説明

マルチキャストメッセージ中の測定値の報告を差の形式で行うことにより信号伝達帯域幅の負荷を軽減するための方法及び装置

コア基地局(10)を介して接続された、少なくとも第1のソース基地局(11、12、13、14)から少なくとも第1のターゲット基地局(21、22、23、24、25)への測定値の通信に必要とされる帯域幅を軽減するための信号伝達方法であって、少なくとも第1の測定値の少なくとも第1のソース基地局(11、12、13、14)からコア基地局(10)への報告ステップと;好ましくは、測定値の降順の序列ステップと;コア基地局(10)における、少なくとも第1の測定値に関する値の情報のマルチキャストメッセージへの包含ステップと;少なくとも第1のターゲット基地局(21、22、23、24、25)へのマルチキャストメッセージの送信ステップと;を含み、値の情報は、最大値と第1の測定値との間の第1の差として決定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には携帯電話ネットワークにおける通信に関し、特に、当該ネットワークにおける測定結果の報告に関する。
【背景技術】
【0002】
OFDMA/SC−FDMAを基礎とするシステムにおいて、利用可能帯域幅は、例えば3GPP TR 25.814:「発展型UTRAの物理層的側面(Physical Layer Aspects for Evolved UTRA)」に定義されているような、数個のリソースブロック又はユニットに再分割される。この文献によると、リソースブロックは時間と周波数の両方において定義される。下りリンクにおいては各ユーザ端末は各リソースブロックの下りリンクチャネル品質を測定して、ネットワークに対し測定した品質を報告する。下りリンクチャネル品質は、端末により実行されるさまざまな種類の測定結果により指し示される。例えば、チャネル品質表示(CQI)、受信信号強度表示(RSSI)、端末の送信電力、信号対干渉雑音比(SINR)等である。
【0003】
一方、上りリンクにおいては、基地局(しばしば「ノードB」と称される)は、下りリンクの総伝送搬送波電力、下りリンクのリソースブロックごとの伝送搬送波電力、上りリンクが受信する総広域帯電力、リソースブロックの使用状況等のさまざまな種類の測定を実行する。端末による測定結果の報告及び基地局により遂行された測定に基づいて、ネットワークはデータ伝送のためにリソースブロックをユーザに動的に割り当て、あるいは予定を組むことができる。ネットワークはこれらの測定結果を利用して、ハンドオーバー、輻輳制御、アドミッション制御等、他の種類の無線リソース管理も実行する。
【0004】
CDMAシステムにおいては各ユーザは全帯域幅を割り当てられるが、異なるユーザは分離直交(及び/またはスクランブル)コードを割り振ることで区別される。しかしOFDMA/SC−FDMAシステムにおいては、各携帯電話はシステム帯域幅によって決まるいくつかのリソースブロックを保有している。これは、システム帯域幅に比べてリソースブロックの帯域幅が非常に狭いからである。E−UTRAにおいては、現在の作業仮説によると、リソースブロックは180kHzの周波数と0.5msの時間とからなる。一例として、帯域幅の一部分は保護周波数帯として作用し、よって利用されないので、10MHzと20MHzとのそれぞれに対して、48個と96個とのリソースブロックが存在する。スケジューリング、携帯電話間の干渉調整、輻輳制御のようなある種の無線リソース管理機能は、リソースブロックのグループについて、あるいはそれぞれについて、多様な種類の測定を実行するように、端末及び基地局に要求することになる。さらに、高速な時間的チャネル変動を追跡するためには、測定結果は、全周波数に亘って、例えば1msの送信間隔時間ごと(TTI)に、報告されることになる。これには、容量喪失を招く重度の信号伝達オーバーヘッドを伴う。
【0005】
E−UTRAにおいては、異なる種類の測定結果が一つの基地局から周辺の複数の基地局に報告される。これは、E−UTRAのようなすべての基地局が相互に論理的に関連づけられているあらゆるメッシュタイプのネットワークに、測定結果の重複をもたらす。よって基地局相互間のインターフェース全般に亘り、深刻な信号伝達オーバーヘッドを生ずることが暗示される。そのため、配布先リストに加入している基地局のグループあるいは組に測定結果をマルチキャストすることが提案されている。このことは、異なる基地局からの測定結果が複数組の基地局にマルチキャストされるであろうことを暗示している。
【0006】
