説明

マルチレートクロック信号抽出方法及びマルチレートクロック信号抽出装置

【課題】伝送レートの変更に即座に対応して、変更された伝送レートの光パルス信号からのクロック信号抽出に対応する。
【解決手段】この発明のマルチレートクロック信号抽出装置112は、光パルス圧縮部20と、光変調部50とクロック信号/帰還信号生成部100を具えて構成される。この装置の特徴は、マルチレートクロック信号抽出装置に入力された光パルス信号19のパルスの時間波形の半値幅を調整するためのパルス圧縮部が具えられている点である。光パルス信号の伝送レートが、クロック信号/帰還信号生成部がクロック信号抽出を可能とする伝送レートの設計値と異なり、この伝送レートよりも小さな場合、受信した光パルス信号のパルス幅を圧縮して、パルスの時間波形の半値幅が狭い狭光パルス信号21として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、伝送レートの変更に即座に対応して光パルス信号からクロック信号を抽出するための方法及びこの方法を実現するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信技術の分野において、限られた通信線路資源を有効に利用して、送受信可能なチャンネル数を増やす手段として、光時分割多重通信(OTDM: Optical Time Division Multiplexing)等の多重通信方法が検討されている。OTDMとは、複数チャンネルを多重化して時分割多重信号として送信し、受信側でクロック信号から生成されるゲート信号によって時分割多重信号から個々のチャンネルに分離(以後「ゲーティング」)することにより、個々のチャンネルの情報を個別に取り出して受信する方法を採用した通信である。
【0003】
送受信される時分割多重信号の時間基準を与える信号を、ベースレートクロック信号(「基準クロック信号」と呼称されることもある。)と称する。受信信号から抽出されるクロック信号の周波数は、単位時間に送受信されるビット数を示すビットレートに等しい場合もあるが、その周波数が数分の一に分周された周波数として抽出される場合もある。以後の説明では、特に必要な場合を除いて、混乱が生じない範囲で上記いずれの場合においても、抽出されるクロック信号を単に「クロック信号」と記載する。
【0004】
また、ベースレートクロック信号に対応する周波数をサンプリング周波数、時分割多重信号のビットレートを伝送レートと称し、伝送レートに対応する周波数を伝送レート周波数と称することもある。もちろん、時分割多重信号のビットレートは、単一チャンネルに割り当てられているビットレートに多重したチャンネル数を掛け合わせた値に等しい。
【0005】
ゲーティングする際は、受信した時分割多重信号から抽出されるクロック信号が、分周(多重されたチャンネル数分の一に分周)されてゲート信号として用いられる。したがって、時分割多重されたパルス信号からクロック信号を抽出する技術が必要であり、クロック信号抽出のための装置が数々検討されている。
【0006】
現状では、40 Gbit/sの信号を処理できる電子回路を開発することによって、光学的手段と電気的手段とを組み合わせたOTDMが実現されているが(例えば、非特許文献1参照)、電子回路が処理可能な周波数は40 GHz程度が限界であると指摘されている。伝送レートが40 Gbit/sを超える高速度通信を実現するには、電気的手段と光学的手段とを組み合わせて構成される装置が必要となる。
【0007】
上述の通信速度40 Gbit/sを越える通信速度の光通信システムにおいて、クロック信号の抽出に成功した例が、最近幾つか報告されている(例えば、非特許文献2から4参照)。非特許文献2には、位相同期発振 (PLL: Phase Locked Loop)回路を構成する部分と光変調を実行する部分とを、組み合わせることによって実現されたクロック信号抽出装置が開示されている。光変調を実行する部分には、電界吸収型変調器(EAM: Electro Absorption Modulator)が利用されており、PLL動作は電気回路で実現されている。ここでは、特に、PLL回路に特別な工夫がなされている。
【0008】
以後、電気的に実現されるPLL動作と、光学的に実現される光変調動作とが一体化されたクロック信号抽出装置を、光-電気ハイブリット構成のクロック信号抽出装置と称する。
【0009】
非特許文献2では、1チャンネル当り40 Gbit/sのビットレートの4チャンネル分の信号が光時分割多重されて、160 Gbit/sのRZ(Return to Zero)符号化された光パルス信号として送信された場合に対応する光-電気ハイブリット構成のクロック信号抽出装置を、一例として開示している。光時分割多重信号をゲーティングするサンプリング周波数fsは、伝送レート周波数fの4分の1の周波数に設定されている。すなわちfs=40 GHz、f=160 GHzである。
【0010】
光時分割多重信号は、EAMに入力され、(fs-Δf) GHzの電気信号で変調される。ここで、Δfはオフセット周波数と呼ばれ、40 GHzと比較して十分に小さい周波数値であり、ここでは250 MHzに設定されている。なわち、EAMに光時分割多重信号を入力して、光時分割多重信号の伝送レート周波数f(=160 GHz)の1/4の周波数(=40 GHz)に、低周波数成分(Δf) GHzをミキシングした周波数(fs-Δf) GHzの変調電気信号で変調して、変調光パルス信号を得ている。
【0011】
変調光パルス信号は、O/E(optical-to-electrical)変換されて、透過帯域の中心周波数が(Δf) GHzの4倍である周波数、(4Δf) GHzのバンドパスフィルタによって(4Δf) GHzの周波数電気信号に変換される。このようにして生成された(4Δf) GHzの周波数の電気信号と、基準信号発生器から出力される電気信号を4逓倍して得られた(4Δf) GHzの周波数の電気信号とが位相比較器に入力される。この位相比較器において上記の両者の電気信号の位相が比較され、両者の位相が合致していれば、位相比較器から出力される電気信号が0 Vとなり、位相差の大きさに比例してこの電気信号の電圧が大きくなる。
【0012】
位相比較器から出力される電気信号は、時間的に平均化された強度の電気信号に変換され、電圧制御型発振器(VCO: Voltage Controlled Oscillator)に入力される。そして詳細は後述するが、VCOから出力される電気信号の周波数は、160 Gbit/sのRZ符号化された光時分割多重信号から抽出される周波数(4Δf) GHzの電気信号の位相と、基準信号発生器から出力される電気信号を4逓倍して得られた(4Δf) GHzの周波数の電気信号の位相とが合致するように変化する。このことによって、光時分割多重信号の光時分割多重信号のクロック信号と、この光-電気ハイブリット構成のクロック信号抽出装置から抽出されるクロック信号の位相を同期させるPLL系回路が形成される。
【0013】
また、非特許文献2に開示されたPLL系回路の動作原理の一部については、非特許文献3及び4にも、簡単に説明されている。
【0014】
以上、概略説明したように、非特許文献2に開示されているクロック信号抽出装置の特徴は、高周波数に応答する高速の動作が保障されたO/E変換器を必要としないことである。EAMから出力される変調光パルス信号からは、(4Δf) GHzの周波数成分がO/E変換されて、電気信号が生成されれば良い。すなわち、ここでは、オフセット周波数Δfは250 MHzであるから、4Δf=1 GHzの周波数に応答するO/E変換器を用いればよく、40 GHz以上といった高周波数に応答する高速の動作が保障されたO/E変換器を必要としない。
【0015】
これによって、PLL系回路を構成するために、高い周波数の電気信号を扱うための特別な配慮は要求されず、また、高速動作が保障されたO/E変換器を用いる必要がないという利点がある。また、EAMからO/E変換器までの光ファイバの長さや、O/E変換器から位相比較器までの電線路の長さ等に特別な制限がない。すなわち、非特許文献2に開示されているクロック信号抽出装置の特徴の第2は、装置を構成する光ファイバ等の光部品の配置に関して特段の配慮が必要ない点である。これによって、クロック信号抽出装置の設計がきわめて容易になる。
【非特許文献1】"160 Gbit/s Clock Recovery With Electro-Optical PLL Using a Bidirectionally Operated Electroabsorption Modulator as Phase Comparator", C. Boerner et al., Technical Digest of OFC2003, F3, pp. 670-671, Vol. 2, 2003.
【非特許文献2】「160Gb/sクロック抽出装置の開発」、辻 弘美、他、2003年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会、B-10-115、2003.
【非特許文献3】"Scaleable 80 Gbit/s OTDM using a modular architecture based on EA modulators", H. T. Yamada et al., ECOC 2000 pp. 47-48, Munich, 2000.
