説明

マッドガードの取付構造

【課題】 本発明は、マッドガードの仮止めが可能で、かつ取付作業が容易となるマッドガードの取付構造を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、ホイールハウス2を構成する後部部材の補強パネル3,4およびフレーム5に、マッドガード20が締結されるマッドガードの取付構造において、後部部材の補強パネル4には治具孔6が設けられているとともに、マッドガード20には、治具孔6の下縁フランジ7aに係合する引っ掛け部22が形成され、引っ掛け部22を治具孔6の下縁フランジ7aに係合させることにより、マッドガード20が仮止めされるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッドガードの取付構造に係り、詳しくは、取付作業を容易にしたマッドガードの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、マッドガードは、自動車走行中のタイヤの回転に伴って飛び跳ねる泥、小石等が車体に当たるのを防止するために設けられている。そのため、マッドガードは、タイヤの後方に配置され、自動車のホイールハウスを構成するパネル等にスクリュー等で取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−207831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、マッドガードをホイールハウスに取付ける場合、特に交換作業を行う場合に、マッドガード取付用パネルとタイヤとの間に十分なスペースがないので、従来の取付構造では作業が極めて煩雑であった。一方、マッドガードをホイールハウスに取付ける際に、マッドガードを仮止めできれば便利である。しかしながら、ホイールハウスを構成するパネルにマッドガードの仮止め部を形成する場合、パネル成形時の形状が複雑となるため、部品コストが嵩んでしまうという不具合を有していた。
【0004】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、マッドガードの仮止めが可能で、かつ取付作業が容易となるマッドガードの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来技術の有する課題を解決するために、請求項1の本発明では、ホイールハウスを構成する後部部材に、マッドガードが締結されるマッドガードの取付構造において、前記後部部材には孔が設けられているとともに、前記マッドガードには、前記孔の下縁に係合する引っ掛け部が形成され、該引っ掛け部を前記孔の下縁に係合させることにより、前記マッドガードが仮止めされるように構成されている。
【0006】
請求項2の本発明では、請求項1の発明において、前記マッドガードの引っ掛け部の上方に、先端を上方に向けて屈曲させたL字状の突出部が形成され、該突出部を前記後部部材の孔に挿通させ、かつ前記突出部の先端を前記孔の上縁に係合させることにより、前記マッドガードが前記後部部材に係合するように構成されている。
【0007】
請求項3の本発明では、請求項1または2の発明において、前記後部部材の孔の側部周縁に、前記マッドガードの方向に突出するフランジが形成されているとともに、前記マッドガードには、前記フランジを跨ぐ位置に凸部がそれぞれ形成され、それらの凸部を前記フランジを挟み込むようにして前記マッドガードを前記後部部材に重ね合わせることにより、前記マッドガードの幅方向の位置決めが行われるように構成されている。
【0008】
請求項4の本発明では、請求項1〜3のいずれかの発明において、前記孔として、スポット溶接用の治具孔が用いられている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、ホイールハウスを構成する後部部材に、マッドガードが締結されるマッドガードの取付構造において、前記後部部材には孔が設けられているとともに、前記マッドガードには、前記孔の下縁に係合する引っ掛け部が形成され、該引っ掛け部を前記孔の下縁に係合させることにより、前記マッドガードが仮止めされるように構成されているので、マッドガードを取付ける際に、当該マッドガードを仮止めすることができ、その結果、取付作業が容易になり、作業性の向上を図ることができる。
【0010】
請求項2の発明では、前記マッドガードの引っ掛け部の上方に、先端を上方に向けて屈曲させたL字状の突出部が形成され、該突出部を前記後部部材の孔に挿通させ、かつ前記突出部の先端を前記孔の上縁に係合させることにより、前記マッドガードが前記後部部材に係合するように構成されているので、マッドガードを取付けた状態で、突出部によってマッドガードをホイールハウスの後部部材に係止でき、マッドガードを強固に保持することができる。
【0011】
請求項3の発明では、前記後部部材の孔の側部周縁に、前記マッドガードの方向に突出するフランジが形成されているとともに、前記マッドガードには、前記フランジを跨ぐ位置に凸部がそれぞれ形成され、それらの凸部を前記フランジを挟み込むようにして前記マッドガードを前記後部部材に重ね合わせることにより、前記マッドガードの幅方向の位置決めが行われるように構成されているので、取付作業をより一層容易にかつ確実に行うことができる。しかも、後部部材の孔はしっかりと閉じられることになるので、孔への泥、砂等の侵入を防ぐことができ、その結果、サビの発生を防止でき、車体の耐久性向上を図ることができる。
