マニピュレータの姿勢制御装置および姿勢制御方法
【課題】人物などの障害物との衝突が回避できずに衝突した場合であっても、障害物に対する衝突力を低減させることを可能とするマニピュレータの姿勢制御装置を提供する。
【解決手段】マニピュレータ1は、本体部2に回動可能に設けたアーム部3を有している。姿勢制御部10は、マニピュレータ1の本体部2を移動させるときに進行方向Pに対して斜め後方にアーム部3を傾けるように制御する。これにより、アーム部3が傾いた状態で障害物11に衝突するため、障害物11に対して衝突力を分散させることができる。障害物11が人物であれば、正面衝突時に比べて人物に与える衝突力を緩和し痛みを抑えることができる。よって、マニピュレータ1の安全性を高めることができる。
【解決手段】マニピュレータ1は、本体部2に回動可能に設けたアーム部3を有している。姿勢制御部10は、マニピュレータ1の本体部2を移動させるときに進行方向Pに対して斜め後方にアーム部3を傾けるように制御する。これにより、アーム部3が傾いた状態で障害物11に衝突するため、障害物11に対して衝突力を分散させることができる。障害物11が人物であれば、正面衝突時に比べて人物に与える衝突力を緩和し痛みを抑えることができる。よって、マニピュレータ1の安全性を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータの姿勢制御装置および姿勢制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
障害物との衝突を回避するさまざまな技術の提案がなされている。
【0003】
例えば、従来のマニピュレータの姿勢制御装置は、目標姿勢を入力し、マニピュレータの先端に設けられたカメラの撮影画像に基づいて、マニピュレータと障害物との距離を測定しながら、初期姿勢と目標姿勢とが一致するようにマニピュレータを移動していた。そして、撮影画像からマニピュレータが障害物に所定の距離より近づいたときに、障害物を避けるようにマニピュレータの姿勢を制御していた(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平9−207089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマニピュレータの姿勢制御装置は、障害物との衝突回避を目的としているため、衝突を回避することができずに衝突した場合の対策が不十分であった。このため、マニピュレータが障害物を回避できずに正面衝突した場合、障害物に対する衝突力を低減させることができないといった課題があった。障害物が人物である場合は、人物に対する痛みを緩和させることができなかった。
【0005】
そこで本発明は、障害物との衝突が回避できずに衝突した場合であっても、障害物に対する衝突力を低減させることを可能にするマニピュレータの姿勢制御装置および姿勢制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のマニピュレータの姿勢制御装置は、本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御装置であって、本体部は姿勢制御部を備え、姿勢制御部は、本体部を移動させるときにアーム部を所定の進行方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、障害物との衝突を回避できずにアーム部が衝突した場合であっても、アーム部を傾けた状態で衝突するため、衝突力を分散させ、正面衝突時に比べて障害物に対する衝突力を低減させることができる。これにより、障害物が人物であれば、正面衝突時に比べて人物に対する衝突力が緩和され、痛みを抑えることができる。その結果、マニピュレータの安全性を高めることができる。また、障害物の損傷を抑えると共に、マニピュレータの損傷も抑えることができる。
【0008】
また、本体部と障害物との相対速度ベクトルを検知する障害物検知部をさらに備え、姿勢制御部は、アーム部を相対速度ベクトルの方向に対して斜め後方に傾けるようにしてもよい。このような構成によれば、さらに、衝突したときの力を相対速度ベクトルの方向に対して分散させることができる。これにより、本体部の移動方向に加え、障害物の移動方向に応じてアーム部の傾斜を調整することができ、アーム部が障害物に与える衝突力を緩和することができる。
【0009】
また、アーム部は所定の進行方向側に平面部を有し、姿勢制御部は、相対速度ベクトルの方向に対して平面部の傾きを大きくするようにしてもよい。このような構成によれば、
さらに、相対速度ベクトルの大きさに応じて相対速度ベクトルの方向に対して平面部の傾きを大きくすることができる。これにより、平面部が障害物に与える衝突力を緩和することができる。
【0010】
また、姿勢制御部は、アーム部の長手方向を軸としてアーム部の表面を障害物から受ける衝突力が小さくなる方向に能動回転させるようにしてもよい。このような構成によれば、さらに、衝突したときに見かけの傾きをもたせることができ、障害物に対する衝突力を分散させ、アーム部が障害物に与える衝突力を緩和することができる。
【0011】
また、姿勢制御部はアーム部を変位させ、障害物に対してアーム部の移動経路から外れる方向に運動量を与えるようにしてもよい。このような構成によれば、さらに、障害物に運動量を与え、本体部から離れる方向に移動方向を変えさせることができ、マニピュレータの他の部分に再衝突しにくくすることができる。
【0012】
また、姿勢制御部は、所定の進行方向に対してアーム部で把持した把持物が、進行方向に対しマニピュレータより先行しないようにアーム部を変形するようにしてもよい。このような構成によれば、さらに、所定の進行方向に対して把持物をマニピュレータによって保護することができる。
【0013】
次に、本発明のマニピュレータの姿勢制御装置は、本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御装置であって、本体部は姿勢制御部を備え、姿勢制御部は、アーム部を回動させるときにアーム部の先端部を所定の回動方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とする。このような構成によれば、アーム部の先端部が障害物との衝突を回避できずに衝突した場合、アーム部の先端部が障害物に傾斜して衝突するため、障害物に対する衝突力を分散させ、低減させることができる。これにより、障害物が人物であれば、正面衝突時に比べて人物に対する衝突力が緩和され、痛みを抑えることができる。その結果、マニピュレータの安全性を高めることができる。また、障害物の損傷を抑えると共に、マニピュレータの損傷も抑えることができる。
【0014】
次に、本発明のマニピュレータの姿勢制御方法は、本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御方法であって、本体部を移動させるときにアーム部を所定の進行方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とする。このような方法によれば、アーム部を傾けた状態で衝突するため衝突力を分散させ、正面衝突時に比べてアーム部が障害物に与える衝突力を低減させることができる。よって、マニピュレータの安全性を高めることができる。また、障害物が人物であれば、正面衝突時に比べて人物に対する衝突力が緩和され、人物に与える痛みを抑えると共に、マニピュレータの損傷も抑えることができる。
【0015】