【非特許文献4】「EA変調器を用いた20 Gb/s×2光TDM MUX/DEMUXの開発」、山田弘美、他、1999年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会、B-10-50、1999.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述の光-電気ハイブリット構成のクロック信号抽出装置は、クロック信号抽出が可能であるビットレートがただ一通りに固定された、いわば特定のビットレートの光パルス信号に対応する専用装置である。すなわち、例えば、光時分割多重信号のビットレートが、160 Gbit/sであって、抽出するクロック信号の周波数が40 GHzであるというように固定されており、160 Gbit/s以外の伝送レート、例えば伝送レートが80 Gbit/sや40 Gbit/sである光時分割多重信号からは、クロック信号が抽出できない。この理由は、後述するように、光パルス信号を構成する光パルスの時間波形の半値幅が、伝送レートにほぼ反比例して広いことに起因する。
【0017】
これまで敷設されてきた光通信網においては、高速な伝送を可能とするために、伝送路である光ファイバの波長分散補償を行うなどの工夫がなされてきた。ただし、高速な光伝送が可能とされた光通信網においても、設定されている伝送レートよりも低いレートでの光伝送が不可能なわけではない。すなわち、これまでに敷設された光通信網をより効率的に運用するには、伝送レートが異なる信号を、混在させることが可能であるネットワーク(マルチレートクロックのネットワークと称することもある。)を構築することが求められる。
【0018】
マルチレートクロックのネットワークに対応するには、伝送レートの異なる複数の光パルス信号のそれぞれに即座に対応させて、クロック信号を抽出する方法及びこの方法を実現できる装置が必要となる。
【0019】
そこで、この発明の目的は、マルチレートクロックのネットワークにおいて、入力される光パルス信号のクロック周波数(伝送レートを意味する。)に、対応させてクロック信号を抽出する方法及びこの方法を実現できる装置を提供することにある。この発明のクロック信号抽出装置は、単一の伝送レートに特化された装置ではなく、複数の異なる伝送レートの光パルス信号に対応してクロック信号を抽出することが可能であるので、以後、マルチレートクロック信号抽出装置と称することとする。また、このマルチレートクロック信号抽出装置で実行されるクロック信号抽出方法を、マルチレートクロック信号抽出方法と称することとする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の目的を達成するため、この発明のマルチレートクロック信号抽出方法は、光パルス圧縮ステップと、光変調ステップと、クロック信号/帰還信号生成ステップとを含んでいる。光パルス圧縮ステップは、受信した光パルス信号のパルスの時間波形を圧縮して、パルスの時間波形の半値幅が狭い狭光パルス信号として出力するステップである。以後、「光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を圧縮して、パルスの時間波形の半値幅が狭い狭光パルス信号を得る」ことを、単に、「光パルス信号を圧縮して狭光パルス信号を得る」ということもある。
【0021】
光変調ステップは、光変調部に狭光パルス信号を入力して変調して変調光パルス信号として出力するステップである。狭光パルス信号を変調するために光変調部に供給される変調電気信号は、周波数f/Nの電気信号と周波数Δfの電気信号とをミキシングして得られる。ここで、Nは1以上の整数であり、fは狭光パルス信号のクロック周波数である。
【0022】
クロック信号/帰還信号生成ステップは、変調光パルス信号から、周波数f/Nのクロック信号及び変調電気信号を生成するステップである。
【0023】
上述のマルチレートクロック信号抽出方法を実現するための装置として、この発明のマルチレートクロック信号抽出装置は、光パルス圧縮部と、光変調部と、クロック信号/帰還信号生成部とを具えている。光パルス圧縮部は、受信した光パルス信号を圧縮して、狭光パルス信号として出力する。光変調部は、狭光パルス信号を変調光パルス信号として出力する。狭光パルス信号を変調するために、この光変調部に供給される変調電気信号は、周波数f/Nの電気信号と周波数Δfの電気信号とをミキシングするミキサーによって生成される。クロック信号/帰還信号生成部は、変調光パルス信号から、周波数f/Nのクロック信号及び変調電気信号を生成して出力する。
【0024】
光パルス圧縮ステップは、光パルス信号増幅ステップとスペクトル幅拡幅ステップとを含んで構成することができる。また、更にこれらのステップに加えて光フィルタリングステップを含んで構成することが好適である。
【0025】
光パルス信号増幅ステップは、受信した光パルス信号を増幅するステップである。スペクトル幅拡幅ステップは、光パルス信号増幅ステップで増幅された光パルス信号の周波数スペクトル幅を広げるステップである。光フィルタリングステップは、スペクトル幅拡幅ステップで生成された光パルス信号を光バンドパスフィルタでフィルタリングするステップである。
【0026】
光パルス信号増幅ステップは、光増幅器によって実現できる。スペクトル幅拡幅ステップは、非線形光媒質で実現できる。また、光フィルタリングステップは、光バンドパスフィルタで実現できる。
【0027】
また、この発明のマルチレートクロック信号抽出方法において、上記のクロック信号/帰還信号生成ステップを、光電変換ステップと、第1バンドパスステップと、位相比較ステップと、時間平均差成分出力ステップと、周波数電圧制御ステップと、第1分岐ステップと、ミキシングステップと、第2バンドパスステップと、増幅ステップと、基準信号発生ステップと、第2分岐ステップと、周波数逓倍ステップとを含んで構成するのが好適である。
【0028】
光電変換ステップは、変調光パルス信号を入力して、第1電気信号に変換して出力するステップである。第1バンドパスステップは、第1電気信号を入力して、周波数NΔfの電気信号成分のみを選択して第2電気信号として出力するステップである。位相比較ステップは、周波数NΔfの第2電気信号と、基準信号発生器によって発生される周波数Δfの基準電気信号をN逓倍して生成される周波数NΔfの電気信号である第3電気信号の位相とを比較して、両者の差成分を第4電気信号として出力するステップである。時間平均差成分出力ステップは、位相比較ステップにおいて出力される第4電気信号を時間平均して、時間平均差成分である第5電気信号を出力するステップである。周波数電圧制御ステップは、第5電気信号を入力して、周波数f/Nの第6電気信号として出力するステップである。第1分岐ステップは、周波数f/Nの第6電気信号を分岐するステップである。ミキシングステップは、周波数f/Nの第6電気信号と、基準信号発生器によって生成される周波数Δfの第7電気信号とをミキシングして、両者の周波数の和周波もしくは差周波信号である第8電気信号を出力するステップである。第2バンドパスステップは、ミキサーから出力される第8電気信号を入力して、周波数が((f/N)-Δf)の電気信号成分のみを選択して第9電気信号として出力するステップである。増幅ステップは、第2バンドパスフィルタからの出力信号である第9電気信号を増幅して、変調電気信号として光変調部に供給するステップである。基準信号発生ステップは、周波数Δfの第7電気信号を出力するステップである。第2分岐ステップは、基準信号発生器から出力される周波数Δfの第7電気信号を分岐するステップである。周波数逓倍ステップは、基準信号発生器から出力される前記周波数Δfの第7電気信号の周波数を逓倍して出力するステップである。
【0029】
クロック信号/帰還信号生成ステップに、更に、ビットレート検出ステップと、半値幅設定ステップとを含めて構成するのが好適である。
【0030】
ビットレート検出ステップは、第1電気信号から前記狭光パルス信号のビットレートを検出するステップである。半値幅設定ステップは、ビットレート検出ステップで検出されたビットレートに対応して、光パルス信号増幅ステップにおける増幅率を調整することによって、狭光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を設定するステップである。
【0031】
上記のクロック信号/帰還信号生成ステップは、この発明のマルチレートクロック信号抽出装置におけるクロック信号/帰還信号生成部において実現される。クロック信号/帰還信号生成部は、光電変換器と、第1バンドパスフィルタと、位相比較器と、ラグリードフィルタと、周波数電圧制御型発振器と、第1分岐器と、ミキサーと、第2バンドパスフィルタと、増幅器と、基準信号発生器と、第2分岐器と、周波数逓倍器とを具えている。また、これらに加えて、ビットレート検出器と、半値幅調整器とを具えて構成するのが好適である。
【0032】
上述の光電変換ステップは、光電変換器で実現され、第1バンドパスステップは、第1バンドパスフィルタで実現され、位相比較ステップは、位相比較器で実現され、時間平均差成分出力ステップは、ラグリードフィルタで実現され、周波数電圧制御ステップは、周波数電圧制御型発振器で実現され、第1分岐ステップは、第1分岐器で実現され、ミキシングステップは、ミキサーで実現され、第2バンドパスステップは、第2バンドパスフィルタで実現され、増幅ステップは、増幅器で実現され、基準信号発生ステップは、基準信号発生器で実現され、第2分岐ステップは、第2分岐器で実現され、周波数逓倍ステップは、周波数逓倍器で実現され、ビットレート検出ステップは、ビットレート検出器で実現され、半値幅設定ステップは、半値幅調整器で実現される。
【発明の効果】
【0033】
光パルス圧縮ステップと、光変調ステップと、クロック信号/帰還信号生成ステップとを含むこの発明のマルチレートクロック信号抽出方法によれば、光パルス圧縮ステップにおいて、受信した光パルス信号の時間軸上でのパルス幅を狭めることができる。このことによって、受信した光パルス信号の伝送レートが、クロック信号/帰還信号生成部がクロック信号抽出を可能とする伝送レートの設計値より小さな場合には、受信した光パルス信号のパルス幅を圧縮してから、光変調ステップ及びクロック信号/帰還信号生成ステップに引き継げる。従って、マルチレートクロックのネットワークにおいて、入力される光パルス信号の伝送レートが変更されても、クロック信号を抽出することができる。
【0034】
受信した光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を狭めるための光パルス圧縮ステップは、光増幅器と非線形光媒質とを利用することによって次のように実現される。受信した光パルス信号の強度を、光増幅器で増幅する。光増幅器で増幅された、光強度の大きな光パルス信号が非線形光媒質に入力されると、非線形光学効果によって、光パルス信号のスペクトル幅が広がる。このスペクトル幅の広がりの程度は、発現する非線形光学効果の大きさに依存する。非線形光媒質に入力される光パルス信号の光強度が大きな程、大きな非線形光学効果が発現し、その結果スペクトル幅が大きく広がる。
【0035】
すなわち、光増幅器での増幅率を大きくして、非線形光媒質に入力する光パルス信号の強度を強めると、それに応じて非線形光媒質から出力される光パルス信号のスペクトル幅は大きく広がる。それによってこの光パルス信号の時間幅は、スペクトル幅の広がりに反比例して狭く圧縮される。
【0036】
