説明

ミトコンドリア疾患の治療用化合物

本発明は、一般式(I):


の化合物の、ミトコンドリア疾患のような、酸化的リン酸化経路によるATP産生の欠乏を含むミトコンドリア病状に対して作用する医薬の製造のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化的リン酸化経路によるATP産生の欠乏が関与する、NARP症候群のようなミトコンドリア病状を治療するための薬物の単離および開発に関する。
【背景技術】
【0002】
NARP(神経性薄弱運動失調網膜色素変性症(Neuropathy, Ataxia and Retinitis Pigmentosa))は、遅延発達により特徴付けられる母系遺伝による遺伝性症候群であり、網膜色素変性症(RP)、認知症、運動失調症、近位神経性筋脱力症状、感覚ニューロン障害を伴う(Schonら, J. Bioenerg. Biomembr., 1994, 26, 291-299; 総説としてGraeber, M.B.およびMuller, U., J. Neurol. Sci., 1998, 153, 251-263)。この疾患は、一般に、小児に起こる病状であるが、それは、よりまれに大人でも報告されている。臨床症状発現は多様であり、ほぼ重症型に成り得る。したがって、眼科症状発現は、網膜の単純な「霜降り(salt and pepper)」の変化から黄斑症を伴う重篤なRPまでに及び得る。同様に、単純な偏頭痛から重篤な認知症および「リー病」(亜急性壊死性脳脊髄症; Ortizら, Arch., Ophtalmol., 1993, 111, 1525-1530)に及ぶ広範囲の神経学的症状発現がある。視覚および聴覚の両方が侵されるアッシャー症候群、あるいは逆性RPとも呼ばれる黄斑ジストロフィーのような、網膜色素変性に関連する多くの症候群が存在する。
【0003】
1990年に、Holtら(Am. J. Hum. Genet., 46, 428-433)は、NARP症候群/リー病を示す患者のミトコンドリアDNA中のT8993G変異の存在を初めて記載した。続いて、TatuchおよびRobinson(Biochem. Biophys. Res. Commun., 1993, 192, 124-128)によって、ATP6サブユニットに起こるこの変異は、ミトコンドリアATPシンターゼ複合体を害することによりATP合成の減少をもたらすということが仮定された。この変異は、ATPシンターゼ会合/安定性の欠如に関与することが考えられている(Nijtmansら, J. Biol. Chem., 2001, 276, 6755-6762)。NARP症候群/リー病と関連して、他のATP6遺伝子変異も検出されている;T8993C、T9176G、T9176C、T8851C、T9185CおよびT9191C(Schonら, Cell & Dev. Biol., 2001, 12, 441-448およびKucharczykら, Biochimica et Biophysica Acta, 2009, 1793, 186-199)。さらに、T9101C変異は、LHON(レーバー遺伝性視神経萎縮)症候群、もう一つのミトコンドリア症候群に関与している(Kucharczykら, Biochimica et Biophysica Acta, 2009, 1793, 186-199)。それゆえ、単純な点変異が、ほぼ多くの重篤な形態を有するこれらの症候群に関与する。病的症状発現の大きな多様性は、患者のこの変異のヘテロプラスミックな(heteroplasmic)性質、すなわち、細胞または組織中の変異および野生型ミトコンドリアDNA分子の共存に起因する。この変異ミトコンドリアDNAの負荷量(load)が、観察される症状の重篤度と密接に相関する(Uzielら, J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry, 1997, 63, 16-22; Carelliら, Arch. Neurol., 2002, 59, 264-270)。
【0004】