次に、本発明のマニピュレータの姿勢制御方法は、本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御方法であって、アーム部を回動させるときにアーム部の先端部を所定の回動方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とする。このような方法によれば、アーム部の先端部が障害物との衝突を回避できずに衝突した場合、アーム部の先端部が障害物に傾斜して衝突するため、障害物に対する衝突力を分散させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように本発明によれば、障害物との衝突が回避できずに障害物と衝突した場合であっても、障害物に対する衝突力を低減させることを可能にするマニピュレータの姿勢制御装置および姿勢制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
まず、図1から図3を参照しながら、本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1の概略構成について説明する。図1は本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1の概略上面図、図2は図1の要部Aの拡大図、図3は同マニピュレータ1のアームが障害物に与える衝突力を説明する概念図である。
【0019】
図1に示すように、マニピュレータ1は、本体部2にアーム部3を備えている。本体部2は移動部9と姿勢制御部10とを備え、移動部9によって所定の方向、例えば進行方向Pに移動する。
【0020】
アーム部3は、ハンド4と、このハンド4に連結したアーム5と、アーム7と、アーム5とアーム7とを回動自在に連結する関節部6と、アーム7と本体部2とを回動自在に連結する関節部8とを有している。ハンド4は、物を把持する機能を有している。
【0021】
このような構成により、マニピュレータ1は、進行方向Pに移動したときに障害物11との衝突が回避できずに衝突した場合であっても、障害物11に対して衝突力を低減させる姿勢をとることができる。
【0022】
具体的には、図1の要部Aを拡大した図2に示すように、姿勢制御部10は、例えば本体部2を移動するときに、アーム部3を進行方向Pに対して斜め後方に傾ける。すなわち、進行方向Pに対して例えばアーム5の進行方向P側に面している表面12の法線方向Hが所定の角θpとなるようにアーム部3を傾ける。
【0023】
次にアーム部3の姿勢により、図3を参照しながら、衝突時にアーム部3が障害物11に与える衝突力について説明する。
【0024】
図3(a)に示すように、アーム部3を進行方向Pに対して移動させて正面衝突した場合、障害物11に衝突力Faがかかると共に、アーム部3には大きさが等しく方向が反対である力、すなわち、反力Raが働く。
【0025】
一方、図3(b)に示すように、アーム部3を進行方向Pに対して斜め後方に傾けることによって、正面衝突した場合の衝突力Faと比較し力を分散させ、衝突力Fbを抑えることができる。すなわち、障害物11がアーム部3から受ける衝突力は、正面衝突時のFaがFbとFcに分散され、Fbのみに低減される。ここで、Fb=FaCOS(θp)となる。アーム5は、反対方向に反力Rbを受ける。これにより、COS(θp)<1であれば、アーム5がアーム5aの姿勢で正面衝突したときに障害物11に与える衝突力Faと比べて衝突力Fb(Fb<Fa)に緩和することができる。
【0026】
このように、従来の姿勢制御装置(図示せず)はアーム5を障害物11から回避したにもかかわらず衝突した場合、アーム5bの姿勢で正面衝突するため、衝突力がFaとなっていた。これに対して本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1(図1)は、進行方向Pに対してアーム部3を回避すると共に斜め後方に傾けるため、衝突したときの衝突力Faを分散させ、低減することができる。これにより、マニピュレータ1は、障害物11との衝突が回避できずに衝突した場合であっても、衝突力FaをFbに低減させることができる。よって、障害物11が人物であれば、正面衝突時に人物がアーム5から受ける衝突力Faに比べ、より小さなFbに緩和でき、人物が受ける痛みを抑えることができると共に、マニピュレータ1の損傷も軽減することができる。したがって、マニピュレータ1
の安全性を高めることができる。
【0027】
次に、図4を参照しながら、マニピュレータ1の構成について説明する。図4は本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1の構成を示すブロック図である。
【0028】
関節部6は、関節駆動部としてのアクチュエータ6aを備えている。同様に関節部8はアクチュエータ8aを備えている。アクチュエータ6aは減速機6bを介してアーム5を回転駆動する。同様に、アクチュエータ8aは減速機8bを介してアーム7を回転駆動する。減速機6b、8bは、後述するモータの回転を公知のギア等を用いて減速させると共に、駆動トルクを高めている。また、減速機6b、8bはアクチュエータ6a、8aの駆動力をアーム5、7に伝達する動力伝達機構としての役割も有する。減速機6b、8bには、例えば、遊星歯車減速機、平歯車減速機やベルト減速機構などを使用することができる。
【0029】
移動部9は、移動駆動部としてのアクチュエータ9aを備えている。アクチュエータ9aは減速機9bを介して本体部2の例えば車輪を回転させる。これにより、姿勢制御部10からの指令により、本体部2を移動させることができる。
【0030】
アクチュエータ6a、8a、9aは、公知の駆動用のモータ15と、このモータ15を駆動するモータ駆動部14と、エンコーダ16とを備えている。
【0031】
モータ駆動部14には、公知の駆動回路を使用する。例えば、Hブリッジ駆動回路によりモータ15に電力を供給し、正逆の回転を行う。
【0032】
エンコーダ16は、モータ15の軸(図示せず)に連結するように設けられ、モータ15の回動情報を検出する。エンコーダ16には、例えば、符号板とフォトセンサから構成される光学式エンコーダや、ホール素子や磁気抵抗素子とN、Sの2極着磁の回転磁石とを用いた磁気式エンコーダなどを使用することができる。
【0033】
入力部13は各種入力デバイスなどを備え、目標位置などの指令を姿勢制御部10に出力する。入力デバイスとしては、例えば、公知のキー入力装置、ジョイステック、タッチパネルなどを使用することができる。なお、入力部13は、本体部2に収納した構成としてもよいし、本体部2と着脱自在にする方法や別のユニットとして構成してもよい。また、マニピュレータ1を自律移動可能に構成する場合には、入力部13は、外部に構成される上位制御装置(図示せず)からの操作指令を入力するようにしてもよい。
【0034】
姿勢制御部10は、プログラムに基づいて各種機能を実行する中央制御装置(CPU)、各種プログラムなどを記憶している読み出し専用リードオンリーメモリ(ROM)と、データを一時格納する書き換え可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、外部とのデータの入出力を行う入出力部とを備えている。これにより、姿勢制御部10は、入力部13から得た操作指令、例えば目標位置に基づいて各種プログラムを実行することにより、アクチュエータ6a、8a、9aを駆動し、移動やアーム部3の姿勢を制御する。また、姿勢制御部10は、エンコーダ16から得たモータ15の回転情報に基づいて、アーム5およびアーム7の姿勢を検知することができる。
