説明

マッサージ機能付き乗り物用シート

【課題】 乗り物用シートの座り心地を低下させることなく後側の乗り物用シートに座った人の脚を効果的にマッサージできる。施療手段をマッサージしたい部位にぴったりとフィットさせることができる。現状の乗り物用シートの構成部材を利用してマッサージ装置を取付けることも可能となる。
【解決手段】 前後に配置された乗り物用シート1において、前側の乗り物用シート1の背面部に後側の乗り物用シート1に座った人をマッサージするための施療手段2を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機能付き乗り物用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗り物用シートに人体をマッサージするための施療手段を設けたマッサージ機能付き乗り物用シートが特許文献1等により知られている。
【0003】
上記特許文献1に示された従来のマッサージ機能付き乗り物用シートは、乗り物用シートの背もたれ部や座部にエアーバックを設け、エアーを給排気してエアーバックを膨張、収縮することで当該乗り物用シートに座っている人の背中や、臀部をマッサージするようになっている。
【0004】
しかしながら上記従来例にあっては、乗り物用シートに座っている人の背中や、臀部をマッサージするものであり、脚をマッサージするものではなかった。
【0005】
ところが、長時間乗り物用シートに座り続けていると、脚を動かさないため、脚の血管やリンパ管の収縮運動が少なく、脚が鬱血してむくみ易いという問題があり、これがひどくなると鬱血によりいわゆるエコノミークラス症候群と称される肺血栓の発生原因となってしまうという問題がある。
【0006】
そこで、乗り物用シートにエアーバックを備えたフットレストを設け、当該乗り物用シートに座っている人の脛をフットレストに設けた施療手段によりマッサージするものが特許文献2により提案されている。
【0007】
ところが、上記特許文献1に示された従来にあっては、乗り物用シートに座った人が背もたれ部に背中をもたれさせることで、背中を施療手段に背中を押付けて、施療手段によりマッサージするようにしており、施療手段を背中にぴったりとフィットさせることはできなかった。
【0008】
また、また上記特許文献1にあっては、乗り物用シートの座部や背もたれ部に施療手段を設けて座った人の背中や臀部をマッサージするものであるから、施療手段を備えていない乗り物用シートに比べて、シートとしての座り心地が低下するという問題があり、更に、特許文献2にあっては、前面側に施療手段を設けたフットレストの前面側に脚を支持させた状態で施療手段により脹脛をマッサージするものであるから、施療手段を備えていない脚を支持することのみを目的としたフットレストに比べ、施療手段を前面側に設けたフットレストは脚の支持心地が低下するという問題があった。
【0009】
しかも、特許文献1や特許文献2においては施療手段は乗り物用シートの座部や背もたれ部やフットレストの内部に内装しなければならず、施療手段を内部に組み込んだ新たな乗り物用シートが必要となるという問題があった。
【0010】
さらに、特許文献1や特許文献2における施療手段はエアーバックであるが、これらの従来例においてはエアーバックを乗り物用シートにの背もたれ部や座部やフットレストにエアーバックを設けて、当該乗り物用シートに座った人を背面側からマッサージするものであるから、乗り物が急停車した際、乗り物用シートに座っている人は慣性により前方(エアーバックから離れる方向)に移動するものであり、このため、従来の背もたれ部や座部やフットレストに設けたエアーバックはマッサージの役目しかなく、乗り物が急停車した際のエアーバックの役目など果たすことができなかった。
【特許文献1】特開2000−279467号公報
【特許文献2】国際公開第WO2002/078999号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、後側の乗り物用シートに座った人の脚を効果的にマッサージでき、また、施療手段をマッサージしたい部位にぴったりとフィットさせることができ、また、現状の乗り物用シートの構成部材を利用してマッサージ装置を取付けることも可能となると共に、乗り物用シートの座り心地を低下させないようにすることも可能となり、更に、乗り物が急停車した際に急激な衝撃が加わった際に衝撃を吸収する役目を果たすことも可能なマッサージ機能付き乗り物用シートを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係るマッサージ機能付き乗り物用シートは、前後に配置された乗り物用シート1において、前側の乗り物用シート1の背面部に後側の乗り物用シート1に座った人をマッサージするための施療手段2を設けて成ることを特徴とするものである。
