説明

マルチチャネルフローセル

マルチチャネルフローセルは、試料注入時の二次汚染を減じることが可能であり、チャネルが注入されると、フローセル内の活性を観察することが可能である。マルチチャネルフローセルは、2つの基板の間に挟まれた複数の独立してアドレス可能なチャネルを含む。各々のチャネルは、検体の支持体結合を容易にする層でコーティングすることができる。各々のチャネルは、入口に一端を、出口に他端を成端する。チャネルの入口に一致する入口ポートを有する注入ブロックは、チャネルの入口に嵌合することができ、出口ブロックは、チャネルの出口に嵌合することができる。検体は、注入ブロックの入口ポートを経てチャネルに導入することができ、毛管現象または真空引きによってチャネルを介して引っ張られる。検体が各々のチャネルに導入されると、注入および出口ブロックを取り除いて、デバイスを回転させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、マイクロ流体フローセルに関し、また当該のセルを使用した生化学分析の実行に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体システムは、生化学分析、医学的診断、分析化学、化学合成、および環境モニタリングを含む様々な技術分野に使用されている。マイクロ流体システムは、化学的および生物学的情報の取得においてある種の利点を提供する。例えば、マイクロ流体システムは、少量の試薬を使用した複雑なプロセスの実行を可能にする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、全体として、フローセル、特にマルチチャネルフローセルに関するものであり、また、マイクロ流体レベルでの生化学分析の反応および検査(interrogation)のプロセスを簡素化するフローセルを使用するための方法に関するものである。当該のフローセルによって、1つ以上の試料を注入および分析することができる。
【0004】
一実施態様では、両面マルチチャネルフローセルは、検体試料間の汚染を防ぐような様態で複数の前記試料を受ける。前記フローセルは、複数の独立してアドレス可能な試料チャネルを有し、試料を注入するための着脱可能な注入ブロックを使用する。前記フローセルは、前記複数のフローチャネル内の検体の観察および分析用の屈折率整合流体を収容するためのウェルを形成することができる。各々の前記フローチャネルは、前記注入ブロックおよび出口ブロックとそれぞれ嵌合し、前記注入ブロックおよび出口ブロックが取り除かれた後にも、化学試薬を導入するためにアクセス可能である、入口および出口を有する。
【0005】
本発明によるフローセルの実施態様によって、試料注入時の二次汚染を減じることが可能であり、チャネルが注入されると、フローセル内の活性を観察することが可能である。また、光学的検出が必要である化学分析にも有用である。
【0006】
本発明によるフローセルの一実施態様は、ガラス(または他の材料)製の第一の層と、ガラス(または他の材料)製の第二の層との間に挟まれた、複数の独立してアドレス可能なチャネルを備える。各々のチャネルは、検体の支持体結合(support−bonding)を容易にする層でコーティングすることができる。前記コーティングは、例えばエポキシドとすることができる。各々の前記チャネルは、入口に一端を、出口に他端を成端する。前記チャネルの前記入口に一致する入口ポートを有する注入ブロックは、前記チャネルの前記入口に嵌合することができ、出口ブロックは、前記チャネルの前記出口に嵌合することができる。検体は、前記注入ブロックの前記入口ポートを経て前記チャネルに導入することができ、毛管現象または真空引きによって前記チャネルを通って引っ張られる。検体が各々の前記チャネルに導入されると、前記注入および出口ブロックを取り除いて、前記デバイスを反転させることができる。前記チャネルの観察に使用される前記光学装置の屈折率に一致する屈折率を有する流体は、次いで、前記セルによって画定されたウェルに導入することができる。次いで、フローセル内の化学反応のために、各々の前記チャネルに試薬を導入することができ、余分な試薬は前記チャネル出口を介して除去される。次いで、光学的に検出可能な部分の観察が行われる。当該のフローセル、および本発明のあらゆるフローセルによって、合成によるシーケンシング(sequencing−by−synthesis)の反応における組み込みに関連する光ラベルを観察することができる。
【0007】
前記各々のチャネルにエポキシドコーティングを使用した場合、前記チャネルに導入されたアミノ末端核酸プライマは、前記エポキシドコーティングに共有結合する。あらゆる非結合プライマを、前記チャネルから除去することができる。前記フローセルを反転させることができると、屈折率整合油を前記ウェル内に入れる。前記セルを光学顕微鏡に載置されたチャックに嵌合することによって、前記チャネル入口を介して試料核酸を導入することができる。前記導入された核酸は、プライマにハイブリダイズする。次いで、前記チャネルにおける前記試料(テンプレート)核酸の合成によるシーケンシングのために、試薬を導入することができる。シーケンシングは、光学的に検出可能なラベルとポリメラーゼとを含むヌクレオチド類似体を前記チャネルに導入することによって行う。テンプレート依存のヌクレオチドの添加は、利用可能な相補的塩基を有する支持体結合二重鎖に生じる。非結合ヌクレオチドは、前記チャネルから洗い流され、前記チャネルを洗浄した後に、組み込まれたヌクレオチドに添付されたラベルの光学的同定とともに、更なる塩基添加サイクルが行われる。ラベルは、取り除くか、または例えば光ブリーチングによって消去することができる。シーケンスは、各二本鎖に組み込まれた塩基の線形順序に基づいてコンパイルされる。二本鎖は、個別に光学的に解像できることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
マルチチャネルフローセルを製作し使用する方法をさらに理解するために、添付図面とともに以下の発明を実施するための最良の形態を参照する。複数の図面を通じて、同様の参照符号は対応する要素を示す。
【0009】
本発明による流体装置の実施態様は、全体として生化学分析の分析を簡素化するものである。各々の実施態様によって、生化学反応の反応および検査コンポーネントを並行して生じさせることができ、それによって、生化学分析の合計サイクル時間が減じられる。特定の実施態様に関して、生化学分析の合計サイクル時間は、反応生成物を含む区画の検査に必要な時間程度に減じられる。本発明により同じフローセルで生化学分析が1回以上実行された場合、セルを完全に利用したように顕著な時間節約が実現され、生化学分析の反応コンポーネントの実行中の中断時間(本願明細書では反応時間とも称する)がほとんど無い。
【0010】
本発明によるフローセルの実施態様は、反応コンポーネントおよび検査コンポーネントを有する生化学分析の並列処理が行えるようにデザインされ、反応および検査コンポーネントは、一般的に、同じフローセル内で(または上で)順番に実行される。全体として、フローセルは、反応が1つの区画で行われ、撮像が別の区画で行われるように、独立した別個の配管を有する2つ以上の区画を有する。フローセル区画(またはサブ区画)は、それらが互いに流体連通しないように、互いに流体的に分離されたものとすることができる。
【0011】
本発明による第一の例示的な実施態様では、装置は、同じホルダーに取り付けられた2つ以上のマルチチャネルフローセルを備える。取り付けられたそれぞれのフローセルは、他のフローセルの撮像領域に影響を及ぼさずに、生化学分析の反応コンポーネントを1つのフローセル上で実行できるように、1つ以上の撮像領域を備え、別個の流体接続を有する。
【0012】
全体的に、本発明によるフローセルの実施態様は、本願明細書に記述されるように、あらゆる適切な表面を使用して作製することができる。フローセルの撮像領域のための1つの表面は、ガラスまたは融合シリカスライド上のエポキシド表面、またはカバースリップである。例えば、表面は、約10mm〜約100mmの円形のカバーガラスとすることができる。表面の厚さは、約0.05mm〜約0.45mmとすることができる。一実施態様では、カバーガラスは、40mmの円形のカバーガラス(Erie Scientific社)で、厚さは0.15mmである。カバーガラスの撮像可能領域は、約10mm〜約10,000mmとすることができる。一実施態様では、カバーガラスの撮像可能な領域は、約690mmであり、フローセルの撮像領域の間で分割される。フローセルが2つの撮像領域を備えている場合、各撮像領域は、約345mmとなる。図1は、例示的なフローセルの概略図である。
【0013】
フローセルの各撮像領域は、独立したマイクロ流体配管を有することができる。すなわち、各撮像領域は、それ自体の流体入口ポートおよび/または流体出口ポートを有することができる。加えて、各撮像領域は、熱的および流体的に独立したものとすることができ、それによって、反応コンポーネントが一方の撮像領域上で実行され、同時に、他の撮像領域は検査(例、撮像)されることができる。カバーガラスは、検査デバイス(例、ニコンPlan APO TIRF対物レンズ60×/1.45)が、撮像領域に干渉しないように、約2mmの保護バンドを含めるか、またはカバーガラスの縁が傾斜させられ得る。図2の特定の実施態様を参照すると、目標のX−Y傾斜は約1nm/μm(1ミリラジアン)であり、その平坦度は100μmにおけるピークツーピーク値が100nmである。目標のZ方向の配置再現性(例、フローセル上の載置および取り外し)は、10μm±2の標準偏差である。対物レンズの待避領域は、フローセルから熱的に分離され、対物レンズのための再給油領域がある。
【0014】
上述のように、撮像領域は、同じホルダーに取り付けられた別個のフローセルの一部とすることができ、ともに検査デバイス(顕微鏡など)に載置することができる。別の実施態様では、撮像領域は、単一のフローセルの一部であり、各撮像領域は、上述のように撮像領域を互いに分離するガスケットによって囲まれる。図3は、2つの撮像領域がそれぞれ3つのスポットを備え、同じホルダーに取り付けられた別個のフローセルである、2つの撮像領域AおよびBの概略図である。図4は、単一のフローセルの表面が、別個の流体接続を有する別個の領域に分割された、2つの撮像領域AおよびBの概略図である。
【0015】
図5Aに示されるように、フローセルの一実施態様は、一連の2つ以上の流路(本願明細書では、チャネルとも称する)を備えることができる。各チャネルは、別個の流体入口Pを有することができる。チャネルは、別個の流体出口を有するか、または共通の流体出口Pを共有することができる。チャネルは、マスキングによって形成することができる。例えば、図5Bに示されるように、並列した疎水性および親水性領域を作り出すことができる。図5Cに示されるように、疎水性および親水性領域は、ガラスカバースリップおよびポリジメチルシロキサン(PDMS)スライドを使用して形成することができる。PDMS表面は、マスキングおよびプラズマへの露出によって選択的に疎水性とすることができる。
【0016】