T8993G変異(および前記の他の変異)の標的である、ATPシンターゼ複合体は、ミトコンドリアの内膜に位置する(図1および2A)。それは、細胞が代謝の化学的なエネルギーを採取し、このエネルギーをATP分子内に蓄えることを可能にする工程の酸化的リン酸化の最後の段階を触媒する。ATPを合成するために、ATPシンターゼ複合体は、内膜に位置する他の複合体、呼吸複合体によって作られる内膜の両側での電気化学的プロトン勾配を用いる(図1)。呼吸複合体は、ミトコンドリア内で酸化される基質の還元当量を酸素に移す。これらの移動は、内膜を横切る、すなわち、内側(ミトコンドリア マトリックス)から、細胞小器官の外膜と内膜との間の空間(膜間腔)へのプロトン輸送(水素イオン、H+)と連結されている。その結果、内膜の内周より外周の方がより高いプロトン濃度になる。ATPシンターゼの膜ドメインFo (図1)は、ミトコンドリア マトリックスへのプロトンのチャンネル リターン(channeled return)を可能にする。この輸送は、該膜の外側、すなわち、ミトコンドリア マトリックス中に位置するATPシンターゼの触媒ドメインF1 におけるATP合成と連結されている。ATPシンターゼは、ロータリー タービンのように作動する:Fo 中のプロトンの通過は、該酵素のサブ複合体(回転体)の回転と連結されている。この回転が、ADPと無機ホスフェートとからのATPの合成を促進するF1 における立体配座の変化をもたらす(Boyer P.D., Annu, Rev., Biochem., 1997, 66, 717-747)。
【0005】
新しく合成されたATP分子は、全細胞にエネルギーを供給するために、内膜に位置する特定のトランスポーター (ADP/ATPトランスロカーゼ)によって、ミトコンドリア コンパートメントから出ることができる。ATPシンターゼは、質量約600 KDaの約20の異なるタンパク質のサブユニットを含む。ヒトにおいて、2つのATPシンターゼ サブユニット(Atp6pおよびAtp8p、図2A)は、ミトコンドリア ゲノムによってコード化されており、その他の全てサブユニットは核遺伝子によってコード化されている。核起源のサブユニットは、サイトゾルで合成され、次いでミトコンドリア中へ取り込まれる。一方、ミトコンドリア ゲノムによってコード化されるAtp6pおよびAtp8pサブユニットは、ミトコンドリア内部で実際に合成される(図2A)。
【0006】
NARP症候群に関連するT8993G変異は、ミトコンドリアATP6遺伝子内に位置する(図2B)。後者は、Foを横切るプロトン輸送に必須のATPシンターゼ サブユニット 6 (Atp6p)をコード化する。T8993G変異は、バクテリアからヒトのAtp6pの全ての既知の配列に保存されているロイシン残基のアルギニンでの置換をもたらす。このロイシン残基は、膜貫通で、ATPシンターゼ プロトン移動活性に必須であると推定されるAtp6p領域にある。大腸菌内でまたはNARPサイブリッド(ミトコンドリがT8993G対立遺伝子で100%まで豊富なヒト細胞)を用いて行われた研究は、T8993G変異が、ATPシンターゼ プロトン チャンネルの機能に明らかに影響を及ぼすこと、およびこの欠陥が疾患の主な原因であることを示している(Schonら, Cell & Dev. Biol., 2001, 12, 441-448; Nijtmansら, J. Biol. Chem., 2001, 276, 6755-6762)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、F1F0-ATPシンターゼ機能不全によって誘発されるミトコンドリア疾患の治療に有効な薬剤はない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ヒトのNARP症候群に関与するミトコンドリアATP6遺伝子変異の等価物(equivalent)をミトコンドリア ゲノム内にもっている酵母菌株で構成されるNARP症候群に対する細胞モデルが、最近開発されている(国際出願WO 2007/125225号参照)。
これらの酵母菌変異体は、ミトコンドリアにおけるATPシンターゼ機能またはATPの十分な産生のいずれかを、酸化的リン酸化のもの以外の経路を介して回復させることにより、該変異体の影響を修正することができる分子を特定することを可能にする。
【0009】
本発明は、酵母ATP6変異体の呼吸増殖(respiratory growth)を回復させる能力を選択された化合物に関する(図3Aおよび3B)。
本発明の目的物は、一般式(I):
【化1】

