説明

マルチディメンジョナルガスクロマトグラフ装置

【課題】 試料ガスの流れを自動的に切り換えるためのスイッチングプログラムやカラムオーブンの温度プログラムの設定や確認を容易に行えるようにする。
【解決手段】 第1カラム4と第1検出器8との組み合わせのみで行った1回目のモニタリング分析の結果であるクロマトグラムを表示部24の画面上に表示し、分析者が入力部23により詳細に分析したい期間を示すスイッチングプログラムやカラムオーブン3、9、冷却トラップ12の温度プログラムを入力設定すると、設定されたスイッチングプログラム及び温度プログラムが上記クロマトグラムと同一時間軸で以て重ねて表示される。これにより、入力設定が妥当であるか否かの確認を容易に行うことができ、作業効率が向上するとともに設定ミスも軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離特性の相違する複数のカラムを用いるマルチディメンジョナルガスクロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境分析、石油化学分析、香料分析などの分野では、多種類の微量成分が含まれる複雑な組成の試料中の各成分を分離して高い感度で定量分析する必要があるが、一般的なガスクロマトグラフ(GC)装置では複数の成分のピークを完全には分離できず、十分な分析ができない場合も多い。こうした場合に、分離特性の相違する複数のカラムを組み合わせたマルチディメンジョナルガスクロマトグラフ装置(以下、マルチディメンジョナルGCと呼ぶ)が非常に有用である。
【0003】
例えば特許文献1に記載のマルチディメンジョナルGCでは、試料気化室内で気化させた試料ガスを第1カラムに流して試料成分を分離した後の流路を第1検出器側と、冷却トラップ、第2カラム及び第2検出器側との2つに分岐し、通常は第1カラムから流出した試料ガスを第1検出器に導入して試料成分を検出し、第1カラムでは十分に分離できない目的成分が含まれる試料ガスが通過するタイミングで以て試料ガスを選択的に冷却トラップを介して第2カラムに導入し、第2カラムを通して分離特性を改善した後に第2検出器に導入して検出を行う。
【0004】
冷却トラップは冷却手段及び加熱手段を含み、導入される試料ガス中の成分を冷却凝縮させることで一時的に捕集し、その後に急速に加熱を行うことで、先に捕集していた成分を短時間の間に気化させて集中的に第2カラムへと送り込む機能を有する。したがって、冷却トラップを設けることで、目的成分のピークの広がりを抑制して感度を高めることができる。
【0005】
なお、上記のようなマルチディメンジョナルGCにおける試料ガスの流路切換えには、特許文献1に記載のように、ディーンズ(Deans)方式と呼ばれる構造の流路切換え手段が一般に利用されている。
【0006】
上述したようなマルチディメンジョナルGCでは、分析中に自動的に流路を切り換えるために、上記のような流路切換え手段を制御するためのスイッチングプログラムを予め作成しておく。即ち、まず分析対象の試料について1回目のモニタリング分析として、第1カラムのみで成分分離を行い第1検出器による検出信号に基づいてクロマトグラムを作成する。分析者(オペレータ)はこのクロマトグラムを表示画面上で見て、特に詳細に分析したい目的成分のピークが出現している部分を判断し、その部分が含まれるように、試料注入時点を時刻0としたときの詳細分析開始点及び終了点を決め、これをキーボードから数値入力することで流路切り換え用のスイッチングプログラムを作成する。
【0007】
一方、第1、第2カラムは一般的には異なる(場合によっては同一の)カラムオーブン内に配置され、分析中に、カラムオーブンによりカラムの温度は一定に維持されるか、或いは適宜のレートで昇温制御される。多数の成分が含まれる試料を分析する際には、昇温分析が行われるのが一般的である。このようにカラムオーブンの温度変化パターンを決めるために、分析者は分析に先立って温度プログラムも作成する。さらにまた、上述したように冷却トラップを備える構成では、分析に先立って冷却トラップの温度変化パターンを決めるための温度プログラムも同様に作成する。
【0008】