生化学分析の反応コンポーネントを実行させるのに必要な試薬は同時に流れ込む。各チャネルにおける流れは、通常、非常に低いレイノルズ数(≪1)を有し、一般的に同じ粘度を有するので、チャネルに一定の圧力を加えることにより、複数の並列する流路がもたらされる。チャネルへの圧力は、チャネル中の好適な流量を得るように、入口に圧力を加えるか、出口に吸引力を加えるか、または両方を組み合わせることによって達成することができる。したがって、生化学分析が核酸を伴う場合は、上述のように、核酸をチャネルに付着させることができる。次いで、1つのステップで、複数の異なるオリゴヌクレオチドをチャネルに添加して、付着させた核酸にハイブリダイズさせることができる。加えて、上述のように、反応時間と比較した撮像時間の比率に基づいて、チャネルの一方の群が生化学分析の反応コンポーネントを受け、他方の群が検査されるように、チャネルを2つ以上の群に分割することができる。
【0017】
カバーガラスは、約2mmの保護バンドを含めるか、または検査デバイスが撮像領域に干渉しないようにカバーガラスの縁を傾斜させることができる。一実施態様では、検査デバイスは、ニコンPlan APO TIRF対物レンズ60×/1.45である。他の好適な検査または検出デバイスは下述する。図2を参照すると、目標のX−Y傾斜は、約0.1〜約10ミリラジアンとすることができる。一実施態様では、X−Y傾斜は、約1nm/μm(1ミリラジアン)である。一実施態様では、目標のZ方向の配置再現性(例、フローセル上の載置および取り外し)は、約10μm+1−2の標準偏差である。対物レンズの待避領域は、フローセルから熱的に分離することができる。
【0018】
本願明細書に記述されるように、最小容量を有するフローセルが複数の利点を提供する。例えば、フローセルの容量は、約1〜約1000μlとすることができる。さらに、フローセルの内部容積の交換が迅速である。一実施態様では、この交換は、3000kPaの駆動圧力において1秒未満であり、4℃での最大レイノルズ数は1未満である。カバースリップの湾曲は、一般的に、注入中に、最初のチャネル高さの20%未満である。図6は、円形環状部におけるスポットの近似を示す図である。
【0019】
マイクロ流体容量および関連する生物学的材料を処理および分析するための、マルチチャネルフローセルの第二の例示的な実施態様を、図7に1で示す。マルチチャンネルフローセルは、例えば、単一分子シーケンシングの実行などのような、多種多様な用途に使用することができる。
【0020】
図7を参照すると、フローセル1は、互いに並列に配向された複数のチャネル2を含む。各チャネル2は、流体をチャネル2に注入するための入口4と、流体をチャネル2から取り除くための出口6とを有する。チャネル2は、それぞれ約3マイクロリットル〜約15マイクロリットルの容量を有する。各々のチャネル2は、入口4のうちの1つから出口6のうちの対応する1つまで、軸3に沿って長手方向に延在する。示されるように、チャネル2は、軸3全体が均一の幅であるが、フローセル1の所望の用途に基づいた幅および/または深さで先細りまたは湾曲させることが可能である。また、複数のチャネル2が示されているが、当然、フローセル1は単にチャネル2のうちの1つだけを有することができる。
【0021】
図8A〜8Cを参照すると、組み立て前のフローセル10の第一の実施態様の個々のコンポーネントが示されている。このフローセル10は、上面20(図8A)と底面22(図8B)とを有する第一の基板18を含む。第一の基板18は、複数の入口孔14と複数の出口孔16とをその中にさらに含み、各々のこれらの孔14および16は、第一の基板18の上面20からその底面22まで、基板を通って延在する。入口孔14は、第一の基板18の一方の縁24の近くに列を成し、出口孔16は、第一の基板18の対向する縁26の近くに列を成す。
【0022】
図8Bに最良に示されるように、各入口穴14は、対応するまたは一致する出口孔16を有する。複数の凹部28は、各入口孔14からその対応する出口孔16まで延在する軸33に沿って、第一の基板18の底面22にエッチングされ、カービングされ(carved)、または成形される。第一の基板18は、チャネル12の所望のサイズおよび形状を形成するに必要な、あらゆる所望の深さまたは幅で形成することが可能である。一実施態様での、チャネルのサイズは、所望の流量において層流を確保するように選択される。
【0023】
フローセル10は、上面32(図8A)および底面34(図8B)を有する第二の基板30をさらに含む。第二の基板30は、第二の基板30の上面32が第一の基板18の底面20と接触するように、第一の基板18へ組み立てられる。2つの基板18および30を互いに固定すると、凹部28が密封されてチャネル12(図8C)を形成する。別の実施態様では、凹部28は、第二の基板30の上面32にエッチング、カービング、または成形することができる。第一の基板18は、様々な機械的締結具を用いて、または上面32および/または底面22に塗布される様々な接着剤のうちのいずれかを用いて、第二の基板30に取り付けることができる。
【0024】
第一の基板18および第二の基板30のそれぞれは、基板18および30が、それらを通過するマイクロリットル量に適合しており、マイクロリットル量におけるあらゆる物質が固着しないものであれば、様々な材料または材料の組み合わせのいずれかで製造することができる。表面22および32は、DNAのような試料だけが所望の表面に付着するように、不動態化することもできる。不動態化試薬には、例えば、アミン、リン酸塩、水、硫酸塩、洗浄剤、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、またはApplied Biosystems社が販売するPOP−6(登録商標)のようなポリマーが挙げられる。
【0025】
基板18および30は、全般的に、適切な波長の光および/またはエネルギーがそれを通過できる材料で形成される。これは、フローセル10の1つの使用において、1つ以上の波長の光が基板18および30を通過して、チャネル12内の材料を照らすためである。基板18および30は、ガラス、融合シリカ、サファイヤ、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、またはアクリルまたはポリカーボネートのような好適な透明プラスチックとすることができる。いくつかの実施態様では、基板18および30として使用される材料は、基板18および30を互いに固定するために、接着剤および/または機械的締結具が不要であるように、同じまたは異なる材料とすることができる。
【0026】
フローセル10は、フレーム36をさらに含む。フレーム36は、内側縁部40と、外側縁部42を含み、フレーム36は、矩形の開口部38を画定する。フレーム36は、組み立てた基板18および30を受けて(例えば接着剤で)これらをフレーム36に選択的に固定するための、内側縁部40に沿って形成された凹部44(図8A)をさらに含む。フレーム36は、例えばガラス注入ポリカーボネートまたは複合プラスチックのような、2つの基板に類似した熱膨張特性を有するあらゆる材料で構成することができる。別様には、熱的な不整合がある場合、シリコンのような高柔軟性の接着剤を使用することができる。
【0027】
図9A〜9Dを参照すると、本発明によるフローセル110の第三の例示的な実施態様は、図8A〜8Cを参照して上述したものとは異なる様態で形成されたチャネル112を含む。
【0028】
接着剤は、所望の接着パターンでフィルムに配置することができる。次いで、フィルムを使用して、パターン化した接着剤を接着すべき材料の1つの表面に塗布し、次にそのフィルムを剥がして廃棄すると、所望の位置にだけ所望のパターンで接着剤が残る。次いで、第二の材料を第一の材料と接触して配置させて、2つの材料を接着することができる。Micronics社(Redmond、Washington)は、該技術を供給する一社である。
【0029】
フローセル110は、上面120および底面122を有する第一の基板118を含む。第一の基板118は、複数の入口孔114と、複数の出口孔116をさらに含む。接着剤のパターンは、所定の接着パターンで、一枚のフィルム180に配置される。上述の手法を使用することで、フィルム180を使用して、接着パターンを第一の基板118の底面122(図9C)に塗布する。
【0030】
フローセル110は、上面132と、底面134を有する第二の基板130をさらに含む。上述のような第一の基板118の底面122への接着剤の塗布に代えて、接着剤を第二の基板130の上面132に配置することが可能である。接着剤が表面122および132の内の1つに塗布されると、2つの基板118および130は、並置されて互いに接触して配置される。接着剤の硬化後に、2つの基板118および130は互いに接着され、基板118および130のいずれにも接着剤が配置されなかった領域にチャネル112が形成される。接着剤の層は、所望の寸法および形状のチャネル112を作り出すために、任意の所定の厚さおよびパターンを有する。さらに、矢印、ロゴ182、または説明書きのような更なるパターンおよび参照物を接着層内に含めて、ユーザーによる更なる適切な操作を確保することもできる。
【0031】
図9Aを参照すると、フローセル110は、フレーム136をさらに含む。フレーム136は、内側縁部140と、外側縁部142とを有し、フレーム136は、矩形の開口部138を画定する。フレーム136は、基板118および130を受けて(例えば接着剤で)これらをフレーム136に選択的に固定するための、内側縁部140に沿って形成された凹部144をさらに含む。フレーム136は、また、外側縁部142近くの外側の周辺部に形成される凹部172も含む。前記凹部172は、状況に応じてガスケットまたは圧縮可能な管を受けて、フローセル110に使用されているときの封止を向上させることができる。
【0032】
図9Dは、ユーザーによる注入の準備ができた完全に組み立てたフローセル110を示す図である。示されるように、フローセル110は、入口孔114および出口孔116を囲む場所にガスケット115および117を有する。ガスケット115および117は、所望の用途に応じて、凹部内に配置するか、または平坦な上面120上に配置することができる。フローセル110は、凹部172内に配置された圧縮可能な管190も有する。
【0033】
図10A〜10Hを参照する。試料をフローセル10に注入するプロセスを示して説明する。図10Aを参照すると、完全に組み立てたフローセル10が示される。この特定の図には示されていないが、流体が入口孔14に注入されたときに、その流体がチャネル12を通って流れ、次いで出口孔16を経て取り除かれるように、各入口穴14は、出口孔16に連結されたチャネル12に連結される。状況に応じて、凹状キャナル46が、位置口穴14を完全に囲んだ第一の基板18の上面20に形成される。更なる凹状キャナル47は、完全に出口孔16を囲んだ第一の基板18の上面20内に形成される。これらの導管46および47は、状況に応じて、チャネル12の注入または排出中、およびフローセル10が使用されているときに、入口孔14および出口孔16を封止するために、ガスケットまたは圧縮可能な管を受けることができる。
【0034】
図10B〜10Eを参照すると、注入ブロック48は、分析のために流体をフローセル10のチャネル12に注入するために提供される。注入ブロック48は、上面50と、底面52とを有する。注入ブロック48は、上面50から底面52まで注入ブロック48を通って延在する、複数の注入ウェル54を含む。示されるように、注入ウェル54は、基本的に円錐形に形成され、上面50の近くの直径が最も大きく、底面52の近くの直径が最も小さい。上面50において、注入ウェル54は、3つの千鳥状の列で配列される。注入ウェル54は、注入ウェル54が入口孔14と合わさるように、底面52において単一の列を形成する注入ブロック48(図10C)の中心に向かって角度をつける。別様には、図10Dに示されるように、中央の列にある注入ウェル54は、上面50において円形とすることができ、また2つの外側の列は、上面50において鍵穴形状とすることができる。注入ウェル54は、注入ブロック48の底面52において単一の列となるように先細りに下る。注入ウェル54は、十分な量の試料を容易にフローセル10のチャネル12に注入するに必要なあらゆる形状またはサイズとすることができる。