従って、光増幅器の増幅率を制御することで、受信した光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を制御できる。すなわち、受信した光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅の広狭にかかわらず、クロック信号/帰還信号生成部においてクロック信号が抽出可能な値となるように調整できる。こうして、受信した光パルス信号のクロック周波数(伝送レート)に対応させて、光増幅器の増幅率を制御することで、クロック信号を抽出することが可能となる。
【0037】
このように、光増幅器と非線形光媒質とを具えた光パルス圧縮部によれば、受信した光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を制御できる。しかしながら、受信した光パルス信号が非常に微弱であったり、受信した光パルス信号の伝送レートがクロック信号/帰還信号生成部の設計値に対して非常に低かったりした場合には、光増幅器の増幅率をそれに見合っただけ大きくする必要がある。
【0038】
光増幅器の増幅率を大きくすると、光増幅器から出力される光パルス信号の時間波形の主ピークの両端にサブピークが発生し、時間波形が単一のパルス波形から変形した複雑な波形となる。光パルス信号の時間波形がこのように複雑な波形となると、このサブピークの存在によって、クロック信号/帰還信号生成部が正常に動作しないという事態が起こり得る。
【0039】
そこで、このような場合にも、光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を狭めるとともに、サブピークを除去して、クロック信号/帰還信号生成部が正常に動作するように、光パルス信号の時間波形を整形する必要がある。そのために非線形光媒質から出力される光パルス信号をフィルタリングする光バンドパスフィルタによる光フィルタリングステップを設けるのが好適である。
【0040】
光バンドパスフィルタによって、非線形光媒質から出力される光パルス信号のスペクトル成分のうちの一部分(スペクトル周波数曲線の高周波数側あるいは低周波数側のいずれか片方の裾部分)を残して、フィルタリングすることで、光パルス信号の時間波形に現れるサブピークを除去できる。この理由は次のとおりである。
【0041】
すなわち、光パルス信号の時間波形のサブピークは、主ピークに比べてそのエネルギーが小さいので、サブピークのみをフーリエ変換して得られる周波数スペクトルと、主ピークのみをフーリエ変換して得られる周波数スペクトルとを重ねると、サブピークの周波数スペクトルは、主ピークの周波数スペクトルのピーク周波数の近傍のみに存在する。従って、非線形光媒質から出力される光パルス信号のスペクトル波形のピーク部分を除去すれば、サブピークの周波数スペクトル成分はそのほとんどが除去される。従って、光バンドパスフィルタで非線形光媒質から出力される光パルス信号の中心波長を除去すれば、時間波形におけるサブピークを除去することができる。
【0042】
この発明のマルチレートクロック信号抽出方法によれば、上述したように光パルス圧縮ステップにおいて、光パルス信号のパルス幅をクロック抽出のために最適な幅に調整された狭光パルス信号が光変調部に入力される。光変調部では光変調ステップが実行されて、狭光パルス信号が変調されて変調光パルス信号として出力される(光変調ステップ)。変調光パルス信号は、クロック信号/帰還信号生成部に入力されて、クロック信号及び変調電気信号が出力される。従って、この発明のマルチレートクロック信号抽出装置を、マルチレートクロックのネットワークにおいて利用すれば、入力される光パルス信号のクロック周波数(伝送レート周波数)に対応させてクロック信号を抽出することが可能となる。
【0043】
また、この発明のマルチレートクロック信号抽出装置に、更に、ビットレート検出部と、半値幅設定部とを具えて構成することによって、上述の第1電気信号から狭光パルス信号のビットレートを検出することができる。そして、半値幅設定部によって、ビットレート検出ステップで検出されたビットレートに対応して、光パルス信号増幅ステップにおける増幅率を調整し、狭光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を設定することができる。すなわち、受信した光パルス信号からその伝送レートを検出することができるので、光パルス信号の受信に先立って、伝送レートを知らされていなくとも、クロック信号の抽出に最適な時間半値幅に調整するための光増幅器の増幅率を、受信した光パルス信号から知ることができる。これによって、伝送レートの変更に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、図1から図7を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、図1から図3及び図7の各図は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。以下の説明において、特定の機器及び条件等を用いることがあるが、これら機器及び条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。各図において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。また、以下に示す図1及び図7において、光ファイバ等の光パルス信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。またこれら太線及び細線に付された番号及び記号は、それぞれ光パルス信号あるいは電気信号を意味する。
【0045】
以下の説明において、便宜上、クロック信号/帰還信号生成部は、160 Gbit/sの伝送レート用に設計されているものとし、受信する光パルス信号の伝送レートは、160 Gbit/s、80 Gbit/s、40 Gbit/sのいずれかであるものとする。しかしながら、以下の説明は、伝送レートがこれに限定されることなく、同様に成立することは明らかである。
【0046】
<第1実施例>
図1から図6を参照して、この発明の第1実施例であるマルチレートクロック信号抽出装置の構成とその動作原理を説明する。この発明のマルチレートクロック信号抽出装置110は、光パルス圧縮部20と、光変調部50と、クロック信号/帰還信号生成部100を具えて構成される。光変調部50は、EAMを利用して実現されている。
【0047】
この構成の装置と非特許文献2に開示されている装置との相違は、光パルス信号19のパルスの時間波形の半値幅を調整するためのパルス圧縮部20が具えられている点である。光パルス信号19の伝送レートが、上述したクロック信号/帰還信号生成部100がクロック信号抽出を可能とする伝送レートの設計値と異なり、この伝送レートよりも小さな場合、受信した光パルス信号19のパルス幅を圧縮して、パルスの時間波形の半値幅が狭い狭光パルス信号21として出力する。
【0048】
光パルス信号を構成する光パルスの時間波形の半値幅が、伝送レートにほぼ反比例して広い。例えば、40 Gbit/s及び80 Gbit/sである光時分割多重信号を構成する光パルスの時間波形の半値幅は、160 Gbit/sの場合に比較して、それぞれ4倍及び2倍である。、光パルス信号19の伝送レートが、上述の伝送レートの設計値より小さな場合、そのパルス幅が広いことによって、光変調部50から出力される変調光パルス信号51に大きな雑音成分が混入する。その結果、位相比較器56で必要となる位相比較情報(後述する第1電気信号53に含まれる主フーリエ周波数成分に相当する。)がこの大きな雑音に埋まった状態となる。このため、位相比較ステップ終了以降のステップを実行するPLL回路が設計どおり働かず、PLL動作が実現しないことが起こり得る。そのために、ビットレートの小さい光パルス信号からクロック信号を抽出するためには、その光パルスの時間波形の半値幅を圧縮する必要がある。
【0049】
(光パルス圧縮部)
光パルス圧縮部20の構造とその動作について、図2を参照して説明する。光パルス圧縮部20は、光増幅器22、非線形光媒質24を具えて構成されている。そして、光増幅器22の増幅率を調整するために、半値幅調整器40が光増幅器22に接続されている。半値幅調整器40は、例えば、光増幅器22として光ファイバ型光増幅器を利用する場合には、この光増幅器22にポンプ光を供給する装置を指す。そして、半値幅調整器40によって、ポンプ光の強度を調整することで光増幅器22の増幅率を調整することができる。
【0050】
また、光パルス圧縮部20は、更に光バンドパスフィルタ26を具えて構成するのが好適である。
【0051】
光増幅器22は、上述したように受信した光パルス信号11から分岐して得られた光パルス信号19のパルスの時間波形の半値幅が、光パルス圧縮部20において調整されて狭光パルス信号21として出力されるために必要とされる強度に達するように光パルス信号19を増幅する。非線形光媒質24は、光増幅器22で増幅された光パルス信号23のスペクトル幅を広げて、光パルス信号25として出力する。
【0052】
非線形光媒質24としては、非線形光ファイバを利用するのが好適である。光通信における光伝送路は光ファイバで形成されていることから、この光ファイバとの接合の便利さから、他の形態の非線形光媒質を採用するより好都合である。もちろん非線形光媒質としては、非線形光ファイバに限定されることはなく、非線形光学結晶である強誘電体結晶に形成された光導波路等を利用することも可能である。非線形光媒質としていかなる素材を利用するかは、設計的事項に属する。この発明の実施例においては、後述するように、非線形光媒質として非線形光ファイバを利用した。
【0053】
基本的に、光増幅器22と非線形光媒質24とを利用することで、光パルス信号19の周波数スペクトルの幅を広げることが可能である。すなわち、光増幅器22で光パルス信号19を増幅し、光パルス信号19を非線形光媒質24に入力すれば、その周波数スペクトルの幅を広げることが可能である。そして、非線形光媒質24から出力される光パルス信号25のパルスの時間波形の半値幅の値が、クロック信号/帰還信号生成部100においてクロック信号を抽出するために必要とされる半値幅の値以下となっていれば、この光パルス信号25をクロック信号/帰還信号生成部100に入力してクロック信号の抽出を行うことができる。
【0054】
しかしながら、上述したように、受信した光パルス信号19が非常に微弱であったり、受信した光パルス信号19の伝送レートがクロック信号/帰還信号生成部100の設計値に対して非常に低かったりした場合には、非線形光媒質24から出力される光パルス信号25をフィルタリングする、光バンドパスフィルタ26を設けるのが好適である。
【0055】
光バンドパスフィルタ26は、フィルタ中心波長が固定のタイプを用いることも可能であるが、このフィルタ中心波長が可変である波長可変光バンドパスフィルタを利用するのがより便利である。受信した光パルス信号19の強度や、波長、伝送レート等に対応して、光パルス信号25のスペクトル帯域のうちでフィルタリングすべき帯域が異なる場合がある。この場合にも迅速かつ簡便に対応するためには、フィルタ中心波長を変えられる波長可変光バンドパスフィルタを利用するのがよい。
【0056】
波長可変光バンドパスフィルタには、例えば、可変バンドパス光ファイバフィルタ(Fiber Optic Filter Tunable Bandpass Fiber Optic Filters)等の商品名で市販されている(例えば、[平成17年6月25日検索]インターネット<URL: http://www.newport-japan.co.jp/pdf/0257.pdf>参照)。このタイプの波長可変光バンドパスフィルタは、薄膜コーティング干渉フィルタが2つの角度付き光ファイバコリメータの間に位置されており、この干渉フィルタの傾き角をマイクロメータ等によって調整することで波長選択を実現している。
