説明

マスト起伏用アダプタ、マスト起伏装置及びウィンチ取り外し方法

【課題】クレーンの旋回フレーム上でマスト下に搭載されたウィンチの取り外し作業をより容易に行えるようにしつつ、旋回フレーム上の装備品の設置スペースの大幅な削減及びそれら装備品のレイアウトの制約の大幅な増大を防ぐ。
【解決手段】マスト起伏用アダプタ8のアダプタ本体24は、アーム22が支持位置と退避位置との間でアダプタ本体24に対して相対的に変位可能となるようにそのアーム22を支持するアーム支持部24cとを有し、アーム22が支持位置にある場合には、アーム22は、マスト通常支持部24bが後方へ延びるようにアダプタ本体24が基準位置に配置されたときにそのマスト通常支持部24bよりも後方へ突出し、アーム22が退避位置にある場合には、アーム22の先端は、そのアーム22が支持位置にある状態でアダプタ本体24が基準位置に配置されたときのそのアーム22の先端の位置よりも前方の位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンのマスト起伏用アダプタ、マスト起伏装置及びマスト起伏用アダプタを用いたウィンチ取り外し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上部旋回体に起伏自在に設けられたブームを支持するためのマストが搭載されたクレーンが知られている。このクレーンでは、マストの基端部は、クレーンの上部旋回体のフレームである旋回フレームの前部にその旋回フレームの幅方向に延びる水平軸回りに回動可能となるように取り付けられている。マストは、その基端部を支点として起伏自在となっている。旋回フレームの前部には、マストを起立させるためのマスト起伏シリンダとそのマスト起伏シリンダの先端部に結合された起伏アームとが設けられている。起伏アームは、旋回フレームの幅方向に延びる軸回りに上下に回動可能となるように旋回フレームの前部に取り付けられており、マスト起伏シリンダの直線的な伸縮動作を回動する動きに変換してマストに伝達するために設けられている。すなわち、マスト起伏シリンダは、起伏アームを旋回フレームの幅方向に延びる軸回りに上向きに回動させてその起伏アームにマストのうちの基端部(前端部)から後方の所定の部位を押し上げさせることにより当該マストをその基端部を支点として起立させる。そして、旋回フレームのうちマストが後方に倒伏した状態でその下方に位置する部位には、ブームの先端から吊り下げられるフック装置の巻き上げ又は巻き下げを行うためのウィンチや、ブームを起伏動作させるためのウィンチが設置されている。
【0003】
このような構成のクレーンを作業現場等に輸送する際には、輸送車両に積載可能な制限重量及び制限寸法の条件を満たすために旋回フレームから装備品が取り外される。それらの装備品のうち前記各ウィンチは、後方へ倒伏した姿勢にあるマストの下方に位置するため、その各ウィンチを吊り上げて旋回フレーム上から取り外そうとすると、マストとウィンチとの干渉を回避するために旋回フレームからマストを取り外す必要があり、その作業が煩雑になるとともに多くの作業時間を要する。
【0004】
そこで、下記の特許文献1には、旋回フレームからマストを取り外さなくても、旋回フレームのうちそのマストの下方に位置する部位に搭載されたウィンチを取り外すことが可能な種々の技術が提案されている。これらの技術の1つとして、特許文献1には、マスト起伏シリンダ及び起伏アームを利用してマストの基端部と旋回フレームとの間にウィンチ取り外し用の隙間を形成する技術が記載されている。この技術は、後方に倒伏した姿勢にあるマストの基端部と旋回フレームの前部との結合を解除するとともに、マストの先端側の所定の部位を旋回フレームの後部に連結し、その連結部位を支点としてマスト起伏シリンダが起伏アームを介してマストの基端側を押し上げることにより、マストの基端部と旋回フレームの上面との間にウィンチ取り外し用の隙間を形成するものである。この技術により、マストを旋回フレームから取り外さなくても、旋回フレームに搭載されたウィンチをマストの基端部と旋回フレームの上面との間に形成された隙間を通じて取り外すことができ、その取り外し作業の簡略化及び取り外し作業に係る作業時間の短縮を図ることが可能となる。さらに、この技術によれば、マスト起伏シリンダを利用してマストの基端部と旋回フレームの上面との間にウィンチ取り外し用の隙間を形成するため、その隙間を形成するための装置、例えば、マストの基端部を吊り上げる補助クレーン等を別途設置しなくても前記ウインチ取り外し用の隙間を形成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−238262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載の技術において、旋回フレームからのウィンチの取り外し作業をより容易に行えるようにするためには、起伏アームの長さを大きくすることが好ましい。具体的には、起伏アームの長さが大きければ、マスト起伏シリンダが起伏アームを介してマストの基端部を押し上げてそのマストの基端部と旋回フレームの上面との間にウィンチ取り出し用の隙間を形成するときに、マストの基端部をより高い位置まで押し上げてそのウィンチ取り出し用の隙間をより大きくすることができ、その隙間を通じてのウィンチの取り外し作業をより容易なものとすることができる。
【0007】
しかしながら、起伏アームの長さが増大すると、旋回フレームに搭載される他の装備品の設置スペースが削減され、それらの装備品のレイアウトに対する制約が増大するという問題点が生じる。
【0008】
具体的には、マスト起伏シリンダが収縮状態にあり、かつ、マストが後方に倒伏した姿勢にある状態では、起伏アームは、旋回フレームの前端部から後方へ延びる姿勢で配置される。起伏アームの長さが大きい場合には、この起伏アームと他の装備品との干渉をさけるため、旋回フレーム上における他の装備品の設置スペースが削減されるとともにそのレイアウトに対する制約が増大する。
【0009】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、クレーンの旋回フレーム上でマスト下に搭載されたウィンチの取り外し作業をより容易に行えるようにしつつ、旋回フレーム上の装備品の設置スペースの大幅な削減及びそれら装備品のレイアウトの制約の大幅な増大を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によるマスト起伏用アダプタは、下部本体と、その下部本体上に旋回自在に搭載される旋回フレームと、特定方向に延びるマストと、前記旋回フレームの前部に設けられ、前記マストの基端部に着脱可能に結合し、その結合状態で前記マストの基端部が前記旋回フレームの前後方向に直交する幅方向に延びる水平軸回りに回動可能となるようにその基端部を支持する支持軸と、前記マストが前記支持軸を支点として前記旋回フレームの後方へ延びるように倒伏した倒伏姿勢にある状態で前記旋回フレームのうちそのマストの下方に位置する部位に搭載されたウィンチと、前記旋回フレームの前部に取り付けられたシリンダ本体及びそのシリンダ本体の軸方向に沿って当該シリンダ本体に対して進退する作動部を有し、その作動部の進退により伸縮する起伏シリンダとを備えたクレーンに用いられ、前記シリンダ本体から進出する前記作動部によって駆動されて前記倒伏姿勢にある前記マストのうち前記基端部よりも後側に位置する部位を押し上げ、前記支持軸が前記マストの基端部と結合状態にある場合にはそのマストを前記支持軸を支点として起立させる一方、前記支持軸と前記マストの基端部との結合が解除されている場合にはそのマストの基端部を前記旋回フレームから上方へ離反させるためのマスト起伏用アダプタであって、前記旋回フレームの幅方向に延びる軸回りに回動可能となるように前記旋回フレームの前部に取り付けられ、その取付部位よりも後側に位置する部位で前記作動部と接続されてその作動部の進退に応じて上下に回動するアダプタ本体と、前記倒伏姿勢にある前記マストの基端部を前記旋回フレームから上方へ離反させるときに前記アダプタ本体とともに回動して前記マストを下から押し上げるアームとを備え、前記アダプタ本体は、前記倒伏姿勢にある前記マストを前記支持軸を支点として起立させるときに前記アダプタ本体とともに回動して前記マストを下から押し上げるマスト通常支持部と、前記アームが前記マストを下から押し上げるときに配置される支持位置と前記マストを押し上げないときに配置される退避位置との間で前記アダプタ本体に対して相対的に変位可能となるようにそのアームを支持するアーム支持部とを有し、前記アームが前記支持位置にある場合には、当該アームは、前記マスト通常支持部が後方へ延びるように前記アダプタ本体が特定の回動位置に配置されたときにそのマスト通常支持部よりも後方へ突出し、前記アームが前記退避位置にある場合には、当該アームの先端は、そのアームが前記支持位置にある状態で前記アダプタ本体が前記特定の回動位置に配置されたときのそのアームの先端の位置よりも前方の位置に配置される(請求項1)。
【0011】
また、本発明によるウィンチ取り外し方法は、このマスト起伏用アダプタを用いて、前記旋回フレームに搭載された前記ウィンチを取り外すウィンチ取り外し方法であって、前記支持軸と前記倒伏姿勢にある前記マストの基端部との結合を解除する結合解除工程と、前記アームを前記退避位置から前記支持位置へ変位させるアーム変位工程と、前記結合解除工程及び前記アーム変位工程の後、前記起伏シリンダの前記作動部を前記シリンダ本体から進出させて前記アダプタ本体とともに前記アームを回動させ、そのアームの先端で前記倒伏姿勢にある前記マストを下から押し上げてそのマストの基端部を前記旋回フレームから上方へ離反させる離反工程と、前記離反工程の後、前記旋回フレーム上に搭載された前記ウィンチを前記マストの基端部と前記旋回フレームの上面との間の隙間を通じて前記旋回フレーム上から取り外すウィンチ取り外し工程とを備えている(請求項7)。
【0012】
