説明

マニピュレータシステム

マニピュレータシステムは、入力を有するスレーブトングと、2つの出力を有するマスタハンドルと、遊星ギアアセンブリとを有し、遊星ギアアセンブリは、サンギア、遊星ギア、およびリングギアを有し、マスタハンドルの2つの出力を受けるとともにスレーブトングに単一の出力を提供するように構成されている。一実施形態において、遊星ギアアセンブリは、少なくともサンギアと、サンギアを係合するように構成された少なくとも1つの遊星ギアと、少なくとも1つの遊星ギアを係合するように構成されたリングギアとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国を除くすべての国の指定については出願人として米国企業であるDelaware Capital Formation,Inc.の名義で、米国の指定のみについては発明者および出願人として米国民であるMichael J.Harperの名義で、2009年12月18日にPCT国際特許出願として出願されたものであり、2008年12月19日に出願された米国特許出願第61/139,339号明細書および2009年12月17日に出願された米国特許出願第12/640,222号明細書の優先権を主張するものであり、かかる明細書の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本明細書に開示の技術は、一般にマニピュレータシステムに関し、より詳細には遠隔マニピュレータシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
様々な産業において、通常の周辺条件から隔離された環境において作業、試験、組み立てなどを行うことが好ましい。例えば、いくつかの医療および製薬アプリケーションでは、外部のデブリおよびバクテリアが清浄な環境における条件に実質的に影響を与えられない、実質的により清浄な環境において、かかる活動を行うことが好ましいかもしれない。別の例では、内部の廃棄物が外部の条件に実質的に影響を与えないように、ホットセルまたはホットラボなどの実質的により汚れた環境に、活動を封じ込めるのが好ましいことがあり得る。隔離環境の内部の装置、コンポーネントなどを隔離環境の外部から、環境の隔離自体を破ることなく操作する能力を有することが、しばしば必要である。様々な事例において、遠隔マニピュレータを用いてかかる活動を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠隔マニピュレータは、一般に、機械的に、電気的に、もしくは油圧的に、またはこれらの3つの組み合わせを用いて、スレーブアームに接続されたマスタアームを有する。スレーブアームは隔離環境の内部に位置し、マスタアームは隔離環境の外部に位置する。オペレータは、マスタアームを操縦することによりスレーブアームの運動を誘起および指示し、多くの事例において、かかる装置の使用を通じて相当に複雑なタスクを行うことが可能である。遠隔マニピュレータは、数多くのコンポーネントを有するとともに組み立てに多くの時間および専門的技術を要求するかなり複雑な装置であり得る。コンポーネントの数または複雑さを低減するとともに組み立て時間を減少させることが望ましいことが頻繁にある。加えて、オペレータのニーズによっては、種々のアプリケーションにおいて堅牢な遠隔マニピュレータが望ましいことがあり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、ホットセル環境において通常見られる物体を遠隔的に扱うことが可能な気密遠隔マニピュレータを記載している。遠隔マニピュレータは、大きく言って、スレーブトングへの入力を提供するマスタアームを有する。マスタアームとスレーブトングとの間の機械的通信チェーンにより、マスタアームからの指示運動および指示入力が可能になり、スレーブアームによるスレーブトングの応答運動が誘起される。
【0006】
いくつかの実施形態では、遊星ギアアセンブリによりマスタアームからの2つの機械的通信チェーンが合流され、スレーブトングに至る単一の機械的通信チェーンが結果的に得られる。換言すれば、マスタハンドルは、1つの出力を有する遊星ギアアセンブリへの第1の入力および第2の入力を提供する。かかる出力は、トングにより受けられると、トングの運動を指示する。入力の一方は、スレーブアームひいてはスレーブトングにおける応答運動を誘起する、マスタアームの物理的移動などの、マスタアームからの指示運動であり得る。別の入力は、スレーブアームひいてはスレーブトングにおける応答運動を機械的に誘起するモータに電気的に働きかける、ボタン、トグル、スイッチなどの、マスタアームからの指示入力であり得る。