国際出願PCT/SE2005/001579は、特にE−UTRAにおける無線インターフェースの信号伝達負荷の軽減方法であって、差の形で測定結果を報告する方法を開示している。すなわち、各測定値を、関連するタイプの測定結果のために定義された最大値と測定値との間の差として報告する。この差による方法(difference method)は、3GPP TR 25.814:「発展型UTRAの物理層的側面」にも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
技術的な解決の状況は、各測定結果それぞれのために信号伝達オーバーヘッドを軽減することである。しかしながら、現在のシステムにおいては端末は複数の異なる種類の測定結果を報告しなければならない。同様に、各基地局は、その周辺の各基地局に対し複数種類の測定結果を報告することになる。このことは、測定結果の報告による深刻なオーバーヘッドがなおも存在する、ということを意味する。
【0008】
本発明の目的は、無線通信ネットワークにおける信号伝達負荷、特に基地局間の信号伝達負荷を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明により達成される。すなわち基地局の少なくとも第1及び第2のブランチを含むツリー構造におけるコア基地局として利用される基地局であり、少なくとも第1のターゲット基地局向けの、少なくとも第1の測定値に関する情報を、少なくとも第1のソース基地局から受信する受信手段、少なくとも第1の測定値に関する情報を含むマルチキャストメッセージを生成する生成手段、及びマルチキャストメッセージを送信する送信手段を含む前記基地局において、生成手段は、少なくとも第1の測定値と、少なくとも第1の測定値のための少なくとも最大値とに基づいて、差の値を計算する計算手段を含むことを特徴とする。
【0010】
またこの目的は、携帯電話ネットワークにおいて、コア基地局を通じて、少なくとも一つの他の基地局と通信を行うために構成された基地局であり、前記基地局は、ソース基地局からの少なくとも一つの測定値に関連するマルチキャストメッセージをコア基地局から受信するための受信手段、及びその基地局向けの少なくとも一つの測定値を読み出す読出手段を含む基地局であって、読出手段は、測定値と少なくとも測定値のための最大値とに基づく差の値である値の情報を抽出するように構成された抽出手段と、少なくとも差の値と最大値とに基づいて測定値を計算するように構成された計算手段とを含むことを特徴とする前記基地局により達成される。
【0011】
従って、本発明によれば、それぞれコア基地局として動作可能であり、かつターゲット基地局として動作可能である基地局が達成される。本発明によると、一つ又はそれ以上のソース基地局がそれらの測定値をコア基地局に提示するが、それは実際の値よりも狭い帯域幅しか必要としない差の測定値に計算されている。次に、差の測定値はマルチキャストメッセージに組み込まれ、ターゲット基地局に伝送される。ターゲット基地局はさらに、マルチキャストメッセージを解釈し、その基地局向けの情報を抽出し、差の値に基づいて実際の値を計算することができる。
【0012】
またこの目的は、コア基地局を介して接続された、少なくとも第1のソース基地局から少なくとも第1のターゲット基地局へ測定値を通信するための信号伝達方法であって、
−少なくとも第1の測定値の少なくとも第1のソース基地局からコア基地局への報告
−コア基地局における、少なくとも第1の測定値に関する値の情報のマルチキャストメッセージへの包含、及び
−少なくとも第1のターゲット基地局へのマルチキャストメッセージの送信
のステップを含む信号伝達方法であって、値の情報は、最大値と第1の測定値との間の第1の差として決定されることを特徴とする信号伝達方法により達成される。
【0013】
この方法は、前記のような差の測定値及びマルチキャストメッセージを生成するために、主としてコア基地局内で実行される。
【0014】
またこの目的は、少なくとも第1のソース基地局から少なくとも第1のターゲット基地局へ測定値を読み出すための信号伝達方法であって(前記ソース基地局とターゲット基地局とはコア基地局を介して接続されている)、
−第1のターゲット基地局における、コア基地局からのマルチキャストメッセージの受信
−マルチキャストメッセージに基づく、第1のターゲット基地局向けの少なくとも第1の測定値の決定
のステップを含む信号伝達方法であって、測定値の決定のステップは、マルチキャストメッセージから測定値に関する値の情報を抽出するステップと、値の情報及び少なくとも測定値のための最大値に基づいて測定値を計算するステップとを含むことを特徴とする信号伝達方法により達成される。
【0015】
この方法は、その基地局のための実際の測定値を読み出すために、ターゲット基地局内で実行される。
