説明

マーキング液を監視する装置及び方法

固体粒子85をその中に有するキャリア液84を含むマーキング液83を監視する方法及び装置。送信機82は超音波信号Sをマーキング液83中に放射する。超音波信号Sは受信機90によって受信され、コンピュータ100によって処理されてマーキング液83の温度及びマーキング液83中の固体粒子85の濃度のうちの少なくとも一方が求められる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、包括的には画像転写技術に関し、より詳細には、画像転写装置におけるマーキング液を監視する装置及び方法、並びに当該装置及び当該方法を利用する画像転写装置に関する。
【0002】
本明細書において使用される場合、用語「画像転写装置」は概して、レーザプリンタ、複写機、ファクシミリ等を含む、画像形成プロセスにおいて画像を形成及び/又は転写するのに使用されるすべての種類の装置及びシステムを指す。電子写真プロセスが、1つの例示的な画像形成プロセスである。本明細書において使用される場合、用語「電子写真プロセス」は、乾式電子写真プロセス及び湿式電子写真(LEP)プロセスの両方を含む。
【0003】
電子写真画像転写装置において、光導電材料(すなわち光受容体)の表面が実質的に均一な静電電位に帯電し、それによって、当該表面が感光性を得る。光受容体表面の領域を、再現される元の文書の光画像に選択的に曝すことによって、静電潜像が帯電した光導電材料の表面に形成される。光受容体表面上の、光に曝される領域と曝されない領域との間に帯電密度の差が生じる。光受容体表面上の静電潜像は静電トナー又は顔料を使用して現像され可視画像になる。トナーは、光受容体表面、現像電極、及びトナーの相対的な帯電に応じて、光に曝されているか又は曝されていないかのいずれかの光受容体表面に選択的に引き付けられる。光受容体表面は、正又は負のいずれかに帯電し、トナーシステムは同様に負又は正に帯電した粒子を含み得る。回転ドラム又はベルトの形態であり得る中間転写部材が光受容体表面の近くを通過し、トナーが光受容体表面上の現像される画像のパターンで光受容体表面から中間転写部材上に転写される。次いで、1枚の紙又は他の媒体が、回転ドラム又はベルトの形態であり得る中間転写部材の近くを通過し、トナーが中間転写部材から紙上に転写され、それによってハード画像が形成される。いくつかの画像転写装置では、中間転写部材は使用されず、紙又は他の媒体が光受容体表面の近くを通過して実際の画像が形成される。
【0004】
いくつかの画像転写装置では、静電潜像を光受容体表面上に現像するのに使用されるトナー又は顔料が、トナー又は顔料のキャリア又は展色剤として作用する別の材料を有する懸濁液又はディスパージョン中で光受容体表面に供給される。このようなシステムでは、一定に安定させる必要があるプロセス及び材料のパラメータ、並びに高画質を保証する良好に制御された値が存在する。たとえば、キャリア中のトナー又は顔料の濃度が、画像転写装置によって生成されるハード画像の品質に影響を与え、キャリア及びその中のトナー又は顔料の温度も同様に影響を与える。これらのパラメータが所望の範囲から逸脱する場合、ハード画像の品質が悪影響を受ける。したがって、キャリア中の粒子(たとえばトナー又は顔料)の濃度と、温度と、他の材料又はプロセスのパラメータ(たとえば導電性、液位等)とを測定するセンサが利用され得る。
【0005】
画像転写装置における粒子濃度と、温度と、他の材料又はプロセスのパラメータとを求める方法及び装置は既知であり、首尾よく実施されている。しかしながら、粒子濃度及び温度を求める改善された方法及び装置が常に望まれている。改善された方法及び装置は、複雑度を低減するか、コストを低減するか、精度を向上させるか、必要とされる較正の頻度を少なくするか、必要とされる洗浄を少なくするか、色の交差汚染の影響を受けにくくなるか、又はより広い測定範囲を提供することができる。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において説明される本発明は、マーキング液を監視する方法及び装置を提供する。一実施の形態で本方法は、超音波信号を放射器からマーキング液中に放射すること、マーキング液中で、第1の反射器からの第1の反射超音波信号及び第2の反射器からの第2の反射超音波信号を受信することであって、放射器、第1の反射器、及び第2の反射器は互いに対して既知の位置にある、受信すること、並びに、マーキング液の温度及びマーキング液中の固体粒子の濃度のうちの少なくとも一方を求めるために、第1の反射超音波信号及び第2の反射超音波信号を処理することを含む。
【0007】
