説明

ミシンのピッカー装置

【課題】簡易な構造で耐久性に優れたミシンのピッカー装置を提供する。
【解決手段】ピッカーリンク5にピッカー7をボビン10に当接する方向と反対方向に回動させる第1の付勢力を付与する第1のねじりコイルばね8と、ピッカーアーム6にピッカー7をボビン10に当接する方向に第1の付勢力よりも弱い力で回動させる第2の付勢力を付与する第2のねじりコイルばね9と、ピッカーリンク5を第1の付勢力の方向と反対方向に移動させるソレノイド2と、ピッカーリンク5に設けられた第2の長孔5Aと、第2の長孔5Aに挿通されて、ピッカーリンク5とピッカーアーム6とを摺動可能に連結する段ねじB2と、を備え、ピッカー7がボビン10に当接した状態で、段ねじB2は第2の長孔5Aの長軸方向の内側面部5D,5Dから離間した位置となるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンのピッカー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一連の縫製動作が終了した後に、オペレータの指示に基づいて、上糸と下糸とを自動的に切断する自動糸切り装置を備えるミシンにおいて、自動糸切り装置により上糸と下糸とを切断する際に、下糸が捲回されているボビンが空回りして、下糸がボビンから余分に引き出されてしまうことによって、その下糸や上糸を所定通りに切断できなかったり、その下糸がボビンやボビンケースなどに絡んでしまったりする。そこで、下糸が余分に引き出されてしまうことを防止するため、ボビンの空転を規制するミシンのピッカー装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ピッカー装置は、例えば、ソレノイドと、該ソレノイドのプランジャーに一端部が連結されたソレノイドリンクと、該ソレノイドリンクの他端部と連結されたベースリンクと、該ベースリンクと一端部が連結されたピッカーリンクと、該ピッカーリンクの他端部と連結されたL字状のピッカーアームと、該ピッカーアームに一端部が連結された略U字状のピッカー軸と、該ピッカー軸の先端部に弾性的に連結されたピッカー等を備えて構成されている。
ピッカーアームは一端部を支点として回動可能に備えられており、該ピッカーアームの屈曲部とピッカーリンクの他端部とが連結されている。また、ピッカーアームの他端部は、ピッカー軸の一端部と連結されている。
ピッカーは細い筒状部材であって、該筒状部材の中にコイルばねが挿通されており、該コイルばねを介してピッカー軸と弾性的に連結されている。
そして、ソレノイドが駆動されてプランジャーを引き付けると、ソレノイドリンクもソレノイド側へと引き付けられ、これに伴って、ベースリンクを介して、ピッカーリンクもソレノイド側に移動することとなる。次いで、ピッカーリンクの移動に伴って、ピッカーアーム,ピッカー軸,ピッカーが一体となって回動し、ピッカーがボビンに当接し、ボビンの空転が抑制される。この時、ピッカーがボビンに当接する際の勢いに伴う慣性力は、ピッカー内部のコイルばねが収縮することにより、吸収される。
【特許文献1】特開平9−056954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ピッカーは細い筒状部材であり、筒状部材の中にコイルばねが挿通された構造をしているため、強度が弱く、ピッカー装置がピッカーの先端部をボビンの側面に押し付ける際に、ピッカーをボビンに対して近付け過ぎたり、近付ける際の勢いに伴う慣性力が強くなったりすることにより、ピッカーが劣化し壊れやすくなったり、また、ボビンに傷をつけてしまうという問題があった。
また、ピッカーの構造は複雑であったため、ピッカー装置の製造にコストがかかっていた。
【0005】
本発明の課題は、簡易な構造で耐久性に優れたミシンのピッカー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ミシン釜に向かって前進して、前記ミシン釜の内部で回転可能に備えられているボビンに当接する当接部材と、前記当接部材と連結され、所定位置を支点として回動可能に備えられる伝達部材と、前記伝達部材と連結されて前記伝達部材を回動させる駆動腕と、を備えるミシンのピッカー装置において、前記駆動腕に、前記伝達部材を介して前記当接部材を前記ボビンに当接する方向と反対方向に回動させる第1の付勢力を付与する第1の付勢部材と、前記伝達部材に、前記当接部材を前記ボビンに当接する方向に前記第1の付勢力よりも弱い力で回動させる第2の付勢力を付与する第2の付勢部材と、前記駆動腕を前記第1の付勢力の方向と反対方向に移動させる駆動手段と、前記駆動腕と前記伝達部材との連結部において前記駆動腕と前記伝達部材の何れか一方に設けられた長孔と、前記長孔に挿通されて、前記駆動腕と前記伝達部材とを連結するとともに、前記長孔に沿って摺動可能な係合部材と、を備え、
