説明

マルトデキストリンの作製のための工程およびマルトデキストリン

約5から約20未満のD.E.を有する液体マルトデキストリンを調製する工程が開示される。また、約9から約15のD.E.を有する液体マルトデキストリンも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、マルトデキストリンを調製する工程に関する。本発明は、ある種のマルトデキストリンにも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
マルトデキストリンは、当技術分野において一般に公知である。マルトデキストリンは、酸または酵素のいずれかによるデンプンの加水分解により作製され得る。例示的な特許は、米国特許第3,849,194号(特許文献1);第3,853,706号(特許文献2);第4,284,722号(特許文献3);第4,447,532号(特許文献4)、および第5,612,202号(特許文献5)である。マルトデキストリンは、デンプン変換のレベルを表すDE値によって特徴付けられる。DEとは、デキストロース当量(Dextrose Equivalent)の略語であり、乾燥重量基準でのデキストロースの割合として表された、材料の全還元糖含有量を記載するための当技術分野における一般的な表現である。商業的なマルトデキストリンの調製におけるいくつかの目的は、安定性、透明性、および非結晶特徴を達成することである。マルトデキストリンは、穏やかな味、低い甘味、および低い吸湿性のため、多様な食品への適用のために有用である。例えば、それらは、増量剤、担体、風味増強剤、水分保持剤、分散剤、フィルム形成剤、カプセル化剤等として有用である。
【0003】
様々なマルトデキストリンが市販されている。しかしながら、実施するのがより容易で、より単純なマルトデキストリンを作製する工程、ならびに長期にわたり良好な透明性および/または低い濁度を保有するマルトデキストリンが、引き続き必要とされている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,849,194号
【特許文献2】米国特許第3,853,706号
【特許文献3】米国特許第4,284,722号
【特許文献4】米国特許第4,447,532号
【特許文献5】米国特許第5,612,202号
【発明の開示】
【0005】
開示の詳細な説明
本発明の開示は、マルトデキストリンを調製する工程およびある種のマルトデキストリンに関する。この工程は、乾燥物質(以下「ds」とする)が約50%未満のデンプン・スラリーが形成されるよう、デンプンを水と混合する段階を含む。もう一つの態様において、デンプン・スラリーは、約24% dsから約40% dsを有し、またはさらにもう一つの態様において約32% dsから約36% dsを有する。デンプンは、穀類デンプンおよび根デンプンのような任意のデンプン起源に由来し得る。これらのデンプンの典型的なものは、デントコーン、ワキシーコーン、ジャガイモ、コムギ、イネ、サゴ、タピオカ、モロコシ、サツマイモ、またはそれらの混合物である。デンプン・スラリーには、デンプン・スラリー中50から100ppmの遊離カルシウムを提供するために、塩化カルシウム溶液のような水性カルシウム含有溶液が補足され得る。デンプン・スラリーは、デンプン・スラリー調製タンク内でデンプンのゼラチン化温度未満に加熱され得る。デンプン・スラリーは、デンプンを変換または加水分解するために十分な量のバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)αアミラーゼと接触させられる。適当なバチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼには、Genencor International, Palo Alto, Californiaにより製造され販売されているGEN-ZYME G995およびNovozymes A/S, Denmarkにより製造され販売されているTERMAMYL 120L Type Sが含まれる。例えば、バチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼは、乾燥重量基準でデンプンの約0.01%から約0.09%の範囲の量で使用され得る。
【0006】
酵素含有デンプン・スラリーのpHは、バチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼの適当な活性を提供するために選択される。一般に、pHは、約5.0から約7.0、またはもう一つの態様において約5.7から約6.3、またはさらにもう一つの態様において約5.9から約6.1の範囲である。本明細書に記載されたpHは、所望のDEが得られた後、酵素を不活性化するためにpHが低下させられる糖化段階を除き、工程の全体を通して維持される。酵素含有デンプン・スラリーは、第一液化物が形成されるよう、約6から約15分間、一つの態様において約80℃から約115℃、もう一つの態様において約102℃から約115℃、またはもう一つの態様において約107℃から約110℃の温度に加熱される。
【0007】