【0035】
注入ブロック48は、底面52から突出した嵌合ピン56として知られる、2つの隆起特徴部をさらに含む。嵌合ピン56は、第一の基板18の上面20内の受け入れ穴58と合わさり、この孔で受けられる。注入ブロック48が、図10B上のラインAによって示される方向にフローセル10上に降ろされたときに、嵌合ピン56は受け入れ穴58に挿入される。これにより、流体が注入ウェル54から入口孔14に流れ、次いでチャネル12に流れることができるように、注入ウェル54と入口孔14との適切な配列が確保される。ガスケットまたは圧縮可能な管(図示せず)をキャナル46内に組み込んで、注入プロセス中に、流体が注入ブロック48およびチャネル12内に収容され、フローセル10の他の領域に漏れないように、入口孔14の周囲に堅固な封止を提供することが可能である。別様には、注入ブロック48は、注入ブロック48自体がガスケットなしで堅固な封止を形成するように、各注入ウェル54の周囲の底面52に更なる隆起特徴部を有する、比較的柔らかく柔軟な材料(例、シリコンゴム)で作製することができる。注入ブロック48の更なる隆起特徴部は、注入ウェル54と上面20との間の有効な封止を確保する。これらの隆起特徴部は、適切な封止ジオメトリを提供するために、矩形または半円形の断面とすることができる隆起線である。図10Eは、フローセル10上の適切な位置にある注入ブロック48を示す。
【0036】
図10F〜10Hを参照すると、排出ブロック60が、流体をチャネル12から取り除くために提供される。排出ブロック60は、上面62と、底面64を有する。図10Fに最良に示されるように、排出ブロック60は、上面62から底面64まで排出ブロック60を通って延在する、単一の開口部66を含む。図10Fおよび10Gに示されるように、開口部66は、上面62の近くでは円筒状であり、底面64においては溝である。なお、他の形状およびサイズの開口部を、流体をチャネル12から取り除くための排出ブロック60内に形成することが可能であることは、当業者には明らかとなろう。実施例は、複数の孔または排出ブロック60を通って延在する単一のダクトを含む。別の実施態様では、各チャネル12をその近傍に連結するブロックまたはマニホールドが、フローセルのガラスに直接エッチングされるか、または機械加工されることができる。一実施態様では、排出ブロック60および/または排出ブロック60と出口孔16との間のインターフェースは、チャネル12の排出中に真空にするときに(または試料を処理している間に)、全ての出口孔16にわたって圧力分配が均一になるようにデザインされる。均一な圧力分配により、チャネル12内の試料および試薬の流量が均一になる。流量を制御してチャネル間を移動させないようにするために、任意的な表面処理をチャネルに加えて、それらを疎水性または親水性にすることができる。
【0037】
排出ブロック60は、底面64から突出した嵌合ピン68として知られる、2つの隆起特徴部をさらに含む。嵌合ピン68は、第一の基板18の上面20内の受け入れ穴70と合わさり、この孔で受けられる。排出ブロック60が、図10F上のラインBによって示される方向にフローセル10上に降ろしたときに、嵌合ピン68は受け入れ穴70に挿入される。これにより、流体がチャネル12から出口孔16を通って流れ、開口部66を通ってフローセル10から取り除くことができるように、開口部66と出口孔16との適切な配列が確保される。ガスケットまたは圧縮可能な管(図示せず)をキャナル47内に組み込んで、排出プロセス中に、流体が排出ブロック60内に収容され、フローセル10の他の領域に漏れないように、入口孔14の周囲に堅固な封止を提供する。注入ブロック48と同様に、排出ブロック60は、排出ブロック60自体がガスケットなしで堅固な封止を形成するように、開口部66の周囲の更なる隆起特徴部を底面64に有する、比較的柔らかく柔軟な材料(例、シリコンゴム)で作製することができる。排出ブロック60の更なる隆起特徴部は、開口部と上面20との間の有効な封止を確保する。これらの隆起特徴部は、適切な封止ジオメトリを提供するために、矩形または半円形の断面とすることができる隆起線である。図10Hは、注入ブロック48および排出ブロック60が適切な位置にあり、マイクロ流体量および関連する生物学的材料を処理する準備のできたフローセル10を示す図である。
【0038】
動作に際し、ユーザーは、緩衝液をフローセル10に予注入してチャネル12に水分補給する。これは、マイクロ流体量の緩衝液を注入ウェル54に個別または同時に分配することによって達成される。これは、単一のピペットまたは複数組のピペットを使用して、ロボット制御または手動のいずれかで行うことが可能である。このようなロボット制御による作業は、米国特許出願第11/184,360号に記載されており、参照することにより本願明細書に援用される。緩衝液(または他の液体試料)が注入されると、緩衝液は円錐の注入ウェル54を通って移動し、入口孔14を通って下がり、次いで毛管現象によってチャネル12に入る。所定の時間待った後、ユーザーは、排出ブロック60に真空ポンプを取り付け、緩衝液をフローセル10から排出する。
【0039】
次に、ユーザーは、マイクロ流体量の試料を注入ウェル54に個別または同時に分配する。上述のように、これは、単一のピペットまたは複数組のピペットを使用して、ロボット制御または手動のいずれかで行うことが可能である。試料が注入されると、円錐の注入ウェル54を通って移動し、入口孔14を通って下がり、次いで毛管現象によってチャネル12に入る。ユーザーは、サンプルがハイブリダイズするまで適切な時間待ち、次いで、試料をフローセル10から排出する。各注入ウェル54および対応するチャネル12は、複数の相異なる試料を注入し、交差汚染することなく同時に分析できるように、隣接した注入ウェルおよびチャネルを分離することが可能である。更なる緩衝液または試薬を注入または排出するプロセスは、実行する特定の分析の必要に応じて繰り返すことができる。フローセル10が最後に排出されたら、ユーザーは、真空ポンプを排出ブロック60から取り外し、次いで、注入ブロック48および排出ブロック60を取り除く。図10Iに示されるように、これでフローセルは、更なる分析プロセスのための装置への注入準備ができる。
【0040】
種々の実施態様では、第一の基板18または第二の基板30は、フローセル10を通過するマイクロ流体量と反応するように処理されることができる。例えば、複数のDNAのストリングを、基板18および30によって形成されたチャネル12の表面に付着させることができる。
【0041】
本願明細書に記述したフローセル10の一つの用途は、単一分子のシーケンシングの実行を含む。前記用途では、フローセル10は、フローセル10のチャネル12に結合された個々のDNA鎖またはRNA鎖(「テンプレート」)を含む。テンプレートは、例えばビオチン−アビジンの相互作用または他の好適な付着化学反応を使用して、DNAまたはRNAを表面に結合させるための様々な手段のうちのいずれかによってチャネル12に結合させることができる。プライマは、フローセル10に結合されたDNAまたはRNAの一部にハイブリダイズするように添加される。このような用途は、Ulmerに対する米国特許出願公開第2006/0012784号(2004年11月16日出願)に記載されており、参照することにより本願明細書に援用される。
【0042】
上述のプロセスの実行に使用することができる装置200の一例を図11に示す。装置200は、光学部210と、流体処理部220と、フィルタ230と、電源240と、レーザー制御部250と、バーコードリーダ260と、モーター部270と、中央処理ユニット280と、フローチャック290とを含む。フローセル10のようなフローセルは、分析の準備をした後に、装置200のフローチャック290に装着することが可能である。
【0043】
図12A〜12Cを参照すると、フローセル10は、フローチャック290に装着されている。フローセル10は、第一の基板18の上面20が、図12Aの線Cで示される方向に、フローチャック290と接触して配置されるように、ユーザーによって反転される。フローセル10は、状況に応じて、フレーム36の外周の近くに形成された凹部72を含み(図12B)、ガスケットまたは圧縮可能な管(図示せず)が、フローセル10がフローチャック290内に組み込まれたときに、より堅固な封止を作り出すように、凹部72内で受容されることが可能である。フローチャック290は、状況に応じて、フローセル10内のスロット76で受けるポスト292を含む。ポスト292は、フローセル10がフローチャック290に適切に載置されるようにデザインされた整合特徴部である。図12Cは、フローチャック290内に装着されて装置200による処理の準備ができたフローセル10を示す図である。
【0044】
図13A〜13Cを参照すると、フローセル110は、フローチャック490の別の実施態様に装着されている。フローセル110は、第一の基板118の上面120が、図13Aの線Dで示される方向にフローチャック490と接触して配置されるように、ユーザーによって反転される。図13Bに示されるように、フローセル110は、凹部172に配置された圧縮可能な管190を有し、フローセル110がフローチャック490内に組み込まれたときに、より堅固な封止を作り出す。本実施態様では、フローセル110はポスト492を含み、フローチャック490はスロット176を含み、フローチャック490におけるフローセル110の適切な位置決めを確保する。ポスト492は、フローチャック490上に偶然に落下されたり不適切に配置されたりしても、基板118および130が壊れないように、フローセル110の保護も行う。フローセル110の本実施態様の更なる整合特徴部は、矢印178と、ロゴ182を含む。図13Cは、フローチャック490内に装着されて装置200による処理の準備ができたフローセル110を示す図である。フローセルの別の実施態様は、バーコードまたは他の電磁デバイスも含み、適切な装着および分析する試料の同定を確保する。
【0045】
フローセルは、個別に使用するか、または状況に応じて、2つ以上のフローセルを組み合わせて使用して、同時により多くの試料を分析する。例えば、図14は、デュアルフローセル300およびデュアルフローチャック390の構成を示す図である。特定の実施態様が記述されたが、当該の記述は単なる例示目的に過ぎない。変更および変形を行うことが可能であり、それらは本開示の範囲内に含まれる。
【0046】
上述のマイクロ流体デバイスは、様々な生化学分析の実行に有用である。一実施態様では、生化学分析は、合成によるシーケンシングプロセスを含む。好適な一実施態様では、合成によるシーケンシングは、表面に付着させた単一の光学的に分離された核酸の二本鎖に対して行われる。本発明の方法は、高効率かつ高精度で対象となる標的核酸をシーケンシングするために、有効な撮像と同時に合成によるシーケンシングの反応コンポーネントを併用する。
【0047】