【0035】
次に、図5から図7を参照しながら、マニピュレータ1の動作について説明する。図5は本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1の動作を示すフローチャート、図6は同マニピュレータ1の移動開始時におけるアーム姿勢の変化を示す図、図7は同マニピュレータ1の停止時におけるアーム姿勢の変化を示す図である。
【0036】
マニピュレータ1は、図5に示すように、入力部13からの操作指令に応じて目標位置を設定する(S100)。そして、マニピュレータ1は、本体部2を移動部9で移動させ、目標位置に向けて所定の進行方向Pに移動を開始する(S102)。
【0037】
次に、マニピュレータ1は関節部8を回動駆動し、所定の進行方向Pに対してアーム部3を斜め後方に傾ける(S104)。例えば、図6に示すように、姿勢制御部10は、進行方向Pに対してアーム部3の姿勢を移動速度に応じて順次に変化させる。すなわち、姿勢制御部10は、位置P0(停止位置)、位置P1(速度がV1となる位置)、位置P2(速度がV2となる位置)の順に本体部2を移動部9で移動させたときに、関節部8を回動して進行方向Pに対してアーム部3の傾き角度θpを速度に応じて所定の角度まで順次大きくし、斜め後方に傾ける。ここで、V2>V1とする。
【0038】
次に、マニピュレータ1は、移動した位置が目標位置であるか否かを判断し(S106)、目標位置でない場合はS104を実行し、アーム部3の傾きを維持する。
【0039】
一方、マニピュレータ1は、移動した位置が目標位置に近づくと関節部8を回動駆動し、アーム部3を停止姿勢にする(S108)。図7に示すように、姿勢制御部10は、進行方向Pに対してアーム部3の姿勢を移動速度に応じて順次に変化させる。すなわち、姿勢制御部10は、位置Pn−2(速度がV3となる位置)、位置Pn−1(速度がV4となる位置)、位置P2(停止位置)の順に本体部2を移動部9で移動させたときに、関節部8を回動すると共にアーム部3の速度に応じて進行方向Pに対して傾き角度θpを順次に小さくする。そして、姿勢制御部10は、移動部9を停止させたときには、進行方向Pに対して例えば、角度θp=0となるように姿勢制御する。ここで、V3>V4とする。なお、運搬目的として、任意の姿勢となるように角度θpを制御して停止してもよい。
【0040】
次に、マニピュレータ1は、目標位置で移動部9を停止させる(S110)。これによって、マニピュレータ1の本体部2が停止する。
【0041】
以上述べたように、本実施の形態におけるマニピュレータ1によれば、本体部2を移動したとき、進行方向Pに対してアーム部3を斜め後方に傾ける。これによって、例えばアーム部3が障害物11との衝突を回避できずに衝突した場合、障害物11にかかる衝突力を分散させ、アーム5またはアーム7が正面衝突したときに障害物11に与える衝突力Faと比べて衝突力Fb(Fb<Fa)に緩和することができる。これにより、障害物11に対する損傷を抑えると共に、マニピュレータ1の損傷も抑えることができる。障害物11が人物であれば、正面衝突時に比べて人物に与える衝突力を緩和し痛みを抑えることができる。よって、マニピュレータ1の安全性を高めることができる。
【0042】
なお、本体部2が停止してアーム部3を回動する場合であっても、障害物11との衝突時の衝突力を抑えることができる。この場合について図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態におけるマニピュレータのアーム部3の回動動作を説明する上面図である。
【0043】
図8に示すように、マニピュレータ1は、関節部8を回動してアーム部3を所定の回動方向Qに回動する。マニピュレータ1は、この所定の回動方向Q対して関節部8を所定の角度まで回動すると共に、アーム部3の先端部、例えばアーム5やハンド4を斜め後方に傾けるようにする。アーム5とアーム7との角度は関節部6を回動して傾斜角度を調整する。これによっても、アーム部3の先端部が障害物11との衝突を回避できずに衝突した場合、アーム部3の先端部が障害物11に傾斜して衝突するため、衝突力を分散させることができる。
【0044】
また、図9の上面図に示すように、ハンド4で把持物20を把持している場合、進行方向Pに対して把持物20がマニピュレータ1の各部より先行しないようにアーム部3の姿勢を変形させる。これにより、把持物20をマニピュレータ1で外部から保護することができる。なお、図10の上面図に示すように、アーム部3が3つの関節部106、108、110と3つのアーム105、107、109とハンド4で構成され、進行方向Pに対してマニピュレータ1の先行部分(この例では関節部106)よりアーム部3のハンド4で把持した把持物20が後方となる位置に姿勢を変形させるようにしてもよい。同様に、図11の正面図に示すように、アーム部3が3つの関節部206、208、210と3つのアーム205、207、209とハンド4で構成され、進行方向Pに対してマニピュレータ1の先行部分(この例では本体部2)よりアーム部3のハンド4で把持した把持物20が3つのアーム205、207、209により保護される姿勢に変形されると共に、先行部分より後方の位置に姿勢を変形させるようにしてもよい。
【0045】
さらに、図12(a)に示すように、停止時は進行方向Pに対してハンド4があらかじめ設定した移動径路21に沿うように姿勢を順次変化させるようにしてもよい。これにより、把持物20の保護を優先した姿勢制御を行うことができ、把持物20を本体部2で保護すると共に、衝突力低減を行う。なお、図12(b)に示すように、アーム部3において、衝突力低減を優先するために、ハンド4を移動径路22に沿うように順次に姿勢を変化させてもよい。これにより、衝突力低減を優先した姿勢制御を行うことができる。
【0046】
また、図13を用いて、アーム部3の進行方向P側の面に平面部17を有する場合、この平面部17が衝突時に障害物11に与える衝突力を抑える姿勢についてアーム5を例に説明する。図13は、図2のB−B線から見たアーム5の断面図である。
【0047】
図13に示すように、マニピュレータ1(図1)は、本体部2の速度および障害物11の速度に応じて、アーム部3における平面部17の法線方向Hが所定の角度となるように姿勢を変化させる。
【0048】
具体的には、アーム5と障害物11との相対速度Vが増加するほど、障害物11とアーム5とが衝突したときにアーム5が障害物11に対して与える衝突力が増加する。このため、本発明の実施の形態では、障害物11とアーム5との相対速度ベクトルを検知する障害物検知部(図示せず)をさらに備え、相対速度ベクトルの方向に対してアーム5の平面部17の傾斜角を大きくする。例えば図13(a)に示すように、障害物11に対してアーム5の相対速度がVa(Va=0)m/sのとき、所定の角θaを0度とする。また、図13(b)に示すように、障害物11の相対速度ベクトル18の大きさがVb(Vb>Va)である場合、所定の角度をθb(θb>θa)とする。さらに、図13(c)に示すように、障害物11の相対速度ベクトルの大きさがVc(Vc>Vb)である場合、所定の角度をθc(θc>θb)とする。このように、アーム5に対する障害物11の相対速度ベクトルが増すのに応じて、アーム5の平面部17の傾きを大きくする。その結果、アーム5と障害物11との相対速度ベクトルの大きさが増すほど衝突したときにアーム5にかかる衝撃力が増加するのを抑えることができる。アーム7も同様に平面部17を相対速度ベクトルの大きさが増すほどに傾ける。障害物検知部は、例えば2つのカメラから得たステレオ撮影画像から距離方向を含む障害物11の動き情報を検出する。なお、図1に示すアーム部3を相対速度ベクトルの方向に対して斜め後方に傾けるようにしてもよい。相対速度ベクトルの方向に対して表面12の法線方向Hが所定の角θpとなるようにアーム部3を傾ける。これにより、本体部2の移動方向Pだけでなく、障害物11の移動方向にも応じることができ、相対速度ベクトルの方向に対してアーム部3の傾斜を調整することができる。これにより、アーム5が受ける衝突力をさらに抑えることができる。
