マルチバンド1次元ラインセンサカメラ
【課題】撮影対象を1回スキャンすることのみで多チャンネルの情報が得られ、しかも、高速、高分解能、高感度を実現するマルチスペクトルカメラを提供すること。
【解決手段】CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイの多数個を1列に並べた1次元ラインセンサを、並行に複数列配列したものを基本バンドとし、この基本バンドを、さらに並行に複数バンド配設してマルチバンドとするとともに、基本バンドのそれぞれの前面に、それぞれが独立した分光透過率特性を有するバンドパスカラーフィルタを積層することを特徴とするマルチバンド1次元ラインセンサカメラ。
【解決手段】CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイの多数個を1列に並べた1次元ラインセンサを、並行に複数列配列したものを基本バンドとし、この基本バンドを、さらに並行に複数バンド配設してマルチバンドとするとともに、基本バンドのそれぞれの前面に、それぞれが独立した分光透過率特性を有するバンドパスカラーフィルタを積層することを特徴とするマルチバンド1次元ラインセンサカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチバンド1次元ラインセンサカメラに関し、詳細には、マルチスペクトルTDI(Time Delay Integration)方式の1次元並行配列ラインセンサカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチスペクトルカメラとしては、2次元モノクロイメージセンサを用い、可視光波長域400〜900nm程度の周波数帯域のうち必要とする特定バンドのみ通過させる回転式バンドパスフィルタを光路に設置し、複数の特定スペクトルイメージを取得する手法がある。
また、1次元ラインセンサ素子を用いて、カラーRGBカメラを構成する場合もあり、
例えば、3板式RGBラインセンサ方式(図9参照)と並行配列ラインセンサ方式(図10参照)などがある。
【0003】
3板式RGBラインセンサ方式は、ダイクロックミラーで分光したイメージを、それぞれ光学的同位置に配置したRGB別の各センサに入力する方式であり、イメージのずれが生じることはなく同時刻同位置の1次元情報が得られる。
【0004】
並行配列ラインセンサ方式は、レンズで分光したイメージを、並行に配置したRGB別の各ラインセンサに入力する方式である。
【0005】
しかしながら、上記、3板式RGBラインセンサ方式は、実際には、数千ビットに及ぶ1次元素子の機械的な同位置調整はかなり困難で、各素子ピクセル間には1ピクセルから2ピクセル程度以上の調整誤差が生じ、ダイクロックプリズム自身の持つ歪み誤差や3つの光路に分離するため顕著な感度低下も無視できず、タクトを上げるためには大光量の光源も必要となるなど問題がある。
【0006】
また、上記、並行配列ラインセンサ方式は、配列ピッチ分視野位置がずれるため、同時刻に同一場所のRGB色情報が得られず、2次元方向のスキャン動作で時間軸を合わせるためクロック同期信号によって同一場所の色情報として再合成する必要が生じる(図11参照)。
但し、3板式RGBラインセンサ方式と比べ、ダイクロックミラーなどを使用しないため減光は比較的に少ないが、それでもセンサ前面に貼り付けた広域のRGBカラーフィルタによる減光は避けられず、特に、資料の劣化を恐れ高感度とするためスキャンレートを落とし蓄積時間を増やすか、あるいは照度を極端に高輝度にするなど工夫が必要である。
なお、本発明に関する従来技術としては以下の文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−300892号公報
【特許文献2】特開平9−144311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マルチスペクトルカメラは、計測対象物の分光反射率を、帯域内に設定された多バンド(波長域)複数の特徴点を精密に捉えることができることから、高レベルの計測を行う手列としては極めて有用であり、マルチスペクトル計測の重要性が改め認識され、高度なマルチスペクトルカメラの出現が待たれていたが、従来方式で高分解能のマルチスペクトルカメラを構成しようとすれば、図12に示すように、モノクロの1次元ラインセンサカメラを用意し、目的のバンドパスフィルタを必要枚数貼り付けた回転機構を有するカメラとしていた。
【0009】
このような回転機構バンドパスフィルタ方式のマルチスペクトルカメラは、チャンネル数だけ同位置のスキャンを繰り返す必要からタクト時間がチャンネル数分大幅に増すなどの問題があり、前記図10に示す並行配列ラインセンサの場合では、低感度を改善するため、良好なスペクトル画像を得ようとすれば、ハロゲン光源やメタルハライド光源を使用し、更に、スキャンレートを遅くするなどし、積算照明強度を相対的に得るか、あるいは高輝度LED照明装置を用いるなどして、撮影対象である資料を高輝度で照明する必要があった。
【0010】
しかし、文化財のデジタルアーカイブを例にとると、特に光や温度による劣化が促進されるおそれから、その扱いに当たって照明強度の制限が設けられ、ヨーロッパやアメリカを中心に厳しい基準が定められ、照度と時間の積による積算照度基準を定め厳密な規制を課すようになった。
例えば、アメリカ照明学会(IES:Illuminating Engineering Socity)では、照明と時間の積による積算照度基準を厳格に定め規制を課している。
また、医療分野でも、医療分析における病理診断において高輝度照明は資料劣化促進を招くため極めて好ましくないとし、積算照度がある基準を超える場合は、スキャンレートを落としてフォトン蓄積時間を増やすなどの対策をとっているが、患部の微細微弱な蛍光応答を拾いきれず、改善が必要となっている。
本発明は、従来の問題点を解決するものであり、撮影対象を1回スキャンすることのみで多チャンネルの情報が得られ、しかも、高速、高分解能、高感度を実現するマルチスペクトルカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、
CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイの多数個を1列に並べた1次元ラインセンサを、並行に複数列配列したものを基本バンドとし、
この基本バンドを、さらに並行に複数バンド配設してマルチバンドとするとともに、
上記基本バンドのそれぞれの前面に、それぞれが独立した分光透過率特性を有するバンドパスカラーフィルタを積層することを特徴とする。
