説明

マレイミド系共重合体およびその製造方法、並びにそれから得られる光学フィルム

【課題】 耐熱性とともに透明性が高く、光学用途に使用したときに、優れた特性を有する新規なマレイミド系共重合体を提供する。
【解決手段】 (a)下記一般式(1)および(2)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種と、(b)下記一般(4)で表されるマレイミド骨格を有する構造単位とからなるマレイミド系共重合体。前記共重合体中の構造単位(a)と、構造単位(b)との量比(モル比)が、95:5〜30:70の範囲にある。


(式中、R1は有機基を示し、R2はアルキル基、アシル基を示す。R3は水素原子またはメチル基であり、Xは式(3)で示す置換基を表す。R4は有機基を示し、R5はアルキル基またはアシル基を示す。m,nは0〜2の数であり、pは1〜5の数である。R6はアルキル基または脂環式基である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性及び耐熱性に優れ、光学異方性の小さい新規なマレイミド系共重合体および該共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マレイミド類系重合体について、古くから知られており(たとえば、非特許文献1〜3参照)、一方、マレイミド類と他モノマーとを共重合させる方法についても、たとえばマレイミド類と塩化ビニリデン、メタクリル酸メチル、あるいはスチレンとの共重合反応、及びn−フェニルマレイミドとメタクリル酸メチルあるいはスチレンとの共重合反応は、たとえば非特許文献4および5に記載されている。
【0003】
また、特許文献1には、イソペンテニル化合物に基づく構造単位と、無水マレイン酸、マレイン酸ジアルキル、マレイミド類、フマル酸ジアルキル類、不飽和ニトリル類及びアクリル酸エステル類からなる群より選ばれた不飽和化合物に基づく構造単位とからなる交互共重合体が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ヒドロキシスチレン類とマレイミド類との交互共重合体が開示されている。特許文献3には、マレイミド類、無水マレイン酸及びオレフィン類とを、溶媒中でラジカル共重合体させてマレイミド系共重合体を製造することが開示されている。さらに特許文献4には、N-アルキルマレイミドとオレフィンとをモノマーであるオレフィンに溶解させることで、溶媒を使用せずに重合を行うマレイミド系共重合体の製造方法が開示されている。
【0005】
このようにマレイミド共重合体について、多くの文献が存在し、種々の共重合体が提案されている。
近年では、マレイミド共重合体の有する耐熱性に着目し、ジメチルシリコーンマクロマーを側鎖に有する不飽和化合物を共重合させたマレイミド共重合体を、耐熱性樹脂用添加剤として使用すると、耐熱性樹脂との相溶性が高く、表面の耐汚染性や剥離性に優れた成型体を成型できることが提案されている(特許文献5参照)。
【非特許文献1】R. C. P. Cubbon, Polymer, 6, 419(1966)
【非特許文献2】K.Kojima, N.Yoda、C.S.Marvel, J.Polymer Sci., A-1, 4、1121(1966)
【非特許文献3】山田正盛、高瀬巌、三島敏夫、高化, 26, 393 (1969)
【非特許文献4】C.Van.Paesschen, D.Timmerman, Makromol.Chem., 78, 112 (1964)
【非特許文献5】山田正盛、高瀬巌、三島敏夫、高化, 24, 326 (1967)
【特許文献1】特許2506964号
【特許文献2】特許1546675号
【特許文献3】特許3284216号
【特許文献4】特許3306550号
【特許文献5】特開2004−10802号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光エレクトロニクス技術の進展に伴い透明材料に対する要求も多様化しており、光学材料としての透明プラスチックに高い関心が寄せられている。
このなかでも、マレイミド系共重合体は、耐熱性が高いことから、さらに併せて透明性
も有していれば、その用途は広がり、広範な用途への展開が期待される。
【0007】
従来提案されていたマレイミド系共重合体は、光学用途に用いるためには、透明性という観点では必ずしも満足しうるものではなかった。たとえば、特許文献5に開示された共重合体は、耐熱性には優れるものの、光学材料に使用するような透明性を具備するものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、光学用途に使用しても優れた特性を有するマレイミド系共重合体を提供するために、本発明者らは鋭意検討した結果、アルコキシシリル基等加水分解性基含有不飽和化合物とマレイミド類との共重合体は、耐熱性とともに、透明性が高く、また複屈折も小さいので光学異方性も小さいという優れた特性を有していることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明に係るマレイミド系共重合体は、以下のとおりである。
(1)(a)下記一般式(1)および(2)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種と、
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1は炭素数1〜8の有機基を示し、R2は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基を示し、mは0〜2の数である。)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R3は水素原子またはメチル基であり、Xは下式(3)で示す置換基を表す。)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R4は炭素数1〜8の有機基を示し、R5は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示し、nは、0〜2の数であり、pは1〜5の数である。)
(b)下記一般式(4)で表されるマレイミド骨格を有する構造単位
とからなるマレイミド系共重合体。
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、R6は炭素数1〜20のアルキル基または脂環式基である。)