このマスト起伏用アダプタ及びそれを用いたウィンチ取り外し方法では、アームを前記支持位置とその支持位置での当該アームの先端の位置よりも前方に当該アームの先端が配置される退避位置との間で変位させることが可能であるため、旋回フレーム上でマスト下に搭載されたウィンチの取り外し作業を容易に行えるようにすることと旋回フレーム上の他の装備品の設置スペースの大幅な削減及びそれらの装備品のレイアウトの制約の大幅な増大を防ぐこととを両立することが可能である。具体的には、旋回フレームからのウィンチの取り外し時には、アームを前記退避位置から前記支持位置に変位させれば、アダプタ本体からのアームの突出量を大きくすることができるため、アダプタ本体の回動とともにそのアームでマストの基端部を押し上げてマストの基端部と旋回フレームの上面との間に大きな隙間を形成することができる。その結果、マストの基端部と旋回フレームの上面との間に形成された大きな隙間を通じてウィンチの取り外し作業を容易に行うことができる。その一方、マストを倒伏姿勢で保持するとともに起伏シリンダの作動部をシリンダ本体側へ退避させてアダプタ本体を前記特定の回動位置で保持しているときには、アームを前記退避位置に配置すれば、アームの後方への突出量を抑えることができる。その結果、アームと旋回フレーム上の他の装備品との干渉を避けるために大きなスペースを旋回フレーム上に確保する必要がなくなり、旋回フレーム上の他の装備品の設置スペースの大幅な削減及びそれらの装備品のレイアウトの制約の大幅な増大を防ぐことができる。
【0013】
上記マスト起伏用アダプタにおいて、前記アーム支持部は、前記アームがその長手方向に沿って前記アダプタ本体に対して変位可能となるようにそのアームを支持し、前記アームの前記退避位置は、前記支持位置からそのアームがその長手方向に沿って前記アダプタ本体側へ退避した特定の位置であってもよい(請求項2)。
【0014】
この構成では、アームが前後方向に延びる姿勢で配置された状態でそのアームを支持位置から退避位置に変位させれば、アームの先端がアームの長手方向に沿って前方へ変位することになるので、アームが前記支持位置とその支持位置での当該アームの先端位置よりも前方に当該アームの先端が配置される退避位置との間で変位可能となるようにそのアームを支持するアーム支持部の具体的な構造を構成することができる。
【0015】
上記マスト起伏用アダプタにおいて、前記アーム支持部は、前記アームが前記旋回フレームの幅方向に延びるアーム回動軸回りに前記アダプタ本体に対して回動可能となるようにそのアームを支持し、前記アームの前記退避位置は、そのアームが前記支持位置から当該アームの先端が下方へ変位するように前記アーム回動軸回りに回動した特定の位置であってもよい(請求項3)。
【0016】
この構成では、支持位置にあるアームが前後方向に延びる姿勢で配置された状態において、そのアームの先端が下方へ変位するように当該アームをアーム回動軸回りに回動させて退避位置に配置すれば、アームの先端が前方へ変位する。従って、この構成によれば、アームが前記支持位置とその支持位置での当該アームの先端位置よりも前方に当該アームの先端が配置される退避位置との間で変位可能となるようにそのアームを支持するアーム支持部の具体的な構造を構成することができる。
【0017】
上記マスト起伏用アダプタにおいて、前記アームは、当該アームの長手方向に延び、前記アーム支持部に支持されるアーム本体と、そのアーム本体の先端に前記旋回フレームの幅方向に延びる軸回りに回転可能となるように支持され、当該アームが前記マストを下から支持するときにそのマストの下面に当接するローラとを有することが好ましい(請求項4)。
【0018】
この構成によれば、アームがアダプタ本体とともに回動してマストの基端部を旋回フレームから上方へ離反させるように押し上げるときに、そのアームの先端のローラがマストの下面に当接しつつその下面に沿って転動するので、マストの下面及びアームの先端に損傷が生じるのを防止することができるとともに、マストをスムーズに押し上げることができる。
【0019】
本発明によるマスト起伏装置は、下部本体と、その下部本体上に旋回自在に搭載される旋回フレームと、特定方向に延びるとともに前記旋回フレームの前後方向に直交する幅方向に並んで配置され、互いに一体となるように連結された第1マスト本体及び第2マスト本体を有するマストと、前記旋回フレームの前部に設けられ、前記両マスト本体の基端部に着脱可能に結合し、その結合状態で前記両マスト本体の基端部が前記旋回フレームの幅方向に延びる水平軸回りに回動可能となるようにそれらの基端部を支持する支持軸と、前記マストが前記支持軸を支点として前記旋回フレームの後方へ延びるように倒伏した倒伏姿勢にある状態で前記旋回フレームのうちそのマストの下方に位置する部位に搭載されたウィンチとを備えたクレーンに用いられ、前記支持軸が前記両マスト本体の基端部と結合状態にあるときに前記倒伏姿勢にある前記マストを前記支持軸を支点として起立させる一方、前記支持軸と前記両マスト本体の基端部との結合が解除されているときに前記マストの基端部を前記旋回フレームから上方へ離反させるためのマスト起伏装置であって、前記旋回フレームの前部のうち前記第1マスト本体に対応する位置に取り付けられた第1シリンダ本体及びその第1シリンダ本体の軸方向に沿って当該第1シリンダ本体に対して進退する第1作動部を有し、その第1作動部の進退により伸縮する第1起伏シリンダと、前記旋回フレームの前部のうち前記第2マスト本体に対応する位置に取り付けられた第2シリンダ本体及びその第2シリンダ本体の軸方向に沿って当該第2シリンダ本体に対して進退する第2作動部を有し、その第2作動部の進退により伸縮する第2起伏シリンダと、前記第1シリンダ本体から進出する前記第1作動部によって駆動され、前記倒伏姿勢にある前記第1マスト本体のうちその基端部よりも後側に位置する部位を押し上げる上記マスト起伏用アダプタと、前記旋回フレームの前部のうち前記第2マスト本体の基端部に対応する位置に前記マスト起伏用アダプタの前記アダプタ本体と同じ軸回りに回動可能となるように取り付けられ、前記支持軸が前記両マスト本体の基端部と結合状態にあるときには、前記第2シリンダ本体から進出する前記作動部によって駆動されて前記アダプタ本体と同期するように回動し、前記倒伏姿勢にある前記第2マスト本体のうちその基端部よりも後側に位置する部位を押し上げて前記第2マスト本体を前記支持軸を支点として起立させ、前記マスト起伏用アダプタが前記第1マスト本体を押し上げて前記マストの基端部を前記旋回フレームから上方へ離反させるときには、上方へ移動する前記第2マスト本体の基端部との間に上下方向において隙間が形成される位置に留まるマスト起伏用サブアダプタとを備える(請求項5)。
【0020】
このマスト起伏装置は、上記マスト起伏用アダプタを備えていることから、旋回フレーム上に搭載されたウィンチの取り外し作業をより容易に行うことができるとともに、旋回フレーム上の装備品の設置スペースの大幅な削減及びそれら装備品のレイアウトの制約の大幅な増大を防ぐことができるという上記マスト起伏用アダプタによる効果と同様の効果を得ることができる。また、このマスト起伏装置では、支持軸を支点としてマストを起立させるときには、マスト起伏用アダプタとマスト起伏用サブアダプタにより第1マスト本体と第2マスト本体を両方とも下から押し上げるため、旋回フレームの幅方向においてマストを安定した状態で保持しながら、そのマストを支持軸を支点として起立させることができる。その一方、マスト起伏用アダプタが第1マスト本体を押し上げて倒立姿勢にあるマストの基端部を旋回フレームから上方へ離反させるときには、第1マスト本体の基端部とともに上方へ移動する第2マスト本体の基端部とマスト起伏用サブアダプタとの間に上下方向において隙間が形成されるため、ウィンチが旋回フレームの幅方向において第2マスト本体側に突出した部分を有している場合でも、ウィンチの取り外し時にそのウィンチの突出部分を第2マスト本体の基端部とマスト起伏用サブアダプタとの間に形成された隙間を通じて旋回フレームの外側へ逃がすことができる。従って、この構成によれば、ウィンチが旋回フレームの幅方向において第2マスト本体側に突出した部分を有している場合でも、そのウィンチの突出部分とマスト起伏用サブアダプタとの干渉を回避しつつ、ウィンチを旋回フレーム上から容易に外部へ離脱させることができる。
【0021】
上記マスト起伏装置において、前記倒伏姿勢にある前記マストを前記支持軸を支点として起立させるときには、前記第1作動部を前記第1シリンダ本体から進出させるとともに前記第2作動部を前記第2シリンダ本体から進出させ、前記マストの基端部を前記旋回フレームから上方へ離反させるときには、前記第2作動部を前記第2シリンダ本体から進出させることなく前記第1作動部のみを前記第1シリンダ本体から進出させるシリンダ制御装置をさらに備えることが好ましい(請求項6)。
【0022】
マストの基端部を旋回フレームから上方へ離反させるときには、マスト起伏用サブアダプタを駆動する必要がないため、この構成のように第2作動部を第2シリンダ本体から進出させることなく第1作動部のみを第1シリンダ本体から進出させれば、第1作動部及び第2作動部の両方を進出させる場合に比べて動力を削減することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、クレーンの旋回フレーム上でマスト下に搭載されたウィンチの取り外し作業をより容易に行うことができるとともに、旋回フレーム上の装備品の設置スペースの大幅な削減及びそれら装備品のレイアウトの制約の大幅な増大を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態によるマスト起伏用アダプタ及びそれを備えたマスト起伏装置が設けられるクレーンの側面図である。
【図2】図1に示したクレーンの自立組立時の状態を示す図である。
【図3】マストが後方へ倒伏した倒伏姿勢にあるときの上部旋回体を上から見た図である。
【図4】図3に示した上部旋回体の側面図である。
【図5】図3に示した上部旋回体からウィンチを取り外す時の状態を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態によるマスト起伏装置の第1起伏シリンダ及び第2起伏シリンダの制御系統を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態によるマスト起伏用アダプタのアームが支持位置にある状態の側面図である。
【図8】図7に示したマスト起伏用アダプタを上から見た図である。
【図9】本発明の第1実施形態によるマスト起伏用アダプタのアームが退避位置にある状態の側面図である。
【図10】図9に示したマスト起伏用アダプタを上から見た図である。
【図11】本発明の第1実施形態によるマスト起伏装置においてマスト起伏用アダプタが基準位置にあり、マスト通常支持部が倒伏姿勢にあるマストを支持している状態を示す図である。
【図12】図11に示したマスト起伏装置においてアームが支持位置にあり、マストの基端部側を押し上げている状態を示す図である。