一実施の形態では、本装置は、超音波信号をマーキング液中に送信する送信機と、超音波信号を受信する受信機と、受信信号に応答するコントローラとを備え、当該コントローラは、マーキング液の超音波減衰及び超音波速度を求めるように構成され、超音波減衰、超音波速度、マーキング液温度、及び固体粒子濃度の間の所定の関係を使用してマーキング液の温度及びマーキング液中の固体粒子の濃度のうちの少なくとも一方を求めるようにさらに構成される。
【0008】
別の実施の形態では、本装置は、超音波信号をマーキング液中に送信する送信機と、超音波信号の第1の部分を反射するように構成される第1の反射器と、超音波信号の第2の部分を反射するように構成される第2の反射器と、第1の反射器からの第1の反射超音波信号及び第2の反射器からの第2の反射超音波信号を受信する受信機と、第1の反射超音波信号及び第2の反射超音波信号に応答してマーキング液の温度及びマーキング液中の固体粒子の濃度のうちの少なくとも一方を求めるコントローラとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態によるマーキング液の監視を実施する装置及び方法を実施する画像転写装置の機能ブロック図である。
【図2】一実施形態による画像転写装置の概略図である。
【図3】一実施形態によるマーキング液を監視する装置の概略図である。
【図4】一実施形態によるマーキング液を監視する装置の斜視図である。
【図5A】超音波減衰、マーキング液温度、及び固体粒子濃度の間の関係を示すグラフである。
【図5B】超音波速度、マーキング液温度、及び固体粒子濃度の間の関係を示すグラフである。
【図6A】一実施形態によるマーキング液を監視する方法を示すブロック図である。
【図6B】一実施形態によるマーキング液を監視する方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明では、本明細書の一部を成す添付の図面が参照され、当該図面において、例示のために、本発明を実施することができる特定の実施形態が示される。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、構造的又は論理的な変更を行うことができることは理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定の意味に取られるものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0011】
図1及び図2を参照すると、一実施形態による電子写真画像形成動作を実施するように構成される画像転写装置10の例示的な構成が示されている。図示されている画像転写装置10は、画像形成部材20と、帯電装置30と、露光装置40と、現像ステーション50と、画像転写装置60と、洗浄装置70とを備える。これよりも多いか、少ないか、又はこれに代わる構成要素を含む他の構成が可能である。簡潔にするために、本発明による実施形態は本明細書において、光受容体表面を有する湿式電子写真(LEP)プリンタに関して図示及び説明されるが、本発明は、画像転写装置10の他の実施形態に適用可能であると共に有用であるものと理解されたい。
【0012】
画像形成部材20は、光受容性表面22を有するドラム21(図2)を備えることができる。画像は、光受容性表面22上にさらに後述するように形成及び現像することができる。画像形成部材20は、軸28を中心として回転することができ、光受容性表面22は帯電装置30、露光装置40、現像ステーション50、画像転写装置60、及び洗浄装置70に近接して通過する。他の実施形態において、画像形成部材20の他の構成(たとえば光受容体ベルト)が可能である。
【0013】
帯電装置30は、画像形成部材20の光受容性表面22に電荷(通常−500V〜−1000V又は500V〜1000V)を提供するように構成される。図2に示される例示的な実施形態において、帯電装置30は帯電ローラ32として具現化されている。一実施形態において、帯電ローラ32は軸34を中心に回転すると共に画像形成部材20の光受容性表面22に接触して当該光受容性表面22に電荷を提供するように構成される。光受容体の帯電が開始するとき、表面22は所望の電荷よりも低い電荷にある。帯電ローラ32が表面22の近傍に移動すると、光受容性表面22は帯電するようになる。他の実施形態では、帯電装置30はたとえば、コロトロン、ダイコロトロン、スコロトロン、ダイスコロトロン、ピンスコロトロン、又は当該技術分野において既知の任意の他の種類の帯電装置とすることができる。
【0014】
露光装置40は、形成される所望の画像に対応する選択される位置において光受容性表面22上の電荷を放出するように構成される。電荷の放出は光受容性表面22上に潜像を提供する。一実施形態では、露光装置40は、形成される画像に従って光ビームを走査することによって光受容性表面22上に静電潜像を形成する(レーザのような)光源42として実装することができる。静電潜像は、光受容性表面22の露光される部分と露光されない部分との間の表面電位の差に起因するものである。露光装置40は、それぞれさまざまな色、たとえばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)に対応する、光受容性表面22上の複数の画像を露光する。
