説明

マルチレベル高圧インバータの移相変圧器

【課題】マルチレベル高圧インバータの移相変圧器を提供する。
【解決手段】移相変圧器は、構造をモジュール化(modular)し、機構設計上の自由度を提供し、全体システムの体積と重さを減少することができ、一つのモジュールが故障(fault)状態になっても電動機の連続運転が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移相変圧器に関し、より詳細にはマルチレベル方式の高圧インバータに使うための移相変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、マルチレベル高圧インバータ(multi−level medium−voltage inverter)は、入力される線間電圧の実効値が600V以上のインバータであり、出力される相電圧(voltage)がマルチレベルである。このような高圧インバータは、数百kW〜数十MWの容量を有する大容量の電動機を駆動するために使用され、ファン(fan)、ポンプ(pump)、圧縮機(compressor)、牽引(traction)、昇降(hoist)、コンベヤー(conveyor)のような分野で主に使われる。
【0003】
一般的な高圧インバータは、電気的絶縁(galvanic isolation)を備えるため、高調波(harmonic)を低減するため、及び各単位電力セル(power cell unit)に入力電圧を供給するために、入力端において移相変圧器(phase shift transformer)が求められる。このような移相変圧器は、高圧マルチレベルインバータの単位部品の中で体積と重さを大多数占めるため、設計時に大変重要な要素である。
【0004】
しかし、従来の移相変圧器は、通常一体型構造を有し、これによって設計面で自由度(degree of freedom)がない問題があった。以下、従来の移相変圧器について説明する。
【0005】
図1は、従来のマルチレベル方式の高圧インバータの構成図である。
【0006】
図1に示したように、従来の高圧インバータ110は、線間電圧(line−to−line voltage)の実効値(root mean square)が600V以上の電圧を出力する入力電源部120から入力電力を受け取り、これを変換して、負荷である三相の電動機130に出力する。
【0007】
移相変圧器111の一次側巻線(primary winding)は、三相ワイ(Y)結線状で、二次側巻線(secondary winding)は、一次側巻線対比−15°、 0°、15°、30°の位相差を有する巻線が各3個の合わせて12個で構成される。二次側巻線の構造は、単位電力セル112の数によって決められる。
【0008】
図1から電動機130の各相当たり二つの単位電力セルで構成されていることが分かる。即ち、A1及びA2電力セル112a、112bの出力は、直列連結されて三相電動機130のa相電圧を出力し、B1、B2電力セル112c、112dは、b相電圧を、C1、C2電力セル112e、112fはc相電圧を出力する。
【0009】
A1、B1、C1電力セル112a、112c、112eは、移相変圧器111の出力中、−15°と0°の位相を有する出力と連結され、A2、B2、C2電力セル112b、112d、112fは、15°と30°の位相を有する出力と連結される。
【0010】
図2は、図1の電力セルの構成図である。
【0011】
図2に示したように、整流部210は、移相変圧器111から二つの三相電源の入力を受けて、これを直流に整流する。このために、二つのダイオード整流器を備える。整流部210の出力は、直列連結されたDCリンクキャパシターと連結されるが、直流部220の二つのDCリンクキャパシターは、各々同じキャパシタンスを有する。
【0012】
インバータ部230は、直流部220の出力電圧を合成し、出力される線間電圧は5レベルとなる。
【0013】
一方、図1の従来の高圧インバータは、図3のように構成可能である。図3は、図1の他の構成図であり、電力セル113の構成を除いて図1とその構成が同一である。
【0014】
図3の電力セル113は、5レベルの出力電圧を合成することができる。D1電力セル113aは、電動機130のa相電圧を出力し、E1電力セル113bは、電動機130のb相電圧を出力し、F1電力セル113cは、電動機130のc相電圧を出力する。
【0015】
図4は、図3の電力セルの構成図である。
【0016】
図4に示したように、整流部410は、四つのダイオード整流器で構成され、インバータ部430の動作は図2と同じである。
【0017】
但し、図2と図4の単位電力セルは、求められる出力に応じて用いられる電力素子の正格電圧(rated voltage)と正格電流(rated current)が異なることになる。
【0018】
移相変圧器111の出力は、整流部410に入力され、整流部410の出力は、直流部420に反映される。
【0019】
まず、図2のインバータ部230の動作について説明する。
【0020】
図2のインバータ部230の一つのレッグ(leg)は、四つのスイッチ230a、230b、230c、230dが直列連結され、各スイッチの動作に応じて出力電圧が定義される。
【0021】
230aと230cのスイッチング動作は、相補的(complimentary)であり、230bと230dのスイッチング動作も相補的である。従って、直列連結されている直流部220のDCリンクキャパシターの電圧を各々Eと定義すると、230a及び230bのスイッチがオン(ON)の場合、230cと230dのスイッチは、オフ(OFF)となり、この時に出力される極電圧(pole voltage)はEとなる。また、230aと230cがオンの場合、230b、230dはオフとなり、この場合、極電圧は0となる。同様に、230a、230bが、オフの状態では、230cと230dのスイッチはオンとなり、この場合の極電圧は−Eが出力される。
【0022】
このように定義される極電圧に応じて、図1の単位電力セル112が出力する線間電圧は、2E、E、0、−E、−2Eの5レベルとなる。各電力セル112が出力する線間電圧が5レベルに定義されることによって、図1のA1、A2電力セル112a、112bが合成できる電圧は、4E、3E、2E、E、0、−E、−2E、−3E、−4Eの9レベルとなって、電動機130で出力される線間電圧は、8E、7E、6E、5E、4E、3E、2E、E、0、−E、−2E、−3E、−4E、−5E、−6E、−7E、−8Eの17レベルとなる。
【0023】
図1及び図3の移相変圧器111の動作について説明する。
【0024】
移相変圧器111は、入力される三相電源から各電力セル112、113に電気的に絶縁された三相電源を印加する。
【0025】
移相変圧器111の一次側巻線は、ワイ(Y)結線或いはデルタ(△)結線であり、二次側巻線は一次側から位相シフトされた電源を出力し、この時、単位電力セル112、113のニーズに合う適切な大きさを有するようにする。
【0026】
移相変圧器111の二次側出力は、単位電力セル112、113の整流部210、410のダイオード整流器の数と同じで、次の数学式1のような関係を有する。
【数1】