(2)本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、前記(1)において、
前記基本バンドが、1次元ラインセンサを96列配列したものであり、
該基本バンドを8バンド配設したことを特徴とする。
(3)本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、前記(1)又は(2)において、スキャン対象物からの反射光をビームスプリッタを介して分割して、
複数台のマルチバンド1次元ラインセンサカメラに入射するようにしたことを特徴とする。
(4)本発明のスキャン装置は、前記(1)〜(3)のいずれかのマルチバンド1次元ラインセンサカメラの1次元ラインセンサの配列方向に対し、
スキャン対象物を直角方向に移動させる移動手段を備え、
該スキャン対象物からの反射光を基本バンド上に多重の露光を行い、
基本バンドに蓄積された情報をリードアウトするようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、回転機構を必要としないソリッドステート構造(固定した構造)の1次元ラインセンサを半導体ウエファー(Wafer)のダイ(die)上に複数バンドで形成して、複数バンドのTDI(Time Delay Integration)方式のマルチバンド1次元ラインセンサカメラとしたので、多チャンネルで同一場所を1スキャンのみでマルチバンド情報を画像取得でき、高分解能で、従来のものよりも高速でスキャンしても超高感度を実現できる。
さらに、超高感度であるから、複数バンド、例えば8バンド1次元センサカメラをビームスプリッタで2台組み合わせ搭載したマルチスペクトル複数バンド、例では16バンドの更なる、超多バンド1次元ラインセンサカメラとすることができ、資源探査を始め、成分分析等の、従来不可能だったマルチスペクトル分析が、高速高感度で行える等、革新的な高度応用にも採用拡大ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態のマルチバンド1次元ラインセンサカメラを用いたスキャン装置を示す概略説明図である。
【図2】本発明の実施の形態のマルチバンド1次元ラインセンサカメラのラインセンサの動作原理を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1のマルチバンド1次元ラインセンサカメラの基本バンドの構成を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラの構成を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1に用いるインターフェースの構成ブロックの例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラを用いた画像処理の構成を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラに用いるバンドパスカラーフィルタのチャンネル選定例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態2の16バンド1次元ラインセンサカメラの構成を示す説明図である。
【図9】従来例の3板式RGBラインセンサ構造を示す説明図である。
【図10】従来例の平行配列ラインセンサ構造を示す説明図である。
【図11】従来例の平行配列型CCD視野位置ずれを示す説明図である。
【図12】従来例の回転機構バンドパスフィルタ方式のマルチスペクトルカメラを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラの実施形態を、以下に説明する。
図1は実施の形態のマルチバンド1次元ラインセンサカメラのスキャン方式を示す説明図であり、
図2はラインセンサの動作原理を示す説明図である。
図3は実施の形態1のマルチバンド1次元ラインセンサカメラの基本バンドの構成を示す説明図であり、
図4は実施の形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラの構成を示す説明図であり、
図5は実施の形態1に用いるインターフェースの構成ブロックの例を示す説明図であり、図6は実施の形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラを用いた画像処理の構成を示す説明図であり、
図7は実施の形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラに用いるバンドパスカラーフィルタのチャンネル選定例を示す説明図である。
【0015】
図4に示すように、本発明の実施の形態1のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、CCDイメージング素子又はCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイを1列に並べた1次元ラインセンサ、レンズ、信号ドライバ−・コントロール回路などを備えており、撮影対象の映像をレンズによってイメージング素子上に照射して結像させ、1次元ラインセンサ1列分の光量を蓄積して、ビデオ信号に変換して出力させるように構成される。
すなわち、CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイの多数個を1列に並べた1次元ラインセンサを、並行に複数列配列したものを基本バンドとし、この基本バンドを、さらに並行に複数バンド配設してマルチバンドとするとともに、上記基本バンドのそれぞれの前面に、それぞれが独立した分光透過率特性を有するバンドパスカラーフィルタを積層して、マルチバンド1次元ラインセンサカメラを構成する。
【0016】
このマルチバンド1次元ラインセンサカメラのフォトダイオードアレイに光が照射されると電荷が時間とともに露光蓄積され、外部よりの並列転送パルスによって、リードアウトレジスターに順次加算(図3の例では最大96列分を加算)した後一括転送され、ビデオ信号として出力され、ビデオ信号は、時系列パルスと同期させて取り出され、移動体(スキャン対象物)に対し並行で一定ピッチ毎に平均した積分値が出力されるようになっている。
【0017】
<裏面入射型CCD(Back-Thinned CCD)>
なお、本実施の形態のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、可視光域を広げ、新たなたスペクトル応用解析を目的に、裏面入射型CCD(Back-Thinned CCD)を採用することもできる。