下述の実施態様では、例示的な生化学分析として合成によるシーケンシングを使用する。なお、本発明のフローセルは、反応コンポーネントおよび検査コンポーネントを有するあらゆる生化学分析に使用することができ、反応および検査コンポーネントは、一般的に、同じチャンバ内で(または上で)順番に実行される。
【0048】
生化学分析に対する反応時間が検査時間とほぼ同じである場合、本発明の方法は、上述のように第一および第二の領域を有するフローセルの使用を含む。生化学分析が合成によるシーケンシングプロセスである場合、テンプレートおよびプライマがハイブリダイズされた1つ以上の核酸の二本鎖は、フローセルの第一の撮像領域の表面に付着される。テンプレートおよびプライマがハイブリダイズされた1つ以上の核酸の二本鎖は、フローセルの第二の撮像領域の表面に付着される。二本鎖は、表面上での個々の二本鎖の位置の特定に使用される、光学的に検出可能なラベルを含む。二本鎖の位置が得られると、反応コンポーネント(例えばシーケンシング反応)がフローセルの第一および第二の撮像領域上で実行される。シーケンシング反応の完了後に、第一の撮像領域が検査(例えば、撮像)される。
【0049】
合成によるシーケンシングプロセスの1回目の間に、両方の撮像領域は、ポリメラーゼの存在下で標識化ヌクレオチド三リン酸塩に露出される。プライマの3’末端に直接隣接した標識化ヌクレオチドの補足物を含むテンプレート鎖は、添加されたヌクレオチドを組み込む。組み込まれなかったヌクレオチドを取り除く洗浄ステップの後に、本願明細書に記述されているように、第一の撮像領域の表面を検査して、どの二本鎖の位置にラベルが加えられたのかを特定する。それらは、添加されたヌクレオチドを組み込んだ位置にある。第一の撮像領域が検査されている間に、第二の撮像領域の表面を好適な緩衝液、例えばHEPES緩衝液のような中性緩衝液内に格納して、付着された二本鎖の安定性を保持する。
【0050】
第一の撮像領域の表面の検査完了後に、第二の撮像領域の表面が同様に検査される。第二の撮像領域の表面は、格納後および検査前に洗浄することができる。第二の撮像領域の表面が検査されている間に、上述のように、第一の撮像領域の表面上でシーケンシング反応が実行される。検査後に、加えられたラベルは取り除くことができる。第一の撮像領域の表面は、上述のように、第一の撮像領域の表面を再び検査する時まで、中性緩衝液内に格納することができる。
【0051】
第二の撮像領域の表面の検査完了後に、上述のように、第一の撮像領域の表面が検査される。第一の撮像領域の表面は、格納後および検査前に洗浄することができる。第一の撮像領域の表面が検査されている間に、上述のように、第二の撮像領域の表面上でシーケンシング反応が実行される。検査後に、加えられたラベルは取り除くことができる。第二の撮像領域の表面は、上述のように、第二の撮像領域の表面を再び検査する時まで、中性緩衝液内に格納することができる。このように、生化学分析の反応コンポーネントおよび検査コンポーネントは、同じフローセルを用いて並行して実行される。
【0052】
合成によるシーケンシングおよび検査を実行するサイクルは、繰り返すことができる。十分な回数の反応を行った後に、生成されるデータセットは、生化学分析の反応コンポーネントの線形な結果を示す、各撮像領域の画像データスタックである。例えば、生化学分析が合成によるシーケンシングプロセスである場合、十分な数のヌクレオチド(下述するように、所望の読み取り長さで特定される)を、第一および第二の撮像領域の表面結合したテンプレートに露出した後に、生成されるデータセットは、その画像領域の表面上で同定された個々の二本鎖の位置の線形なシーケンスを示す、各撮像領域の画像データスタックである。
【0053】
生化学分析に必要な反応時間が検査時間よりも長い場合、フローセルは、少なくとも2つの撮像領域を有し、それぞれが表面を有する。なお、対象となる生物学的分子は、各表面上の複数のスポットに付着される。例えば、生化学分析が合成によるシーケンシングプロセスである場合、上述のように、各表面が二重鎖を付着させた2つ以上のスポットを有するように、各撮像領域の表面に二重鎖が付着される。
【0054】
撮像領域ごとのスポットの数は、反応時間と検査時間との割合に依存する。例えば、シーケンシング反応が検査の3倍の時間を要する場合、二重鎖を3つのスポットの各表面に付着させることができる。各スポットは、別々に検査される。したがって、撮像領域ごとの合計検査時間は、各スポットの検査に要する時間に撮像領域ごとのスポットの数を乗じた時間である。反応時間は、同じ撮像領域内で同時に処理されるので、1つのスポットに関して反応コンポーネントが要する時間である。したがって、1つの撮像領域内の全てのスポットの検査に要する時間は、他の撮像領域に対してシーケンシング反応を完了する時間の長さにほぼ等しくなる。図15は、撮像領域内の複数のスポットの概略図を示す図である。
【0055】
生化学分析の反応時間が検査時間未満である場合、フローセルは、上述のように、3つ以上の撮像領域を含む。3つ以上の撮像領域を含むフローセルを使用する方法は、各々の撮像領域の表面に対する特定の生化学分析に必要な生化学分子を付着させるステップを含む。例えば、生化学分析が合成によるシーケンシングプロセスである場合、上述のように、各撮像領域の表面に二重鎖が付着される。二本鎖の位置が得られると、生化学分析の反応コンポーネントがフローセルの各々の撮像領域で同時に実行される。
【0056】
一実施態様では、撮像領域の表面は、ポリメラーゼの存在下で標識化ヌクレオチド三リン酸塩に露出される。プライマの3’末端に直接隣接した標識化ヌクレオチドの補足物を含むテンプレート鎖は、添加されたヌクレオチドを組み込む。組み込まれなかったヌクレオチドを取り除く洗浄ステップの後に、第一の撮像領域の表面を検査して、どの二本鎖の位置にラベルが加えられたのかを特定する。それらは、添加されたヌクレオチドを組み込んだ位置にある。第一の撮像領域の表面が検査されている間に、上述のように、他の撮像領域の表面は好適な緩衝液内に保持しておくことができる。第一の撮像領域の表面の検査後に、ラベルを取り除くことができる。
【0057】
次に、第二の撮像領域の表面が検査され、生化学分析の反応コンポーネント(例えばシーケンシング反応)は、上述のように、第一の撮像領域の表面上で実行される。組み込まれなかったヌクレオチドを取り除く洗浄ステップの後に、第一の撮像領域の表面は、上述のように、第一の撮像領域の表面を再び検査する時まで格納される。したがって、第二の撮像領域の検査(例、撮像)は、第一の撮像領域の反応コンポーネント(例えばシーケンシング)と並行して実行される。第二の撮像領域の表面の検査後に、ラベルを取り除くことができる。
【0058】
次に、第三の撮像領域の表面が検査され、生化学分析の反応コンポーネント(例えばシーケンシング反応)は、上述のように、第二の撮像領域の表面上で実行される。組み込まれなかったヌクレオチドを取り除く洗浄ステップの後に、第二の撮像領域の表面は、上述のように、第二の撮像領域の表面を再び検査する時まで格納される。したがって、第三の撮像領域の検査(例、撮像)は、第二の撮像領域の反応コンポーネント(例えばシーケンシング)と並行して実行される。第三の撮像領域の表面の検査後に、ラベルを取り除くことができる。
【0059】
合成によるシーケンシングおよび検査を並行して実行するサイクルは、繰り返すことができる。十分な回数の反応を行った後に、生成されるデータセットは、生化学分析の反応コンポーネントの線形な結果を示す、各撮像領域の画像データスタックである。例えば、生化学分析が合成によるシーケンシングプロセスである場合、十分な数のヌクレオチド(下述するように、所望の読み取り長さで特定される)を、撮像領域の表面結合したテンプレートに露出した後に、生成されるデータセットは、その画像領域の表面上で同定された個々の二本鎖の位置のそれぞれで組み込まれたヌクレオチドの線形シーケンスを示す、各撮像領域の画像データスタックである。
【0060】
撮像領域の数は、反応時間と検査時間との割合に基づいて増加させることができる。全般的に、撮像領域の数は、反応時間と検査時間との間の倍差と同じにすることができる。したがって、検査の2倍の時間を反応に要した場合、フローセルは2つの撮像領域を含むことができる。反応に3倍の時間を要した場合、フローセルは3つの撮像領域を含むことができ、5倍差に対しては5つの撮像領域、10倍差に対しては10の撮像領域、20倍差に対しては20の撮像領域などとなる。
【0061】
本発明による方法は、遺伝子的な癌研究のためのアプリケーションに加えて、デノボシーケンシング、再シーケンシング、DNA鑑定、多型同定、例えば一塩基変異多型(SNP)の検出を提供する。RNAシーケンスに適用された、本発明による方法は、代替スプライス部位の同定、コピー数の計数、遺伝子発現の測定、低コピー数で細胞に現れる未知のRNA分子の同定、どのシーケンスが実際に転写されたのかを特定することによるゲノムへの注釈付け、系統発生関係の特定、細胞分化の解明、および組織工学を容易にすることにも有用である。本発明による方法は、RNA翻訳およびタンパク質集合のような他の生体高分子の活性の分析にも有用である。
【0062】
核酸テンプレートの単一分子シーケンシングのための好適な方法は、得られるシーケンスの精度が参照シーケンスの少なくとも70%であるように、複数の標識化ヌクレオチドが連続的にプライマに組み込まれるテンプレート依存のシーケンシング反応を行うステップを含む。プライマは、プライマがハイブリダイズされた核酸テンプレートを含む、光学的に分離された基板結合された二本鎖の一部である。二本鎖は、二本鎖が基板上に個々に光学的に解像できるように基板に結合される。
【0063】
本願明細書に記述されるように、複数の標識化ヌクレオチドは、連続的に1つ以上の個々のプライマ分子に組み込まれる。いくつかの実施態様では、それぞれが光学的に検出可能なラベルを含む、少なくとも3つの連続するヌクレオチドが個々のプライマ分子に組み込まれる。他の実施態様では、それぞれが光学的に検出可能なラベルを含む、少なくとも5個、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、または少なくとも10000の連続するヌクレオチドが個々のプライマ分子に組み込まれる。
【0064】
得られるシーケンスの精度は、参照シーケンスに対して少なくとも約70%、参照シーケンスに対して約75%〜90%、参照シーケンスに対して約90〜99%である。得られるシーケンスの精度は、参照シーケンスに対して99%を超えられることが好ましい。参照シーケンスは、例えば、分かっている場合はテンプレート核酸分子のシーケンスとするか、または他のシーケンシング方法によって得られるテンプレートのシーケンスとするか、あるいは、異なる源(例えば同じ種の異なる個体または異なる種からの同じ遺伝子)からの対応する核酸のシーケンスとすることができる。
【0065】
単一分子核酸シーケンシングのための方法は、それぞれが光学的に検出可能なラベルを含む、少なくとも3つの連続するヌクレオチドをプライマに組み込むステップも含む。プライマは、テンプレート/プライマ二本鎖の一部である。テンプレート、プライマまたはその両方は、二本鎖を個別に光学的に解像できるように、固体基板に取り付けられる。
【0066】
