出する光射出筒14c及び14dを有している。
【0039】
図3に示すように、本実施形態に係る露光装置EXにおいて、導光装置12a及び12bは、固定部材42内に収容されている。導光装置12a及び12bは、導光部材13がそれぞれ固定部材42の異なる端部に向けられており、当該固定部材42の端部側から光分割器16、全反射鏡15が配置された構成となっている。したがって、導光装置12a及び12bは、固定部材42の中心軸方向について線対称な構成となっている。
【0040】
この照明光学系ILは、導光部材13によって例えば固定部材42の両端から光を取り込む構成であり、取り込んだ光を光射出筒14a〜14dから射出する構成である。このため、露光装置EXには例えば不図示の光源と、当該光源から導光部材13に光を導く光学系とが設けられている。
【0041】
各光射出筒14a〜14dは、例えば固定部材42の中心軸方向に等間隔で配置されている。具体的には、光射出筒14a〜14dは、窓部42a〜42dに挿入されるように配置されている。このため、光射出筒14aから14dは、窓部42a〜42dに挿入された状態で固定部材42の径方向の外側に向けられている。ここでは、回転部材43の開口部43a〜43dが窓部42a〜42dに重なるように配置されている。このため、光射出筒14a〜14dは、窓部42a〜42d及び開口部43a〜43dを介して、マスク部材41に向けられている。光射出筒14a〜14d内には例えばブラインド結像系やコンデンサーなどが配置されており、例えば図6に示すように、光射出筒14a〜14dが台形状の露光光ELIを射出するようになっている。このように、照明光学系ILは、マスクホルダ40の内部からマスク部材41に対して露光光を照射するようになっている。
【0042】
図7は、マスク部材41の構成を示す図である。
図7に示すように、マスク部材41は、例えば可撓性を有する材料を用いて帯状に形成されている。マスク部材41は、マスクホルダ40の回転部材43に取り付けられて用いられる(図3参照)。このようにマスク部材41は、回転部材43の円筒面に沿って湾曲した状態で保持される。マスク部材41は、回転部材43に取り付けられた状態において、例えば保持部44によって吸着されて保持されるようになっている。保持部44の保持状態を解除することにより、マスク部材41を取り外すことができるようになっている。このように、マスク部材41は、着脱可能に回転部材43に取り付けられることとなる。
【0043】
マスク部材41には、所定のパターンPが形成されている。パターンPは、例えばマスク部材41の長手方向に2箇所に形成されている。パターンPは、例えば複数の単位パターンP1〜P4を有している。
【0044】
単位パターンP1〜P4は、1つのパターンが分割されたパターンである。単位パターンP1〜P4は、互いに離間する複数の領域に分割されて形成されている。本実施形態では、単位パターンP1〜P4は、例えばマスク部材41の短手方向に配列されている。単位パターンP1〜P4は、例えば開口部43a〜43dのピッチとほぼ等しいピッチで配置されており、例えば上記の開口部43a〜43dに対応する箇所に配置されている。すなわち、単位パターンP1及びP3と、単位パターンP2及びP4とがマスク部材41の長手方向にずれた位置に配置されている。また、単位パターンP1及びP3と、単位パターンP2及びP4とは、それぞれマスク部材41の長手方向に揃った位置に設けられている。このため、開口部43a〜43dと単位パターンP1〜P4とが重なるようにマスク部材41を回転部材43に取り付けることができるようになっている。
【0045】
図8は、投影光学系PL及び基板ステージFSTの構成を示す平面図である。
図8に示すように、投影光学系PLは、4つの投影部PL1〜PL4を有している。当該投影部PL1〜PL4のうち例えば投影部PL1及びPL3は、X方向の位置が揃っており、Y方向に間隔をあけて配置されている。投影部PL1及びPL3は、基板ステージFST上のうち離れた2つの投影領域EA1及びEA3にそれぞれパターンPの像を投影する。投影領域EA1及び投影領域EA3は、例えば台形状に形成される。
【0046】
投影部PL2は、投影部PL1及び投影部PL3に対してX方向にずれた位置に配置されている。また、投影部PL2は、Y方向において投影部PL1と投影部PL3との間に配置されている。投影部PL4は、投影部PL2に対してY方向に間隔をあけて配置されている。投影部PL4は、投影部PL2との間で投影部PL3を挟む位置に設けられている。投影部PL4は、投影部PL2とX方向の位置が揃っている。投影部PL2及びPL4は、基板ステージFST上のうち離れた2つの投影領域EA2及びEA4にそれぞれパターンPの像を投影する。投影領域EA2及び投影領域EA4は、例えば台形状に形成される。
【0047】