【0007】
遊星ギアシステムは、サンギア、少なくとも1つの遊星ギア、およびリングギアを内蔵する。本明細書に開示の技術の第1の実施形態では、マニピュレータシステムは、入力を有するスレーブトングと、第1の出力、第1の入力、および第2の入力を有する遊星ギアアセンブリとを備える。遊星ギアシステムの第1の出力は、スレーブトングと機械的に通信し、第1の入力および第2の入力は、遊星ギアシステムの第1の出力と機械的に通信する。マスタハンドルは、遊星ギアアセンブリの第1の入力および第2の入力と通信する。
【0008】
本発明は、本発明の様々な実施形態の後続の詳細な説明を添付の図面とともに検討することにより、より完全に理解および認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、例示の遠隔マニピュレータを示す。
【図2】図2は、本明細書に開示の技術と整合する遊星ギアアセンブリの分解斜視図である。
【図3】図3は、本明細書に開示の技術と整合する遊星ギアアセンブリの部分組立斜視図である。
【図4】図4は、本明細書に開示の技術と整合する遊星ギアアセンブリの組立斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、例示の遠隔マニピュレータを示す。かかる遠隔マニピュレータ100は、様々な実施形態において本願を通じて開示される技術と整合している。遠隔マニピュレータ100は、大きく言って、3つの主なコンポーネントを有し、それらは、マスタアーム140、スレーブアーム160、およびマスタアーム140をスレーブアーム160に接続するシールチューブ150である。スレーブアーム160は、隔離環境110における内容物を操作する目的で隔離環境110におかれる。マスタアーム140は、隔離環境110の外部、より具体的には、一般にユーザにアクセス可能な二次環境120におかれる。隔離環境110および二次環境120は、スレーブアーム160をマスタアーム140に接続するようにシールチューブ150が通過する壁130により隔てられている。壁130は、隔離環境110におけるコンポーネントを二次環境120から見ることを可能にする窓135を画成している。
【0011】
隔離環境110は、種々の実施形態において、シールチューブ150および窓135の周囲を含め、気体、デブリスなどが一方の環境から他方に通過できないように、二次環境120から封止されている。隔離環境110は、例えば、ホットセルであり得る。
【0012】
マニピュレータ100は、マスタアーム140が二次環境120において特定のやり方(「指示運動」)で操縦されると、スレーブアーム160が隔離環境110において対応する移動(「応答運動」)で実質的に応答するように構成されている。マスタアーム140は、少なくともx軸、y軸、z軸、またはz軸方位方向に指示することが可能である。
【0013】
マスタアーム140は、指示運動をさらに容易にするマスタリストジョイント145およびマスタハンドル400を有する。マスタアーム140は、指示入力となる任意の数の命令のための種々のトリガ、ボタン、スイッチなどを内蔵することが可能である。かかるトリガ、ボタン、スイッチなどは、マスタハンドル400上に配設することが可能である。一実施形態では、マスタハンドル400は、係合されるとスレーブアーム160において把持応答運動を発生させるトリガを内蔵する。マスタリストジョイント145は、マスタハンドル400とマスタアーム140の遠端との間に位置し、マスタリストジョイント145により定義される軸を中心とする回転運動およびマスタリストジョイント145を中心とするマスタハンドル400のピボットなどの複雑な指示運動を可能にする。様々な実施形態において、マスタリストジョイント145を中心とするマスタハンドル400のピボットは、マスタハンドル400をマスタアーム140に対してわずかに持ち上げることに似ている。マスタリストジョイント145により可能になる2つの運動は、本願の目的のため、以下では総称して「上昇およびツイスト」運動と呼ぶ。
【0014】