本発明の特定の一実施態様では、4つ全てのヌクレオチドは、各サイクルの生化学コンポーネントの間に添加され、各ヌクレオチドは検出可能なラベルを含む。本発明の非常に好適な一実施態様では、添加されたヌクレオチドに取り付けられるラベルは蛍光標識である。蛍光標識には、これに限定されないが、以下が挙げられる。4−アセトアミド−4’−イソチオシアネートスチルベン−2,2’ジスルホン酸;アクリジンおよび誘導体:アクリジン、アクリジンイソチオシアン酸塩;5−(2’−アミノエチル)アミノナフタリン−1−スルホン酸(EDANS);4−アミノ−N−[3−ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド−3,5ジスルホン酸;N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミド;アントラニルアミド;BODIPY;ブリリアントイエロー;クマリンおよび誘導体;クマリン、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン(クマラン 151);シアニン染料;シアノシン;4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI);5’5”−ジブロモピロガロール−スルホナフタレン(ブロモピロガロールレッド);7−ジエチルアミノ−3−(4’−イソチオシアナトフェニル)−4−メチルクマリン;ジエチレントリアミンペンタアセテート;4,4’−ジイソチオシアネートジヒドロ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸;4,4’−ジイソチオシアネートスチルベン−2,2’−ジスルホン酸);5−[ジメチルアミノ]ナフタレン−1−スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド);4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−イソチオシアン酸塩(DABITC);エオシンおよび誘導体;エオシン、エオシンイソチオシアン酸塩、エリトロシンおよび誘導体;エリトロシンB、エリトロシン、イソチオシアン酸塩;エチジウム;フルオレセインおよび誘導体;5−カルボキシフルオレセイン(FAM)、5−(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’,7’−ジメトキシ4’5’−クロロ−6−カルボキシフルオレスセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、QFITC,(XRITC);フルオレサミン;IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアン酸塩;4−メチルウンベリフェロンオルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラローズアニリン;フェノールレッド;B−フィコエリトリン;o−フタルジアルデヒド;ピレンおよび誘導体:ピレン、ピレン酪酸塩、スクシンイミジル 1−ピレン;酪酸塩量子ドット;リアクティブレッド4(CibacronTMブリリアントレッド3B−A)ローダミンおよび誘導体:6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンB スルホニルクロリド ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンX イソチオシアン酸塩、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(Texas Red);N,N,N’,N’テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA);テトラメチルローダミン;テトラメチルローダミンイソチオシアン酸塩(TRITC);リボフラビン;ロゾール酸;テルビウムキレート誘導体;Cy3;Cy5;Cy5.5;Cy7;IRD 700;IRD 800;La Joltaブルー;フタロシアニン;およびナフタロシアニン。好適な蛍光標識は、シアニン−3およびシアニン−5である。蛍光標識以外のラベルは、本発明によって考慮され、他の光学的に検出可能なラベルを含む。
【0067】
本発明のフローセルの撮像領域のための好適な表面は、ガラスまたは融合シリカスライド上のエポキシド表面、あるいはカバースリップである。なお、低固有蛍光を有するあらゆる表面が本発明に有用である。他の表面には、これに限定されないが、テフロン(登録商標)、高分子電解質多層、その他が挙げられる。本発明に使用する表面の唯一の要件は、低固有蛍光を有し、直接または間接的に核酸を結合する能力を有することである。
【0068】
好適な一実施態様では、核酸テンプレート分子は基板(本願明細書では表面とも称する)に付着され、本願明細書に教示するように、単一分子シーケンシングによって分析される。核酸テンプレート分子は、テンプレート/プライマ二本鎖が個々に光学的に解像できるように、表面に付着される。本発明に使用する基板は、二次元または三次元とすることができ、平坦面(例えばガラススライド)を備えているか、または形成することができる。基板には、ガラス(例、細孔ガラス(controlled pore glass:CPG)、石英、プラスチック(例、ポリスチレン(低架橋および高架橋ポリスチレン))、ポリカーボネート、ポリプロピレンおよびポリ(メチメタクリレート))、アクリルコポリマー、ポリアミド、シリコン、金属(例、アルカンチオレート誘導体化金)、セルロース、ナイロン、ラテックス、デキストラン、ゲルマトリクス(例、シリカゲル)、ポリアクロレイン、または複合物が挙げられる。
【0069】
好適な三次元基板には、例えば、球、微粒子、ビード、膜、スライド、プレート、微小チップ、管(例えば毛管)、マイクロウェル、マイクロ流体デバイス、チャネル、フィルタ、または核酸の定着に好適な他の構造が挙げられる。基板には、テンプレート核酸またはプライマの集団を含む領域を有することができる、平面のアレイまたはマトリクスが挙げられる。実施例には、ヌクレオシド誘導体化CPGおよびポリスチレンスライド、誘導体化磁気スライド、ポリエチレングリコールと融合したポリスチレンなどが挙げられる。
【0070】
一実施態様では、基板は、最適な光学処理および核酸の付着を可能にするようにコーティングされる。本発明に使用する基板は、バックグラウンドを減じるように処理されることもできる。例示的なコーティングには、エポキシド、および(例えば、ストレプトアビジンのような結合分子による)誘導体化エポキシドが挙げられる。表面は、分析のために付着させる核酸(例、核酸テンプレート分子、プライマ、またはテンプレート分子/プライマ二本鎖)の位置決めを向上させるように処理されることもできる。このように、本発明による表面は、1つ以上の荷電層(例、負荷電)で処理して、荷電分子(例、負に荷電した標識化ヌクレオチド)をはね返すようにすることができる。例えば、本発明による基板は、ポリアクリル酸に続けてポリアリルアミンで処理して、高分子電解質多層を形成することができる。ポリアクリル酸層のカルボキシル基は、負に荷電するので、負に荷電した標識化ヌクレオチドをはね返し、検出のためのラベルの位置決めを向上させる。基板に適用されるコーティングまたはフィルムは、実質的に劣化または基板から分離せずに、以降の処理ステップ(例、フォト露光、沸騰、焼成、暖洗浄剤を含む液体への浸漬)に耐えることができなければならない。
【0071】
基板コーティングの例には、例えば、Molecular Dynamics社(Sunnyvale、California)によるガラススライド製品に適用されるような、3−アミノプロピルトリメトキシシランの蒸気相コーティングが挙げられる。加えて、全般的に、疎水性基板コーティングおよびフィルムは、基板表面上の親水性分子の一様分布を補助する。このような基板コーティングまたはフィルムを用いる本発明の実施態様では、実質的にプライマの伸張ステップおよび検出ステップを妨げないコーティングまたはフィルムが好適であることが重要である。加えて、基板に適用されるあらゆるコーティングまたはフィルムが、テンプレート分子の基板への結合を増加させるか、または少なくとも実質的にテンプレートの結合を損なわないことが好ましい。
【0072】
様々な方法を使用して、核酸テンプレート分子を基板の表面に定着または固定させることができる。固定化は、表面への直接的または間接的な接着を通じて達成することができる。接着は、共有結合リンケージによるものとすることができる。Joos他、Analytical Biochemistry 247:96−101、1997;Oroskar他、Clin.Chem.42:1547−1555、1996;およびKhandjian、Mol.Bio.Rep.11:107−115、1986を参照のこと。好適な付着は、表面上に集積させたエポキシドへの、テンプレートまたはプライマの末端ヌクレオチドの直接的なアミン結合である。この結合は、非共有結合リンケージを通じたものとすることもできる。例えば、ビオチン−ストレプトアビジン(Taylor他、J.Phys.D.Appl.Phys.24:1443、1991)、および抗ジゴキシゲニンを有するジゴキシゲニン(Smith他、Science 253:1122、1992)は、核酸を表面または類似物に定着させるための一般的なツールである。別様には、付着は、疎水性チェーンを脂質単層または二重層に定着させることによって達成することができる。核酸分子を基板に付着させるための従来技術の他の方法も使用することができる。
【0073】
あらゆる重合酵素を本発明に使用することが可能である。好適なポリメラーゼは、エキソヌクレアーゼ活性を減じたクレノウ(Klenow)である。全般的に本発明に有用な核酸ポリメラーゼには、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、および前述したもののうちのいずれかの突然変異型または改変型が挙げられる。DNAポリメラーゼおよびそれらの特性は、とりわけ、DNA Replication 2nd edition、KombergおよびBaker、W.H.Freeman、New York、N.Y.(1991)に詳述されている。本発明に有用な既知の従来のDNAポリメラーゼには、これに限定されないが、ピロコッカス フリオサス(Pfu)DNAポリメラーゼ(Lundberg他、1991、Gene、108:1、Stratagene社)、ピロコッカス ウォエセイ(Pwo)DNAポリメラーゼ(Hinnisdaels他、1996、Biotechniques、20:186−8、Boehringer、Mannheim)、サーマス サーモフィルス(Tth)DNAポリメラーゼ(MyersおよびGelfand、1991、Biochemistry 30:7661)、バチルス ステアロサーモフィラスDNAポリメラーゼ(SteneshおよびMcGowan、1977、Biochim Biophys Acta 475:32)、サーモコッカス リトラリス(TIi)DNAポリメラーゼ(VentTM DNAポリメラーゼとも称される、Cariello他、1991、Polynucleotides Res、19:4193、New England Biolabs社)、9°NmTM DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社)、ストッフェルフラグメント、ThermoSequenase(登録商標)(Amersham Pharmacia Biotech社 UK)、TherminatorTM(New England Biolabs社)、サーモトーガ マリティマ(Tma)DNAポリメラーゼ(DiazおよびSabino、1998 Braz J Med.Res、31:1239)、サーマス アクアチクス(Taq)DNAポリメラーゼ(Chien他、1976、J.Bacteoriol、127:1550)、DNAポリメラーゼ、ピロコッカス コダカラエンシスKOD DNAポリメラーゼ(Takagi他、1997、Appl.Environ.Microbiol.63:4504)、JDF−3 DNAポリメラーゼ(サーモコッカスsp.JDF−3由来、特許出願WO0132887)、ピロコッカスGB−D(PGB−D)DNAポリメラーゼ(Deep VentTM DNAポリメラーゼとも称される、Juncosa−Ginesta他、1994,Biotechniques、16:820、New England Biolabs社)、UlTma DNAポリメラーゼ(好熱性サーモトーガ マリティマ由来;DiazおよびSabino、1998 Braz J.Med.Res、31:1239;PE Applied Biosystems社)、Tgo DNAポリメラーゼ(サーモコッカスゴルゴナリアス由来、Roshe Molecular Biochemicals社)、大腸菌DNAポリメラーゼI(LecomteおよびDoubleday、1983、Polynucleotides Res.11:7505)、T7 DNAポリメラーゼ(Nordstrom他、1981、J Biol.Chem.256:3112)、および古細菌DP1I/DP2 DNAポリメラーゼII(Cann他、1998、Proc Natl Acad.Sci. USA、95:14250−−>5)が挙げられる。