【図13】本発明の第2実施形態によるマスト起伏用アダプタのアームが支持位置にある状態の側面図である。
【図14】図13に示したマスト起伏用アダプタを上から見た図である。
【図15】本発明の第2実施形態によるマスト起伏用アダプタのアームが退避位置にある状態の側面図である。
【図16】図15に示したマスト起伏用アダプタを上から見た図である。
【図17】本発明の第2実施形態によるマスト起伏装置においてマスト起伏用アダプタが基準位置にあり、マスト通常支持部が倒伏姿勢にあるマストを支持している状態を示す図である。
【図18】図17に示したマスト起伏装置においてマストの基端部側の押し上げを開始する時点の状態を示す図である。
【図19】図18に示したマスト起伏装置においてマストの基端部側を押し上げた状態を示す図である。
【図20】図19に示したマスト起伏装置においてマストの基端部側をさらに押し上げた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0026】
(第1実施形態)
まず、図1〜図12を参照して、本発明の第1実施形態によるマスト起伏装置2及びその起伏装置2に含まれるマスト起伏用アダプタ8の構成について説明する。
【0027】
この第1実施形態によるマスト起伏装置2は、図1に示すようなクローラクレーンに設けられている。このクレーンは、下部走行体102と、旋回フレーム104と、ブーム106と、主巻フック装置108と、補巻フック装置110と、マスト112と、第1マストフットピン114a(図4参照)と、第2マストフットピン114b(図2参照)と、主巻ウィンチ116と、補巻ウィンチ118と、ブーム起伏ウィンチ120と、上部スプレッダ122と、下部スプレッダ124とを備えている。
【0028】
下部走行体102は、本発明の下部本体の概念に含まれるものである。この下部走行体102は、下部フレーム102a(図2参照)と、その下部フレーム102aの両側に突出するアクスル102bにそれぞれ装着されるクローラ102cとを備えている。
【0029】
旋回フレーム104は、下部走行体102の下部フレーム102a上に縦軸回りに旋回自在に搭載されている。この旋回フレーム104は、底板104a(図3参照)と、2つの側壁部104bと、2つのブーム支持部104cと、2つのマスト支持部104dとを有する。
【0030】
底板104aは、旋回フレーム104の底面を構成し、当該旋回フレーム104のうち下部フレーム102a上に搭載される部分である。
【0031】
2つの側壁部104bは、同様の形状に形成されており、互いに平行に旋回フレーム104の前後方向に延びている。また、これら2つの側壁部104bは、底板104aの幅方向の両側に分かれて配置されるとともにその底板104aの幅方向の両端上に立設されている。すなわち、両側壁部104bは、旋回フレーム104の前後方向(長手方向)に直交する幅方向に互いに離間して配置されている。
【0032】
2つのブーム支持部104cは、ブーム106を支持するためのものである。このブーム支持部104cは、各側壁部104bの前端部にそれぞれ1つずつ設けられている。2つのブーム支持部104cは、同じ構造を有している。各ブーム支持部104cは、旋回フレーム104の幅方向に離間して配置された平板状の2つのブーム支持部板体104eからなる。各ブーム支持部板体104eには、その板体を板厚方向(旋回フレーム104の幅方向)に貫通するブーム支持穴104f(図4参照)がそれぞれ設けられている。
【0033】
2つのマスト支持部104dは、マスト112を支持するためのものである。各側壁部104bの前部の上面のうちブーム支持部104cのわずかに後側の位置には、その側壁部104bから旋回フレーム104の幅方向内側に延出するように平板状の支持部設置部104h(図3参照)がそれぞれ設けられている。マスト支持部104dは、この各支持部設置部104h上にそれぞれ1つずつ設けられており、各マスト支持部104dは、各側壁部104bに対して旋回フレーム104の幅方向内側の位置に配設されている。2つのマスト支持部104dは、同じ構造を有しており、各マスト支持部104dは、2つのマスト支持部板体104g及び2つのブッシュ104iをそれぞれ有する。
【0034】
各マスト支持部104dの2つのマスト支持部板体104gは、旋回フレーム104の前後方向及び上下方向に延びる平板状にそれぞれ形成されており、支持部設置部104h上に立設されている。また、その2つのマスト支持部板体104gは、旋回フレーム104の幅方向において互いに離間し、かつ、互いに平行に配置されている。各マスト支持部板体104gには、その板体を板厚方向(旋回フレーム104の幅方向)に貫通するマスト支持穴104k(図4参照)がそれぞれ設けられている。これら各マスト支持部板体104gのマスト支持穴104kは、同軸となるように配置されている。
【0035】
各マスト支持部104dの2つのブッシュ104iは、それぞれ、そのマスト支持部104dの2つのマスト支持部板体104gのうち対応するもののマスト支持穴104kに嵌合されている。各ブッシュ104iは、マスト支持穴104kと同軸となる貫通穴104m(図11参照)を有している。各ブッシュ104iは、それが取り付けられた一方のマスト支持部板体104gのうち他方のマスト支持部板体104g側に向かう側面から突出している。すなわち、互いに平行に配置された前記2つのマスト支持部板体104gの互いに対向する側面から互いの側へ突出するように各ブッシュ104iが突出している。各ブッシュ104iのうちマスト支持部板体104gから突出した部分は、互いに同軸でかつマスト支持穴104kと同軸となる円筒状の外周面を有している。
【0036】
ブーム106(図1参照)は、旋回フレーム104の幅方向において前記2つのブーム支持部104c間に相当する距離だけ離間して配置された図略の2つのブームフットをその基端部に有する。各ブームフットには、旋回フレーム104の幅方向に貫通する図略の穴部が設けられている。各ブームフットは、対応するブーム支持部104cの2つのブーム支持部板体104e間に挿入されてその2つのブーム支持部板体104eに設けられたブーム支持穴104fと当該ブームフットに設けられた穴部に図略のブームフットピンが挿嵌されることによってブーム支持部104cに連結されている。ブーム106は、ブームフットピンを軸として起伏自在となっている。
【0037】
主巻フック装置108は、主巻ロープ108aを介してブーム106の先端から吊り下げられ、補巻フック装置110は、補巻ロープ110aを介してブーム106の先端から吊り下げられている。これらのフック装置108,110は、吊荷を吊り下げるためのものである。
【0038】
マスト112は、特定方向に延びている。このマスト112は、旋回フレーム104の幅方向において前記2つのマスト支持部104d間に相当する距離だけ互いに離間して配置され、互いに平行かつ当該マスト112の長手方向に延びる第1マスト本体112a及び第2マスト本体112b(図3参照)と、それらのマスト本体112a,112bの先端部同士を連結する先端連結部112cとを有する。マスト112の基端部、すなわち、第1マスト本体112aの基端部112dと第2マスト本体112bの基端部112eには、旋回フレーム104の幅方向に貫通する穴部112f(図5参照)がそれぞれ設けられており、それらの穴部112fは同軸となるように配置されている。そして、両マスト本体112a,112bは、それらの先端部同士が先端連結部112cによって互いに一体となるように連結されているため、後述するように第1マスト本体112aの基端部112d側のみが押し上げられた場合でも両マスト本体112a,112bの基端部112d,112e側が同様に上方へ変位するようになっている。また、第1マスト本体112aのうち基端部112dから僅かに先端部寄りの部位の下面(第1マスト本体112aが後方への倒伏姿勢にある状態での下面)には、ストッパ112hが設けられている。このストッパ112hは、マスト起伏用アダプタ8の後述するアーム22の先端が当該第1マスト本体112aの基端部112d側を押し上げるときにそのアーム22の先端に当接してそれ以上その先端が当該第1マスト本体112aの基端側へ向かうのを阻止するものである。
【0039】
第1マストフットピン114aと第2マストフットピン114bは、旋回フレーム104の2つのマスト支持部104dのうち対応するものにそれぞれ取り付けられ、マスト112の基端部を支持する。これらのマストフットピン114a,114bは、本発明の支持軸の概念に含まれるものである。第1マストフットピン114aは、第1マスト本体112aの基端部112d及びそれに対応する一方のマスト支持部104dに着脱可能に結合し、第2マストフットピン114bは、第2マスト本体112bの基端部112e及びそれに対応する他方のマスト支持部104dに着脱可能に結合している。具体的には、第1マスト本体112aの基端部112dが一方のマスト支持部104dの2つのマスト支持部板体104g間及びそのマスト支持部104dの2つのブッシュ104i間に挿入された状態で、第1マストフットピン114aは、その軸が旋回フレーム104の幅方向に延びる姿勢で各マスト支持部板体104gのマスト支持穴104kに嵌合されたブッシュ104iの貫通穴104mと第1マスト本体112aの基端部112dの穴部112fに挿嵌されている。第1マストフットピン114aは、このブッシュ104iの貫通穴104m及び穴部112fに対して挿脱可能となっている。また、第2マスト本体112bの基端部112eが前記他方のマスト支持部104dの2つのマスト支持部板体104g間及びそのマスト支持部104dの2つのブッシュ104i間に挿入された状態で、第2マストフットピン114bは、その軸が旋回フレーム104の幅方向に延びる姿勢で各マスト支持部板体104gのマスト支持穴104kに嵌合されたブッシュ104iの貫通穴104mと第2マスト本体112bの基端部112eの穴部112fに挿嵌されている。また、第2マストフットピン114bは、このブッシュ104iの貫通穴104m及び穴部112fに対して挿脱可能となっている。
【0040】
