説明

ミキサ

【課題】 ミキサの点検扉にサイズの大きいものを採用可能としてメンテナンス作業のし易い好適なミキサを提供する。
【解決手段】 混合槽2の混合軸3と平行な側の側壁2aを軸受け側の側壁2bよりも所定高さ下方へ落とし込ませて段差を形成させる一方、この混合軸3と平行な側の混合槽側壁2a上部のカバー体側壁8aを前記段差分だけ下方へ延長して面積を広げ、この面積の広げられたカバー体側壁8aにはその略全幅に亘るサイズの大きな点検扉10を開閉自在に備える。また、点検扉10は、比較的小さな力で楽に開閉操作できるように、その上端部をカバー体側壁8aに軸支して上下方向に回動開閉自在とすると共に、点検扉10を開放方向へ付勢するガススプリング12のような付勢手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種混合材料を攪拌・混合処理するミキサに関し、特にメンテナンス性に優れたミキサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、生コンクリート製造プラントに設置されるミキサとして、特許文献1〜3に示されるような横軸式のミキサが周知である。この種のミキサは、砂利、砂、セメント、水、混和剤等の各種材料を投入する混合槽を備え、該混合槽内に水平に混合軸を貫通させて回転自在に軸支し、該混合軸の半径方向に放射状に配設したアームの先端部に混合羽根を取り付けている。
【0003】
また、ミキサ上位の計量槽より払い出される各種材料を混合槽内に投入させる際に材料の一部が周囲に飛散しないように、混合槽の上部には防塵用のカバー体を配設して混合槽内を略密閉状態としていると共に、該カバー体の側壁部分には、特許文献1〜3にも記載されているように、点検扉を開閉自在に備えており、作業員はこの点検扉を介してミキサ内部の洗浄や部品交換、或いは修理等といった各種メンテナンス作業を行っている。
【特許文献1】特開平5−115767号公報
【特許文献2】特開平6−55526号公報
【特許文献3】特開平7−52142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記点検扉のサイズは作業性を考えると大きいほど都合が良いのは勿論であるが、被設置側であるカバー体側壁の広さによって制約を受けるため、従来では、図4、5に示すように、比較的小さい点検扉10′しか採用できず、またその設置位置も混合槽2の側壁2aの高さによる制約を受けるため、ミキサ1′下端部から比較的高い位置にしか設置できなかった。
【0005】
したがって、作業員が点検扉10′を介して行うミキサ1′への各種メンテナンス作業の作業性はあまり良くなく、特にミキサ1′内で作業を行う必要が生じた場合に、作業員が前記点検扉10′を通ってミキサ1′を何度も出入りするのは大変であり、作業効率は決して良いものとは言えず、改良の余地があった。なお、被設置側のカバー体8の側壁8aを、例えば上方に延長させて点検扉を拡張するといった方法も考えられるが、既設のプラントにおいてミキサ1′のみの入れ替えということも多々あり、そのときにはミキサ1′とその上位の計量槽(図示せず)との位置関係は変更できないため、カバー体側壁8aを上方へ延長させることを標準のミキサに採用することは難しい。
【0006】
本発明は上記の点に鑑み、ミキサの点検扉にサイズの大きいものを採用可能としてメンテナンス作業のし易い好適なミキサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載のミキサでは、混合槽に水平に混合軸を貫通させて回転自在に軸支し、該混合軸には混合羽根を取り付けると共に、混合槽の上部には防塵用のカバー体を配設して成るミキサにおいて、前記混合槽の混合軸と平行な側の側壁を軸受け側の側壁よりも所定高さ下方へ落とし込ませて段差を形成させる一方、この混合軸と平行な側の混合槽側壁上部のカバー体側壁を前記段差分だけ下方へ延長し、該カバー体側壁にはその略全幅に亘るサイズの点検扉を開閉自在に備えたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載のミキサでは、前記点検扉は、その上端部をカバー体側壁に軸支して上下方向に回動開閉自在とすると共に、該点検扉を開放方向へ付勢する付勢手段を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項3記載のミキサでは、前記付勢手段は、ガススプリングであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る請求項1記載のミキサによれば、混合槽の混合軸と平行な側の側壁を軸受け側の側壁よりも所定高さ下方へ落とし込ませて段差を形成させる一方、この混合軸と平行な側の混合槽側壁上部のカバー体側壁を前記段差分だけ下方へ延長し、該カバー体側壁にはその略全幅に亘るサイズの点検扉を開閉自在に備えたので、点検扉の大型化が図れて作業性が大変良好となると共に、作業員のミキサへの出入りも格段に容易なものとなり、メンテナンス作業のし易い好適なミキサとすることができる。