(2)共重合体中の構造単位(a)と、構造単位(b)との量比(モル比)が、95:5〜30:70の範囲にある(1)のマレイミド系共重合体。
(3)共重合体の重量平均分子量が10000〜1000000の範囲にある(1)または(2)のマレイミド系共重合体。
(4)共重合体中に、さらに、アルキル(メタ)アクリレート類、芳香族ビニル類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、エポキシ化合物類、アミド化合物、ビニル化合物、エチレン性不飽和カルボン酸化合物、ピペリジン化合物、ビニルエーテル類、アリルエーテル類、(シクロ)アルキルビニルエーテル類、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類から誘導される構造単位(c)が、50モル%以下の量で含まれる(1)〜(3)の
マレイミド系共重合体。
(5)(1)〜(4)の共重合体中のアルコキシシリル基が加水分解・重縮合して形成された架橋構造を有するマレイミド系共重合体。
【0018】
そしてこのような共重合体は、アルコキシシリル基含有不飽和化合物とマレイミド類とを、ラジカル開始剤、溶媒、熱により溶液中で均一なラジカル共重合反応させることにより得られる。
【0019】
すなわち、本発明に係るマレイミド系共重合体の製造方法は、
(6)(a)下記一般式(9)および(10)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種と、
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、R1は炭素数1〜8の有機基を示し、R2は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基を示し、mは0〜2の数である。)
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、R3は水素原子またはメチル基であり、Xは式(11)で示す置換基を表す。)
【0024】
【化7】

【0025】
(式中、R4は炭素数1〜8の有機基を示し、R5は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示し、nは、0〜2の数であり、pは1〜5の数である。)
(b)下記一般式(12)で表されるマレイミド化合物とを、
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、R6は炭素数1〜20のアルキル基または脂環式基である。)
可溶性溶媒中で、ラジカル開始剤の存在下に溶液重合することを特徴としている。
(7)前記(5)の共重合体の製造方法は、(6)で得られた共重合体のアルコキシシリル基を加水分解・縮合することを特徴とする。
【0028】
以上のようなマレイミド系共重合体は、光学異方性が小さいので、反射や複屈折が抑制され、光学用フィルムとして好適である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、透明性及び耐熱性に優れ、光学異方性の小さい新規なマレイミド系共重合体が得られ、特に光学用途に有用性の高い材料が得られる。しかも、その製造方法は非常に汎用性の高い溶液ラジカル重合法により得られるもので、その工業的利用価値は計り知れない。特に、コーティング材、フィルムもしくはシート等への有用な応用が計れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
[共重合体]
本発明に係るマレイミド系共重合体は、
(a)前記一般式(1)および(2)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種以上と、
(b)前記一般式(4)で表されるマレイミド骨格を有する構造単位を含有してなる。
【0031】
式中、R1は、炭素数1〜8の1価の有機基であり、例えばメチル基、エチル基、n−
プロピル基、i−プロピル基、n―ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基などのアシル基、シクロヘキシル基、エポキシ基、グリシジル
基などが挙げられる。
【0032】
また、R2は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基であり、例え
ばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などのアルキル基、アセチル基、プロピノニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基などのアシル基などが挙げられる。これらのなかでも好適なのは、メチル基、エチル基などのアルキル基であり、これらを含んでいると、得られる重合体のアルコキシシリル基の加水分解・縮合反応活性が高くなり、シロキサン架橋形成に有利である。
【0033】
4は、前記式(2)と同様に、炭素数1〜8の1価の有機基であり、例えばメチル基
、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基
、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基などのアシル基、シクロヘキシル基、エポキシ基、グリシジル基などが挙げられる。これらのなかでも、好ましくはメチル基、エチル基などのアルキル基である。
【0034】
また、R5は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基であり、例え
ばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などのアルキル基、アセチル基、プロピノニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基などのアシル基などが挙げられる。これらのなかでも、好ましくは、メチル基、エチル基などのアルキル基である。
6は、炭素数1〜20のアルキル基または脂環式基であり、具体的には、メチル基、
エチル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソアミル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、i−オクチル基、ノニル基、i−ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ラウリル基、ステアリル基、i−ステアリル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などの脂環式基が挙げられる。