裏面入射型CCDは、受光面(裏面)に、保護膜を含む酸化膜や、ポリシリコン電極など、多数の薄膜を形成する必要がなく、高感度広域な理想的な入射面を形成できる。
また、裏面入射型CCDは、従来の表面入射型CCDでは検出できなかった近赤外〜紫外域の広域な入射光を高い量子効率で検出することができる。
【0018】
<バンドパスカラーフィルタ>
また、各基本バンドを構成するCCD前面には、各バンド毎に異なった(独立した)分光透過率特性を有するバンドパスカラーフィルタを積層している。バンドパスカラーフィルタとは、必要な波長域の光を透過し、不要な波長域の光を反射や吸収によりカットする帯域透過フィルターをいう。
これにより、スキャン対象物の反射光を、各基本バンドに積層された各バンドパスカラーフィルタを通してフォトダイオードアレイに取り込むことができ、1スキャンでスキャン対象物の反射光の特徴点を精密に捉えることができる。
したがって、タクト時間が極めて短縮され、ハロゲンやメタルハライドなどの強い光源を使用することなく、高速、高分解能、高感度で多チャンネルの情報を得ることができる。
【0019】
<ビームスプリッタ>
また、本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、スキャン対象物からの反射光をビームスプリッタを介して分割して、複数台のマルチバンド1次元ラインセンサカメラに入射するようにすることもできる。ビームスプリッターは、光束を二つに分割する光学分野の装置をいい、ビームスプリッターに入射した光の一部は反射し、一部は透過する。
これにより、超高感度多チャンネルのマルチバンド1次元ラインセンサカメラとすることが可能となり、資源探査や成分分析等の、従来不可能だったマルチスペクトル分析を、高速高感度で行うなどの、革新的な高度応用にも適用できる。
そして、1次元ラインセンサによって得られた1次元情報を、2次元的なカメラ映像に再現させるため、対象物を移動させる機構(移動体)を備え、一定速度でラインセンサ列方向と直角に移動させ、1次元ラインセンサ1列分のビデオ信号を組み合わせて2次元イメージとして組み立てる構成としている。
【0020】
<実施の形態1>
以下、実施の形態1により、本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラをさらに詳細に説明する。
実施の形態1のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、図4に示すように、図3のTDI方式の基本バンド(96列センサ)の8個(8バンド)を、半導体ダイ上に並行に配列し、各基本バンドの前面に、8種類の独立した分光透過率特性を有するバンドパスカラーフィルタを搭載し、マルチバンド1次元ラインセンサカメラとした。
そして、図示するように、各バンドの1次元ラインセンサ上に多重の露光を行い、資料(スキャン対象物)を8バンドの配列方向に移動させ、半導体ウエファー(Wafer)のダイ(die)上に搭載された8バンド96列(96ステージ)に蓄積された情報を合計してリードアウトするようにして、高感度なイメージングを実行できるようにしている。
【0021】
実施形態のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、1列(1ステージ)として、
画素サイズ:8.5μm、
画素数:4096bit、
素子長:34.8mm、とした。
この1列を素子長方向と直角に96列(96ステージ)TDI方式に並べて、40Mhz・4Tap総合転送速度160Mhzのセンサバンド(基本バンド)とした。そして、この基本バンドを、ダイ上に8バンド並行配列し、高分解能・高速・超高感度のセンサとした。インタフェースは高速のCoaXPresを搭載した。
【0022】
このマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、1バンド160Mhzで8バンド総合Data Rate(Line Rate)1.28Ghzを超えるため、従来のCamera LinkなどのインターフェースではCPU間と接続できず、新たにAdimic社、EqcoLogic社で提唱された高速デジタルインタフェースであるCoaXPress(図5参照)によって、CPU間との接続が電源を含め同軸ケーブル1本で足りる。
CoaXPressは、最高6.25Gbit/sec(CPX-Base) 、同軸ケーブル4本で25Gbit/sec(CPXQuad)でCPU間を接続できる高速フレキシブルなカメラインタフェースである。
【0023】
<バンドパスカラーフィルタ>
CCD素子は、基本的に可視域に加え、視覚感度より外側波長域のイメージを広域バンドに対応する高性能な裏面CCDセンサ250nm〜1100nmを8バンド搭載した。
この連続する波長バンド情報を、CCD前面にバンドパスカラーフィルタを、各CCDバンド毎に8バンド搭載して、マルチスペクトルイメージを得た。
このため、8バンドのそれぞれの前面に、それぞれが独立した分光透過率特性を有する8種類のバンドパスカラーフィルタを積層した。
【0024】
<TDI(Time Delay Integration)>
図3に示すように、実施の形態1のマルチバンド1次元ラインセンサカメラにおいては、TDI(Time Delay Integration)の1次元ラインセンサイメージング方式を採用している。
CCD素子を横1列に4096画素並べた1次元ラインセンサを、縦方向に96列配設してTDI(Time Delay Integration)方式のイメージング方式とした基本バンド(96列センサ)構造である。
従来、1次元ラインセンサは1本のラインが露光され、次のクロックでリードアウトレジスタに並行移動される事を繰り返していたので、この間、次ラインが有効視野に入るまで一回しか露光されず、その結果、露光時間の問題から低感度とならざるを得なかったが、TDI方式によってこのような問題を解決した。
なお、アプリケーション側の要求に応じ、画素数(例えば8000素子)、列数、バンド数などを更に拡大することも可能である。
【0025】
次に、実施形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラの動作を説明する。
図6に示すように、まず、レンズからの入射光のイメージを8バンドで構成されたCCDセンサに集光させる。
次に、CCDセンサの各バンドに接続されたリードアウトレジスタからのアナログ出力をVideo A/D Convertor でデジタル変換させる。
そして、CCDセンサの各バンドについての感度差をシューディング補正回路で感度補正する。
この後、取得しデジタル化されたイメージ情報を高速FPGA回路で送信情報としてパケットに配列する。
