説明

マルチデコーダ装置及び方法

【課題】符号化方式が異なる複数のストリームを切り替える際に、映像が乱れることなくスムーズに切り替えることが可能なマルチデコーダ装置を提供する。
【解決手段】入力制御部12にて入力バッファ部11中に保持されている切替元のストリームのヘッダ部のデータ、及び入力バッファ部11中もしくは上位システムから別途提供される切替先のストリームのヘッダ部のデータを利用して復号遅延差を判定し、2フレーム以上の遅延差がある場合に、入力バッファ部11からの切替元のストリームの読み出し状態でストリーム切替時から復号遅延差に相当する時間前に、入力バッファ部11もしくはストリーム送出側から切替先のストリームを読み出して該当するデコーダ132へ出力して、切替元のストリーム及び切替先のストリームの出力切替器14への入力タイミングを合わせて出力制御部16にて出力切替器14の切替制御を行うようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、互いに符号化方式が異なる複数のストリームを選択的に切り替えて復号処理するマルチデコーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地上波デジタル放送の開始に伴い、放送局ではMPEG2(Moving Picture Experts Group 2)、MPEG4、M−JPEG等の多種の圧縮符号化方式の映像信号を取り扱っている。
【0003】
ところで、上記放送局内では、運用者による放送素材ストリームの確認作業が要求されており、このため、放送素材ストリームを元の映像信号に復号するデコーダ装置が用いられる。また、放送局内では、複数の方式の異なるデコーダを搭載し、多種の圧縮符号化方式のストリームを切り替えて再生可能なマルチデコーダ装置も用いられている。
【0004】
この場合、それぞれのデコーダで復号遅延が異なるため、入力ストリームを切り替えたときに、一瞬映像が停止したり、ブラックアウトしたり、同期が乱れたりすることがある。
【0005】
なお、従来では、異なる符号化方式間でのストリーム切り替えをスムーズに実現するデジタル情報記録装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−11453号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記装置では、ストリームに符号化する際に、符号化方式間でタイミングを合わせるものであり、多種の圧縮符号化方式のストリームを切り替えて復号するものではない。
【0007】
そこで、この発明の目的は、符号化方式が異なる複数のストリームを切り替える際に、映像が乱れることなくスムーズに切り替えることが可能なマルチデコーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明に係わるマルチデコーダ装置は、互いに符号化方式が異なりかつヘッダ領域及び情報領域を備えるフレーム構造の複数のストリームを選択的に切り替えて復号処理するマルチデコーダ装置を対象にしている。
【0009】
そして、符号化方式ごとに異なる複数系統の復号器と、入力されるストリームを一時保持する入力バッファと、この入力バッファに保持されたストリームのヘッダ領域のデータに基づいて当該ストリームの符号化方式を判定し、この判定結果に基づいて入力バッファから当該ストリームを読み出して該当する系統の復号器に出力する入力制御部と、複数の復号器の各復号出力を選択的に導出する出力切替部と、この出力切替部により導出される復号出力を格納し出力する出力バッファと、ストリーム切替指示信号を入力したとき、送出系統の復号出力を他の系統の復号出力に切り替えるように出力切替部を制御する出力制御部とを備えるようにしたものである。
【0010】
この構成によれば、複数の復号器それぞれの入力段及び出力段に入力バッファ及び出力バッファを用いることで、復号器間の1フレーム以内の復号遅延量の差を吸収することができ、これにより映像が乱れることなく符号化方式の異なる複数のストリームをスムーズに切り替えて再生することが可能となる。
【0011】
なお、入力制御部は、入力バッファ中の切替元のストリームのヘッダ領域のデータと入力バッファ中もしくは別途提供される切替先のストリームのヘッダ領域のデータに基づいて、復号遅延差が2フレーム以上あるか否かを判定し、2フレーム以上ある場合に、切替元のストリームの読み出し状態でストリーム切替時から復号遅延差に相当する時間前に、入力バッファから切替先のストリームを読み出して該当する復号器へ出力することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、入力バッファ中に保持されている切替元のストリーム及び切替先のストリームそれぞれのヘッダ領域のデータを利用して復号遅延差を判定することができ、2フレーム以上の遅延差がある場合に、切替元のストリームの読み出し状態でストリーム切替時から復号遅延差に相当する時間前に、入力バッファから切替先のストリームを読み出して該当する復号器へ出力することで、切替元のストリームと切替先のストリームとのタイミングを揃えることができるようになり、これにより出力切替部によるストリーム切替時のタイミング制御を容易に行えるようになる。