【0027】
【表1】

【0028】
移相変圧器111の二次側巻線の位相シフト角は、次の数学式2から求められる。
【数2】

【0029】
【表2】

【0030】
このように決められた二次側巻線間の位相シフト角から各々の二次側巻線の出力電圧は、一次側入力電圧に対して位相が位相シフト角だけ変わったものである。
【0031】
しかし、前記従来のマルチレベル高圧インバータは、移相変圧器が単一ユニット(unit)で構成されている。即ち、従来の移相変圧器は、一次側巻線は一つの三相電源だけを出力し、単位電力セルに連結される二次側巻線が共に一つの変圧器から入力される構造である。
【0032】
このような単一ユニットで構成される移相変圧器は、求められる出力が一つの変圧器で満足しなければならないため、変圧器自体の体積と重さが増加する問題があった。また、機構設計上の自由度がないため、全体システムの体積が増加し、重さも増加する問題があった。
【0033】
また、従来の単一ユニットの移相変圧器の場合、一次側巻線に問題が生じると全体システムの運転が不可能になる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明の目的は、構造をモジュール化(modular)して、機構設計上の自由度を提供し、全体システムの体積と重さを減少したマルチレベル高圧インバータの移相変圧器を提供することである。
【0035】
また、本発明の他の目的は、一つのモジュールが故障(fault)状態になっても電動機の連続運転が可能にするマルチレベル高圧インバータの移相変圧器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
前記のような技術的課題を解決するために、電動機を駆動する複数の電力セルを含むマルチレベル高圧インバータシステムにおいて、本発明の移相変圧器は、複数のモジュール化された移相変圧器を含み、複数の前記モジュール化された移相変圧器の一次側巻線は、各々所定角度で互いに位相シフトされることが好ましい。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記モジュール化された移相変圧器の二次側巻線は、所定角度に位相シフトされた複数の第1結線及び複数の第2結線を含むことが好ましい。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記第1結線はY結線であり、第2結線はΔ結線であることが好ましい。
【0039】
本発明の一実施形態において、複数のモジュール化された移相変圧器のうちいずれか一つは、前記複数の電力セルのうち前記電動機に三相電圧を各々提供する三つの電力セルに、前記第1結線及び前記第2結線の出力を各々入力電源に供給することが好ましい。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記モジュール化された移相変圧器の二次側巻線は、所定角度に位相シフトされた複数の結線を含むことが好ましい。
【0041】
本発明の一実施形態において、前記モジュール化された移相変圧器のうちいずれか一つは、前記複数の電力セルのうちいずれか一つの電力セルに入力電源を供給することが好ましい。
【0042】
本発明の一実施形態において、前記のある一つの電力セルの入力は、前記モジュール化された移相変圧器のうちいずれか一つの複数の結線からの出力であることが好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態において、複数の前記モジュール化された移相変圧器は、前記複数の電力セルのうちいずれか一つの電力セルに入力電源を供給することが好ましい。
【0044】
本発明の一実施形態において、前記のある一つの電力セルの入力は、前記複数のモジュール化された移相変圧器からの出力であることが好ましい。
【0045】
【表3】