【0013】
このような構成とすることで、前側の乗り物用シート1に備わっている前後移動機構やリクライニング機構を利用して、前側の乗り物用シート1の背面部に設けた施療手段2を後側の乗り物用シート1に座った人の脚にフィットさせてマッサージすることができる。ここで、施療手段2は前側の乗り物用シート1の背面部に設けるので、乗り物用シート1に従来と同様に背中や臀部をマッサージする別の施療手段を設けない場合は、現状の乗り物用シートの構成部材を利用してマッサージ装置を取付けることも可能となり、また、この場合は、前側の乗り物用シート1、施療手段2を設けたと言えども、後側の乗り物用シート1の座り心地が低下させることがない。
【0014】
また、前側の乗り物用シート1の背面部に人体の膝より下の部分の形状に沿うような凹形状をした凹部3を設け、該凹部3に人体をマッサージするための施療手段2を設けることが好ましい。
【0015】
このような構成とすることで、脚の膝より下の部分(下腿)にフィットさせて効果的に脚の膝より下の部分のマッサージができる。
【0016】
また、凹部3の中央部に仕切り部4を設けることが好ましい。
【0017】
このような構成とすることで、中央部の仕切り部4で仕切られた凹部3の左右の部分を、左右の脚の膝より下の部分をそれぞれフィットさせてマッサージ時に左右の脚が動かないように保持した状態でマッサージをすることができる。
【0018】
また、前側の乗り物用シート1の背面部に、閉状態で前側の乗り物用シート1に沿い且つ開状態で後側の乗り物用シート1に座った人の膝より上の部分に対向する回動板5を回動自在に取付け、回動板5に開状態で後側の乗り物用シート1に座った人の膝より上の部分をマッサージするための施療手段2を設けることが好ましい。
【0019】
このような構成とすることで、使用する時は、回動板5を開いて倒し、後側の乗り物用シート1に座った人の膝より上の部分に施療手段2を押付けることで、膝より上の部分の前面側をしっかりとマッサージができる。また、使用しない時は、回動板5を起立させて閉じることで、前側の乗り物用シート1に沿わせることで、施療手段2が邪魔にならないようにできる。
【0020】
また、施療手段2がエアーバック6とエアーバック6にエアーを供給する供給手段とで構成してあることが好ましい。
【0021】
このような構成とすることで、エアーバック6は本来の施療手段2としての機能に加え、乗り物が急停車した際、エアーバック6により急停車した際の衝撃を緩和することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記のように構成したので、前側の乗り物用シートの背面側に設けた施療手段を利用して後側の乗り物用シートに座った人の脚を効果的にマッサージすることができ、乗り物用シートに長時間座っていても脚がむくむのを防止できる。また、乗り物用シートに備わっている前後移動機構やリクライニング機構を利用して、前側の乗り物用シートの背面部に設けた施療手段を後側の乗り物用シートに座った人の脚にフィットさせて効果的なマッサージができる。更に、施療手段を前側の乗り物用シートの背面部に設けるので、乗り物用シートに従来と同様に背中や臀部をマッサージする別の施療手段を設けない場合は、現状の乗り物用シートの構成部材を利用してマッサージ装置を取付けることも可能となり、この場合は、施療手段を設けたと言えども、後側の乗り物用シートの座り心地が低下させることがなく、座り心地の良い乗り物用シートに座った状態で効果的に脚のマッサージができる。
【0023】
また、乗り物用シートに座った人の脚の膝から下、あるいは膝から上にフィットさせて動かないようにした状態でマッサージができ、しっかりとしたマッサージができる。
【0024】
また、施療手段がエアーバックとエアーバックにエアーを供給する供給手段とで構成してあると、エアーバックは本来の施療手段としての機能に加え、乗り物が急停車した際における衝撃を緩和の機能を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0026】
自動車、電車、飛行機のような乗り物には前後に乗り物用シート1が設けてあり、本発明においては、この前後に配置された乗り物用シート1の、前側シート1(以下1aと表記する)の背面部に後側の乗り物用シート1(以下1bと表記する)に座った人をマッサージするための施療手段2が設けてある。