したがって、分析対象の試料について1回目のモニタリング分析を実行した後に2回目の高分解能分析を実行する際には、試料注入時点を時間基準とするスイッチングプログラム、2台(又は1台)のカラムオーブンの温度プログラム、及び冷却トラップの温度プログラムをそれぞれ設定する必要がある。従来、こうした各種のプログラムは、それぞれのプログラム作成用の画面において数値入力により設定されるようになっている。しかしながら、上記のようなプログラムは、モニタリング分析の結果であるクロマトグラムを含め、相互に関連してそのタイミングを決める必要があるため分析者にとっては煩わしく、条件決めに時間が掛かることも多かった。また、分析者の勘違いや入力ミスなどによる誤設定も起きがちであった。
【0009】
【特許文献1】特開平11−248694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこうした点に鑑みて成されたものであり、マルチディメンジョナルGCにおいて、流路切り換え用のスイッチングプログラムやカラムオーブンの温度プログラムなどの分析条件の設定作業を簡単にし、且つ設定内容の確認も容易に行えるようにすることで誤設定を軽減することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された第1発明は、導入された試料中の成分を分離する第1カラムと、該第1カラムとは分離特性の相違する第2カラムと、前記第1カラムにより分離された試料を検出する第1検出器と、前記第2カラムにより分離された試料を検出する第2検出器と、前記第1カラムを通過した試料を前記第1検出器又は前記第2カラムのいずれかに選択的に流すように流路を切り換える流路切換え手段と、前記第1及び第2カラムを温調するための共通又はそれぞれ独立したカラムオーブンと、を具備するマルチディメンジョナルガスクロマトグラフ装置において、
a)前記流路切換え手段により前記第1カラムを通過した試料を前記第1検出器に流すように流路を設定した状態で所定の試料について1回目の分析を実行した際に、該第1検出器により得られた検出信号に基づいて作成されたクロマトグラムを表示画面上に表示するクロマトグラム表示手段と、
b)前記所定の試料についての2回目の分析に先立って、前記流路切換え手段の切換え制御のタイミングを決める流路切換えプログラム及び前記1乃至複数のカラムオーブンの温度変化を決める温度プログラムをそれぞれオペレータが設定するための操作手段と、
c)該操作手段により設定された流路切換えプログラム及び1乃至複数の温度プログラムに基づく時間経過に伴う情報を、前記クロマトグラム表示手段により表示されたクロマトグラムと時間軸を合わせて同一グラフ内に表示する表示制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0012】
また上記課題を解決するために成された第2発明は、導入された試料中の成分を分離する第1カラムと、該第1カラムとは分離特性の相違する第2カラムと、前記第1カラムにより分離された試料を検出する第1検出器と、前記第2カラムにより分離された試料を検出する第2検出器と、前記第2カラムの手前に設けられた、冷却・加熱される流路を有する冷却トラップと、前記第1カラムを通過した試料を前記第1検出器又は前記冷却トラップのいずれかに選択的に流すように流路を切り換える流路切換え手段と、前記第1及び第2カラムを温調するための共通又はそれぞれ独立したカラムオーブンと、を具備するマルチディメンジョナルガスクロマトグラフ装置において、
a)前記流路切換え手段により前記第1カラムを通過した試料を前記第1検出器に流すように流路を設定した状態で所定の試料について1回目の分析を実行した際に、該第1検出器により得られた検出信号に基づいて作成されたクロマトグラムを表示画面上に表示するクロマトグラム表示手段と、
b)前記所定の試料についての2回目の分析に先立って、前記流路切換え手段の切換え制御のタイミングを決める流路切換えプログラム、前記1乃至複数のカラムオーブンの温度変化を決める温度プログラム、及び前記冷却トラップの温度変化を決める温度プログラムをそれぞれオペレータが設定するための操作手段と、
c)該操作手段により設定された流路切換えプログラム及び複数の温度プログラムに基づく時間経過に伴う情報を、前記クロマトグラム表示手段により表示されたクロマトグラムと時間軸を合わせて同一グラフ内に表示する表示制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