【発明の効果】
【0046】
本発明により、機構設計面で自由度を有することができるため、全体システムの大きさ(volume)を減らすことができ、全体システムの余裕率を増大させて移相変圧器の故障状態でも安定した運転ができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来のマルチレベル方式の高圧インバータの構成図である。
【図2】図1の電力セルの構成図である。
【図3】図1の他の構成図である。
【図4】図3の電力セルの構成図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る移相変圧器が適用された高圧インバータシステムの構成図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る移相変圧器が適用された高圧インバータシステムの構成図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態に係る移相変圧器が適用された高圧インバータシステムの構成図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係る移相変圧器が適用された高圧インバータシステムの構成図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態に係る移相変圧器が適用された高圧インバータシステムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な実施形態を有し、特定実施形態を図面に例示して詳細に説明する。
【0049】
しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解しなければならない。
【0050】
第1、第2等の序数を含む用語は、多様な構成要素を説明するために使われるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。
【0051】
前記用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的だけで使われる。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない限り、第2構成要素は第1構成要素に命名でき、同様に第1構成要素も第2構成要素と命名できる。
【0052】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いる、または「接続されて」いると記述する時には、その他の構成要素に直接的に連結されていたり、または接続されていてもよいが、その中間に他の構成要素が存在してもよいことを理解しなければならない。一方、ある構成要素が、他の構成要素に「直接連結されて」いる、または「直接接続されて」いると記述する時には、その中間に他の構成要素が存在しないことを理解しなければならない。
【0053】
本願に使われた用語は、単に特定の実施形態を説明するために使われたものであって、本発明を限定する意図はない。単数の表現は文脈上明白に異なることを意味しない限り、複数の表現を含む。
【0054】
本願において、「含む」または「有する」等の用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたもの等の存在または付加可能性を予め排除しないものと理解しなければならない。
【0055】
さらに、本願に添付された図面は、説明の便宜のために、拡大または縮小して示されたものと理解しなければならない。
【0056】
本発明について添付図を参照して詳細に説明し、図面の符号に関係なく同一または対応する構成要素は、同一参照符号を付け、これに関する重複説明は省略する。
【0057】
図5は本発明の一実施形態に係る移相変圧器が適用された高圧インバータシステムの構成図である。
【0058】
図5に示したように、本発明の移相変圧器51は、高圧インバータ1の内部に含まれるもので、高圧インバータ1は三相の入力電源部2から線間電圧実効値が600V以上の三相電源を変換して三相電動機3を駆動する三相電圧を出力する。
【0059】
本発明の移相変圧器51は、二つのモジュール化された移相変圧器(第1モジュール51a及び第2モジュール51b)を含む。
【0060】
第1モジュール51aは、一次側巻線が三相ワイ(Y)結線で、二次側巻線はワイ(Y)結線とデルタ(△)結線を含み、各々0°と30°に位相シフトされる。
【0061】
第2モジュール51bの一次側巻線は、位相シフトされた(phase shifted)Z結線であり、二次側巻線は第1モジュール51aと同じ構造であってもよい。