【0057】
(光変調部及びクロック信号/帰還信号生成部)
図1を参照して、光変調部50及びクロック信号/帰還信号生成部100の構成及びその動作について説明する。図1は、この発明のマルチレートクロック信号抽出装置110の、PLL回路を構成する部分と光変調を実行する部分とを中心とした概略的ブロック構成図である。時分割多重信号から個々のチャンネルに分離するゲーティング部14も、マルチレートクロック信号抽出装置110から出力されるクロック信号が使われる場所を示すために、書き加えてある。
【0058】
受信する光パルス信号11は、光分波器12によって分岐されて、一方は光パルス信号19としてマルチレートクロック信号抽出装置110に入力されてクロック信号71が抽出される。もう一方の光パルス信号13はゲーティング部14に入力され、上述のマルチレートクロック信号抽出装置110で抽出されたクロック信号71(ゲーティング信号)によって、チャンネル毎に分岐される。
【0059】
ここでは、一例として、1チャンネル当り40 Gbit/sのビットレートの4チャンネル分の信号が光時分割多重されて、160 Gbit/sのRZ符号化された光パルス信号として送信された場合を想定して、マルチレートクロック信号抽出装置110の構成及びその動作を説明する。すなわち、ゲーティング部14において、160 Gbit/sのRZ符号化された多重信号から、1〜4チャンネルに相当する40 Gbit/sのRZ符号化された光パルス信号が分離されて出力される場合を想定して説明する。
【0060】
光分波器12によって分岐された光パルス信号19は、パルス圧縮部20に入力されて、そのパルスの時間波形の半値幅を圧縮された狭光パルス信号21に変換されて光変調部50を構成するEAMに入力される。EAMには、(40-Δf) GHzの電気信号79が入力されており、この電気信号79によって、狭光パルス信号21が変調される。EAMに入力される周波数(40-Δf) GHzの電気信号は、厳密な正弦波であるが、変調を被る光パルス信号出力は略矩形のパルス形状であるために、この光パルス信号出力は、(40-Δf) GHzのN逓倍の周期の正弦波をフーリエ成分として含む信号となる。ここで、Nは1以上の整数である。
【0061】
以後の説明において、光パルス信号出力がパルス形状である場合において、混乱が生じない範囲で、フーリエ成分を含むことについては言及せずに、主要周波数成分の周波数値を代表値として用いて表現する場合もある。以後、説明する第1電気信号等の電気信号においても、その時間波形が厳密な正弦波ではなく、多数のフーリエ成分を含む場合にも、フーリエ成分を含むことについては言及せずに、主要周波数成分の周波数値を代表値として用いて表現する場合もある。
【0062】
光変調部であるEAMは、次のように動作する。すなわち、EAMに設けられた光導波路を、EAMへの入力光である光パルス信号19が伝播する際に、その導波路の有する吸収係数が、EAMへの入力電気信号である電気信号79の周波数に従って変動する。すなわち、(40-Δf) GHzの周波数で、EAM内に設けられた光導波路を伝播する入力光(光パルス信号19)が変調される。ここで、Δfは、40 GHzと比較して十分に小さい周波数値であり、例えば250 MHz程度の値に設定される。
【0063】
以後、説明の便宜のために、一般にEAMが、入力光に対してこのEAMに入力される電気信号の周波数F Hzで透明になったり不透明になったりする現象に因んで、EAMを、F Hzの透過窓と称することもある。すなわち、上述のEAMは、(40-Δf) GHzの周波数の電気信号79に従って、透明になったり不透明になったりするので、(40-Δf) GHzの透過窓である。
【0064】
光パルス信号19は、EAMに入力されて、160 Gbit/sのRZ符号化された光パルス信号成分のうち、(40-Δf) GHzの透過窓を通過できた成分のみが濾し取られて、変調光パルス信号51として出力される。すなわち、EAMに光パルス信号19を入力して、光パルス信号19のベースレートクロック周波数f(=160 GHz)の1/N(=1/4)の周波数に、低周波数成分Δfをミキシングした周波数(40-Δf) GHzの変調電気信号で変調して、変調光パルス信号51として出力するステップであるので、このステップを光変調ステップと称することもある。
【0065】
変調光パルス信号51は、光パルス信号を電気信号に変換するO/E変換器52に入力されて、第1電気信号53として出力される。すなわち、光電変換器であるO/E変換器52に変調光パルス信号51を入力して、第1電気信号53に変換して出力するステップであるので、このステップを光電変換ステップと称することもある。
【0066】
第1電気信号53は、透過帯域の中心周波数がΔfの4倍である周波数、(4Δf) GHzの第1バンドパスフィルタ54によって、第1電気信号53の有する周波数成分のうち、(4Δf) GHzの周波数成分(主フーリエ周波数成分)だけが濾し取られ、(4Δf) GHzの第2電気信号55が出力される。すなわち、第1バンドパスフィルタ54に第1電気信号53を入力して、周波数ΔfのN逓倍(一般にNは1以上の整数で、ここでは4)の周波数(NΔf)GHzの電気信号のみを選択して第2電気信号55として出力するステップであるので、このステップを第1バンドパスステップと称することもある。
【0067】
第2電気信号55は位相比較器56に入力される。位相比較器56において、第2電気信号55と周波数が(4Δf)GHzの第3電気信号75との位相が比較される。周波数が(4Δf)GHzの第3電気信号75は、周波数Δf GHzの電気信号を出力する基準信号発生器68から出力される電気信号69から生成される電気信号である。すなわち、電気信号69が、パワー分岐器72を介して4逓倍器74に入力され、4逓倍器74で4逓倍されて出力される。第2電気信号55と第3電気信号75との位相が合致していれば、位相比較器56から出力される第4電気信号57は0 Vとなり、また両者の位相に位相差が存在すれば、その大きさに比例して第4電気信号57の電圧が大きくなる。
【0068】
すなわち、位相比較器56を用いて周波数(NΔf)GHzの第2電気信号55と周波数ΔfのN倍の周波数(NΔf)GHzの第3電気信号75との位相を比較して、両電気信号の位相との差成分を出力するステップであるので、このステップを位相比較ステップと称することもある。
【0069】
第4電気信号57は、ラグリードフィルタ58に入力されて、時間的に平均化された強度をもつ第5電気信号59として出力される。すなわち、このステップは、ラグリードフィルタ58を用いて、第2電気信号55と第3電気信号75の位相との差成分を時間平均して、時間平均差成分として出力するステップであるので、このステップを時間平均差成分出力ステップと称することもある。
【0070】
第5電気信号59はVCO 60に入力される。VCO 60は、入力される第5電気信号59の電圧に比例する周波数の電気信号である、第6電気信号61を出力する機能を有している。このため、VCO 60から出力される第6電気信号61の周波数は、160 Gbit/sのRZ符号化された光パルス信号19から抽出される周波数(NΔf)GHzの第2電気信号55の位相と、周波数(NΔf)GHzの第3電気信号75の位相とが合致するように変化する。この理由を以下に説明する。
【0071】
VCO 60は、第5電気信号59が0 Vである場合に出力する周波数(VCO 60の中心周波数)を(f/N)GHzに設定しておけば、第2電気信号55の位相と第3電気信号75の位相とが合致した場合に、周波数が(f/N)GHzの第6電気信号61を出力する。すなわち、第4電気信号59が0 Vとなるためには、変調光パルス信号51と、基準信号発生器68から出力される電気信号69とが同期する必要がある。
【0072】
第2電気信号55は第1電気信号53の有する周波数成分のうち(4Δf) GHzの周波数成分(主フーリエ周波数成分)だけが濾し取られた信号であり、第1電気信号53は変調光パルス信号51がO/E変換器52に入力されて電気信号に変換された信号である。また、変調光パルス信号51は、光パルス信号19のベースレートクロック周波数f(=160GHz)の1/N(=1/4)の周波数に低周波数成分Δfをミキシングした周波数N(40-Δf) GHzで変調されてEAMから出力された信号である。従って、第2電気信号55の位相に同期するとは、VCO 60から出力される第6電気信号61が、光パルス信号19のベースレートクロックの周波数f(=160GHz)の1/N(=1/4)の周波数の電気信号の位相に同期することに相当する。
【0073】
VCO 60から出力される第6電気信号61は、パワー分岐器62によって分岐され、一方はこのPLL系の帰還信号としてミキサー64に入力される。もう一方は抽出されたクロック信号71としてマルチレートクロック信号抽出装置110から出力される。
【0074】
光パルス信号を入力して、この光パルス信号のベースレートクロック周波数fの1/Nの周波数に低周波数成分Δfをミキシングした周波数で変調して、変調光パルス信号として出力するEAMによって構成される部分が光変調部50である。また、この変調光パルス信号を入力して、周波数f/Nのクロック信号、及びこの光パルス信号のベースレートクロック周波数fの1/Nの周波数に低周波数成分Δfをミキシングした周波数の電気信号を出力する部分がクロック信号/帰還信号生成部100である。従って、図1に示すマルチレートクロック信号抽出装置110は、光変調部50であるEAMとクロック信号/帰還信号生成部100とを具えて構成されている。
【0075】
ミキサー64には、VCO 60から出力される第6電気信号61と、パワー分岐器72を介して基準信号発生器68から出力される周波数(Δf)GHzの電気信号である第7電気信号69とが入力される。この結果ミキサー64からは、周波数が(40±nΔf)GHzの複数の電気信号成分が合成された第8電気信号65が出力される。ここで、nは、上述した1以上の整数Nとは独立の1以上の整数である。
【0076】
第8電気信号65は、透過帯域の中心周波数が(40-Δf) GHzである第2バンドパスフィルタ76に入力され、第8電気信号65が有する複数の周波数成分の中から周波数が(40-Δf) GHzの電気信号だけが濾し取られて、第9電気信号77として出力される。周波数が(40-Δf) GHzの電気信号である第9電気信号77は、増幅器78で増幅されて第10電気信号79に変換されて、EAMに入力される。増幅器78は、EAMを透過窓として好適に動作させるために必要に応じて設置されるものであり、必ず設置しなければならないものではない。
【0077】
なお、第10電気信号79は、光変調部50であるEAMに入力される変調信号であるので、変調電気信号ということもある。
【0078】
ここで、EAMから出力される変調光パルス信号51について説明する。EAMは、電圧を印加することによって光の透過率が変化する特性を有する素子である。従って、EAMに入力させる光パルス信号を、EAMに電気信号を印加することによって光強度変調することができる。EAMに印加する電気信号の振幅を大きくすることによって、EAMから出力される変調光パルス信号51を構成する光パルスの半値幅を狭くすることができる。正弦波の振幅を大きく採るためには、増幅器78を設置し、第2バンドパスフィルタ76から出力される電気信号77を増幅して電気信号79として、EAMに入力する構成とするのが一法である。
【0079】
一方、EAMに印加する電気信号は厳密には正弦波であるが、EAMから出力される光パルス信号は非正弦波である。EAMから出力される光パルス信号は正弦波ではなく、変調光パルス信号51となるので、その信号には、(40-Δf) GHzの繰り返し周期成分に加えて、(40-Δf) GHzの逓倍の繰り返し周期成分もフーリエ成分として含まれる。
