説明

ミシンの生産管理装置

【課題】縫製作業における各作業工程毎の記録を容易に比較することができるミシンの生産管理装置を実現する。
【解決手段】縫製システム装置100は、ミシン10が複数の作業工程からなる縫製作業を繰り返して実行する場合に、複数の作業工程における各作業工程毎に最短の作業時間で実行された作業工程をそれぞれを抽出し、抽出された作業工程に対応するミシンの回転速度と経過時間とを関連つけた縫製管理情報をその構成作業における各作業工程順に組み合わせた最短縫製作業時間を作成するとともに、その最短縫製作業情報に関するグラフGsと、終了した縫製作業であって記憶手段に記憶された縫製管理情報に関するグラフGとを、表示手段に比較して表示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンの生産管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一連の縫製作業中のミシンモータ(主軸)の回転数などミシンの稼動情報を経時的に記録して、グラフ表示するミシンの縫製記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
そして、ミシンオペレータは、表示されたグラフを視認することによって、記録されたミシンモータ(主軸)の回転数の時間変化を確認することができるので、その従前の記録を参考に縫製技能の向上を図ることや、作業効率の分析を行うことが可能になる。
【特許文献1】特開2006−167069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の場合、一連の縫製作業に関する記録を従前のものと比較することはできるものの、その縫製作業を構成する各作業工程毎の比較を行うことは困難であるという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、縫製作業における各作業工程毎の記録を容易に比較することができるミシンの生産管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、複数の作業工程からなる縫製作業を繰り返して実行するミシンの管理を行うミシンの生産管理装置であって、ミシンの縫製に関する情報を表示する表示手段と、ミシンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、各作業工程の実行に要した作業時間と、回転速度検出手段により検出された前記ミシンの回転速度の時間的変化とを関連つけた縫製管理情報を、各縫製作業毎に累積して記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された縫製管理情報に基づき、複数の作業工程における各作業工程毎に最短の作業時間で実行された作業工程を、それぞれ抽出する最短時間作業工程抽出手段と、最短時間作業工程抽出手段により抽出された最短の作業工程に対応する縫製管理情報部分を、複数の作業工程の実行順に組み合わせて複数の作業工程に対応する最短縫製作業情報を作成する最短情報作成手段と、最短情報作成手段により作成された最短縫製作業情報に関するグラフと、実際に終了した縫製作業における縫製管理情報に関するグラフとを、表示手段に比較して表示する表示制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のミシンの生産管理装置において、記憶手段に記憶された縫製管理情報を選択する縫製管理情報選択手段を備え、表示制御手段は、縫製管理情報選択手段により選択された縫製管理情報に関するグラフと、最短情報作成手段により作成された最短縫製作業情報に関するグラフとを、表示手段に表示することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のミシンの生産管理装置において、表示制御手段は、表示手段に表示されている所定の縫製管理情報に関するグラフに対応する各作業時間の値と、最短縫製作業情報に関するグラフに対応する最短の作業時間の値とを、表示手段に表示することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のミシンの生産管理装置において、記憶手段に記憶されている縫製管理情報に基づき、各縫製作業における同一の作業工程に要した平均の作業時間を算出する平均時間算出手段を備え、表示制御手段は、平均時間算出手段により算出された平均の作業時間の値を、表示手段に表示することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載のミシンの生産管理装置において、複数の作業工程に対応する最短縫製作業情報から、任意の作業工程部分を選択する作業工程選択手段と、記憶手段から作業工程選択手段により選択された作業工程部分を含む縫製管理情報を取得する取得手段と、を備え、表示制御手段は、取得手段により取得された縫製管理情報に関するグラフを表示手段に表示することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載のミシンの生産管理装置において、表示手段に表示される所定の縫製管理情報に関するグラフ又は所定の縫製管理情報に、最短縫製作業情報に対応する最短時間情報部分が含まれる場合、表示制御手段は所定の縫製管理情報に関するグラフ又は所定の縫製管理情報における最短時間情報部分を識別可能に表示手段に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、ミシンの生産管理装置は、縫製作業の実行中に、その縫製作業における作業工程毎に、各作業工程の実行に要した作業時間と、ミシンの回転速度の時間的変化とを関連つけた縫製管理情報を記憶手段に記憶することができる。
そして、ミシンの生産管理装置は、ミシンが繰り返し実行した縫製作業における最短の作業工程に対応する縫製管理情報部分を、複数の作業工程の実行順に組み合わせて複数の作業工程に対応する最短縫製作業情報を作成することができるので、その最短縫製作業情報に関するグラフと、記憶手段に記憶された縫製管理情報に関するグラフとを、表示手段に比較して表示することができる。
つまり、ミシンの生産管理装置は、縫製作業を実行して計測された縫製管理情報に基づくグラフと、幾つかの縫製作業において最短の所要時間を記録した作業工程や作業工程間の区間のデータが組み合わされた最短縫製作業情報に基づくグラフとを、比較するように表示手段に表示することができるので、各グラフにおける同一区間のデータの比較を容易に行うことができる。そして、ユーザは、表示される最短時間のグラフを参考にして、実際に行う縫製作業の作業ペースを考慮するように縫製作業を行うことが可能になる。