スレーブアーム160の応答運動も、同様に、少なくともx軸、y軸、z軸、またはz軸方位方向に行われる。スレーブアーム160は、加えて、マスタアーム140の指示運動および指示入力に対する応答運動を容易にするスレーブトング500およびスレーブリストジョイント165を有する。スレーブリストジョイント165は、スレーブアーム160の遠端とスレーブトング500との間に位置し、スレーブリストジョイント165により定義される軸を中心とするスレーブトング500の回転運動およびスレーブリストジョイント165を中心とするスレーブトング500のピボットを可能にする。マスタハンドル400に関して上述したように、スレーブリストジョイント165を中心とするスレーブトング500のピボットは、スレーブトング500をスレーブアーム160に対してわずかに持ち上げることに似ている。ここでも、スレーブリストジョイント165により可能になるこれらの2つの運動は、本願の目的のため、以下では総称して「上昇およびツイスト」運動と呼ぶ。
【0015】
様々な実施形態において、マスタハンドル400上のトリガとスレーブトング500との間の機械的通信は、Red Wing,Minnesotaを拠点とするCentral Research Laboratoriesにより生産されるModel R Telemunipulatorにおいて用いられるような1つ以上の乗算器を内蔵することが可能である。1つ以上の乗算器を用いて、マスタハンドル400のトリガの圧搾に応答してスレーブトング500に結果的に生じる把持力を相対的に増加させることが可能である。
【0016】
様々な実施形態において、スレーブアーム160は、相互交換可能であるとともに、隔離環境110と二次環境120との間の封止を破壊することなくシールチューブ150と連結する独立した遠隔的に取り外し可能なユニットである。かかる実施形態では、スレーブアーム160は、隔離環境110の外部からスレーブアーム160をシールチューブアセンブリ150に対して遠隔的に連結または連結解除するための自己調心自己ロック機構を含むことが可能である。また、スレーブトング500も、遠隔的に取り外し可能であるとともに他のスレーブトングと相互交換可能である。
【0017】
スレーブリストジョイント165およびマスタリストジョイント145は、一般に、当該技術において既知の種々の手段を通じて達成可能な上記の上昇およびツイスト運動を可能にするように構築される。様々な実施形態において、リストジョイントは、2つのギアおよびヨークを内蔵し、上昇およびツイスト運動は、それらを通過するチェーンにより駆動される。
【0018】
また、マスタアーム140も、隔離環境110の封止を破壊することなくシールチューブアセンブリ150と連結する独立した相互交換可能で取り外し可能なユニットである。マスタアーム140は、マスタアーム140とスレーブアーム160との両方のためのX軸、Y軸、およびZ軸運動釣り合い錘を内蔵する。
【0019】
少なくとも1つの実施形態では、マスタハンドル400は、トリガが係合されるとスレーブトング500の応答把持運動を生じさせる機械的ピストル型グリップ装置である。マスタハンドル400は、スレーブトング500の把持を維持することが可能なラチェット装置を含む。ラチェットは、係合状態にロックするかまたは係合状態からロック解除することが可能である。また、マスタハンドル400は、様々な幅の物体を扱うためのスレーブトング500の把持のサイズを調整する調整ネジを有する。多くの実施形態では、マスタハンドルを操作するユーザのグリップ感覚に比例するようにスレーブトング500の把持のサイズを調整することが望ましいことがあり得る。
【0020】
シールチューブ150は、隔離環境110を隔離された状態に保ちながら指示運動を伝達することが可能な封止されたユニットである。一実施形態では、シールチューブ150は、指示運動を伝達する5つの回転するステンレス鋼シャフトと、スレーブ係合機構を作動させる1つの回転するステンレス鋼シャフトとを有する。シールチューブ150のマスタ側端部上には、各シャフトについて一対のニトリルゴムスプリング荷重式リップシールを含む分割式シールプレートが装着されている。各対のシールの間の空間には、グリースが充填されている。
【0021】