【0062】
本発明の一実施形態において、単位電力セル52の出力電圧は5レベルで、電動機3の各相当二つの単位電力セルで構成されるが、必要に応じて単位電力セルの数を拡張できることは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者には明らかである。
【0063】
A1、A2電力セル52a、52bの出力は、直列連結されて電動機3のa相電圧を出力し、B1、B2電力セル52c、52dの出力はb相電圧を、C1、C2電力セル52e、52fはc相電圧を出力する。
【0064】
図5の構成において、A1、B1、C1電力セル52a、52c、52eは、第1モジュール51aの出力を受信し、A2、B2、C2電力セル52b、52d、52fは、第2モジュール51bの出力を受信する。
【0065】
図5の電力セル52の構造は、図2の電力セルと同様に構成され、その詳細な説明は省略する。
【0066】
また、図5において、第1モジュール51aの一次側巻線をY結線と、第2モジュール51bの一次側巻線をZ結線と例示したが、これに限定されるものではない。また、二次側巻線の構造も図5に示されたものに限定されるのではない。
【0067】
図6は、本発明の他の実施形態に係る移相変圧器が適用された高圧インバータシステムの構成図であり、本発明の移相変圧器61は、高圧インバータ1の内部に含まれる。高圧インバータ1は三相の入力電源部2から線間電圧実効値が600V以上の三相電源を変換して三相電動機3を駆動する三相電圧を出力する。
【0068】
図6に示したように、本発明の移相変圧器61は、三つのモジュール化された移相変圧器(第1モジュール61a、第2モジュール61b及び第3モジュール61c)を含む。
【0069】
第1モジュール61aは、一次側巻線が−5°位相シフトされたZ結線であり、二次側巻線は−15°、0°、15°、30°の位相差を有する結線を含む。
【0070】
第2モジュール61bの一次側巻線は、0°の位相を有するY結線であり、二次側巻線は第1モジュール61aと同じ構造であってもよい。
【0071】
第3モジュール61cは、一次側巻線が5°位相シフトされたZ結線であり、二次側巻線は第1モジュール61aと同じ構造であってもよい。
【0072】
電力セル62は、5レベルの出力電圧を合成してもよい。D1電力セル62aは、電動機3のa相電圧を出力し、E1電力セル62bは、電動機3のb相電圧を出力し、F1電力セル62cは、c相電圧を出力する。図6の電力セル62は、図4の電力セルのように構成されることが好ましい。その詳細な説明は省略する。
【0073】
また、図6において、第1モジュール61a及び第3モジュール61cの一次側巻線をZ結線と、第2モジュール61bの一次側巻線をY結線と例示したが、これに限定されるものではない。また、二次側巻線の構造も図6に示されたものに限定されるのではない。
【0074】
図7は、本発明のさらに他の実施形態に係る移相変圧器が適用された高圧インバータシステムの構成図であり、本発明の移相変圧器71は、高圧インバータ1の内部に含まれる。高圧インバータ1は、三相の入力電源部2から線間電圧実効値が600V以上の三相電源を変換して三相電動機3を駆動する三相電圧を出力する。
【0075】
図7に示したように、本発明の移相変圧器71は、三つのモジュール化された移相変圧器(第1モジュール71a、第2モジュール71b及び第3モジュール71c)を含む。
【0076】
図7の実施形態は、図6の実施形態と移相変圧器と電力セルとの間の連結面で差を示すが、G1電力セル72aの場合、入力電源の四つのうち二つは、第1モジュール71aから受信し、1つは、第2モジュール71bから受信し、残りの一つは、第3モジュール71cから受信する。
【0077】
H1電力セル72bの場合、入力電源四つのうち二つは、第2モジュール71bから、1つは第1モジュール71aから、残りの一つは第3モジュール71cから受信する。
【0078】
I1電力セル72cの場合、入力電源の四つのうち二つは、第3モジュール71cから、1つは、第1モジュール71aから、残りの1つは、第2モジュール71bから受信する。
【0079】
また、図7において、第1モジュール71a及び第3モジュール71cの一次側巻線をZ結線と、第2モジュール71bの一次側巻線をY結線と示したが、これに限定されるものではない。また、二次側巻線の構造も図7に示されたものに限定されるのではない。
【0080】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る移相変圧器が適用された高圧インバータシステムの構成図であり、本発明の移相変圧器81は、高圧インバータ1内部に含まれる。高圧インバータ1は、三相の入力電源部2から線間電圧実効値が600V以上の三相電源を変換して、三相電動機3を駆動する三相電圧を出力する。