第一液化物は、場合により冷却される。一つの態様において、冷却は、圧力が大気レベルへと迅速に放出され、温度が約93℃から約100℃の温度に急速に低下させられる瞬間冷却により達成される。「迅速に」とは、圧力が約1から約5秒以内に放出されることを意味し、「急速に」とは、温度が約1から約5秒以内に低下させられることを意味する。結果として生じた生成物は、約0.5から約5.0のDE、またはもう一つの態様において約1.0から約3.0のDEを有する。次いで、第一液化物の温度は、一つの態様において約120℃から約165℃、もう一つの態様において約130℃から約165℃、またはもう一つの態様において約150℃から約165℃、またはさらにもう一つの態様において約158℃から約165℃に調整され、約30秒から約10分間、この温度で維持される。もう一つの態様において、持続時間は、約1分から約6分、またはさらにもう一つの態様において約3分から約5分である。
【0008】
続いて、第一液化物の温度は、最長約15分間、好ましくは約2から約15分間、約101℃から約115℃、またはもう一つの態様において約108℃から約110℃の温度に低下させられる。もう一つの態様において、持続時間は、約3分から約8分、またはさらにもう一つの態様において約3分から約5分である。この温度低下は、圧力容器内で実施される。圧力容器に第一液化物を導入する前に、または圧力容器に直接、第二用量のバチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼが第一液化物に対し添加される。第二用量のバチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼの量は、約5から約20未満のDEを有するマルトデキストリン生成物を作製するために十分である。例えば、第二用量のバチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼの量は、乾燥重量基準でデンプンの約0.01%から約0.09%の範囲の量で使用され得る。第二用量のバチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼとの接触の後に結果として生じた液化物は、以下、「第二液化物」と呼ばれる。
【0009】
第二液化物は、約93℃から約100℃の温度に冷却され、それが約2分から約15分間、維持される。一つの態様において、冷却は瞬間冷却により達成される。もう一つの態様において、持続時間は、約3分から約10分、またはさらにもう一つの態様において約3分から約4分である。次いで、第二液化物の温度は、約5から約20未満のD.E.を有するマルトデキストリン生成物が作製されるまでの期間、糖化タンク、ホールディング・パイプ、または等価物において、約93℃から約100℃、又はもう一つの態様において約93℃から約98℃に維持される。その後、バチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼの加水分解作用を不活性化するため、pHが、約3.4から約3.7に調整される。
【0010】
加工条件は、酵素の安定性および活性の特徴ならびにデンプンのゼラチン化特性により決定されるある範囲内で変動し得る。例えば、所望のDEを有するマルトデキストリンを得るために必要とされるバチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼの量は、バチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼの活性、温度、第一液化後のDE、第一および第二液化物のpH、ならびに所望の最終DEに依存するであろう。
【0011】
得られたマルトデキストリン生成物は、液体の形態である。液体マルトデキストリン生成物は、例えば50% ds超のような任意の所望の固体含有量を有するシロップを与えるため、濃縮され得る。さらに、液体マルトデキストリン生成物は、所望により、粉末へと噴霧乾燥され得る。
【0012】
本発明の工程の液体マルトデキストリンは、従来の精製法により精製される。例えば、精製法には、固定式または回転式の真空フィルターにおける珪藻土によるろ過、遠心分離、凝集、浮遊選別等、ならびに植物炭素(vegetable carbon)およびイオン交換樹脂による処理が含まれる。さらに、最終的な精製された液体マルトデキストリン生成物は、任意で、粉末へと噴霧乾燥されてもよい。
【0013】
本発明は、ある種の新規の液体マルトデキストリンにも関する。新規の液体マルトデキストリンは、本明細書に記載された工程により作製され得る。
【0014】
新規の液体マルトデキストリンは、約9から約15の範囲のDE値、もう一つの態様において約10から約13の値、さらなる態様において約9から約10.5の値を有することを特徴とする。さらに、新規の液体マルトデキストリンは、少なくとも28日の期間の後、約62%から約67%のdsで、少なくとも30%の390nmにおける光透過率の値を有することを特徴とする。もう一つの態様において、液体マルトデキストリンは、少なくとも約40%の光透過率の値を有し、さらなる態様において、少なくとも約79%の光透過率を有する。
【0015】
