説明

ミスト冷却装置及び熱処理装置

【課題】停電等の非常時において、被処理物の熱によって装置が破損することを防止できるミスト冷却装置及び熱処理装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、加熱されて冷却炉10内に設けられた被処理物Mに対して冷却用液体をミスト状に噴射できるノズル35,35Aと、駆動源Eによって駆動されノズル35,35Aに向けて冷却用液体を流動させるポンプ33とを有する冷却システム30を備えたミスト冷却装置3であって、駆動源Eの停止に応じて作動し、被処理物Mを冷却する第2冷却システム40を備える、という構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト冷却装置及び熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属等の被処理物に対する熱処理に用いられ、被処理物を冷却するためのミスト冷却装置が開示されている。ミスト冷却装置は、加熱された被処理物にミスト状の冷却液を噴射し、冷却液の気化潜熱を利用して冷却を行うため、従来のガス噴射型冷却装置に比べその冷却能力は高い。また、ミストの噴射量を調整することで、従来の浸漬型冷却装置では難しかった被処理物の冷却速度の制御を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−153386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術には、以下のような課題が存在する。
従来の浸漬型冷却装置では、加熱された被処理物は冷却液内に浸漬されるため、停電等により装置が停止しても冷却は続行される。よって、被処理物の熱によって装置が破損する可能性は低い。一方、ミスト冷却装置では、ポンプ等により冷却液を流動させて、噴射ノズルから冷却液をミスト状に噴射している。そのため、停電等により装置が停止するとミストの噴射も停止してしまい、被処理物の熱により装置内部の温度・圧力が上昇し、装置が破損する虞があった。
【0005】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、停電等の非常時において、被処理物の熱によって装置が破損することを防止できるミスト冷却装置及び熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、加熱されて冷却炉内に設けられた被処理物に対して冷却用液体をミスト状に噴射できるノズルと、駆動源によって駆動されノズルに向けて冷却用液体を流動させるポンプとを有する冷却システムを備えたミスト冷却装置であって、駆動源の停止に応じて作動し、被処理物を冷却する第2冷却システムを備える、という構成を採用する。
本発明では、駆動源が停止し冷却システムによる被処理物に対する冷却が停止すると、第2冷却システムが作動して被処理物に対する冷却を続行する。
【0007】
また、本発明は、ポンプは電力によって駆動され、第2冷却システムは電力の供給停止に応じてポンプを駆動させる非常用電源を有する、という構成を採用する。
本発明では、電力の供給が停止し冷却システムによる被処理物に対する冷却が停止すると、非常用電源によってポンプを駆動させて被処理物に対する冷却を続行する。
【0008】
また、本発明は、冷却システムがノズルを複数有し、第2冷却システムはポンプと複数のノズルのうち被処理物の上側に位置するノズルとの間に設けられ且つ少なくとも電力の供給停止中に開状態となるバルブを有する、という構成を採用する。
本発明では、電力の供給が停止すると上記バルブは開状態となる。そのため、被処理物の上側に位置するノズルから冷却用液体が供給される。
【0009】
また、本発明は、冷却システムがポンプを複数有し、非常用電源は複数のポンプのうち特定のポンプを駆動させる、という構成を採用する。
本発明では、電力の供給が停止し冷却システムによる被処理物に対する冷却が停止すると、非常用電源によって特定のポンプを駆動させて被処理物に対する冷却を続行する。そのため、非常用電源の容量を特定のポンプを駆動させるに十分なものに限定することが可能となる。
【0010】
また、本発明は、第2冷却システムが、冷却炉より上側に設けられ冷却用液体を貯留する貯留槽と、貯留槽とノズルとの間に設けられ少なくとも駆動源の停止中に開状態となる第2バルブを有する、という構成を採用する。
本発明では、駆動源が停止し冷却システムによる被処理物に対する冷却が停止すると、第2バルブが開状態となる。そのため、冷却炉より上側に設けられる貯留槽からノズルを介して冷却用液体が装置内に供給される。
【0011】
また、本発明は、冷却システムがノズルを複数有し、第2バルブは貯留槽と複数のノズルのうち被処理物の上側に位置するノズルとの間に設けられている、という構成を採用する。
本発明では、駆動源が停止すると第2バルブは開状態となる。そのため、被処理物の上側に位置するノズルから冷却用液体が供給される。
【0012】