【0013】
また、出力制御部は、入力バッファに保持される切替元のストリームのヘッダ領域のデータと入力バッファ中もしくは別途提供される切替先のストリームのヘッダ領域のデータに基づいて、復号遅延差が2フレーム以上あるか否かを判定し、2フレーム以上ある場合に、出力切替部による復号出力の切り替えを復号遅延差に相当する時間だけ遅らせることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、復号器間でタイミングを合わせないまま出力切替部に入力した場合でも、出力制御部にてタイミングを調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上詳述したようにこの発明によれば、符号化方式が異なる複数のストリームを切り替える際に、映像が乱れることなくスムーズに切り替えることが可能なマルチデコーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、この発明に係るマルチデコーダ装置の第1の実施形態の構成を示すものである。このマルチデコーダ装置では、ヘッダ部及びデータ部を備えるフレーム構造のストリームが入力され、入力バッファ部11に一旦保持される。この入力バッファ部11に保持されたストリームは、入力制御部12によりヘッダ部のデータが解析されて符号化方式が判別された後、読み出されて複数のデコーダ131〜13nのうち該当するデコーダ131に導出され、復号処理される。
【0017】
これらデコーダ131〜13nの復号出力は出力切替器14によって選択的に導出され、出力バッファ部15に格納される。出力バッファ部15は、出力切替器14によって選択的に導出される復号出力を格納し、適宜出力する。
【0018】
上記出力切替器14は、出力制御部16によってフレーム単位で切替制御される。
【0019】
次に、上記構成における動作について図2を参照して説明する。
入力制御部12では、入力バッファ部11に保持されるストリームのヘッダ部のデータを見てストリームの種別を判定し、該当するデコーダ131に図2(a)に示すストリームを送出する。ここで、ストリームの自動判別を行わず、手動で切り替える場合は、ストリームを出力切替器14で該当するデコーダに切り替える。
【0020】
また、入力制御部12は入力バッファ部11中の切替元のストリームのヘッダ部のデータと入力バッファ部11中もしくは上位システムから別途提供される切替先のストリームのヘッダ部のデータからデコーダの復号遅延の差が数フレームあると判定した場合に、上位システムから切替トリガを受けた時に、出力切替器14によるストリーム切替時点から復号遅延に相当する時間前に図2(b)に示す次のストリームを入力バッファ部11もしくは入力バッファ部11前段のストリーム送出側から先読みして、該当するデコーダ132に出力する。このとき、入力バッファ部11は、切替元のストリームを該当するデコーダ131に出力している状態となる。
【0021】
すると、デコーダ131,132の出力は、図2(c)、図2(d)に示すようになり、出力切替器14に入力される。出力制御部16は、入力ストリームが切り替わったという信号(切替トリガ)を受けて、出力切替器14を切り替え、各デコーダ131,132の各復号出力を出力バッファ部15に書き込む。
【0022】
なお、復号遅延の差によって、切替時にデコーダ出力が一部重なる期間が発生するので、その期間は一画素ごとに出力切替器14を切り替える必要がある。
【0023】
出力バッファ部15からは出力タイミングにあわせて読み出すようにして、図2(e)に示すように、1フレーム以内の遅延量の差を吸収し、同期化させる。
【0024】
以上のように上記第1の実施形態では、各デコーダ131〜13nの入力段及び出力段に入力バッファ部11及び出力バッファ部15を用いて、デコーダ131〜13n間の1フレーム以内の復号遅延量の差を吸収すると共に、入力制御部12にて入力バッファ部11中に保持されている切替元のストリームのヘッダ部のデータ、及び入力バッファ部11中もしくは上位システムから別途提供される切替先のストリームのヘッダ部のデータを利用して復号遅延差を判定し、2フレーム以上の遅延差がある場合に、入力バッファ部11からの切替元のストリームの読み出し状態でストリーム切替時から復号遅延差に相当する時間前に、入力バッファ部11もしくはストリーム送出側から切替先のストリームを読み出して該当するデコーダ132へ出力して、切替元のストリーム及び切替先のストリームの出力切替器14への入力タイミングを合わせて出力制御部16にて出力切替器14の切替制御を行うようにしている。
【0025】
したがって、出力切替部16にて出力切替器14の切替タイミングを容易に制御することが可能となり、これにより映像が乱れることなく符号化方式の異なる複数のストリームをスムーズに切り替えて再生することが可能となる。