本開示のマルトデキストリンは、シロップの形態であっても、または乾燥粉末の形態であっても、一般に、味の穏やかさおよび低い甘味を特徴とする。食品に使用された場合、マルトデキストリンは、一般に、容積、安定性、好都合な口当たり特徴、および増加した栄養価を提供しながら、風味に対しては最小限の効果を及ぼす。
【0016】
これらの特徴のため、本開示の生成物は、一般に、着色剤、風味剤、精油、および合成甘味剤のための担体;コーヒー抽出物および茶抽出物の噴霧乾燥添加剤、合成クリームまたはコーヒー・ホワイトナーの増量剤、結合(boding)剤、および分散剤;パン、ペストリー、および食肉の水分保持を促進する成分;乾燥スープ混合物、ベーカリー混合物、フロスティング混合物、スパイス混合物およびブレンド、飲料粉末、香辛料、グレービー混合物、ソース混合物、および凍結乳製品の成分;ならびに脂肪類似物としての適用に適している。さらに、それらは、一般に、食品または薬学的生成物において使用され得る錠剤化化合物、抗凝固剤、ホイップ製品、保護コーティング、凝塊形成補助剤、低カロリーの食物および飲料、並びに低脂肪の食物および飲料の製剤化において有用である。
【0017】
実施例
実施例の実施において、この開示に従って調製された精製された液体マルトデキストリンを試験するために、以下の手法を使用した。
【0018】
DE
DEは、デキストロース当量を測定するために当産業において一般的に使用されているレーン(Lane)-アイノン(Eynon)法により測定される(Official Methods of Analysis(1990), Association of Official Analytical Chemists, 15th Edition, Method 923.09, "Invert Sugar in Sugars and Syrups, Lane-Eynon General Volumetric Method, Final Action," p.1016)。
【0019】
透明性−試験法A
精製された液体マルトデキストリン生成物の透明性は、蒸留水のブランクを通過するものと比較して、試験試料を通過する光の量を測定することにより決定される。試験試料は、65% dsに濃縮された試験試料の一部を各々含有している4cmのセルを通した600nmにおける光透過率を測定することにより分光測光法により調査された。Shimadzu UV 1650分光光度計(Shimadzu Deutschland GmBH, Duisburg, Germanyより入手可能)が、試験試料の透明性を測定するために使用された。5℃で保存された試験試料が、透明性が安定しているか否かを決定するため、長期にわたり測定された。
【0020】
透明性−試験法B
精製された液体マルトデキストリン生成物の透明性は、蒸留水のブランクを通過するものと比較して、試験試料を通過する光の量を測定することにより決定される。試験試料は、約62から約67% dsに濃縮された試験試料の一部を各々含有している4cmのセルを通した390nmにおける光透過率を測定することにより分光測光法により調査された。Spectronic Model Genesys 5分光光度計が、試験試料の透明性を測定するために使用された。130°Fで保存された試験試料が、透明性が安定しているか否かを決定するため、長期にわたり測定された。
【0021】
濁度
30% dsおよび65% dsにおける試験試料の濁度が、HACH Laboratory Turbidimeter Type 2100N(Hach Company, Loveland, Coloradoより入手可能)を使用して、濁度標準と比較して測定され、NTUという濁度単位で表される。濁度を測定するために使用された手法は、Hach Companyより提供される説明書に記載された手法である。濁度が低いほど、透明性は高い。5℃、20℃、25℃、および60℃で保存された試験試料が、濁度が安定しているか否かを決定するため、長期にわたり測定された。
【0022】
分子量分布
精製された液体マルトデキストリン生成物の分子量分布は、重合度(DP)により測定される。DPとは、マルトデキストリン分子内のアンヒドログルコース単位の平均数である。分子量分布は、マルトデキストリンの水性溶液(約10% ds)のゲル浸透クロマトグラフィによりアッセイされる。試料は、70℃で、1ml/分の流速で、HPLCグレード水により溶出される、直列の二つのカラム(Showa Denko, JapanのShodex S-803およびShodex S-801)が装備されたWaters Chromatographにおけるクロマトグラフィに供される。検出は、示差屈折計によりなされる。ポリマー参照生成物(Showa Denko, Japanの低多分散度プルラン(low polydispersivity pullulans))が、アッセイされた生成物の異なる画分の分子量と溶出時間を関係付けるために使用される。
【0023】
数平均分子量(Mn)
Mnは、以下の式を使用して計算された:

ここで、Niは、Miの分子量を有するモル数である。
参照:Application Note AN 232-10, Dale R. Baker, Hewlett-Packard Co, Avondale PA.