【0074】
他のDNAポリメラーゼには、これに限定されないが、ThermoSequenase(登録商標)、9°NmTM、TherminatorTM、Taq、Tne、Tma、Pfu、Tfl、Tth、Tli、Stoffelフラグメント、VentTMおよびDeep VentTM DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、Tgo、JDF−3、およびそれらの突然変異体、変種、および誘導体が挙げられる。本発明に有用な逆転写酵素には、これに限定されないが、HIV、HTLV−I、HTLV−II、FeLV、FIV、SIV、AMV、MMTV、MoMuLV、および他のレトロウイルス由来の逆転写酵素が挙げられる(Levin、Cell 88:5−8(1997);Verma、Biochim Biophys Acta.473:1−38(1977);Wu他、CRC Crit Rev Biochem.3:289−347(1975)を参照のこと)。
【0075】
本発明の好適な一実施態様では、アミンの直接付着は、二本鎖としてプライマ、テンプレート、またはその両方をエポキシド表面に付着させるために使用される。プライマまたはテンプレートは、表面上の二本鎖の部位を特定するために、光学的に検出可能なラベルを備える。二本鎖の少なくとも一部は、表面上の他の二本鎖から光学的に解像できなければならない。表面は、不動態化がない限り蛍光を発する可能性がある表面の一部を占有する試薬によって不動態化されることが好ましい。最適な不動態化試薬には、アミン、リン酸塩、水、硫酸塩、洗浄剤、および元来のまたは蓄積する表面の蛍光を減じる他の試薬が挙げられる。次いで、シーケンシングは、プライマへの相補的塩基組み込みを促進する条件下で、ポリメラーゼの存在下で1つ以上の標識化ヌクレオチドを提供することによって達成される。好適な一実施態様では、(サイクルごとに)1度に1つの塩基が添加され、全ての塩基が同じラベルを有する。各組み込みサイクルの後には洗浄ステップがあり、ラベルは、取り除かれずに中和されるか、または組み込まれたヌクレオチドから取り除かれる。塩基添加の所定のサイクル数の完了後に、個々の二本鎖に対して線形シーケンスデータがコンパイルされる。後述するシーケンスコンパイルおよびアラインメントには、多数のアルゴリズムが利用可能である。
【0076】
再シーケンシングにおいて、シーケンスアラインメントのための好適な実施態様では、得られたシーケンスと、ルックアップテーブルフォーマットの標的からの、同じ長さの参照シーケンスまたは同じ長さの1または2塩基内のデータベースと比較する。好適な一実施態様では、ルックアップテーブルは、参照シーケンスおよび1つまたは2つのエラーを有する所定の長さのシーケンス(例えば、総当りで1塩基または2塩基のエラーを有する9量体)に関する完全一致を含む。得られたシーケンスは、次いで、ルックアップテーブル上のシーケンスと照合され、テーブル内のシーケンスへの一致の一意性を反映するスコアが提供される。得られたシーケンスは、次いで、得られたシーケンスが参照テーブルの一部に最も一致する位置に基づいて、参照シーケンスに合わせられる。アラインメントプロセスに関する詳細を下記の実施例に記述する。
【0077】
本発明の別の実施例では、蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer:FRET)を使用して、本発明の単一分子シーケンシングにおいて、組み込まれたヌクレオチドから信号を生成する。FRETは、Braslaysky他、100 PNAS:3960−64(2003)に記述されているように行うことができ、参照することにより本願明細書に援用される。一実施態様では、ドナーのフルオロフォアが二本鎖のプライマの一部に付着され、アクセプタのフルオロフォアが、組み込まれるべきヌクレオチドに付着される。他の実施態様では、ドナーは、テンプレート、ポリメラーゼ、または二本鎖に近接して基板に付着される。いずれにせよ、組み込んだときに、ドナーの励起がアクセプタにおいて検出可能な信号を生成して組み込みを示す。
【0078】
本発明の別の実施態様では、表面結合した二本鎖への組み込みのために表面に提供されるヌクレオチドが、可逆性ブロッカを含む。好適なブロッカは、ヌクレオチドの糖成分上の3’ヒドロキシ基に付着される。例えば、試料へのヒドロキシル添加によって取り除かれるエチルシアニン(−OH−CH2CH2CN)ブロッカは、有用な除去可能なブロッカである。他の有用なブロッカには、3’ヒドロキシルの位置に配置されたフルオロフォア、および除去可能で、次のヌクレオチドの添加のために完全なヒドロキシルを残すが、取り除く前に更なる重合を阻止する化学的に不安定な基が挙げられる。
【0079】
別の実施態様では、ポリメラーゼおよび標的核酸を含む個々に光学的に解像可能な複合体が、ゼロモード導波管における相補的塩基添加のために、互いに対して配向される。一実施態様では、金属膜内にサブ波長孔を備えたゼロモード導波管のアレイを使用して、単一分子レベルでDNAまたはRNAをシーケンスする。ゼロモード導波管は波長遮断を有する導波管であり、波長遮断より上のいかなる伝播モードも導波管内に存在しない。照明は、導波管の入口への入射を急速に衰えさせるので、ごくわずかな観察量しか提供しない。一実施態様では、導波管は、顕微鏡スライドまたはカバースリップ上の薄い金属膜内の小さな孔で構成されている。ポリメラーゼは、ゼロモード導波管のアレイ内に固定される。導波管はテンプレート/プライマの二本鎖に露出され、該二本鎖は、酵素活性部位によって捕獲される。次いで、蛍光標識化ヌクレオチドの種を含む溶液が導波管に提供され、蛍光のバーストとして洗浄ステップの後に組み込みが観察される。
【0080】
用いられるラベルのタイプに好適なあらゆる検出方法を使用することが可能である。したがって、例示的な検出方法には、放射能検出、光学的吸収検出(例、紫外可視吸収度検出)、光学的放射検出(例、蛍光または化学ルミネセンス)が挙げられる。例えば、伸張プライマは、使用される方法に基づいて、各基板の全てまたは一部を同時または連続的に走査することによって、基板上で検出することができる。蛍光ラベリングの場合、基板上の選択領域は、Fodor(米国特許第5,445,934号)およびMathies他(米国特許第5,091,652号)が記述しているような蛍光顕微鏡装置を使用して、1つずつまたは行ごとに連続的に走査することができる。単一分子から蛍光を検出することができるデバイスには、走査トンネル顕微鏡(siM)および原子間力顕微鏡(AFM)が挙げられる。ハイブリッド化パターンは、Yershov他、Proc.Natl.Aca.Sci.93:4913(1996)に記述されるような、好適な光学部品(Ploem、in Fluorescent and Luminescent Probes for Biological Activity Mason、T.G.Ed.、Academic Press、London、pp.1−11(1993))を備えたCCDカメラ(例、モデルTE/CCD512SF、Princeton Instruments、Trenton、N.J.)を使用して走査するか、またはTV観察によって撮像することも可能である。放射線信号の場合、蛍光体撮像装置(phosphorimager)(Johnston他、Electrophoresis、13:566、1990;Drmanac他、Electrophoresis、13:566、1992;1993)を使用することが可能である。撮像機器の他の販売会社には、General Scanning Inc.(Watertown、Mass.、World Wide Webのgenscan.com)、Genix Technologies(Waterloo、Ontario、Canada;World Wide Webのconfocal.com)、およびApplied Precision Inc.が挙げられる。このような検出方法は、複数の付着させたテンプレート核酸の同時走査の達成に特に有用である。
【0081】
複数の手法を使用して、単一の核酸分子への蛍光標識化ヌクレオチドの組み込みを検出することができる。光学装置には、ニアフィールド走査顕微鏡検査、ファーフィールド共焦点顕微鏡検査、広視野落射照明、光散乱、暗視野顕微鏡法、フォトコンバージョン、単一および/または多光子励起、スペクトル波長識別、フルオロフォア識別、エバネセント波照明、および全反射蛍光(total internal reflection fluorescence:TIRF)顕微鏡法が挙げられる。全体的に、特定の方法は、カメラを備えた顕微鏡を使用してのレーザー活性化蛍光の検出を伴う。好適な光子検出システムには、これに限定されないが、光ダイオードおよび高感度CCDカメラが挙げられる。例えば、高感度電荷結合素子(intensified charge couple device:ICCD)カメラを使用することができる。表面付近の流体における個々の蛍光色素分子の撮像にICCDカメラを使用することにより、多数の利点が提供される。例えば、ICCD光学装置によって、フルオロフォアの一連の画像(動画)を得ることが可能である。
【0082】
本発明のいくつかの実施態様は、二次元撮像にTIRF顕微鏡法を使用する。TIRF顕微鏡法は、全反射励起光を使用し、これは既知の技術である。World Wide Webのnikon−instruments.jp/eng/page/products/tirf.aspxを参照のこと。特定の実施態様では、検出は、エバネセント波照明および全反射蛍光顕微鏡法を使用して行われる。エバネセント明視野は、表面に設定して、例えば蛍光標識化核酸分子を撮像することができる。レーザー光線が、液体と固体基板(例、ガラス)との間のインターフェースで全反射されるときに、励起光線はほんの短い距離だけ液体を貫通する。光電場は、反射インターフェースにおいて突然に途切れることはないが、その強度は、距離によって指数的に低下する。この表面電磁場(「エバネセント波」と呼ばれる)は、インターフェース付近の液体において蛍光分子を選択的に励起することができる。インターフェースでの薄いエバネセント光電場は、低バックグラウンドを提供し、可視波長において、高信号対雑音比での単一分子の検出を容易にする。