【0015】
現像ステーション50は、マーキング剤を露光される光受容性表面22に提供するように構成される。マーキング剤は、帯電すると共に、潜像に対応する光受容性表面22の放電される位置に引き付けられ、それによって潜像を現像することができる。一実施形態において、現像ステーション50は、(Exxon Corporationから商品名Isoparで入手可能な、時として「画像形成オイル」とも呼ばれるイソパラフィン酸炭化水素油のような)キャリア液中に分散される固体粒子(すなわち、静電トナー又は静電顔料)の混合物を含むマーキング液を、画像形成部材20の光受容性表面22に提供し、トナー又は顔料が光受容性表面22の、静電潜像が形成される部分に付着して、それによって光受容性表面22上に可視トナー画像が形成される。キャリア液は通常、絶縁性である。
【0016】
現像ステーション50は、マーキング液を収容する貯蔵容器52からマーキング液を供給される。図1において、貯蔵容器52は現像ステーション50の内部に配置されるものとして示されているが、代替的に現像ステーション50から離れて配置されてもよい。一実施形態では、貯蔵容器52は、現像ステーション50の内部にあり、比較的容量が小さく、また比較的容量の大きい外部の貯蔵容器54からマーキング液を定期的に又は絶えず補給される。図2を参照すると、一実施形態において、現像ステーション50は、露光装置40によって露光されるカラー画像に対応する種々の色のトナー又は顔料を有するマーキング液を提供することができる複数の現像ローラ56を備えることができる。複数の現像ローラ56のそれぞれには、関連付けられる貯蔵容器52、54から適切な色のマーキング液を供給することができる。
【0017】
画像転写装置60は、画像形成部材20上に形成される、現像される画像のトナー又は顔料を、媒体66に転写するように構成される。一実施形態では、画像転写装置60は、画像形成部材20の光受容性表面22と接触している中間転写ドラム62と、転写ドラム62とのニップを画定する固定ドラム又は圧ドラム64とを備える。転写ドラム62が光受容性表面22と接触すると、現像される画像のトナー又は顔料が表面22から転写ドラム62に転写される。1枚の紙のような媒体66は、転写ドラム62と圧ドラム64との間のニップ内に供給され、画像を規定するトナー又は顔料が転写ドラム62から、たとえば1枚の紙68とすることができる媒体66に転写される。圧ドラム64は画像を形成するトナー又は顔料の粒子を媒体66に融着させる。
【0018】
洗浄装置70は、光受容性表面22から転写ドラム62に転写されなかったいかなるトナー又は顔料も、光受容性表面22が帯電装置30によって再び帯電する前に除去するように構成される。一実施形態では、洗浄装置70は、洗浄液を光受容性表面22に塗布して、残りのトナー又は顔料の除去を補助することができる。本発明による一実施形態では、洗浄液は現像ステーション50によって提供されるマーキング液中に使用されるキャリア液である。
【0019】
画像転写装置10が上述のように動作して画像を形成すると、貯蔵容器52、54内のマーキング液を含むキャリア液及び固体粒子(すなわちトナー及び顔料)が徐々に消費される。しかしながら、印刷されるページの内容に応じて、消費されるキャリア液及び固体粒子の量は異なる。(ページの、画像領域によって被覆される部分の観点から)画線比率が低い印刷ページを、画線比率が高い印刷ページと比較すると、画線比率が低いページは、画線比率が高いページよりも消費するキャリア液が多く、且つ消費する固体粒子が少ない。したがって、キャリア液中の固体粒子の所望の濃度を維持するために必要なように、キャリア液又は固体粒子を定期的に又は絶えず貯蔵容器52、54に追加しなければならない。加えて、画像転写装置10が動作されると、マーキング液の温度が変動してマーキング液の粘度及び他の特性に変化が生じるおそれがある。マーキング液の温度変動は、貯蔵容器52、54内のマーキング液の体積、貯蔵容器52、54内のマーキング液に加えられるキャリア液及び固体粒子の体積、マーキング液に加えられるキャリア液及び固体粒子の温度、並びに画像転写装置10によってマーキング液に伝達される熱量のような要因に依存し得る。したがって、マーキング液中の固体粒子の濃度及びマーキング液の温度のうちの少なくとも一方を正確に測定する必要がある。
【0020】