少なくとも1つの実施形態では、シールチューブ150は、二次環境120から隔離環境110まで壁130の少なくとも一部分を通じて封止可能に延在する壁チューブ155を通じて隔離環境を封止する。シールチューブ150は、少なくとも2つのニトリルゴムスプリング荷重式リップシールが壁チューブ155の二次環境120に向けた端部に封止された状態で壁チューブ155内に封止可能に配設されている。リップシールの間の空間には、一般に、グリースが充填される。かかる構成により、封止された隔離環境110を維持しながら、シールチューブ150が壁チューブ155内で回転することが可能になる。シールチューブ150は、特定のアプリケーションのニーズに適合するように変化し得る種々のマスタアームおよびスレーブアームに係合するように構成することが可能である。
【0022】
一実施形態では、シールチューブ150は、フランジ装着され、壁130の二次環境120側を封止する。一実施形態では、フランジは、直径14インチ(356mm)であり、直径12.728インチ(323.3mm)のボルトサークル上に8つの均等に離間された直径0.51インチ(13.1mm)の穴を有する。対向する各対の穴は、壁チューブ155の中心を通る水平線上にある。また、シールチューブ150と壁チューブ155との間には、シールチューブ150のスレーブ側端部上に汚染バリアが配置されている。かかる汚染バリアは、当該技術において既知のものと整合し得る。
【0023】
別の実施形態では、シールチューブ150は、壁チューブ155の二次環境側の付近で壁チューブ155の内径に対して装着され、封止する。一例として、壁チューブ155は、10.02インチ(254.5mm)の内径を有する。シールは、軸方向に圧縮されてシールチューブ150アセンブリを壁チューブ155の内径に対して封止するように拡張される一対のネオプレンリングで構成される。
【0024】
マニピュレータ100は、加えて、電動モータであり得るモータに働きかけることにより指示入力を提供するマスタアーム140側の手動操作スイッチを通じてアクセスされるX、Y、およびZ方向の電気駆動式割り出しを有する。X軸の運動は、X軸に平行なスレーブアーム160の回転により定義される。一実施形態では、スレーブアーム160は、マスタアーム140に対していずれのX軸方向にも30°まで割り出すことが可能である。一実施形態では、モータは、1.2°毎秒の速度でスレーブアームを割り出すことが可能である。Y軸の運動は、Y軸に平行なスレーブアーム160の回転により定義される。一実施形態では、スレーブアーム160は、X軸およびY軸により定義される平面に対して垂直なスレーブアーム160の位置に対して90°から−15°まで割り出すことが可能であり、正の角度は、壁130から離れる移動として定義される。この実施形態では、モータは、約5°毎秒の速度でスレーブアームを割り出すことが可能である。Z軸の運動は、Z軸に沿う線形運動により定義される。一実施形態では、モータは、1.2インチ(30mm)毎秒の速度で60ポンド(50kg)を持ち上げることが可能である。
【0025】
スレーブトング500における応答運動は、マスタハンドル400と通信するとともに指示運動をスレーブトング500に伝達する機械的通信チェーンを通じて開始される。指示入力は、上記のように、マスタアーム140上に配設することが可能であるが、一般には、マスタハンドル400からアクセス可能であり、従って、本願の目的のため、マスタハンドル400から入力されるものとされる。さらにその上、本願の目的のため、マスタハンドル400の指示運動および入力に応答するスレーブトング500の応答運動に寄与する要素の組み合わせは、機械的通信チェーンと呼ぶ。様々な実施形態において、機械的通信チェーンは、電子的要素を内蔵し得る実質的に機械的なシステムである。少なくとも1つの実施形態では、機械的通信チェーンは、機械的要素を内蔵する実質的に電子的なシステムである。かかる機械的通信チェーンは、マスタハンドル400における指示運動または指示入力から開始し、最終的にスレーブトング500の応答運動に至る。
【0026】
機械的通信チェーンは、マスタハンドル400の指示運動または指示入力を受信するとともにスレーブトング500の応答運動を誘起するように構成された種々のギア、プーリ、チェーン、ケーブル、ドラム、モータなどを備える。
【0027】
一般に、各運動軸には、特定の機械的通信チェーンが関連付けられる。第1の機械的通信チェーンは、マスタアームの指示運動に応答して第1の軸に沿ってスレーブトングを指示するように構成されている。多くの実施形態では、かかる第1の軸はX軸であり得る。加えて、第2の機械的通信チェーンは、さらに、マスタアームの指示運動に応答して第2の軸に沿ってスレーブトングを指示するように構成されている。様々な実施形態において、第2の軸はY軸である。第3の機械的通信チェーンは、マスタアームの指示運動に応答して第3の軸に沿ってスレーブトングを指示するように構成され、かかる軸はZ軸であり得る。第4の機械的通信チェーンは、マスタアームの指示に応答して第3の軸を中心としてスレーブトングを指示するように構成され、かかる運動はZ軸方位の応答運動に対応し得る。