従って、このミシンの生産管理装置は、縫製作業における各作業工程毎の記録を容易に比較することができるミシンの生産管理装置であって、その比較した最短時間のグラフのデータを参考にして縫製を実行することができるミシンの生産管理装置であるといえる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、ミシンの生産管理装置は、縫製管理情報選択手段により選択された縫製管理情報に関するグラフと、最短情報作成手段により作成された最短縫製作業情報に関するグラフとを、表示手段に表示することができる。
つまり、ミシンの生産管理装置は、記憶手段に記憶された幾つかの縫製管理情報から所望する縫製管理情報を選択するようにして、これまでに累積記憶された縫製管理情報の中から任意の縫製管理情報に関するグラフを表示して、最短縫製作業情報に関するグラフと比較することを可能にする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ミシンの生産管理装置は、所定の縫製管理情報に関するグラフに対応する各作業時間の値と、最短縫製作業情報に関するグラフに対応する最短の作業時間の値とを、表示手段に表示することができる。
つまり、ミシンの生産管理装置は、所定の縫製管理情報や、最短縫製作業情報に関するグラフに加えて、そのグラフに関するデータの値を表示することができるので、ユーザがグラフによる縫製管理情報のイメージだけでなく、具体的な数値を確認することを可能にする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、ミシンの生産管理装置は、各縫製作業における同一の作業工程に要した平均の作業時間の値を、表示手段に表示することができる。
つまり、ミシンの生産管理装置は、各縫製作業における同一の作業工程に要した平均の作業時間の値を表示することによって、ユーザがその平均値の数値を参考にして、実際に行う縫製作業の作業ペースを考慮するように縫製作業を行うことを可能にする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、ミシンの生産管理装置は、複数の作業工程に対応する最短縫製作業情報から任意の作業工程部分を選択し、その選択された作業工程部分を含む縫製管理情報を取得することができるので、その縫製管理情報に関するグラフを表示手段に表示することができる。
つまり、ミシンの生産管理装置は、任意の作業工程部分を含む縫製管理情報に関するグラフを表示することによって、ユーザがそのグラフを参考に各作業がどのような作業ペースで実行されたのか確認することが可能になる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、ミシンの生産管理装置は、表示手段に表示される所定の縫製管理情報やグラフに、最短縫製作業情報に対応する最短時間情報部分が含まれる場合、その最短時間情報部分を識別可能に表示することができる。
つまり、ミシンの生産管理装置は、表示手段に表示される所定の縫製管理情報やグラフにおける最短時間情報部分を、他の部分と異なる表示形態で識別可能に表示することによって、その縫製管理情報に最短縫製作業情報に対応する最短時間情報部分が含まれていることをユーザに認識させることを可能にする。
例えば、実際の縫製作業中であって、その実行し終えた縫製作業に関する縫製管理情報が表示手段に表示された際に、グラフ表示などに最短時間情報部分が識別可能に表示されていることによって、ユーザは、その縫製を実行した作業において、その作業工程などの区間をこれまでの最短時間でこなしたことを認識することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図1から図14に基づいて説明する。
本発明に係るミシンの生産管理装置は、ミシンを備える縫製システム装置にミシンの一部の機能として組み込まれている。
【0018】
本実施形態たるミシンの生産管理装置としての縫製システム装置100は、図1に示すように、ミシン10と、ミシン10に接続される操作パネル20とを有している。
【0019】
ミシン10は、図1に示すように、電源スイッチ4のオンにより給電されるミシンモータ5と、ミシンモータ5の回転駆動がベルトなどの駆動伝達手段6を介して伝達されて回転する主軸1と、主軸1の1回転毎にミシン10の回転速度を検出するための複数のパルス信号を出力するエンコーダ1a(図2参照)と、主軸1の回転に伴い上下動する針棒2と、針棒2に交換可能に備えられるミシン針3と、針棒2(ミシン針3)の下方において被縫製物を布送りする布送り機構8と、ミシン10を操作するためのペダル7と、ミシンの各部を制御する制御装置11(図2参照)が内部に収容されている制御ボックス9等を備えている。
また、ミシン10は、図2に示すように、制御ボックス9内に収容される制御装置11と、ミシンの各部の状態を検出する各種センサ14と、ミシンの各部を動作させる各種アクチュエータ16等を備えている。
なお、ミシン10には、有線又は無線の回線により操作パネル20が接続されている。
【0020】
ペダル7は、縫製開始や縫製終了の際などに、作業者による足踏み操作に基づいて制御装置11に所定の信号を出力するものであり、例えば、作業者による前踏み操作に基づいて縫製開始信号を出力し、また、作業者による後踏み操作に基づいて糸切り指示信号を出力するようになっている。
【0021】
制御装置11は、図2に示すように、ミシンの動作を制御するCPU11aと、各種機能や動作の実現に係る各種プログラムや制御データ等を記憶するROM11bと、ROM11bから読み出されたプログラムやデータ等の格納領域や作業領域等を構成するRAM11cとを備え、ミシンモータ5、ペダル7、各種センサ14、各種アクチュエータ16等が電気的に接続されて構成されている。
また、制御装置11は、インターフェース(I/F)11dを介して操作パネル20と接続されており、その操作パネル20と各種情報を送受信可能に構成されている。
【0022】
そして、制御装置11は、縫製開始に伴い、前踏み操作に基づいてペダル7から出力された縫製開始信号が入力されると、ミシンモータ5の回転駆動を制御して縫製動作を実行させる。また、制御装置11は、縫製を実行する際に、各種センサ14から出力され入力されたセンサ信号や操作パネル20で設定されたデータ等に基づいて、ミシンモータ5や各種アクチュエータ16の駆動を制御するようになっている。
なお、制御装置11は、入力された縫製開始信号をインターフェース11dを介して操作パネル20に出力するようになっている。
【0023】