また、投影部PL1〜PL4が上記のように配置されているため、当該投影部PL1及びPL3と、投影部PL2及びPL4との間では、それぞれマスクM側の視野がずれた状態になっている。このため、上記マスクMにおいては、回転部材43の開口部43a〜43dが、当該回転部材43の周方向(回転方向)にずれた位置に配置されることになる。そのズレ量は、投影部PL1〜PL4のマスク側の視野のズレに対応している。
【0048】
本実施形態では、投影部PL1及び投影部PL2は、投影領域EA1の+Y側に形成されるテーパー部分と投影領域EA2の−Y側に形成されるテーパー部分とが例えばY方向において重なるように配置されている。また、投影部PL2及び投影部PL3は、投影領域EA2の+Y側に形成されるテーパー部分と投影領域EA3の−Y側に形成されるテーパー部分とが例えばY方向において重なるように配置されている。更に、投影部PL3及び投影部PL4は、投影領域EA3の+Y側に形成されるテーパー部分と投影領域EA4の−Y側に形成されるテーパー部分とが例えばY方向において重なるように配置されている。
【0049】
図9は、基板ステージFSTの構成を示す断面図である。
図8及び図9に示すように、基板ステージFSTは、投影領域EA1〜EA4を含む領域に凹部21を有している。凹部21は、例えばステージ本体20の+Z側の面に対して−Z側に湾曲して形成されている。当該凹部21の曲率は、例えば回転部材43に取り付けられたマスク部材41の曲率に合わせて設定されている。具体的には、マスク部材41が取り付けられた状態における半径をR、マスク部材41に照射される露光光のX方向の幅をx、露光光が照射されるマスク部材41の湾曲部分の深さhとすると、
R´=x/2h
となる。
【0050】
また、ステージ本体20には、当該凹部21の内部及びその周囲に噴出口22及び吸引口23が設けられている。噴出口22から例えば気体を噴出し、吸引口23から例えば当該気体を吸引することにより、ステージ本体20の+Z側の面(凹部21を含む)に気体の層を形成することができるようになっている。また、吸引口23の吸引量を噴出口22の噴出量よりも大きくすることにより、例えばシート基板FBを吸着できるようになっている。なお、投影領域EA1に対応する凹部21と投影領域EA3に対応する凹部21とが接続されて1つの凹部を形成する構成であっても構わない。投影領域EA2に対応する凹部21と投影領域EA4に対応する凹部21とについても同様である。
【0051】
上記のように構成された基板処理装置FPAは、制御部CONTの制御により、ロール方式によって有機EL素子、液晶表示素子などの表示素子(電子デバイス)を製造する。以下、上記構成の基板処理装置FPAを用いて表示素子を製造する工程を説明する。
【0052】
まず、ローラーに巻き付けられた帯状のシート基板FBを基板供給部SUに取り付ける。制御部CONTは、この状態から基板供給部SUから当該シート基板FBが送り出されるように、ローラーを回転させる。そして、基板処理部PRを通過した当該シート基板FBを基板回収部CLのローラーで巻き取らせる。この基板供給部SU及び基板回収部CLを制御することによって、シート基板FBの被処理面Fpを基板処理部PRに対して連続的に搬送することができる。
【0053】
制御部CONTは、シート基板FBが基板供給部SUから送り出されてから基板回収部CLで巻き取られるまでの間に、基板処理部PRの搬送装置30によってシート基板FBを当該基板処理部PR内で適宜搬送させつつ、処理装置10によって表示素子の構成要素をシート基板FB上に順次形成させる。
【0054】
この工程の中で、露光装置EXによって処理を行う場合、例えば図10に示すように、当該マスクホルダ40にマスク部材41を巻き付けてマスクMを形成する。当該マスクMは、露光装置EXの保持装置HDに保持させる。また、マスクホルダ40内に照明光学系ILを配置させる。
【0055】
次に、不図示の光源から照明光学系ILに露光光ELIを供給し、照明光学系ILからマスクMに対して台形状の露光光ELIを照射させる。マスクMに照射された露光光ELIは、マスク部材41のパターンPに照射される。投影光学系PLは、当該パターンPの像を投影領域EA1〜EA4に対して投影する。
【0056】
図11に示すように、例えばシート基板FBの被処理面は、複数の被処理領域(露光領域)F1〜F7に分割して処理が行われることとなる。ここでは、露光領域F1、F3、F5、F7は、投影領域EA1〜EA4に投影される像のみによって露光される部分である。露光領域F2は、投影領域EA1に投影される像の一部と投影領域EA2に投影される像の一部とによって露光される部分である。露光領域F4は、投影領域EA2に投影される像の一部と投影領域EA3に投影される像の一部とによって露光される部分である。露光領域F6は、投影領域EA3に投影される像の一部と投影領域EA4に投影される像の一部とによって露光される部分である。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、円筒状に形成された固定部材42と、円筒状に形成され、固定部材42と同軸に該固定部材42の周囲に設けられるとともに固定部材42に対して回転可能に接続される回転部材43と、回転部材43に設けられ、シート状のマスク部材41を取り外し可能に保持する保持部44とを備えるマスクホルダ40を用いるため、マスク部材41の交換、取り付け及び取り外しを容易に行うことができる。これにより、メンテナンス性に優れたマスクホルダ40を提供することができる。