【0049】
また、アーム5の長手方向を軸としてアーム5の表面19を能動回転させ、見かけの傾
きを作ってもよい。この動作について、図12を参照しながら説明する。図14は、本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1のアーム5の部分斜視図である。
【0050】
図14(a)に示すように、アーム5を覆う外装部(図示せず)がある場合には、アーム5の内部から外装部を駆動し表面を回転させる。これによっても、障害物11との衝突が回避できずに衝突した場合、外装部の動きにより見かけの傾きを大きくし、衝突したときの衝突力を進行方向Pに対して分散させ、和らげることができる。なお、図14(b)に示すように、外装部がない場合にはアーム5自体を回転させる。これによっても、衝突したときの衝突力を和らげることができる。アーム7についても同様である。
【0051】
また、障害物11に対してアーム部3の移動経路から外れる方向に能動的に運動量を与えるようにしてもよい。この動作について、図15を参照しながら説明する。図15は、本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1のアーム5の再衝突回避動作を説明する図である。
【0052】
図15(a)に示すように、マニピュレータ1を進行方向Pで移動させるときに、進行方向Pと対向する方向から障害物11が移動している場合について説明する。図15(b)に示すように、アーム部3に障害物11が衝突したとき、アーム部3を変位させ、障害物11に力Fdを作用させる。これにより、障害物11は本体部2からより離れる方向、すなわち、障害物11の移動方向をCからDに変える。このように、アーム部3を変位させ、アーム部3の移動径路から外れる方向に障害物11に能動的に運動量を与えることで、アーム部3の他の部分に再衝突しにくくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、人物などの障害物との衝突が回避できずに障害物と衝突した場合であっても障害物に対して衝突力を低減させることができ、マニピュレータの姿勢制御装置および姿勢制御方法などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態におけるマニピュレータの概略上面図
【図2】図1の要部Aの拡大図
【図3】(a)同マニピュレータのアームが正面衝突時に障害物に与える衝突力を説明する概念図、(b)同マニピュレータが本方法による傾斜衝突時に障害物に与える衝突力を説明する概念図
【図4】同マニピュレータの構成を示すブロック図
【図5】同マニピュレータの動作を示すフローチャート
【図6】同マニピュレータの移動開始時におけるアーム姿勢の変化を示す図
【図7】同マニピュレータの停止時におけるアーム姿勢の変化を示す図
【図8】同マニピュレータにおけるアーム部3の回動動作を説明する正面図
【図9】同マニピュレータの移動時におけるアーム姿勢を示す上面図
【図10】同マニピュレータの移動時における他のアーム姿勢を示す上面図
【図11】同マニピュレータの移動時における他のアーム姿勢を示す正面図
【図12】同マニピュレータの停止時における他のアーム姿勢の変化を示す図
【図13】図2のB−B線から見たアームの断面図
【図14】同マニピュレータのアームの部分斜視図
【図15】同マニピュレータのアームの再衝突回避動作を説明する図
【符号の説明】
【0055】
1 マニピュレータ
2 本体部
3 アーム部
4 ハンド
5,7,105,107,109,205,207,209 アーム
6,8,106,108,110,206,208,210 関節部
6a,8a,9a アクチュエータ
6b,8b,9b 減速機
9 移動部
10 姿勢制御部
11 障害物
12,19 表面
13 入力部
14 モータ駆動部
15 モータ
16 エンコーダ
17 平面部
20 把持物
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータの姿勢制御装置および姿勢制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
障害物との衝突を回避するさまざまな技術の提案がなされている。
【0003】
例えば、従来のマニピュレータの姿勢制御装置は、目標姿勢を入力し、マニピュレータの先端に設けられたカメラの撮影画像に基づいて、マニピュレータと障害物との距離を測定しながら、初期姿勢と目標姿勢とが一致するようにマニピュレータを移動していた。そして、撮影画像からマニピュレータが障害物に所定の距離より近づいたときに、障害物を避けるようにマニピュレータの姿勢を制御していた(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平9−207089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマニピュレータの姿勢制御装置は、障害物との衝突回避を目的としているため、衝突を回避することができずに衝突した場合の対策が不十分であった。このため、マニピュレータが障害物を回避できずに正面衝突した場合、障害物に対する衝突力を低減させることができないといった課題があった。障害物が人物である場合は、人物に対する痛みを緩和させることができなかった。
【0005】
そこで本発明は、障害物との衝突が回避できずに衝突した場合であっても、障害物に対する衝突力を低減させることを可能にするマニピュレータの姿勢制御装置および姿勢制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のマニピュレータの姿勢制御装置は、本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御装置であって、本体部は姿勢制御部を備え、姿勢制御部は、本体部を移動させるときにアーム部を所定の進行方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、障害物との衝突を回避できずにアーム部が衝突した場合であっても、アーム部を傾けた状態で衝突するため、衝突力を分散させ、正面衝突時に比べて障害物に対する衝突力を低減させることができる。これにより、障害物が人物であれば、正面衝突時に比べて人物に対する衝突力が緩和され、痛みを抑えることができる。その結果、マニピュレータの安全性を高めることができる。また、障害物の損傷を抑えると共に、マニピュレータの損傷も抑えることができる。
【0008】
また、本体部と障害物との相対速度ベクトルを検知する障害物検知部をさらに備え、姿勢制御部は、アーム部を相対速度ベクトルの方向に対して斜め後方に傾けるようにしてもよい。このような構成によれば、さらに、衝突したときの力を相対速度ベクトルの方向に対して分散させることができる。これにより、本体部の移動方向に加え、障害物の移動方向に応じてアーム部の傾斜を調整することができ、アーム部が障害物に与える衝突力を緩和することができる。