【0035】
本発明のマレイミド系共重合体の分子量としては、用途に応じて適宜選択されるが、フィルムに成型して使用する場合、成形性や強度を鑑み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が10000〜1000000、より好ましくは50000〜800000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が前記下限未満では膜、フィルムが脆くなり工業的有用性に乏しくなることがある。また、重量平均分子量が前記上限を超えるとコーティングないしはキャスト成形時に溶液粘度が高くなり、成形に困難になることがある。
【0036】
共重合体中の構造単位(a)と、構造単位(b)との量比(モル比)が、95:5〜30:70、好適には90:10〜50:50の範囲にあることが望ましい。
共重合体は、構造単位(a)と構造単位(b)とのランダム共重合体、ブロック共重合体であってもよいが、交互共重合体が好ましい。交互共重合体であれば、後述するアルコキシシリル基の加水分解による架橋の効果がより顕現される。
【0037】
共重合体中に、さらに、アルキル(メタ)アクリレート類、芳香族ビニル類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、エポキシ化合物類、アミド化合物、ビニル化合物、エチレン性不飽和カルボン酸化合物、ピペリジン化合物、ビニルエーテル類、アリルエーテル類、(シクロ)アルキルビニルエーテル類、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類から誘導される構造単位(c)が共重合されていてもよい。このような構造単位(c)を含ん
でいると、基材との接着性や耐薬品性などを制御することが可能となる。なお、かかる構造単位(c)を構成するモノマーについては後述する。さらに、後述するような上記以外の
モノマーが共重合されていてもよい。
【0038】
共重合体中の構造単位(c)の割合は、全構造単位中50モル%以下、好ましくは40モ
ル%以下の量であることが望ましい。
本発明のマレイミド系共重合体のガラス転移温度(Tg)は通常90℃以上であり、好ましくは120℃以上である。また、大気下における分解開始温度(Td0)は200℃
以上であり、好ましくは230℃以上である。このように耐熱性に非常に優れている。なお、Tgが90℃未満、Td0が200℃未満では耐熱性が不十分であるおそれがある。
【0039】
なお、共重合体の特定は、1H-MNRで行なうことが望ましい。
また、本発明のマレイミド系共重合体は400mmの厚さのフィルムを成型したときの光線透過率(400nm)は、通常85%以上であり、透明性に優れている。
【0040】
なお、光線透過率(400nm)85%未満では透過光損失が大きく、光学材料としての使用に制限が生じることがある。
更に、マレイミド系共重合体の光学異方性は下記(13)、(14)式で表される入射角0°及び50°でのリターデーションRe0、Re50は10nm以下が好ましく、更に好
ましくは5nm以下である。すなわち、複屈折が小さく、光学異方性に優れている。なお、Re0、及びRe50が10nmを超えると、例えば、液晶ディスプレイフィルムにおいては
コントラストの低下等、表示品質を著しく損なうことがある。
【0041】
Re0=(nx−ny)×d (13)
Re0はフィルムの3次元座標X、Y、Z に対して、正面(Z軸方向)から見るときのリターデーション、nx、nyはX軸方向、Y軸方向の屈折率で、dは光路長である。
【0042】
Re50=(na−nb)×d‘ (14)
Re50はフィルムの3次元座標X、Y、Z に対して、視野角をZ軸よりX軸方向へ5
0°傾斜させた際のリターデーション、na、nbはその屈折率楕円体の長軸方向、短軸方向の屈折率、d‘はその光路長である。
【0043】
共重合体中のアルコキシシリル基(Si-OR2、Si-OR5)は、必要に応じて、加水分解・縮合され、架橋構造を形成していてもよい。架橋構造は、-Si-O-Si-のシロキサン結合に
よってもたらされる。このように架橋構造を有していると、シロキサン架橋により主鎖分子運動が拘束され、更なる耐熱性向上が計れることとなる。
【0044】
本発明のマレイミド系共重合体は、たとえばアルコキシシリル基含有不飽和化合物とマレイミド類とを、ラジカル開始剤、溶媒の存在下に反応させる。溶液中で均一なラジカル共重合反応が進行し、側鎖にアルコキシシリル基を有する新規なマレイミド系共重合体が得られる。
【0045】
[製造方法]
以下の本発明に係る製造方法について説明する。
本発明では、前記一般式(9)および(10)で表されるアルコキシシリル基等加水分解性基と不飽和基を有する単量体(以下、それぞれ特定単量体A、Bという。)から選ばれる少なくとも1種と、前記一般式(12)で表されるN置換(シクロ)アルキルマレイミド単量体(以下、特定単量体Cという。)を、溶性溶媒中でラジカル開始剤によりラジカル重合して、共重合体を製造する。
【0046】
特定単量体Aを表す式(9)中のR1は、前記式(1)で例示したものと同様に、炭素
数1〜8の1価の有機基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n―ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基などのアシル基、シクロヘキシル基、エポキシ基、グリシジル基などが挙げられるが好ましくはメチル基、エチル基などのアルキル基である。
【0047】
また、R2も前記式(1)で例示したものと同様に、炭素数1〜5のアルキル基または
炭素数1〜6のアシル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などのアルキル基、アセチル基、プロピノニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基などのアシル基などが挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基などのアルキル基である。
【0048】
この特定単量体Aの具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどを挙げることができるが、好ましくはビニルトリメトキシシランである。これらの特定単量体Aは1種単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0049】