また、本発明は、被処理物に対して熱処理を行う熱処理装置であって、請求項1から6のいずれか一項に記載のミスト冷却装置を有する、という構成を採用する。
本発明では、駆動源が停止し冷却システムによる被処理物に対する冷却が停止すると、第2冷却システムが作動して被処理物に対する冷却を続行する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、駆動源が停止し冷却システムによる被処理物に対する冷却が停止しても、第2冷却システムが作動して被処理物に対する冷却を続行することができる。そのため、駆動源停止という非常時において、被処理物の熱によって装置が破損することを防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】熱処理装置1の全体構成図である。
【図2】冷却室3の構成を示す概略図である。
【図3】第2冷却システム40の動作を示す概略図である。
【図4】冷却室3Aの構成を示す概略図である。
【図5】第2冷却システム40Aの動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図1から図5を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。また、以下の説明では、熱処理装置として2室型の熱処理装置の例を示す。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態に係る熱処理装置1の全体構成図である。
熱処理装置1は、被処理物Mに対して焼き入れ等の熱処理を施すものであって、加熱室2と、冷却室(ミスト冷却装置)3とを有している。加熱室2と冷却室3とは、隣接して配置されている。加熱室2と冷却室3との間には隔壁4が設けられ、隔壁4の開放時に、加熱室2において加熱された被処理物Mを冷却室3へ移動させ、冷却室3内で被処理物Mを冷却する。
【0017】
被処理物Mは、熱処理装置1によって熱処理が施されるものであって、所定量の炭素を含有した鋼等の金属材料(合金含む)からなる。以下の説明に用いる各図面では、被処理物Mを直方体形状に表しているが、その形状や大きさ、一度に処理する個数等は様々なものが存在する。
【0018】
次に、冷却室3の構成を、図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係る冷却室3の構成を示す概略図である。なお、図2は、図1のA−A線から見た断面図を用いている。
【0019】
冷却室3は、容器(冷却炉)10と、搬送部20と、冷却システム30と、第2冷却システム40と、制御部50とを有している。
容器10は、冷却室3の外殻を構成し、内部に密閉した空間を形成可能な略円筒状の容器である。容器10は、複数の支持脚11によって床面に設置されている。
【0020】
搬送部20は、被処理物Mを加熱室2から冷却室3へ搬入し、さらに冷却室3から外部に搬出するためのものであって、容器10の中心軸と平行する方向で被処理物Mを搬送するものである。搬送部20は、一対の支持フレーム21と、複数の搬送ローラ22と、不図示の駆動部とを有している。
【0021】
一対の支持フレーム21は、容器10の内側底部に立設され、複数の搬送ローラ22を介して被処理物Mを下方から支持するものである。一対の支持フレーム21は、被処理物Mの搬送方向に延在して設けられている。複数の搬送ローラ22は、回転することで被処理物Mを円滑に搬送するものであり、一対の支持フレーム21の互いに対向する面に、搬送方向に所定の間隔をあけて回転自在に設けられている。不図示の駆動部は搬送ローラ22を回転させるものである。また、本実施形態の被処理物Mは直接に搬送ローラ22に載置されず、トレー23を介して搬送ローラ22に載置される。
【0022】
冷却システム30は、加熱されて容器10内に設けられた被処理物Mに対して冷却用液体をミスト状に噴射して、被処理物Mを冷却するものである。冷却システム30は、回収管31と、熱交換器32と、ポンプ33と、供給管34と、ノズル35とを有している。なお、使用される冷却用液体としては、例えば水、油、ソルト又はフッ素系不活性液体等が用いられる。
【0023】
回収管31は、容器10内に供給された冷却用液体を回収する管部材である。なお、回収管31に回収されるときの冷却用液体は、被処理物Mの熱により加熱されている。熱交換器32は、回収された冷却用液体を冷却するものである。
【0024】
ポンプ33は、容器10内から回収され回収管31内に導入された冷却用液体を、供給管34に吐出しノズル35に向けて流動させるものである。なお、本実施形態のポンプ33は複数台が使用されており、第1ポンプ(特定のポンプ)33a、第2ポンプ33b及び第3ポンプ33cの3台が設けられている。第1ポンプ33a、第2ポンプ33b及び第3ポンプ33cは、供給管34に対して並列に配置されている。複数のポンプ33が並列配置されることで、1台のポンプでは作り出せない大きな流量を作り出すことができ、冷却システム30における冷却用液体の流量の調整幅を広く設定することが可能となる。
