説明

ミスト吐出ヘッド及びこれを備えた画像形成装置、液体吐出装置

【課題】放物面型リフレクタの空洞部の空間使用効率を高めるとともに、実効集束倍率を向上させる。
【解決手段】液体を吐出するノズル孔が形成されたノズルプレートと、前記ノズル孔に連通する液室と、前記液室中の液体に超音波を与える超音波発生手段と、前記液体に与えられた超音波を反射する反射壁と、を備え、前記反射壁は、前記ノズルプレートに対向して配置され、放物面の焦点よりも頂点側の頂点を含む部分の軸対称形状を有し、その軸は前記ノズル孔を通るとともに、前記ノズル孔の近傍に前記放物面の焦点が位置することを特徴とするミスト吐出ヘッドを提供することにより前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト吐出ヘッド及びこれを備えた画像形成装置、液体吐出装置に係り、特に、ミスト吐出ヘッド用高集束低減衰型リフレクタを用いたミスト吐出ヘッド及びこれを備えた画像形成装置、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体インクを霧化させ、霧状のインクすなわちインクミストを発生させて、このインクミストを選択的に記録媒体に付着させることにより所望の画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、画像信号に応じて超音波振動を行わせる微細な超音波振動針の先端より、局所的に帯電インクミストを発生させ、帯電インクミストに電界を印加して、記録媒体に選択的に付着させて記録を行うようにしたインクミスト画像記録装置が知られている(例えば、特許文献1あるいは特許文献2等参照)。
【0004】
また、あるいはインクタンク内に設けられたインクを蓄えるための空洞の底面に設けられた圧電トランスジューサ(振動子)によって空洞内のインクに超音波が供給され、超音波がその断面が放物線状に形成された空洞の内壁で反射され、反射波が前記放物線の焦点に集束してインク中の音響エネルギー密度が高められ、焦点付近に形成された噴出口からインクがミスト状となって噴出されるようにした液体噴出装置が知られている(例えば、特許文献3あるいは特許文献4等参照)。
【0005】
液体インクのミスト化には、一般にMHzオーダの超音波が用いられる。具体的に液体インクをミスト化する方法としては、キャビテーション(空洞現象)によるキャビテーション霧化とキャピラリ波(毛細表面波)によるキャピラリ霧化が用いられている。このとき、後者の方法を用いた方が粒径の揃ったミストを生成することができ、かつエネルギー効率もよい。
【0006】
キャピラリ霧化の場合、自由液面に向かって下方から平面波を印加することでキャピラリ波が発生するが、この平面波がある一定以上の周波数及び振幅となったとき、キャピラリ波は発振を起こす。その結果、成長したキャピラリ波の波頭から微小液滴が分裂してミストが発生する。
【0007】
このとき、例えば上記特許文献3あるいは特許文献4に見られるように、超音波を反射するインクタンクの空洞内壁を放物面型のリフレクタとして、超音波を波長レベルの領域に集束させることによってエネルギー効率を上げる工夫が考えられている。
【0008】
図8に、このような放物面型リフレクタを用いた従来のミスト吐出ヘッドの断面図を示す。
【0009】
図8に示す従来型のミスト吐出ヘッド100は、インクタンク110と、インクタンク110内に設けられたインクを蓄える空洞部112と、空洞部112の底面に設けられた超音波発生手段114とを備えている。超音波発生手段114は、振動板116と圧電素子118とから成っている。
【0010】
空洞部112の内壁は超音波発生手段114が発生した超音波を反射するリフレクタ(反射壁)120となっている。リフレクタ120は、その断面形状が図の右側に示したような放物線形状を有している。また、空洞部112の上端側は、ストレート形状の直管部122となっており、この直管部122の中央上部に、リフレクタ120の断面形状がなす放物線の焦点124が位置するようになっている。
【0011】
また、空洞部112の上側にはノズルプレート126が形成され、前記焦点124の位置にインクを吐出するための開口であるノズル128が形成されている。また、空洞部112の底面には側方から空洞部112にインクを供給するためのインク供給路130が設けられている。
【0012】
インクミスト吐出時には、超音波発生手段114から空洞部112内のインクに対して、リフレクタ120の断面形状が成す放物線の軸方向に平行に(略平面状に)超音波132が印加される。超音波132は、リフレクタ120で反射される。リフレクタ120は、その断面形状が放物線を成すように形成されているため、反射した超音波132は放物線の焦点124に集束する。
【0013】
また、焦点124の位置にノズル128が形成されているため、超音波132はノズル128で集束し、ノズル128においてインクの音響エネルギーが高められ、ノズル128からインク滴がインクミストとなって吐出する。
【0014】
このように、従来のミスト吐出ヘッド100においては、リフレクタ(反射壁)120の断面形状は放物線となるように形成され、しかも、このとき図8の右側に示すように、放物線の焦点Fよりもその頂点Cから遠い側の部分(図8の放物線で言うと焦点Fよりも下側の部分)P1を用いている。
【0015】
次に、図8に示す従来の放物面型リフレクタを用いたミスト吐出ヘッドにおける振幅実効集束倍率について説明する。
【0016】
図8に示すような放物面型リフレクタ(反射壁120)を用いて、音源(超音波発生手段114)の振動エネルギーをノズル入り口(ノズル128の空洞部112側)に集束させる場合を考える。
【0017】
まず、放物面型リフレクタを用いた場合のエネルギーの幾何学的集束倍率mは、次の式(1)で与えられる。
【0018】
m=(D−d)/λ ・・・(1)
ここで、図8に示すようにD[m]は、リフレクタ入口側It(空洞部112の底面側)の直径(inlet径)であり、d[m]は、リフレクタ出口側Ot(空洞部112上端側)の直径(outlet径)である。また、λは、次の式(2)で示されるように、流体中の音速(縦波伝播速度)v[m/s]と、音源の周波数f[Hz]の比で表される流体中の縦波波長である。
【0019】
λ=v/f ・・・(2)
また、連続体の振動エネルギーは、振幅の2乗に比例するので、振幅の増幅率としてはmの平方根、√(m)となる。そこで、振幅実効集束倍率Γを、リフレクタによる振幅の幾何学的集束倍率√(m)と粘性減衰を考慮した場合の伝達率Tの積として、次の式(3)によって定義する。
【0020】
Γ=T×√(m) ・・・(3)
なお、ここで伝達率Tは、次の式(4)で与えられる。
【0021】
T=exp(−αL) ・・・(4)
ここで、係数αは、α=0.8361×μf×10−13[neper・m−1]、であり、L[m]は伝播距離、μ[cP]は粘性係数である。
【0022】
以上をまとめることにより、振幅実効集束倍率Γは、次の式(5)のようになる。
【0023】
Γ=f√(D−d)/v×exp(0.8361×μf×10−13×L)
・・・(5)
次に、リフレクタ(反射壁120)の形状について説明する。図9に示すように、リフレクタ(反射壁120)は、図の左側に示すような軸対称の放物線の焦点Fよりもその頂点Cから遠い側(図9の放物線で言うと焦点Fよりも下側)をその断面形状に持つような放物面形状を有している。
【0024】
ここで、リフレクタ(反射壁)120を式表示するために、図9の右側に示すように座標軸r、zをとると、このリフレクタの放物面形状は次の式(6)のように表される。
【0025】
z(r)=(g+p+u+q)−(a/RB1)r ・・・(6)
なお、式(6)中で用いられている各記号の意味は以下の通りである。
【0026】
まず、図9中に示すように、リフレクタ入口(inlet)側It(空洞部112の底面側)の半径(inlet半径)をRB1、リフレクタ出口(outlet)側Ot(空洞部112上端側)の半径(outlet半径)をRA1とし、図の左側の放物線に示すようにhをとり、また焦点Fと頂点Cとの距離をpとする。
【0027】
このとき、aを次の式(7)で定義する。
【0028】
h=aB1 ・・・(7)
をこのように定義すると、簡単な計算により、この放物線の2次の項の係数(rの係数)Aはa/RB1となる。
【0029】
また、放物線の焦点Fと頂点Cとの距離pは、一般に2次の項(r)の係数Aを用いて1/(4A)と表されるので、上の結果を用いると次の式(8)のように表される。
【0030】
p=RB1/(4a) ・・・(8)
また、図の右側に示すリフレクタの軸方向の長さqは、次の式(9)で表される。
【0031】
q=(a/RB1)×(RB1 − RA1) ・・・(9)
また、空洞部112の直管部122の軸方向の長さgは、図より次の式(10)で表される。
【0032】
g=h−(p+q) ・・・(10)
また図9に示すように、リフレクタが放物面型の場合に、超音波が空洞部112の入り口側It(inlet側)から放物面の軸に平行に入ってから、その放物面で反射して焦点Fに至るまでの伝播距離Lは、放物面の性質として一般にその反射する位置によらず一定であることが知られており、従って特に空洞部112の出口側Ot(outlet側)の半径RA1のところで反射した場合を考えると、図より次の式(11)で表されることがわかる。
【0033】
=q+√(RA1+g) ・・・(11)
これに式(7)〜式(10)を代入して少し計算すれば、次の式(12)が得られる。
【0034】
={(4a+1)/4a}×RB1 ・・・(12)
なお、これをさらに計算すると、L=aB1+RB1/4a=h+pであることがわかる。
【0035】
また、放物面の焦点Fは、空洞部112の出口(outlet)より上側、すなわち図9に示すように少なくとも直管部122内に位置する必要があるので、次の式(13)の条件が必要となる。
【0036】
g ≧ 0 ・・・(13)
上述したように、リフレクタ入口側It(空洞部112の底面側)の直径(inlet径)をD、リフレクタ出口側Ot(空洞部112上端側)の直径(outlet径)をdとすると、D=2RB1、またd=2RA1である。そこで上記式(13)を、式(7)〜式(10)を用いて変形すると次の式(14)が得られる。すなわち、焦点Fが直管部122内に位置するためには次の式(14)を満たす必要がある。
【0037】
d ≧ D/2a ・・・(14)
いま、理想的な状態としてg=0の場合を考えて、リフレクタ出口側Ot(空洞部112上端側)の直径(outlet径)dを次の式(15)で再定義しておく。
【0038】
d = min(d)= D/2a ・・・(15)
ここで、min(d)は、dの最小値を示す記号である。
【0039】
これにより、実効集束倍率Γは、流体中の音速v、音源の周波数f、粘性係数μ、インク供給路の径u(図9参照)、リフレクタ入口側Itの直径(inlet径)D、及び前記式(7)で定義されるaの関数として次の式(16)で表される。
【0040】
【数1】