そして、第1マストフットピン114aは、第1マスト本体112aの基端部112d及びそれに対応する前記一方のマスト支持部104dに結合した状態で第1マスト本体112aの基端部112dが旋回フレーム104の幅方向(旋回フレーム104の左右方向)に延びる水平軸回りに回動可能となるようにその基端部112dを支持し、第2マストフットピン114bは、第2マスト本体112bの基端部112e及びそれに対応する前記他方のマスト支持部104dに結合した状態で第2マスト本体112bの基端部112eが旋回フレーム104の幅方向(旋回フレーム104の左右方向)に延びる水平軸回りに回動可能となるようにその基端部112eを支持する。このように基端部112d,112eがマストフットピン114a,114bによって支持されることにより、マスト112は、マストフットピン114a,114bを支点として起伏自在となっている。
【0041】
主巻ウィンチ116、補巻ウィンチ118及びブーム起伏ウィンチ120は、図3に示すように、旋回フレーム104のうち2つの側壁部104b間においてマスト支持部104dの後側の位置に設けられており、この順番で旋回フレーム104の前から後へ向かって並ぶように配置されている。各ウィンチ116,118,120は、旋回フレーム104のうち後方へ倒伏した倒伏姿勢にあるマスト112の下方に位置する部位に設けられている。主巻ウィンチ116は、主巻ロープ108aの巻き取り/繰り出しを行うことによって主巻フック装置108の巻き上げ/巻き下げを行うものであり、補巻ウィンチ118は、補巻ロープ110aの巻き取り/繰り出しを行うことによって補巻フック装置110の巻き上げ/巻き下げを行うものである。また、ブーム起伏ウィンチ120は、ブーム起伏ロープ121の巻き取り/繰り出しを行うことにより、ブーム106を起伏させるものである。各ウィンチ116,118,120は、対応するロープ108a,110a,121を巻き取るためのドラム116a,118a,120aと、そのドラム116a,118a,120aを駆動するためのモータ116b,118b,120bとを備えている。各ドラム116a,118a,120aは、その回転軸が旋回フレーム104の幅方向に延びるように配置されている。また、各モータ116b,118b,120bは、対応するドラム116a,118a,120aに対してその軸方向の一方の端部の外側に付設されており、前記倒伏姿勢にあるマスト112の第2マスト本体112bの直下に位置する。また、各ウィンチ116,118,120は、図略の結合部材によって旋回フレーム104に着脱可能となるように取り付けられている。
【0042】
上部スプレッダ122は、マスト112の先端連結部112cに設けられている。この上部スプレッダ122は、旋回フレーム104の幅方向に延びる軸回りに回転自在となるように設けられた複数の上部シーブ122aを有する。また、この上部スプレッダ122は、ガイライン123を介してブーム106の先端部と接続されている。下部スプレッダ124は、旋回フレーム104の後端部に設けられている。この下部スプレッダ124は、旋回フレーム104の幅方向に延びる軸回りに回転自在となるように設けられた複数の下部シーブ124aを有する。クレーンが通常のクレーン作業を実施する状態(図1参照)では、ブーム起伏ウィンチ120のドラム120aから引き出されたブーム起伏ロープ121は、上部スプレッダ122の上部シーブ122aと下部スプレッダ124の下部シーブ124aとに掛け回されている。ブーム起伏ウィンチ120がブーム起伏ロープ121を巻き取ることにより、上部スプレッダ122が下部スプレッダ124側へ引き寄せられ、それによって、マスト112が後方へ倒伏しながらガイライン123を介してブーム106の先端部を後方へ引っ張ってブーム106を起立させる。一方、ブーム起伏ウィンチ120がブーム起伏ロープ121を繰り出すことにより、マスト112がガイライン123を介してブーム106、フック装置108,110及び吊荷等の重量を支持しながら前方へ倒れ、それに伴ってブーム106が前方へ倒伏する。
【0043】
以上のように構成されたクレーンは、作業現場等への移送時には輸送車に積載されて運搬されるため、当該クレーンは、その輸送車による運搬に適合した制限寸法及び制限重量の範囲内に収まる構成部材毎に分解されて運搬される。この際、図1に示す状態のクレーンからブーム106、フック装置108,110及びガイライン123、その他の装備品が取り外されるとともに、掛け渡されていた各ロープ108a,110a,121が外されて対応する各ウィンチ116,118,120に巻き取られ、マスト112が図4に示すようにマストフットピン114a,114bを支点として後方に倒伏した倒伏姿勢に配置される。マスト112と旋回フレーム104は、互いに近い長さを有していることから、互いに連結された状態で運搬される。一方、旋回フレーム104上に搭載されている各ウィンチ116,118,120は、大重量であることから図4の状態の旋回フレーム104から取り外されて別途運搬される。この際、後述するように、マスト起伏装置2を用いてウィンチ116,118,120をマスト112との干渉を回避しながら旋回フレーム104から取り外す作業が行われる。
【0044】
また、このクレーンは、その構成部材が作業現場等へ運搬された後、他の補助クレーンを使わずに自力でその組立が行えるように構成されている。例えば、図2に示すように、当該クレーンの構成部材により、クローラ102cを輸送車200から降ろしてアクスル102bに取り付ける作業を行うことが可能である。具体的には、ブーム106が旋回フレーム104に取り付けられていない状態で、マスト112を前傾した起立状態とする。そして、そのマスト112の先端から吊具150を介して輸送車200上のクローラ102cを吊ることにより、クローラ102cを輸送車200から降ろすとともに、その吊り上げ状態を保ちながら当該クローラ102cをアクスル102bに装着する。この作業を行うためには、搬送時に図4のように倒伏姿勢にあったマスト112をマストフットピン114a,114bを支点として起立させる必要があり、その際、後述するようにマスト起伏装置2によるマスト112の起立動作が行われる。
【0045】
次に、この第1実施形態によるマスト起伏用アダプタ8及びそれを備えたマスト起伏装置2の構成について具体的に説明する。
【0046】
マスト起伏装置2は、上記したように、互いに連結された状態のマスト112及び旋回フレーム104が運搬された後、クレーンの自力組立作業を行うために倒伏姿勢にあるマスト112をマストフットピン114a,114bを支点として起立させるため、又は、後方へ倒伏したマスト112の下方に位置するウィンチ116,118,120をマスト112との干渉を回避しながら旋回フレーム104から取り外すためにマスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ離反させるために用いられる。換言すれば、マスト起伏装置2は、マストフットピン114a,114bがマスト本体112a,112bの基端部112d,112eと結合状態にあるときに、倒伏姿勢にあるマスト112をマストフットピン114a,114bを支点として起立させる一方、マストフットピン114a,114bとマスト本体112a,112bの基端部112d,112eとの結合が解除されているときに、倒伏姿勢にあるマスト本体112a,112bの基端部112d,112eを旋回フレーム104から上方へ離反させてその基端部112d,112eと旋回フレーム104の上面との間に隙間を形成する。
【0047】
このマスト起伏装置2は、第1起伏シリンダ4(図4及び図5参照)と、第2起伏シリンダ6(図2参照)と、マスト起伏用アダプタ8(図5参照)と、マスト起伏用サブアダプタ10(図2参照)と、シリンダ制御装置12(図6参照)とを備えている。
【0048】
第1起伏シリンダ4は、油圧シリンダであり、マスト起伏用アダプタ8を駆動するためのものである。この第1起伏シリンダ4は、本発明の起伏シリンダの概念に含まれるものである。この第1起伏シリンダ4は、旋回フレーム104の前部のうち第1マスト本体112aの基端部112d近傍の下方の位置に設けられている。また、第1起伏シリンダ4は、第1シリンダ本体4aと、第1作動部4bとを有する。
【0049】
第1シリンダ本体4aは、旋回フレーム104の前部のうち第1マスト本体112aに対応する位置に取り付けられた中空の筒体である。この第1シリンダ本体4aは、本発明のシリンダ本体の概念に含まれるものである。この第1シリンダ本体4aの基端部は、旋回フレーム104の底板104a上に設けられた図略の取付部にピンによって結合されており、そのピンにより旋回フレーム104の幅方向に延びる軸回りに回動可能となるように支持されている。第1シリンダ本体4aは、図6に示すように、油圧配管12aを介してシリンダ制御装置12と接続されている。このシリンダ制御装置12により油圧配管12aを通じて当該第1シリンダ本体4a内への圧油の給排が制御されるようになっている。
【0050】
第1作動部4bは、第1シリンダ本体4aの軸方向に沿ってその第1シリンダ本体4aに対して進退するものである。この第1作動部4bは、本発明の作動部の概念に含まれるものである。この第1作動部4bは、第1シリンダ本体4a内にその軸方向に移動可能となるように収容された図略のピストン部と、そのピストン部に結合され、そのピストン部から第1シリンダ本体4aの軸方向に沿って当該第1シリンダ本体4a内から突出するように延びる第1ロッド部4d(図5参照)とを有する。シリンダ制御装置12により第1シリンダ本体4aへの圧油の給排が制御されることに応じて、ピストン部が第1シリンダ本体4a内でその軸方向に沿って移動する。ピストン部が第1シリンダ本体4aの先端部側へ動かされた場合には、第1ロッド部4dは第1シリンダ本体4a内から進出するように移動し、ピストン部が第1シリンダ本体4aの基端部側へ動かされた場合には、第1ロッド部4dは第1シリンダ本体4a内に退避するように移動する。
【0051】
第2起伏シリンダ6は、第1起伏シリンダ4と同様の油圧シリンダであり、マスト起伏用サブアダプタ10を駆動するためのものである。この第2起伏シリンダ6は、旋回フレーム104の前部のうち第2マスト本体112bの基端部112e近傍の下方の位置に設けられている。第2起伏シリンダ6は、第1起伏シリンダ4の第1シリンダ本体4aと同様に構成された第2シリンダ本体6a(図2参照)と、第1起伏シリンダ4の第1作動部4bと同様に構成された第2作動部6bとを有する。第2シリンダ本体6aは、油圧配管12bを介してシリンダ制御装置12と接続されている。また、第2作動部6bは、第1作動部4bの前記ピストン部及び前記第1ロッド部4dと同様のピストン部及び第2ロッド部6dを有している。
【0052】