第1及び第2発明に係るマルチディメンジョナルGCでは、所定の試料についての2回目の分析(高分解能分析)に先立って分析者(オペレータ)が操作手段を用いて流路切換えプログラムや1乃至複数の温度プログラムを設定したとき、表示制御手段は、それら流路切換えプログラム及び1乃至複数の温度プログラムに基づく時間経過に伴う情報を1回目の分析(モニタリング分析)により取得されたクロマトグラムと同一の時間軸を以て同一グラフ内に表示する。ここで「1乃至複数の温度プログラムに基づく時間経過に伴う情報」とは、典型的には時間変化に伴う温度変化のパターンを示す線(グラフ)である。また「流路切換えプログラムに基づく時間経過に伴う情報」とは、同様に時間変化に伴う切り換え状態を示す線(グラフ)としてもよいが、2つの流路のいずれかを選択するのかを示すだけであるので、例えば一方の流路を選択している時間範囲のみを示すような表示としてもよい。
【0014】
本発明の一態様として、好ましくは、上記流路切換えプログラム及び温度プログラムに基づく時間経過に伴う情報、並びにクロマトグラムはそれぞれ異なる表示色又は異なる線種を有して重ねて表示するとよい。また、同一時間軸を横軸として縦方向に各線が重ならないようにずらして表示してもよい。
【0015】
上述したように表示画面上に表示を行うことにより、流路切換え手段による流路切換えのタイミングとカラムオーブンや冷却トラップの温度変化の状態との相互の時間的関係が非常に分かり易くなる。したがって、分析者は自分が設定した流路切換えプログラム及び温度プログラムが適切であるか否かを迅速に判断し、妥当でない場合には修正を加えることができる。それによって、2回目の高分解能分析に先立つ分析条件の設定作業を効率良く行うことができる。また、設定したプログラムが適切であるか否かが一目で分かるので、分析者の勘違いや入力ミスなどによる誤設定を見逃す確率を大きく減らすことができ、誤った条件による無駄な分析を行うことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るマルチディメンジョナルGCの一実施例について図面を参照して説明する。図1は本実施例によるマルチディメンジョナルGCの全体構成図である。
【0017】
本実施例のマルチディメンジョナルGCにおいて、インジェクタ2により注入された液体試料を気化するための試料気化室1には、第1カラムオーブン3内に配設された第1カラム(モニタカラム)4の入口端が接続されている。この第1カラム4の出口端は流路切換え部5に接続され、流路切換え部5により第1分岐管6と第2分岐管7とに分岐されている。第1分岐管6の末端は第1検出器8に接続され、第2分岐管7の末端は冷却トラップ12を介して第2カラムオーブン9内に配設された第2カラム(メインカラム)10の入口端に接続されている。この第2カラム10の出口端は第2検出器11に接続されている。流路切換え部5は例えばディーンズ方式の流路切換え部であり、後述する分析制御部21の指示によりメイクアップガスの流路を切り換えることによって、第1カラム4を通過して来た試料ガスを第1分岐管6と第2分岐管7とに択一的に流す。このとき、他方の分岐管にはキャリアガスと同一のメイクアップガスが流れる。なお、流路切換え部5としては本出願人が特願2004-250341で提案している構成のものも利用することができる。
【0018】
第1及び第2カラムオーブン3、9はそれぞれ温調を行うためのヒータ3a、9aを備える。また、冷却トラップ12は、試料ガスが流通する流路をごく低温にまで冷却するために液体窒素を導入する冷却部12aと流路を急速に加熱するヒータ12bとを備える。
【0019】
第1検出器8及び第2検出器11による検出信号はいずれもデータ処理部20に送られ、データ処理部20でクロマトグラムが作成されるとともに所定の定量分析、定性分析処理が実行される。インジェクタ2や流路切換え部5の動作、ヒータ3a、9a、12bの加熱動作、及び冷却部12aの冷却動作は、中央制御部22の統括的な指示の下に分析制御部21により制御される。また、中央制御部22はデータ処理部20も制御するとともに、データ処理部20よりクロマトグラムなどの処理結果を受け取って表示部24に表示する。中央制御部22には分析条件を始めとする各種の入力設定を行うための入力部23と分析条件や分析結果などを表示するための表示部24とが接続されている。中央制御部22及びデータ処理部20の実体は汎用のパーソナルコンピュータであって、コンピュータにインストールされた所定の制御・処理プログラムを動作させることで後述するような制御・処理が達成される。