パケットに生成されたデジタルイメージ情報を、CoaXpress変換素子によって、高速でシリアル化して、同軸ケーブルによって最大6.25Mbpsで外部に送信する。
なお、ローカルCPUは、8バンド1次元ラインセンサカメラの各機能の制御を、外部の指令によって制御する能力を有する。
なお、Hi-Defnision 1Line CCD Camera Interface 回路は、内部のクロックと同期し、上記の一連の動作を制御するハードウエア回路である。
図7に示すように、本実施形態では、8バンドを有することから、基本的に250nm〜1100nm内を半値幅を標準的に検討し、入手可能なレンズの特性までを考慮しながら原則的に帯域を等分割するが、対象によって適宜帯域を選定することになり、アプリケーションを判断しながら選定することができる。
【0026】
<スキャン装置>
実施の形態1の「8バンド1次元ラインセンサカメラ」は、回転機構を必要としないソリッドステート構造の1次元ラインセンサを半導体ウエファー(Wafer)のダイ(die)上に8バンドで形成して、96列のTDI(Time Delay Integration)方式のマルチバンド1次元ラインセンサカメラとした。
また、この8バンド1次元ラインセンサカメラを用いたスキャン装置として用いる場合は、図1に示すように、スキャン対象物の上方にマルチバンド1次元ラインセンサカメラを設置し、マルチバンド1次元ラインセンサカメラの1次元ラインセンサの配列方向に対し、スキャン対象物を直角方向に移動させる移動手段(回転保持ローラー)を備え、該スキャン対象物からの反射光をマルチバンド1次元ラインセンサカメラの基本バンド上に多重の露光を行い、基本バンドに蓄積された情報をリードアウトするように構成する。
これにより、8バンドで同一場所を1スキャンのみで高速化でき、高分解能で、従来の100倍程度の超高感度を実現できる。
【0027】
実施形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラ及びそれを用いたスキャン装置は、以下に記載するような特徴を有する。
・TDI−96列センサを搭載したので従来の100倍近い高感度を実現する。
・ソリッドステート構造で従来のような機構による回転フィルタ切り換えは必要ない。 ・1スキャンのみで従来のようなバンド数分の繰り返しスキャンは必要ない。
・高感度のみならずスキャンスピードが従来に比較しきわめて高速となる。
・構造上従来の1次元センサと同様高分解能を容易に実現できる。
【0028】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2により、本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラをさらに詳細に説明する。
実施の形態2のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、図8に示すように、実施形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラを、ビームスプリッタで2台組み合わせ、「16バンド1次元ラインセンサカメラ」としたものである。
すなわち、実施形態2のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、実施形態1の8バンド1次元センサカメラを、光学ビームスプリッタで同一光路上に2台組み合わせ搭載して、レンズから入光した光をレンズ後に設置されたビームスプリッターで2分割し、それぞれの光路に8バンド1次元センサカメラを設置し、カメラ別に必要とするバンドパスフィルタを設置することで16バンドの1次元センサカメラとしたものである。
カメラ感度は設置したビームスプリッターで入射光が1/2となるが、TDI−96列構成とし十分高感度であるため、16バンド構成としても感度が低下することはない。
16バンド1次元ラインセンサカメラは、1台の8バンド1次元ラインセンサカメラが極めて高速のため、CoaEXprssインターフェース1アウトプット単位(同軸単位)にイメージングCPU1台を配し、各々をもう1台のCPUが統括し画像処理する形態をとり処理の高速化に十分対処可能な構成とした。
なお、双方のカメラの同期を取るためカメラクロックを外部から各カメラの供給する事が必要となる。
このような構成により、実施形態2の16バンド1次元ラインセンサカメラは、特に、医療用病理解析の原因究明には、資料を劣化させず広域高速処理可能な高性能のシステム装置などに適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、分光的画像分析では、高コントラスト検出・欠陥原因分析などに利用できる。
文化財デジタルアーカイブ応用では、顔料分析・文化財修復分析などに利用できる。
医用応用では病理診断・症例データベースなどに利用できる。
分光的色再現分析では、印刷照明メタメリズムの解消・照明下のカラーマネージメント、平面ディスプレイ照明メタメリズムの解消・忠実性・色再現性分析などに利用できる。
測色的分析では、忠実性・多原色表示分析などに利用できる。
高リアリティー映像表現分野では、臨場感重視の分析、その他資源探査・都市温度分布・人口分布解析などなどに利用できる。
従来不可能と思えた多数の革新的応用分野で、高速・高感度な高度アプリケーションに対応可能な、新発想のイメージングセンサとして中心的役割が大いに期待できる。このため産業上の利用可能性が極めて高い。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチバンド1次元ラインセンサカメラに関し、詳細には、マルチスペクトルTDI(Time Delay Integration)方式の1次元並行配列ラインセンサカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチスペクトルカメラとしては、2次元モノクロイメージセンサを用い、可視光波長域400〜900nm程度の周波数帯域のうち必要とする特定バンドのみ通過させる回転式バンドパスフィルタを光路に設置し、複数の特定スペクトルイメージを取得する手法がある。
また、1次元ラインセンサ素子を用いて、カラーRGBカメラを構成する場合もあり、
例えば、3板式RGBラインセンサ方式(図9参照)と並行配列ラインセンサ方式(図10参照)などがある。
【0003】
3板式RGBラインセンサ方式は、ダイクロックミラーで分光したイメージを、それぞれ光学的同位置に配置したRGB別の各センサに入力する方式であり、イメージのずれが生じることはなく同時刻同位置の1次元情報が得られる。
【0004】
並行配列ラインセンサ方式は、レンズで分光したイメージを、並行に配置したRGB別の各ラインセンサに入力する方式である。