【0009】
また、アーム部は所定の進行方向側に平面部を有し、姿勢制御部は、相対速度ベクトルの方向に対して平面部の傾きを大きくするようにしてもよい。このような構成によれば、
さらに、相対速度ベクトルの大きさに応じて相対速度ベクトルの方向に対して平面部の傾きを大きくすることができる。これにより、平面部が障害物に与える衝突力を緩和することができる。
【0010】
また、姿勢制御部は、アーム部の長手方向を軸としてアーム部の表面を障害物から受ける衝突力が小さくなる方向に能動回転させるようにしてもよい。このような構成によれば、さらに、衝突したときに見かけの傾きをもたせることができ、障害物に対する衝突力を分散させ、アーム部が障害物に与える衝突力を緩和することができる。
【0011】
また、姿勢制御部はアーム部を変位させ、障害物に対してアーム部の移動経路から外れる方向に運動量を与えるようにしてもよい。このような構成によれば、さらに、障害物に運動量を与え、本体部から離れる方向に移動方向を変えさせることができ、マニピュレータの他の部分に再衝突しにくくすることができる。
【0012】
また、姿勢制御部は、所定の進行方向に対してアーム部で把持した把持物が、進行方向に対しマニピュレータより先行しないようにアーム部を変形するようにしてもよい。このような構成によれば、さらに、所定の進行方向に対して把持物をマニピュレータによって保護することができる。
【0013】
次に、本発明のマニピュレータの姿勢制御装置は、本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御装置であって、本体部は姿勢制御部を備え、姿勢制御部は、アーム部を回動させるときにアーム部の先端部を所定の回動方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とする。このような構成によれば、アーム部の先端部が障害物との衝突を回避できずに衝突した場合、アーム部の先端部が障害物に傾斜して衝突するため、障害物に対する衝突力を分散させ、低減させることができる。これにより、障害物が人物であれば、正面衝突時に比べて人物に対する衝突力が緩和され、痛みを抑えることができる。その結果、マニピュレータの安全性を高めることができる。また、障害物の損傷を抑えると共に、マニピュレータの損傷も抑えることができる。
【0014】
次に、本発明のマニピュレータの姿勢制御方法は、本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御方法であって、本体部を移動させるときにアーム部を所定の進行方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とする。このような方法によれば、アーム部を傾けた状態で衝突するため衝突力を分散させ、正面衝突時に比べてアーム部が障害物に与える衝突力を低減させることができる。よって、マニピュレータの安全性を高めることができる。また、障害物が人物であれば、正面衝突時に比べて人物に対する衝突力が緩和され、人物に与える痛みを抑えると共に、マニピュレータの損傷も抑えることができる。
【0015】
次に、本発明のマニピュレータの姿勢制御方法は、本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御方法であって、アーム部を回動させるときにアーム部の先端部を所定の回動方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とする。このような方法によれば、アーム部の先端部が障害物との衝突を回避できずに衝突した場合、アーム部の先端部が障害物に傾斜して衝突するため、障害物に対する衝突力を分散させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように本発明によれば、障害物との衝突が回避できずに障害物と衝突した場合であっても、障害物に対する衝突力を低減させることを可能にするマニピュレータの姿勢制御装置および姿勢制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
まず、図1から図3を参照しながら、本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1の概略構成について説明する。図1は本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1の概略上面図、図2は図1の要部Aの拡大図、図3は同マニピュレータ1のアームが障害物に与える衝突力を説明する概念図である。
【0019】
図1に示すように、マニピュレータ1は、本体部2にアーム部3を備えている。本体部2は移動部9と姿勢制御部10とを備え、移動部9によって所定の方向、例えば進行方向Pに移動する。
【0020】
アーム部3は、ハンド4と、このハンド4に連結したアーム5と、アーム7と、アーム5とアーム7とを回動自在に連結する関節部6と、アーム7と本体部2とを回動自在に連結する関節部8とを有している。ハンド4は、物を把持する機能を有している。
【0021】
このような構成により、マニピュレータ1は、進行方向Pに移動したときに障害物11との衝突が回避できずに衝突した場合であっても、障害物11に対して衝突力を低減させる姿勢をとることができる。
【0022】
具体的には、図1の要部Aを拡大した図2に示すように、姿勢制御部10は、例えば本体部2を移動するときに、アーム部3を進行方向Pに対して斜め後方に傾ける。すなわち、進行方向Pに対して例えばアーム5の進行方向P側に面している表面12の法線方向Hが所定の角θpとなるようにアーム部3を傾ける。
【0023】
次にアーム部3の姿勢により、図3を参照しながら、衝突時にアーム部3が障害物11に与える衝突力について説明する。
【0024】
図3(a)に示すように、アーム部3を進行方向Pに対して移動させて正面衝突した場合、障害物11に衝突力Faがかかると共に、アーム部3には大きさが等しく方向が反対である力、すなわち、反力Raが働く。
【0025】
一方、図3(b)に示すように、アーム部3を進行方向Pに対して斜め後方に傾けることによって、正面衝突した場合の衝突力Faと比較し力を分散させ、衝突力Fbを抑えることができる。すなわち、障害物11がアーム部3から受ける衝突力は、正面衝突時のFaがFbとFcに分散され、Fbのみに低減される。ここで、Fb=FaCOS(θp)となる。アーム5は、反対方向に反力Rbを受ける。これにより、COS(θp)<1であれば、アーム5がアーム5aの姿勢で正面衝突したときに障害物11に与える衝突力Faと比べて衝突力Fb(Fb<Fa)に緩和することができる。
【0026】
このように、従来の姿勢制御装置(図示せず)はアーム5を障害物11から回避したにもかかわらず衝突した場合、アーム5bの姿勢で正面衝突するため、衝突力がFaとなっていた。これに対して本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1(図1)は、進行方向Pに対してアーム部3を回避すると共に斜め後方に傾けるため、衝突したときの衝突力Faを分散させ、低減することができる。これにより、マニピュレータ1は、障害物11との衝突が回避できずに衝突した場合であっても、衝突力FaをFbに低減させることができる。よって、障害物11が人物であれば、正面衝突時に人物がアーム5から受ける衝突力Faに比べ、より小さなFbに緩和でき、人物が受ける痛みを抑えることができると共に、マニピュレータ1の損傷も軽減することができる。したがって、マニピュレータ1