【0020】
上記マルチディメンジョナルGCにおける特徴的な分析時の動作の一例について、図2〜図6を参照しつつ説明する。図2〜図6は分析の実行過程において表示部24の画面上に出力される表示の一例である。分析対象の試料について、まず1回目の分析として第1カラム4及び第1検出器8の組み合わせによるモニタリング分析を行うことでクロマトグラムを取得する。即ち、分析制御部21の制御の下に、第1カラム4を通過して来たキャリアガスは第1検出器8に導入され、第2カラム10にはメイクアップガスが流される。この状態で、インジェクタ2により少量の液体試料を試料気化室1へ注入すると、気化した試料はキャリアガスに乗って第1カラム4に導入され、第1カラム4を通過する間にその成分に応じて時間的に分離され、時間的な差がついた状態で第1検出器8に到達する。データ処理部20は第1検出器8による検出信号に基づいてクロマトグラムを作成する。
【0021】
上記モニタリング分析の終了後、オペレータが入力部23で所定の操作を行って2回目の分析である高分解能分析の条件設定を指示すると、この指示を受けた中央制御部22は表示部24に図2に示すようなプログラム設定画面30を表示させる。プログラム設定画面30では、その上段に先のモニタリング分析で取得されたクロマトグラムが表示されるクロマトグラム表示部31が配置され、下段左側には温度プログラムが表形式で表示される温度プログラム表示部32が、下段右側には流路切換え用のスイッチングプログラムが表形式で表示されるスイッチングプログラム表示部33が配置されている。図3及び図6はクロマトグラム表示部31の表示の一例、図4は温度プログラム表示部32の表示の一例、図5はスイッチングプログラム表示部33の表示の一例を示す図である。プログラム設定画面30が開いた状態では、スイッチングプログラム及び温度プログラムの各表の欄は全て空欄、つまりプログラムが設定されていない状態であり、クロマトグラム表示部31に表示されるのは図3に示すようなグラフである。
【0022】
分析者はクロマトグラム表示部31に表示された図3に示すようなクロマトグラムを見て詳細に分析したい目的成分のピークを見つけ、その目的成分を詳細に分析するために適当な流路切換え用のスイッチングプログラムの数値をスイッチングプログラム表示部33の表内に入力設定する。また、冷却トラップ12、第1カラムオーブン(図4中ではモニタGCオーブン)3、第2カラムオーブン(図4中ではメインGCオーブン)9の各温度プログラムについても、目的成分を詳細に分析するために適当な数値を温度プログラム表示部32の各表内に入力設定する。
【0023】
この例では、冷却トラップ12の温度プログラムは、−150℃の温度で3.7分間ホールドされ、その後、500℃/分のレートで250℃まで昇温されるものとなっている。また、第1カラムオーブン3の温度プログラムは、40℃の温度で0.5分間ホールドされ、その後、50℃/分のレートで200℃まで昇温されるものとなっている。また、第2カラムオーブン9の温度プログラムは、50℃の温度で4.5分間ホールドされ、その後、30℃/分のレートで180℃まで昇温されるものとなっている。さらにスイッチングプログラムは、3.2分〜3.45分の時間範囲のみ第2分岐管7側に試料ガスを流し、それ以外の期間には第1分岐管6側に試料ガスを流すように設定されているものである。
【0024】
分析者がこうした温度プログラム及びスイッチングプログラムの1つ1つについて数値を入力すると、中央制御部22は、図6に示すように、上記3種の温度プログラムに応じた温度変化を示す3本の折れ線を、クロマトグラム表示部31に表示されているクロマトグラムの上に重ねて、且つそれぞれ予め定められた異なる色で以て表示する。また、スイッチングプログラムにより第2分岐管7(つまりメインカラム側)が選択されている時間範囲を、斜線を施した領域としてクロマトグラムのグラフ内に表示する。なお、図6では色を表現することができないためそれぞれ異なる線種で示しているが、実際には3種の温度プログラムに対応した折れ線は赤色、オレンジ色、緑色(或いは別の色でもよい)の実線となっており、メインカラム側が選択されている時間範囲は青色の斜線となっており、クロマトグラムのカーブは黒色となっている。もちろん、こうした異なる色で表示できない場合には、上記実施例のように、異なる線種で以て表示するようにしてもよい。
【0025】