【0058】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、1つのマスクホルダ40に対して1枚のマスク部材41を取り付ける構成としたが、これに限られることは無く、例えば1つのマスクホルダ40に対して複数のマスク部材41を取り付ける構成としても構わない。この場合、例えば1つのパターンが分割された単位パターンの1つ1つがそれぞれ形成されたマスク部材41を4枚用意し、回転部材43の開口部43a〜43dにそれぞれ取り付けるようにする。
【0059】
また、上記実施形態では、1つのマスク部材41において1つのパターンPが分割された単位パターンP1〜P4が形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、1つのマスク部材41において複数のパターンPが形成された構成であっても構わない。この場合、シート基板FB上には、同一のパターンPの像が複数投影されることになる。
【0060】
また、上記実施形態の構成に加えて、例えばマスク部材41に位置検出用パターンを形成し、当該位置検出用パターンを検出する検出装置及びマスクホルダ40の位置調整装置を設けることにより、マスクホルダ40の位置合わせを行う構成としても構わない。この場合、位置検出用パターンを検出し、検出結果に応じてマスクホルダ40の位置を調整する。これにより、マスク部材41に形成されるパターンPの像の投影位置を調整することができる。
【0061】
上述の実施形態の露光装置は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。
【0062】
各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0063】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図12に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクのパターンを用いて露光光で基板を露光すること、及び露光された基板(感光剤)を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。なお、ステップ204では、感光剤を現像することで、マスクのパターンに対応する露光パターン層(現像された感光剤の層)を形成し、この露光パターン層を介して基板を加工することが含まれる。
【符号の説明】
【0064】
FPA…基板処理装置 FB…シート基板 SU…基板供給部 PR…基板処理部 CL…基板回収部 CONT…制御部 EX…露光装置 M…マスク IL…照明光学系 HD…保持装置 PL…投影光学系 FST…基板ステージ ACT…回転駆動機構 P…パターン P1〜P4…単位パターン FST…ステージ装置 10…処理装置 14a〜14d…光射出筒 40…マスクホルダ 41…マスク部材 42…固定部材 42a〜42d…窓部 42g…案内部 42f…円筒面 43…回転部材 43a〜43d…開口部 43f…円筒面 44…保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成された固定部と、
円筒状に形成され、前記固定部と同軸に該固定部の周囲に設けられるとともに前記固定部に対して回転可能に接続される回転部と、
前記回転部に設けられ、シート状のマスク部材を取り外し可能に保持する保持部と
を備えるマスクホルダ。
【請求項2】
前記回転部は、円筒面の周方向に沿って形成された開口部を有する
請求項1に記載のマスクホルダ。
【請求項3】
前記開口部は、前記回転部の中心軸方向に複数設けられ、
複数の前記開口部は、前記回転部の周方向に互いにずれるように配置されている
請求項2に記載のマスクホルダ。
【請求項4】
前記保持部は、前記マスク部材を吸着する吸着部を有する
請求項2又は請求項3に記載のマスクホルダ。
【請求項5】
前記吸着部は、前記開口部の周囲に配置されている
請求項4に記載のマスクホルダ。
【請求項6】
前記固定部は、該固定部の円筒面に沿って、前記回転部材の回転を案内する案内部を有する
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載のマスクホルダ。
【請求項7】
前記案内部は、前記固定部の円筒面に一周に亘って形成されている