【0005】
しかしながら、上記、3板式RGBラインセンサ方式は、実際には、数千ビットに及ぶ1次元素子の機械的な同位置調整はかなり困難で、各素子ピクセル間には1ピクセルから2ピクセル程度以上の調整誤差が生じ、ダイクロックプリズム自身の持つ歪み誤差や3つの光路に分離するため顕著な感度低下も無視できず、タクトを上げるためには大光量の光源も必要となるなど問題がある。
【0006】
また、上記、並行配列ラインセンサ方式は、配列ピッチ分視野位置がずれるため、同時刻に同一場所のRGB色情報が得られず、2次元方向のスキャン動作で時間軸を合わせるためクロック同期信号によって同一場所の色情報として再合成する必要が生じる(図11参照)。
但し、3板式RGBラインセンサ方式と比べ、ダイクロックミラーなどを使用しないため減光は比較的に少ないが、それでもセンサ前面に貼り付けた広域のRGBカラーフィルタによる減光は避けられず、特に、資料の劣化を恐れ高感度とするためスキャンレートを落とし蓄積時間を増やすか、あるいは照度を極端に高輝度にするなど工夫が必要である。
なお、本発明に関する従来技術としては以下の文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−300892号公報
【特許文献2】特開平9−144311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マルチスペクトルカメラは、計測対象物の分光反射率を、帯域内に設定された多バンド(波長域)複数の特徴点を精密に捉えることができることから、高レベルの計測を行う手列としては極めて有用であり、マルチスペクトル計測の重要性が改め認識され、高度なマルチスペクトルカメラの出現が待たれていたが、従来方式で高分解能のマルチスペクトルカメラを構成しようとすれば、図12に示すように、モノクロの1次元ラインセンサカメラを用意し、目的のバンドパスフィルタを必要枚数貼り付けた回転機構を有するカメラとしていた。
【0009】
このような回転機構バンドパスフィルタ方式のマルチスペクトルカメラは、チャンネル数だけ同位置のスキャンを繰り返す必要からタクト時間がチャンネル数分大幅に増すなどの問題があり、前記図10に示す並行配列ラインセンサの場合では、低感度を改善するため、良好なスペクトル画像を得ようとすれば、ハロゲン光源やメタルハライド光源を使用し、更に、スキャンレートを遅くするなどし、積算照明強度を相対的に得るか、あるいは高輝度LED照明装置を用いるなどして、撮影対象である資料を高輝度で照明する必要があった。
【0010】
しかし、文化財のデジタルアーカイブを例にとると、特に光や温度による劣化が促進されるおそれから、その扱いに当たって照明強度の制限が設けられ、ヨーロッパやアメリカを中心に厳しい基準が定められ、照度と時間の積による積算照度基準を定め厳密な規制を課すようになった。
例えば、アメリカ照明学会(IES:Illuminating Engineering Socity)では、照明と時間の積による積算照度基準を厳格に定め規制を課している。
また、医療分野でも、医療分析における病理診断において高輝度照明は資料劣化促進を招くため極めて好ましくないとし、積算照度がある基準を超える場合は、スキャンレートを落としてフォトン蓄積時間を増やすなどの対策をとっているが、患部の微細微弱な蛍光応答を拾いきれず、改善が必要となっている。
本発明は、従来の問題点を解決するものであり、撮影対象を1回スキャンすることのみで多チャンネルの情報が得られ、しかも、高速、高分解能、高感度を実現するマルチスペクトルカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、
CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイの多数個を1列に並べた1次元ラインセンサを、並行に複数列配列したものを基本バンドとし、
この基本バンドを、さらに並行に複数バンド配設してマルチバンドとするとともに、
上記基本バンドのそれぞれの前面に、それぞれが独立した分光透過率特性を有するバンドパスカラーフィルタを積層することを特徴とする。
(2)本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、前記(1)において、
前記基本バンドが、1次元ラインセンサを96列配列したものであり、
該基本バンドを8バンド配設したことを特徴とする。
(3)本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、前記(1)又は(2)において、スキャン対象物からの反射光をビームスプリッタを介して分割して、
複数台のマルチバンド1次元ラインセンサカメラに入射するようにしたことを特徴とする。
(4)本発明のスキャン装置は、前記(1)〜(3)のいずれかのマルチバンド1次元ラインセンサカメラの1次元ラインセンサの配列方向に対し、
スキャン対象物を直角方向に移動させる移動手段を備え、
該スキャン対象物からの反射光を基本バンド上に多重の露光を行い、
基本バンドに蓄積された情報をリードアウトするようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、回転機構を必要としないソリッドステート構造(固定した構造)の1次元ラインセンサを半導体ウエファー(Wafer)のダイ(die)上に複数バンドで形成して、複数バンドのTDI(Time Delay Integration)方式のマルチバンド1次元ラインセンサカメラとしたので、多チャンネルで同一場所を1スキャンのみでマルチバンド情報を画像取得でき、高分解能で、従来のものよりも高速でスキャンしても超高感度を実現できる。
さらに、超高感度であるから、複数バンド、例えば8バンド1次元センサカメラをビームスプリッタで2台組み合わせ搭載したマルチスペクトル複数バンド、例では16バンドの更なる、超多バンド1次元ラインセンサカメラとすることができ、資源探査を始め、成分分析等の、従来不可能だったマルチスペクトル分析が、高速高感度で行える等、革新的な高度応用にも採用拡大ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態のマルチバンド1次元ラインセンサカメラを用いたスキャン装置を示す概略説明図である。