【0011】
また、請求項2記載のミキサによれば、点検扉の上端部をカバー体側壁に軸支して上下方向に回動開閉自在とすると共に、該点検扉を開放方向へ付勢する付勢手段を備えたので、比較的小さな力で楽に開閉操作できて作業員の負担を大幅に軽減できると共に、閉操作時における点検扉の急激な閉動作を防止して故障・破損を防ぎ、かつ作業安全性にも優れる。
【0012】
また、請求項3記載のミキサによれば、付勢手段としてガススプリングを採用したので、圧力媒体の供給が不要でメンテナンスも容易となり、装置コストやランニングコストを低廉に抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るミキサにあっては、混合槽の側壁のうち、混合軸と平行な側の側壁を軸受け側の側壁よりも所定高さ下方へ落とし込ませて段差を形成させる一方、この混合軸と平行な側の側壁の上部に位置するカバー体の側壁を前記段差分だけ下方へと延長させ、カバー体側壁の面積を広げる。
【0014】
なお、前記混合軸と平行な側の混合槽側壁の上端部付近は、混合羽根の回転軌跡から外れており、混合物と当接することがないので、上記のようにカバー体の側壁を下方へと延長させても、摩耗上の支障はない。そして、面積が広げられたカバー体側壁に対し、その略全幅に亘るサイズの大きな点検扉をミキサ下端部から比較的低い位置に備え、その点検扉上端部をカバー体側壁に軸支して上下方向に回動開閉自在としていると共に、その両側部には点検扉を開放方向へと付勢する付勢手段であるガススプリングを備えている。
【0015】
そして、作業員がミキサ外からミキサ内部の洗浄等の作業を行う場合や、ミキサ内に入り込んで部品交換や修理等の作業を行う場合には、前記点検扉を開放した状態で行う。このとき、点検扉はカバー体側壁の略全幅に亘る大きさを有していると共に比較的低い位置に備えられているため、作業性は大変良好で、作業員のミキサへの出入りも格段にし易く、作業効率の大幅な向上が期待できる。
【0016】
一方、点検扉を大型化することに伴い重量が増加して取り扱いにくくなる懸念も生じるが、点検扉には点検扉を開放方向へ付勢するようにガススプリングを備え付けているため、比較的小さい力でも楽に開閉操作することが可能となって作業員の負担を大幅に軽減すると共に、閉操作時における点検扉の急激な閉動作を防止できて作業安全性においても有効である。
【0017】
このように、ミキサの混合軸と平行な側の混合槽側壁を軸受け側の側壁よりも所定高さ下方へ落とし込ませて段差を形成させ、その段差分だけカバー体側壁を下方へと延長させてカバー体側壁面積を広げ、カバー体側壁の略全幅に亘るサイズの大きい点検扉の設置を備えるようにしたので、作業員のミキサへの出入りが容易なメンテナンス作業のし易いミキサとなる。また、点検扉には開放方向へ付勢する付勢手段、例えばガススプリングを備えれば、点検扉の大きさや重量等に拘わらず楽にかつ安全に開閉操作できる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を図1〜図3に基づいて説明する。
【0019】
図中の1は、生コンクリート製造プラント等に設置される二軸式のミキサであり、二双の胴より成る混合槽2内に二本の平行で水平な混合軸3を貫通して回転自在に軸支しており、該混合軸3に放射状に配設した多数のアーム4の先端部には混合羽根5を取り付けている。6は前記混合軸3を回転駆動させるための駆動用モータであり、その下位には駆動用モータ6の回転数を減速して混合軸3に伝達する減速機7を配設している。
【0020】
また、前記混合槽2の上部には防塵用のカバー体8を配設して混合槽2内部を略密閉状態としており、ミキサ1上位の計量槽(図示せず)より投入シュート9を介して投入される各種材料の一部がミキサ1周囲に飛散しないように図っていると共に、前記カバー体8の側壁部分には点検扉10を開閉自在に備えており、該点検扉10を介して混合槽2内部の洗浄や部品交換、或いは修理等といった各種メンテナンス作業を可能としている。