また、制御装置11は、エンコーダ1aから出力されるパルス信号に基づいて、ミシンモータ5の回転駆動を制御するとともに、ミシン10の回転速度であって、主軸1の回転速度を検出するためにエンコーダ1aから出力されたパルス信号をそのまま回転速度信号としてインターフェース11dを介して操作パネル20に出力するようになっている。
【0024】
また、制御装置11は、縫製終了の際に、後踏み操作に基づいてペダル7から出力された糸切り指示信号が入力されると、糸切り装置(図示省略)の駆動を制御して縫い糸の糸切り動作を実行させる。
そして、制御装置11は、糸切り指示信号とともに、その糸切り動作に伴うミシン停止信号をインターフェース11dを介して操作パネル20に出力するようになっている。
【0025】
操作パネル20は、図2、図3に示すように、液晶表示を行う表示部21aと、その表示部21aに重ね合わされる透明のタッチセンサ式の操作ボタン21bとを有する表示手段としてのタッチパネル21と、操作パネルにおける各種制御処理を行うCPU22と、各種データに応じた記憶領域にそれらデータが格納されるようになっているメモリであるROM23、RAM24、EEPROM25と、ミシンの稼動時間を計時するタイマ26等を備え、インターフェース27を介してミシン10の制御装置11と接続されている。
この操作パネル20は、各種操作ボタン21b(タッチパネル21)が操作されたことに基づく各種操作信号に応じて、様々な演算や制御処理を実行する。そして、操作パネル20において演算処理された各種データであって縫製処理に関するデータが、所定の回線を介してミシン10(制御装置11)に送信されて、ミシン10の縫製制御等に利用される。
【0026】
タッチパネル21の表示部21aは、様々な操作キーやスイッチ、各種設定値や各種縫製データ等を表示可能になっている。
そして、表示部21aは、複数の作業工程からなる縫製作業に関するミシンの駆動情報であって、縫製作業に応じた経過時間や、その経過時間に対応するミシン10(主軸1、ミシンモータ5)の回転速度の値や、その経過時間に関連つけられた回転速度の相関を示すグラフなどのミシン10の縫製に関する情報を表示する表示手段としての機能を有する。
特に、表示部21aには、その縫製作業における個々の作業工程に関する情報が表示されるようになっている。
【0027】
タッチパネル21の操作ボタン21bは、表示部21aに表示されている操作キーやスイッチに対応する位置が押下されて操作されたことに基づく各種操作信号をCPU22に出力する。
特に、操作ボタン21bは、EEPROM25に記憶されている後述する縫製管理情報を選択する選択手段の一部として機能する。
【0028】
CPU22は、操作パネル20を構成する各部を統括して制御するものであり、ROM23に記憶されている所定のプログラムを読み出して、当該プログラムに従って各種処理を実行する。
そして、CPU22は、必要に応じて、その処理結果をタッチパネル21の表示部21aに表示させたり、その処理結果などの各種データをEEPROM25に記憶させたりする。
【0029】
ROM23は、例えば、CPU22の制御下にて実行される各種プログラムを記憶するものであり、図示は省略するが、具体的には、回転速度検出プログラム、判断プログラム、記憶制御プログラム、最短時間判定プログラム、最短情報作成プログラム、表示制御プログラム、選択制御プログラム、平均時間算出プログラム、検出制御プログラム、抽出制御プログラム等を記憶している。
【0030】
そして、CPU22が回転速度検出プログラムを実行することによって、そのCPU22は、ミシン10の制御装置11から出力された回転速度信号に基づき、ミシン10の回転速度を検出する回転速度検出手段として機能する。
【0031】
また、CPU22が判断プログラムを実行することによって、そのCPU22は、縫製作業の実行中に、縫製作業における作業工程の切り替わりを判断する判断手段として機能する。
具体的には、判断手段としてのCPU22は、ミシン10の制御装置11から出力された縫製開始信号、回転速度信号、糸切り動作に伴うミシン停止信号などに基づき、ミシン10の縫製作業における作業工程が切り替わるポイントを判断する制御を実行する。
【0032】
また、CPU22が記憶制御プログラムを実行することによって、そのCPU22は、各作業工程の実行に要した作業時間と、回転速度検出手段としてのCPU22により検出されたミシン10の回転速度の時間的変化とを関連つけた縫製管理情報を、各縫製作業毎に累積して、記憶手段としてのEEPROM25に記憶する記憶制御手段として機能する。
特に、記憶制御手段としてのCPU22は、判断手段としてのCPU22により判断された作業工程毎に、ミシン10の回転速度と、その縫製作業に応じた経過時間とを関連つけた縫製管理情報を記憶手段としてのEEPROM25に記憶する制御を実行する。
具体的には、図4に示すように複数の作業工程である作業工程A〜作業工程Fの6つの工程からなる縫製作業に関する縫製管理を行う場合、例えば、CPU22は、縫製開始信号の検知(回転速度信号の出力開始の検知)から糸切り後のミシン停止信号の検知(糸切り信号出力後の回転速度信号の出力停止の検知)までの作業工程(ミシン駆動作業工程B,D,F)及び糸切り後のミシン停止信号の検知から縫製開始信号の検知までの作業工程(準備作業工程A,C,E)に対して、その各作業工程を実行するために要した作業時間と回転速度検出手段により検出されたミシンの回転速度時間的変化とを関連付けして、縫製管理情報としてEEPROM25に記憶する。なお、ミシンの回転速度に変化がない場合にメモリの消費量を節約するため、ここでは、ミシンの回転速度とその回転速度が維持された時間とを対応させたデータを縫製管理情報としてEEPROM25に記憶させているが、一定時間経過毎に回転速度を記憶してデータを縫製管理情報としてもよいことは、勿論である。
また、以下の説明においては、実際にミシンが駆動されていない準備作業工程A,C,Eも作業者により被縫製物をミシンの縫製位置にセットするなどの作業が行われているので、これら準備作業工程も実際にミシンが駆動されているミシン駆動作業工程B,D,Fと区別せずに扱うようにしているが、ミシン駆動作業工程のみを作業工程として扱ってもよい。
【0033】
また、CPU22が最短時間作業工程抽出プログラムを実行することによって、そのCPU22は、EEPROM25に記憶された縫製管理情報に基づき、複数の作業工程における各作業工程毎に最短の作業時間で実行された作業工程を、それぞれ抽出する最短時間作業工程抽出手段として機能する。
また、CPU22が最短情報作成プログラムを実行することによって、そのCPU22は、最短時間作業工程抽出手段としてのCPU22により抽出された最短の作業工程に対応する縫製管理情報部分を、複数の作業工程の実行順に組み合わせて複数の作業工程に対応する最短縫製作業情報を作成する最短情報作成手段として機能する。