請求項6に記載のマスクホルダ。
【請求項8】
前記案内部は、前記固定部の中心軸方向に複数設けられている
請求項6又は請求項7に記載のマスクホルダ。
【請求項9】
前記固定部は、前記固定部の中心軸方向に一列に形成された複数の窓部を有する
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載のマスクホルダ。
【請求項10】
前記回転部は、円筒面の周方向に沿って形成された開口部を有し、
前記窓部は、前記開口部に対応する位置に設けられている
請求項9に記載のマスクホルダ。
【請求項11】
請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載のマスクホルダと、
前記マスクホルダの前記保持部に取り外し可能に保持され、パターンを有するシート状のマスク部材と
を備える円筒型マスク。
【請求項12】
前記マスク部材は、前記回転部の円筒面に沿って湾曲した状態で保持される
請求項11に記載の円筒型マスク。
【請求項13】
前記回転部は、円筒面の周方向に沿って形成された開口部を有し、
前記保持部は、前記マスク部材の前記パターンが前記開口部に対応するように前記マスク部材を保持する
請求項11又は請求項12に記載の円筒型マスク。
【請求項14】
前記開口部は、複数設けられ、
前記パターンは、分割された複数の単位パターンを有し、
各々の前記単位パターンは、複数の前記開口部に対応する領域に形成されている
請求項13に記載の円筒型マスク。
【請求項15】
前記開口部は、複数設けられ、
前記マスク部材は、複数の前記パターンを有し、
各々の前記パターンは、複数の前記開口部に対応する領域に形成されている
請求項13に記載の円筒型マスク。
【請求項16】
前記開口部は、複数設けられ、
前記マスク部材は、複数の前記開口部に対応する位置にそれぞれ設けられている
請求項13から請求項15のうちいずれか一項に記載の円筒型マスク。
【請求項17】
前記マスク部材は、位置検出用パターンを有する
請求項11から請求項16のうちいずれか一項に記載の円筒型マスク。
【請求項18】
マスクに形成されたパターンの像を基板に投影する露光装置であって、
請求項1から請求項10のうちいずれか一項に記載のマスクホルダの前記固定部を保持する保持装置と、
前記マスクホルダの前記回転部を前記固定部に対して回転させる駆動装置と、
前記マスクホルダの前記保持部が保持するマスク部材に形成されたパターンの像を前記基板に投影する投影光学系と
を備える露光装置。
【請求項19】
前記基板として、帯状のシート基板が用いられる
請求項18に記載の露光装置。
【請求項20】
前記保持装置によって保持される前記円筒状マスクに対して内部から光を照射する光照射系を更に備える
請求項18又は請求項19に記載の露光装置。
【請求項21】
前記光照射系は、前記円筒状マスクの外部で射出された前記光を当該円筒状マスクの中心軸方向の端部から前記円筒状マスクの前記内部へ引き回して前記円筒状マスクに照射する光学系を有する
請求項20に記載の露光装置。
【請求項22】
前記パターンは、互いに離間する複数の領域に分割されて形成されており、
前記投影光学系は、分割された前記パターンの像の一部同士が互いに接続されるように前記基板上に投影するように配置されている
請求項18から請求項21のうちいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項23】
前記基板を支持するステージを更に備え、
前記円筒状マスクの前記マスクホルダは、前記マスク部材を湾曲した状態で保持し、
前記ステージは、前記基板を湾曲させて支持する凹部を有し、
前記投影光学系は、前記基板のうち前記凹部に支持される部分に前記像を投影するように配置されている
請求項22に記載の露光装置。
【請求項24】
前記凹部は、投影される前記像の位置に応じた位置に形成されている
請求項22に記載の露光装置。
【請求項25】
前記ステージは、前記基板を前記凹部に吸着させる吸着部を有する
請求項23又は請求項24に記載の露光装置。
【請求項26】
帯状のシート基板を搬送する基板搬送部と、
前記シート基板を処理する基板処理部と、を備え、
前記基板処理部は、請求項18から請求項25のうちいずれか一項に記載の露光装置を有する
基板処理装置。
【請求項27】
請求項18から請求項25のうちいずれか一項に記載の露光装置を用いて、感光剤が塗布された前記基板の露光を行い、該基板にパターンを転写することと、
前記露光によって露光された前記感光剤を現像して、前記パターンに対応する露光パターン層を形成することと、
前記露光パターン層を介して前記基板を加工することと、
を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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