【0025】
複数のポンプ33には、それぞれインバータ36が接続されている。すなわち、第1ポンプ33a、第2ポンプ33b及び第3ポンプ33cには、第1インバータ36a、第2インバータ36b、第3インバータ36cがそれぞれに対応して接続されている。インバータ36は、後述する制御部50の指示に従ってポンプ33を駆動するものである。ポンプ33の駆動源は電力Eであり、電力Eはインバータ36に供給される構成となっている。
【0026】
供給管34は、複数のポンプ33から吐出された冷却用液体を一度集約した後、後述する複数のノズル35にそれぞれ供給する管部材である。
【0027】
ノズル35は、加熱されて容器10内に設けられた被処理物Mに対して冷却用液体をミスト状に噴射して、被処理物Mを冷却するものである。ノズル35は、容器10の内壁に被処理物Mを取り囲むようにして複数設けられている。これは、被処理物Mにおけるミストの当たらない部分を極力無くし、被処理物Mを均一に冷却することで、冷却の不均一性を原因とする被処理物Mの歪み等の発生を防止するためである。また、被処理物Mの鉛直方向上側には、上側ノズル35Aが設けられている。
【0028】
供給管34のうち、複数のノズル35に接続されている部分には、複数のバルブ37が設けられている。バルブ37は電力Eにより作動するものであり、電力Eの供給が停止すると閉状態となるノーマルクローズタイプのバルブである。
【0029】
一方、供給管34のうち、上側ノズル35Aに接続されている部分には、非常用バルブ37Aが設けられている。非常用バルブ37Aは、電力Eにより作動するものであるが、バルブ37とは異なり、電力Eの供給が停止すると開状態となるノーマルオープンタイプのバルブである。
【0030】
第2冷却システム40は、冷却システム30を駆動させる電力Eの供給が停止したときに、加熱された被処理物Mに対して冷却用液体を供給して被処理物Mを冷却するものである。第2冷却システム40は、バッテリー(非常用電源)41と、非常用バルブ37Aとを有している。
【0031】
バッテリー41は、第1インバータ36aのみに接続されており、電力Eの供給停止等の非常時に第1ポンプ33aのみを駆動させる駆動源である。なお、バッテリー41の代わりに、内燃機関等を用いた非常用電源装置を用いてもよい。
【0032】
制御部50は、インバータ36を介してポンプ33の駆動を制御するものである。制御部50は、複数のポンプ33の駆動を個別に制御でき、また特定のポンプ33のみを駆動させることも可能である。制御部50は電力Eによって駆動することから、電力Eの供給停止時に、制御部50によって第1ポンプ33aの駆動を制御する必要がある場合には、バッテリー41の電力を制御部50に供給してもよい。
【0033】
続いて、本実施形態に係る冷却室3の被処理物Mに対する冷却動作を説明する。
まず、冷却システム30の被処理物Mに対する冷却動作を、図1及び図2を参照して説明する。
被処理物Mは加熱室2において加熱される。加熱室2における加熱が終了した後、隔壁4が開放され、搬送部20の駆動により加熱された被処理物Mが冷却室3内に搬入される。
【0034】
冷却室3への搬入終了後、冷却システム30が被処理物Mに対する冷却を開始する。制御部50が、インバータ36を介してポンプ33の駆動を制御し、供給管34に冷却用液体が吐出される。冷却用液体は供給管34内をノズル35に向かって流動し、ノズル35から被処理物Mに向かってミスト状に噴射される。加熱された被処理物Mに付着したミストは被処理物Mから気化潜熱を奪い気化する。冷却用液体の気化潜熱を利用することで、被処理物Mを迅速に冷却することができる。
【0035】
気化した冷却用液体は、不図示の液化トラップ等で再び液化され回収管31に導入される。回収管31内を流動する冷却用液体は、熱交換器32によって冷却され、再びポンプ33によって供給管34に対して吐出される。
冷却システム30内を冷却用液体が循環して流動することで、被処理物Mを冷却することができる。
【0036】
次に、冷却システム30を作動させる電力Eの供給が停止したときの、第2冷却システム40による被処理物Mの冷却動作を、図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態における第2冷却システム40の動作を示す概略図である。なお、図3に示す回収管31及び供給管34において、冷却用液体が流動する部分のみ太線で表している。
【0037】
電力Eの供給が停止すると、第2ポンプ33b及び第3ポンプ33cの駆動は停止する。ここで、第1ポンプ33aと接続される第1インバータ36aには、バッテリー41が接続されている。そのため、電力Eの供給が停止しても、バッテリー41からの電力供給により第1ポンプ33aはその駆動を続行できる。また、バッテリー41は第1ポンプ33aを駆動するのみであるため、バッテリー41の容量を、第1ポンプ33aを駆動させるに十分なものに限定することができ、第2冷却システム40を設置するためのコストを抑制することができる。