【0083】
エバネセント場は、ポリメラーゼの存在下で、付着されるテンプレート/プライマに蛍光標識化ヌクレオチドを組み込んだときに、それらを撮像することもできる。次いで、全反射蛍光顕微鏡法を使用して、付着されたテンプレート/プライマ二本鎖および/または組み込まれたヌクレオチドを単分子解像度で視覚化する。
【0084】
核酸テンプレート分子は、デオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA)を含む。核酸テンプレート分子は、タンパク質、脂質、および非テンプレート核酸のような、様々な他のコンポーネントを含む生物学的試料から分離することができる。核酸テンプレート分子は、動物、植物、バクテリア、真菌、または他の細胞生物から得られる、あらゆる細胞物質から得ることができる。本発明の生物学的試料は、ウイルス粒子または調合剤を含む。核酸テンプレート分子は、有機体から、または有機体から得た生物学的試料、例えば血液、尿、脳脊髄液、精液、唾液、痰、便、および組織から直接得ることが可能である。あらゆる組織または体液の標本は、本発明で使用する核酸のための源として使用することが可能である。核酸テンプレート分子は、一次細胞培養または細胞株のような培養細胞から分離することも可能である。テンプレート核酸が得られる細胞または組織は、ウイルスまたは他の細胞内の病原体で汚染される可能性がある。試料は、生物学的標本、cDNAライブラリ、またはゲノムDNAから抽出された全RNAとすることもできる。
【0085】
一般的に、生物学的試料から得られた核酸は断片化されて、分析に好適な断片を生成する。一実施態様では、生物学的試料からの核酸は、超音波処理によって断片化される。核酸テンプレート分子は、米国特許出願公開第2002/0190663(A1)号(2003年10月9日発行)に記述されているように得ることができ、その教示するところは全体が本願明細書に援用される。全般的に、核酸は、Maniatis他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、N.Y.、pp.280−281(1982)のような様々な手法によって、生物学的試料から抽出することができる。全般的に、個々の核酸テンプレート分子は、約5塩基〜約20キロ塩基となりうる。核酸分子は、単鎖、二本鎖、または、単鎖領域を有する二本鎖(例、ステムおよびループ構造)であり得る。
【0086】
生物学的試料は、本願明細書に記述されるように、洗浄剤または界面活性剤の存在下で均質化または分画することが可能である。緩衝液内の洗浄剤の濃度は、約0.05%〜約10.0%とすることが可能である。洗浄剤の濃度は、洗浄剤が溶液に可溶な状態を保つ最高濃度とすることができる。好適な一実施態様では、洗浄剤の濃度は0.1%〜約2%である。特に、変性していないマイルドな洗浄剤は、試料を可溶化するように作用することができる。洗浄剤は、イオン性または非イオン性とすることが可能である。非イオン洗剤の例には、Triton(登録商標)Xシリーズ(Triton(登録商標)X−100 t−Oct−C−(OCH−CHOH,x=9−10、Triton(登録商標)X−100R、Triton(登録商標)X−114 x=7−8)、オクチルグルコシド、ポリオキシエチレン(9)ドデシルエーテル、ジギトニン、IGEPAL(登録商標)CA630 オクチルフェニルポリエチレングリコール、n−オクチル−β−D−グルコピラノシド(βOG)、n−ドデシル−β、Tween(登録商標)20 ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート、Tween(登録商標)80 ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート、ポリドカノール、n−ドデシルβ−D−マルトシド(DDM)、NP−40 ノニルフェニルポリエチレングリコール、C12E8(オクタエチレングリコール n−ドデシルモノエーテル)、ヘキサエチレングリコール モノ−n−テトラデシルエーテル(C14EO6)、オクチル−β−チオグルコピラノシド(オクチルチオグルコシド、OTG)、エマルゲン(Emulgen)、およびポリオキシエチレン10ラウリルエーテル(C12E10)、のようなトリトンが挙げられる。イオン洗浄剤(アニオン性またはカチオン性)の例には、デオキシコール酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウロイルサルコシン、および臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)が挙げられる。双性イオン性試薬は、Chaps、双性イオン3−14、および3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホナートのような、本発明の浄化スキームに使用することも可能である。また、別の洗浄剤または界面活性剤の有無に関わらず、尿素を添加することが可能であることも考慮される。
【0087】
溶解または均質化溶液は、還元剤のような他の薬剤をさらに含むことができる。このような還元剤の例には、ジチオスレイトール(DTT)、β−メルカプトエタノール、DTE、GSH、システイン、システアミン、トリカルボキシエチルホスフィン(TCEP)、または亜硫酸の塩が挙げられる。
【0088】
当業者には、本発明の他の側面および利点は、添付図面、本発明の詳細な説明、および実施例を考慮すれば明らかとなろう。
【0089】
本発明は、テンプレート依存の合成によるシーケンシング反応に関して記述される。全般的に、反応は、上述のように、テンプレート/プライマ二本鎖を2つ以上の撮像領域のエポキシド表面への付着を含む。平行した合成によるシーケンシング反応は、第二の撮像領域の組み込まれたヌクレオチドの光学的検出を使用して、1つの撮像領域の表面上で実行され、次いで、両方の撮像領域のシーケンスコンパイルが行われる。本発明の方法を使用して、参照シーケンスのデノボシーケンシングまたは再シーケンシングのいずれかが可能である。本願明細書の開示を考慮すれば当業者には明らかなように、本発明の方法を使用して、部分的なシーケンシングを行うこともできる。好適な一実施態様では、単一の二本鎖分子は、それらをエポキシド表面に配置してそれらの位置を検査することによって並行してシーケンシングされる。前記実施態様では、他の二本鎖から光学的に分離された二本鎖だけをシーケンシングに使用する。単一の二本鎖シーケンシングは、テンプレート核酸の増幅を必要としない。増幅されたバルクシーケンシングも本発明の方法に使用することができる。
【0090】
全体的に、エポキシドコーティングされたガラス表面は、テンプレート、プライマ、またはその両方にアミンを直接付着させるために使用される。テンプレートおよびプライマ分子の末端へのアミンの付着は、下述するような末端転移酵素を使用して達成される。プライマ分子は、二本鎖を形成するためにテンプレートにハイブリダイズするように特別に合成することができる。好適な一実施態様では、下述するように、テンプレート断片はポリアデニル化され、相補的ポリ(dT)オリゴがプライマとして使用される。このように、予め結合された汎用プライマを有する表面を、ゲノムDNAまたはRNAから得た異種断片のシーケンシングのために調整した。
【0091】
本発明によるシーケンシングは、高スループットのシーケンス情報を達成するために、試料調製、表面調製およびオリゴ付着、検査、および分析を併用する。一実施態様では、光学的に検出可能なラベルは、エポキシド表面に直接付着させたテンプレートに付着させた。個々のテンプレート分子を、それらの表面上の位置を定めるために撮像した。次いで、プライマを添加して表面上に二本鎖を形成し、添加されたヌクレオチドが、プライマの3’末端の近くの(テンプレート上の)5’末端のテンプレート上の次に利用可能なヌクレオチドに対して相補的である位置における光ラベルを含む個々のヌクレオチドを、プライマの3’端部へ組み込むためにポリメラーゼの存在下で添加した。非結合ヌクレオチドが洗い流され、捕捉剤が添加されて、表面が撮像される。単一の二本鎖(またはプライマ)を含む先に述べた位置における光信号は、組み込みイベントとして数えられる。ラベルが取り除かれ、残りのリンカーがキャップされてシステムが再び洗浄される。サイクルは、残りのヌクレオチドに関して繰り返される。所望の長さのテンプレートのシーケンシングを完了するに必要な回数だけ全サイクルを行う。所望の回数のサイクルが完了すると、その結果は、図16に示されるように、コンピュータデータベースで表される画像スタックである。初期の個々の二本鎖を含んだ表面の各スポットに関しては、塩基が任意の所与のサイクルで組み込まれたかどうかに対応して、一連の明暗の画像座標が現れる。例えば、テンプレートのシーケンスが、TACGTACGであり、ヌクレオチドがCAGU(T)の順で表された場合、二本鎖は、第一のサイクル(Cの提示)に対して「暗」(すなわち、検出可能な信号がない)となるが、第二のサイクルでは信号を示す(Aの提示。これは、テンプレートのシーケンス内の第一のTに相補的である)。同じ二本鎖は、ヌクレオチドが、テンプレート内の次に利用可能な塩基Cに相補的であるので、Gの提示があれば信号を生成する。次のサイクル(Uの提示)のときには、テンプレート内の次の塩基がGであるので二本鎖は暗となる。多数のサイクルを提示したときに、テンプレートのシーケンスは、画像スタックを通じて構築される。シーケンシングデータは、次いで、下述するように再シーケンシングのためにアライナに送られるか、またはプライマに組み込まれたヌクレオチドの線形順序としてデノボシーケンシングするためにコンパイルされる。
【0092】
本発明を実行するための多数の代替がある。例えば、発明者らは、アミンを直接付着させてプライマをエポキシド表面に付着させているが、テンプレートを最初に付着させて二本鎖を付着させてもいる(すなわち、二本鎖を最初に形成し、次いで表面に付着させている)。また、発明者らは、結合対の1つの部分を有するエポキシド表面を官能化し、結合対の他の部分を、表面への付着のためにテンプレート、プライマ、またはその両方に付着させている。例えば、表面をストレプタビジンによって官能化し、ビオチンをテンプレート、プライマのいずれか、またはその両方の末端に付着させた。
【0093】
本発明に使用すべき撮像システムは、単一の蛍光分子を解像することができるように、ある倍率でのシーケンシング表面の十分な照明を提供するあらゆるシステムとすることができる。下述する実施例に使用される撮像システムを図17に示す。全体的に、システムは3つレーザーを備え、1つは「緑色」光を発し、1つは「赤色」光を発し、赤外線レーザーが焦点合わせを補助する。ビームは、図17に示されるように、一連の対物レンズおよびミラーを通して透過され、画像に焦点が合わせられる。撮像は、全反射対物レンズ(ニコン製)を備えたニコンTE−2000顕微鏡を反転させて達成される。
【0094】
概ね上述したように生成された画像スタックから得られた、シーケンスの結果のアラインメントおよび/またはコンパイルは、(例えば、エラー、突然変異など)可能なシーケンスの変化を考慮したルックアップテーブルを用いる。基本的に、本願明細書に記述されるように得られたシーケンシング結果は、1つまたは2つの塩基エラーを加えた全ての可能な参照シーケンスを含むルックアップ型テーブルと比較される。