【0081】
図8に示したように、本発明の移相変圧器81は、三つのモジュール化された移相変圧器(第1モジュール81a、第2モジュール81b及び第3モジュール81c)を含む。
【0082】
第1モジュール81aは、一次側巻線が、−3.3°位相シフトされたZ結線であり、二次側巻線は、0°、 30°に位相シフトされた結線である。
【0083】
第2モジュール81bは、一次側巻線が0°の位相を有するY結線であり、二次側巻線は、第1モジュール81aと同じ構造である。また、第3モジュール81cの一次側巻線は、3.3°に位相シフトされたZ結線であり、二次側巻線は、第1モジュール81aと同一である。
【0084】
電力セル82は、5レベルの出力電圧を合成することができる。A1、A2、A3電力セル82a〜82cは、電動機3のa相電圧を出力し、B1、B2、B3電力セル82d〜82fは、b相電圧を出力し、C1、C2、C3電力セル82g〜82iは、c相電圧を出力する。
【0085】
図8の電力セル82は、図2の電力セルのように構成されることが好ましい。その詳細な説明は省略する。
【0086】
また、図8において、第1モジュール81a及び第3モジュール81cの一次側巻線をZ結線と、第2モジュール81bの一次側巻線をY結線と示したが、これに限定されるものではない。また、二次側巻線の構造も図8に示されたものに限定されるのではない。
【0087】
図9は、本発明のさらに他の実施形態に係る移相変圧器が適用された高圧インバータシステムの構成図であり、本発明の移相変圧器91は、高圧インバータ1の内部に含まれ、出力した相当たり5段の電力セルを使う場合を示した。高圧インバータ1は、三相の入力電源部2から線間電圧実効値が600V以上の三相電源を変換して、三相電動機3を駆動する三相電圧を出力する。
【0088】
図9に示したように、本発明の移相変圧器81は、5つのモジュール化された移相変圧器(第1モジュール91a、第2モジュール91b、第3モジュール91c、第4モジュール91d及び第5モジュール91e)を含む。
【0089】
第1モジュール91aは、一次側巻線が−4°位相シフトされたZ結線であり、二次側巻線が0°、 30°の位相シフトされた結線である。
【0090】
第2モジュール91bは、一次側巻線が、−2°位相シフトされたY結線であり、二次側巻線は、第1モジュール91aの二次側巻線と同じ構造である。
【0091】
第3モジュール91cは、一次側巻線が0°の位相を有するZ結線であり、二次側巻線は、第1モジュール91aの二次側巻線と同じ構造である。
【0092】
第4モジュール91dは一次側巻線が2°位相シフトされたY結線であり、二次側巻線は第1モジュール91aの二次側巻線と同じ構造である。
【0093】
第5モジュール91eは、一次側巻線が4°位相シフトされたZ結線であり、二次側巻線は第1モジュール91aの二次側巻線と同じ構造である。
【0094】
電力セル92は、5レベルの出力電圧を合成することができる。A1、A2、A3、A4、A5電力セル92a〜92eは、電動機3のa相電圧を出力し、B1、B2、B3、B4、B5電力セル92f〜92jは、b相電圧を出力し、C1、C2、C3、C4、C5の電力セル92k〜92oは、c相電圧を出力する。
【0095】
図9の各電力セル92は2の電力セルのように構成されることが好ましい。その詳細な説明は省略する。
【0096】
また、図9において、第1モジュール91a、第3モジュール91c及び第5モジュール91eの一次側巻線をZ結線と、第2モジュール91b及び第4モジュール91dの一次側巻線をY結線と例示したが、これに限定されるものではない。また、二次側巻線の構造も図9に示されたものに限定されるのではない。
【0097】
本発明は、従来の単一ユニットで構成された移相変圧器をモジュール化しており、図2または、図4のような電力セルを含むマルチレベル高圧インバータで使うものである。
【0098】
本発明において利用される電力セルは、図2または図4のように入力端に三相ダイオード整流器を二つまたは四つ含み、各々のダイオード整流器の出力端には、DCリンクキャパシターを備え、DCリンクキャパシターは、直列連結されて直流部(220又は420)を構成する。
【0099】
各々のDCリンクキャパシターの電圧をEとすると、単位電力セルで出力される線間電圧は2E、E、0、−E、−2Eである。
【0100】
図5乃至図9のように、電力セルは、直列連結されて出力される相電圧を合成し、出力される相電圧と線間電圧のレベルは次によって決められる。
【数3】