【0027】
図1、図2に示す実施形態においては、前側の乗り物用シート1aの背面部の下部に人体の膝より下の部分の形状に沿うような凹形状をした凹部3を設けてあり、この凹部3に人体をマッサージするための施療手段2が設けてある。
【0028】
前側の乗り物用シート1aの背面部の下部に凹部3を設けるに当たっては、前側の乗り物用シート1aを形成する際に背面部に凹部3を一体に形成する場合、あるいは、前側の乗り物用シート1aとは別体の凹部3を形成したマッサージユニットを前側の乗り物用シート1aの背面下部に取付ける場合がある。前者は、外観が良く、また、凹部3部分が後者に比べて後側の乗り物用シート1b側に突出せず後側の乗り物用シート1bに座ったり、出たりするのに凹部3部分が邪魔にならないようにできる。一方、後者は、前側の乗り物用シート1aの背面に別体のマッサージユニットを取付けるものであるから、コストが安く、また、既存の前側の乗り物用シート1aの背面に取付けることも可能である。
【0029】
いずれの実施形態においても、凹部3の左右方向(後側の乗り物用シート1bに座っている人から見て左右方向)の中央部には縦方向に仕切り部4が設けてあり、中央部の仕切り部4で仕切られた凹部3の左右の部分が、左右の脚の膝より下の部分(下腿)をフィットさせることができるような左側凹部3aと、右側凹部3bとなっている。
【0030】
左側凹部3aと、右側凹部3bはいずれも、左右方向の両内面に脚の膝より下の部分の両側であるふくらはぎの左右両側部をマッサージすることができるように施療手段2が設けてある。
【0031】
上記のような構成において、使用に当たっては、後側の乗り物用シート1bに座った人が左右の両脚の膝より下の部分(下腿)を左側凹部3aと、右側凹部3bに入れてフィットさせる。この場合、自動車の場合は少なくとも前側の乗り物用シート1aは移動機構により前後方向に移動自在となっており、前側の乗り物用シート1aを前後方向に移動させることで(後側の乗り物用シート1bが前後方向に移動となっている場合は後側の乗り物用シート1bを前後方向に移動させることで)、後側の乗り物用シート1bに座った人が左右の両脚の膝より下の部分(下腿)を左側凹部3aと、右側凹部3bにぴったりと入れてフィットさせることができる。
【0032】
このようにして後側の乗り物用シート1bに座った人が左右の両脚の膝より下の部分(下腿)を左側凹部3aと、右側凹部3bに入れてフィットさせ、左右の両脚の膝より下の部分(下腿)が逃げないように保持した状態で、施療手段2により両脚の膝より下の部分(下腿)を効果的にマッサージするものである。この場合、施療手段2により両脚の膝より下の部分(下腿)のふくらはぎの左右両側がマッサージされることになり、疲労が回復されると共に、膝より下の部分(下腿)の血液、リンパ液の流れを促進し、乗り物用シートに長時間座っていても脚がむくむのを防止することができる。
【0033】
図3、図4には本発明の他の実施形態が示してある。本実施形態では、前側の乗り物用シート1aの背面部に、マッサージユニットを回動自在に取付けてある。マッサージユニットは、回動板5の背面に施療手段2を設けて構成してあり、回動板5の下端が軸部7により回動自在に取付けてある。この回動板5は、閉状態で前側の乗り物用シート1に沿って起立し、且つ、開状態で後側の乗り物用シート1に座った人の膝より上の部分に対向するように横向きに倒れるようになっていて、このように横向きとなるように倒した開状態で施療手段2が、後側の乗り物用シート1bに座った人の膝より上の部分(上腿)に対向して、膝より上の部分(上腿)をマッサージすることができるようになっている。上記の構成のマッサージユニットは、前側の乗り物用シート1aを形成する際に背面側にマッサージユニットを組み込んであってもよく、また、既存の前側の乗り物用シート1aの背面に別体のマッサージユニットの回動板5の下端部を回動自在に取付けてもよい。
【0034】
上記回動板5は、前側の乗り物用シート1aに沿って起立した閉状態で倒れないように保持する起立状態保持手段(図示せず)が設けてあり、また、横向きに倒した開状態でそれ以上倒れず且つ閉方向にも回動しないように横向き状態を保持するための横向き状態保持手段(図示せず)が設けてある。
【0035】