特定単量体Bを表す式(10)のX中の、R4は、前記式(2)と同様に、炭素数1〜
8の1価の有機基であり、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、
n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル
基、n-オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基、アセチル基、プロピオニ
ル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基などのアシル基、シクロヘキシル基、エポキシ基、グリシジル基などが挙げられる。これらのなかでも、好ましくはメチル基、エチル基などのアルキル基である。
【0050】
また、R5は、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基であり、例え
ばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などのアルキル基、アセチル基、プロピノニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基などのアシル基などが挙げられる。これらのなかでも、好ましくは、メチル基、エチル基などのアルキル基である。
【0051】
この特定単量体Bの具体例としては、γ-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシ
ラン、γ-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシシラン、γ-(メタ)アクリロキシエチルジメトキシメチルシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジエトキシシメチル
シランなどを挙げることができるが、好ましくはγ-(メタ)アクリロキシプロピルトリ
メトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジエ
トキシシメチルシランである。更に、好ましくはγ-(メタ)アクリロキシプロピルトリ
メトキシシランである。これらの特定単量体Bは1種単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0052】
特定単量体Cを表す式(12)中のR6は炭素数1〜20のアルキル基またはシクロア
ルキル基(脂環式基)であり、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソアミル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、i−オクチル基、ノニル基、i−ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシ
ル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ラウリル基、ステアリル基、i−ステアリル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などの脂環式基などを挙げることができる。
【0053】
この特定単量体Cの具体例としては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロイルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−ペンチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ヘプチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ノニルマレイミド、N−デシルマレイミド、N−ウンデシルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−トリデシルマレイミド、N−テトラデシルマレイミド、N−ペンタデシルマレイミド、N−ヘキサデシルマレイミド、N−ヘプタデシルマレイミド、N−オクタデシルマレイミド、N−ノナデシルマレイミド、N−エイコシルマレイミドなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくはN−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロイルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−ペンチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドである。これらの特定単量体Cは1種単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0054】
特定単量体A〜Cの混合比は、所望の構造単位となるような量比であれば特に制限されない。具体的には、上記したように、特定単量体A・B(双方使用する場合は合計量)と、特定単量体Cとの量比(モル比)が、95:5〜30:70、好適には90:10〜50:5
0の範囲にあることが望ましい。この仕込み比が、ほぼ重合体の組成に相当する。
【0055】
また、必要に応じて、上記特定単量体A〜Cに加えて、上記特定単量体A〜Cとラジカル共重合可能な他の単量体(他の単量体)を共重合させてもよい。
この他の単量体の具体例としては、例えば、
(イ)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの炭素数4〜12のアルキル(メタ)アクリレート類、
(ロ)スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、3-メチルスチレン、2-メチル
スチレン、4-メトキシスチレン、2-ヒドロキシメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-エトキシスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,4-ジエチルスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロ-3-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、2,4-ジクロロスチレン、6-ジクロロスチレン、1-ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体、