【数4】

【0101】
【表4】

【0102】
本発明に係る移相変圧器の二次側巻線の位相シフト角は、数学式1及び数学式2によって決められる。
【0103】
また、本発明の移相変圧器の一次側巻線の位相シフト角は、次のように決められる。
【数5】

【0104】
【表5】

【0105】
【表6】

【0106】
【表7】

【0107】
本発明に係るモジュール型移相変圧器の容量は、従来の単一ユニット型移相変圧器の容量と次のような関係を有する。
【数6】

【0108】
【表8】

【0109】
本発明のモジュール型移相変圧器は、従来の単一ユニット型移相変圧器に比べて容量が小さいため、巻線が占める面積(winding window)が減って、全体体積及び重さが減少する。また、移相変圧器の体積と重さが減少するため、全体システムの大きさ及び体積が減ることになる。
【0110】
【表9】

【0111】
最後に、従来の単一ユニット型移相変圧器は、一次側巻線が故障状態になると全体システムの運転が不可能であるが、本発明のモジュール型移相変圧器によると、移相変圧器の一つのモジュールで一次側巻線が故障状態になると、故障状態のモジュールと連結された電力セルを迂回して出力を低減した状態で連続的な運転が可能となる。
【0112】
但し、図6の構造では、移相変圧器の一つのモジュールの一次側巻線が故障状態になる場合、連続的な運転が不可能である。しかし、これを図7のように変更すると、移相変圧器の一つのモジュールの一次側巻線が故障状態となっても、定常状態の移相変圧器の出力が全電力セルに連結されるため、出力が低減した状態で連続的な運転が可能となる。
【0113】
このような構造上特徴によって、本発明のモジュール型移相変圧器を用いると、全体システムの余裕率(redundancy)が増大するメリットがある。
【0114】
以上から代表的な実施形態をもって本発明について詳細に説明したが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、前述した実施形態に対して本発明の範疇から逸脱しない限り、多様な変形が可能であることを理解しなければならない。従って、本発明の権利範囲は、説明された実施形態に限って定まってはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等物等によって定めるべきである。
【符号の説明】
【0115】
1、110 高圧インバータ
2、120 入力電源部
3、130 電動機
51、61、71,81、91、111 移相変圧器
52、62、72、82、92、112、113 電力セル
210、410 整流部
220、420 直流部
230、430 インバータ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を駆動する複数の電力セルを含むマルチレベル高圧インバータの移相変圧器において、
複数のモジュール化された移相変圧器を含み、
前記複数のモジュール化された移相変圧器の一次側巻線は、所定角度で互いに位相シフトされることを特徴とする、移相変圧器。
【請求項2】
前記モジュール化された移相変圧器の二次側巻線は、所定角度で各々位相シフトされた複数の第1結線及び複数の第2結線を含むことを特徴とする、請求項1に記載の移相変圧器。
【請求項3】
前記第1結線はY結線であり、前記第2結線はΔ結線であることを特徴とする、請求項2に記載の移相変圧器。
【請求項4】
前記複数のモジュール化された移相変圧器のうちいずれか一つは、入力電力として、前記複数の電力セルのうち前記電動機に三相電圧を各々提供する三つの電力セルに、前記第1結線及び前記第2結線の出力を供給することを特徴とする、請求項2または3に記載の移相変圧器。
【請求項5】
前記モジュール化された移相変圧器の二次側巻線は、所定角度で各々位相シフトされた複数の結線を含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の移相変圧器。
【請求項6】
前記モジュール化された移相変圧器のうちいずれか一つは、前記複数の電力セルのうちいずれか一つの電力セルに入力電力を供給することを特徴とする、請求項5に記載の移相変圧器。
【請求項7】
前記電力セルのうちいずれか一つの入力は、前記モジュール化された移相変圧器の複数の結線のいずれか一つからの出力であることを特徴とする、請求項6に記載の移相変圧器。
【請求項8】
前記複数の前記モジュール化された移相変圧器は、前記複数の電力セルのうちいずれか一つの電力セルに入力電力を供給することを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の移相変圧器。
【請求項9】
前記電力セルのうちいずれか一つの入力は、前記複数のモジュール化された移相変圧器からの出力であることを特徴とする、請求項8に記載の移相変圧器。
【請求項10】
【表1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−74789(P2013−74789A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185041(P2012−185041)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【出願人】(593121379)エルエス産電株式会社 (221)
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO., LTD
【Fターム(参考)】