前記当接部材が前記ボビンに当接した状態で、前記係合部材は前記長孔の長軸方向の内側面部から離間した位置となるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のピッカー装置において、前記第2の付勢部材は、前記支点に備えられたねじりコイルばねにより構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のピッカー装置において、前記当接部材の前記ボビンへ当接する当接部は、前記ボビンよりも軟らかい軟質素材により形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、駆動手段により、駆動腕を第1の付勢力の方向と反対方向に移動させると第1の付勢力が減じられ、第2の付勢力の方が強くなるので、伝達部材は当接部材がボビンに当接する方向に回動して当接部材がボビンに当接することとなる。当接部材がボビンに当接した状態では、係合部材は長孔の長軸方向の内側面部から離間した位置となるように構成されているので、当接部材がボビンに当接する際の勢いに伴う慣性力を、係合部材が長孔内において摺動することにより、吸収することができる。従って、当接部材を筒状部材とし、該筒状部材の中にコイルばねを設けなくとも、当接部材がボビンに当接する際の勢いに伴う慣性力を吸収することができることとなって、当接部材を簡単な構造とすることができ、該当接部材の耐久性を優れたものとすることができる。即ち、簡易な構造で耐久性に優れたミシンのピッカー装置を提供することができる。
また、当接部材の構造を簡単なものとすることができるので、ピッカー装置の製造コストを抑えることができる。
また、従来のピッカー装置において、駆動腕と伝達部材の何れか一方を本願に係る長孔を設けた駆動腕又は伝達部材と交換し、第2の付勢部材を設け、当接部材を本願に係る当接部材と交換することにより、本願に係るピッカー装置とすることができるので、従来のピッカー装置から本願のピッカー装置への切換えを、さほどコストをかけることなく実現することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られるのは勿論のこと、特に、第2の付勢部材は、支点に備えられたねじりコイルばねにより構成されているので、第2の付勢部材を簡単な構成とすることができ、簡易な構造のピッカー装置を実現できる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明と同様の効果が得られるのは勿論のこと、特に、当接部材のボビンへ当接する当接部は、ボビンよりも軟らかい軟質素材により形成されているので、当接部材がボビンへ当接しても、ボビンに傷をつけてしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
本発明に係るミシンのピッカー装置1は、図1,図2に示すように、駆動手段としてのソレノイド2と、該ソレノイド2のプランジャー2Bに連結されたソレノイドリンク3と、該ソレノイドリンク3に連結されたベースリンク4と、該ベースリンク4に連結された駆動腕としてのピッカーリンク5と、該ピッカーリンク5に連結されたL字状の伝達部材としてのピッカーアーム6と、該ピッカーアーム6に連結された略U字状の当接部材としてのピッカー7等を備えて構成される。
【0013】
ソレノイド2は、ソレノイド本体2Aとプランジャー2B等を備えて構成される。そして、ソレノイド本体2Aは、電流供給されることにより、プランジャー2Bをソレノイド本体2A側へ引き付ける。即ち、ソレノイド本体2Aへの電流の供給・供給停止に伴って、プランジャー2Bは、ソレノイド本体2Aに対して往復運動する。
【0014】
ソレノイドリンク3は、一方の端部3Aがプランジャー2Bに連結されるとともに、他方の端部3Bがベースリンク4の一方の端部4C側と連結されている。そして、ソレノイドリンク3は、ソレノイド本体2Aへの電流供給・供給停止に伴うプランジャー2Bの往復運動をベースリンク4に伝達する。
【0015】