【0016】
本発明に係る差の測定結果の報告は、伝送ネットワーク内に現存するIPマルチキャスティングのより効率的な利用を可能にする。本発明によれば、信号伝達オーバーヘッドは軽減され、不要な測定結果報告の発生は阻止される。
【0017】
なお、ソース基地局とターゲット基地局とは、コア基地局を通じて論理的に接続されている限り、コア基地局を通じて物理的に接続されている必要はない。
【0018】
コア基地局においては、好ましくは計算手段は、第1の差と第2の測定値との間の第2の差としての第2の測定値に関連する値の情報を決定し、この値の情報をマルチキャストメッセージに包含されるように構成されている。相応する方法は、好ましくは第1の差と第2の測定値との間の第2の差としての第2の測定値に関する値の情報を決定する付加的なステップと、この値の情報をマルチキャストメッセージに包含する付加的なステップを含む。
【0019】
特に、有利な実施例においては、コア基地局は、第1の測定値として報告された多数の測定値から最高値を選択し、次に測定値を降順に並べるように構成された序列手段をさらに含む。相応する方法も、第1の測定値として最高測定値を選択し、次に測定値を降順に並べるステップを含む。これは、差の値の大きさを最小化し、よってこれらを転送するのに必要な帯域幅も最小化する。
【0020】
好ましくは、生成手段は、各測定値のために、ソース基地局、ターゲット基地局及び測定値のタイプについての情報をマルチキャストメッセージに包含するように構成される。この方法においては、各ターゲット基地局はどの値がそのターゲット基地局用であるか、及びどのようにして実際の測定値を読み出すかを見分けることができる。
【0021】
コア基地局内で実行される方法は異なるタイプの通信のために使用される。これは特に以下のように有利である。
・それぞれが一つのソース基地局から一つのターゲット基地局へ差の値のタイプに属する複数の測定値を通信できる。
・複数の異なるソース基地局に関する複数の測定結果を一つ又は複数のターゲット基地局に通信できる。
・それぞれが一つのソース基地局に関連する差の値のタイプに属する複数の測定結果を複数のターゲット基地局に通信できる。
【0022】
好ましくは、ターゲット基地局は、少なくとも一つの他のターゲット基地局向けの値の情報をマルチキャストメッセージに含むかどうか判定する判定手段をさらに含んでおり、その場合に少なくとも一つのさらに他の基地局にマルチキャストメッセージを転送する転送手段を含む。相応する方法は、少なくとも一つの他のターゲット基地局向けの値の情報をマルチキャストメッセージに含むかどうか判定するステップと、もしもそうであれば、少なくとも一つの他のターゲット基地局にマルチキャストメッセージを転送するステップとを含む。
【0023】
また好ましくは、ターゲット基地局は、少なくとも一つの他のターゲット基地局にマルチキャストメッセージを転送する前に、マルチキャストメッセージから不要部分を除去する(prune)ように構成された計算手段を含む。この方法においてはマルチキャストメッセージには次の基地局にとって入用な情報のみが包含されており、従って必要とする帯域幅をさらに減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】携帯電話ネットワークを示す。
【図2】携帯電話ネットワーク中の基地局間での測定結果報告の伝送について図説する。
【図3】多数の基地局の接続を示す図である。
【図4】本発明に係るマルチキャストメッセージの生成及び伝送のための手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係るマルチキャストメッセージの受信の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係るマルチキャストメッセージの一例である。
【図7】本発明に係るマルチキャストメッセージの一例である。
【図8】コア基地局及びターゲット基地局をさらに詳細に図説する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、多数の基地局1が相互に接続された携帯電話ネットワークを示す。すべての基地局には、同じアクセスゲートウェイ3がサーバとして機能している。なお、図中に示すいずれの2つの基地局の間も直接接続されているが、現実には1つあるいはそれ以上の他の基地局を介して施行されている、という意味で、図1は論理図である。
【0026】