上記のような構成において、使用に当たっては、回動板5を開いて横向きに倒すことで、回動板5の背面に設けた施療手段2を、後側の乗り物用シート1bに座っている人の膝より上の部分(上腿)に対向させ、横向き状態保持手段により横向き状態を保持する。次に、施療手段2を駆動して膝より上の部分(上腿)を施療手段2によりマッサージするものである。これにより疲労が回復されると共に、膝より上の部分(上腿)の血液、リンパ液の流れを促進し、乗り物用シートに長時間座っていても脚がむくむのを防止することができる。
【0036】
上記使用の際、前側の乗り物用シート1aのリクライニング機構を利用して前側の乗り物用シート1aの起倒状態を調整することで、横向き状態保持手段で横向き状態を保持された回動板5の上下位置調整を行って、施療手段2を膝より上の部分(上腿)に押付けて膝より上の部分(上腿)が動かないようにして、膝より上の部分をしっかりとマッサージができる。また、使用しない時は、横向き状態保持手段による保持を解除して回動板5を起立させて閉じ、起立状態保持手段により起立状態を保持させる。このように回動板5を起立させて前側の乗り物用シート1に沿わせることで、施療手段2が邪魔にならないようにできる。
【0037】
施療手段2としては、従来から周知の各種施療手段を採用することができる。例えば、エアーバック6とエアーバック6にエアーを供給する供給手段(図示せず)とで施療手段2を構成したり、あるいは、機械的駆動手段により駆動される施療子により施療手段2を構成したりする。
【0038】
ここで、エアーバック6とエアーバック6にエアーを供給する供給手段とで施療手段2を構成した場合、エアーバック6は膨張、収縮を繰り返すことで、本来の施療手段2としての機能に加え、乗り物が急停車した際、エアーバック6により急停車した際の衝撃を緩和する機能を有している。
【0039】
エアーバック6が急停車した際の衝撃を緩和する機能を有する例としては、上記エアーバック6の施療のための使用している時に急停車した際に、エアーバック6により衝撃吸収ができる。したがって、エアーバック6の使用中に急停車した際、後側の乗り物用シート1bに座っている人が慣性により前に移動して乗り物用シート1bに衝突しようとするが、前側の乗り物用シート1aの背面部に設けたマッサージ用のエアーバック6により、上記急停車による衝撃を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態の概略側面図である。
【図2】同上の前側の乗り物用シートの斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態の概略側面図である。
【図4】同上の前側の乗り物用シートの斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 乗り物用シート
2 施療手段
3 凹部
4 仕切り部
5 回動板
6 エアーバック



【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に配置された乗り物用シートにおいて、前側の乗り物用シートの背面部に後側の乗り物用シートに座った人をマッサージするための施療手段を設けて成ることを特徴とするマッサージ機能付き乗り物用シート。
【請求項2】
前側の乗り物用シートの背面部に人体の膝より下の部分の形状に沿うような凹形状をした凹部を設け、該凹部に人体をマッサージするための施療手段を設けて成ることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機能付き乗り物用シート。
【請求項3】
凹部の中央部に仕切り部を設けて成ることを特徴とする請求項2記載のマッサージ機能付き乗り物用シート。
【請求項4】
前側の乗り物用シートの背面部に、閉状態で前側の乗り物用シートに沿い且つ開状態で後側の乗り物用シートに座った人の膝より上の部分に対向する回動板を回動自在に取付け、回動板に開状態で後側の乗り物用シートに座った人の膝より上の部分をマッサージするための施療手段を設けて成ることを特徴とする請求項1記載のマッサージ機能付き乗り物用シート。
【請求項5】
施療手段がエアーバックとエアーバックにエアーを供給する供給手段とで構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のマッサージ機能付き乗り物用シート。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−104449(P2010−104449A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277432(P2008−277432)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】