【0012】
請求項4の発明では、前記孔として、スポット溶接用の治具孔が用いられているので、治具孔が前輪の外周面と対面する部位の補強パネルに形成されて見易い位置となり、マッドガードの仮保持を容易に行うことができる。また、治具孔を利用するので、ホイールハウスの後部部材に特別な孔を設ける必要がなくなり、マッドガードに引っ掛け部等を形成するだけで済み、位置決め構造が単純で、安価に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るマッドガードの取付構造を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
ここで、図1は本発明の実施の形態に係るマッドガードの取付構造が適用される自動車の前部構造を示す分解斜視図、図2はマッドガードが取付けられるホイールハウスの後部部材およびマッドガードを示す斜視図、図3はマッドガードを後部部材に取付ける態様を示す部分断面図、図4はマッドガードを仮止めした状態を示す斜視図、図5は図4におけるA−A線断面図で、マッドガードを仮止めした状態を示す図、図6は図4におけるB−B線断面図、図7は図2におけるC−C線断面図で、マッドガードを締結した状態を示す図、図8は図4におけるD−D線断面図で、マッドガードを締結した状態を示す図、図9は図2におけるE−E線断面図で、マッドガードを締結した状態を示す図、図10は図2におけるF−F線断面図で、マッドガードを締結した状態を示す図である。
【0015】
自動車1の前輪側のホイールハウス2の後部内側には、図1および図2に示すように、サイド補強パネル3およびセンター補強パネル4が車幅方向に沿って配設されており、該センター補強パネル4の側部には、車体前後方向へ延びるフレーム5が配設されている。これら補強パネル3,4およびフレーム5は、ホイールハウス2を構成する後部部材である。
【0016】
サイド補強パネル4には、四角形状のスポット溶接用治具孔(以下、治具孔という)6が穿設されている。この治具孔6は、スポット溶接をするために設けられている既存の孔であり、図示しないスポット溶接用治具が当該治具孔6を介して挿入されることにより、補強パネル3,4が互いにスポット溶接にて接合されるようになっている。そして、治具孔6の縁部には、前輪側に突出するフランジ7が形成されており、これによって治具孔6がマッドガード20の仮止めにも用いられるようになっている。
また、サイド補強パネル3およびセンター補強パネル4の車体外側には、リーンフォースメント8がアーチ状に設けられており、該リーンフォースメント8の下端側には、孔8bを有する舌片部8aが形成されている。
【0017】
マッドガード20は、EVA樹脂材によって一体的に屈曲形成され、主として主部20a、側部20bおよび取付部20gから構成されており、ホイールハウス2の内面に形状が追従する程度の柔軟性を有している。マッドガード20には、補強パネル4の方向に突出する突出部21と引っ掛け部22とが上下方向に間隔を置いて形成されており、これら突出部21および引っ掛け部22は、マッドガード20が補強パネル4に取付けられた状態で、補強パネル4の治具孔6と対応する位置に設けられている。引っ掛け部22の先端部には、下向きの爪22aが形成され、突出部21の先端部には、断面がL字形状に形成された係合片21aが形成されている。
【0018】
また、マッドガード20には、補強パネル4の方向に突出する縦長の一対の凸部23が車幅方向に間隔を置いて形成されており、該凸部23は、マッドガード20が補強パネル4に取付けられた状態で、補強パネル4の左右両側縁フランジ7cに対応する位置に設けられている。さらに、このマッドガード20の車体外側には、上下一対の爪24a,24bがリーンフォースメント8の舌片部8aと対応して配設されている。
なお、マッドガード20には、クリップ10,11,12を挿通させる孔20c〜20f,20hが設けられている。一方、補強パネル3,4およびフレーム5には、これら孔に対応して取付孔3a,4a,4b,5aが設けられている。
【0019】
本発明の実施の形態に係る取付構造によってマッドガード20を取付けるには、まず、一対の凸部23により、治具孔6の左右両側縁フランジ7cを挟み込む。そして、図3に示すように、突出部21の先端の係合片21aを補強パネル4の治具孔6内に挿入し、引っ掛け部22の爪22aを下縁フランジ部7aに引っ掛けるとともに、爪24a,24bでリーンフォースメント8の舌片部8aを挟持して、マッドガード20を仮保持する。
【0020】
このようにして仮保持されたマッドガード20は、主部20aが補強パネル3,4に当接され、側部20bがフレーム5に当接された状態に配置されているため、図5に示すように、突出部21の係合片21aと引っ掛け部22の爪22aとによって補強パネル4に係止されている。また、図6に示すように、一対の凸部23が治具孔6の左右両側縁フランジ7cを挟み込むような状態で配置されているため、マッドガード20の幅方向の位置決めがなされている。
【0021】