また、この式(16)を、γ=0.8361×10−13として、次の式(17)のように書くこととする。
【0041】
【数2】

すると、この実効集束倍率ΓをD及びaのみの関数と考えたときの、D方向及びa方向において極値を取る点は、次の式(18)及び式(19)で与えられる、D−a平面上の曲線上にあることがわかる。
【0042】
【数3】

【0043】
【数4】

例えば、v=1500[m/s]、f=10[MHz]、μ=20[cP]、u=0[m]としてDとaを変化させたときの実効集束倍率Γ(D,a)を図10に示す。この実効集束倍率Γ(D,a)を示す等高線状の曲線をcontour曲線という。
【0044】
図10において、これらのcontour曲線を横切る2本の曲線C1及びC2が示されているが、曲線C1は、式(18)で示されるaを一定としたときのΓの最大値を与える曲線であり、曲線C2は、式(19)で示されるDを一定としたときのΓの最大値を与える曲線である。
【0045】
すべての(D,a)において取り得る最大の実効集束倍率Γは、これら2曲線C1及びC2の交点に存在する。これは、次の式(20)を解くことによって得られる。
【0046】
∂Γ/∂D = ∂Γ/∂a = 0 ・・・(20)
この式(20)を解くことによって、実効集束倍率Γの最大値を与えるD及びaの値、D’及びa’が次の式(21)のように得られる。
【0047】
【数5】