【0024】
重量平均分子量(Mw)
Mwは、以下の式を使用して計算された:

参照:Application Note AN 232-10, Dale R. Baker, Hewlett-Packard Co, Avondale PA.
【0025】
実施例1
32%から34% dsのデンプン・スラリーを作製するため、デントコーン・デンプンを水と混合し、デンプン・スラリーのpHを、10%ソーダ灰により5.7から6.3に調整した。このデンプン・スラリーに、50から70ppm Ca++(塩化カルシウム)および0.02% dsデンプンのGEN-ZYME G995バチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼを添加した。酵素含有デンプン・スラリーを、約150リットル/時の流速で一連のホールディング・チューブにポンプで送り込み、そこに、温度を約108℃に高めるため、(10から11バールのフィード圧で)蒸気を注入し、0.6-0-0.8バールの背圧を適用した。第一液化物が形成されるよう、酵素含有デンプン・スラリーを、約9分間、この温度で保持し、次いで、大気圧へと瞬間冷却し、それにより温度を約98℃に低下させた。この時点で、第一液化物のDEは、約1から約3であった。第一液化物をもう一つのホールディング・チューブにポンプで送り込み、そこに、温度を約160℃に高めるため、蒸気(10から11バールのフィード圧)を注入し、6.0から6.5バールの背圧を適用した。第一液化物を、約3分間、この温度で保持した。0.02% dsデンプンの第二用量のGEN-ZYME G995バチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼを第一液化物に添加した後、8リットルの圧力容器へポンプで送り込み、そこで、0.39から0.40バールの背圧を適用することにより約107℃の温度で約3分間、第一液化物を保持した。それにより、第二液化物が形成された。次いで、第二液化物を大気圧へと瞬間冷却し、それにより温度を約95℃に低下させた。第二液化物を糖化タンクに収集し、約13.9のDEを有する液体マルトデキストリン生成物を与えるため、約5.0時間、変換させた。工程の全体を通して、流速を約150リットル/時に維持し、pHを約5.7から約6.3に維持した。その後、残余の酵素を不活性化するため、pHを約3.5に低下させるために十分な量の32%塩酸を添加した。
【0026】
実施例2
次いで、実施例1の液体マルトデキストリン生成物を、以下の従来の精製法により精製した。CELITE 555フィルター(Celite Corporation, Santa Barbara, Californiaより入手可能)と共にNIVOBAR(登録商標)回転式真空フィルター(Nivoba B.V., Groningen, Netherlandsより入手可能)を使用して、脂肪およびタンパク質のような不溶性材料を除去するため、生成物を80℃でろ過した。温度を65℃に低下させ、生成物を、500mlのLurgi's Epilon MC-h 1240顆粒状炭素を使用して脱色した。ミネラルを、イオン交換樹脂(DOW 88 Mono陽イオン交換樹脂(80ml);DOW 66 Mono陰イオン交換樹脂(100ml);およびMitsubishi Relite RAD/F polishing樹脂(50ml))を使用することにより除去した。液体マルトデキストリンを、30% dsおよび65% dsに濃縮した。精製された液体マルトデキストリン生成物の分析は、表1および2に示される。
【0027】
(表1)実施例2のマルトデキストリンの分析

【0028】
(表2)安定性の結果

【0029】
得られた30% dsの精製された液体マルトデキストリン生成物は、5℃、25℃、および60℃において極めて安定している。一般に、そのような生成物の透明性は、最長13日間またはそれ以上、安定している。
【0030】
上記のデータから、65% dsで5℃で保存された精製された液体マルトデキストリン生成物の透明性は、0時間目の100%光透過率の対照と比較した、24時間目の100%光透過率および48時間目の94.8%光透過率という高い光透過率値により示されるように、最長約48時間、良好であることが明白である。30% dsで、5℃、25℃、および60℃で保存された精製された液体マルトデキストリン生成物の濁度は、13日までの保存の間、0時間目の対照とほぼ等価であり、このことは、安定な生成物を示す。類似した結果が、約24時間までの期間、65% dsにおける濁度についても示される。