【図2】本発明の実施の形態のマルチバンド1次元ラインセンサカメラのラインセンサの動作原理を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1のマルチバンド1次元ラインセンサカメラの基本バンドの構成を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラの構成を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1に用いるインターフェースの構成ブロックの例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラを用いた画像処理の構成を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラに用いるバンドパスカラーフィルタのチャンネル選定例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態2の16バンド1次元ラインセンサカメラの構成を示す説明図である。
【図9】従来例の3板式RGBラインセンサ構造を示す説明図である。
【図10】従来例の平行配列ラインセンサ構造を示す説明図である。
【図11】従来例の平行配列型CCD視野位置ずれを示す説明図である。
【図12】従来例の回転機構バンドパスフィルタ方式のマルチスペクトルカメラを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラの実施形態を、以下に説明する。
図1は実施の形態のマルチバンド1次元ラインセンサカメラのスキャン方式を示す説明図であり、
図2はラインセンサの動作原理を示す説明図である。
図3は実施の形態1のマルチバンド1次元ラインセンサカメラの基本バンドの構成を示す説明図であり、
図4は実施の形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラの構成を示す説明図であり、
図5は実施の形態1に用いるインターフェースの構成ブロックの例を示す説明図であり、図6は実施の形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラを用いた画像処理の構成を示す説明図であり、
図7は実施の形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラに用いるバンドパスカラーフィルタのチャンネル選定例を示す説明図である。
【0015】
図4に示すように、本発明の実施の形態1のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、CCDイメージング素子又はCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイを1列に並べた1次元ラインセンサ、レンズ、信号ドライバ−・コントロール回路などを備えており、撮影対象の映像をレンズによってイメージング素子上に照射して結像させ、1次元ラインセンサ1列分の光量を蓄積して、ビデオ信号に変換して出力させるように構成される。
すなわち、CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイの多数個を1列に並べた1次元ラインセンサを、並行に複数列配列したものを基本バンドとし、この基本バンドを、さらに並行に複数バンド配設してマルチバンドとするとともに、上記基本バンドのそれぞれの前面に、それぞれが独立した分光透過率特性を有するバンドパスカラーフィルタを積層して、マルチバンド1次元ラインセンサカメラを構成する。
【0016】
このマルチバンド1次元ラインセンサカメラのフォトダイオードアレイに光が照射されると電荷が時間とともに露光蓄積され、外部よりの並列転送パルスによって、リードアウトレジスターに順次加算(図3の例では最大96列分を加算)した後一括転送され、ビデオ信号として出力され、ビデオ信号は、時系列パルスと同期させて取り出され、移動体(スキャン対象物)に対し並行で一定ピッチ毎に平均した積分値が出力されるようになっている。
【0017】
<裏面入射型CCD(Back-Thinned CCD)>
なお、本実施の形態のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、可視光域を広げ、新たなたスペクトル応用解析を目的に、裏面入射型CCD(Back-Thinned CCD)を採用することもできる。
裏面入射型CCDは、受光面(裏面)に、保護膜を含む酸化膜や、ポリシリコン電極など、多数の薄膜を形成する必要がなく、高感度広域な理想的な入射面を形成できる。
また、裏面入射型CCDは、従来の表面入射型CCDでは検出できなかった近赤外〜紫外域の広域な入射光を高い量子効率で検出することができる。
【0018】
<バンドパスカラーフィルタ>
また、各基本バンドを構成するCCD前面には、各バンド毎に異なった(独立した)分光透過率特性を有するバンドパスカラーフィルタを積層している。バンドパスカラーフィルタとは、必要な波長域の光を透過し、不要な波長域の光を反射や吸収によりカットする帯域透過フィルターをいう。
これにより、スキャン対象物の反射光を、各基本バンドに積層された各バンドパスカラーフィルタを通してフォトダイオードアレイに取り込むことができ、1スキャンでスキャン対象物の反射光の特徴点を精密に捉えることができる。
したがって、タクト時間が極めて短縮され、ハロゲンやメタルハライドなどの強い光源を使用することなく、高速、高分解能、高感度で多チャンネルの情報を得ることができる。
【0019】
<ビームスプリッタ>
また、本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、スキャン対象物からの反射光をビームスプリッタを介して分割して、複数台のマルチバンド1次元ラインセンサカメラに入射するようにすることもできる。ビームスプリッターは、光束を二つに分割する光学分野の装置をいい、ビームスプリッターに入射した光の一部は反射し、一部は透過する。
これにより、超高感度多チャンネルのマルチバンド1次元ラインセンサカメラとすることが可能となり、資源探査や成分分析等の、従来不可能だったマルチスペクトル分析を、高速高感度で行うなどの、革新的な高度応用にも適用できる。
そして、1次元ラインセンサによって得られた1次元情報を、2次元的なカメラ映像に再現させるため、対象物を移動させる機構(移動体)を備え、一定速度でラインセンサ列方向と直角に移動させ、1次元ラインセンサ1列分のビデオ信号を組み合わせて2次元イメージとして組み立てる構成としている。
【0020】
<実施の形態1>
以下、実施の形態1により、本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラをさらに詳細に説明する。