またここで、実効集束倍率Γの最大値max(Γ)は、次の式(22)で与えられる。
【0048】
【数6】

図10の場合に、具体的にその値を算出すると、次の式(23)のようになる。すなわち、このときの最大実効集束倍率Γは、略20.74である。
【0049】
【数7】

【特許文献1】特開昭62−85948号公報
【特許文献2】特開昭62−111757号公報
【特許文献3】特開2002−59540号公報
【特許文献4】特開2002−166541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0050】
しかしながら、上述したような従来の放物面型リフレクタを用いたミスト吐出ヘッドにおいては、図8の右側に示すような軸対称の放物線の焦点Fよりもその頂点Cから遠い側(図8の放物線で言うと焦点Fよりも下側)P1をリフレクタとして使用しているため、集束に寄与しない直接波領域の面積が無駄となり、空洞部の空間使用効率が悪いという問題がある。
【0051】
また、その一方で、直接波領域を小さくするために空洞部出口径(outlet径)を絞った場合には、リフレクタの断面形状がなす放物面の焦点までの超音波の伝播距離が長くなり、そのため粘性減衰によって実効的な集束倍率が低下してしまうという問題がある。
【0052】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、放物面型リフレクタの空洞部の空間使用効率を高めるとともに、空洞部出口径を絞っても焦点までの超音波の伝播距離が長くならず、実効集束倍率を向上させることのできるミスト吐出ヘッド及びこれを備えた画像形成装置、液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0053】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、液体を吐出するノズル孔が形成されたノズルプレートと、前記ノズル孔に連通する液室と、前記液室中の液体に超音波を与える超音波発生手段と、前記液体に与えられた超音波を反射する反射壁と、を備え、前記反射壁は、前記ノズルプレートに対向して配置され、放物面の焦点よりも頂点側の頂点を含む部分の軸対称形状を有し、その軸は前記ノズル孔を通るとともに、前記ノズル孔の近傍に前記放物面の焦点が位置することを特徴とするミスト吐出ヘッドを提供する。
【0054】
これにより、ミスト吐出ヘッドのリフレクタ(反射壁)として放物線の焦点よりも頂点側の部分を使用するようにしたため、リフレクタ出口側の径(outlet径)を最小でノズル径まで絞ることができ、またその際超音波の伝播距離が長くなることもないため、従来に比べて実効集束倍率を向上させることができる。
【0055】
また、請求項2に示すように、前記超音波発生手段は、前記ノズルプレートの前記液室とは反対側の前記ノズル孔近傍に配置され、前記超音波発生手段から発生された超音波は、前記ノズルプレートを介して前記液室内の液体に印加され、前記軸に平行に、前記ノズルプレートに対向する前記反射壁に向かい、前記反射壁で反射した後前記焦点に集束することを特徴とする。
【0056】
これにより、ノズル近傍に超音波発生手段を配置することで、超音波発生手段が発生する熱が液体のメニスカスに印加されるため、粘性を低減させることが可能となる。またさらに、超音波発生手段からノズルプレートに直接圧力を印加することにより流体を介した間接的な圧力印加よりも高効率にノズルプレート上に弾性波を生じさせ、これをノズルエッジに伝達することで表面張力波発生をアシストすることも可能となる。さらに、超音波発生手段そのものの間隙でスリット状にノズルを形成するのではなく、ノズルプレートにノズル孔として形成し、ノズルプレートのノズル孔近傍に超音波発生手段を配置するようにしたため、超音波発生手段の寸法精度がノズル孔の寸法精度に影響することはない。また、超音波発生手段をノズルプレートの液室とは反対側に配置したため、超音波発生手段の電極に対する配線を容易に形成することができる。
【0057】
また、請求項3に示すように、前記液室に前記液体を供給する供給路が、前記液室が形成される液室プレートと前記ノズルプレートとの間の前記ノズルプレート側に形成されたことを特徴とする。
【0058】
これにより、供給路が反射壁の反射面の形状を損なうことがないため、超音波の反射及び集束に悪影響を及ぼすことが少なく、また液室内での気泡発生を抑制することが可能となる。
【0059】
また、前記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のミスト吐出ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0060】
これにより、効率的に液体ミストを吐出することができ効率的に画像形成を行うことができる。
【0061】
また、前記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のミスト吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液体吐出装置を提供する。
【0062】
これにより、効率的に液体ミストを吐出することができる。
【発明の効果】
【0063】
以上説明したように、本発明によれば、ミスト吐出ヘッドのリフレクタ(反射壁)として放物線の焦点よりも頂点側の部分を使用するようにしたため、リフレクタ出口側の径(outlet径)を最小でノズル径まで絞ることができ、またその際超音波の伝播距離が長くなることもないため、従来に比べて実効集束倍率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るミスト吐出ヘッド及びこれを備えた画像形成装置、液体吐出装置について詳細に説明する。
【0065】
図1は、本発明のミスト吐出ヘッドの一実施形態の概略を示す断面図である。
【0066】
図1に示すように、本実施形態のミスト吐出ヘッド10は、ノズルプレート12と液室プレート14を積層して形成され、ノズルプレート12にはインクを吐出するためのノズル孔16(以下、単にノズル16と言う。)が形成され、液室プレート14にはインクを蓄える空洞部としてのインク液室18が形成されている。
【0067】
インク液室18のノズル16に対向する内壁面は超音波を反射するためのリフレクタ(反射壁)20として形成されている。ノズルプレート12は振動板を兼ねており、ノズル16の周囲には超音波発生手段としての圧電素子22が配置されている。また、インク液室18のノズルプレート12側には、インク液室18にインクを供給するためのインク供給路24が形成されている。
【0068】
リフレクタ20は、その断面形状が図1の右側に示す放物線の焦点Fよりも頂点C側の部分(図1の放物線で言うと焦点Fよりも上側の頂点Cを含む部分)P2のような放物線形状を有する放物面型のリフレクタ(反射壁)である。また、リフレクタ20は、放物面の軸がノズル16の中心を通り、かつその焦点Fがノズル16の中心でノズルプレート12のインク液室18側に位置するように形成されている。
【0069】
超音波発生手段である圧電素子22によって発生された超音波26は、振動板を兼ねるノズルプレート12を介してインク液室18内のインクに伝達され、リフレクタ20の方向に向かってリフレクタ20の放物面としての軸に沿って平面波として進み、リフレクタ20で反射される。
【0070】
このとき、放物面の軸に平行に進んだ超音波26は、放物面であるリフレクタ20で反射された後、焦点Fに集束する。またノズル16の中央に焦点Fが位置するように形成されているため、リフレクタ20で反射された後の超音波26はノズル16の位置で集束する。その結果、ノズル16においてインクの音響エネルギーが高められ、ノズル16からインク滴がインクミストとなって吐出されるようになっている。