上記のようにして設定された温度プログラム及びスイッチングプログラムは中央制御部22に含まれるメモリに記憶される。そして、分析対象の試料について、オペレータの指示により高分解能分析が開始されると、中央制御部22はメモリに記憶しておいたスイッチングプログラム及び温度プログラムに従ってヒータ3a、9a、12b、冷却部12a及び流路切換え部5を動作させるように分析制御部21に指令を出し、この分析制御部21の制御の下に、ヒータ3a、9a、12b、冷却部12aは時間経過に伴って加熱又は冷却を行い、流路切換え部5は時間経過に伴って流路を切り換える。
【0026】
即ち、図4、図5に示すように温度プログラム及びスイッチングプログラムが設定されている場合、まず流路切換え部5は第1カラム4を通過して来たキャリアガスを第1分岐管6側に流し、第2分岐管7側にはメイクアップガスを流す。この状態で、インジェクタ2により少量の液体試料を試料気化室1へ注入すると、気化した試料はキャリアガスに乗って第1カラム4に導入され、第1カラム4を通過する間にその成分に応じて時間的に分離され、時間的な差がついた状態で第1検出器8に到達する。
【0027】
当初、第1カラムオーブン3の温度は40℃に維持されるが、試料注入時点から0.5分経過後から50℃/分のレートで温度が上昇し始める。試料注入から3.2分が経過すると、流路切換え部5は上記スイッチングプログラムに従って第1カラム4を通過して来た試料ガスを第2分岐管7側に流し、第1分岐管6側にメイクアップガスを流すように流路を切り換える。これにより第1カラム4で分離された成分を含む試料ガスは冷却トラップ12に到達するが、このときには冷却トラップ12は冷却部12aにより−150℃に冷却されているため、試料ガス中の成分は凝縮して冷却トラップ12に留まり、この温度では気体状態を保つキャリアガスのみが第2カラム10に送り込まれる。
【0028】
さらに試料注入時点から3.45分が経過すると、流路切換え部5は再び第1カラム4を通過して来た試料ガスを第1分岐管6側に流し、第2分岐管7側にメイクアップガスを流すように流路を当初の状態に戻す。したがって、試料注入時点から3.2分〜3.45分の0.25分の期間に流路切換え部5に到達した試料ガス中の成分だけが冷却トラップ12に捕集される。その後、3.7分経過時点から冷却トラップ12はヒータ12bにより急速に加熱され、0.8分間で250℃まで温度が上昇する。冷却トラップ12に捕集されていた成分はこの加熱により急速に気化し、短時間の間に集中して第2カラム10に送り込まれる。第2カラムオーブン9は試料注入時点から4.5分経過後から30℃/分のレートで温度が上昇し始め、これによって昇温される第2カラム10を通過する間に上記導入された試料成分は分離され、第2検出器11で検出される。
【0029】
データ処理部20は上記第2検出器11による検出信号に基づいてクロマトグラムを作成し、中央制御部22はこのクロマトグラムを表示部24の画面上に表示する。このクロマトグラムでは、モニタリング分析においては十分に分離されていなかった重なりピークが第2カラム10で十分に分離されるから、各成分の定性分析や定量分析が可能となる。
【0030】
なお、上記実施例では、3種の温度プログラム及びスイッチングプログラムをクロマトグラムに完全に重ねて表示していたが、同一時間軸上で各線を重ならないようにずらして表示するようにしてもよい。また、図2に示すプログラム設定画面30内の各表示部の配置はこれに限るものではなく、適宜に変形することができる。
【0031】
また、上記実施例は一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行うことができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例によるマルチディメンジョナルGCの全体構成図。
【図2】本実施例のマルチディメンジョナルGCにおいて表示部の画面上に出力される表示の一例を示す図。
【図3】図2中の表示の一部を構成するクロマトグラム表示部(プログラム設定前)の一例を示す図。
【図4】図2中の表示の一部を構成する温度プログラム表示部の一例を示す図。
【図5】図2中の表示の一部を構成するスイッチングプログラム表示部の一例を示す図。
【図6】図2中の表示の一部を構成するクロマトグラム表示部(プログラム設定後)の一例を示す図。
【符号の説明】
【0033】