実施の形態1のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、図4に示すように、図3のTDI方式の基本バンド(96列センサ)の8個(8バンド)を、半導体ダイ上に並行に配列し、各基本バンドの前面に、8種類の独立した分光透過率特性を有するバンドパスカラーフィルタを搭載し、マルチバンド1次元ラインセンサカメラとした。
そして、図示するように、各バンドの1次元ラインセンサ上に多重の露光を行い、資料(スキャン対象物)を8バンドの配列方向に移動させ、半導体ウエファー(Wafer)のダイ(die)上に搭載された8バンド96列(96ステージ)に蓄積された情報を合計してリードアウトするようにして、高感度なイメージングを実行できるようにしている。
【0021】
実施形態のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、1列(1ステージ)として、
画素サイズ:8.5μm、
画素数:4096bit、
素子長:34.8mm、とした。
この1列を素子長方向と直角に96列(96ステージ)TDI方式に並べて、40Mhz・4Tap総合転送速度160Mhzのセンサバンド(基本バンド)とした。そして、この基本バンドを、ダイ上に8バンド並行配列し、高分解能・高速・超高感度のセンサとした。インタフェースは高速のCoaXPresを搭載した。
【0022】
このマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、1バンド160Mhzで8バンド総合Data Rate(Line Rate)1.28Ghzを超えるため、従来のCamera LinkなどのインターフェースではCPU間と接続できず、新たにAdimic社、EqcoLogic社で提唱された高速デジタルインタフェースであるCoaXPress(図5参照)によって、CPU間との接続が電源を含め同軸ケーブル1本で足りる。
CoaXPressは、最高6.25Gbit/sec(CPX-Base) 、同軸ケーブル4本で25Gbit/sec(CPXQuad)でCPU間を接続できる高速フレキシブルなカメラインタフェースである。
【0023】
<バンドパスカラーフィルタ>
CCD素子は、基本的に可視域に加え、視覚感度より外側波長域のイメージを広域バンドに対応する高性能な裏面CCDセンサ250nm〜1100nmを8バンド搭載した。
この連続する波長バンド情報を、CCD前面にバンドパスカラーフィルタを、各CCDバンド毎に8バンド搭載して、マルチスペクトルイメージを得た。
このため、8バンドのそれぞれの前面に、それぞれが独立した分光透過率特性を有する8種類のバンドパスカラーフィルタを積層した。
【0024】
<TDI(Time Delay Integration)>
図3に示すように、実施の形態1のマルチバンド1次元ラインセンサカメラにおいては、TDI(Time Delay Integration)の1次元ラインセンサイメージング方式を採用している。
CCD素子を横1列に4096画素並べた1次元ラインセンサを、縦方向に96列配設してTDI(Time Delay Integration)方式のイメージング方式とした基本バンド(96列センサ)構造である。
従来、1次元ラインセンサは1本のラインが露光され、次のクロックでリードアウトレジスタに並行移動される事を繰り返していたので、この間、次ラインが有効視野に入るまで一回しか露光されず、その結果、露光時間の問題から低感度とならざるを得なかったが、TDI方式によってこのような問題を解決した。
なお、アプリケーション側の要求に応じ、画素数(例えば8000素子)、列数、バンド数などを更に拡大することも可能である。
【0025】
次に、実施形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラの動作を説明する。
図6に示すように、まず、レンズからの入射光のイメージを8バンドで構成されたCCDセンサに集光させる。
次に、CCDセンサの各バンドに接続されたリードアウトレジスタからのアナログ出力をVideo A/D Convertor でデジタル変換させる。
そして、CCDセンサの各バンドについての感度差をシューディング補正回路で感度補正する。
この後、取得しデジタル化されたイメージ情報を高速FPGA回路で送信情報としてパケットに配列する。
パケットに生成されたデジタルイメージ情報を、CoaXpress変換素子によって、高速でシリアル化して、同軸ケーブルによって最大6.25Mbpsで外部に送信する。
なお、ローカルCPUは、8バンド1次元ラインセンサカメラの各機能の制御を、外部の指令によって制御する能力を有する。
なお、Hi-Defnision 1Line CCD Camera Interface 回路は、内部のクロックと同期し、上記の一連の動作を制御するハードウエア回路である。
図7に示すように、本実施形態では、8バンドを有することから、基本的に250nm〜1100nm内を半値幅を標準的に検討し、入手可能なレンズの特性までを考慮しながら原則的に帯域を等分割するが、対象によって適宜帯域を選定することになり、アプリケーションを判断しながら選定することができる。
【0026】
<スキャン装置>
実施の形態1の「8バンド1次元ラインセンサカメラ」は、回転機構を必要としないソリッドステート構造の1次元ラインセンサを半導体ウエファー(Wafer)のダイ(die)上に8バンドで形成して、96列のTDI(Time Delay Integration)方式のマルチバンド1次元ラインセンサカメラとした。
また、この8バンド1次元ラインセンサカメラを用いたスキャン装置として用いる場合は、図1に示すように、スキャン対象物の上方にマルチバンド1次元ラインセンサカメラを設置し、マルチバンド1次元ラインセンサカメラの1次元ラインセンサの配列方向に対し、スキャン対象物を直角方向に移動させる移動手段(回転保持ローラー)を備え、該スキャン対象物からの反射光をマルチバンド1次元ラインセンサカメラの基本バンド上に多重の露光を行い、基本バンドに蓄積された情報をリードアウトするように構成する。
これにより、8バンドで同一場所を1スキャンのみで高速化でき、高分解能で、従来の100倍程度の超高感度を実現できる。
【0027】
実施形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラ及びそれを用いたスキャン装置は、以下に記載するような特徴を有する。
・TDI−96列センサを搭載したので従来の100倍近い高感度を実現する。
・ソリッドステート構造で従来のような機構による回転フィルタ切り換えは必要ない。 ・1スキャンのみで従来のようなバンド数分の繰り返しスキャンは必要ない。
・高感度のみならずスキャンスピードが従来に比較しきわめて高速となる。
・構造上従来の1次元センサと同様高分解能を容易に実現できる。