(ハ)ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアミル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレー類、
(ニ)アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレートなどのエポキシ化合物、
(ホ)ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートプロピレン、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの多官能性単量体、
(ヘ)(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N'-メチレン
ビスアクリルアミドなどのアミド化合物、
(ト)塩化ビニル、塩化ビニリデン、脂肪酸ビニルエステルなどのビニル化合物、
(チ)(メタ)アクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、などのエチレン性不飽和カルボン酸、
(リ)(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、
(ヌ)4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)ア
クリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジンなどのピペリジン系単量体、
(ル)2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、
(オ)2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアリルエーテルグリセロールモノアリルエーテルなどのアリルエーテル類、
(ワ)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどの(シクロ)アルキルビニルエーテル類、
(カ)2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらの他の単量体は、共重合することにより上述した構造単位(c)となる単量体である。
【0056】
これらの単量体を共重合する場合、その量は、上記単量体A〜Cの合計量に対して、50モル%以下、好ましくは40モル%以下の量であることが望ましい。
さらに、エチレン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ジイソブチレン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、1−メチル−1−ヘプテン、1−イソオクテン、2−メチル−1−オクテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−2−ペンテン、2−メチル−2−ヘキセン等のオレフィン類、
ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2−エン、5−メチル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2−エン、5−プロピル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2−エン、5−(1‘−ブテニル)−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2−エン、5−ペンチル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2−エン等の環状オレフィン系化合物等を共重合させてもよい。これらは1種または2種以上を併用することができる。
【0057】
本発明に使用されるラジカル開始剤としては公知のフリーラジカルを発生する有機過酸化物やアゾビス系開始剤を用いることができる。
有機過酸化物の具体例としては、ジベンゾイルパーオキサイド、ジイソブチロイルパーオキサイド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、
過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,
1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、
ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、
パーオキサイド、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベン、2,5-ジメチ
ル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジ
メチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン等のジアルキルパーオキサイド類、
t−ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレエート、t-ブチルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル-2,5-ビス(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、α,α'-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-へキシルパーオキシネオデカノエート、t-へキシルパーオキシネオドデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-へキシルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベン
ゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシm-トルオイルベンゾエート、3,3',4,4'-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のパーオキシエステル類、