【0071】
このように、ノズル近傍に超音波発生手段としての圧電素子22を配置することで、圧電素子22が発生する熱がインクのメニスカスに印加されるため、インクの粘性を低減させることが可能となる。またさらに、超音波発生手段からノズルプレート12に直接圧力を印加することにより、流体を介した間接的な圧力印加よりも高効率にノズルプレート12上に弾性波を生じさせ、これをノズルエッジに伝達することで表面張力波発生をアシストすることも可能となる。
【0072】
また図1に示すように、本実施形態におけるリフレクタ20のリフレクタ入口側Itは、リフレクタ20を形成する放物面が軸の回りに最も大きく開いた部分であり、リフレクタ入口(inlet)側Itの半径(inlet半径)をRB2とする。また、リフレクタ20のリフレクタ出口側Otは、リフレクタ20で反射した超音波26が集束するノズル16の近傍に設けられた超音波発生手段としての圧電素子22が形成された部分であり、リフレクタ出口(outlet)側Otの半径(outlet半径)をRA2とする。
【0073】
本実施形態においては、図1に示すように、焦点Fはリフレクタ入口側Itよりも音源(圧電素子22)に近い側に位置している。なお、従来のリフレクタ(反射壁120)においては、図8に示すように、焦点Fはリフレクタ入口側Itよりも音源(圧電素子118)から遠い側に配置されていた。超音波発生手段(圧電素子22)で発生された超音波26がリフレクタ入口側Itからリフレクタ20に入り反射後、焦点Fに至るまでの伝播距離Lは、従来と同様に式(12)で表される。
【0074】
このとき従来は、リフレクタ出口側Otの直径(outlet径)とリフレクタ入口側Itの直径(inlet径)が前記式(14)を満たす必要があったが、本実施形態においては、このような制約がないため、リフレクタ入口側Itからリフレクタ出口側Otまでのリフレクタ深さを無駄に増やすことなく、式(5)におけるdに相当するリフレクタ出口側Otの直径2RA2を最小でノズル径オーダまで縮小することが可能となる。
【0075】
なお、放物面の焦点よりもその頂点から遠い側の部分(図8のP1の部分)をリフレクタとして用いる従来型のリフレクタ120では、式(9)から明らかなように、一定のoutlet径RA1に対してinlet径RB1を絞ると、リフレクタ120の軸方向の長さ(inlet-outlet間距離)qが必然的に長くなる。その結果、超音波の伝播距離Lが長くなってしまう。しかし、本実施形態のリフレクタ20においては、超音波の伝播距離Lが長くなることはなく、実効集束倍率を向上させることができる。
【0076】
なお、このように超音波発生手段(圧電素子22)をノズル近傍に配置したため、ノズル16において集束する超音波の位相と圧電素子22が振動する位相とが必ずしも一致せず、両者が互いに干渉し、互いを減衰することが考えられるが、ノズル面で発生する音場のエネルギー密度と焦点のエネルギー密度では、数百倍の差があるので、上記干渉効果は相対的に無視することができ、問題はない。
【0077】
ここで、従来の図8あるいは図9と同様にして、図1の右側の放物線において、リフレクタ入口側Itにおける横軸の長さRB2に対する放物線の高さhの比aを、h=aB2とすると、この放物線の2次の項rの係数AはA=a/RB2となるので、図1の放物線の焦点Fと頂点Cとの距離p、及び焦点Fにおける横軸の長さRは、それぞれ次のようになる。すなわち、Rは次の式(24)で、pは式(25)で表される。
【0078】
R=RB2/2a ・・・(24)
p=RB2/4a ・・・(25)
さらに図1よりインク供給路24の径uは次の式(26)で表される。
【0079】
u=p−h=p−aB2 ・・・(26)
また、音源である超音波発生手段から発せられた超音波26がリフレクタ20で反射して焦点Fに至るまでの伝播距離Lは、前述したように一般にリフレクタ20での反射位置によらず一定であるため、リフレクタ入口側Itで反射した場合を考え、uとリフレクタinlet半径RB2を用いて計算すると、次の式(27)のように求められる。
【0080】
=u+√(u+RB2) = RB2/2a = R ・・・(27)
今、超音波26の集束に寄与する音源面積を、従来型のリフレクタ120(図8参照)と本実施形態のリフレクタ20とについて計算すると、
図8に示す従来のリフレクタ120に対する音源面積Aは、次の式(28)で表される。
【0081】
=π(RB1 − RA1) ・・・(28)
また、図1に示す本実施形態のリフレクタ20に対する音源面積Aは、次の式(29)で表される。
【0082】
=π(RB2 − RA2) ・・・(29)
周波数fが同じならば、集束倍率は音源面積に依存するので、今従来と本実施形態において集束倍率が同じであると仮定すると、各音源面積A、Aは等しくなる。そこで、A=Aとすると、式(28)、(29)より、RB1−RA1=RB2−RA2となり、これに式(25)、(26)を用いて多少の計算をすることにより、次の式(30)が得られる。
【0083】
B2=2a{u+√(u−RA1+RB1+RA2)} ・・・(30)
従って、これより本実施形態のリフレクタ20における超音波の伝播距離Lは、次の式(31)のように表される。
【0084】
=u+√(u−RA1+RB1+RA2) ・・・(31)
ここでさらに、式(15)に示すような理想化、d=D/2aを行い従来型のリフレクタ120の直管部(ストレート部)122を無くすようにする。すなわち、2RA1=2RB1/2aよりRA1=RB1/2aを式(31)に代入することにより、次の式(32)が得られる。
【0085】
={(2au+1)/2a
×√(4a+(4a−1)RB1+4aA2) ・・・(32)
ここで、もし次の式(33)が満たされれば、同じ集束倍率で本実施形態のリフレクタ20による超音波の伝播距離Lは従来型のリフレクタ120による超音波の伝播距離Lを下回る事となるため、本実施形態における粘性減衰を考慮した実効集束倍率は、確実に従来型より向上することとなる。
【0086】
< L・・・(33)
そこで、次の連立不等式(34)を考える。
【0087】
≦L,1/2≦a,0<RB1,0<RA2,u=0 ・・・(34)
式(34)の第2式は、従来型ではoutlet径はinlet径よりも常に小さいということを意味している。また、式(34)の第5式では、前述した従来型での検討と同様に、音源からリフレクタ入口側It(inlet)までの距離はu=0として理想化した。式(34)を解くと、次の式(35)が得られる。
【0088】
0 < RA2 ≦ RB1√(16a−8a+5)/4a ・・・(35)
これを満たす限り、同じ幾何学的集束倍率において、本実施形態のリフレクタは、従来型のリフレクタに比べて超音波の伝播距離が短いことになり、その結果、実効集束倍率は従来型に比べて向上していると言える。また、上記式(35)を満たすようにすることは容易である。
【0089】
ここで比較のために、超音波の伝播距離を従来型の場合Lと本実施形態の場合Lを、本実施形態は従来型と同じ幾何学的倍率を持つとして(従来型のoutlet面は焦点に一致していると想定した)並べて式(36)、(37)として記載する。なお、音源からリフレクタ入口側It(inlet)までの距離を従来型はu、本実施形態はuとした。
【0090】
=u+{(4a+1)/4a}RB1 ・・・(36)
={(2a+1)/2a
×√(4a+(4a−1)RB1+4aA2) ・・・(37)
例えば、 a=1.5、u=u=0.5[mm]、RA1=0.5[mm]、RB1=1.0[mm]、RA2=10[μm]の時、式(35)はおよそ次の式(39)のようになり、式は満たされる。
【0091】
0 < 10×10−6 < 1.374×10−3 ・・・(39)
実際、この時、次の式(40)に示すようになった。
【0092】
【数8】