現在のE−UTRAアーキテクチャにおいては、各基地局1は同じアクセスゲートウェイ(AGW)3の下ですべての他の基地局と接続されて、図1に示したような論理メッシュネットワークを形成している。図1に示すように、各基地局は、その測定結果を周辺の基地局に、X2インターフェース、あるいはいわゆるノードB−ノードBインターフェースを通じて報告することができる。このインターフェースが一部の基地局間にのみ図示されていたとしても、同じアクセスゲートウェイに接続されたすべての基地局間に存在することは理解されなければならない。各基地局1は、少なくともその最も隣接する基地局に、所定のタイプの測定結果を報告することができる。それらの測定結果の目的とは、基地局における無線リソースの負荷あるいは占有を知らせることにある。一部の測定結果は、基地局間及び基地局とアクセスゲートウェイ間のインターフェースにおける伝送ネットワークリソースの使用量も表現する。これは、基地局がマルチセル無線リソース管理を実行することを可能にする。すなわち基地局はリソースの配分、ハンドオーバーの実行、新たなユーザの承認等の際に、基地局近隣における負荷状態を考慮することができる。このような分散型アーキテクチャにおいては、X2インターフェースに重大な信号伝達オーバーヘッドが存在することは明らかである。
【0027】
図2は発明のマルチ携帯電話の差の報告を図説しており、これはIPを基礎とするマルチキャスティング又はブロードキャスティングネットワーク中のものと認識される。E−UTRA伝送ネットワークは、IP技術を基礎としている。多数のソース基地局S1、S2、S3、S4、すなわち、この例においては測定結果を報告する基地局は、それぞれ一つあるいはそれ以上の多数のターゲット基地局T1、T2、T3、T4、T5、T6に送信を行う。図2に示された例では、例えば、ソース基地局S1はターゲット基地局T1、T3及びT5に送信する。ソース基地局S2はターゲット基地局T1及びT6に送信する。
【0028】
本発明の好ましい実施例によると、以下により詳細に論じるように、各マルチキャストソースは同じツリーのブランチ又はマルチキャストルートに属する基地局にいずれ送られることになる、同じタイプで異なる基地局の測定値の間の差が報告される。
【0029】
図3は、コアベースツリーとして知られている形に配列された多数の基地局を示す接続図である。第1基地局10は、基地局の第1ブランチ及び第2ブランチに接続されている。第1ブランチは基地局11、12、13、14及び15からなり、11は12及び13に枝分かれし、13は14及び15に枝分かれしている。第2ブランチは基地局21、22、23、24及び25からなり、21は22及び23に枝分かれし、23は24及び25に枝分かれしている。もちろん、これは説明のみを目的とするものである。基地局はいずれかの可能な方法で物理的に相互接続できる。基地局はルーター機能を有する。
【0030】
第1基地局(あるいはコア基地局)10は、両方のブランチに接続されているが、同じブランチに配置されている基地局を含む、すべての他の基地局との間の通信を制御するように配置されている。従って、第1基地局は、ルーティング情報の参照テーブル等を含む、他の基地局に関するより多くの情報を有している。
【0031】
このメカニズムにおいてマルチキャストメッセージは、この場合測定結果を含むが、まず最初にコアに送信される。各ルーターと同様にコア基地局も配布先リスト(すなわち測定結果報告を受信するためのターゲット基地局のリスト)の路線を保持する。前述のように、このような状況において、ルーターは通常、基地局の一部として稼働する。コア基地ツリールーティングにおける差報告メカニズムの適用には、コアがまず、同じツリーブランチあるいはルート行きの、異なる基地局からの同じ種類の測定結果すべてを大きさの降順にソートし、さらに相対差としてマルチキャストすることを必要とする。
【0032】
一例として、基地局11が測定値に関する情報を基地局24に送信しようとしている状況を考える。基地局12は基地局25に測定値に関する情報を送信しようとしている。同様に、基地局13及び14は何れも基地局21に送信しようとしている。送信側の各基地局11、12、13及び14はその情報を第1(コア)基地局10に送信する。例えばdB若しくはパーセントのように、同じ尺度(scale)に基づき、若しくは同じ単位系を使用して報告を行っている限り、測定値は同タイプのパラメータに関連するものでなくてもよい。第1基地局10は、測定値が同じ第2ブランチに属する基地局向けであって、同じ尺度で報告されていることを認識する。この場合、第1基地局10はすべての測定値を第2ブランチへのマルチキャストメッセージに含有させることができる。
【0033】