1,1-ビス(t-へキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-へキ
シルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシク
ロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4-ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ピロパン等のパーオキシケタール類、
t-へキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシ
アリルカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシカーボネート、ジイソプロピルパーオキ
シカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシカーボネート、ジ-2-エ
トキシエチルパーオキシカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート、
ジ-2-メトキシブチルパーオキシカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート類が挙げられる。
【0058】
アゾビス系ラジカル重合開始剤の具体例としては、アゾイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2-アゾビス(4−メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)
、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルボモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2-アゾビス〔2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシルメチル)-2-ヒドロ
キシルエチル]プロピオンアミド〕、2,2-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシルエチル
)プロピオンアミド)、2,2-アゾビス〔N-(2-プロペニル)2-メチルプロピオンアミド〕
、2,2-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、
2,2-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2-アゾビス〔2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕ジハイドロクロライド、2,2-アゾビス〔2-
(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕ジハイドロクロライド、2,2-アゾビス〔2-(2-
イミダゾリン-2-イル)プロパン〕ジサルフェート・ジハイドレート、2,2-アゾビス〔2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン〕ジハイドロクロライド、2,2-
アゾビス〔2-[1-(2-ヒドロキシエチル)2-イミダゾリン-2-イル]プロパン〕ジハイドロ
クロライド、2,2-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)、2,2-アゾビス(2-
メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2-アゾビス〔N-(2-カルボキシ
エチル)2-メチルプロピオンアミジン〕、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミドキシム)、ジメチル2,'-アゾビスブチレート、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタノイックアシ
ッド)、2,2-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0059】
これらの過酸化物またはアゾビス系ラジカル重合開始剤は各々1種単独または2種以上組み合わせても使用することができる。
これらのラジカル重合開始剤の使用量は全単量体合計100モルに対して0.0001
〜10モル、好ましくは0.0001〜5モル、更に好ましくは0.0005〜2モルの範囲にあることが望ましい。ラジカル重合開始剤が少ないと単量体の重合反応率が低くなり生産性が低下し、多すぎても得られる共重合体の分子量が小さくなり、工業的に有用性が低くなってしまう。
【0060】
本発明のマレイミド系共重合体を製造するには公知の重合法が採用できるが、特定単量体A、B中のアルコキシシリル基は水との接触により加水分解をうけることがあるため、溶液重合法が好ましい。
【0061】
溶液重合法に用いられる溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。なお、必要に応じて、これらの溶媒はあらかじめ脱水してから用いてもよい。
【0062】
また、溶媒の使用量は全単量体100重量部に対して600重量部以下、好ましくは400重量部以下である。600重量部を超えると得られる共重合体の分子量が小さくなることがある。また下限は、溶液を形成できれば特に制限されない。
【0063】
上記重合原料を反応容器に装入して重合を行うが、重合に際しては予め真空脱気または窒素置換等により、反応系外に溶存酸素を除外しておくことが適当である。
また、重合温度は−50〜200℃、重合時間は1〜100時間の範囲が好ましい。重合制御のし易さと生産性より、重合温度は50〜150℃、重合時間は1〜50時間の範囲がより好ましい。
【0064】
共重合体中の特定単量体AおよびBに由来するアルコキシシリル基は、上記重合反応の後に、加水分解・縮合してもよい。加水分解・縮合は、水を添加すれば進行するが、触媒として、酸、アルカリ、アミン類、金属塩、有機金属化合物等を添加してもよい。加水分解・縮合によってシロキサン結合による架橋(-O-Si-O-Si-)が形成される。
【0065】
本発明のマレイミド系共重合体は重合溶液をそのままキャストしてコーティング材やフィルム、シート等の成形に用いてもよく、また、重合溶液から公知の方法により残存溶媒等を除去して共重合体を単離してもよい。