【0080】
従って、光変調ステップにおいて、EAMに入力される制御信号である第10電気信号79に含まれる(40-Δf) GHzの4逓倍周波数成分である(160-4Δf) GHz成分と、160 Gbit/sのRZ符号化された光パルス信号19の有する160 GHz成分との差周波である(4Δf) GHz成分が抽出されることとなる。すなわち、EAMから出力される変調光パルス信号51には、(4Δf) GHzの変調成分が含まれる。この(4Δf) GHz成分が、O/E変換器52と第1バンドパスフィルタ54とによって、周波数が(4Δf) GHzの第2電気信号55となって、位相比較器56に入力される。
【0081】
一方、周波数が(4Δf)GHzの第3電気信号75も位相比較器56に入力される。位相比較器56において、この周波数が(4Δf) GHz成分の第2電気信号55の位相と周波数が(4Δf)GHzの第3電気信号75の位相とを合わせるように、マルチレートクロック信号抽出装置110の電気回路の構成要素が協働して動作する。このことによって、マルチレートクロック信号抽出装置110への入力信号である光パルス信号19のベースレートクロック信号と、VCO 60から出力される第6電気信号61すなわち、マルチレートクロック信号抽出装置110から抽出されるクロック信号71の位相を同期させるPLL系回路が形成される。
【0082】
(光パルス圧縮部の動作確認シミュレーション)
図3から図6を参照して、光パルス圧縮部20において、光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を調整(光パルス圧縮)できることをシミュレーションによって確かめたので、その結果について説明する。このシミュレーションによって、この発明が解決しようとする課題が解決できることを明らかにする。すなわち、入力される光パルス信号の伝送レート周波数に、即座に対応させてクロック信号を抽出するという課題が解決できることを明らかにする。
【0083】
図3は、シミュレーションに利用する光パルス圧縮の効果測定装置として想定した装置の概略的ブロック構成図である。パルス生成器30によって、擬似光パルス信号31を生成する。ここで、光パルス生成器30から出力される信号は、規則正しい正弦波であり、この信号には特段の情報が載せられていないので、情報が載せられた通常の光パルス信号と区別するため、光パルス信号とせず、擬似光パルス信号と表記する。シミュレーションを必要以上に複雑化することを避けるために、擬似光パルス信号を想定して行ったが、以下に示すシミュレーション結果は、情報を載せた通常の光パルス信号においても同様に成り立つことは明らかである。光パルス信号は、擬似光パルス信号31を構成する光パルス列の光パルスの幾つかが、載せられた情報に応じて欠けているだけであり、その伝送レート(ビットレート)が異なるわけではないからである。
【0084】
擬似光パルス信号31は、光増幅器32によって増幅されて擬似光パルス信号33として出力されて、非線形光媒質34に入力される。光増幅器32には半値幅調整器42を具えたErドープ光ファイバアンプを用いた。光増幅器32の増幅率は、半値幅調整器42によって、ポンプ光の強度を増減することによって調整することができる。半値幅調整器42は、Erドープ光ファイバに入力するポンプ光を発生する半導体レーザと、この半導体レーザの駆動電流を調整するための、電流値可変型電流発生回路とを具えて構成できる。
【0085】
非線形光媒質34としては、モードフィールド(Mode Field)の面積が10μm2、非線形屈折率が2.5×10-202/W、波長分散値が-0.25 ps/nm/km、波長分散スロープが-0 ps/nm2/kmであり、全長が1 kmの光ファイバを用いた。擬似光パルス信号31の波長は、1.55 μmである。
【0086】
非線形光媒質34から出力された擬似光パルス信号35は、図4から図6を参照して説明するように、擬似光パルス信号33と比較してその周波数スペクトル幅が広がっている。擬似光パルス信号35は、上述した光バンドパスフィルタ36によってフィルタリングされて、擬似光パルス信号37として出力される。擬似光パルス信号37は、その周波数スペクトル波形のピークに対して高周波数側の周波数成分が、光バンドパスフィルタ36によってフィルタリングされている。
【0087】
擬似光パルス信号37の時間波形及び周波数スペクトルは、測定器38で観測した。また、擬似光パルス信号31、35及び37の周波数スペクトルについても、それぞれの信号が伝播している光伝送路から分岐して測定器(図示省略)によって観測した。また、擬似光パルス信号33の時間波形についても、擬似光パルス信号33が伝播している光伝送路から一部分岐して測定器(図示省略)によって観測した。
【0088】
図4(A)、(B)及び(C)を参照して、擬似光パルス信号31の伝送レート(ビットレート)が80 Gbit/sである場合のシミュレーション結果を説明する。図4(A)は、光増幅器32から出力された擬似光パルス信号33の時間波形を示す図である。擬似光パルス信号33の強度は22 dBmであった。図4(B)は、光バンドパスフィルタ36から出力された擬似光パルス信号37の時間波形である。図4(A)及び(B)において、横軸は時間をps単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度をmW単位で目盛って示してある。また、光バンドパスフィルタ36の透過バンド幅は、1.5 nmであり、透過中心波長は、1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定した。
【0089】
図4(A)に示すように、光増幅器32から出力された擬似光パルス信号33のパルスの時間波形の半値幅は5 psである。一方。図4(B)に示すように、光バンドパスフィルタ36から出力された擬似光パルス信号37のパルスの時間波形の半値幅は2.5 psである。このように、光増幅器32及び非線形光媒質34である光ファイバを上述のような条件に設定して用いることによって、パルスの時間波形の半値幅が5 psである擬似光パルス信号を、そのパルスの時間波形の半値幅が半分である2.5 psの擬似光パルス信号に変換することができることが確かめられた。
【0090】
このシミュレーション結果が得られた要因が上述したように、非線形光媒質34による周波数スペクトル幅の拡大、及び光バンドパスフィルタ36によるフィルタリングによるものであることを確かめるために、擬似光パルス信号31、35及び37の周波数スペクトルを観測した。その結果を図4(C)に示す。図4(C)の横軸は、波長1.55μmに対応する周波数を0としてGHz単位で目盛って示してある。一点破線で擬似光パルス信号31の周波数スペクトルを、破線で擬似光パルス信号35の周波数スペクトルを、実線で擬似光パルス信号37の周波数スペクトルを、それぞれ示している。
【0091】
擬似光パルス信号31の周波数スペクトルは、そのパルスの時間波形の半値幅が5 psであることに対応して、横軸上で-250 GHzから250 GHzにわたっている。それに対して、擬似光パルス信号33が非線形光媒質34である光ファイバを通過することによって非線形光学効果が発現し、その結果周波数スペクトルが広くなって出力された擬似光パルス信号35の周波数スペクトルは、横軸上で-750 GHzから750 GHzにわたっており、擬似光パルス信号31の周波数スペクトルよりその幅が広い。
【0092】
擬似光パルス信号31の周波数スペクトルに比べて、擬似光パルス信号35の周波数スペクトルが広くなっていることから、擬似光パルス信号35のパルスの時間波形の半値幅は、擬似光パルス信号31のパルスの時間波形の半値幅より狭まっている。すなわち、擬似光パルス信号31のパルスの時間波形の半値幅は、非線形光媒質34によって狭められて、擬似光パルス信号35として出力される。従って、受信した光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を狭めるという当初の目的は、非線形光媒質34によって、実現される。
【0093】
更に、非線形光媒質34から出力される擬似光パルス信号35の時間波形の形状を、サブピーク成分をほとんど含まない理想的な形状とするために、光バンドパスフィルタ36によって、フィルタリングを行った。光バンドパスフィルタ36によるフィルタリングの効果について、図4(C)を参照して説明する。
【0094】
擬似光パルス信号35は、光バンドパスフィルタ36に入力されて擬似光パルス信号37に変換されて出力される。光バンドパスフィルタ36の透過バンド幅は、1.5 nmであり、透過中心波長は、1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定されているので、図4(C)に実線で示した擬似光パルス信号37の周波数スペクトルの形状は、高周波数側の強度が減少して、中心周波数(0 GHz)に対して非対称の形になっている。すなわち、中心周波数(0 GHz)の信号成分が、擬似光パルス信号35の周波数スペクトルと比較して大きく減少していることが分かる。
【0095】
このように、光バンドパスフィルタ36の透過中心波長を1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定することによって、擬似光パルス信号35の時間波形に現れる雑音成分を効果的に遮断することができる。その結果図4(B)に示すように、時間波形に現れる雑音成分の小さな擬似光パルス信号37(狭光パルス信号に対応する。)が得られている。
【0096】
以上説明したように、80 Gbit/sの光パルス信号を受信した場合でも、そのパルスの時間波形の半値幅は、光パルス圧縮部20によって、160 Gbit/sの光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅と同程度の値である、2.5 psとなっている。そのため、EAMに入力される狭光パルス信号21を構成する光パルスの時間波形の半値幅が十分に狭いことによって、EAMから出力される変調光パルス信号51には、周波数がΔf、2Δf、4Δfの主要信号以外の、フーリエ成分がノイズとしてほとんど含まれていない。
【0097】
従って、仮に、クロック信号/帰還信号生成部100が、160 Gbit/sの光パルス信号からクロック信号を抽出できるように設計されている場合であっても、80 Gbit/sの光パルス信号を光パルス圧縮部20によって狭光パルス信号に変換してクロック信号/帰還信号生成部100に入力すれば、クロック信号/帰還信号生成部100の回路部分を全く変更することなく、40 GHzの基準クロック信号を抽出することができる。
【0098】
すなわち、80 Gbit/sの光パルス信号に対して、第1バンドパスフィルタ54からオフセット周波数Δfの4逓倍成分4Δfに等しい電気信号(第2電気信号55)が効率よく抽出され、位相比較器56によって、基準信号発生器68が出力するオフセット周波数Δfの4逓倍成分4Δfに対する位相比較ステップが実行される。このようにクロック信号/帰還信号生成部100においてPLL動作が行われ、40 GHzの基準クロック信号が抽出される。
【0099】