ベースリンク4は、該ベースリンク4の中間位置を第1の支点4Aとして回動可能に備えられている。そして、ベースリンク4は、ソレノイド2のプランジャー2Bの往復運動がソレノイドリンク3を介して一方の端部4C側に伝達されることにより、第1の支点4Aを中心に回動するようになっている。
【0016】
また、ベースリンク4の一方の端部4Cには、ソレノイドリンク3との連結位置よりも更に端側に、ピッカーリンク5の一方の端部5Bが連結されている。より具体的には、ベースリンク4の一方の端部4Cには第1の長孔4Bが設けられており、また、ピッカーリンク5の一方の端部5BにはボルトB1が係合する第1の係合穴(図示省略)が設けられており、ボルトB1を該第1の長孔4Bに挿通して該第1の係合穴に係合させることにより、ベースリンク4とピッカーリンク5とが連結固定されている。第1の長孔4Bを設けることによって、個々の部材のわずかな寸法誤差によって生じるずれに応じて、ボルトB1を第1の長孔4B内の好適な位置で固定することができ、わずかな寸法誤差によって生じるずれが解消されるようになっている。
【0017】
また、ベースリンク4の他方の端部4Dは、自動糸切り装置(図示省略)と連結されている。即ち、ソレノイド2のプランジャー2Bの往復運動がベースリンク4により分配され、ピッカー装置1と自動糸切り装置とを連動して作動させるようになっている。
【0018】
また、ベースリンク4は、第1の支点4Aにおいて、第1の付勢部材としての第1のねじりコイルばね8により、ピッカーリンク5がピッカーアーム6側に移動する方向に、第1の付勢力によって付勢されている。
そして、ソレノイド本体2Aに電流が供給されず該ソレノイド本体2Aがプランジャー2Bを引き付けていない場合には、第1のねじりコイルばね8によりベースリンク4が付勢されて回動し、ピッカーリンク5がピッカーアーム6側に移動した状態となる。
一方、ソレノイド本体2Aに電流が供給されると、ソレノイド本体2Aがプランジャー2B及びソレノイドリンク3を引き付けるため、第1のねじりコイルばね8の付勢によって回動していたベースリンク4も反対方向に回動し、ピッカーリンク5も強制的にソレノイド2側に移動した状態となる。
【0019】
ピッカーリンク5は、他方の端部5Cにおいて、ピッカーアーム6と連結されている。より具体的には、ピッカーリンク5の他方の端部5Cには第2の長孔5Aが設けられており、また、ピッカーアーム6の屈曲部6Bには、係合部材としての段ねじB2が係合する第2の係合穴(図示省略)が設けられている。そして、段ねじB2を該第2の長孔5Aに挿通して該第2の係合穴に係合することにより、ピッカーリンク5とピッカーアーム6とが連結される。このとき、ピッカーアーム6は、段ねじB2が第2の長孔5Aの長軸に沿って摺動することにより移動可能とされている。
また、ソレノイド本体2Aに電流が供給されず、ピッカーリンク5がピッカーアーム6側に移動した状態では、第2の長孔5Aの長軸方向のベースリンク4側の内側面部5Dにピッカーアーム6の第2の係合穴に係合された段ねじB2が当接するようになっている。一方、ソレノイド本体2Aに電流が供給されて、ピッカーリンク5がソレノイド2側に移動した状態では、第2の係合穴に係合された段ねじB2が第2の長孔5Aの長軸方向の内側面部5D,5Dから離間した位置となるように構成されている。
【0020】
ピッカーアーム6は、該ピッカーアーム6の一方の端部6Cを第2の支点6Aとして回動可能に備えられている。また、該ピッカーアーム6の他方の端部6Dは、ピッカー7と連結されている。
また、ピッカーアーム6は、第2の支点6Aにおいて、第2の付勢部材としての第2のねじりコイルばね9により、該ピッカーアーム6がピッカー7をボビン10に当接させる方向に回動するように、第2の付勢力によって付勢されている。
ここで、第2のねじりコイルばね9による第2の付勢力は、第1のねじりコイルばね8による第1の不勢力に比べて小さい。
【0021】
したがって、ソレノイド本体2Aが駆動されず、第1のねじりコイルばね8の第1の付勢力により、ベースリンク4が回動している場合では、ピッカーリンク5がピッカーアーム6側に移動した状態となるので、ピッカーリンク5の第2の長孔5Aのベースリンク4側の内側面部5Dにピッカーアーム6の第2の係合穴に係合された段ねじB2が当接し、ピッカーリンク5がピッカーアーム6を押圧することとなり、第2のねじりコイルばね9の第2の付勢力に従ったピッカーアーム6の回動が抑えられるので、ピッカー7がボビン10から離れるようになっている。