具体的には、図4に示すように、EEPROM25に記憶された縫製管理情報における各区間(作業工程A〜F)ごとに、最短の作業時間で実行された作業工程を抽出して、その抽出された最短の作業工程に対応する縫製管理情報部分を、縫製作業における各作業工程の実行順に組み合わせて最短縫製作業情報を作成する。なお、作成された最短縫製作業情報はEEPROM25に記憶される。
【0034】
また、CPU22が表示制御プログラムを実行することによって、そのCPU22は、最短情報作成手段としてのCPU22により作成された最短縫製作業情報に関するグラフと、実際に終了した縫製作業における縫製管理情報であってEEPROM25に記憶された縫製管理情報に関するグラフとを、タッチパネル21の表示部21aに比較して表示する表示制御手段として機能する。
なお、図5に示すように、CPU22は、縫製管理情報における経過時間データを横軸に、ミシン10の回転速度データを縦軸にとるように、各データをグラフ化することで、経過時間に対するミシン10の回転速度変化をグラフ表示することができる。
また、CPU22は、図5に示すように、縫製管理情報における各作業工程区間(以下、単に作業区間ともいう)A〜Fの最短時間部分を組み合わせた最短時間グラフを表示することができる。つまり、CPU22は、縫製管理情報であって最短縫製作業情報における経過時間データを横軸に、ミシン10の回転速度データを縦軸にとるようにして、最短時間グラフを表示する。なお、図5は、作業区間A〜作業区間Dの4つの工程からなる縫製作業を例に、その最短時間グラフの作成イメージを示している。
そして、CPU22は、最短縫製作業情報に対応する最短時間グラフと、繰り返し実行された縫製作業に応じてEEPROM25に記憶された縫製管理情報のうちの何れかの縫製作業に対応するグラフとを、タッチパネル21の表示部21aに比較して表示することが可能になっている。
また、表示制御手段としてのCPU22は、タッチパネル21の表示部21aに表示される所定の縫製管理情報に、最短縫製作業情報に対応する最短時間情報部分が含まれる場合、その最短時間情報部分を識別可能に表示する制御を実行する。
【0035】
また、表示制御手段としてのCPU22は、タッチパネル21(表示部21a)に表示されている所定の縫製管理情報に関するグラフに対応する各作業時間の値と、最短縫製作業情報に関するグラフに対応する最短の作業時間の値とを、タッチパネル21の表示部21aに表示する制御を実行する。
【0036】
また、CPU22が選択制御プログラムを実行することによって、そのCPU22は、操作パネル20の操作ボタン21bの操作に応じて、EEPROM25に記憶された縫製管理情報を選択する選択手段として機能する。
そして、表示制御手段としてのCPU22は、選択手段としてのCPU22により選択された縫製管理情報に関するグラフと、最短情報作成手段としてのCPU22により作成された最短縫製作業情報に関するグラフとを、タッチパネル21(表示部21a)に表示する制御を実行する。
【0037】
また、CPU22が平均時間算出プログラムを実行することによって、そのCPU22は、EEPROM25に記憶されている縫製管理情報に基づき、各縫製作業における同一の作業工程に要した平均の作業時間を算出する平均時間算出手段として機能する。
そして、表示制御手段としてのCPU22は、平均時間算出手段としてのCPU22により算出された平均の作業時間の値を、タッチパネル21(表示部21a)に表示する制御を実行する。
【0038】
また、CPU22が作業工程選択プログラムを実行することによって、そのCPU22は、各作業工程に対応する最短縫製作業情報から任意の作業工程部分を選択する作業工程選択手段として機能する。
また、CPU22が取得制御プログラムを実行することによって、そのCPU22は、作業工程選択手段としてのCPU22により選択された作業工程部分を含む縫製管理情報をEEPROM25から取得する取得手段として機能する。
そして、表示制御手段としてのCPU22は、取得手段としてのCPU22により取得された縫製管理情報に関するグラフを、タッチパネル21(表示部21a)に表示する制御を実行する。
【0039】
また、操作パネル20は、インターフェース28を介して外部のコンピュータ30と接続可能になっており、各種メモリに記録されている縫製記録データ等の各種情報、特に、EEPROM25に記憶されているミシン駆動情報(主軸1の回転速度、主軸1の回転する動作時間等)である縫製管理情報をコンピュータ30に送信して、当該コンピュータ30内の所定の記録手段に記録することができるようになっている。
【0040】
また、操作パネル20は、インターフェース29を介してメモリカードなどの外部の記録媒体31が着脱自在に接続され(図3参照)、各種メモリに記録されている縫製記録データ等の各種情報、特に、EEPROM25に記憶されているミシン駆動情報(主軸1の回転速度、主軸1の回転する動作時間等)である縫製管理情報を、その記録媒体31に記録することができるようになっている。
【0041】
次に、縫製システム装置100において行われる、ミシン10の縫製作業に関する生産管理について、図6、図7、図8に示すフローチャートに基づき説明する。
【0042】
図6に示すフローチャートのように、まず、操作パネル20のタッチパネル21における糸切り回数設定画面において、所定の縫製作業において各工程を区切るための糸切り回数の設定が行われる(ステップS001)。
なお、図9に示すタッチパネル21の糸切り回数設定画面において、テンキー41をタッチ指示することにより所望する糸切り回数を入力して、確定キー42を押下することによって入力された値の設定が行われる。設定された糸切り回数(例えば、3回)は「0003」と糸切り回数表示欄40に表示されている。
ここで、糸切り回数が「3回」と設定されたことによって、3つのミシン駆動作業工程とそのミシン駆動作業工程間の3つの準備作業工程とからなる6つの作業区間からなる縫製作業に関する生産管理が行われる設定がなされたこととなる。そして、操作パネル20のCPU22は、設定された作業工程に必要となる作業区間分のデータ記憶領域(作業区間A〜F;図4参照)をEEPROM25内に確保する。
【0043】
次いで、操作パネル20のCPU22は、ミシン10の制御装置11から入力される縫製開始信号(回転速度信号)に基づき、ミシン10が起動したか否かを判断する(ステップS002)。
CPU22が、ミシン10が起動したと判断すると(ステップS002;Yes)、その起動直前までのミシン停止中の縫製管理情報の格納処理を実行する(ステップS003)。なお、このステップS003における停止中縫製管理情報の格納処理を実行するために、図7に示す、停止中管理情報格納処理に移行する。
【0044】