次に、図5(A)、(B)及び(C)を参照して、擬似光パルス信号31の伝送レート(ビットレート)が40 Gbit/sである場合のシミュレーション結果(その1)を説明する。図5(A)は、光増幅器32から出力された擬似光パルス信号33の時間波形を示す図である。擬似光パルス信号33の強度は26 dBmであった。図5(B)は、光バンドパスフィルタ36から出力された擬似光パルス信号37の時間波形である。図5(A)及び(B)において、横軸は時間をps単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度をmW単位で目盛って示してある。また、光バンドパスフィルタ36の透過バンド幅は、1.5 nmであり、透過中心波長は、1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定した。
【0100】
図5(A)に示すように、光増幅器32から出力された擬似光パルス信号33のパルスの時間波形の半値幅は10 psである。一方。図5(B)に示すように、光バンドパスフィルタ36から出力された擬似光パルス信号37のパルスの時間波形の半値幅は4 psである。このように、光増幅器32及び非線形光媒質34である光ファイバを上述のような条件に設定して用いることによって、パルスの時間波形の半値幅が10 psである擬似光パルス信号を、そのパルスの時間波形の半値幅が2/5である4 psの擬似光パルス信号に変換することができることが確かめられた。
【0101】
上記の80 Gbit/sの場合のシミュレーションと同様に、擬似光パルス信号31、35及び37の周波数スペクトルを観測した。その結果を図5(C)に示す。図5(C)の横軸は、波長1.55μmに対応する周波数を0としてGHz単位で目盛って示してある。一点破線で擬似光パルス信号31の周波数スペクトルを、破線で擬似光パルス信号35の周波数スペクトルを、実線で擬似光パルス信号37の周波数スペクトルを、それぞれ示している。
【0102】
擬似光パルス信号31の周波数スペクトルは、そのパルスの時間波形の半値幅が10 psであることに対応して、横軸上で-125 GHzから125 GHzにわたっている。それに対して、擬似光パルス信号33が非線形光媒質34である光ファイバを通過することによって非線形光学効果が発現し、その結果周波数スペクトルが広くなって出力された擬似光パルス信号35の周波数スペクトルは、横軸上で-650 GHzから650 GHzにわたっており、擬似光パルス信号31の周波数スペクトルよりその幅が広い。
【0103】
擬似光パルス信号31の周波数スペクトルに比べて、擬似光パルス信号35の周波数スペクトルはその幅が広くなっていることから、擬似光パルス信号35のパルスの時間波形の半値幅は、擬似光パルス信号31のパルスの時間波形の半値幅より狭まっている。すなわち、擬似光パルス信号31のパルスの時間波形の半値幅は、非線形光媒質34によって狭められて、擬似光パルス信号35として出力される。従って、この場合も、受信した光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を狭めるという当初の目的は、非線形光媒質34によって、実現されることが分かる。
【0104】
更に、非線形光媒質34から出力される擬似光パルス信号35の時間波形の形状を、サブピーク成分をほとんど含まない理想的な形状とするために、光バンドパスフィルタ36によって、フィルタリングを行った。光バンドパスフィルタ36によるフィルタリングの効果について、図5(C)を参照して説明する。
【0105】
光バンドパスフィルタ36の透過バンド幅は、1.5 nmであり、透過中心波長は、1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定されているので、図5(C)に実線で示した擬似光パルス信号37の周波数スペクトルの形状は、高周波数側の強度が減少して、中心周波数(0 GHz)に対して非対称の形になっている。すなわち、中心周波数(0 GHz)の信号成分が擬似光パルス信号35の周波数スペクトルと比較して大きく減少していることが分かる。
【0106】
このように、光バンドパスフィルタ36の透過中心波長を1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定することによって、擬似光パルス信号35の時間波形に現れる雑音成分を効果的に遮断することができる。その結果図5(B)に示すように、時間波形に現れる雑音成分の小さな擬似光パルス信号37(狭光パルス信号に対応する。)が得られている。
【0107】
以上説明したように、40 Gbit/sの光パルス信号を受信した場合でも、そのパルスの時間波形の半値幅は、光パルス圧縮部20によって、160 Gbit/sの光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅よりは幅広であるが、同程度の値である4 psとなっている。そのため、EAMに入力される狭光パルス信号21を構成する光パルスの時間波形の半値幅が十分に狭いことによって、EAMから出力される変調光パルス信号51には、周波数がΔf、2Δf、4Δfの主要信号以外のフーリエ成分が、ノイズとしてほとんど含まれていない。従って、仮に、クロック信号/帰還信号生成部100が、160 Gbit/sの光パルス信号からクロック信号を抽出できるように設計されている場合であっても、40 Gbit/sの光パルス信号を光パルス圧縮部20によって狭光パルス信号に変換してクロック信号/帰還信号生成部100に入力すれば、40 GHzの基準クロック信号を抽出することができる。
【0108】
すなわち、40 Gbit/sの光パルス信号に対して、第1バンドパスフィルタ54からオフセット周波数Δfの4逓倍成分4Δfに等しい電気信号(第2電気信号55)が効率よく抽出され、位相比較器56によって、基準信号発生器68が出力するオフセット周波数Δfの4逓倍成分4Δfに対する位相比較ステップが実行される。このようにクロック信号/帰還信号生成部100においてPLL動作が行われ、40 GHzの基準クロック信号が抽出される。
【0109】
次に、図6(A)、(B)及び(C)を参照して、擬似光パルス信号31の伝送レート(ビットレート)が40 Gbit/sである場合のシミュレーション結果(その2)を説明する。上述の図5に示したシミュレーション(その1)との相違点は、光増幅器32の増幅率が異なる点である。これによって、以下に説明するように、擬似光パルス信号35のパルスの時間波形の半値幅がより狭く圧縮される。また、これに対応して擬似光パルス信号35の周波数スペクトルの幅がより一層広くなるので、それだけ光バンドパスフィルタ36の役割が重要となる。
【0110】
図6(A)は、光増幅器32から出力された擬似光パルス信号33の時間波形を示す図である。擬似光パルス信号33の強度は29 dBmであった。図6(B)は、光バンドパスフィルタ36から出力された擬似光パルス信号37の時間波形である。図6(A)及び(B)において、横軸は時間をps単位で目盛って示してあり、縦軸は光強度をmW単位で目盛って示してある。また、上記のシミュレーションと同様に、光バンドパスフィルタ36の透過バンド幅は、1.5 nmであり、透過中心波長は、1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定した。
【0111】
図6(A)に示すように、光増幅器32から出力された擬似光パルス信号33のパルスの時間波形の半値幅は10 psである。これは、図5(A)、(B)及び(C)を参照して説明したシミュレーションと同様に、擬似光パルス信号31のビットレートが40 Gbit/sと等しいので、擬似光パルス信号33のパルスの時間波形の半値幅も等しくなっている。
【0112】
一方、図6(B)に示すように、光バンドパスフィルタ36から出力された擬似光パルス信号37のパルスの時間波形の半値幅は3.5 psである。このように、光増幅器32及び非線形光媒質34である光ファイバを上述のような条件に設定して用いることによって、パルスの時間波形の半値幅が10 psである擬似光パルス信号を、そのパルスの時間波形の半値幅が3.5/10である3.5 psの擬似光パルス信号に変換することができることが確かめられた。上述のシミュレーションその1の場合に比べて、擬似光パルス信号37の半値幅が4 psに対して3.5 psとより狭くなっているのは、光増幅器32における増幅率が大きいためである。
【0113】
次に、擬似光パルス信号31、35及び37の周波数スペクトルを観測した。その結果を図6(C)に示す。図6(C)の横軸は、波長1.55μmに対応する周波数を0としてGHz単位で目盛って示してある。一点破線で擬似光パルス信号31の周波数スペクトルを、破線で擬似光パルス信号35の周波数スペクトルを、実線で擬似光パルス信号37の周波数スペクトルを、それぞれ示している。
【0114】
擬似光パルス信号31の周波数スペクトルは、そのパルスの時間波形の半値幅が10 psであることに対応して、横軸上で-125 GHzから125 GHzの範囲にわたっている。それに対して、擬似光パルス信号33が非線形光媒質34である光ファイバを通過することによって非線形光学効果が発現し、その結果周波数スペクトルが広くなって出力された擬似光パルス信号35の周波数スペクトルは、横軸上で-1000 GHzから1000 GHzにわたっており、その幅が広い。
【0115】
擬似光パルス信号35は、光バンドパスフィルタ36に入力されて擬似光パルス信号37に変換されて出力される。光バンドパスフィルタ36の透過バンド幅は、1.5 nmであり、透過中心波長は、1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定されているので、図6(C)に実線で示した擬似光パルス信号37の周波数スペクトルの形状は、高周波数側の強度が減少して、中心周波数(0 GHz)に対して非対称の形になっている。すなわち、中心周波数(0 GHz)の信号成分が擬似光パルス信号35の周波数スペクトルと比較して大きく減少していることが分かる。
【0116】
このように、光バンドパスフィルタ36の透過中心波長を1.55 μmから3.6 nm短波長である1.5464μmに設定することによって、擬似光パルス信号35の時間波形に現れる雑音成分を効果的に遮断することができる。その結果図6(B)に示すように、時間波形に現れる雑音成分の小さな擬似光パルス信号37(狭光パルス信号に対応する。)が得られている。
【0117】
以上説明したように、40 Gbit/sの光パルス信号を受信した場合でも、そのパルスの時間波形の半値幅は、光パルス圧縮部20によって、160 Gbit/sの光パルス信号の時間波形の半値幅に近い、3.5 psとなっている。そのため、EAMに入力される狭光パルス信号21を構成する光パルスの時間波形の半値幅が十分に狭いことによって、EAMから出力される変調光パルス信号51には、周波数がΔf、2Δf、4Δfである主要信号以外の、フーリエ成分がノイズとしてほとんど含まれていない。従って、仮に、クロック信号/帰還信号生成部100が、160 Gbit/sの光パルス信号からクロック信号を抽出できるように設計されている場合であっても、40 Gbit/sの光パルス信号を光パルス圧縮部20によって狭光パルス信号に変換してクロック信号/帰還信号生成部100に入力すれば、40 GHzの基準クロック信号を抽出することができる。
【0118】
すなわち、40 Gbit/sの光パルス信号に対して、第1バンドパスフィルタ54からオフセット周波数Δfの4逓倍成分4Δfに等しい電気信号(第2電気信号55)が効率よく抽出され、位相比較器56によって、基準信号発生器68が出力するオフセット周波数Δfの4逓倍成分4Δfに対する位相比較ステップが実行される。このようにクロック信号/帰還信号生成部100においてPLL動作が行われ、40 GHzの基準クロック信号が抽出される。
【0119】
受信した光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を狭めるためには、光パルス信号強度を光増幅器で増幅する必要がある。そしてこの増幅率が大きいほど、半値幅をより一層狭めることが可能となる。この場合、非線形光媒質から出力される光パルス信号をフィルタリングする光バンドパスフィルタの役割が一層重要となる。