【0031】
実施例3
32%から34%のdsのデンプン・スラリーを作製するため、デントコーン・デンプンを水と混合し、pHを10%ソーダ灰により5.7から6.3に調整した。このデンプン・スラリーに、50から70ppm Ca++(塩化カルシウム)および0.035% dsデンプンのTERMAMYL 120L Type Sバチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼを添加した。酵素含有デンプン・スラリーを約150リットル/時の流速で一連のホールディング・チューブにポンプで送り込み、そこに、温度を約108℃に高めるため、(7から8バールのフィード圧で)蒸気を注入し、0.6から0.8バールの背圧を適用した。第一液化物が形成されるよう、酵素含有デンプン・スラリーを、約9分間、この温度で保持し、次いで、大気圧へと瞬間冷却し、それにより約98℃に温度を低下させた。この時点で、第一液化物のDEは、約1から約3であった。第一液化物をもう一つのホールディング・チューブにポンプで送り込み、そこに、温度を約16O℃に高めるため、蒸気(10から11バールのフィード圧)を注入し、6.0から6.5バールの背圧を適用した。第一液化物を、約3分間、この温度で保持した。0.01% dsデンプンの第二用量のTERMAMYL 120L Type Sバチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼを、第一液化物に添加した後、8リットルの圧力容器へポンプで送り込み、そこで、0.39から0.40バールの背圧を適用することにより、約107℃の温度で約3分間、第一液化物を保持した。それにより、第二液化物が形成された。次いで、第二液化物を、大気圧へと瞬間冷却し、それにより温度を約95℃に低下させた。第二液化物を糖化タンクに収集し、約13.1のDEを有する液体マルトデキストリン生成物を与えるため、約8時間、さらに変換させた。その後、残余の酵素を不活性化するため、pHを約3.5に低下させるために十分な量の32%塩酸を添加した。工程の全体を通して、流速を約150リットル/時に維持し、pHは、酵素を不活性化するためにpHを3.5に低下させた糖化の最後を除き、約5.7から約6.3に維持した。
【0032】
実施例4
次いで、実施例2に記載されたようにして、実施例3の液体マルトデキストリン生成物を精製し、濃縮した。精製された液体マルトデキストリン生成物の分析は、表3および4に示される。
【0033】
(表3)実施例4のマルトデキストリンの分析

【0034】
(表4)実施例4の13.1DEマルトデキストリンの濁度

【0035】
TERMAMYL 120L Type Sバチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼを用いて調製された13.1DEの精製された液体マルトデキストリン生成物は、20℃における保存の62時間目まで極めて低い濁度を示し、このことは、透明かつ安定な生成物を示す。
【0036】
実施例5
第一用量として0.035% dsのTERMAMYL 120L Type Sαアミラーゼを使用し、第二用量として0.01% dsの同一のαアミラーゼを使用して18.6DEの液体マルトデキストリンが調製されたことを除き、実施例3の工程に従った。全糖化時間は約24時間であり、約18.6のDEを有するマルトデキストリン生成物が得られた。マルトデキストリン生成物は、実施例2に記載されたのと同一の方式で精製され、30% dsに濃縮された。精製された液体マルトデキストリン生成物の分析は、表5および6に示される。
【0037】
(表5)実施例5のマルトデキストリンの分析

【0038】
(表6)実施例5の18.6DEマルトデキストリンの濁度

【0039】
TERMAMYL 120L Type Sバチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼを用いて調製された18.6 DEの精製された液体マルトデキストリン生成物は、20℃における保存の71時間目まで低い濁度を示し、このことは、透明かつ安定な生成物を示す。
【0040】
実施例6
この実施例においては、約12.2のDE値を有する液体マルトデキストリンが作製された。生成物は、以下の改変を除き、実施例1に記載された条件に従って作製された:
a)使用されたデンプンはワキシーコーン・デンプンであり;
b)デンプン・スラリーのdsは約30.7%であり;
c)デンプン・スラリーのpHは約5.8から5.9であり;
d)カルシウムは添加されず;
e)第一用量のαアミラーゼは約0.01%であり;
f)流速は約31,800リットル/時であり;
g)第二用量のαアミラーゼは約0.01%であり;
h)反応時間は約3.5時間であり;
i)反応pHは約5.5から5.9であり;
j)使用された酸は36%塩酸であり;かつ
k)不活性化pHは約3.4であった。
【0041】
結果として生じた液体マルトデキストリンは、約12.2のDEを有することを特徴としていた。次いで、液体マルトデキストリンを、以下の改変を除き、実施例2の工程に従って精製した:
a)Eimcoより入手可能な回転式真空フィルターが使用され;
b)CeliteのKenite 3000フィルター助剤が使用され;かつ
c)Calgon CPG-LF炭素が使用された。
【0042】
得られた精製された液体マルトデキストリンを、約64.2%に濃縮し、65℃で保存した。透明性の評価は、52日後に約87.6%の600nmにおける光透過率を示した。
【0043】
実施例7
この実施例においては、約10.4のDE値を有する液体マルトデキストリンが作製された。生成物は、以下の改変を除き、実施例1に記載された条件に従って作製された:
a)使用されたデンプンはワキシーコーン・デンプンであり;
b)デンプン・スラリーのdsは約30.5%であり;
c)デンプン・スラリーのpHは約5.8から5.9であり;
d)カルシウムは添加されず;
e)第一用量のαアミラーゼは約0.01%であり;
f)流速は約33,000リットル/時であり;
g)第一液化物は、第二用量のαアミラーゼを添加する前に、約3分間、約148℃の温度で保持され;
h)第二用量のαアミラーゼは約0.01%であり;
i)反応時間は約4.1時間であり;
j)反応pHは約5.4から6.3であり;かつ
k)使用された酸は36%塩酸であった。
【0044】
結果として生じた液体マルトデキストリンは、約10.4のDEを有することを特徴としていた。
【0045】
次いで、液体マルトデキストリンを、以下の改変を除き、実施例2の工程に従って精製した:
a)Eincoより入手可能な回転式真空フィルターが使用され;
b)CeliteのKenite 300フィルター助剤が使用され;
c)Calgon CPG-LF炭素が使用された。
【0046】
約10.4のDEを有する得られた精製された液体マルトデキストリンを、約62.7%に濃縮した。透明性の決定は、28日後に約79.2%の390nmにおける光透過率を示した。
【0047】
実施例8
この実施例においては、約10.8のDE値を有する液体マルトデキストリンが作製された。生成物は、以下の改変を除き、実施例1に記載された条件に従って作製された:
a)使用されたデンプンはワキシーコーン・デンプンであり;
b)デンプン・スラリーのdsは約31.3%であり;
c)デンプン・スラリーのpHは約5.4から6.3であり;
d)カルシウムは添加されず;
e)第一用量のαアミラーゼは約0.014%であり;
f)流速は約33,000リットル/時であり;
g)第一液化物は、第二用量のαアミラーゼを添加する前に、約3分間、約148℃の温度で保持され;
h)第二用量のαアミラーゼは約0.01%であり;
i)反応時間は約5.5時間であり;
j)反応pHは約5.3から6.3であり;かつ
k)使用された酸は36%塩酸であった。
【0048】
次いで、約10.8のDEを有する、結果として生じた液体マルトデキストリンを、以下の改変を除き、実施例2の工程に従って精製した:
a)Eincoより入手可能な回転式真空フィルターが使用され;
b)CeliteのKenite 300フィルター助剤が使用され;
c)Calgon CPG-LF炭素が使用された。
【0049】
約10.8のDEを有する得られた精製された液体マルトデキストリンを、約64.5%に濃縮した。透明性の決定は、29日後に約54.3%の390nmにおける光透過率を示した。
【0050】
実施例9
この実施例においては、約11.2のDEを有する液体マルトデキストリンが作製された。生成物は、以下の改変を除き、実施例1に記載された条件に従って作製された:
a)使用されたデンプンはワキシーコーン・デンプンであり;
b)デンプン・スラリーのdsは約32%であり;