マスト起伏用アダプタ8は、倒伏姿勢にあるマスト112の第1マスト本体112aの基端部112d近傍に配置されている。このマスト起伏用アダプタ8は、第1シリンダ本体4aから進出する第1作動部4bの第1ロッド部4dによって駆動されて、倒伏姿勢にあるマスト112の第1マスト本体112aのうち基端部112dよりも後側に位置する部位を押し上げ、マストフットピン114a,114bがマスト本体112a,112bの基端部112d,112eと結合状態にある場合には第1マスト本体112aを第1マストフットピン114aを支点として起立させる一方、マストフットピン114a,114bとマスト本体112a,112bの基端部112d,112eとの結合が解除されている場合(図5参照)には第1マスト本体112aの基端部112dを旋回フレーム104から上方へ離反させるために用いられる。
【0053】
具体的には、マスト起伏用アダプタ8は、図7に示すように、アーム22と、アダプタ本体24と、位置保持部26とを有する。
【0054】
アーム22は、倒伏姿勢にあるマスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ離反させるときにアダプタ本体24とともに回動して第1マスト本体112aの基端部112dから少し先端部寄りの部位を下から押し上げるものである。このアーム22は、アダプタ本体24の後述するアーム支持部24cに支持されるアーム本体22aと、そのアーム本体22aの先端に旋回フレーム104の幅方向に延びる軸回りに回転可能となるように支持され、当該アーム22が第1マスト本体112aを下から支持するときにその第1マスト本体112aの下面に当接するローラ22bとを有する。
【0055】
アーム本体22aは、内側板体22cと、外側板体22d(図8参照)とによって構成されている。これら両板体22c,22dのうち内側板体22cは、旋回フレーム104の幅方向内側に配置されており、外側板体22dは、内側板体22cに対して旋回フレーム104の幅方向外側に離間して配置されている。内側板体22cは、細長い平板状の板体がその基端部近傍の2箇所で板厚方向において屈曲されることによって形成されており、外側板体22dに対して略平行となるように配置されている。外側板体22dは、直線的に延びる細長い平板状に形成されており、その板厚方向が旋回フレーム104の幅方向に略一致するように配置されている。内側板体22cと外側板体22dには、ローラ軸用穴部22g、支持位置用穴部22h(図9参照)及び退避位置用穴部22i(図7参照)がこれらの板体22c,22dを板厚方向に貫通するようにそれぞれ設けられている。ローラ軸用穴部22gは、両板体22c,22dの先端部にそれぞれ設けられており、それら両板体22c,22dのローラ軸用穴部22gには、旋回フレーム104の幅方向に延びるローラ軸22jが挿嵌されて固定されている。また、支持位置用穴部22hは、両板体22c,22dの基端部の互いに対応する位置にそれぞれ設けられている。また、退避位置用穴部22iは、両板体22c,22dのうちローラ軸用穴部22gから少し基端部寄りの互いに対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0056】
ローラ22bは、アーム本体22aの両板体22c,22dの先端部同士の間に配設されており、その状態でローラ軸22jによってその軸回りに回転自在となるように軸支されている。このローラ22bは、アーム22が倒伏姿勢にある第1マスト本体112aの基端部112d側を押し上げるときに、その倒伏姿勢にある第1マスト本体112aの下面に当接しながらその第1マスト本体112aに沿って基端部112d側へ向かって転動する。
【0057】
アダプタ本体24は、旋回フレーム104の前部のうち第1マスト本体112aの基端部112dが取り付けられるマスト支持部104dに旋回フレーム104の幅方向(左右方向)に延びる軸回りに回動可能となるように取り付けられている。具体的には、このアダプタ本体24は、第1マスト本体112aの基端部112dが取り付けられるマスト支持部104dに設けられた2つのブッシュ104iによって、それらのブッシュ104iの軸回りに回動可能となるように支持されている。また、アダプタ本体24は、旋回フレーム104に対する当該アダプタ本体24の取付部位よりも後側に位置する部位で前記第1作動部4bの第1ロッド部4dの先端部と接続されており、第1シリンダ本体4aに対する第1作動部4bの進退に応じて2つのブッシュ104iを軸として上下に回動する。詳細には、アダプタ本体24は、マスト112が後方への倒伏姿勢にあるとともに第1起伏シリンダ4が収縮状態にあるときには、図11に示す基準位置に配置されており、倒伏姿勢にあるマスト112をマストフットピン114a,114bを支点として起立させるとき又は倒伏姿勢にあるマスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ離反させるときには、その基準位置から第1起伏シリンダ4によって上向きに回動される。このアダプタ本体24は、図7に示すように、基部24aと、マスト通常支持部24bとを有する。
【0058】
基部24aは、旋回フレーム104のマスト支持部104dのブッシュ104iに取り付けられる部分である。この基部24aは、アーム22を支持するためのアーム支持部24cと、第1起伏シリンダ4の第1ロッド部4dの先端部と接続される接続部24dとを有する。
【0059】
基部24aは、旋回フレーム104の前後方向及び上下方向に延びる2枚の略平板状の基部側板24eと、その2枚の基部側板24eを互いに連結する端部連結部24f及び中間部連結部24gとを有しており、それら2枚の基部側板24e及び連結部24f,24gによってアーム支持部24cが形成されている。詳細には、2枚の基部側板24eは、旋回フレーム104の幅方向において互いに離間し、かつ、互いに平行に配置されている。端部連結部24fは、平板状に形成されており、前記基準位置にあるアダプタ本体24において2枚の基部側板24eのうちその下端となる端部同士を連結している。中間部連結部24gは、平板状に形成されており、前記基準位置にあるアダプタ本体24において2枚の基部側板24eのうち上下方向の所定の中間位置に位置する部位同士を連結している。この中間部連結部24gは、端部連結部24fに対して平行となるように配置されている。そして、2枚の基部側板24e及び各連結部24f,24gによってそれらに囲まれた空間が形成されている。この空間は、アーム本体22aが挿入される空間であり、アダプタ本体24が前記基準位置にあるときに旋回フレーム104の前後方向に沿って延び、その長手方向に垂直な断面が矩形状となるように形成されている。すなわち、2枚の基部側板24eのうちこの空間を囲む部分及び連結部24f,24gによってアーム支持部24cが形成されている。
【0060】
アーム支持部24cは、倒伏姿勢にあるマスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ離反させるときにアーム22の先端のローラ22bが第1マスト本体112aを下から支持するように当該アーム22が配置される支持位置と、アーム22が第1マスト本体112aを支持しないときに配置される退避位置との間で当該アーム22がアダプタ本体24(アーム支持部24c)に対して相対的に変位可能となるようにそのアーム22を支持している。
【0061】
具体的には、アーム支持部24cは、その内部の空間にアーム本体22aが挿入された状態で、アーム22がその長手方向に沿ってアダプタ本体24に対して変位可能となるようにアーム本体22aを支持している。アーム22の支持位置は、図7及び図8に示す位置である。この支持位置では、アーム22の基端部のみがアーム支持部24c内に配置され、その基端部よりも先端側の部分はアーム支持部24cから突出する。また、アーム22の退避位置は、図9及び図10に示す位置である。この退避位置は、アーム22が支持位置からその長手方向に沿ってアダプタ本体24側に変位した位置であり、この退避位置では、アーム22の先端部のみがアーム支持部24cから後側へ突出する。
【0062】
アダプタ本体24が前記基準位置にある状態で基部24aの各基部側板24eのうち前側でかつ上側に位置する部位には、当該基部側板24eを板厚方向(旋回フレーム104の幅方向)に貫通する取付穴24h(図9参照)がそれぞれ設けられている。基部24aの2枚の基部側晩24eのうち取付穴24hがそれぞれ設けられた部位は、第1マスト本体112aの基端部112dがマスト支持部104dに取り付けられた状態で、そのマスト支持部104dの2枚のマスト支持部板体104g間において第1マスト本体112aの基端部112dの両側に分かれて配置される。取付穴24hには、ブッシュ104iのうちそのブッシュ104iが取り付けられたちマスト支持部板体104gから突出した円筒状の外周面を有する部分が挿嵌される。これにより、各基部側板24eは、それが取り付けられたブッシュ104iに対して旋回フレーム104の幅方向(旋回フレーム104の左右方向)に延びるそのブッシュ104iの軸回りに回動可能となっている。また、各基部側板24eのうち取付穴24hとアーム支持部24cとの間に位置する部分には、2つの支持部固定穴24iがそれぞれ設けられている。
【0063】
また、接続部24dは、各基部側板24eのうちアーム22の先端側に位置する端部、すなわち各基部側板24eの後端部からアーム支持部24cの長手方向において取付穴24hと反対側にそれぞれ延出された延出部24jからなる。各延出部24jには、当該延出部24jを旋回フレーム104の幅方向に貫通する接続穴24kがそれぞれ形成されている。この2枚の基部側板24eの延出部24j間に第1ロッド部4dの先端部が挿入され、第1ロッド部4dの先端部に形成された図略の穴部と各延出部24jに形成された接続穴24kとに接続ピン24pが挿嵌されることによって第1ロッド部4dと接続部24dとが接続されている。この構成により、第1ロッド部4dと基部24aは、接続ピン24pを軸として相対的に回動可能となっている。
【0064】
マスト通常支持部24bは、倒伏姿勢にあるマスト112をマストフットピン114a,114bを支点として起立させるときに第1マスト本体112aの基端部112dから少し先端部寄りの部位を下から押し上げるものである。このマスト通常支持部24bは、アダプタ本体24が前記基準位置にある状態でアーム支持部24c及びアーム22の上側に配置される。このマスト通常支持部24bは、基部24aの2枚の基部側板24eのうちアーム支持部24cに対して取付穴24h側に位置する部分同士の間に挿嵌された状態で基部24aに固定されている。