本発明によるマルチキャストメッセージ生成の手順を図4に示す。この手順は、少なくとも一つのソース基地局からの、少なくとも一つのターゲット基地局に伝送するための少なくとも一つの測定値を受信した後に、コア基地局10内で実行される。
【0034】
ステップS41において、ソース基地局から受信した測定値は降順に並べられる。このステップは任意であり、マルチキャストメッセージに含まれる値を最小限化し、これによりマルチキャストメッセージのサイズも最小限化する。
【0035】
ステップS42において、第1基地局は最も大きい測定値を最大値から減算する。ステップS43において、コア基地局はステップS42で実行された減算の結果をマルチキャストメッセージに含ませる。ターゲット基地局において情報を読み出すことができるように、以下のような情報が含まれている。すなわち送信側の基地局、受信側の基地局、測定結果のタイプ及び減算の結果である。
【0036】
ステップS44において、さらに値をマルチキャストメッセージに含むべきかどうかが判定される。もしもイエスならステップS45へ進み、もしもノーならステップS47へ進む。
【0037】
ステップS45において、第1基地局は先の最も大きい測定値から、次に大きい測定値を減算する。ステップS46において、第1基地局はステップ45で実行された減算の結果をマルチキャストメッセージに含ませる。これには送信側の基地局、受信側の基地局、測定結果のタイプ及び減算の結果に関する情報が含まれている。次に手順はステップS44に戻る。ステップS44においてそれ以上測定値が存在しないと判定されると、ステップS47においてマルチキャストメッセージが第2ブランチに送信される。
【0038】
図5はメッセージが第2ブランチにおいて受信されたときの手順を示すフローチャートである。
【0039】
ステップS51において、受信側の基地局はマルチキャストメッセージを受信する。これを最初に行うのは、第2ブランチの最初の基地局21になる。ステップS52において、受信側の基地局は差の値、及びもしも必要ならばすべての先の差の値を抽出する。
【0040】
ステップS53において、受信側の基地局は、図4の手順において実行された減算に基づいて、測定値を決定する。ステップS54において、メッセージが第2ブランチの一つあるいはそれ以上の他の基地局に転送すべきかどうかが判定される。これはマルチキャストメッセージにさらに値が含まれる場合である。もしもイエスならばS54に進み、ノーであれば手順は終了する。
【0041】
ステップS55において、メッセージから不要部分が除去される。これは、受信側の基地局により抽出された値を削除し、そしてもちろん、識別子を一致させることを含む。これは、マルチキャストメッセージ中の後に続く差の値を再計算する必要を生ずる。不要部分の除去(pruning)は必要不可欠ではないが、各ターゲット基地局における必要な手順の若干の増加を犠牲にして、ネットワーク中の信号伝達負荷をさらに減少させる。
ステップS56において、受信側の基地局は次の基地局に不要部分の除去されたメッセージを転送する。基地局21にとっては、これは基地局22へのメッセージの転送を意味しており、次にはこれが受信側の基地局になる。
【0042】
もちろん、ステップS52においては、受信側の基地局向けの差の値がない場合には、ツリーの次の基地局にメッセージを渡すだけで、次が受信側の基地局になる。もしもブランチの後に続く基地局向けの測定値がなければ、メッセージはそのブランチに転送する必要はない。例えば、基地局24又は25向けの値がメッセージに含まれていない場合、基地局23はもはやメッセージを転送しなくてもよい。
【0043】
基地局12、11、13及び14により報告された測定値が、それぞれ70%、85%、50%及び90%だったと仮定すると、マルチキャストメッセージは図6のように表せる。仮に、これらすべての値が、値を報告するためのしきい値より上だったとすると、図6のように、これらはマルチキャストメッセージに包含される。もしも一つあるいはそれ以上の値がしきい値以下だったとすると、それらは含まれず、メッセージはより短くなる。測定値は以下のような順で包含される。図6の第1領域61に記載されているように、ソース基地局に関しては14、11、12及び13である。よって、ターゲット基地局は、21、25、24及び21となり、この順は、第2領域62に記入されている。第3領域63は、各値それぞれのために、参照すべき測定結果のタイプを表示する。報告される測定値は、第4領域64に示すように、100−90=10、90−85=5、85−70=15、及び70−50=20となる。
【0044】