【0028】
X、Y、およびZ方向の電気駆動式割り出しに関連付けられる移動は、モータに働きかけることにより指示入力を提供するマスタハンドル400から手動操作スイッチを通じてアクセスされる。様々な実施形態において、モータは電動モータである。モータは、マスタハンドル400の少なくとも1つのスイッチ、トグル、トリガなどの指示入力からスレーブトング500の応答運動を誘起する少なくとも1つの機械的通信チェーンにおけるコンポーネントである。X、Y、およびZ軸の電気駆動式割り出しに関連付けられる機械的通信チェーンは、上の段落で説明したマスタハンドル400の指示運動に関連付けられる機械的通信チェーンとは別個のものであることが可能であり、または、下の段落で説明するように1つ以上のコンポーネントを共有することが可能である。
【0029】
例えば、特定の実施形態では、遊星ギアアセンブリが、特定の軸に沿うスレーブトング500の応答運動を誘起する2つの機械的通信チェーンにおけるコンポーネントである。第1の機械的通信チェーンは、マスタハンドル400の指示運動に基づいて特定の軸に沿うスレーブトング500の応答運動を誘起するものであり、第2の機械的通信チェーンは、電気式割り出しなどを通じて、マスタハンドル400の指示入力に基づいて特定の軸に沿うスレーブトング500の応答運動を誘起するものである。
【0030】
遊星ギアシステムは、マスタハンドル400の指示運動と通信する第1の入力と、電気式割り出しを開始させるマスタハンドル400に近接して配設されたスイッチ、トグルなどのマスタハンドル400の指示入力と通信する第2の入力とを有する。かかる例では、遊星ギアアセンブリの第1の入力は、マスタハンドル400と機械的に通信し、遊星ギアアセンブリの第2の入力は、電動モータなどを通じてマスタハンドル400と少なくとも部分的に機械的に通信する。遊星ギアシステムの第1の入力と第2の入力との両方は、遊星ギアシステムの第1の出力と機械的に通信する。出力は、特定の軸に沿ってスレーブトング500を指示するように構成された機械的通信チェーンに至る。換言すれば、指示運動に基づいてスレーブトング500を指示するように構成された機械的通信チェーンは、指示入力に基づいてスレーブトング500を指示するように構成された機械的通信チェーンと遊星ギアアセンブリにおいて合流する。かかる機械的通信チェーンの両方は、同じ軸に沿ってスレーブトング500を指示するように構成されている。
【0031】
本明細書で用いる遊星ギアアセンブリとは、少なくともサンギアとサンギアの周囲を回転する遊星ギアとであって、サンギアと遊星ギアとが相互に係合するものを意味する。いくつかの実施形態では、遊星ギアアセンブリは、少なくともサンギアと、サンギアに係合するように構成された遊星ギアと、サンギアおよび遊星ギアの周囲に配設され遊星ギアに係合するように構成されたリングギアとを含む。いくつかの実施形態では、遊星ギアアセンブリは、少なくともサンギアと、サンギアに係合する1つ以上の遊星ギアと、遊星ギアに係合するリングギアとを含む。本願と整合する遊星ギアアセンブリを含む遊星ギアシステムを、図2、図3、および図4の説明において以下でより詳細に説明する。
【0032】
図2および図3は、それぞれ、本明細書に開示の技術と整合する遊星ギアシステムの分解斜視図および部分組立斜視図である。第1の組のネジ204(例えば、ソケットヘッドキャップネジ)は、カバープレート206により受けられ、ハブキャリア236に係合するように設計されている。サンギア202、3つの遊星ギア210、およびリングギア212は、図3に示すように相互に係合するように構成されている。環状テープドラム216は、リング平ギア212を受けるように構成された表面を定義している。また、2つの第1のドラムダウエルピン214および1つの短ダウエルピン215も、環状テープドラム216により受けられるように構成されている。2つの第1のドラムダウエルピン214は、テープドラムの周囲に配設されたテープに摩擦係合するように構成されている。短ダウエルピン215は、リングギア212を受けることによりアセンブリを構造的に位置合わせする。