【0065】
具体的には、マスト通常支持部24bは、2枚の支持部側板24qと、当接部24rとを有する。2枚の支持部側板24qのうち一方の支持部側板24qは、前記2枚の基部側板24eのうちアーム支持部24cに対して取付穴24h側に位置する部分同士の間において一方の基部側板24eに隣接し、かつ、その基部側板24eに沿うように配置されており、他方の支持部側板24qは、前記2枚の基部側板24eのうちアーム支持部24cに対して取付穴24h側に位置する部分同士の間において他方の基部側板24eに隣接し、かつ、その基部側板24eに沿うように配置されている。各支持部側板24qは、旋回フレーム104の幅方向から見て同様の形状に形成されている。当該各支持部側板24qのうち基部側板24eの取付穴24hと対応する位置には、図略の貫通穴が形成されており、基部側板24eの2つの支持部固定穴24iと対応する位置には、図略の2つの固定穴が形成されている。各基部側板24eの支持部固定穴24iと対応する支持部側板24qの固定穴には、固定ピン24sがそれぞれ挿嵌されており、それによって、マスト通常支持部24bが基部24aに固定されている。また、その固定状態で、支持部側板24qの貫通穴には、基部側板24eの取付穴24hに挿入されるブッシュ104iが挿入されており、マスト通常支持部24bは、ブッシュ104iを軸として基部24aと一体的に回動可能となっている。
【0066】
また、各支持部側板24qは、基部側板24eから後側(アーム22の先端側)に突出する突出部24tを有しており、この突出部24t同士が当接部24rによって連結されている。当接部24rは、アダプタ本体24が前記基準位置にある状態で突出部24tの上端となる部分同士を連結している。この当接部24rは、倒伏姿勢にあるマスト112をマストフットピン114a,114bを支点として起立させるときに第1マスト本体112aの下面に当接して第1マスト本体112aを押し上げる部分である。
【0067】
位置保持部26は、アーム22が支持位置に配置されたときに退避位置側へ変位するのを阻止するようにそのアーム22を支持位置で保持し、アーム22が退避位置に配置されたときに支持位置側へ変位するのを阻止するようにそのアーム22を退避位置で保持するためのものである。
【0068】
具体的には、位置保持部26は、前記各基部側板24eのアーム支持部24cを構成する部分のうちアーム22の先端側に位置する端部に形成された保持穴26aと、保持ピン26bとによって構成されている。アーム22が支持位置に配置されたときには、アーム本体22aの基端部に設けられた支持位置用穴部22hが保持穴26aと重なるように配置され、保持ピン26bがその支持位置用穴部22hと保持穴26aに挿嵌されることによって、アーム22が退避位置側へ変位しないように保持される。また、アーム22が退避位置に配置されたときには、アーム本体22aの先端部寄りの位置に設けられた退避位置用穴部22iが保持穴26aと重なるように配置され、保持ピン26bがその退避位置用穴部22iと保持穴26aに挿嵌されることによって、アーム22が支持位置側へ変位しないように保持される。
【0069】
マスト起伏用サブアダプタ10(図2参照)は、倒伏姿勢にあるマスト112をマストフットピン114a,114bを支点として起立させるときに、第2シリンダ本体6aから進出する第2作動部6bの第2ロッド部6dによって駆動されて第2マスト本体112bのうち基端部112eよりも後側(先端側)に位置する部位を下から押し上げるためのものである。具体的には、このマスト起伏用サブアダプタ10は、マストフットピン114a,114bがマスト本体112a,112bの基端部112d,112eと結合状態にあるときに、第2シリンダ本体6aから進出する第2作動部6bによって駆動されてマスト起伏用アダプタ8と同じ軸回りに回動し、倒伏姿勢にある第2マスト本体112bのうちその基端部112eよりも後側に位置する部位を押し上げて第2マスト本体112bをマストフットピン114bを支点として起立させる。このマスト起伏用サブアダプタ10は、マスト起伏用アダプタ8の前記マスト通常支持部24bと同様の構造の部材に第2ロッド部6dの先端部との接続部が設けられた構造を有している。なお、このマスト起伏用サブアダプタ10は、マスト起伏用アダプタ8が第1マスト本体112aを押し上げてマスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ離反させるときには、第2マスト本体112bの基端部112eとの間に上下方向において隙間が形成される位置に留まる。
【0070】
シリンダ制御装置12は、第1シリンダ本体4a及び第2シリンダ本体6aへの圧油の給排を制御することにより第1起伏シリンダ4及び第2起伏シリンダ6の伸縮動作を制御するものである。このシリンダ制御装置12は、倒伏姿勢にあるマスト112をマストフットピン114a,114bを支点として起立させるときには、前記両作動部4b,6bを両シリンダ本体4a,6aから同様に進出させる。これにより、マスト起伏用アダプタ8とマスト起伏用サブアダプタ10が同様に上向きに回動され、両マスト本体112a,112bを同様にマストフットピン114a,114bを支点として上向きに回動させてマスト112を起立させる。一方、シリンダ制御装置12は、マスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ離反させるときには、第2作動部6bを第2シリンダ本体6aから進出させることなく第1作動部4bのみを第1シリンダ本体4aから進出させる。これにより、マスト起伏用アダプタ8のみが上向きに回動され、そのマスト起伏用アダプタ8が第1マスト本体112aの基端部112d側を押し上げる。第1マスト本体112aと第2マスト本体112bは、先端連結部112cによって互いに連結されているため、マスト起伏用アダプタ8による第1マスト本体112aの押し上げに伴って第2マスト本体112bも同様に押し上げられ、両マスト本体112a,112bの基端部112d,112eが旋回フレーム104から上方に離反する。
【0071】
次に、この第1実施形態によるマスト起伏用アダプタ8を用いたクレーンのウィンチ取り外し方法について説明する。
【0072】
作業開始前の状態では、図4に示すようにマスト112がマストフットピン114a,114bを支点として後方へ倒伏した姿勢にある。また、図11に示すように、第1起伏シリンダ4が収縮状態にあり、マスト起伏用アダプタ8は、基準位置にある。また、第2起伏シリンダ6も同様に収縮状態にあり、マスト起伏用サブアダプタ10もマスト起伏用アダプタ8と同様の基準位置にある。
【0073】
この状態から、まず、マストフットピン114a,114bを取り外すことにより、マストフットピン114a,114bとマスト本体112a,112bの基端部112d,112eとの結合を解除する(結合解除工程)。
【0074】
その後、マスト本体112a,112bの先端側の所定の連結部位をそれぞれ対応する連結部材112iによって旋回フレーム104の対応する側壁部104bの後部に連結する。これは、マスト112の先端側の浮き上がりを抑えるための工程である。
【0075】
次に、マスト起伏用アダプタ8のアーム22を退避位置でアダプタ本体24に固定している保持ピン26bを抜き、アーム22をアダプタ本体24に対して退避位置から支持位置へ変位させる(アーム変位工程)。そして、アーム22に設けられた支持位置用穴部22hとアダプタ本体24に設けられた保持穴26aに保持ピン26bを挿嵌し、それによって、アーム22を支持位置で固定する。
【0076】
次に、シリンダ制御装置12が第1起伏シリンダ4の第1作動部4bを第1シリンダ本体4aから進出させる。これにより、マスト起伏用アダプタ8のアーム22がアダプタ本体24とともにブッシュ104iを軸として上向きに回動し、図12に示すように、当該アーム22の先端のローラ22bが倒伏姿勢にある第1マスト本体112aの基端部112d側を下から押し上げてマスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ離反させる(離反工程)。この際、ローラ22bは、当該アーム22による第1マスト本体112aの基端部112d側の押し上げに伴って第1マスト本体112aの下面に当接しながらその第1マスト本体112aの長手方向に沿って基端部112d側へ向かって転動する。そして、ローラ22bは、ストッパ112hに当接して基端部112d側へのそれ以上の変位が停止される。すなわち、マスト起伏装置2は、アーム22の先端のローラ22bがストッパ112hに当接するまで第1マスト本体112aの基端部112d側を押し上げる。シリンダ制御装置12は、ローラ22bがストッパ112hに当接した後、第1シリンダ本体4aからの第1作動部4bの進出を停止させ、その状態で第1起伏シリンダ4を保持する。なお、この離反工程では、シリンダ制御装置12は、第2起伏シリンダ6の第2作動部6bを第2シリンダ本体6aから進出させない。このため、マスト起伏用サブアダプタ10は回動せず、第1マスト本体112aとともに上方へ移動する第2マスト本体112bの基端部112eとマスト起伏用サブアダプタ10との間に隙間が形成される。
【0077】
その後、結合部材によるウィンチ116,118,120と旋回フレーム104との結合を解除し、そのウィンチ116,118,120を前記離反工程によりマスト112の基端部と旋回フレーム104の上面との間に形成された隙間を通じて旋回フレーム104上から取り外す(図5参照)(ウィンチ取り外し工程)。
【0078】
以上説明したように、この第1実施形態では、アーム22を支持位置とその支持位置での当該アーム22の先端の位置よりも前方に当該アーム22の先端が配置される退避位置との間で変位させることが可能であるため、旋回フレーム104上のウィンチ116,118,120の取り外し作業を容易に行えるようにすることと旋回フレーム104上の他の装備品の設置スペースの大幅な削減及びそれらの装備品のレイアウトの制約の大幅な増大を防ぐこととを両立することが可能である。具体的には、旋回フレーム104からのウィンチ116,118,120の取り外し時には、アーム22を退避位置から支持位置に変位させれば、アダプタ本体24からのアーム22の突出量を大きくすることができるため、アダプタ本体24の回動とともにそのアーム22でマスト112の基端部を押し上げてマスト112の基端部と旋回フレーム104の上面との間に大きな隙間を形成することができる。その結果、マスト112の基端部と旋回フレーム104の上面との間に形成された大きな隙間を通じてウィンチ116,118,120の取り外し作業を容易に行うことができる。その一方、マスト112を倒伏姿勢で保持するとともに第1起伏シリンダ4の第1作動部4bを第1シリンダ本体4a側へ退避させてアダプタ本体24を前記基準位置で保持しているときには、アーム22を退避位置に配置すれば、アーム22の後方への突出量を抑えることができる。その結果、アーム22と旋回フレーム104上の他の装備品との干渉を避けるために大きなスペースを旋回フレーム104上に確保する必要がなくなり、旋回フレーム104上の他の装備品の設置スペースの大幅な削減及びそれらの装備品のレイアウトの制約の大幅な増大を防ぐことができる。