【0066】
さらに必要に応じて架橋剤、架橋助剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の添加剤、溶媒分散シリカゾル、溶媒分散アルミナゾル、溶媒分散酸化亜鉛ゾル、溶媒分散酸化セリアゾル、溶媒分散ITO、溶媒分散酸化ジルコニアゾル等の金属酸化物、複合金属酸化物ゾル等を混合してもよい。
【0067】
本発明に係る共重合体は、耐熱性が高く、しかも光学異方性が小さく、複屈折が小さく
、種々の光学用途に使用される。
また、本発明のマレイミド系共重合体から形成されたフィルムの光線透過率(400nm)は85%以上であることが好ましい。光線透過率(400nm)85%未満では透過光損失が大きく、光学材料としての使用に制限が生じることがあり好ましくない。
【0068】
このようなフィルムは、重合体溶液をキャストしたり、基材上にコートし乾燥することで製造することが可能である。
このようなフィルムは、光学部品、電子・電気部品に有用である。なかでもTFT型LCD、STN型LCD、PDPなどの表示デバイス基板部品等や、導光板、保護フィルム、位相差フィルム、タッチパネル、等の用途に好適である。更に、これらフィルム用途のみならず各種コーティング剤として有用である。
[実施例]
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
また、実施例中における各種の測定方法は、下記のとおりである。
(1)GPCによる重量平均分子量(ポリスチレン換算):トーソー社製GPC、HLC8010 により、マレイミド系共重合体0.5gを100ccのテトラヒドロフランに
溶解して試料とし、標準ポリスチレンは、東ソー社製の標準ポリスチレンを使用して測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg):セイコーインスツルメント社製 示差走査熱量計 DSC6200を用いて、昇温速度20℃/min.で測定した。
(3)熱分解開始温度(Td0):セイコーインスツルメント社製 TG−DTA DT
G60を用いて空気中、昇温速度20℃/min.で測定した。
(4)共重合体組成:マレイミド系共重合体 10mgを5mmФチューブにいれ、重水素化
ベンゼン溶媒で液面高さ4cmに溶解、1H-NMR(日本電子製、EX−270)により270MHzで測定し、プロトンの吸収比から求めた。
(5)透明性(分光光線透過率):以下の方法にてマレイミド系共重合体キャストフィルム(厚さ150μm)を作製し、可視・紫外分光光度計(日立製:U-2010 Spectro Photo meter)により、波長550nmでの光線透過率を求めた。
(キャストフィルム作製法)
マレイミド系共重合体溶液をメタノールで再沈、ろ過、メタノール洗浄を行った後、60℃にて真空乾燥を行い、マレイミド系共重合体を得た。さらに、得られた共重合体をトルエンに溶解させ固形分濃度25wt%に調製後、ポリメチルペンテン製シャーレに流し込
み1昼夜常温乾燥させた後、160℃にて90分乾燥して、キャストフィルムを得た。
(6)光学異方性(Re0、Re50):前記マレイミド系共重合体キャストフィルム(厚さ
150μm)を用いて、(株)溝尻光学工業所製 回転アナライザー式自動エリプソメーターにより入射角0°及び50°にて光源にHe-Neレーザー(λ=632.8nm)を使用し測定した。
[実施例1]
還流冷却器、攪拌機を備えた反応機を窒素置換後、N-シクロヘキシルマレイミド(C
HMI)89.6g(0.5モル)、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(M
PTS)124.2g(0.5モル)、脱水トルエン637.8gを加え、室温で1時間攪
拌を行った。その後、1,1-アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(商品名:V−40、和光純薬工業製)脱水トルエン溶液(濃度10wt%)3.67g(0.0015
モル)を加え、反応機内温90℃に加温、攪拌し10時間反応を行った。
【0070】
反応後、室温まで冷却した後、この重合溶液をメタノールで再沈、ろ過、メタノール洗浄を行った後、60℃にて真空乾燥を行いマレイミド系共重合体Aを得た。(収率93wt%)
得られたマレイミド系共重合体Aのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は371,000であった。さらに、1H-NMR積分値より求めたポリマーの構造単位の組成は
MPTS/CHMI=53/47モル%であり、仕込比率に近い組成のマレイミド系共重合体ポリマーが得られている事が確認できた。また、図1に得られた共重合体Aの1H-NMRチャートを示す。
【0071】
また、得られたマレイミド系共重合体AのTgは193℃であり、Td0は375℃で
あった。
更に、キャストフィルムの波長400nmでの光線透過率は90%で、Re0、Re50
ともに1nm未満であった。
[実施例2]
実施例1において、単量体と溶剤の使用量をCHMI 44.8g(0.25モル)、M
PTS 186.3g(0.75モル)、脱水トルエン689.7gに変更した以外は実施例1と同様に重合を行った。
【0072】
反応後、実施例1と同様に再沈、ろ過、洗浄、乾燥を行い、マレイミド系共重合体Bを得た。(収率94wt%)
得られたマレイミド系共重合体Bのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は296,000であった。さらに、1H-NMR積分値より求めたポリマーの構造単位の組成は
MPTS/CHMI=75/25モル%であり、仕込組成どおりマレイミド系共重合体ポリマーが得られている事が確認できた。また、図2に得られた共重合体Bの1H-NMRチャートを示す。
4℃であった。また、キャストフィルムの波長400nmでの光線透過率は90%で、Re0、Re50は、共に1nm未満であった。
[実施例3]
実施例1において、1,1-アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)脱水トルエン溶液(濃度10wt%)2.9g(0.0015モル)に代えて、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(商品名:パーブチル-I、日本油脂製)脱水トルエン溶液(濃度10wt%)2.64g(0.0015モル)に変更した以外は、実施例1と同様に重合を
行った。
【0073】