c)デンプン・スラリーのpHは約5.5から6.1であり;
d)カルシウムは添加されず;
e)第一用量のαアミラーゼは約0.015%であり;
f)流速は約29,520リットル/時であり;
g)第一液化物は、第二用量のαアミラーゼを添加する前に、約3分間、約148℃の温度で保持され;
h)第二用量のαアミラーゼは約0.01%であり;
i)反応時間は約4.9時間であり;
j)反応pHは約5.7から5.9であり;かつ
k)使用された酸は36%塩酸であった。
【0051】
次いで、約11.2のDEを有する、結果として生じた液体マルトデキストリンを、以下の改変を除き、実施例2の工程に従って精製した:
a)Eimcoより入手可能な回転式真空フィルターが使用され;
b)CeliteのKenite 3000フィルター助剤が使用され;
c)Calgon CPG-LF炭素が使用された。
【0052】
約11.2のDEを有する、結果として生じた精製された液体マルトデキストリンを、約66.5%に濃縮した。透明性の決定は、28日後に約41.4%の390nmにおける光透過率を示した。
【0053】
本発明が、様々な特定の例示的な態様および技術に関して記載された。しかしながら、当業者は、本発明の本旨および範囲に含まれたまま、多くの変動および改変がなされ得ることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、約5から約20未満のDEを有する液体マルトデキストリンを作製する工程:
a)約50%未満のdsを有するデンプン・スラリーを提供するために十分な量の水とデンプンを混合する段階;
b)結果として生じたデンプン・スラリーを、デンプンを変換または加水分解するのに十分な量の第一用量のバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)αアミラーゼと接触させる段階;
c)約0.5から約5.0のD.E.を有する第一液化物が形成されるよう、結果として生じたαアミラーゼ含有デンプン・スラリーの温度を加熱する段階;
d)段階1(c)の第一液化物を約120℃から約165℃に加熱し、第一液化物を、約30秒から約10分間、約120℃から約165℃の温度で維持する段階;
e)圧力容器内で、段階1(d)の第一液化物の温度を約101℃から約115℃に調整し、第一液化物を、最長約15分間、約101℃から約115℃の温度で維持する段階;
f)段階1(e)から結果として生じた第一液化物を、第二液化物を作製するために十分な量の第二用量のバチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼと接触させる段階;および
g)第二液化物の温度を約93℃から約100℃に冷却し、約5から約20未満のD.E.を有する第二液化物を作製するために十分な期間、第二液化物を約93℃から約100℃の温度で維持する段階。
【請求項2】
段階1(a)のデンプン・スラリーが約24から約40% dsの範囲である、請求項1記載の工程。
【請求項3】
段階1(a)のデンプン・スラリーが約32から約36% dsの範囲である、請求項1記載の工程。
【請求項4】
段階1(a)のデンプン・スラリーに50から100ppmの遊離カルシウムを添加する段階をさらに含む、請求項1記載の工程。
【請求項5】
段階1(b)におけるαアミラーゼの量が、乾燥重量基準でデンプンの約0.01から約0.09%の範囲である、請求項1記載の工程。
【請求項6】
段階1(b)のαアミラーゼ含有デンプン・スラリーのpHが約5.0から約7.0に調整され、該pHが工程の全体を通して維持される、請求項1記載の工程。
【請求項7】
段階1(c)のデンプン・スラリーの温度が約80℃から約115℃の範囲であり、デンプン・スラリーが、約6から約15分間、該温度で維持される、請求項1記載の工程。
【請求項8】
段階1(c)のデンプン・スラリーの温度が約107から約110℃の範囲であり、デンプン・スラリーが、約6から約15分間、該温度で維持される、請求項7記載の工程。
【請求項9】
段階1(c)の約0.5から約5.0のD.E.を有する第一液化物が、段階1(d)の前に冷却される、請求項1記載の工程。
【請求項10】
段階1(e)において、第一液化物の温度が約108℃から約110℃に調整される、請求項1記載の工程。
【請求項11】
段階1(f)におけるαアミラーゼの量が、乾燥重量基準でデンプンの約0.01から約0.09%の範囲である、請求項1記載の工程。