1…試料気化室
2…インジェクタ
3…第1カラムオーブン
4…第1カラム
5…流路切換え部
6…第1分岐管
7…第2分岐管
8…第1検出器
9…第2カラムオーブン
10…第2カラム
11…第2検出器
12…冷却トラップ
20…データ処理部
21…分析制御部
22…中央制御部
23…入力部
24…表示部
30…プログラム設定画面
31…クロマトグラム表示部
32…温度プログラム表示部
33…スイッチングプログラム表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入された試料中の成分を分離する第1カラムと、該第1カラムとは分離特性の相違する第2カラムと、前記第1カラムにより分離された試料を検出する第1検出器と、前記第2カラムにより分離された試料を検出する第2検出器と、前記第1カラムを通過した試料を前記第1検出器又は前記第2カラムのいずれかに選択的に流すように流路を切り換える流路切換え手段と、前記第1及び第2カラムを温調するための共通又はそれぞれ独立したカラムオーブンと、を具備するマルチディメンジョナルガスクロマトグラフ装置において、
a)前記流路切換え手段により前記第1カラムを通過した試料を前記第1検出器に流すように流路を設定した状態で所定の試料について1回目の分析を実行した際に、該第1検出器により得られた検出信号に基づいて作成されたクロマトグラムを表示画面上に表示するクロマトグラム表示手段と、
b)前記所定の試料についての2回目の分析に先立って、前記流路切換え手段の切換え制御のタイミングを決める流路切換えプログラム及び前記1乃至複数のカラムオーブンの温度変化を決める温度プログラムをそれぞれオペレータが設定するための操作手段と、
c)該操作手段により設定された流路切換えプログラム及び1乃至複数の温度プログラムに基づく時間経過に伴う情報を、前記クロマトグラム表示手段により表示されたクロマトグラムと時間軸を合わせて同一グラフ内に表示する表示制御手段と、
を備えることを特徴とするマルチディメンジョナルガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
導入された試料中の成分を分離する第1カラムと、該第1カラムとは分離特性の相違する第2カラムと、前記第1カラムにより分離された試料を検出する第1検出器と、前記第2カラムにより分離された試料を検出する第2検出器と、前記第2カラムの手前に設けられた、冷却・加熱される流路を有する冷却トラップと、前記第1カラムを通過した試料を前記第1検出器又は前記冷却トラップのいずれかに選択的に流すように流路を切り換える流路切換え手段と、前記第1及び第2カラムを温調するための共通又はそれぞれ独立したカラムオーブンと、を具備するマルチディメンジョナルガスクロマトグラフ装置において、
a)前記流路切換え手段により前記第1カラムを通過した試料を前記第1検出器に流すように流路を設定した状態で所定の試料について1回目の分析を実行した際に、該第1検出器により得られた検出信号に基づいて作成されたクロマトグラムを表示画面上に表示するクロマトグラム表示手段と、
b)前記所定の試料についての2回目の分析に先立って、前記流路切換え手段の切換え制御のタイミングを決める流路切換えプログラム、前記1乃至複数のカラムオーブンの温度変化を決める温度プログラム、及び前記冷却トラップの温度変化を決める温度プログラムをそれぞれオペレータが設定するための操作手段と、
c)該操作手段により設定された流路切換えプログラム及び複数の温度プログラムに基づく時間経過に伴う情報を、前記クロマトグラム表示手段により表示されたクロマトグラムと時間軸を合わせて同一グラフ内に表示する表示制御手段と、
を備えることを特徴とするマルチディメンジョナルガスクロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記流路切換えプログラム及び温度プログラムに基づく時間経過に伴う情報、並びに前記クロマトグラムはそれぞれ異なる表示色又は異なる線種を有して重ねて表示されることを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチディメンジョナルガスクロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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