【0021】
前記混合槽2の側壁のうち、混合軸3と平行な側の側壁2aを軸受け側の側壁2bよりも所定高さ、例えば、約300mm程度下方へ落とし込ませ、図面に示されるような段差を形成させている。そして、この混合槽側壁2a上部に位置するカバー体8の側壁8aを全長に亘って前記段差分だけ下方へと延長させることにより、カバー体側壁8aの面積を広げている。このとき、混合軸3と平行な側の混合槽側壁2aの上端部付近は、混合軸3の周囲を回転する混合羽根5先端の回転軌跡から外れており、混合材料が当接することがないので、前記のように下方へ多少落とし込ませる構成としても摩耗上の支障はない。
【0022】
なお、図2に示すように、軸受け側の混合槽側壁2b上部に位置するカバー体8の側壁8bの両端部も下方へと延長させているが、段差をわかりやすくするためであって、この部分は延長させなくても良い。
【0023】
そして、面積が広げられたカバー体側壁8aに対し、その略全幅に亘るサイズの、例えば幅が2000mm程度で、かつ高さが750mm程度の非常に大きく作業員が容易に出入り可能な程度に形成された点検扉10を、ミキサ1下端部から1400mm程度という比較的低い位置に備え付け、その点検扉10上端部をカバー体側壁8aに軸支して上下方向に回動開閉自在としていると共に、その両端部には点検扉10を開放方向へと付勢する付勢手段である一対のガススプリング11を備えている。また、12は開放状態とした点検扉10に掛け留めて、閉鎖しないように固定支持する支持片である。
【0024】
なお、図4、5に示すように、従来の点検扉10′は、ミキサ1′下端部から1750mm程度という比較的高い位置に備えられ、幅750mm、高さ500mm程度のものであり、この従来の点検扉10′と比較すれば、前記点検扉10は非常に大きくて作業性も大変良好で、また作業員のミキサ1への出入りも格段にし易い構成となっている。また、点検扉10の開閉構造としては、例えば、一側部を軸支して左右へ回動開閉自在に構成したり、或いは点検扉自体を着脱自在に構成することもできるが、開閉操作に要するスペースや作業性等を考慮すると、本実施例のように上下方向へ回動開閉自在に構成する方が好ましい。
【0025】
また、前記付勢手段であるガススプリング11は、大型化されて重量が増すことにより取り扱いづらくなる懸念のある点検扉10の開閉操作を補助するためのものであり、例えば、本実施例のような幅が2000mm、高さが750mm程度の大きさの点検扉10の場合には重量が85kg程度にもなるが、付勢手段であるガススプリング11を備えたことにより、点検扉10の開操作時には、作業員は比較的小さい力で非常に楽に操作することができて作業員の負担を大幅に軽減できる一方、閉操作時においても、点検扉10の急激な閉動作を抑制できて装置の故障・破損等を防止すると共に、作業員の挟まれ等の事故を未然に防いで作業安全性にも優れたものとしている。
【0026】
なお、ミキサ1の大きさに応じてその上部のカバー体側壁8aに備え付けられる点検扉10の大きさ・重量も変わるため、開閉操作時のバランス等を考慮しながらガススプリング11を適宜選定すると良い。また、付勢手段としては、本実施例にて採用しているガススプリング以外にも、例えば、油圧シリンダやエアシリンダ等も有効に採用することができるが、ガススプリングの場合、圧力媒体の供給を必要とせずメンテナンスも容易で、装置コストやランニングコスト等を低廉に抑えることが可能となり、比較的採用のし易いものとなる。
【0027】
また、図3に示すように、点検扉10を開放状態とした際にカバー体側壁8aに形成される大きな開口部分には手摺材13を着脱自在に備えており、作業員がミキサ1外からメンテナンス作業を行う際には手摺材13を点検扉10両側に備えた掛止溝14に掛止する一方、作業員がミキサ1の混合槽2に出入りする必要が生じた際にだけ手摺材13を取り外すようにすることで作業安全性の向上を図っている。
【0028】