マーキング液中の固体粒子の濃度及びマーキング液の温度のうちの少なくとも一方を測定するために、また、したがってキャリア液又は固体粒子のいずれを貯蔵容器52、54に追加すべきかを判断するために、マーキング液を監視するセンサ80が設けられる。センサ80は、図1において貯蔵容器52内に配置されるものとして示されている。しかしながら、他の実施形態では、センサ80は、貯蔵容器54内、又はマーキング液の画像形成部材20への送達経路の任意の部分に配置されてもよい。一実施形態では、センサ80は各色のマーキング液に対して設けられる。一実施形態では、2つ以上のセンサ80を各色のマーキング液に利用することができる(たとえば貯蔵容器52、54のそれぞれの中に1つのセンサ80)。一実施形態では、センサ80は画像転写装置10の常設の構成要素ではなく、画像転写装置10に選択的に設置又は結合してマーキング液を監視することができる。一実施態様では、センサ80は複数の画像転写装置によって使用可能なサービスツールにおいて実施される。
【0021】
ここで図3及び図4を参照すると、本発明によるセンサ80の一実施態様が示されている。センサ80は、超音波ビーム又は信号Sを、たとえば貯蔵容器52又は貯蔵容器54内に含まれているマーキング液83中に送信する送信機82を備える。マーキング液83は、固体粒子85をその中に有するキャリア液84を含む。送信機82は、超音波信号Sを第1の反射器86及び第2の反射器88に向けるように構成される。第1の反射器86は、超音波信号Sの第1の部分R1を反射するように構成され、第2の反射器88は、超音波信号Sの第2の部分R2を反射するように構成される。受信機90は、第1の反射器86からの第1の反射超音波信号R1及び第2の反射器88からの第2の反射超音波信号R2を受信するように構成される。送信機82、第1の反射器86、第2の反射器88、及び受信機90は、互いに対して既知の位置にある。
【0022】
図4を参照すると、1つの例示的な実施形態では、送信機82、第1の反射器86、第2の反射器88、及び受信機90は、単一の機械アセンブリ92として構成され、構成要素間の既知の且つ一定の幾何学的関係を維持する。図4の例示的な実施形態では、送信機82及び受信機90は、単一の超音波変換器要素を時間多重化する単一の超音波送受信機94として具現化されている。送信モードでは、コントローラ100は変換器要素を送信波形(たとえば正弦波バースト)で駆動する。次いで、コントローラ100は受信モードに切り替え、超音波エネルギーが変換器要素に戻って当該変換器要素を励起すると、当該変換器要素からの電圧出力を増幅及びデジタル化する。一実施態様では、送信モードにおいて、変換器要素は、振幅において約20ボルトのピークトゥピークで駆動され、受信モードにおいて電圧出力は1ミリボルト〜100ミリボルトのピークトゥピークの範囲内にある。
【0023】
第1の反射器86は、自身を貫通して延在する開口97を有する反射平面96を備える部分反射器である。開口97は、超音波信号Sの一部が第1の反射器86に入射して第2の反射器88の反射平面98まで通過することを可能にする。一実施形態では、反射平面96、98は、超音波信号Sの波長の約1/10未満の表面変化を有し、波面収差及び干渉を低減する。一実施形態では、超音波信号Sは3.5MHzの周波数を有し、対応する波長は約350マイクロメートルであり、反射平面96、98は約35マイクロメートル以下の表面変化を有する。
【0024】
コントローラ100は、第1の反射超音波信号R1及び第2の反射超音波信号R2に応答して、マーキング液83の温度及びマーキング液83中の固体粒子85の濃度のうちの少なくとも一方を求める。一実施態様では、コントローラ100は、第1の反射超音波信号R1及び第2の反射超音波信号R2を使用してマーキング液83の超音波減衰及び超音波速度を求めるように構成される。次いで、コントローラ100は、マーキング液83の求められた超音波減衰及び超音波速度を、超音波減衰、超音波速度、マーキング液温度、及び固体粒子濃度の間の既知の関係と比較して、マーキング液83の温度及びマーキング液83中の固体粒子85の濃度のうちの少なくとも一方を求める。
【0025】
超音波減衰、超音波速度、マーキング液温度、及び、ブラックインク粒子の濃度範囲での固体粒子濃度の間の実験によって求められた関係が図5A及び図5Bのグラフに示されている。同様の関係を、他の色及び固体粒子の濃度に関して求めることができる。グラフから分かるように、超音波減衰が、固体粒子の濃度と共に大きく変化して、温度と共に小さく変化する(図5A)一方で、超音波速度は、温度と共に大きく変化して、個体粒子の濃度と共に小さく変化する(図5B)。換言すれば、超音波減衰は固体粒子濃度に密接に関連して温度には密接には関連せず、一方で超音波速度は温度に密接に関連して固体粒子濃度には密接には関連しない。センサ80は、図5A及び図5Bに示すような既知の温度及び固体濃度を有するマーキング液サンプルにおける超音波減衰及び超音波速度の測定を行うことによって較正することができる。センサ80の動作中に、測定された超音波減衰及び超音波速度のデータの較正データに対する最良の適合が計算され、測定されたマーキング液温度及び固体粒子濃度がもたらされる。