表1は、図6に示した例についての配布先リストを表しており、1行は各ソース基地局11、12、13、14、1列は各ターゲット基地局21、22、23、24および25である。文字Y(イエスを表す)又はN(ノーを表す)はそれぞれ、各ソース基地局それぞれからの測定値が、各ターゲット基地局に報告されるべきか、そうでないかを示す。
【0045】
【表1】

【0046】
図7は、本発明による一般的なマルチキャストメッセージを示す。第1領域71では、ソース基地局は正確な順にリストされており、好ましくは、第1ソース基地局、すなわち最高値を報告した基地局が最初に挙げられ、最低値を報告した基地局が最後に挙げられている。より一般的にするために、図7においてソース基地局はS、S…の記号で表し、ターゲット基地局はT、T…の記号で表す。第2領域72において、ターゲット基地局は相応する順にリストされ、よって最初に述べたソース基地局から値を受け取るターゲット基地局が最初にリストされており、以下同様である。測定値のタイプは第3領域73に対応する順でリストされ、第4領域74には差の値がリストされている。
【0047】
第4領域74において、第1の差の値は、測定値の尺度として定義された最大値Mmaxから、第1ソース基地局から報告された第1の測定値Mを減算した結果である。第2の差の値は、第1の測定値Mから第2の測定値Mを減算した結果である。以下の差の値は、M−Mi−1、i=3、4…のように計算される。上述のように、ソース基地局は、好ましくは、Mが最高の測定値、Mが次に高い値…のように順に並んでいる。
【0048】
一つ又はそれ以上の測定値が等しい場合には特に有利な状況が生じる。これは、例えば同じ基地局がブランチのすべての基地局に同じ測定値を報告するような場合に該当する。この場合、一つ又はそれ以上の差の値は0になり、従って帯域幅は最小限しか必要ない。すべてのターゲット基地局が共通のグループ識別子により識別される一つのグループに属していれば、一つだけの測定値、すなわち最大値Mmaxと測定値との間の差を報告すればよく、必要な帯域幅は一層狭く(あるいはビット数は少なく)なる。
【0049】
その他の特殊なケースとしては、複数のソース基地局が同じターゲット基地局に測定値を報告するようなことが挙げられる。
【0050】
この発明力のある着想は、一つのソース体と一つのターゲット体との間で、異なる測定結果のタイプの複数の測定値を報告するためにも利用可能である。各ソース体とターゲット体とは、それぞれ、この場合にはモバイル端末又は基地局である。本発明によると、測定値は差として報告される。これは、多種多様の差の報告とみなされる。
【0051】
この方法を実効あらしめるには、測定値は同じ尺度で報告されなければならない。この場合に差の報告に適当な値の例としては、平均総送信搬送波出力、チャネルごと(あるいはリソースブロックごと)の平均送信搬送波出力、アンテナブランチごとの平均送信搬送波出力、受信総出力、総リソースブロック使用量等である。
【0052】
多種多様な差の報告のために、Mを異なる測定結果のタイプとし、同じ最大値及び最小値を有する同じ尺度(例えばパーセンテージやdB)、ΩmaxとΩminでそれぞれ表し、以下のように降順でソートをかける。
[λ、λ、…λ]と、これらに相応するIDを〔θ、θ、…θ
測定結果報告体(ユーザ端末又は基地局)は、差の値{λ}とID{θ}を、ターゲット体(例えば基地局)に、以下のように報告する。
[μ、μ、…μ]、ここでμ=Ωmax−λ;μ=λ−λ μ=λ−λN−1
測定の前に、オーバーヘッドをさらに軽減するためには、上記の一定のしきい値(Ωmin)を報告する。
【0053】
例えばパーセンテージのような同じ尺度を有する複数の測定結果が報告されなければならず、あるいは報告されることが予想される。このような基地局の測定の例は:総送信搬送波出力、ブランチごとの送信搬送波出力、リソースブロックごとの送信搬送波出力、下り方向の総リソースブロック使用量、上り方向の総リソースブロック使用量、下り方向のリソースブロックアクティビティ、上り方向のリソースブロック使用量、X2インターフェースのリンクパケット損失比等である。
【0054】
しかしながら、すべての測定結果が常に同じ尺度で表せるわけではない。このような場合、同じ尺度の報告すべき測定結果を再編成し、グループで送るのが賢明な異なる方法である。例えばパーセンテージグループ、dBグループ、dBmグループ等である。なお、この報告メカニズムは基地局の測定結果報告、すなわち伝送ネットワーク中の基地局間の測定結果の交換に高度に適合している。しかし着想は応用可能であり、ユーザ端末からの報告にも容易に実現可能である。
【0055】