図7に示すように、停止中管理情報格納処理において、まず、操作パネル20のCPU22は、停止中の縫製管理情報を計測していたか否かを判断する(ステップS101)。
CPU22が、停止中の縫製管理情報を計測していないと判断すると(ステップS101;No)、ステップS108へ進む。
一方、CPU22が、停止中の縫製管理情報を計測していたと判断すると(ステップS101;Yes)、CPU22は、その計測した停止中縫製管理情報を取得する(ステップS102)。
【0045】
そして、CPU22は、取得した停止中縫製管理情報の作業区間が、6つの作業区間のどの区間に相当するか判断する(ステップS103)。
なお、本実施形態における縫製作業は、糸切り回数「3回」が設定されたものであるので、停止中縫製管理情報の作業区間は、糸切り「0回」での区間A、糸切り「1回」後の区間C、糸切り「2回」後の区間E、に分類するように判断される。また、糸切り「3回」で「0回」とリセットされ、0回−1回−2回−0回…と、糸切り回数に応じた区間の分類が行われるようになっている。また、糸切り回数は、糸切り指示信号や、糸切り動作に伴うミシン停止信号をカウントすることによって、計数することができる。
なお、ここでは、糸切り「0回」での停止中縫製管理情報として作業区間Aであると判断されたものとする。
【0046】
そして、CPU22は、取得した停止中縫製管理情報のデータを、判断した作業区間に応じて、EEPROM25における縫製管理情報の記憶領域に格納する(ステップS104)。ここで、CPU22は、ミシン10の停止中に計測された、そのミシン10の回転速度(ここでは、0rpm)の時間的変化と、その作業工程の実行に要した作業時間である停止時間とを関連つけた縫製管理情報をEEPROM25に記憶して格納する。
【0047】
次いで、CPU22は、取得した停止中縫製管理情報における停止時間が、その作業区間において最短時間であるか否かを判断する(ステップS105)。
CPU22が、取得した停止中縫製管理情報における停止時間が、その作業区間における最短時間でないと判断すると(ステップS105;No)、ステップS107へ進む。
一方、CPU22が、取得した停止中縫製管理情報における停止時間が、その作業区間における最短時間であると判断すると(ステップS105;Yes)、CPU22は、取得した停止中縫製管理情報のデータ(最短の停止時間)をその作業区間に応じて、EEPROM25における最短縫製作業情報の記憶領域にも格納する(ステップS106)。
【0048】
なお、ステップS105における最短時間の判断は、既にその作業工程の最短縫製作業情報の停止時間としてEEPROM25に最短停止時間とステップS104で新たに取得された停止時間との比較により行われる。但し、ステップS104で取得された停止時間がその作業区間における最初の停止時間であり、未だその作業工程の最短縫製作業情報がEEPROM25に記憶されていない場合は、ステップS105において肯定判断し、ステップS106において最初に取得された停止時間を最短の停止時間としてEEPROM25に記憶させる。
このように、CPU22は、各縫製作業において各作業工程が実行される毎にステップS105〜S106の処理を行うことにより、複数の作業工程毎に最短の作業時間で実行された作業工程を抽出する最短作業工程抽出手段として機能している。
【0049】
そして、ステップS107において、CPU22は、EEPROM25における縫製管理情報の記憶領域に格納された複数の停止中縫製管理情報のデータに基づき、その停止中縫製管理情報における停止時間の平均値を算出して、その算出した停止時間の平均値をEEPROM25に格納する(ステップS107)。
【0050】
そして、ステップS108において、CPU22は、EEPROM25に格納された、その時点での最新の停止中縫製管理情報のデータや、その作業区間における最新の平均値データに基づき、図10に示すタッチパネル21における縫製管理情報表示画面での表示を更新し(ステップS108)、ステップS004へ戻るように移行する。
【0051】
図6に示すように、ステップS004において、操作パネル20のCPU22は、起動したミシン10における動作作業中の縫製管理情報の計測を開始する(ステップS004)。
具体的には、CPU22は、ミシン10の起動時の回転速度を回転速度信号に基づき計測し(ステップS004)、再度ミシン10の動作中の回転速度信号を計測する(ステップS005)。次いで、糸切り指示信号の入力に基づいて糸切りがなされたかを判断する(ステップS006)。糸切りがなされていない場合(ステップS006;NO)は、ステップS004で計測された回転速度とステップS005で計測された回転速度を比較して回転速度が変化したか否かを判別し(ステップS007)、回転速度が変化したと判別された場合(ステップS007;YES)には、ステップS004で計測された回転速度とその計測された回転速度が変化するまでの経過時間を対応づけてミシン駆動中の動作中回転速度情報としてRAM24に一時記憶(ステップS008)させる。また、ステップS008の処理終了後又は回転速度が変化していないと判別された場合(ステップS007;NO)は、ステップS005に移行して再度動作中の回転速度を計測する。なお、ステップS007における回転速度の変化の判別は、2回目以降は、ステップS007の判断直前にステップS005で計測した回転速度と前回ステップS005で計測した回転速度との比較で行われる。
一方、ステップS006で、糸切りの実行有りと判別された場合(ステップS006;YES)は、ステップS004とステップS005とで計測された各回転速度のうち糸切りの実行有りと判別される直前に計測された方の回転速度と、その回転速度が計測されてから糸切りが実行されるまでの経過時間とを対応づけて糸切り直前の動作中回転速度情報としてRAM24に一時記憶(ステップS009)させる。
【0052】
次いで、CPU22は、ミシン動作中の縫製管理情報の格納処理を実行する(ステップS010)。なお、このステップS010における動作中縫製管理情報の格納処理を実行するために、図8に示す、動作中管理情報格納処理に移行する。
【0053】
図8に示すように、動作中管理情報格納処理において、まず、操作パネル20のCPU22は、縫製開始信号が入力されてから糸切り信号が入力されるまでに計測されRAM24に一時記憶された、動作中回転速度情報を取得する(ステップS201)。
【0054】
そして、CPU22は、取得した動作中回転速度情報の作業区間が、6つの作業区間のどの区間に相当するか判断する(ステップS202)。