【0038】
バッテリー41からの電力供給により、第1ポンプ33aは駆動を続行する。供給管34に設けられた複数のバルブ37はノーマルクローズタイプのバルブであるため、電力Eの供給停止により全て閉状態となる。したがって、冷却用液体のノズル35へ向かう流れがバルブ37によって遮られ、ノズル35からの冷却用液体の供給は停止する。
【0039】
一方、非常用バルブ37Aはノーマルオープンタイプのバルブであるため、電力Eの供給停止により開状態となる。すなわち、供給管34から非常用バルブ37Aを介して、上側ノズル35Aに対してのみ冷却用液体が供給される。冷却室3内に複数設けられるノズルのうち、特定の上側ノズル35Aからのみ冷却用液体を供給可能とすることで、バッテリー41が第1ポンプ33aのみを駆動する場合でも、上側ノズル35Aから十分に冷却用液体をミスト状に噴射することができる。
【0040】
また、上側ノズル35Aは被処理物Mの鉛直方向上側に設けられていることから、冷却用液体の流量が少ない場合でも被処理物Mに対して冷却用液体を確実に供給できる。よって、上側ノズル35Aから被処理物Mに向けて冷却用液体が供給され、加熱された被処理物Mに対する冷却が続行される。
【0041】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、電力Eの供給が停止し冷却システム30による被処理物Mに対する冷却が停止しても、第2冷却システム40が作動して被処理物Mに対する冷却を続行することができる。そのため、電力Eの供給停止という非常時において、被処理物Mの熱によって冷却室3が破損することを防止できるという効果がある。
【0042】
〔第2実施形態〕
本実施形態における冷却室3Aの構成を、図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る冷却室3Aの構成を示す概略図である。なお、図4は、図1のA−A線から見た断面図を用いている。また、図4において、図2に示す第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
本実施形態の冷却室(ミスト冷却装置)3Aは、第1の実施形態と同じく、熱処理装置1に設けられるものである。また、上側ノズル35Aと接続する供給管34には、ノーマルクローズタイプのバルブ37が設けられている。
【0044】
冷却室3Aは、第2冷却システム40Aを有している。第2冷却システム40Aは、冷却システム30への電力Eの供給停止時に、被処理物Mの冷却を続行するためのものである。第2冷却システム40Aは、貯留槽45と、第2供給管46と、第2非常用バルブ47とを有している。
【0045】
貯留槽45は、その内部に第2冷却用液体(冷却用流体)Lを貯留する槽である。貯留槽45は、冷却室3Aの容器10よりも上側に設けられている。第2冷却用液体Lとしては、水等が用いられる。
【0046】
第2供給管46は、上側ノズル35Aに対応するバルブ37と並列して配設され、上側ノズル35Aと貯留槽45とを接続する管部材である。第2非常用バルブ47は、第2供給管46に設けられている。第2非常用バルブ47は、電力Eの供給が停止すると開状態となるノーマルオープンタイプのバルブである。なお、第2非常用バルブ47は、電力Eが供給されている間は常時閉状態となっている。
【0047】
次に、冷却システム30を作動させる電力Eの供給が停止したときの、第2冷却システム40による被処理物Mの冷却動作を、図5を参照して説明する。なお、冷却システム30による被処理物Mに対する冷却動作は、第1の実施形態と同様であるためその説明を省略する。
【0048】
図5は、本実施形態における第2冷却システム40Aの動作を示す概略図である。なお、図5に示す供給管34及び第2供給管46において、第2冷却用液体Lが流動する部分のみ太線で表している。
【0049】
供給管34に設けられるバルブ37は、電力Eの供給停止により全て閉状態となる。すなわち、本実施形態において、電力Eの供給停止時に冷却用液体は冷却システム30内を流動しない。
【0050】
一方、第2非常用バルブ47は、電力Eの供給停止により開状態となる。よって、第2供給管46を介して貯留槽45から第2冷却用液体Lが上側ノズル35Aに向かって流動し、上側ノズル35Aから第2冷却用液体Lが被処理物Mに向かって供給される。ここで、貯留槽45は容器10より上側に設けられ、第2冷却用液体Lは高低差を利用して被処理物Mに対して供給されるため、第2冷却システム40Aを駆動するための駆動源を必要としない。
【0051】
なお、本実施形態では、貯留槽45内の第2冷却用液体Lは高低差を利用して上側ノズル35Aから吐出されるため、ミスト状に噴射されることはない。もっとも、上側ノズル35Aは、被処理物Mの鉛直方向上側に設けられているため、被処理物Mに対して第2冷却用液体Lを確実に供給できる。したがって、上側ノズル35Aから被処理物Mに向けて第2冷却用液体Lが供給され、加熱された被処理物Mに対する冷却が続行される。