また、カバー体側壁8aには、安全のため、点検扉10の開放操作に応じて駆動用モータ6を停止して混合軸3の回転を強制的にロックするリミットスイッチ15を備えており、万が一他の作業者等が間違ってメンテナンス作業時に混合軸3を回転させることのないように図っている。一方、前記手摺材13を掛止する掛止溝14には、手摺材13の掛止に応じて混合軸3の回転のロックを解除するリミットスイッチ16を備えていると共に、掛止溝14の近傍には駆動用モータ6の起動スイッチ17を備えており、手摺材13を掛止溝14に掛止して手摺が設けられた状態に限り、前記起動スイッチ17の押下操作の間、駆動用モータ6が起動して混合軸3が回転するように構成している。このようにすることにより、例えば、作業員が洗浄ホース等を手に持ち、ミキサ1外から混合軸3やアーム4、或いは混合羽根5等を洗浄操作する場合等において、混合軸3を少しずつ回転させながら行うことで洗い残しの少ない良好な洗浄作業を可能としている。
【0029】
そして、プラントの作業員がミキサ1外から混合槽2内の洗浄や混合羽根5の交換作業を行う場合や、ミキサ1の混合槽2内に入り込んでライナー交換や修理等の作業を行う場合には、作業員は点検扉10を上方へ回動させて開操作する。このとき、点検扉10を開放方向へと付勢するガススプリング11により、作業員は比較的小さい力で楽に開操作することができる。そして、点検扉10が開放された状態で支持片12を掛け留めて固定支持し、作業員はカバー体側壁8aに大きく開放された開口部分を介して各種メンテナンス作業を行う。このとき、点検扉10はカバー体側壁8aの略全幅に亘るほどの大きさを有しているだけでなく、混合槽2の下方側へ向けて大きく形成されているため、従来の点検扉と比較して作業性は大変良好で、また作業員のミキサ1への出入りも格段にし易いものとなっている。
【0030】
このように、ミキサ1の混合軸3と平行な側の混合槽側壁2aを軸受け側の側壁2bよりも所定高さ下方へ落とし込ませて段差を形成させ、その段差分だけカバー体側壁8aを下方へと延長させてカバー体側壁面積を広げたので、カバー体側壁8aの略全幅に亘るサイズの大きい点検扉10の設置も可能となり、作業員のミキサ1への出入りが容易なメンテナンス作業のし易い好適なミキサとなる。また、点検扉10には開放方向へ付勢する付勢手段を備えたので、点検扉10の大きさや重量等に拘わらず楽にかつ安全に開閉操作でき、より作業性に優れた好適なミキサとなる。このとき、付勢手段に、例えばガススプリング11を採用すれば、メンテナンスも容易となり、装置コストやランニングコスト等を低廉に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る、ミキサの一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】点検扉を開放した状態の図1に相当する図である。
【図4】従来のミキサの正面図である。
【図5】図4の側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…ミキサ 2…混合槽
2a、2b…混合槽側壁 3…混合軸
4…アーム 5…混合羽根
6…駆動モータ 7…減速機
8…カバー体 8a、8b…カバー体側壁
10…点検扉 11…ガススプリング(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合槽に水平に混合軸を貫通させて回転自在に軸支し、該混合軸には混合羽根を取り付けると共に、混合槽の上部には防塵用のカバー体を配設して成るミキサにおいて、前記混合槽の混合軸と平行な側の側壁を軸受け側の側壁よりも所定高さ下方へ落とし込ませて段差を形成させる一方、この混合軸と平行な側の混合槽側壁上部のカバー体側壁を前記段差分だけ下方へ延長し、該カバー体側壁にはその略全幅に亘るサイズの点検扉を開閉自在に備えたことを特徴とするミキサ。
【請求項2】
前記点検扉は、その上端部をカバー体側壁に軸支して上下方向に回動開閉自在とすると共に、該点検扉を開放方向へ付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のミキサ。
【請求項3】
前記付勢手段は、ガススプリングであることを特徴とする請求項2記載のミキサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−45579(P2009−45579A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215527(P2007−215527)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000226482)日工株式会社 (177)
【Fターム(参考)】