の安全性を高めることができる。
【0027】
次に、図4を参照しながら、マニピュレータ1の構成について説明する。図4は本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1の構成を示すブロック図である。
【0028】
関節部6は、関節駆動部としてのアクチュエータ6aを備えている。同様に関節部8はアクチュエータ8aを備えている。アクチュエータ6aは減速機6bを介してアーム5を回転駆動する。同様に、アクチュエータ8aは減速機8bを介してアーム7を回転駆動する。減速機6b、8bは、後述するモータの回転を公知のギア等を用いて減速させると共に、駆動トルクを高めている。また、減速機6b、8bはアクチュエータ6a、8aの駆動力をアーム5、7に伝達する動力伝達機構としての役割も有する。減速機6b、8bには、例えば、遊星歯車減速機、平歯車減速機やベルト減速機構などを使用することができる。
【0029】
移動部9は、移動駆動部としてのアクチュエータ9aを備えている。アクチュエータ9aは減速機9bを介して本体部2の例えば車輪を回転させる。これにより、姿勢制御部10からの指令により、本体部2を移動させることができる。
【0030】
アクチュエータ6a、8a、9aは、公知の駆動用のモータ15と、このモータ15を駆動するモータ駆動部14と、エンコーダ16とを備えている。
【0031】
モータ駆動部14には、公知の駆動回路を使用する。例えば、Hブリッジ駆動回路によりモータ15に電力を供給し、正逆の回転を行う。
【0032】
エンコーダ16は、モータ15の軸(図示せず)に連結するように設けられ、モータ15の回動情報を検出する。エンコーダ16には、例えば、符号板とフォトセンサから構成される光学式エンコーダや、ホール素子や磁気抵抗素子とN、Sの2極着磁の回転磁石とを用いた磁気式エンコーダなどを使用することができる。
【0033】
入力部13は各種入力デバイスなどを備え、目標位置などの指令を姿勢制御部10に出力する。入力デバイスとしては、例えば、公知のキー入力装置、ジョイステック、タッチパネルなどを使用することができる。なお、入力部13は、本体部2に収納した構成としてもよいし、本体部2と着脱自在にする方法や別のユニットとして構成してもよい。また、マニピュレータ1を自律移動可能に構成する場合には、入力部13は、外部に構成される上位制御装置(図示せず)からの操作指令を入力するようにしてもよい。
【0034】
姿勢制御部10は、プログラムに基づいて各種機能を実行する中央制御装置(CPU)、各種プログラムなどを記憶している読み出し専用リードオンリーメモリ(ROM)と、データを一時格納する書き換え可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、外部とのデータの入出力を行う入出力部とを備えている。これにより、姿勢制御部10は、入力部13から得た操作指令、例えば目標位置に基づいて各種プログラムを実行することにより、アクチュエータ6a、8a、9aを駆動し、移動やアーム部3の姿勢を制御する。また、姿勢制御部10は、エンコーダ16から得たモータ15の回転情報に基づいて、アーム5およびアーム7の姿勢を検知することができる。
【0035】
次に、図5から図7を参照しながら、マニピュレータ1の動作について説明する。図5は本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1の動作を示すフローチャート、図6は同マニピュレータ1の移動開始時におけるアーム姿勢の変化を示す図、図7は同マニピュレータ1の停止時におけるアーム姿勢の変化を示す図である。
【0036】
マニピュレータ1は、図5に示すように、入力部13からの操作指令に応じて目標位置を設定する(S100)。そして、マニピュレータ1は、本体部2を移動部9で移動させ、目標位置に向けて所定の進行方向Pに移動を開始する(S102)。
【0037】
次に、マニピュレータ1は関節部8を回動駆動し、所定の進行方向Pに対してアーム部3を斜め後方に傾ける(S104)。例えば、図6に示すように、姿勢制御部10は、進行方向Pに対してアーム部3の姿勢を移動速度に応じて順次に変化させる。すなわち、姿勢制御部10は、位置P0(停止位置)、位置P1(速度がV1となる位置)、位置P2(速度がV2となる位置)の順に本体部2を移動部9で移動させたときに、関節部8を回動して進行方向Pに対してアーム部3の傾き角度θpを速度に応じて所定の角度まで順次大きくし、斜め後方に傾ける。ここで、V2>V1とする。
【0038】
次に、マニピュレータ1は、移動した位置が目標位置であるか否かを判断し(S106)、目標位置でない場合はS104を実行し、アーム部3の傾きを維持する。
【0039】
一方、マニピュレータ1は、移動した位置が目標位置に近づくと関節部8を回動駆動し、アーム部3を停止姿勢にする(S108)。図7に示すように、姿勢制御部10は、進行方向Pに対してアーム部3の姿勢を移動速度に応じて順次に変化させる。すなわち、姿勢制御部10は、位置Pn−2(速度がV3となる位置)、位置Pn−1(速度がV4となる位置)、位置P2(停止位置)の順に本体部2を移動部9で移動させたときに、関節部8を回動すると共にアーム部3の速度に応じて進行方向Pに対して傾き角度θpを順次に小さくする。そして、姿勢制御部10は、移動部9を停止させたときには、進行方向Pに対して例えば、角度θp=0となるように姿勢制御する。ここで、V3>V4とする。なお、運搬目的として、任意の姿勢となるように角度θpを制御して停止してもよい。
【0040】
次に、マニピュレータ1は、目標位置で移動部9を停止させる(S110)。これによって、マニピュレータ1の本体部2が停止する。
【0041】
以上述べたように、本実施の形態におけるマニピュレータ1によれば、本体部2を移動したとき、進行方向Pに対してアーム部3を斜め後方に傾ける。これによって、例えばアーム部3が障害物11との衝突を回避できずに衝突した場合、障害物11にかかる衝突力を分散させ、アーム5またはアーム7が正面衝突したときに障害物11に与える衝突力Faと比べて衝突力Fb(Fb<Fa)に緩和することができる。これにより、障害物11に対する損傷を抑えると共に、マニピュレータ1の損傷も抑えることができる。障害物11が人物であれば、正面衝突時に比べて人物に与える衝突力を緩和し痛みを抑えることができる。よって、マニピュレータ1の安全性を高めることができる。
【0042】
なお、本体部2が停止してアーム部3を回動する場合であっても、障害物11との衝突時の衝突力を抑えることができる。この場合について図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態におけるマニピュレータのアーム部3の回動動作を説明する上面図である。
【0043】
図8に示すように、マニピュレータ1は、関節部8を回動してアーム部3を所定の回動方向Qに回動する。マニピュレータ1は、この所定の回動方向Q対して関節部8を所定の角度まで回動すると共に、アーム部3の先端部、例えばアーム5やハンド4を斜め後方に傾けるようにする。アーム5とアーム7との角度は関節部6を回動して傾斜角度を調整する。これによっても、アーム部3の先端部が障害物11との衝突を回避できずに衝突した場合、アーム部3の先端部が障害物11に傾斜して衝突するため、衝突力を分散させることができる。