なお、本実施形態における縫製作業は、糸切り回数「3回」が設定されたものであるので、動作中縫製管理情報の作業工程である作業区間は、糸切り「1回」での区間B、糸切り「2回」後の区間D、糸切り「3回」後の区間F、に分類するように判断される。また、糸切り「4回」で「0回」とリセットされ、0回−1回−2回−0回…と、糸切り回数に応じた区間の分類が行われるようになっている。また、糸切り回数は、糸切り指示信号や、糸切り動作に伴うミシン停止信号をカウントすることによって、計数することができる。
なお、ここでは、糸切り「1回」後の動作中縫製管理情報として作業区間Bであると判断されたものとする。
【0055】
そして、CPU22は、縫製開始信号が入力されてから糸切り信号が入力されるまでの作業区間の実行に要した作業時間とステップS010で取得した動作中回転速度情報とを関連付けした上で、実行終了直後の作業工程の縫製管理情報としてEEPROM25に記憶させる。なお、ここで当該作業工程の作業時間は、RAM24に動作中回転速度情報として一時記憶された各回転速度に対する経過時間を積算することで求められる。
【0056】
次いで、CPU22は、取得した動作中縫製管理情報のデータにおける針数の値が、その作業区間における針数の基準範囲に収まるか否かを判断する(ステップS204)。
CPU22が、取得した動作中縫製管理情報のデータにおける針数の値が、その作業区間における針数の基準範囲に収まらず、その針数の値が基準値に比べて極端に大きかったり小さかったりすると判断すると(ステップS204;No)、CPU22は、取得した動作中縫製管理情報のデータを、最短縫製作業情報や、その作業区間の作業時間の平均値に反映させないように、ステップS209へ進む。
【0057】
このステップS204の処理により各作業区間における針数が基準範囲内にあるかどうかをCPU22が判断することによって、ミシンの送り調整ダイアル等によって各作業区間の縫いピッチが適正に設定されているか否かを判定することができるので、縫いピッチが極端に大きく設定されているため見かけ上の縫製効率が向上しているように見えるなどの状態で実行された縫製作業の所要時間を最短時間の縫製管理情報として抽出することを防止することができる。
【0058】
一方、CPU22が、取得した動作中縫製管理情報のデータにおける針数の値が、その作業区間における針数の基準範囲に収まる正常値であると判断すると(ステップS204;Yes)、CPU22は、取得した動作中縫製管理情報における作業工程の作業時間が、その作業区間において最短時間であるか否かを判断する(ステップS205)。
CPU22が、取得した動作中縫製管理情報における作業工程の作業時間が、その作業区間における最短時間でないと判断すると(ステップS205;No)、ステップS208へ進む。
【0059】
一方、CPU22が、取得した動作中縫製管理情報における作業時間が、その作業区間における最短時間であると判断すると(ステップS205;Yes)、CPU22は、取得した動作中縫製管理情報のデータをその作業区間に応じて、EEPROM25における最短縫製作業情報の記憶領域にも格納する(ステップS206)。
また、CPU22は、この最短時間であった動作中縫製管理情報における作業工程でのミシン10の回転速度データをEEPROM25に格納する(ステップS207)。
上述したように、CPU22は、各縫製作業において各作業工程が実行される毎にステップS205〜S207の処理を行うことにより、複数の作業工程毎に最短の作業時間で実行された作業工程を抽出する最短作業工程抽出手段として機能している。
【0060】
そして、ステップS208において、CPU22は、EEPROM25における縫製管理情報の記憶領域に格納された複数の動作中縫製管理情報のデータに基づき、その動作中縫製管理情報における作業工程の作業時間の平均値を算出して、その算出した作業時間の平均値をEEPROM25に格納する(ステップS208)。
【0061】
そして、ステップS209において、CPU22は、EEPROM25に格納された、その時点での最新の動作中縫製管理情報のデータや、その作業区間における作業時間の最新の平均値データに基づき、図10に示すタッチパネル21における縫製管理情報表示画面での表示を更新し(ステップS209)、ステップS011へ戻るように移行する。
【0062】
図6に示すように、ステップS011において、操作パネル20のCPU22は、停止したミシン10における停止中の縫製管理情報の計測を開始する(ステップS011)。
【0063】
そして、CPU22は、ステップS001において設定された糸切り回数(この場合、3回)に達したか否かを判断する(ステップS012)。
CPU22が、設定された糸切り回数に達していないと判断すると(ステップS012;No)、ステップS002に戻り、次のミシン起動を待つ。
そして、設定された糸切り回数に達するまで、ステップS002からステップS012までの処理を繰り返し実行して、各作業区間別に縫製管理情報の取得を行う。
具体的には、糸切り「1回」後の停止中縫製管理情報として作業区間C、糸切り「2回」後の動作中縫製管理情報として作業区間D、糸切り「2回」後の停止中縫製管理情報として作業区間E、糸切り「3回」後の動作中縫製管理情報として作業区間F、の縫製管理情報を取得して格納する。
【0064】
一方、CPU22が、設定された糸切り回数「3回」に達したと判断すると(ステップS012;Yes)、6つの作業区間のそれぞれの縫製管理情報を、その6つの作業区間からなる1つの縫製作業に関する縫製管理情報として取りまとめて格納するとともに、CPU22が最短縫製作業情報作成手段として機能することにより、それまでに抽出された最短の作業工程に対応する縫製管理情報部分を作業工程の実行順に組合せて各作業工程に対応する最短縫製作業情報を作成する(ステップS013)。さらに、CPU22が表示制御手段として機能することにより、図10に示すタッチパネル21における縫製管理情報表示画面での表示を更新する(ステップS014)。
そして、この6つの作業区間からなる縫製作業がミシン10において繰り返し行われることに伴い、ステップS002からステップS014の処理を繰り返すことで、その縫製作業に関する縫製管理情報を継続して取得し、取得した縫製管理情報を累積するように記憶して格納することで、このミシン10の縫製管理が行われるようになっている。
【0065】
このように、EEPROM25に格納された縫製管理情報に基づいて、操作パネル20のCPU22は、タッチパネル21の表示部21aに、図10に示すような、縫製管理情報表示画面を表示する。
図10に示すように、タッチパネル21における縫製管理情報表示画面には、グラフ表示領域50と、テーブル表示領域60とが設けられている。
また、この縫製管理情報表示画面には、最短時間グラフを表示するための最短グラフ表示ボタン44と、所望する縫製管理情報を選択するようにグラフ表示の移動を行うためのボタンであって、縫製管理情報選択手段としての操作ボタン21bの一部である表示移動ボタン45とが設けられている。