【0026】
(第2の実施形態)
図3は、この発明の第2の実施形態として、ストリームの切替タイミングを示している。
【0027】
入力制御部12では、入力バッファ部11に保持されるストリームのヘッダ部のデータを見てストリームの種別を判定し、該当するデコーダ131に図3(a)に示すストリームを送出する。
【0028】
また、デコーダ132には、図3(b)に示すストリームが入力される。
【0029】
すると、デコーダ131,132の出力は、図3(c)、図3(d)に示すようになり、出力切替器14に入力される。出力制御部16は、入力ストリームが切り替わったという信号(切替トリガ)を受けて、入力バッファ部11中の切替元のストリームのヘッダ部のデータと入力バッファ部11中もしくは上位システムから別途提供される切替先のストリームのヘッダ部のデータからデコーダの復号遅延の差が数フレームあるか否かを判定し、数フレームある場合に、デコーダの復号遅延分だけ遅らせて出力切替器14を切り替え、各デコーダ131,132の各復号出力を出力バッファ部15に書き込む。
【0030】
なお、復号遅延の差によって、切替時にデコーダ出力が一部重なる期間が発生するので、その期間は交互に出力切替器14を切り替える必要がある。
【0031】
出力バッファ部15からは出力タイミングにあわせて読み出すようにして、図3(e)に示すように、デコーダ遅延と出力バッファ部15の遅延が一定になるように書き込みアドレスと読み出しアドレスの差を調節する。
【0032】
以上のように上記第2の実施形態によれば、デコーダ131〜13n間でタイミングを合わせないままストリームを出力切替器14に入力した場合でも、出力制御部16にてタイミングを調整することが可能となり、これにより上記第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0033】
なお、この発明は上記各実施形態に限定されることなく、マルチデコーダ装置の構成、ストリームの切替制御手順等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明に係るマルチデコーダ装置の第1の実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】同第1の実施形態におけるストリーム切替動作を説明するために示す図。
【図3】この発明の第2の実施形態として、ストリーム切替動作を説明するために示す図。
【符号の説明】
【0035】
11…入力バッファ部、12…入力制御部、131〜13n…デコーダ、14…出力切替器、15…出力バッファ部、16…出力制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに符号化方式が異なりかつヘッダ領域及び情報領域を備えるフレーム構造の複数のストリームを選択的に切り替えて復号処理するマルチデコーダ装置において、
符号化方式ごとに異なる複数系統の復号器と、
入力されるストリームを一時保持する入力バッファと、
この入力バッファに保持されたストリームのヘッダ領域のデータに基づいて当該ストリームの符号化方式を判定し、この判定結果に基づいて前記入力バッファから当該ストリームを読み出して該当する系統の復号器に出力する入力制御部と、
前記複数の復号器の各復号出力を選択的に導出する出力切替部と、
この出力切替部により導出される復号出力を格納し出力する出力バッファと、
ストリーム切替指示信号を入力したとき、送出系統の復号出力を他の系統の復号出力に切り替えるように前記出力切替部を制御する出力制御部とを具備したことを特徴とするマルチデコーダ装置。
【請求項2】
前記入力制御部は、前記入力バッファ中の切替元のストリームのヘッダ領域のデータと前記入力バッファ中もしくは別途提供される切替先のストリームのヘッダ領域のデータに基づいて、復号遅延差が2フレーム以上あるか否かを判定し、2フレーム以上ある場合に、前記切替元のストリームの読み出し状態で前記ストリーム切替時から前記復号遅延差に相当する時間前に、前記入力バッファもしくはストリーム送出側から切替先のストリームを読み出して該当する復号器へ出力することを特徴とする請求項1記載のマルチデコーダ装置。
【請求項3】
前記出力制御部は、前記入力バッファに保持される切替元のストリームのヘッダ領域のデータと前記入力バッファ中もしくは別途提供される切替先のストリームのヘッダ領域のデータに基づいて、復号遅延差が2フレーム以上あるか否かを判定し、2フレーム以上ある場合に、前記出力切替部による復号出力の切り替えを前記復号遅延差に相当する時間だけ遅らせることを特徴とする請求項1記載のマルチデコーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−236188(P2008−236188A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70926(P2007−70926)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】