【0052】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、電力Eの供給が停止し冷却システム30による被処理物Mに対する冷却が停止しても、第2冷却システム40Aが作動して被処理物Mに対する冷却を続行することができる。そのため、電力Eの供給停止という非常時において、被処理物Mの熱によって冷却室3Aが破損することを防止できるという効果がある。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0054】
例えば、第2の実施形態では、冷却システム30の駆動源の種類は問わず、電力E以外を駆動源としてもよい。例えば、冷却システム30のポンプが燃料等を駆動源として駆動するものであってもよく、燃料等の供給が停止したときに第2冷却システム40Aが作動する構成としてもよい。また、第2冷却システム40Aが作動するときは、駆動源の供給が停止したときだけでなく、第2供給管46が破損しない限りは、冷却システム30の回収管31又は供給管34が破損したときに、第2冷却システム40Aを作動させてもよい。
【0055】
また、第2の実施形態では、第2非常用バルブ47はノーマルオープンタイプのバルブであるため、貯留槽45内の第2冷却用液体Lが尽きるまで被処理物Mに対する供給は止まらない。そこで、容器10内に供給された第2冷却用液体Lの水位を計測する機器を設け、一定の水位に達したら第2非常用バルブ47を閉める構成としてもよい。この場合は、上記水位計測器及び第2非常用バルブ47を駆動させる駆動源(バッテリー等)が必要となる。
【符号の説明】
【0056】
1…熱処理装置、3,3A…冷却室(ミスト冷却装置)、10…容器(冷却炉)、30…冷却システム、33…ポンプ、33a…第1ポンプ(特定のポンプ)、35…ノズル、35A…上側ノズル、37A…非常用バルブ、40,40A…第2冷却システム、41…バッテリー(非常用電源)、45…貯留槽、47…第2非常用バルブ、M…被処理物、L…第2冷却用液体(冷却用流体)、E…電力(駆動源)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されて冷却炉内に設けられた被処理物に対して冷却用液体をミスト状に噴射できるノズルと、駆動源によって駆動され前記ノズルに向けて冷却用液体を流動させるポンプとを有する冷却システムを備えたミスト冷却装置であって、
前記駆動源の停止に応じて作動し、前記被処理物を冷却する第2冷却システムを備えることを特徴とするミスト冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載のミスト冷却装置において、
前記ポンプは、電力によって駆動され、
前記第2冷却システムは、前記電力の供給停止に応じて前記ポンプを駆動させる非常用電源を有することを特徴とするミスト冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載のミスト冷却装置において、
前記冷却システムは、前記ノズルを複数有し、
前記第2冷却システムは、前記ポンプと複数の前記ノズルのうち前記被処理物の上側に位置するノズルとの間に設けられ且つ少なくとも前記電力の供給停止中に開状態となるバルブを有することを特徴とするミスト冷却装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のミスト冷却装置において、
前記冷却システムは、前記ポンプを複数有し、
前記非常用電源は、複数の前記ポンプのうち特定のポンプを駆動させることを特徴とするミスト冷却装置。
【請求項5】
請求項1に記載のミスト冷却装置において、
前記第2冷却システムは、
前記冷却炉より上側に設けられ、冷却用液体を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽と前記ノズルとの間に設けられ、少なくとも前記駆動源の停止中に開状態となる第2バルブを有することを特徴とするミスト冷却装置。
【請求項6】
請求項5に記載のミスト冷却装置において、
前記冷却システムは、前記ノズルを複数有し、
前記第2バルブは、前記貯留槽と複数の前記ノズルのうち前記被処理物の上側に位置するノズルとの間に設けられていることを特徴とするミスト冷却装置。
【請求項7】
被処理物に対して熱処理を行う熱処理装置であって、
請求項1から6のいずれか一項に記載のミスト冷却装置を有することを特徴とする熱処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220627(P2011−220627A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91362(P2010−91362)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000198329)株式会社IHI機械システム (27)
【Fターム(参考)】