次いで、図7に示すように、リーンフォースメント8の舌片部8aをスプラッシュガード9に重ね合わせ、舌片部8aに形成された孔8bにスプラッシュガード9の孔9aを合致させ、それらの孔8b,9aに挿通させたクリップ10によって、位置決めがなされた状態のマッドガード20を締結する。また、図8に示すように、補強パネル4に形成した取付孔4aに主部20aの孔20cを合致させ、それらの孔に挿通させたクリップ11によって、他の部分、例えば、主部20aを締結する。
なお、主部20aの他の箇所および側部20bは、図8に示すものと同様にして、孔20d〜20eに挿通させたクリップ(図示せず)により、取付孔3a,4b,5aを介して補強パネル3,4およびフレーム5に締結される。また、マッドガード20の車体外側の下端折曲部にある取付部20gは、図10に示したように、孔20hまで挿通させたクリップ12によりスプラッシュガード9の上面に取付けられる。
【0022】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、既述の実施の形態では、マッドガード20に突出部21および引っ掛け部22を形成し、これら突出部21と引っ掛け部22を用いてマッドガード20を補強パネル4に保持するようにしたが、引っ掛け部22のみでマッドガード20を仮保持するようにしても良い。ただし、必要であれば、当該突出部を形成する部分を補強パネル5にクリップで取付けて補強することも可能である。また、既述の実施の形態では、マッドガード20を補強パネル3,4に取付けているが、ホイールハウス2の後部に形成される他の後部部材に取付けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係るマッドガードの取付構造が適用される自動車の前部構造を示す分解斜視図である。
【図2】マッドガードが取付けられるホイールハウスの後部部材を示す斜視図である。
【図3】マッドガードを後部部材に取付ける態様を示す部分断面図である。
【図4】マッドガードを仮止めした状態を示す斜視図である。
【図5】図4におけるA−A線断面図で、マッドガードを仮止めした状態を示す図である。
【図6】図4におけるB−B線断面図である。
【図7】図2におけるC−C線断面図で、マッドガードを締結した状態を示す図である。
【図8】図4におけるD−D線断面図で、マッドガードを締結した状態を示す図である。
【図9】図2におけるE−E線断面図で、マッドガードを締結した状態を示す図である。
【図10】図2におけるF−F線断面図で、マッドガードを締結した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 自動車
2 ホイールハウス
3 サイド補強パネル
3a 取付孔
4 センター補強パネル
4a,4b 取付孔
5 フレーム
5a 取付孔
6 スポット溶接用治具孔
7 フランジ
7a 下縁フランジ
7b 上縁フランジ
7c 側縁フランジ
8 リーンフォースメント
8a 舌片部
8b 孔
9 スプラッシュガード
9a 孔
10,11,12 クリップ
20 マッドガード
20a 主部
20b 側部
20c〜20e 孔
20g 取付部
20h 孔
21 突出部
21a 係合片
22 引っ掛け部
22a 爪
23 凸部
24a,24b 爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールハウスを構成する後部部材に、マッドガードが締結されるマッドガードの取付構造において、前記後部部材には孔が設けられているとともに、前記マッドガードには、前記孔の下縁に係合する引っ掛け部が形成され、該引っ掛け部を前記孔の下縁に係合させることにより、前記マッドガードが仮止めされるように構成されていることを特徴とするマッドガードの取付構造。
【請求項2】
前記マッドガードの引っ掛け部の上方には、先端を上方に向けて屈曲させたL字状の突出部が形成され、該突出部を前記後部部材の孔に挿通させ、かつ前記突出部の先端を前記孔の上縁に係合させることにより、前記マッドガードが前記後部部材に係合するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のマッドガードの取付構造。
【請求項3】
前記後部部材の孔の側部周縁には、前記マッドガードの方向に突出するフランジが形成されているとともに、前記マッドガードには、前記フランジを跨ぐ位置に凸部がそれぞれ形成され、それらの凸部を前記フランジを挟み込むようにして前記マッドガードを前記後部部材に重ね合わせることにより、前記マッドガードの幅方向の位置決めが行われるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマッドガードの取付構造。
【請求項4】
前記孔としては、スポット溶接用の治具孔が用いられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマッドガードの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−44598(P2006−44598A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231901(P2004−231901)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】