このように、本実施形態における伝播距離L=1.567は、従来の伝播距離L=2.166に対して、(2.166−1.567)/2.166=0.276より、27.6%小さくなっている。また、圧電素子の直径はリフレクタ入口側Itの直径(inlet径)に略等しいが、本実施形態のinlet半径はRB2=0.866であるのに対して、従来のinlet半径はRB1=1.0であり、直径で比較すると(2RB1−2RB2)/2RB1=(2.0−1.732)/2.0=0.134となり、従来の圧電素子径より13.4%小さくなっている。結局、本実施形態においては、同じ集束倍率で、伝播距離はおよそ27.6%、超音波発生手段である圧電素子の直径はおよそ13.4%、従来型のリフレクタよりも小さくなったことになる。
【0093】
このように、本実施形態のリフレクタによれば、同じ幾何学的集束倍率において、粘性減衰を考慮した実効集束倍率は向上し、また、高密化適性も向上する。
【0094】
次に、本実施形態のリフレクタにおける実効集束倍率の上限について説明する。
【0095】
本実施形態のリフレクタにおいて、超音波のリフレクタ入口側Itから反射後焦点に至るまでの伝播距離Lは、上述した式(27)により、次の式(41)のように表される。
【0096】
=u+√(u+RB2) ・・・(41)
このときの実効集束倍率は次の式(42)のようになる。
【0097】
【数9】