【0079】
また、この第1実施形態では、アーム22がアダプタ本体24とともに回動してマスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ離反するように押し上げるときに、そのアーム22の先端のローラ22bが第1マスト本体112aの下面に当接しつつその下面に沿って転動するので、第1マスト本体112aの下面及びアーム22の先端に損傷が生じるのを防止することができるとともに、マスト112をスムーズに押し上げることができる。
【0080】
また、この第1実施形態では、マストフットピン114a,114bを支点としてマスト112を起立させるときには、マスト起伏用アダプタ8とマスト起伏用サブアダプタ10により第1マスト本体112aと第2マスト本体112bを両方とも下から押し上げるため、旋回フレーム104の幅方向においてマスト112を安定した状態で保持しながら、そのマスト112をマストフットピン114a,114bを支点として起立させることができる。その一方、マスト起伏用アダプタ8が第1マスト本体112aを押し上げることにより倒立姿勢にあるマスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ離反させるときには、第1マスト本体112aの基端部112dとともに上方へ移動する第2マスト本体112bの基端部112eとマスト起伏用サブアダプタ10との間に上下方向において隙間が形成されるため、ウィンチ116,118,120の取り外し時にそのウィンチ116,118,120のうち第2マスト本体112b側に突出するモータ116b,118b,120bを第2マスト本体112bの基端部112eとマスト起伏用サブアダプタ10との間に形成された隙間を通じて旋回フレーム104の外側へ逃がすことができる。従って、この第1実施形態によれば、ウィンチ116,118,120のモータ116b,118b,120bとマスト起伏用サブアダプタ10との干渉を回避しつつ、ウィンチ116,118,120を旋回フレーム104上から容易に外部へ離脱させることができる。
【0081】
また、この第1実施形態では、マスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ離反させるときには、マスト起伏用サブアダプタ10を回動させる必要がなく、シリンダ制御装置12が第2起伏シリンダ6の第2作動部6bを第2シリンダ本体6aから進出させることなく第1起伏シリンダ4の第1作動部4bのみを第1シリンダ本体4aから進出させるため、第1起伏シリンダ4及び第2起伏シリンダ6を両方とも駆動して第1作動部4b及び第2作動部6bの両方を進出させる場合に比べて動力を削減することができる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、図13〜図20を参照して、本発明の第2実施形態によるマスト起伏装置2及びマスト起伏用アダプタ8について説明する。
【0083】
この第2実施形態では、マスト起伏用アダプタ8のアーム22が旋回フレーム104の幅方向に延びる軸回りに回動可能となるようにアーム支持部24cに支持されており、アーム22は、その軸回りに回動することによって支持位置と退避位置との間で変位する。また、この第2実施形態では、マスト起伏用アダプタ8のアダプタ本体24では、上記第1実施形態のように基部24aとマスト通常支持部24bの2重構造となっておらず、基部24aとマスト通常支持部24bが一体のものとして形成されている。
【0084】
具体的には、この第2実施形態では、基部24aは、旋回フレーム104の幅方向に互いに離間しかつ互いに平行に配置された2枚の基部側板24eからなり、マスト通常支持部24bは、アダプタ本体24が図17に示すように基準位置にある状態で2枚の各基部側板24eから後方へ延出された2つの支持部側板24qと、それらの支持部側板24qの先端部同士を連結する当接部24rとからなる。
【0085】
また、アダプタ本体24のうち第1ロッド部4dの先端部と接続する接続部24dは、前記2つの支持部側板24qの基端部に設けられている。この接続部24dは、接続穴24kとそれに挿嵌されて第1ロッド部4dの先端部と接続する接続ピン24pとからなり、この接続部24dの第1ロッド部4dとの接続構造は、上記第1実施形態の接続部24dの第1ロッド部4dとの接続構造と同様である。
【0086】
また、アーム22を支持するためのアーム支持部24cは、アダプタ本体24のうち2つの支持部側板24qの長手方向の中間部に設けられている。このアーム支持部24cは、2つの支持部側板24q間に旋回フレーム104の幅方向に延びるように設けられたアーム支持ピン24vを有する。具体的には、2つの支持部側板24qの中間部には、その中間部を旋回フレーム104の幅方向に貫通するピン穴24wが形成されており、そのピン穴24wにアーム支持ピン24vが旋回フレーム104の幅方向に延びる姿勢で挿嵌されている。アーム本体22aを構成する内側板体22c及び外側板体22dの基端部には、図略のピン挿通穴が形成されており、そのアーム本体22aの基端部が前記2つの支持部側板24q間に配置された状態で当該ピン挿通穴にアーム支持ピン24vが挿通されている。すなわち、アーム22は、アーム支持ピン24vによってその軸回りに回動可能となるように軸支されている。これにより、アーム22は、図13に示す支持位置と図15に示す退避位置との間で回動可能となるようにアーム支持部24cによって支持されている。
【0087】
また、この第2実施形態では、2つの支持部側板24qの先端部に支持位置保持穴26cがそれぞれ設けられている。また、各支持部側板24qのうちその先端部からピン穴24wが設けられた位置にかけての部位から当接部24rと反対側に突出するように突設部24yがそれぞれ設けられており、この各突設部24yに退避位置保持穴26dが設けられている。この第2実施形態では、アダプタ本体24に対するアーム22の位置を保持するための位置保持部26は、前記支持位置保持穴26cと、前記退避位置保持穴26dと、保持ピン26bとによって構成されている。
【0088】
具体的には、アーム本体22aを構成する内側板体22c及び外側板体22dの基端部から少し先端寄りの位置には、アーム22が支持位置に配置されたときに前記支持位置保持穴26cと一致する位置に配置され、アーム22が退避位置に配置されたときに前記退避位置保持穴26cと一致する位置に配置される図略の被保持穴がそれぞれ形成されている。アーム22が支持位置に配置されたときには、そのアーム22の被保持穴とアダプタ本体24の支持位置保持穴26cに保持ピン26bが挿嵌されることによってアーム22がアダプタ本体24に対して退避位置側へ回動しないように保持される。一方、アーム22が退避位置に配置されたときには、そのアーム22の被保持穴とアダプタ本体24の退避位置保持穴26dに保持ピン26bが挿嵌されることによってアーム22がアダプタ本体24に対して支持位置側へ回動しないように保持される。
【0089】
この第2実施形態によるマスト起伏用アダプタ8及びそれを備えたマスト起伏装置2の上記以外の構成は、上記第1実施形態によるマスト起伏用アダプタ8及びマスト起伏装置2の構成と同様である。
【0090】
次に、この第2実施形態によるマスト起伏用アダプタ8とそれを備えたマスト起伏装置2を用いたクレーンのウィンチ取り外し方法について説明する。
【0091】
この第2実施形態では、図17に示すように、マスト112が倒伏姿勢にあり、アーム22が退避位置にある状態でマスト起伏用アダプタ8が基準位置にある状態においてマストフットピン114a,114bを抜く。その後、シリンダ制御装置12が第1起伏シリンダ4の第1作動部4bを第1シリンダ本体4aから進出させ、図18に示すようにマスト起伏用アダプタ8を所定の角度まで上向きに回動させる。
【0092】
次に、保持ピン26bを退避位置保持穴26d及び前記被保持穴から抜き、退避位置にあるアーム22を支持位置まで回動させる。これにより、図19に示すように、アーム22の先端のローラ22bが第1マスト本体112aの下面に当接する。そして、保持ピン26bを支持位置保持穴26c及び前記被保持穴に挿嵌し、アーム22を支持位置でアダプタ本体24に対して固定する。
【0093】
この後、シリンダ制御装置12が第1起伏シリンダ4の第1作動部4bを第1シリンダ本体4aからさらに進出させ、アダプタ本体24とともにアーム22をさらに上向きに回動させる。これにより、図20に示すように、アーム22の先端部のローラ22bが倒伏姿勢にある第1マスト本体112aの基端部112d側を下から押し上げてマスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ離反させる。
【0094】
この後、上記第1実施形態と同様にして、各ウィンチ116,118,120をマスト112の基端部と旋回フレーム104との間に形成された隙間を通じて旋回フレーム104上から取り外す。
【0095】
この第2実施形態によるウィンチ取り外し方法の上記以外の構成は、上記第1実施形態によるウィンチ取り外し方法と同様である。
【0096】