【0026】
超音波減衰は、超音波波長が固体粒子85のサイズよりも著しく長い(たとえば、固体粒子85のサイズよりも少なくとも約10倍長い)場合には、マーキング液83中の固体粒子のサイズには影響されないことが実験によって実証されている。1つの実験では、(約350マイクロメートルに対応する波長を有する)3.5MHzの超音波周波数が、約5マイクロメートル未満の粒子サイズに影響されないことが分かった。減衰は通常、粒子による超音波の散乱又は回折の結果であるため、超音波減衰と固体粒子濃度との間の関係を観察するためには、超音波波長は粒子サイズと同程度であるか又はそれよりも小さくなくてはならないと一般には理解されているため、このような結果は驚くべきものである。また、粘度は必ず温度に大きく依存するため、超音波減衰が温度に大きくは依存しないことも驚くべきことである。特定の理論を何ら排除することなく、超音波減衰はトナー及び顔料の粒子85の個相における超音波吸収によって引き起こされると推測される。超音波減衰は、マーキング液中の溶解されているポリマー樹脂に影響されず、加えて画像形成剤(たとえば帯電ディレクタ)及び離型剤(たとえば他の油)のようなインク添加剤に影響されないことも示されている。
【0027】
一実施形態では、送信機82によって放射される超音波信号Sは、送信機82の共振周波数に近い周波数を有する。一実施形態では、超音波信号Sは100kHz〜10MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態では、超音波信号Sは単一の周波数を有する。別の実施形態では、超音波信号Sは、送信機82の予期される共振周波数を囲む周波数範囲のような、狭い周波数範囲を掃引することができ、それによって、送信機82の共振周波数の生成される変化が受け入れられることが可能である(たとえば、送信機の3.4MHz〜3.6MHzの掃引は3.5MHzの共振周波数を有すると予期される)。送信機82によって放射される周波数の選択は、たとえば、(送信機82のサイズ、及び反射器86と88との間の間隔を制限する)センサ80が利用可能な空間と、送信機82の共振周波数と、マーキング液83の超音波ビームによって占められる体積の不均一性によって引き起こされる分散と、反射器86、88の反射表面96、98における不均一性とを含む要因によって影響される。
【0028】
波形振幅減衰を正確に測定するために、一実施形態では、超音波信号Sは、送信機82の共振周波数において約16正弦波周期の持続時間を有することができる。3.5MHzの周波数において、16周期は結果として、約5マイクロ秒の信号パルス持続時間をもたらす。他の実施形態では、超音波信号Sの持続時間は、約16正弦波周期よりも長い場合もあるし、約16正弦波周期よりも短い場合もある。一実施形態では、放射される超音波波形の長さは、放射される波形の末端が第1の反射器86から反射される波形の先端と衝突しない程度に十分短い。一実施形態では、望ましくない波形衝突を回避するために、第1の反射器86は送信機82から5mm〜20mmの範囲内の距離だけ離間され、第2の反射器88は送信機82から50mm〜100mmの範囲内の距離だけ離間される。
【0029】
再び図3を参照すると、一実施形態では、マーキング液83の温度及びマーキング液83中の固体粒子85の濃度のうちの少なくとも一方が所定の範囲外にあるときに信号を生成する、コントローラ100に応答する信号装置110を設けることができる。信号装置110は、キャリア液84若しくは固体粒子85又はその両方をマーキング液83に追加する必要があることを示す警告信号112を生成することができる。一実施形態では、コントローラ100は、キャリア液84若しくは固体粒子85又はその両方の、貯蔵容器52、54内のマーキング液83への追加を自動的に制御する。キャリア液84若しくは固体粒子85又はその両方のマーキング液83への追加は、固体粒子85の濃度が所望の所定範囲内に入るまで継続することができる。一実施態様では、コントローラ100は、キャリア液84を含むキャリア液供給源102、固体粒子85を含む固体粒子供給源104、及び、貯蔵容器52、54内のマーキング液83の温度を変更する温度制御装置106を制御する。温度制御装置106は、熱交換器又は抵抗加熱器のような、マーキング液83の温度を変更する任意の適切な装置とすることができる。コントローラ100は、測定された温度及び固体粒子濃度の値を、所望の目標値と比較し、キャリア液供給源102、固体粒子供給源104、及び温度制御装置106を制御して測定値を所望の目標値に調整する。
【0030】