【0095】
開示された実施態様は、例示的なものである。本発明は、開示された例示的実施態様によって、またはこれらに限定されるものではない。また、開示された実施態様の様々な変更および組み合わせが可能であり、本開示の範囲内に含まれる。当業者は、ルーチンの実験法以上のものを用いなくても、本願明細書に記載された本発明の特定の態様には多くの同等物があることを認識するであろうし、または検査することが可能であろう。当該の同等物は、以下の請求項に包含することを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、本発明のフローセルの概略図である。
【図2】図2は、フローセルの座標系の概略図である。
【図3】図3は、2つの撮像領域がそれぞれ3つのスポットを備え、同じホルダーに取り付けられた別個のフローセルである、2つの撮像領域AおよびBの概略図である。
【図4】図4は、単一のフローセルの表面が、別個の流体接続を有する別個の領域に分割された、2つの撮像領域AおよびBの概略図である。
【図5A】図5Aは、複数のチャネルを有するフローセルの一実施態様の概略図である。
【図5B】図5Bは、並列する疎水性チャネル(斜線部)および親水性チャネル(無線部)の概略図である。
【図5C】図5Cは、疎水および親水領域によって作り出されるチャネルを有するフォローセルの概略図である。
【図6】図6は、円形環状部におけるスポットの近似を示す図である。
【図7】図7は、フローセルの例示的な一実施態様の略上面図である。
【図8A】図8Aは、フローセルの第一の実施態様を構成するコンポーネントの上面および側面を示す、図7のフローセルの第一の実施態様の分解斜視図である。
【図8B】図8Bは、コンポーネントの底面および側面を示す、図8Aのフローセルの分解斜視図である。
【図8C】図8Cは、2つの基板を組み立てた、図8Bと同様の斜視図である。
【図9A】図9Aは、フローセルの第二の実施態様を構成するコンポーネントの上面および側面を示す、図7のフローセルの第二の実施態様の分解斜視図である。
【図9B】図9Bは、コンポーネントの底面および側面を示す、図9Aのフローセルの分解斜視図である。
【図9C】図9Cは、第一の基板に配置された接着フィルムを備えた、図9Bと同様の斜視図である。
【図9D】図9Dは、図9A〜9Cの完全に組み立てたフローセルの斜視図である。
【図10A】図10Aは、完全に組み立てた例示的な実施態様による斜視図である。
【図10B】図10Bは、注入ブロックが配置されている、図10Aのフローセルの斜視図である。
【図10C】図10Cは、図10Bのフローセルの底面斜視図である。
【図10D】図10Dは、注入ブロックの例示的な実施態様による斜視図である。
【図10E】図10Eは、注入ブロックが配置された後の、図10Bのフローセルの斜視図である。
【図10F】図10Fは、排出ブロックが配置されている、図10Eのフローセルの斜視図である。
【図10G】図10Gは、図10Fのフローセルの底面斜視図である。
【図10H】図10Hは、排出ブロックが配置された後の、図10Fに示されるフローセルの例示的な実施態様による斜視図である。
【図10I】図10Iは、注入後に注入ブロックおよび排出ブロックを取り除いた、図10Hのフローセルの斜視図である。
【図11】図11は、図10Hに示されるフローセルの例示的な実施態様による分析実験の実行に使用することができる装置の概略図である。
【図12A】図12Aは、フローチャックに配置されている、反転されたフローセルの斜視図である。
【図12B】図12Bは、図12Aに示されるフローセルの底面斜視図である。
【図12C】図12Cは、フローチャックに配置された後の、図12Aに示されるフローセルの斜視図である。
【図13A】図13Aは、フローチャックに配置されている、反転されたフローセルの斜視図である。
【図13B】図13Bは、図13Aに示されるフローセルの底面斜視図である
【図13C】図13Cは、フローチャックに配置された後の、図13Aに示されるフローセルの斜視図である。
【図14】図14は、デュアルフローセルアセンブリの斜視図である
【図15】図15は、生化学分子を付着させる複数のスポットを有する撮像領域の概略図である。
【図16】図16は、画像スタックと見なされる分子を示す例示的な概略図である。
【図17】図17は、本発明の例示的な撮像システムを示す図である。
【図18A】図18Aは、フローセルごとの標的数に対する、対象となる標的核酸のシーケンス長さとの評価を示すチャートの図である。
【図18B】図18Bは、スポット直径に対する、対象となる標的核酸のキロ塩基との評価を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の試料の単一分子シーケンシングに使用するデバイスであって、
該デバイスは、流体がそれを通って流れることができる個々に分離された複数のチャネルを画定するフローセルを備え、該フローセルは、該チャネルの各々のための入口ポートおよび出口ポートも画定し、該チャネルのうちの少なくとも1つの内側面の少なくとも一部は、該試料のうちの1つによってハイブリダイズすることができる少なくとも1つの化合物の結合を容易にする材料を含む、デバイス。
【請求項2】
注入ブロックをさらに備え、該注入ブロックは、複数のウェルを画定し、前記フローセルに着脱自在に取り付け可能であり、前記入口ポートの各々が該ウェルのうちの1つに対応する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記出口ポートと位置合わせして前記フローセルに着脱自在に取り付け可能である出口ブロックをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記フローセルの前記出口ポートは、真空源に接続可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記フローセルは、第一の基板および第二の基板を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記基板のうちの少なくとも1つは、ガラス、溶融シリカ、サファイヤ、またはプラスチックを含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記基板のうちの少なくとも1つは、アクリルまたはポリカーボネートを含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
前記化合物は、エポキシドを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記コーティングは、アビジンを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
1つ以上の試料を分析するためのデバイスであって、
上面および底面を有する第一の基板と、
該第一の基板の該底面に形成された複数の独立してアクセス可能なチャネルであって、各チャネルが、該チャネルの一端には、該底面から該上面へ該第一の基板を通って延在する入口孔を有し、該チャネルの対向端には、該底面から該上面へ該第一の基板を通って延在する出口孔を有するチャネルと、
各チャネルが隣接するチャネルから流体的に分離されるように、該チャネルを封止する該第一の基板の該底面に選択的に固定された第二の基板と、
該試料のうちの1つによってハイブリダイズすることができる少なくとも1つの化合物の結合を容易にするように、少なくとも1つのチャネルの少なくとも一部に配置された材料と
を備え、
流体は、該入口孔から該チャネルに流れて、次いで該出口チャネルに流れることができる、デバイス。
【請求項11】
注入ブロックをさらに備え、該注入ブロックは、複数のウェルを画定し、前記上面に着脱自在に取り付け可能であり、該ウェルの各々が前記入口孔のうちの1つに対応する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記出口ポートと位置合わせして前記上面に着脱自在に取り付け可能である排出ブロックをさらに備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第一の基板の前記出口孔は、真空源に接続可能である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
前記基板のうちの少なくとも1つは、ガラス、溶融シリカ、サファイヤ、またはプラスチックを含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項15】
前記基板のうちの少なくとも1つは、アクリルまたはポリカーボネートを含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項16】
前記化合物は、エポキシドを含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項17】
前記化合物は、アビジンを含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項18】
前記チャネルは、エッチングによって形成される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項19】
前記チャネルは、成形によって形成される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項20】
1つ以上の試料を分析するためのデバイスであって、
上面および底面を有する第一の基板と、
該底面から該上面へ該第一の基板を通って延在する少なくとも1つの入口孔、および該底面から該上面へ該第一の基板を通って延在する少なくとも1つの出口孔と、
所定の接着パターンで該第一の基板の該底面上に配置された接着剤層であって、該接着パターンは、該少なくとも1つの入口孔と該少なくとも1つの出口孔との間に延在する空隙を有する接着剤層と、
該空隙を封止することによってチャネルを形成する該接着剤層に固定された第二の基板と、
該試料のうちの1つによってハイブリダイズすることができる少なくとも1つの化合物の結合を容易にするように、少なくとも1つのチャネルの少なくとも一部に配置された材料と
を備え、
流体は、該入口孔から該チャネルに流れて、次いで該出口チャネルに流れることができる、デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【図10I】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【公表番号】特表2009−503555(P2009−503555A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525280(P2008−525280)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/030824
【国際公開番号】WO2007/019479
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(506390878)ヘリコス バイオサイエンシーズ コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】