【0028】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2により、本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラをさらに詳細に説明する。
実施の形態2のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、図8に示すように、実施形態1の8バンド1次元ラインセンサカメラを、ビームスプリッタで2台組み合わせ、「16バンド1次元ラインセンサカメラ」としたものである。
すなわち、実施形態2のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、実施形態1の8バンド1次元センサカメラを、光学ビームスプリッタで同一光路上に2台組み合わせ搭載して、レンズから入光した光をレンズ後に設置されたビームスプリッターで2分割し、それぞれの光路に8バンド1次元センサカメラを設置し、カメラ別に必要とするバンドパスフィルタを設置することで16バンドの1次元センサカメラとしたものである。
カメラ感度は設置したビームスプリッターで入射光が1/2となるが、TDI−96列構成とし十分高感度であるため、16バンド構成としても感度が低下することはない。
16バンド1次元ラインセンサカメラは、1台の8バンド1次元ラインセンサカメラが極めて高速のため、CoaEXprssインターフェース1アウトプット単位(同軸単位)にイメージングCPU1台を配し、各々をもう1台のCPUが統括し画像処理する形態をとり処理の高速化に十分対処可能な構成とした。
なお、双方のカメラの同期を取るためカメラクロックを外部から各カメラの供給する事が必要となる。
このような構成により、実施形態2の16バンド1次元ラインセンサカメラは、特に、医療用病理解析の原因究明には、資料を劣化させず広域高速処理可能な高性能のシステム装置などに適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のマルチバンド1次元ラインセンサカメラは、分光的画像分析では、高コントラスト検出・欠陥原因分析などに利用できる。
文化財デジタルアーカイブ応用では、顔料分析・文化財修復分析などに利用できる。
医用応用では病理診断・症例データベースなどに利用できる。
分光的色再現分析では、印刷照明メタメリズムの解消・照明下のカラーマネージメント、平面ディスプレイ照明メタメリズムの解消・忠実性・色再現性分析などに利用できる。
測色的分析では、忠実性・多原色表示分析などに利用できる。
高リアリティー映像表現分野では、臨場感重視の分析、その他資源探査・都市温度分布・人口分布解析などなどに利用できる。
従来不可能と思えた多数の革新的応用分野で、高速・高感度な高度アプリケーションに対応可能な、新発想のイメージングセンサとして中心的役割が大いに期待できる。このため産業上の利用可能性が極めて高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイの多数個を1列に並べた1次元ラインセンサを、並行に複数列配列したものを基本バンドとし、
この基本バンドを、さらに並行に複数バンド配設してマルチバンドとするとともに、
上記基本バンドのそれぞれの前面に、それぞれが独立した分光透過率特性を有するバンドパスカラーフィルタを積層することを特徴とする、マルチバンド1次元ラインセンサカメラ。
【請求項2】
前記基本バンドが、1次元ラインセンサを96列配列したものであり、
該基本バンドを8バンド配設したことを特徴とする請求項1に記載のマルチバンド1次元ラインセンサカメラ。
【請求項3】
スキャン対象物からの反射光をビームスプリッタを介して分割して、
複数台のマルチバンド1次元ラインセンサカメラに入射するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチバンド1次元ラインセンサカメラ。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれかのマルチバンド1次元ラインセンサカメラの1次元ラインセンサの配列方向に対し、
スキャン対象物を直角方向に移動させる移動手段を備え、
該スキャン対象物からの反射光を基本バンド上に多重の露光を行い、
基本バンドに蓄積された情報をリードアウトするようにしたことを特徴とするスキャン装置。
【請求項1】
CCDイメージング素子やCMOSイメージング素子などのフォトダイオードアレイの多数個を1列に並べた1次元ラインセンサを、並行に複数列配列したものを基本バンドとし、
この基本バンドを、さらに並行に複数バンド配設してマルチバンドとするとともに、
上記基本バンドのそれぞれの前面に、それぞれが独立した分光透過率特性を有するバンドパスカラーフィルタを積層することを特徴とする、マルチバンド1次元ラインセンサカメラ。
【請求項2】
前記基本バンドが、1次元ラインセンサを96列配列したものであり、
該基本バンドを8バンド配設したことを特徴とする請求項1に記載のマルチバンド1次元ラインセンサカメラ。
【請求項3】
スキャン対象物からの反射光をビームスプリッタを介して分割して、
複数台のマルチバンド1次元ラインセンサカメラに入射するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチバンド1次元ラインセンサカメラ。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれかのマルチバンド1次元ラインセンサカメラの1次元ラインセンサの配列方向に対し、
スキャン対象物を直角方向に移動させる移動手段を備え、
該スキャン対象物からの反射光を基本バンド上に多重の露光を行い、
基本バンドに蓄積された情報をリードアウトするようにしたことを特徴とするスキャン装置。
【図3】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−60411(P2012−60411A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201515(P2010−201515)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(501298926)浜松メトリックス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(501298926)浜松メトリックス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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