ここで、D=2RB2、D=2RA2である。また、この式(42)からわかるように、実効集束倍率Γは、式(24)あるいは式(25)で与えられるaには依存しない。これは、式(16)で示す従来型の場合には実効集束倍率Γが式(7)で定義されるaに依存するのとは大きく異なる点である。
【0098】
また、実効集束倍率Γ(D)がRB2方向(D方向)に極大値を取る点は、次の5次方程式(43)の開として与えられる。
【0099】
∂Γ(D)/∂D = 0 ・・・(43)
しかし、この方程式の解の中で物理的に意味があるのは、次の式(44)で示される点である。
【0100】
【数10】

また、従来型のリフレクタにおいて、あるDに対する最大の実効集束倍率は次の式(45)で与えられる。
【0101】
【数11】

ここで、最大実効集束倍率を与えるaの値は、∂Γ/∂a=0となるaの値であり、これは次の4次方程式(46)を解ことによって得られる。
【0102】
【数12】

このaの値を各D毎に、Hitchcock-Bairstow法を用いて数値的に求め、上記式(45)に適用して得た従来型のリフレクタにおける最大実効集束倍率と、上記式(42)で表される本実施形態のリフレクタにおける実効集束倍率を同じ条件でプロットして図2に示す。すなわち、図2は、v=1500[m/s]、f=10[MHz]、μ=20[cP]、u=0[m]、D=20[μm]における従来型と本実施形態における集束倍率の違いを横軸にD、縦軸にΓをとって示したものである。
【0103】
図2において、Newは本実施形態のリフレクタにおける集束倍率ΓNew(D)を示すグラフであり、Convは従来型のリフレクタにおける集束倍率ΓConv(D)を示すグラフである。
【0104】
本実施形態における集束倍率のグラフNew上の点N1は集束倍率ΓNew(D)が最大となる点であり、そのときの値は次の式(48)で与えられる。また、従来における集束倍率のグラフConv上の点C1は集束倍率ΓConv(D)が最大となる点であり、そのときの値は次の式(47)で与えられる。
【0105】
【数13】

また、グラフNew上の点N2及びグラフConv上の点C2は、リフレクタの開口直径を表すDの値をそれぞれ入れ換えたものである。その値は次の式で示され、従来は式(49)のように、本実施形態は式(50)のようになる。
【0106】
【数14】

また、本実施形態における集束倍率ΓNew(D)が最大となるグラフNew上の点N1のDの値は次の式(52)で与えられ、同様に従来の集束倍率ΓConv(D)が最大となるグラフConv上の点C1のDの値は次の式(51)で与えられる。
【0107】
【数15】

なお、図2の従来のグラフConvは、前述した従来の図10においてあるDに対して最大のΓを与えるaに沿って見たΓを表すグラフとなっている。
【0108】
また、上記式(47)におけるaの値は、次の式(53)で与えられる。
【0109】
【数16】