【0066】
グラフ表示領域50には、横軸に経過時間、縦軸に回転速度をとるように、縫製管理情報に関するグラフGが表示されるようになっており、通常、最新の縫製作業において計測された縫製管理情報に基づくグラフGが表示されるようになっている。
この縫製管理情報に関するグラフGは、例えば、3つの作業工程である作業区間B、作業区間D、作業区間Fと、3つの作業工程間である作業区間A、作業区間C、作業区間Eを認識可能に表示されるようになっている。そして、繰り返し実行される6つの作業区間からなる縫製作業に応じて、作業区間AからB、C、D、E、Fが工程順(区間順)に連なるグラフGが表示されるようになっている。
【0067】
テーブル表示領域60には、各作業区間(A〜F)毎に、最新の縫製作業においてその作業区間に要した所要時間、その作業区間における最短の所要時間、その作業区間における平均の所要時間、最新の縫製作業におけるミシン駆動作業区間において要した針数、ミシン駆動作業区間での平均回転速度等が表示されるようになっている。
【0068】
そして、このタッチパネル21において、最短グラフ表示ボタン44が押下されると、図11に示すように、グラフ表示領域50に、EEPROM25に記憶されている最短縫製作業情報に基づく最短時間グラフGsが、グラフGと比較するように重ねて表示されるようになっている。
なお、この最短縫製作業情報は、幾つかの縫製作業において最短の所要時間を記録した6つの作業区間(A〜F)のデータが継ぎ合わされた合成データであり、実行可能な最速の作業ペースをユーザに認識させるためのデータである。
【0069】
特に、グラフ表示領域50に表示されている最新の縫製作業に関するグラフGにおける作業区間に、その最短縫製作業情報(縫製管理情報)に対応する最短時間情報部分が含まれている場合、その最短時間情報部分を識別可能に表示されるようになっている。例えば、図12に示すように、作業区間Dが最短縫製作業情報に対応する最短時間情報部分である場合、グラフGの作業区間Dを他の作業区間とは異なる表示形態で表示するようになっている。
【0070】
また、グラフ表示領域50に表示されている最短時間グラフGsにおける任意の作業区間部分をタッチ指示すると、グラフ表示領域50に重ねられたタッチパネル21が複数の作業工程に対応する最短縫製作業情報から任意の作業工程部分を選択する作業工程選択手段として機能するとともに、CPU22がEEPROM25から作業工程選択手段としてのタッチパネル21により選択された作業工程部分を含む縫製管理情報を取得する取得手段として機能することにより、そのタッチ指示された作業区間(A〜F)であって、最短の所要時間を記録した作業区間のデータを含む縫製作業に関する縫製管理情報に応じたグラフをグラフ表示領域50に表示することが可能になっている。つまり、最短の所要時間を記録した作業区間のデータを含む縫製作業において各作業区間がどのような作業ペースで実行されたのか確認することが可能になる。
なお、図12に示すタッチパネル21のグラフ表示領域50に表示されている最短時間グラフGsにおける作業区間D部分がタッチ指示された場合、その作業区間Dに関して最短時間を記録した図12に示しているグラフGが表示されることとなる。同様に、グラフ表示領域50に表示されている最短時間グラフGsにおける任意の作業区間部分をタッチ指示すると、そのタッチ指示された作業区間に関して最短時間を記録した区間データを含む元のグラフ全体(区間A〜F)が表示される。
【0071】
また、このタッチパネル21において、表示移動ボタン45が押下されると、CPU22は、図13に示すように、グラフ表示領域50に表示されているグラフGが左右に移動されるように表示が切り替わるようになっており、当初表示されていたグラフGに対する前後のグラフを表示する。
なお、このグラフ表示領域50において、2つの縫製作業にまたがった状態のグラフが表示されている場合、左端側に表示されているグラフ部分が現在表示対象となっているグラフGであって、そのグラフGに関する縫製管理情報がテーブル表示領域60に表示されるようになっている。
この場合、表示移動ボタン45は、EEPROM25に記憶された縫製管理情報を選択する縫製管理情報選択手段として機能するとともに、CPU22が表示制御手段として機能して、この縫製管理情報選択手段により選択された縫製管理情報に関するグラフと最短時間グラフGsとをグラフ表示領域50に表示するように作用する。
【0072】
このように、縫製システム装置100は、ミシン10において実行された縫製作業における各作業工程や各工程間である各作業区間(A〜F)毎に、各作業区間に要した所要時間や、その作業区間におけるミシンの回転速度を計測して、その計測した縫製管理情報を各作業区間毎に記憶し格納することができる。
そして、縫製システム装置100は、格納した縫製管理情報に基づき、各作業工程毎(各作業区間毎)にその縫製管理情報の記録を認識することができるように、グラフや表として、その縫製管理情報のデータをタッチパネル21に表示することができる。
特に、縫製システム装置100は、縫製作業実行中である最新の縫製作業において計測された縫製管理情報に基づくグラフGやその計測データと、EEPROM25に記憶されている最短縫製作業情報に基づく最短時間グラフGsやその計測データとを比較するようにタッチパネル21に表示することができるで、各グラフや表における同一作業区間のデータの比較を容易に行うことができる。
そして、ユーザは、その最短時間グラフGsやその計測データを参考にして、実際に行う縫製作業の作業ペースを考慮するように縫製作業を行うことが可能になる。
このように、この縫製システム装置100は、縫製作業における各作業工程毎の記録を容易に比較することができるミシンの生産管理装置であって、その比較した縫製作業に関するデータを参考にしつつ縫製を実行することができるミシンの生産管理装置であるといえる。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図14に示すように、グラフ表示領域50に、最新の縫製作業において計測された縫製管理情報に基づくグラフGを表示するとともに、EEPROM25に記憶されている最短縫製作業情報に基づく最短時間グラフGsであってその経過時間変化のみを示すグラフGsと、各作業区間の平均時間を示すグラフGaとを比較するように表示してもよい。
このように、最短時間グラフGsの経過時間変化のみを示すグラフGsや、各作業区間の平均時間を示すグラフGaの表示をユーザが視認することによって、ユーザは各作業区間にかかる所要時間の目安を確認することができ、その縫製に要する所要時間の目安を確認しながら縫製作業を行うことができるメリットがある。