【0033】
3つの遊星ギアダウエルピン234は、各遊星ギア210のギアベアリング208およびハブキャリア236により受けられる。第1のプレートネジ222は、第1のベアリングプレート220をテープドラム216に連結し、第2のプレートネジ226は、第2のベアリングプレート228をベアリングマウント240に連結する。第1のベアリングプレート220および第2のベアリングプレート228は、それぞれ、第1のベアリング218の外輪および第2のベアリング232の外輪を固定する。ベアリングスペーサ224は、第1のベアリング218の内輪と第2のベアリング232の内輪との間に配設される。ハブキャリア236は、ベアリング230およびドライブシャフト242を受ける。ハブキャリア236とドライブシャフト242との両方は、ハブダウエルピン238を受ける。
【0034】
様々な実施形態において、遊星ギアシステム200の様々なコンポーネントを連結する他の手段を用いることが可能であり、それらは一般に当該技術において既知である。図2および図3に示す実施形態では、第1の組のネジ204は、一実施形態ではソケットヘッドキャップネジであり、ステンレス鋼から構築されている。加えて、第1のプレートネジ222および第2のプレートネジ226は、ステンレス鋼の平頭皿ネジである。加えて、コンポーネントは、当該技術において一般に用いられる材料で構築されている。この特定の実施形態では、カバープレート206、テープドラム216、ベアリングスペーサ224、第1のベアリングプレート220、第2のベアリングプレート228、ハブキャリア236、およびベアリングマウント240は、アルミニウムで構築されている。ドライブシャフト242、ベアリング230、遊星平ギア210、リング平ギア212、および出力平ギアは、1種類以上のステンレス鋼で構築されている。遊星平ギア210、リング平ギア212、および出力平ギアは、17−4ステンレス鋼などの高強度ステンレス鋼で構築することが可能である。また、他の種類の材料も予期される。
【0035】
図4は、図2および図3に示す遊星ギアシステムの完全に組み立てた状態の斜視図であり、それらの図面に鑑みて十分に理解することが可能である。一般に、遊星ギアシステム200への2つの入力が存在する。第1の機械的通信チェーンは第1の入力に連結され、第2の機械的通信チェーンは第2の入力に連結される。第1の入力は、ドライブシャフト242を通じてである。記載の実施形態におけるドライブシャフト242は、図1の検討において説明したように、電気式割り出し用モータの出力と機械的に通信するように構成されている。ドライブシャフトは、この実施形態では遊星ギアである、遊星ギアアセンブリの入力に連結されている。遊星ギアシステムへの入力を提供する第2の方法は、テープドラム216に摩擦係合するテープを受けるように構成されたテープドラム216を通じてである。テープドラム216は、具体的にはこの実施形態ではリングギアである、遊星ギアアセンブリの第2の入力に連結されている。遊星ギアアセンブリへの入力の両方の方法を通じて、運動の速度が運動の力に変換され、サンギア202を通じた出力が結果的に得られる。サンギア202は、別の機械的通信チェーンに連結される。少なくとも1つの実施形態では、サンギア202は、Z軸に沿う応答運動を結果的に生じる機械的通信チェーンに連結される。
【0036】
本明細書および付帯の請求項において用いるフレーズ「構成される」は、特定のタスクを行うまたは特定の構成を採用するように構築または構成されたシステム、装置、または他の構造を説明するものであることにも留意すべきである。フレーズ「構成される」は、「編成される」、「編成および構成される」、「構築および編成される」、「構築される」、「製造および編成される」などの他の類似のフレーズと相互交換可能に用いることが可能である。
【0037】
本明細書におけるすべての刊行物および特許出願は、本発明が属する分野における通常の技量のレベルを示している。すべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が具体的および個々に参照により示されたのと同様に参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
本願は、本主題の適応または変形を網羅することを意図している。上記の説明は、限定ではなく説明を意図していることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力を有するスレーブトングと;