図8は、コア基地局10と図3の一つのターゲット基地局21をより詳細に図解する。コア基地局10は、ソース基地局(図示していない)からの測定値を受信するための受信手段101を含む。受信手段からの測定値は、上述したように、測定値に基づいて差の値を計算するための計算手段105を含む生成手段103に転送される。生成手段103は、好ましくは差の値を計算する前に、測定値を降順に並べ替える序列手段107も含んでいる。生成手段103は、図6及び7に関連して説明したように、差の値、及び場合によってはその他の情報を含むマルチキャストメッセージを生成する。マルチキャストメッセージは送信手段109を通じてターゲット基地局21に転送される。
【0056】
ターゲット基地局21は、マルチキャストメッセージを受信する受信手段210と、ターゲット基地局21向けの測定値を読み出す読出手段212とを含む。そのために、読出手段212は、抽出手段214及び計算手段216を含んでいる。抽出手段214は、コア基地局10によるマルチキャストメッセージに含まれている差の値である値の情報を抽出するように構成され、計算手段216は抽出された差の値に基づいて現実の測定値を計算するように構成されている。ターゲット基地局21はさらに、そうすべきであると判定手段219により判定された場合に、一つ又はそれ以上の他の基地局にマルチキャストメッセージを転送するための送信手段218を含んでいる。好ましくは、ターゲット基地局21はさらに、判定手段と転送手段118との間に、転送に先立ってメッセージの不要部分の除去を行う不要部分の除去手段220を含む。不要部分の除去は、後続のターゲット基地局のいずれも必要としない値をマルチキャストメッセージから除去することを伴い、これについては先により詳細に説明したとおりである。
【0057】
なお、図8に示したユニットは通例、物理的に分離したユニットではなく、各基地局内の同じ又は異なるプロセッサで動作するコンピュータプログラムの一部、あるいは別のプログラムモジュールとして実行される。ユニットへの分割は不定的であり、基地局により実行されるさまざまな機能を図説するための例としてのみ意図したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局(11、12、13、14、15、21、22、23、24、25)の少なくとも第1及び第2のブランチを含むツリー構造におけるコア基地局として利用される基地局(10)であり、少なくとも第1のターゲット基地局(21、22、23、24、25)向けの、少なくとも第1の測定値に関する情報を、少なくとも第1のソース基地局(11、12、13、14)から受信する受信手段(101)、前記少なくとも第1の測定値に関する情報を含むマルチキャストメッセージを生成する生成手段(103)、及び前記マルチキャストメッセージを送信する送信手段(109)とを含む前記基地局(10)において、
前記生成手段(103)は、前記少なくとも第1の測定値と、前記少なくとも第1の測定値のための少なくとも最大値とに基づいて、差の値を計算する計算手段(105)を含むことを特徴とする基地局。
【請求項2】
前記計算手段(105)は、前記第1の差と前記第2の測定値との間の第2の差としての第2の測定値に関連する値の情報を決定し、この値の情報を前記マルチキャストメッセージに包含する請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記第1の測定値として報告された多数の測定値から前記最高値を選択し、次に前記測定値を降順に並べるように構成された序列手段(107)をさらに含む請求項1又は2に記載の基地局。
【請求項4】
前記生成手段(103)は、各測定値のために、前記ソース基地局(11、12、13、14)、前記ターゲット基地局(22、23、24、25)及び前記測定値のタイプについての情報を前記マルチキャストメッセージに包含するように構成された先行する何れかの請求項に記載の基地局。
【請求項5】
携帯電話ネットワークにおいて、前記コア基地局(10)を通じて、少なくとも一つの他の基地局と通信を行うために構成された基地局(21、22、23、24、25)であり、ソース基地局(11、12、13、14)からの少なくとも一つの測定結果に関連するマルチキャストメッセージをコア基地局(10)から受信するための受信手段(210)、及びその基地局向けの少なくとも一つの測定値を読み出す読出手段(212)を含む基地局(21、22、23、24、25)において、
前記読出手段(212)は、前記測定値と少なくとも前記測定値のための最大値とに基づく差の値である値の情報を抽出するように構成された抽出手段(214)と、少なくとも前記差の値と前記最大値とに基づいて前記測定値を計算するように構成された計算手段(216)とを含むことを特徴とする基地局。
【請求項6】