【0120】
以上説明したように、この発明の第1実施例のマルチレートクロック信号抽出装置によれば、ビットレートが40 Gbit/s、80 Gbit/s及び160 Gbit/sであるいずれの光パルス信号であっても、パルス圧縮部20において、光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を、160 Gbit/sの光パルス信号と等しく変換することが可能である。すなわち、パルス圧縮部20に具えられる光増幅器22の増幅率を調整するだけで、ビットレートが40 Gbit/s、80 Gbit/s及び160 Gbit/sであるいずれの光パルス信号を受信しても対処できる。
【0121】
従って、伝送レートが160 Gbit/sである光パルス信号から40 GHzの基準クロック信号を抽出するのに最適な設計がなされた光変調部50であるEAM及びクロック信号/帰還信号生成部100を共通に利用して、ビットレートが40 Gbit/sあるいは80 Gbit/sである光パルス信号から40 GHzの基準クロック信号を抽出することができる。すなわち、光変調部及びクロック信号/帰還信号生成部を具えたクロック信号抽出装置に光パルス圧縮部を加えることによってマルチレートクロック信号抽出装置が実現する。
【0122】
<第2実施例>
図7を参照して、この発明の第2実施例であるマルチレートクロック信号抽出装置の構成とその動作原理を説明する。
【0123】
第2実施例のマルチレートクロック信号抽出装置114は、第1実施例のマルチレートクロック信号抽出装置110のクロック信号/帰還信号生成部100に換えてクロック信号/帰還信号生成部102が用いられる点が相違する点である。クロック信号/帰還信号生成部102には、クロック信号/帰還信号生成部100には具えられていない、ビットレート検出部80が具えられている。
【0124】
第2実施例のマルチレートクロック信号抽出装置114は、ビットレート検出部80を除いて、第1実施例のマルチレートクロック信号抽出装置と、同一の構造であるので、両者に共通する構成分についての説明は繰り返さない。
【0125】
ビットレート検出部80は、第1バンドパスフィルタ82、第1パワー測定器84、第2バンドパスフィルタ86、第2パワー測定器88、第3バンドパスフィルタ90及び第3パワー測定器92を具えて構成される。O/E変換器52から出力される第1電気信号53が、パワー分岐器94及び96によってその強度が3分割されて、それぞれ第1バンドパスフィルタ82、第2バンドパスフィルタ86及び第3バンドパスフィルタ90に入力される。
【0126】
第1バンドパスフィルタ82の通過中心周波数は、オフセット周波数Δfの4逓倍成分である周波数4Δfである。第2バンドパスフィルタ86の通過中心周波数は、オフセット周波数Δfの2逓倍成分である周波数2Δfである。また、第3バンドパスフィルタ90の通過中心周波数は、オフセット周波数に等しいΔfである。そして、第1バンドパスフィルタ82、第2バンドパスフィルタ86及び第3バンドパスフィルタ90から出力されるそれぞれの出力は、それぞれ第1パワー測定器84、第2パワー測定器88及び第3パワー測定器92に入力されて、その強度が測定される。
【0127】
受信した光パルス信号11の伝送レートが160 Gbit/sである場合は、光パルス圧縮部20で光パルスの時間幅を調整されることなく、光変調部50であるEAMに入力され、EAMで160 Gbit/sのRZ符号化された光パルス信号成分のうち、(40-Δf) GHzの透過窓を通過できた成分のみが濾し取られて、変調光パルス信号51として出力される。変調光パルス信号51には、そのスペクトル成分である周波数がΔf、2Δf、4Δf等の周波数スペクトル成分が含まれており、光パルス信号11の伝送レートが160 Gbit/sであった場合は、このうち周波数が4Δfである周波数スペクトル成分を最も強く含んでいる。同様に光パルス信号11の伝送レートが80 Gbit/sあるいは40 Gbit/sであった場合は、変調光パルス信号51に含まれている周波数スペクトル成分のうち、周波数がそれぞれ2Δf及びΔfである周波数スペクトル成分を最も強く含んでいる。
【0128】
上述したように、受信した光パルス信号11の伝送レートが160 Gbit/sであった場合は、変調光パルス信号51の周波数スペクトル成分は、80 Gbit/sあるいは40 Gbit/sであった場合と比較して、周波数が4Δfである成分の強度が最も大きい。従って、O/E変換器52から出力される第1電気信号53のスペクトル成分においても、周波数が4Δfであるスペクトル成分の強度が最も大きい。このため、第1電気信号53が強度分割されて、第1バンドパスフィルタ82、第2バンドパスフィルタ86及び第3バンドパスフィルタ90に入力されると、通過中心周波数が4Δfである第1バンドパスフィルタ82から最も強い信号が出力される。すなわち、第1パワー測定器84において、最も強い信号が検出される。
【0129】
上述したように、受信した光パルス信号11の伝送レートが160 Gbit/sであった場合は、O/E変換器52から出力される第1電気信号53は、そのスペクトル成分のうち周波数が4Δfである成分を強く含んでいる。そして、第1電気信号53は、パワー分岐器94を介して第1バンドパスフィルタ82に入力されて第2電気信号55として出力され、パワー分岐器98を介して位相比較器56に入力される。
【0130】
また、受信した光パルス信号11の伝送レートが80 Gbit/sである場合は、第1電気信号53は、そのスペクトル成分のうち周波数が2Δfである成分を最も強く含んでいる。このため、通過中心周波数が2Δfである第2バンドパスフィルタ86から最も強い信号が出力さる。すなわち、第2パワー測定器88において、最も強い信号が検出される。同様に、受信した光パルス信号11の伝送レートが40 Gbit/sである場合は、第1電気信号53は、そのスペクトル成分のうち周波数がΔfである成分を最も強く含んでいる。このため、通過中心周波数がΔfである第3バンドパスフィルタ90から最も強い信号が出力さる。すなわち、第3パワー測定器92において、最も強い信号が検出される。
【0131】
そして、受信した光パルス信号11の伝送レートが80 Gbit/sあるいは40 Gbit/sのいずれの場合にも、第1電気信号53は、パワー分岐器94を介して第1バンドパスフィルタ82に入力されて第2電気信号55として出力され、パワー分岐器98を介して位相比較器56に入力される。すなわち、受信した光パルス信号11の伝送レートが160 Gbit/s、80 Gbit/s、40 Gbit/sのいずれの場合であっても、クロック信号/帰還信号生成部102の回路を全く変更することなく、クロック信号の抽出が行える。
【0132】
以上説明したように、第1パワー測定器84、第2パワー測定器88、第3パワー測定器92によって、通過中心周波数が4Δfである第1バンドパスフィルタ82、通過中心周波数が2Δfである第2バンドパスフィルタ86及び通過中心周波数がΔfである第3バンドパスフィルタ90のうち、いずれのバンドパスフィルタから最も強い電気信号が出力されているかを知ることができる。すなわち、ビットレート検出部80において、受信した光パルス信号の伝送レートを検出することができる。
【0133】
上述のビットレート検出部80において、具体的にビットレート検出ステップを実行するためには、例えば、次のように行う。
【0134】
まず、ビットレートが160 Gbit/sである擬似光パルス信号を、光分波器12を介してマルチレートクロック信号抽出装置114に入力する。そして、第1パワー測定器84によって測定される信号強度が最大となるように、光パルス圧縮部20に具えられている光増幅器22の増幅率を調整する。そのときの光増幅器22の増幅率をγ1とする。
【0135】
光増幅器22の増幅率をγ1に設定して、ビットレートが160 Gbit/sである擬似光パルス信号を、光分光器12を介して、マルチレートクロック信号抽出装置114に入力し、第1パワー測定器84によって測定される信号強度を読み取る。この信号強度をP1とする。次にビットレートが80 Gbit/sである擬似光パルス信号を、光分波器12を介してマルチレートクロック信号抽出装置114に入力して、第2パワー測定器88によって測定される信号強度を読み取る。この信号強度をP2とする。更に、ビットレートが40 Gbit/sである擬似光パルス信号を、光分波器12を介してマルチレートクロック信号抽出装置114に入力して、第3パワー測定器92によって、測定される信号強度を読み取る。この信号強度をP3とする。これらの強度信号の値P1、 P2及びP3を初期値として設定する。
【0136】
次に、ビットレートが80 Gbit/sである擬似光パルス信号を、光分波器12を介してマルチレートクロック信号抽出装置114に入力する。そして、第1パワー測定器84によって測定される信号強度が最大となるように、光パルス圧縮部20に具えられている光増幅器22の増幅率を調整する。そのときの光増幅器22の増幅率をγ2とする。第1パワー測定器84によって測定される信号強度が最大となるとは、光増幅器22の増幅率を増大させても、信号強度の増大が見られなくなる信号強度に達したことを意味する。
【0137】
最後に、ビットレートが40 Gbit/sである擬似光パルス信号を、光分波器12を介してマルチレートクロック信号抽出装置114に入力する。そして、第1パワー測定器84によって測定される信号強度が最大となるように、光パルス圧縮部20に具えられている光増幅器22の増幅率を調整する。そのときの光増幅器22の増幅率をγ3とする。測定される信号強度が最大となるとの意味は、上述の場合と同様である。
【0138】
マルチレートクロック信号抽出装置114の初期化作業として、以上の作業を行う。すなわち、上述した強度信号の値P1、 P2及びP3、及び光増幅器22の増幅率γ1、γ2及びγ3を確定させる。
【0139】
未知のビットレートである光パルス信号を受信した場合に、光増幅器22の増幅率をγ1に設定して、第1パワー測定器84としてP1meas、第2パワー測定器88として、P2meas、第3パワー測定器88として、P3meas、をモニターしながら、第1パワー測定器84から読みとったパワーP1measと初期値P1の比をとり、1に近ければ、ビットレートが160 Gbit/sの光パルス信号が入力されていると判断する。この比が1よりも小さければ第2パワー測定器88から読み取ったパワーP2measと初期値P2との比をとり、この比が1に近ければ、ビットレートが80 Gbit/sの光パルス信号が入力されていると判断する。この比が1よりも小さければ第3パワー測定器92から読み取ったパワーP3measと初期値P3との比をとり、この比が1に近ければ、ビットレートが80 Gbit/sの光パルス信号が入力されていると判断する。
【0140】
上述のビットレートの判断結果に応じて、光増幅器22の増幅率を160 Gbit/s、80 Gbit/s、40 Gbit/sの順に、γ1、γ2及びγ3と変化させる。
【0141】
このようにして、増幅率を決めた後、第1パワー測定器84の読みを、Pinisialとして設定する。その後、常に、第1パワー測定器84の読みとPinisialとを比較して、第1パワー測定器84が示す値に変動があれば、光パルス信号11の伝送レートが変わったものと判断することができる。このように、伝送レートが変った場合には、光増幅器22の増幅率をγ1に設定して、上述のビットレートの判定作業を繰り返す。
【0142】