反応後、実施例1と同様に再沈、ろ過、洗浄、乾燥を行い、マレイミド系共重合体Cを得た。(収率94wt%)
得られたマレイミド共重合体Cのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は332,100であった。さらに、1H-NMR積分値より求めたポリマーの構造単位の組成はM
PTS/CHMI=53/47モル%であり、仕込組成に近いマレイミド系共重合体ポリマーが得られている事が確認できた。
【0074】
得られたマレイミド系共重合体CのTgは195℃であり、Td0は367℃であった
。また、キャストフィルムの波長550nmでの光線透過率は90%で、Re0、Re50
、共に1nm未満であった。
[比較例1]
実施例1において、MPTSを使用せず、CHMI 179.2g(1モル)、脱水トルエン892.4gを用いた以外は実施例1と同様に重合を行ったが、重合反応進行ととも
に系内に沈殿物が生成、反応開始後、約1時間で沈殿物多量生成したため、重合反応を停止した。このCHMI単独重合体をろ過した後、再度、沈殿物をトルエンに溶解を試みたが不溶であった。
【0075】
重合物は、固体で溶剤に不溶であり、光学材料としては不適であるとともに、フィルムに成形できなかった。
[比較例2]
実施例1において、CHMIを使用せず、MPTS 248.4g(1モル)、脱水トルエン989.9gを用いた以外は実施例1と同様に重合を行った。
反応後、エバポレータで40℃にて濃縮しMPTS単独重合体液状ポリマーを得た。(収率88wt%)
得られたMPTS単独重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は96,0
00であった。
【0076】
さらに、このものをトルエンに溶解させ固形分濃度25wt%に調製後、ポリメチルペン
テン製シャーレに流し込み1昼夜常温乾燥させたが、表面に粘着性を有しておりポリメチルペンテン製シャーレよりはがすことは困難であった。さらにこのまま160℃にて90分乾燥したが、キャストフィルムを得ることは困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1で得られた共重合体Aの1H-NMRチャートを示す。
【図2】実施例2で得られた共重合体Bの1H-NMRチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)および(2)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種と、
【化1】

(式中、R1は炭素数1〜8の有機基を示し、R2は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示し、mは0〜2の数である。)
【化2】

(式中、R3は水素原子またはメチル基であり、Xは下式(3)で示す置換基を表す。)
【化3】

(式中、R4は炭素数1〜8の有機基を示し、R5は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示し、nは、0〜2の数であり、pは1〜5の数である。)
(b)下記一般式(4)で表されるマレイミド骨格を有する構造単位
とを有するマレイミド系共重合体。
【化4】

(式中、R6は炭素数1〜20のアルキル基または脂環式基である。)
【請求項2】
共重合体中の構造単位(a)と、構造単位(b)との量比(モル比)が、95:5〜30:70の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のマレイミド系共重合体。
【請求項3】
共重合体の重量平均分子量が10000〜1000000の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載のマレイミド系共重合体。
【請求項4】
共重合体中に、さらに、アルキル(メタ)アクリレート類、芳香族ビニル類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、エポキシ化合物類、アミド化合物、ビニル化合物、
エチレン性不飽和カルボン酸化合物、ピペリジン化合物、ビニルエーテル類、アリルエーテル類、(シクロ)アルキルビニルエーテル類、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類から誘導される構造単位(c)が、50モル%以下の量で含まれることを特徴とする請求
項1〜3のいずれかに記載のマレイミド系共重合体。
【請求項5】
請求項1乃至4記載の共重合体中のアルコキシシリル基が加水分解・重縮合して形成された架橋構造を有することを特徴とするマレイミド系共重合体。
【請求項6】
(a)下記一般式(9)および(10)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種と、
【化5】

(式中、R1は炭素数1〜8の有機基を示し、R2は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基を示し、mは0〜2の数である。)
【化6】

(式中、R3は水素原子またはメチル基であり、Xは式(11)で示す置換基を表す。)
【化7】

(式中、R4は炭素数1〜8の有機基を示し、R5は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示し、nは、0〜2の数であり、pは1〜5の数である。)
(b)下記一般式(12)で表されるマレイミド化合物とを、
【化8】

(式中、R6は炭素数1〜20のアルキル基または脂環式基である。)
可溶性溶媒中で、ラジカル開始剤の存在下に溶液重合することを特徴とするマレイミド系共重合体の製造方法。
【請求項7】
請求項6の方法でマイイミド系共重合体を製造したのち、共重合体のアルコキシシリル
基を加水分解・縮合することを特徴とする請求項5に記載のマレイミド系共重合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載のマレイミド系共重合体からなる光学用フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−124569(P2006−124569A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316657(P2004−316657)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】