少なくとも一つの他のターゲット基地局向けの値の情報を前記マルチキャストメッセージに含むかどうか判定する判定手段(217)をさらに含み、その場合に少なくとも一つのさらに他の基地局(22、23、24、25)に前記マルチキャストメッセージを転送する転送手段(218)をさらに含む請求項5に記載の基地局。
【請求項7】
前記少なくとも一つの他のターゲット基地局にマルチキャストメッセージを転送する前に、前記マルチキャストメッセージから不要部分を除去するように構成された不要部分の除去手段(220)を含む請求項5又は6に記載の基地局。
【請求項8】
コア基地局(10)を介して接続された、少なくとも第1のソース基地局(11、12、13、14)から少なくとも第1のターゲット基地局(21、22、23、24、25)へ測定値を通信するために、
−少なくとも第1の測定値の前記少なくとも第1のソース基地局(11、12、13、14)から前記コア基地局(10)への報告ステップと;
−前記コア基地局(10)における、前記少なくとも第1の測定値に関する値の情報のマルチキャストメッセージへの包含ステップと;
−前記少なくとも第1のターゲット基地局(21、22、23、24、25)への前記マルチキャストメッセージの送信ステップと;
を含む信号伝達方法であって、
前記値の情報は、最大値と前記第1の測定値との間の第1の差として決定されることを特徴とする信号伝達方法。
【請求項9】
前記第1の差と前記第2の測定値との間の第2の差としての第2の測定値に関する値の情報を決定するステップと、この値の情報を前記マルチキャストメッセージに包含するステップとを含む請求項8に記載の信号伝達方法。
【請求項10】
前記第1の測定値として前記最高測定値を選択し、次に前記測定値を降順に並べるステップを含む請求項9に記載の信号伝達方法。
【請求項11】
各測定値のために、前記ソース基地局、ターゲット基地局及び前記測定値のタイプについての情報を前記マルチキャストメッセージに包含するステップを含む請求項8乃至10のいずれかに記載の信号伝達方法。
【請求項12】
それぞれが一つのソース基地局から一つのターゲット基地局へ差の値のタイプに属する複数の測定値を通信する請求項8乃至11のいずれかに記載の信号伝達方法。
【請求項13】
複数の異なるソース基地局に関する複数の測定結果を一つ又は複数のターゲット基地局に通信する請求項8乃至11のいずれかに記載の信号伝達方法。
【請求項14】
それぞれが一つのソース基地局に関連する差の値のタイプに属する複数の測定結果を複数のターゲット基地局に通信する請求項8乃至11のいずれかに記載の信号伝達方法。
【請求項15】
少なくとも第1のソース基地局(11、12、13、14)から少なくとも第1のターゲット基地局(21、22、23、24、25)へ測定値を読み出すための信号伝達方法において(前記ソース基地局とターゲット基地局とは前記コア基地局(10)を介して接続されている)、
−前記第1のターゲット基地局(21)における、コア基地局(10)からの前記マルチキャストメッセージの受信ステップと;
−マルチキャストメッセージに基づく、第1のターゲット基地局(21)向けの少なくとも第1の測定値の決定ステップと;
を含む信号伝達方法において、
前記測定値の決定ステップは、前記マルチキャストメッセージから前記測定値に関する値の情報を抽出するステップと、前記値の情報及び少なくとも前記測定値のための最大値に基づいて前記測定値を計算するステップとを含むことを特徴とする信号伝達方法。
【請求項16】
少なくとも一つの他のターゲット基地局向けの値の情報を前記マルチキャストメッセージに含むかどうか判定するステップと、もしもそうであれば、前記少なくとも一つの他のターゲット基地局に前記マルチキャストメッセージを転送するステップとを含む請求項15に記載の信号伝達方法。
【請求項17】
前記少なくとも一つの他のターゲット基地局に前記マルチキャストメッセージを転送する前に、前記マルチキャストメッセージから不要部分を除去するステップを含む請求項16に記載の信号伝達方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−512043(P2010−512043A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539204(P2009−539204)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/SE2006/050524
【国際公開番号】WO2008/066432
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】