以上説明したように、ビットレート検出部80を設けることによって、ビットレート検出ステップで検出された伝送レートに対応して、光パルス信号増幅ステップにおける増幅率を調整することが可能となる。そして、狭光パルス信号21のパルスの時間波形の半値幅を、伝送レートに応じて設定することができ、半値幅設定ステップを実行できる。
【0143】
すなわち、上述したように、第1パワー測定器84、第2パワー測定器88、第3パワー測定器92をモニターすることによって、受信した光パルス信号からその伝送レートを検出することができる。従って、光パルス信号の受信に先立って、伝送レートを知らされていなくとも、クロック信号の抽出に最適なパルスの時間波形の半値幅に調整するための光増幅器の増幅率を、受信光パルス信号から知ることができる。これによって、受信した光パルス信号の伝送レートに応じて光増幅器22の増幅率を調整するだけで、伝送レートの変更にすばやく対応できる。
【0144】
以上説明したように、初期設定として、まず、受信する光パルス信号の伝送レートに応じて、それぞれに最適な光増幅器22の増幅率γ1、γ2及びγ3を確定する作業が行われる。そして、増幅率γ1の場合にモニターされる各伝送レートの光パルス信号を入力した場合のモニター値を初期値として設定しておく。次に、ビットレート検出ステップとして、光増幅器22の増幅率をγ1に設定された状態で、実際に光パルス信号11が受信され、第1パワー測定器84、第2パワー測定器88、第3パワー測定器92がモニターされつつ、初期値との比較がなされ、受信された光パルス信号の伝送レートが感知される。この伝送レートの判定結果に応じて、光増幅器22の増幅率をγ1、γ2あるいはγ3と設定する。
【0145】
また、受信中に光パルス信号の伝送レートが変化した場合に対応するために、常時第1パワー測定器84をモニターし、この測定器が検出している信号強度に変化が現れたら、光増幅器22の増幅率をγ1に設定して、ビットレート検出ステップを実行し、現在受信している光パルス信号の伝送レートを検出して、このの伝送レートに最も適切な値に、光増幅器22の増幅率を設定するという作業が行われる。
【0146】
これらビットレート検出ステップは、この発明のマルチレートクロック抽出装置114を操作している装置管理者が行っても良いし、上述のビットレート検出ステップを実現するための作業の全部またはその一部をコンピュータによる自動制御によって行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】第1実施例のマルチレートクロック信号抽出装置の概略的ブロック構成図である。
【図2】パルス圧縮部の概略的ブロック構成図である。
【図3】光パルス圧縮の効果測定装置の概略的ブロック構成図である。
【図4】80 Gbit/s信号に対するパルス圧縮の効果を示す図である。
【図5】40 Gbit/s信号に対するパルス圧縮の効果を示す図(その1)である。
【図6】40 Gbit/s信号に対するパルス圧縮の効果を示す図(その2)である。
【図7】第2実施例のマルチレートクロック信号抽出装置の概略的ブロック構成図である。
【符号の説明】
【0148】
12:光分波器
14:ゲーティング部
20:光パルス圧縮部
22、32:光増幅器
24、34:非線形光媒質
26、36:光バンドパスフィルタ
30:パルス生成器
38:測定器
40、42:半値幅調整器
50:光変調部
52:O/E変換器
54、76:バンドパスフィルタ
56:位相比較器
58:ラグリードフィルタ
60:VCO
62、72、94、96、98:パワー分岐器
64:ミキサー
68:基準信号発生器
74:4逓倍器
78:増幅器
80:ビットレート検出部
82:第1バンドパスフィルタ
84:第1パワー測定器
86:第2バンドパスフィルタ
88:第2パワー測定器
90:第3バンドパスフィルタ
92:第3パワー測定器
100、102:クロック信号/帰還信号生成部
110、114:マルチレートクロック信号抽出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した光パルス信号のパルスの時間波形を圧縮して、パルスの時間波形の半値幅が狭い狭光パルス信号として出力する光パルス圧縮ステップと、
該狭光パルス信号を入力して、前記狭光パルス信号のクロック周波数fの1/N(ただし、Nは1以上の整数とする。)の周波数f/Nの電気信号と周波数Δfの電気信号とをミキシングして得られる変調電気信号によって、前記狭光パルス信号を変調して変調光パルス信号として出力する光変調ステップと、
該変調光パルス信号を入力して、周波数f/Nのクロック信号及び前記変調電気信号を出力するクロック信号/帰還信号生成ステップと
を含むことを特徴とするマルチレートクロック信号抽出方法。
【請求項2】
前記光パルス圧縮ステップが、
前記光パルス信号を増幅する光パルス信号増幅ステップと、
該光パルス信号増幅ステップで増幅された光パルス信号のスペクトル幅を広げるスペクトル幅拡幅ステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチレートクロック信号抽出方法。
【請求項3】
前記光パルス圧縮ステップが、
前記光パルス信号を増幅する光パルス信号増幅ステップと、
該光パルス信号増幅ステップで増幅された光パルス信号のスペクトル幅を広げるスペクトル幅拡幅ステップと、
該スペクトル幅拡幅ステップで生成された光パルス信号をフィルタリングする光フィルタリングステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチレートクロック信号抽出方法。
【請求項4】
前記クロック信号/帰還信号生成ステップが、
前記変調光パルス信号を入力して、第1電気信号に変換して出力する光電変換ステップと、
該第1電気信号を入力して、周波数NΔfの電気信号成分のみを選択して第2電気信号として出力する第1バンドパスステップと、
周波数NΔfの該第2電気信号と、基準信号発生器によって発生される周波数Δfの基準電気信号をN逓倍して生成される周波数NΔfの電気信号である第3電気信号の位相とを比較して、両者の差成分を第4電気信号として出力する位相比較ステップと、
該第4電気信号を時間平均して、時間平均差成分である第5電気信号を出力する時間平均差成分出力ステップと、
該第5電気信号を入力して、周波数f/Nの第6電気信号として出力する周波数電圧制御ステップと、
周波数f/Nの該第6電気信号を分岐する第1分岐ステップと、
周波数f/Nの該第6電気信号と、前記基準信号発生器によって生成される周波数Δfの第7電気信号とをミキシングして、両者の周波数の和周波もしくは差周波信号である第8電気信号を出力するミキシングステップと、
該第8電気信号を入力して、周波数 ((f/N)-Δf)の電気信号成分のみを選択して第9電気信号として出力する第2バンドパスステップと、
周波数 ((f/N)-Δf)の該第9電気信号を増幅して、変調電気信号として前記光変調部に供給する増幅ステップと、
前記周波数Δfの第7電気信号を出力する基準信号発生ステップと、
周波数Δfの該第7電気信号を分岐する第2分岐ステップと、
周波数Δfの前記第7電気信号の周波数を逓倍して出力する周波数逓倍ステップと
を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のマルチレートクロック信号抽出方法。
【請求項5】
前記第1電気信号から前記狭光パルス信号のビットレートを検出する、ビットレート検出ステップと、
該ビットレートに対応して、前記光パルス信号増幅ステップにおける増幅率を調整することによって、前記狭光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を設定する、半値幅設定ステップと
を含むことを特徴とする請求項4に記載のマルチレートクロック信号抽出方法。
【請求項6】
受信した光パルス信号のパルスの時間波形を圧縮して、パルスの時間波形の半値幅が狭い狭光パルス信号として出力する光パルス圧縮部と、
前記狭光パルス信号を入力して、前記狭光パルス信号のクロック周波数fの1/N(ただし、Nは1以上の整数とする。)の周波数f/Nの電気信号と周波数Δfの電気信号とをミキシングして得られる変調電気信号によって、前記狭光パルス信号を変調して変調光パルス信号として出力する光変調部と、
該変調光パルス信号を入力して、周波数f/Nのクロック信号及び前記変調電気信号を出力するクロック信号/帰還信号生成部と
を具えることを特徴とするマルチレートクロック信号抽出装置。
【請求項7】
前記光パルス圧縮部が、
前記光パルス信号を増幅する光増幅器と、
該光増幅器で増幅された光パルス信号のスペクトル幅を広げる非線形光媒質と
を具えることを特徴とする請求項6に記載のマルチレートクロック信号抽出装置。
【請求項8】
前記光パルス圧縮部が、
前記光パルス信号を増幅する光増幅器と、
該光増幅器で増幅された光パルス信号のスペクトル幅を広げる非線形光媒質と、
該非線形光媒質で生成された光パルス信号をフィルタリングする光バンドパスフィルタと
を具えることを特徴とする請求項6に記載のマルチレートクロック信号抽出装置。
【請求項9】
前記クロック信号/帰還信号生成部が、
前記変調光パルス信号を入力して、第1電気信号に変換して出力する光電変換器と、
該第1電気信号を入力して、周波数NΔfの電気信号成分のみを選択して第2電気信号として出力する第1バンドパスフィルタと、
周波数NΔfの該第2電気信号と、基準信号発生器によって発生される周波数Δfの基準電気信号をN逓倍して生成される周波数NΔfの電気信号である第3電気信号の位相とを比較して、両者の差成分を第4電気信号として出力する位相比較器と、
該第4電気信号を時間平均して、時間平均差成分である第5電気信号を出力するラグリードフィルタと、
該第5電気信号を入力して、周波数f/Nの第6電気信号として出力する周波数電圧制御型発振器と、
周波数f/Nの該第6電気信号を分岐する第1分岐器と、
周波数f/Nの該第6電気信号と、前記基準信号発生器によって発生される周波数Δfの第7電気信号とをミキシングして、両者の周波数の和周波もしくは差周波信号である第8電気信号を出力するミキサーと、
該第8電気信号をフィルタリングして、周波数((f/N)-Δf)の電気信号成分である第9電気信号を出力する第2バンドパスフィルタと、
周波数((f/N)-Δf)の該第9電気信号を増幅して、変調電気信号として前記光変調部に供給する増幅器と、
周波数Δfの前記第7電気信号を出力する基準信号発生器と、
周波数Δfの該第7電気信号を分岐する第2分岐器と、
周波数Δfの前記第7電気信号の周波数を逓倍して出力する周波数逓倍器と
を具えることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載のマルチレートクロック信号抽出装置。
【請求項10】
前記第1電気信号から前記狭光パルス信号のビットレートを検出するビットレート検出器と、
該ビットレートに対応して、前記狭光パルス信号のパルスの時間波形の半値幅を設定するために、前記光増幅器の増幅率を調整するための半値幅調整器と
を具えることを特徴とする請求項9に記載のマルチレートクロック信号抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−36989(P2007−36989A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220841(P2005−220841)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度通信・放送機構「トータル光通信技術の研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】