【0044】
また、図9の上面図に示すように、ハンド4で把持物20を把持している場合、進行方向Pに対して把持物20がマニピュレータ1の各部より先行しないようにアーム部3の姿勢を変形させる。これにより、把持物20をマニピュレータ1で外部から保護することができる。なお、図10の上面図に示すように、アーム部3が3つの関節部106、108、110と3つのアーム105、107、109とハンド4で構成され、進行方向Pに対してマニピュレータ1の先行部分(この例では関節部106)よりアーム部3のハンド4で把持した把持物20が後方となる位置に姿勢を変形させるようにしてもよい。同様に、図11の正面図に示すように、アーム部3が3つの関節部206、208、210と3つのアーム205、207、209とハンド4で構成され、進行方向Pに対してマニピュレータ1の先行部分(この例では本体部2)よりアーム部3のハンド4で把持した把持物20が3つのアーム205、207、209により保護される姿勢に変形されると共に、先行部分より後方の位置に姿勢を変形させるようにしてもよい。
【0045】
さらに、図12(a)に示すように、停止時は進行方向Pに対してハンド4があらかじめ設定した移動径路21に沿うように姿勢を順次変化させるようにしてもよい。これにより、把持物20の保護を優先した姿勢制御を行うことができ、把持物20を本体部2で保護すると共に、衝突力低減を行う。なお、図12(b)に示すように、アーム部3において、衝突力低減を優先するために、ハンド4を移動径路22に沿うように順次に姿勢を変化させてもよい。これにより、衝突力低減を優先した姿勢制御を行うことができる。
【0046】
また、図13を用いて、アーム部3の進行方向P側の面に平面部17を有する場合、この平面部17が衝突時に障害物11に与える衝突力を抑える姿勢についてアーム5を例に説明する。図13は、図2のB−B線から見たアーム5の断面図である。
【0047】
図13に示すように、マニピュレータ1(図1)は、本体部2の速度および障害物11の速度に応じて、アーム部3における平面部17の法線方向Hが所定の角度となるように姿勢を変化させる。
【0048】
具体的には、アーム5と障害物11との相対速度Vが増加するほど、障害物11とアーム5とが衝突したときにアーム5が障害物11に対して与える衝突力が増加する。このため、本発明の実施の形態では、障害物11とアーム5との相対速度ベクトルを検知する障害物検知部(図示せず)をさらに備え、相対速度ベクトルの方向に対してアーム5の平面部17の傾斜角を大きくする。例えば図13(a)に示すように、障害物11に対してアーム5の相対速度がVa(Va=0)m/sのとき、所定の角θaを0度とする。また、図13(b)に示すように、障害物11の相対速度ベクトル18の大きさがVb(Vb>Va)である場合、所定の角度をθb(θb>θa)とする。さらに、図13(c)に示すように、障害物11の相対速度ベクトルの大きさがVc(Vc>Vb)である場合、所定の角度をθc(θc>θb)とする。このように、アーム5に対する障害物11の相対速度ベクトルが増すのに応じて、アーム5の平面部17の傾きを大きくする。その結果、アーム5と障害物11との相対速度ベクトルの大きさが増すほど衝突したときにアーム5にかかる衝撃力が増加するのを抑えることができる。アーム7も同様に平面部17を相対速度ベクトルの大きさが増すほどに傾ける。障害物検知部は、例えば2つのカメラから得たステレオ撮影画像から距離方向を含む障害物11の動き情報を検出する。なお、図1に示すアーム部3を相対速度ベクトルの方向に対して斜め後方に傾けるようにしてもよい。相対速度ベクトルの方向に対して表面12の法線方向Hが所定の角θpとなるようにアーム部3を傾ける。これにより、本体部2の移動方向Pだけでなく、障害物11の移動方向にも応じることができ、相対速度ベクトルの方向に対してアーム部3の傾斜を調整することができる。これにより、アーム5が受ける衝突力をさらに抑えることができる。
【0049】
また、アーム5の長手方向を軸としてアーム5の表面19を能動回転させ、見かけの傾
きを作ってもよい。この動作について、図12を参照しながら説明する。図14は、本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1のアーム5の部分斜視図である。
【0050】
図14(a)に示すように、アーム5を覆う外装部(図示せず)がある場合には、アーム5の内部から外装部を駆動し表面を回転させる。これによっても、障害物11との衝突が回避できずに衝突した場合、外装部の動きにより見かけの傾きを大きくし、衝突したときの衝突力を進行方向Pに対して分散させ、和らげることができる。なお、図14(b)に示すように、外装部がない場合にはアーム5自体を回転させる。これによっても、衝突したときの衝突力を和らげることができる。アーム7についても同様である。
【0051】
また、障害物11に対してアーム部3の移動経路から外れる方向に能動的に運動量を与えるようにしてもよい。この動作について、図15を参照しながら説明する。図15は、本発明の実施の形態におけるマニピュレータ1のアーム5の再衝突回避動作を説明する図である。
【0052】
図15(a)に示すように、マニピュレータ1を進行方向Pで移動させるときに、進行方向Pと対向する方向から障害物11が移動している場合について説明する。図15(b)に示すように、アーム部3に障害物11が衝突したとき、アーム部3を変位させ、障害物11に力Fdを作用させる。これにより、障害物11は本体部2からより離れる方向、すなわち、障害物11の移動方向をCからDに変える。このように、アーム部3を変位させ、アーム部3の移動径路から外れる方向に障害物11に能動的に運動量を与えることで、アーム部3の他の部分に再衝突しにくくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、人物などの障害物との衝突が回避できずに障害物と衝突した場合であっても障害物に対して衝突力を低減させることができ、マニピュレータの姿勢制御装置および姿勢制御方法などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態におけるマニピュレータの概略上面図
【図2】図1の要部Aの拡大図
【図3】(a)同マニピュレータのアームが正面衝突時に障害物に与える衝突力を説明する概念図、(b)同マニピュレータが本方法による傾斜衝突時に障害物に与える衝突力を説明する概念図
【図4】同マニピュレータの構成を示すブロック図
【図5】同マニピュレータの動作を示すフローチャート
【図6】同マニピュレータの移動開始時におけるアーム姿勢の変化を示す図
【図7】同マニピュレータの停止時におけるアーム姿勢の変化を示す図
【図8】同マニピュレータにおけるアーム部3の回動動作を説明する正面図
【図9】同マニピュレータの移動時におけるアーム姿勢を示す上面図
【図10】同マニピュレータの移動時における他のアーム姿勢を示す上面図
【図11】同マニピュレータの移動時における他のアーム姿勢を示す正面図
【図12】同マニピュレータの停止時における他のアーム姿勢の変化を示す図
【図13】図2のB−B線から見たアームの断面図
【図14】同マニピュレータのアームの部分斜視図
【図15】同マニピュレータのアームの再衝突回避動作を説明する図
【符号の説明】
【0055】
1 マニピュレータ
2 本体部
3 アーム部
4 ハンド
5,7,105,107,109,205,207,209 アーム