一方、ソレノイド本体2Aが駆動されて、第1のねじりコイルばね8の第1の付勢力によって回動していたベースリンク4が反対方向に回動した場合では、ピッカーリンク5がソレノイド2側に移動した状態となるので、第2の長孔5Aの長軸方向の内側面部5D,5Dから離間した位置に段ねじB2が移動し、ピッカーリンク5によるピッカーアーム6への押圧がなくなるので、ピッカーアーム6が第2のねじりコイルばね9の第2の付勢力により回動されて、ピッカー7がボビン10に当接するようになっている。
【0022】
ピッカー7は、金属等の棒材が略U字状に成形された部材であって、一方の端部7Bがピッカーアーム6に連結されており、他方の端部7Cはボビン10に当接する当接部7Aとなっている。また、当接部7Aは、ボビン10よりも軟らかい軟質素材により形成されている。具体的には、例えば、ボビン10が鉄又はアルマイト処理されたアルミ等の金属から形成されている場合には、当接部7Aの材料としては、鉄鋼材料よりも軟質の黄銅若しくは合成樹脂等を用いる。
【0023】
ボビン10は、例えば、鉄又はアルマイト処理されたアルミ等の金属から形成されており、下糸が捲回されている。そして、ボビン10は、ボビンケース11内に収納された状態でミシン釜(図示省略)にセットされる。ボビンケース11は、ピッカー7が挿通可能な切欠部11Aを備えている。そして、ピッカーアーム6の回動に伴ってピッカー7はボビン10に近づき、ボビンケース11に設けられた切欠部11Aを挿通して、ボビン10に当接するようになっている。
【0024】
次に、上述のような構成のピッカー装置1の動作について説明する。
まず、縫製作業中においては、ソレノイド本体2Aに電流が供給されず、図1に示すように、ソレノイド本体2Aがプランジャー2Bを引き付けないので、第1のねじりコイルばね8によりベースリンク4が付勢されて、ピッカーリンク5がピッカーアーム6側に移動する。このとき、ピッカーアーム6がピッカーリンク5により押圧されるため、第2のねじりコイルばね9から加えられる第2の付勢力によるピッカーアーム6の回動が抑えられ、ピッカー7がボビン10から離れるようになっている。
次に、一連の縫製作業が終了した際には、ソレノイド本体2Aに電流が供給され、図2に示すように、ソレノイド本体2Aがプランジャー2B,ソレノイドリンク3を引き付けるため、第1のねじりコイルばね8の付勢によって回動していたベースリンク4も反対方向に回動し、ピッカーリンク5も強制的にソレノイド2側に移動する。そのため、ピッカーリンク5によるピッカーアーム6への押圧がなくなるので、ピッカーアーム6が第2のねじりコイルばね9から加えられる第2の付勢力により回動し、この回動に伴って、ピッカー7がボビン10に当接し、ボビン10の空転が抑えられる。
このとき、ピッカー7がボビン10に当接する際の勢いに伴う慣性力は、ピッカーアーム6と該ピッカーアーム6の第2の係合穴に係合された段ねじB2とが、第2の長孔5A内において、ソレノイド2側に摺動することにより、吸収されるようになっている。
【0025】
また、ソレノイド2の駆動に伴うプランジャー2Bのソレノイド本体2A側への移動は、ソレノイドリンク3,ベースリンク4を介して自動糸切り装置にも伝えられ、自動糸切り装置によって、上糸及び下糸の切断が行われる。
【0026】
以上に説明した本発明に係るピッカー装置1によれば、ソレノイド2により、ピッカーリンク5を第1の付勢力の方向と反対方向に移動させると第1の付勢力が減じられ、第2の付勢力の方が強くなるので、ピッカーアーム6はピッカー7がボビン10に当接する方向に回動してピッカー7がボビン10に当接することとなる。ピッカー7がボビン10に当接した状態では、段ねじB2は第2の長孔5Aの長軸方向の内側面部5D,5Dから離間した位置となるように構成されているので、ピッカー7がボビン10に当接する際の勢いに伴う慣性力を、段ねじB2が第2の長孔5A内において摺動することにより、吸収することができる。従って、従来のピッカー装置のようにピッカー7を筒状部材とし、該筒状部材の中にコイルばねを設けなくとも、ピッカー7がボビン10に当接する際の勢いに伴う慣性力を吸収することができることとなって、ピッカー7を簡単な構造とすることができ、該ピッカー7の耐久性を優れたものとすることができる。即ち、簡易な構造で耐久性に優れたミシンのピッカー装置1を提供することができる。
また、ピッカー7の構造を簡単なものとすることができるので、ピッカー装置1の製造コストを抑えることができる。