また、上記式(49)におけるaの値は、次の式(54)で与えられる。
【0110】
【数17】

このように、図2から明らかなように、従来型のリフレクタの実効集束倍率ΓConv(D)は、すべてのDの値にわたって本実施形態のリフレクタの実効集束倍率ΓNew(D)を超えることはない。
【0111】
また、実効集束倍率の上限は、本実施形態では上記式(48)より、ΓNew(D)=29.33であり、これは従来の実効集束倍率の上限ΓConv(D)=20.74よりも41%強向上している。
【0112】
ただし、その際のDの値は、上記式(52)より本実施形態ではDNew=11.96となり、これは上記式(51)が示す従来のDの値DConv=10.36よりも15%強大きくなる。
【0113】
また、図3に、図10の従来のcontour曲線に対応する本実施形態のcontour曲線を示す。前述したように、本実施形態においては、従来のようにa(本実施形態ではa)に依存することはないため、グラフが等高線状となることはない。すわなち、本実施形態では上で求めたようにD=11.96でΓNewが最大となるが、aに依存しないため、図3に示すようにD=11.96でa軸に平行な直線が実効集束倍率ΓNewの最大を示すグラフとなる。
【0114】
以下、上で説明したミスト吐出ヘッドを備えた画像形成装置、液体吐出装置について説明する。
【0115】
図4にこのようなミスト吐出ヘッドを備えた画像形成装置の概略を示す。
【0116】
図4に示すように、画像形成装置30は、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のミスト吐出ヘッド32K、32C、32M、32Yを有するミスト吐出部32と、各ミスト吐出ヘッド32K、32C、32M、32Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部34と、記録媒体である記録紙36を供給する給紙部38と、記録紙36のカールを除去するデカール処理部40と、ミスト吐出部32のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙36の平面性を保持しながら記録紙36を搬送する搬送部42と、ミスト吐出部32による吐出結果を読み取る吐出検出部44と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部46とを主に備えている。
【0117】
インク貯蔵/装填部34は、各ミスト吐出ヘッド32K、32C、32M、32Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介して各ミスト吐出ヘッド32K、32C、32M、32Yと連通されている。
【0118】
図4では、給紙部38の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、またはこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0119】
給紙部38から送り出される記録紙36はマガジンに装填されていたことにより巻き癖が残りカールする。このカール除去するためにデカール処理部40においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム48で記録紙36に熱を与える。
【0120】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図4のように裁断用のカッタ(第1のカッタ)50が設けられており、カッタ50によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッタ50は不要である。
【0121】
デカール処理後、カットされた記録紙36は、搬送用ローラ対52によってニップ搬送され、プラテン54上へと送られる。プラテン54の後段(ミスト吐出部32の下流側)にも搬送用ローラ対56が配置されており、前段の搬送用ローラ対52と後段の搬送用ローラ対56とが連動して記録紙36を所定の速度で搬送する。
【0122】
プラテン54は、記録紙36の平面性を保ちつつ記録紙36を保持(下から支持)する部材(記録媒体保持手段)として機能するとともに、ミスト吐出部32から吐出されたインクミストを記録紙36側に引き寄せ着弾させるための背面電極としても機能する部材である。図4におけるプラテン54は、記録紙36の幅よりも広い幅寸法を有し、少なくともミスト吐出部32のノズル面及び吐出検出部44のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0123】
記録紙36の搬送経路において、ミスト吐出部32の上流側には、加熱ファン58が設けられている。加熱ファン58は、インクが吐出される前の記録紙36に加熱空気を吹き付け、記録紙36を加熱する。インク吐出直前に記録紙36を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0124】
図5にミスト吐出部32の周辺を拡大して示す。図5に示すように、ミスト吐出部32の各ミスト吐出ヘッド32K、32C、32M、32Yは、当該画像形成装置30が対象とする記録紙36の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録紙36の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
【0125】
ミスト吐出ヘッド32K、32C、32M、32Yは、記録紙36の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのミスト吐出ヘッド32K、32C、32M、32Yが記録紙36の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置されている。
【0126】
搬送部42により記録紙36を搬送しつつ各ミスト吐出ヘッド32K、32C、32M、32Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙36上にカラー画像を形成するようになっている。
【0127】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のミスト吐出ヘッド32K、32C、32M、32Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙36とミスト吐出部32を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙36の全面に画像を形成することができる。これにより、ミスト吐出ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型(シリアル型)ヘッドに比べて高速プリントが可能であり、生産性を向上させることができる。
【0128】
本実施形態ではKCMYの標準色(4色)の構成を示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加することができる。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するミスト吐出ヘッドを追加する構成としてもよい。また、各色のミスト吐出ヘッドの配置順序も特に限定されない。
【0129】
吐出検出部44は、各色のミスト吐出ヘッド32K、32C、32M、32Yにより形成されたテストパターンまたは実画像を読み取り、吐出結果を検査するものである。
【0130】
再び図4に戻り、吐出検出部44の後段には後乾燥部60が設けられている。後乾燥部60は、記録紙36上に形成された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。
【0131】
後乾燥部60の後段には、加熱・加圧部62が設けられている。加熱・加圧部62は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ63で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0132】