【請求項12】
段階1(g)において第二液化物が瞬間冷却により冷却される、請求項1記載の工程。
【請求項13】
段階1(g)において、第二液化物を冷却した後、αアミラーゼを不活性化するために工程のpHを調整する段階をさらに含む、請求項1記載の工程。
【請求項14】
pHが約3.4から約3.7に調整される、請求項13記載の工程。
【請求項15】
約5から約20未満のDEを有する第二液化物を噴霧乾燥する段階をさらに含む、請求項1記載の工程。
【請求項16】
約5から約20未満のDEを有する第二液化物を精製する段階をさらに含む、請求項1記載の工程。
【請求項17】
精製が、真空フィルター上の珪藻土による濾過、遠心分離、凝集、浮遊選別、植物炭素およびイオン交換樹脂による処理、ならびにそれらの混合からなる群より選択される、請求項16記載の工程。
【請求項18】
約9から約15のDEを有し、かつ、少なくとも28日の期間の後、130°Fの保存温度で、約62%から約67%のdsで、少なくとも30%の390nmにおける光透過率の値を有する精製された液体マルトデキストリンであって、光透過率がSpectronic Model Genesys 5分光光度計を使用して測定される、精製された液体マルトデキストリン。
【請求項19】
D.E.が約10から約13の範囲である、請求項18記載の精製された液体マルトデキストリン。
【請求項20】
D.E.が約9から約10.5の範囲である、請求項18記載の精製された液体マルトデキストリン。
【請求項21】
光透過率の値が少なくとも約40%である、請求項18記載の精製された液体マルトデキストリン。
【請求項22】
光透過率の値が少なくとも約79%である、請求項18記載の精製された液体マルトデキストリン。
【請求項23】
以下の改良を含む、約0.5から約5.0のD.E.を有する第一液化物が形成される、約5から約20未満のD.E.を有する液体マルトデキストリンを作製する工程:
a)第一液化物を約120℃から約165℃に加熱し、第一液化物を、約30秒から約10分間、約120℃から約165℃の温度で維持する段階;
b)圧力容器内で、第一液化物の温度を約101℃から約115℃に調整し、第一液化物を、最長約15分間、該温度で維持する段階;
c)第一液化物を、第二液化物を作製するための第二の量のバチルス・ステアロテルモフィルスαアミラーゼと接触させる段階;および
d)第二液化物の温度を約93℃から約100℃に冷却し、約5から約20未満のD.E.を有する第二液化物を作製するために十分な期間、第二液化物を該温度で維持する段階。
【請求項24】
段階23(b)において、第一液化物の温度が約108℃から約110℃に調整される、請求項23記載の工程。
【請求項25】
段階23(c)におけるαアミラーゼの量が、乾燥重量基準でデンプンの約0.01から約0.09%の範囲である、請求項23記載の工程。
【請求項26】
段階23(d)において、第二液化物が瞬間冷却により冷却される、請求項23記載の工程。
【請求項27】
段階23(d)において、第二液化物を冷却した後、αアミラーゼを不活性化するために工程のpHを調整する段階をさらに含む、請求項23記載の工程。
【請求項28】
pHが約3.4から約3.7に調整される、請求項27記載の工程。
【請求項29】
約5から約20未満のDEを有する第二液化物を噴霧乾燥する段階をさらに含む、請求項23記載の工程。
【請求項30】
約5から約20未満のDEを有する第二液化物を精製する段階をさらに含む、請求項23記載の工程。
【請求項31】
精製が、真空フィルター上の珪藻土による濾過、遠心分離、凝集、浮遊選別、植物炭素およびイオン交換樹脂による処理、ならびにそれらの混合からなる群より選択される、請求項30記載の工程。

【公表番号】特表2008−517599(P2008−517599A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538003(P2007−538003)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/037592
【国際公開番号】WO2006/047176
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(397058666)カーギル インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】