この第2実施形態では、アーム22を支持位置に配置することによりアーム22がマスト通常支持部24bよりも大きく後側に突出するため、旋回フレーム104からのウィンチ116,118,120の取り外し時には、アダプタ本体24の回動とともにそのアーム22でマスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ大きく離反させてマスト112の基端部と旋回フレーム104との間に大きな隙間を形成することができる。一方、マスト起伏用アダプタ8を基準位置に配置した状態でアーム22を支持位置から退避位置に回動させることにより、アーム22が支持位置にある場合よりもアーム22の先端が前方の位置に配置されるため、アーム22と旋回フレーム104上の他の装備品との干渉を回避するためにそれらの装備品の設置スペースの大幅な削減及びそれらの装備品のレイアウトの制約の大幅な増大が生じるのを防ぐことができる。従って、この第2実施形態では、旋回フレーム104上に搭載されたウィンチ116,118,120の取り外し作業を容易に行うことができるとともに、旋回フレーム104上の装備品の設置スペースの大幅な削減及びそれら装備品のレイアウトの制約の大幅な増大を防ぐことができるという上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0098】
例えば、アーム支持部24cの構造は、上記の構造に限定されない。アーム支持部24cは、アームがマスト通常支持部よりも後方に突出する支持位置と、アームが支持位置にあるときよりもそのアームの先端が前方に配置される退避位置との間でアームがアダプタ本体に対して相対的に変位可能となるようにそのアームを支持するようなものであればどのような構造のものであってもよい。
【0099】
また、シリンダ制御装置12は、マスト112の基端部を旋回フレーム104から上方へ離反させるときに起伏シリンダ4,6の作動部4b,6bを両方ともシリンダ本体4a,6aから進出させてもよい。
【符号の説明】
【0100】
2 マスト起伏装置
4 第1起伏シリンダ(起伏シリンダ)
4a 第1シリンダ本体(シリンダ本体)
4b 第1作動部(作動部)
6 第2起伏シリンダ
6a 第2シリンダ本体
6b 第2作動部
8 マスト起伏用アダプタ
10 マスト起伏用サブアダプタ
12 シリンダ制御装置
22 アーム
22a アーム本体
22b ローラ
24 アダプタ本体
24b マスト通常支持部
24c アーム支持部
102 下部走行体(下部本体)
104 旋回フレーム
112 マスト
112a 第1マスト本体
112b 第2マスト本体
112d、112e 基端部
114a 第1マストフットピン(支持軸)
114b 第2マストフットピン(支持軸)
116 主巻ウィンチ(ウィンチ)
118 補巻ウィンチ(ウィンチ)
120 ブーム起伏ウィンチ(ウィンチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部本体と、その下部本体上に旋回自在に搭載される旋回フレームと、特定方向に延びるマストと、前記旋回フレームの前部に設けられ、前記マストの基端部に着脱可能に結合し、その結合状態で前記マストの基端部が前記旋回フレームの前後方向に直交する幅方向に延びる水平軸回りに回動可能となるようにその基端部を支持する支持軸と、前記マストが前記支持軸を支点として前記旋回フレームの後方へ延びるように倒伏した倒伏姿勢にある状態で前記旋回フレームのうちそのマストの下方に位置する部位に搭載されたウィンチと、前記旋回フレームの前部に取り付けられたシリンダ本体及びそのシリンダ本体の軸方向に沿って当該シリンダ本体に対して進退する作動部を有し、その作動部の進退により伸縮する起伏シリンダとを備えたクレーンに用いられ、前記シリンダ本体から進出する前記作動部によって駆動されて前記倒伏姿勢にある前記マストのうち前記基端部よりも後側に位置する部位を押し上げ、前記支持軸が前記マストの基端部と結合状態にある場合にはそのマストを前記支持軸を支点として起立させる一方、前記支持軸と前記マストの基端部との結合が解除されている場合にはそのマストの基端部を前記旋回フレームから上方へ離反させるためのマスト起伏用アダプタであって、
前記旋回フレームの幅方向に延びる軸回りに回動可能となるように前記旋回フレームの前部に取り付けられ、その取付部位よりも後側に位置する部位で前記作動部と接続されてその作動部の進退に応じて上下に回動するアダプタ本体と、
前記倒伏姿勢にある前記マストの基端部を前記旋回フレームから上方へ離反させるときに前記アダプタ本体とともに回動して前記マストを下から押し上げるアームとを備え、
前記アダプタ本体は、前記倒伏姿勢にある前記マストを前記支持軸を支点として起立させるときに前記アダプタ本体とともに回動して前記マストを下から押し上げるマスト通常支持部と、前記アームが前記マストを下から押し上げるときに配置される支持位置と前記マストを押し上げないときに配置される退避位置との間で前記アダプタ本体に対して相対的に変位可能となるようにそのアームを支持するアーム支持部とを有し、
前記アームが前記支持位置にある場合には、当該アームは、前記マスト通常支持部が後方へ延びるように前記アダプタ本体が特定の回動位置に配置されたときにそのマスト通常支持部よりも後方へ突出し、前記アームが前記退避位置にある場合には、当該アームの先端は、そのアームが前記支持位置にある状態で前記アダプタ本体が前記特定の回動位置に配置されたときのそのアームの先端の位置よりも前方の位置に配置される、マスト起伏用アダプタ。
【請求項2】
前記アーム支持部は、前記アームがその長手方向に沿って前記アダプタ本体に対して変位可能となるようにそのアームを支持し、
前記アームの前記退避位置は、前記支持位置からそのアームがその長手方向に沿って前記アダプタ本体側へ退避した特定の位置である、請求項1に記載のマスト起伏用アダプタ。
【請求項3】
前記アーム支持部は、前記アームが前記旋回フレームの幅方向に延びるアーム回動軸回りに前記アダプタ本体に対して回動可能となるようにそのアームを支持し、
前記アームの前記退避位置は、そのアームが前記支持位置から当該アームの先端が下方へ変位するように前記アーム回動軸回りに回動した特定の位置である、請求項1に記載のマスト起伏用アダプタ。
【請求項4】
前記アームは、当該アームの長手方向に延び、前記アーム支持部に支持されるアーム本体と、そのアーム本体の先端に前記旋回フレームの幅方向に延びる軸回りに回転可能となるように支持され、当該アームが前記マストを下から支持するときにそのマストの下面に当接するローラとを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスト起伏用アダプタ。
【請求項5】
下部本体と、その下部本体上に旋回自在に搭載される旋回フレームと、特定方向に延びるとともに前記旋回フレームの前後方向に直交する幅方向に並んで配置され、互いに一体となるように連結された第1マスト本体及び第2マスト本体を有するマストと、前記旋回フレームの前部に設けられ、前記両マスト本体の基端部に着脱可能に結合し、その結合状態で前記両マスト本体の基端部が前記旋回フレームの幅方向に延びる水平軸回りに回動可能となるようにそれらの基端部を支持する支持軸と、前記マストが前記支持軸を支点として前記旋回フレームの後方へ延びるように倒伏した倒伏姿勢にある状態で前記旋回フレームのうちそのマストの下方に位置する部位に搭載されたウィンチとを備えたクレーンに用いられ、前記支持軸が前記両マスト本体の基端部と結合状態にあるときに前記倒伏姿勢にある前記マストを前記支持軸を支点として起立させる一方、前記支持軸と前記両マスト本体の基端部との結合が解除されているときに前記マストの基端部を前記旋回フレームから上方へ離反させるためのマスト起伏装置であって、
前記旋回フレームの前部のうち前記第1マスト本体に対応する位置に取り付けられた第1シリンダ本体及びその第1シリンダ本体の軸方向に沿って当該第1シリンダ本体に対して進退する第1作動部を有し、その第1作動部の進退により伸縮する第1起伏シリンダと、
前記旋回フレームの前部のうち前記第2マスト本体に対応する位置に取り付けられた第2シリンダ本体及びその第2シリンダ本体の軸方向に沿って当該第2シリンダ本体に対して進退する第2作動部を有し、その第2作動部の進退により伸縮する第2起伏シリンダと、
前記第1シリンダ本体から進出する前記第1作動部によって駆動され、前記倒伏姿勢にある前記第1マスト本体のうちその基端部よりも後側に位置する部位を押し上げる請求項1〜4のいずれか1項に記載のマスト起伏用アダプタと、
前記旋回フレームの前部のうち前記第2マスト本体の基端部に対応する位置に前記マスト起伏用アダプタの前記アダプタ本体と同じ軸回りに回動可能となるように取り付けられ、前記支持軸が前記両マスト本体の基端部と結合状態にあるときには、前記第2シリンダ本体から進出する前記作動部によって駆動されて前記アダプタ本体と同期するように回動し、前記倒伏姿勢にある前記第2マスト本体のうちその基端部よりも後側に位置する部位を押し上げて前記第2マスト本体を前記支持軸を支点として起立させ、前記マスト起伏用アダプタが前記第1マスト本体を押し上げて前記マストの基端部を前記旋回フレームから上方へ離反させるときには、上方へ移動する前記第2マスト本体の基端部との間に上下方向において隙間が形成される位置に留まるマスト起伏用サブアダプタとを備える、マスト起伏装置。
【請求項6】
前記倒伏姿勢にある前記マストを前記支持軸を支点として起立させるときには、前記第1作動部を前記第1シリンダ本体から進出させるとともに前記第2作動部を前記第2シリンダ本体から進出させ、前記マストの基端部を前記旋回フレームから上方へ離反させるときには、前記第2作動部を前記第2シリンダ本体から進出させることなく前記第1作動部のみを前記第1シリンダ本体から進出させるシリンダ制御装置をさらに備える、請求項5に記載のマスト起伏装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のマスト起伏用アダプタを用いて、前記旋回フレームに搭載された前記ウィンチを取り外すウィンチ取り外し方法であって、
前記支持軸と前記倒伏姿勢にある前記マストの基端部との結合を解除する結合解除工程と、
前記アームを前記退避位置から前記支持位置へ変位させるアーム変位工程と、
前記結合解除工程及び前記アーム変位工程の後、前記起伏シリンダの前記作動部を前記シリンダ本体から進出させて前記アダプタ本体とともに前記アームを回動させ、そのアームの先端で前記倒伏姿勢にある前記マストを下から押し上げてそのマストの基端部を前記旋回フレームから上方へ離反させる離反工程と、
前記離反工程の後、前記旋回フレーム上に搭載された前記ウィンチを前記マストの基端部と前記旋回フレームの上面との間の隙間を通じて前記旋回フレーム上から取り外すウィンチ取り外し工程とを備えた、ウィンチ取り外し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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