図6Aのフローチャートを参照すると、貯蔵容器内のマーキング液を監視する方法が示されている。ステップ120において、超音波パルスが第1の反射器86及び第2の反射器88に向けてマーキング液83中に放射される。ステップ122において、第1の反射器86からの第1の反射超音波信号R1、及び第2の反射器88からの第2の反射超音波信号R2が受信される。ステップ124において、第1の反射超音波信号R1及び第2の反射超音波信号R2が処理されてマーキング液83の温度及びマーキング液83中の固体粒子85の濃度のうちの少なくとも一方が求められる。受信された反射超音波信号R1、R2はデジタル信号処理のためにデジタル化することができる。
【0031】
図6Bを参照すると、図6Aのステップ124の一実施態様が示されている。ステップ126において、マーキング液83の超音波減衰及びマーキング液83の超音波速度が求められる。第1の反射超音波信号R1及び第2の反射超音波信号R2の振幅を定性的に求めること、並びに、反射超音波信号R1、R2の振幅の比を計算すること、並びに、固体粒子85をその中に有しないキャリア液84から求められる較正係数を使用して振幅比を正規化することによって、マーキング液83の超音波減衰を求めることができる。マーキング液83の超音波速度は、第1の反射器86と第2の反射器88との間の既知の距離、及び、受信機90によって受信されるときの第1の反射超音波信号R1と第2の反射超音波信号R2との間の時間間隔を使用して求めることができる。一実施態様では、センサ80の較正中、多項式曲線が、或る温度範囲(たとえば20℃〜35℃)にわたって(固体粒子85をその中に有しない)キャリア液84の測定された振幅比に適合される。動作中、推測される温度が多項式曲線に当てはめられ、いずれの振幅比がキャリア液84単独のその温度にあるかが計算される。正規化された振幅比は、マーキング液83(すなわち、固体粒子85をその中に有するキャリア液84)の測定された振幅比を、キャリア液84単独の計算された振幅比で除算した値に等しい。
【0032】
ステップ128において、求められた超音波減衰及び求められた超音波速度が、超音波減衰、超音波速度、マーキング液温度、及び固体粒子濃度の間の既知の関係と比較され、ステップ130において、マーキング液83の温度及びマーキング液83中の固体粒子85の濃度のうちの少なくとも一方が求められる。
【0033】
本明細書において説明の目的で具体的な実施形態を図示及び記載してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、広範な代替の実施態様及び/又は均等な実施態様を、図示及び記載した具体的な実施形態に代えることができることを、当業者は理解しよう。具体的には、媒体における超音波減衰及び超音波速度を、超音波パルス又は信号を送信すること、及びこれを媒体を通じて伝搬された後に受信することが可能な任意の構成によって測定することができる。異なる数の変換器、異なる数の反射器(又は反射器が全くない)、及び異なる向きのさまざまな構成要素を使用して超音波減衰及び超音波速度を測定することができる。本出願は、本明細書において論考した好ましい実施形態のあらゆる適応形態又は変形形態を包含することを意図するものである。したがって、本発明は特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが明確に意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵容器(52、54)内のマーキング液(83)を監視する方法であって、前記マーキング液(83)は、固体粒子(85)をその中に有するキャリア液(84)を含み、前記方法は、
超音波信号(S)を放射器(82)から前記マーキング液(83)中に放射することと(120)、
前記マーキング液(83)中で、第1の反射器(86)からの第1の反射超音波信号(R1)、及び第2の反射器(88)からの第2の反射超音波信号(R2)を受信すること(122)であって、前記放射器(82)、前記第1の反射器(86)、及び前記第2の反射器(88)は互いに対して既知の位置にある、受信することと、
前記マーキング液(83)の温度及び前記マーキング液(83)中の前記固体粒子(85)の濃度のうちの少なくとも一方を求めるために、前記第1の反射超音波信号(R1)及び前記第2の反射超音波信号(R2)を処理すること(124)とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の反射超音波信号(R1)及び前記第2の反射超音波信号(R2)を処理することは、
前記マーキング液(83)の超音波減衰及び超音波速度を求めることと(126)、