【0074】
例えば、上述の実施の形態では、糸切り直後のミシン停止及びミシンの回転開始を各作業工程の区切りとしているが、各作業工程の終了毎に作業者により操作入力される操作スイッチを設け、この操作スイッチの操作入力により各作業工程を区切ってもよいし、あるいは、EEPROM25に複数の縫製パターンを記憶させ、これらの縫製パターンを順次自動的に実行することにより所定の縫製を行う場合には、各縫製パターンをそれぞれの工程として見なして各縫製パターン毎に最短の作業時間を抽出するようにしてもよい。
【0075】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る縫製システム装置を示す正面図である。
【図2】本発明に係る縫製システム装置を示すブロック図である。
【図3】操作パネルを示す正面図である。
【図4】縫製管理情報の格納イメージを示す説明図である。
【図5】最短時間グラフの作成イメージを示す説明図である。
【図6】本発明に係る縫製システム装置における生産管理に関するメイン処理を示すフローチャートである。
【図7】停止中縫製管理情報格納処理を示すフローチャートである。
【図8】動作中縫製管理情報格納処理を示すフローチャートである。
【図9】操作パネルにおける表示画面の一例(糸切り回数設定画面)を示す説明図である。
【図10】操作パネルにおける表示画面の一例を示す説明図である。
【図11】操作パネルにおける表示画面の一例を示す説明図である。
【図12】操作パネルにおける表示画面の一例を示す説明図である。
【図13】操作パネルにおける表示画面の一例を示す説明図である。
【図14】操作パネルにおける表示画面の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0077】
1 主軸
5 ミシンモータ
10 ミシン
11 制御装置
20 操作パネル
21 タッチパネル(表示手段)
21a 表示部
21b 操作ボタン(選択手段)
45 表示移動ボタン(選択手段)
22 CPU(回転速度検出手段、記憶手段、最短時間作業工程抽出手段、最短情報作成手段、表示制御手段、選択手段、平均時間算出手段、作業工程選択手段、取得手段)
23 ROM
24 RAM
25 EEPROM(記憶手段)
50 グラフ表示領域
60 テーブル表示領域
100 縫製システム装置(ミシンの生産管理装置)
G グラフ
Gc 比較対象グラフ
Gs 最短時間グラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業工程からなる縫製作業を繰り返して実行するミシンの管理を行うミシンの生産管理装置であって、
前記ミシンの縫製に関する情報を表示する表示手段と、
前記ミシンの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
各作業工程の実行に要した作業時間と、前記回転速度検出手段により検出された前記ミシンの回転速度の時間的変化とを関連つけた縫製管理情報を、各縫製作業毎に累積して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された縫製管理情報に基づき、前記複数の作業工程における各作業工程毎に最短の作業時間で実行された作業工程を、それぞれ抽出する最短時間作業工程抽出手段と、
前記最短時間作業工程抽出手段により抽出された最短の作業工程に対応する縫製管理情報部分を、前記複数の作業工程の実行順に組み合わせて前記複数の作業工程に対応する最短縫製作業情報を作成する最短情報作成手段と、
前記最短情報作成手段により作成された最短縫製作業情報に関するグラフと、実際に終了した縫製作業における縫製管理情報に関するグラフとを、前記表示手段に比較して表示する表示制御手段と、
を備えることを特徴とするミシンの生産管理装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶された縫製管理情報を選択する縫製管理情報選択手段を備え、
前記表示制御手段は、前記縫製管理情報選択手段により選択された縫製管理情報に関するグラフと、前記最短情報作成手段により作成された最短縫製作業情報に関するグラフとを、前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1に記載のミシンの生産管理装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記表示手段に表示されている所定の縫製管理情報に関するグラフに対応する各作業時間の値と、最短縫製作業情報に関するグラフに対応する最短の作業時間の値とを、前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンの生産管理装置。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶されている縫製管理情報に基づき、各縫製作業における同一の作業工程に要した平均の作業時間を算出する平均時間算出手段を備え、
前記表示制御手段は、前記平均時間算出手段により算出された平均の作業時間の値を、前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のミシンの生産管理装置。
【請求項5】
前記複数の作業工程に対応する最短縫製作業情報から、任意の作業工程部分を選択する作業工程選択手段と、
前記記憶手段から前記作業工程選択手段により選択された作業工程部分を含む縫製管理情報を取得する取得手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記取得手段により取得された縫製管理情報に関するグラフを前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のミシンの生産管理装置。
【請求項6】
前記表示手段に表示される所定の縫製管理情報に関するグラフ又は所定の縫製管理情報に、前記最短縫製作業情報に対応する最短時間情報部分が含まれる場合、前記表示制御手段は前記所定の縫製管理情報に関するグラフ又は所定の縫製管理情報における最短時間情報部分を識別可能に前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のミシンの生産管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−373(P2009−373A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165415(P2007−165415)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】