また、従来のピッカー装置において、ピッカーリンクを本願に係る第2の長孔5Aを設けたピッカーリンク5と交換し、第2のねじりコイルばね9を設け、ピッカーとピッカー軸を本願に係るピッカー7と交換することにより、本願に係るピッカー装置1とすることができるので、従来のピッカー装置から本願のピッカー装置1への切換えを、さほどコストをかけることなく実現することができる。
【0027】
また、ピッカーアーム6を付勢する付勢部材は、第2の支点6Aに備えられた第2のねじりコイルばね9により構成されているので、ピッカーアーム6を付勢する付勢部材を簡単な構成とすることができ、簡易な構造のピッカー装置1を実現できる。
【0028】
また、ピッカー7のボビン10へ当接する当接部7Aは、ボビン10よりも軟らかい軟質素材により形成されているので、ピッカー7がボビン10へ当接しても、ボビン10に傷をつけてしまうことを防止できる。
【0029】
なお、本実施形態では、ピッカーリンク5に第2の長孔5Aが設けられ、該第2の長孔5Aに段ねじB2が挿通されて、該段ねじB2がピッカーアーム6の第2の係合穴に係合されることにより、ピッカーリンク5とピッカーアーム6とが摺動可能に連結されることとしたが、ピッカーアーム6に第2の長孔が設けられ、ピッカーリンク5に第2の係合穴が設けられ、ピッカーアーム6に設けられた第2の長孔に段ねじB2が挿通されて、該段ねじB2がピッカーリンク5に設けられた第2の係合穴に係合されることにより、ピッカーリンク5とピッカーアーム6とが摺動可能に連結されてもよい。
また、本実施形態では、ボビン10は鉄又はアルマイト処理されたアルミ等の金属により形成され、ピッカー7の当接部7Aは、黄銅若しくは合成樹脂により形成されていることとしたが、ピッカー7の当接部7Aは、ボビン10よりも軟らかい素材で形成されればよく、ボビン10とピッカー7の当接部7Aとの素材の組み合わせは他の組み合わせであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るピッカー装置の糸切り前の構造を示す平面図である。
【図2】本発明に係るピッカー装置の糸切り時の構造を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ピッカー装置
2 ソレノイド(駆動手段)
5 ピッカーリンク(駆動腕)
5A 第2の長孔(長孔)
5D 内側面部
6 ピッカーアーム(伝達部材)
6A 第2の支点(支点)
7 ピッカー(当接部材)
7A 当接部
8 第1のねじりコイルばね(第1の付勢部材)
9 第2のねじりコイルばね(第2の付勢部材,ねじりコイルばね)
10 ボビン
B2 段ねじ(係合部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン釜に向かって前進して、前記ミシン釜の内部で回転可能に備えられているボビンに当接する当接部材と、
前記当接部材と連結され、所定位置を支点として回動可能に備えられる伝達部材と、
前記伝達部材と連結されて前記伝達部材を回動させる駆動腕と、を備えるミシンのピッカー装置において、
前記駆動腕に、前記伝達部材を介して前記当接部材を前記ボビンに当接する方向と反対方向に回動させる第1の付勢力を付与する第1の付勢部材と、
前記伝達部材に、前記当接部材を前記ボビンに当接する方向に前記第1の付勢力よりも弱い力で回動させる第2の付勢力を付与する第2の付勢部材と、
前記駆動腕を前記第1の付勢力の方向と反対方向に移動させる駆動手段と、
前記駆動腕と前記伝達部材との連結部において前記駆動腕と前記伝達部材の何れか一方に設けられた長孔と、
前記長孔に挿通されて、前記駆動腕と前記伝達部材とを連結するとともに、前記長孔に沿って摺動可能な係合部材と、を備え、
前記当接部材が前記ボビンに当接した状態で、前記係合部材は前記長孔の長軸方向の内側面部から離間した位置となるように構成されていることを特徴とするミシンのピッカー装置。
【請求項2】
前記第2の付勢部材は、前記支点に備えられたねじりコイルばねにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のミシンのピッカー装置。
【請求項3】
前記当接部材の前記ボビンと当接する当接部は、前記ボビンよりも軟らかい軟質素材により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンのピッカー装置。

【図1】
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【図2】
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