6,8,106,108,110,206,208,210 関節部
6a,8a,9a アクチュエータ
6b,8b,9b 減速機
9 移動部
10 姿勢制御部
11 障害物
12,19 表面
13 入力部
14 モータ駆動部
15 モータ
16 エンコーダ
17 平面部
20 把持物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御装置であって、前記本体部は姿勢制御部を備え、
前記姿勢制御部は、前記本体部を移動させるときに前記アーム部を所定の進行方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とするマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項2】
前記本体部と障害物との相対速度ベクトルを検知する障害物検知部をさらに備え、
前記姿勢制御部は、前記アーム部を前記相対速度ベクトルの方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とする請求項1に記載のマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項3】
前記アーム部は前記所定の進行方向側に平面部を有し、
前記姿勢制御部は、前記相対速度ベクトルの大きさが大きくなるほど前記相対速度ベクトルの方向に対して前記平面部の傾きを大きくすることを特徴とする請求項2に記載のマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項4】
前記姿勢制御部は、前記アーム部の長手方向を軸として前記アーム部の表面を前記障害物から受ける衝突力が小さくなる方向に能動回転させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項5】
前記姿勢制御部は前記アーム部を変位させ、前記障害物に対して前記アーム部の移動径路から外れる方向に運動量を与えることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項6】
前記姿勢制御部は、前記所定の進行方向に対して前記アーム部で把持した把持物がマニピュレータの各部位に先行しないように前記アーム部を変形させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項7】
本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御装置であって、前記本体部は姿勢制御部を備え、
前記姿勢制御部は、前記アーム部を回動させるときに前記アーム部の先端部を所定の回動方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とするマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項8】
本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御方法であって、前記本体部を移動させるときに前記アーム部を所定の進行方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とするマニピュレータの姿勢制御方法。
【請求項9】
本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御方法であって、前記アーム部を回動させるときに前記アーム部の先端部を所定の回動方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とするマニピュレータの姿勢制御方法。
【請求項1】
本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御装置であって、前記本体部は姿勢制御部を備え、
前記姿勢制御部は、前記本体部を移動させるときに前記アーム部を所定の進行方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とするマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項2】
前記本体部と障害物との相対速度ベクトルを検知する障害物検知部をさらに備え、
前記姿勢制御部は、前記アーム部を前記相対速度ベクトルの方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とする請求項1に記載のマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項3】
前記アーム部は前記所定の進行方向側に平面部を有し、
前記姿勢制御部は、前記相対速度ベクトルの大きさが大きくなるほど前記相対速度ベクトルの方向に対して前記平面部の傾きを大きくすることを特徴とする請求項2に記載のマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項4】
前記姿勢制御部は、前記アーム部の長手方向を軸として前記アーム部の表面を前記障害物から受ける衝突力が小さくなる方向に能動回転させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項5】
前記姿勢制御部は前記アーム部を変位させ、前記障害物に対して前記アーム部の移動径路から外れる方向に運動量を与えることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項6】
前記姿勢制御部は、前記所定の進行方向に対して前記アーム部で把持した把持物がマニピュレータの各部位に先行しないように前記アーム部を変形させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項7】
本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御装置であって、前記本体部は姿勢制御部を備え、
前記姿勢制御部は、前記アーム部を回動させるときに前記アーム部の先端部を所定の回動方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とするマニピュレータの姿勢制御装置。
【請求項8】
本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御方法であって、前記本体部を移動させるときに前記アーム部を所定の進行方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とするマニピュレータの姿勢制御方法。
【請求項9】
本体部に回動可能に設けたアーム部を有するマニピュレータの姿勢制御方法であって、前記アーム部を回動させるときに前記アーム部の先端部を所定の回動方向に対して斜め後方に傾けることを特徴とするマニピュレータの姿勢制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−297810(P2009−297810A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152593(P2008−152593)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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