第1の出力、第1の入力、および第2の入力を有する遊星ギアアセンブリであって、前記第1の出力は前記スレーブトングと機械的に通信し、前記第1の入力および前記第2の入力は前記第1の出力と機械的に通信する、遊星ギアアセンブリと;
前記遊星ギアアセンブリの前記第1の入力および前記第2の入力と通信するマスタアームと;を備える、マニピュレータシステム。
【請求項2】
前記マスタアームは、前記遊星ギアアセンブリの前記第1の入力と機械的に通信する、請求項1に記載のマニピュレータシステム。
【請求項3】
前記マスタアームは、前記遊星ギアアセンブリの前記第2の入力と少なくとも部分的に電気的に通信する、請求項1に記載のマニピュレータシステム。
【請求項4】
前記マスタアームはモータと電気的に通信し、前記モータは前記スレーブトングと機械的に通信する、請求項3に記載のマニピュレータシステム。
【請求項5】
前記遊星ギアアセンブリは、少なくともサンギアと、前記サンギアに係合するように構成された少なくとも1つの遊星ギアと、前記少なくとも1つの遊星ギアに係合するように構成されたリングギアとを備える、請求項1に記載のマニピュレータシステム。
【請求項6】
前記リングギアは前記第1の入力である、請求項5に記載のマニピュレータシステム。
【請求項7】
前記サンギアは前記第1の出力である、請求項5に記載のマニピュレータシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの遊星ギアは前記第2の入力である、請求項5に記載のマニピュレータシステム。
【請求項9】
3つの遊星ギアを備える、請求項1に記載のマニピュレータシステム。
【請求項10】
スレーブトングと;
前記スレーブトングと通信するマスタハンドルと;
前記マスタハンドルの指示運動に応答する第1の機械的通信チェーンと;
前記マスタハンドルの指示入力に応答する第2の機械的通信チェーンと;
第1の入力、第2の入力、および第1の出力を有する遊星ギアアセンブリであって、前記第1の機械的通信チェーンは前記第1の入力に連結され、前記第2の機械的通信チェーンは前記第2の入力に連結されている、遊星ギアアセンブリと;
前記スレーブトングの応答運動を誘起するように構成された、前記遊星ギアアセンブリの前記第1の出力に応答する第3の機械的通信チェーンと;を備える、マニピュレータシステム。
【請求項11】
前記遊星ギアアセンブリは、少なくともサンギアと、前記サンギアに係合するように構成された少なくとも1つの遊星ギアと、前記少なくとも1つの遊星ギアに係合するように構成されたリングギアとを備える、請求項10に記載のマニピュレータシステム。
【請求項12】
前記リングギアは前記第1の入力である、請求項11に記載のマニピュレータシステム。
【請求項13】
前記サンギアは前記第1の出力である、請求項11に記載のマニピュレータシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの遊星ギアは前記第2の入力である、請求項11に記載のマニピュレータシステム。
【請求項15】
前記第2の機械的通信チェーンは前記マスタハンドルと電気的に通信するモータを備え、前記モータは前記スレーブトングと機械的に通信する、請求項10に記載のマニピュレータシステム。
【請求項16】
3つの遊星ギアを備える、請求項10に記載のマニピュレータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−510381(P2012−510381A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539811(P2011−539811)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/068752
【国際公開番号】WO2010/071808
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(507388465)デラウェア・キャピタル・フォーメイション・インコーポレーテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Delaware Capital Formation Incorporated
【Fターム(参考)】