こうして生成されたプリント物は排紙部46から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト画像とは分けて排出することが好ましい。本実施形態の画像形成装置30では、本画像のプリント物とテスト画像のプリント物とを選別してそれぞれの排出部46A、46Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト画像とを同時に並列しに形成する場合には、カッタ(第2のカッタ)64によってテスト画像の部分を切り離す。また、図4には示さないが、本画像の排紙部46Aには、オーダ別に画像を集積するソータが設けられる。
【0133】
図6に、ミスト吐出ヘッド32K、32C、32M、32Yの一例を平面透視図で示す。各ミスト吐出ヘッド32K、32C、32M、32Yの構造はすべて同じであるので、ここでは単に符号65で代表させてミスト吐出ヘッドを表すものとする。
【0134】
図6に示すように、ミスト吐出ヘッド65は、インクの吐出口であるノズル66Aと、各ノズル66Aに対応するインク室66B、個別供給路66Cからなる複数のインク室ユニット(ミスト吐出素子)66を2次元マトリクス状に配列させた構造を有し、これにより、ミスト吐出ヘッド65の長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。なお、図6では、便宜上、一部のインク室ユニット66は省略して描いている。
【0135】
各インク室66Bは個別供給路66Cを介して共通流路68に連通している。共通流路68は、接続口68A、68Bを介してインク供給源たるインクタンク(図6では図示省略、図4のインク貯蔵/装填部34と等価なもの)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは図6の共通流路68を介して各チャンネルのインク室66Bに分配供給される。なお、図6中の符号66Cは共通流路68の本流、68Dは本流68Cから分岐した支流である。
【0136】
図7は画像形成装置30のシステム構成を示す要部ブロック図である。画像形成装置30は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0137】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介して画像形成装置30に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
【0138】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0139】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部60等のヒータ89を駆動するドライバである。
【0140】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介してミスト吐出部32のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0141】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0142】
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいてミスト吐出部32の超音波発生手段を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0143】
吐出検出部44は、図4で説明したように、ラインセンサー(図示省略)を含むブロックであり、記録紙36に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供するものである。
【0144】
プリント制御部80は、必要に応じて吐出検出部44から得られる情報に基づいてミスト吐出部32に対する各種補正を行うようになっている。
【0145】
以上説明したように、本実施形態によれば、ミスト吐出ヘッドのリフレクタとして放物線の焦点よりも頂点側の部分を使用するようにしたため、リフレクタ出口側の径(outlet径)を最小でノズル径まで絞ることができ、またその際超音波の伝播距離が長くなることもないため、従来に比べて実効集束倍率を向上させることができる。
【0146】
また、このようなミスト吐出ヘッドを画像形成装置に備えることにより、効率的に画像を形成することが可能となる。
【0147】
以上、本発明のミスト吐出ヘッド及びこれを備えた画像形成装置、液体吐出装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明のミスト吐出ヘッドの一実施形態の概略を示す断面図である。
【図2】本実施形態と従来の集束倍率の違いを比較するための実効集束倍率のグラフである。
【図3】本実施形態のリフレクタの集束倍率を示すcontour曲線のグラフである。
【図4】本実施形態のミスト吐出ヘッドを備えた画像形成装置の概略を示す全体構成図である。
【図5】図4の画像形成装置のミスト吐出部周辺の拡大図である。
【図6】ミスト吐出ヘッドの一例を示す平面透視図である。
【図7】本実施形態の画像形成装置のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【図8】放物面型リフレクタを用いた従来のミスト吐出ヘッドを示す断面図である。
【図9】図8のミスト吐出ヘッドの四分の一断面図である。
【図10】従来のミスト吐出ヘッドにおける集束倍率を示すcontour曲線のグラフである。
【符号の説明】
【0149】
10…ミスト吐出ヘッド、12…ノズルプレート、14…液室プレート、16…ノズル(孔)、18…インク液室、20…リフレクタ、22…圧電素子、24…インク供給路、26…超音波、30…画像形成装置、32…ミスト吐出部、32K、32C、32M、32Y、65…ミスト吐出ヘッド、34…インク貯蔵/装填部、36…記録紙、38…給紙部、40…デカール処理部、42…搬送部、44…吐出検出部、46…排紙部、48…加熱ドラム、50…カッタ(第1のカッタ)、52、56…搬送用ローラ対、54…プラテン、58…加熱ファン、60…後乾燥部、62…加熱・加圧部、63…加圧ローラ、64…カッタ(第2のカッタ)、65…ミスト吐出ヘッド、66…インク室ユニット、66A…ノズル、66B…インク室、66C…個別供給路、68…共通流路、68A、68B…接続口、68C…共通流路の本流、68D…本流から分岐した支流、70…通信インターフェース、72…システムコントローラ、74…画像メモリ、76…モータドライバ、78…ヒータドライバ、80…プリント制御部、82…画像バッファメモリ、84…ヘッドドライバ、86…ホストコンピュータ、88…モータ、89…ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズル孔が形成されたノズルプレートと、
前記ノズル孔に連通する液室と、
前記液室中の液体に超音波を与える超音波発生手段と、
前記液体に与えられた超音波を反射する反射壁と、
を備え、前記反射壁は、前記ノズルプレートに対向して配置され、放物面の焦点よりも頂点側の頂点を含む部分の軸対称形状を有し、その軸は前記ノズル孔を通るとともに、前記ノズル孔の近傍に前記放物面の焦点が位置することを特徴とするミスト吐出ヘッド。
【請求項2】
前記超音波発生手段は、前記ノズルプレートの前記液室とは反対側の前記ノズル孔近傍に配置され、前記超音波発生手段から発生された超音波は、前記ノズルプレートを介して前記液室内の液体に印加され、前記軸に平行に、前記ノズルプレートに対向する前記反射壁に向かい、前記反射壁で反射した後前記焦点に集束することを特徴とする請求項1に記載のミスト吐出ヘッド。
【請求項3】
前記液室に前記液体を供給する供給路が、前記液室が形成される液室プレートと前記ノズルプレートとの間の前記ノズルプレート側に形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のミスト吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のミスト吐出ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のミスト吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−6644(P2008−6644A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178170(P2006−178170)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】