前記マーキング液(83)の温度及び前記マーキング液(83)中の前記固体粒子(85)の濃度のうちの少なくとも一方を求める(130)ために、前記求められた超音波減衰及び前記求められた超音波速度を、超音波減衰、超音波速度、マーキング液温度、及び固体粒子濃度の間の既知の関係と比較すること(128)とを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マーキング液(83)の超音波減衰を求めること(126)は、
前記第1の反射超音波信号(R1)及び前記第2の反射超音波信号(R2)の振幅の比を計算することと、
前記比を、固体粒子(85)をその中に有しない前記キャリア液(84)から求められる較正係数を使用して正規化することとを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マーキング液(83)の超音波速度を求めること(126)は、前記第1の反射器(86)と前記第2の反射器(88)との間の距離、及び前記第1の反射超音波信号(R1)と前記第2の反射超音波信号(R2)との間の時間間隔を使用して超音波速度を計算することを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
放射器(82)から超音波信号(S)を放射することは、100kHz〜10MHzの範囲内の周波数を有する信号(S)を放射することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
放射器(82)から超音波信号(S)を放射することは、前記固体粒子(85)のサイズよりも少なくとも約10倍長い波長を有する信号(S)を放射することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
放射器(82)から超音波信号(S)を放射することは、約5マイクロ秒のパルス持続時間を有する信号(S)を放射することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
固体粒子(85)をその中に有する液体キャリア(84)を含むマーキング液(83)を監視する装置であって、
超音波信号(S)を前記マーキング液(83)中に送信する送信機(82)と、
前記超音波信号(S)の第1の部分(R1)を反射するように構成される第1の反射器(86)と、
前記超音波信号(S)の第2の部分(R2)を反射するように構成される第2の反射器(88)と、
前記第1の反射器(86)からの第1の反射超音波信号(R1)、及び前記第2の反射器(88)からの第2の反射超音波信号(R2)を受信する受信機(90)と、
前記第1の反射超音波信号、及び前記第2の反射超音波信号に応答して前記マーキング液(83)の温度及び前記マーキング液(83)中の前記固体粒子(85)の濃度のうちの少なくとも一方を求めるコントローラ(100)とを備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
前記送信機(82)及び前記受信機(90)は単一の超音波送受信機(94)を含むことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記送信機(82)、前記受信機(90)、前記第1の反射器(86)、及び前記第2の反射器(88)は、互いに対して既知の位置にあることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記コントローラ(100)は、前記第1の反射信号(R1)及び前記第2の反射信号(R2)を使用して前記マーキング液(83)の超音波減衰及び超音波速度を求めるように構成され、
前記コントローラ(100)は、前記マーキング液(83)の前記超音波減衰及び前記超音波速度を、超音波減衰、超音波速度、マーキング液温度、及び固体粒子濃度の間の既知の関係と比較するようにさらに構成されることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の反射器(86)は5mm〜20mmの範囲内の距離だけ前記送信機(82)から離間され、前記第2の反射器(88)は50mm〜100mmの範囲内の距離だけ前記送信機(82)から離間されることを特徴とする請求項8に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2009−539111(P2009−539111A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513331(P2009−513331)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/013123
【国際公開番号】WO2007/143188
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】