【0010】
(式中、
− X は炭素原子または窒素原子であり、両原子は酸素原子で任意に置換され;
− R1 は酸素原子、ハロゲン原子または硫黄原子であり;
− R2 は水素原子であるか、または
R1 およびR2 はそれらが結合する炭素原子と一緒になって、次の環
【0011】
【化2】

【0012】
を形成してもよく、但し、R1 およびR2 が上記の環を形成するとき、X は炭素原子であり;
− R3 は、水素原子;ハロゲン原子;1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含む、1個の酸素原子もしくは1個のエステル官能基で任意に遮断されたアルキル基、または2〜6個の炭素原子、好ましくは2〜3個の炭素原子を含むアルケニレン基である、但し、R1 およびR2 が上記の環に相当しないとき、R3 は水素であり;
− R4 は、
− 水素原子、
− 1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含む、1個の酸素原子で任意に遮断されたアルキル基、
− 5〜15個の間の炭素原子および1〜10個の間の窒素原子を含む直鎖
であり、前記の鎖は1〜5個の酸素原子を任意に含み、1個のハロゲン原子で任意に置換されたベンジル基で任意に遮断され、前記の鎖の炭素および/または窒素原子は、1〜3個の炭素原子を含む1もしくは2個のアルキル基、好ましくはメチル基で任意に置換され、前記の鎖の炭素原子は=NH官能基で任意に置換され;
【0013】
− R5 は、水素原子、ハロゲン原子または基:
【化3】

であり;
R4 およびR5 はそれらが結合する炭素原子と一緒になって、次の環:
【化4】

を形成してもよく;
【0014】
− R6、R7 およびR8は同一または異なっていてもよく、
− 水素原子;
− ハロゲン原子;
− ベンジル基を任意に含む、1個の酸素原子または1個のエステル官能基で任意に遮断された、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含むアルキル基;
− 基-NH2
【0015】
− 基:
【化5】

であり、
R6 およびR8 はそれらが結合する炭素原子と一緒になって、ベンジル基を形成してもよい;
【0016】
但し、R1 およびR2 が上記で定義された環に相当し、R4 = R5 = R7 = R8 = H およびR6 = Clであるとき、R3 は-O-CH3 ではないか、または
R1 およびR2 が上記で定義された環に相当し、R3 = R5 = R4 = R8 = Hであり、R7 がR6のオルト位にあるとき、R6 およびR7 は同時に-O-CH3ではない)
を有する化合物または医薬的に許容な塩の、F1F0-ATP シンターゼによるATP合成の不全もしくは欠如に関するか、または活性酸素種(ROS)の過剰な蓄積に関する、ミトコンドリア疾患、正常もしくは生理学的老化および神経変性疾患の中から選択される障害または疾患の予防および/または治療用薬物の製造のための使用に関する。
【0017】
「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味することが意図される。
1〜6個の炭素原子を含む「アルキル基」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等のような、飽和の直鎖状もしくは分枝鎖状の1〜6個の炭素原子の鎖を意味することが意図される。
【0018】
「2〜6個の炭素原子を含むアルケニレン基」は、1個の炭素-炭素二重結合を含む、不飽和の直鎖状もしくは分枝鎖状の2〜6個の炭素原子の鎖を意味することが意図される。
1個の酸素原子で遮断された1〜6個の炭素原子を含むアルキル基の例は、一般式 -(CH2)n-O-(CH2)n'-CH3(nおよびn'は、n + n'≦ 6のような0〜6の間に含まれる2つの整数である)であり、そのような基の例は-O-CH3である。
ベンジル基を任意に含む、1個の酸素原子または1個のエステル官能基で任意に遮断された、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含むアルキル基の例は、-O-CH3、-O-CH2-C6H6、-CO-O-CH3および-CO-O-CH2-C6H6等である。
【0019】
5〜15個の間の炭素原子および1〜10個の間の窒素原子を含む直鎖で、該鎖が1個のハロゲン原子で任意に置換されたベンジル基によって任意に遮断され、該鎖の炭素原子が=NH官能基で任意に置換された直鎖の非限定的な例は、次の:-NH-C(NH)-NH-C(NH)-NH-(CH2)6-NH-C(NH)-NH-C(NH)-NH-C6H4-Clである。
【0020】
5〜15個の間の炭素原子および1〜10個の間の窒素原子を含む直鎖で、該鎖が1〜5個の酸素原子を任意に含み、ベンジル基で任意に遮断され、該鎖の炭素および/または窒素原子が1〜3個の炭素原子を含む1もしくは2個のアルキル基、好ましくはメチル基で任意に置換された直鎖の非限定的な例は、次の:-CH2-NH2-(CH2)2-O-(CH2)2-O-C6H4-C(CH3)2-CH2-C(CH3)2-CH3である。
【0021】
本発明を実施する第1の態様において、式(I)の化合物は、前記の環に相当しないようなものであり、そのとき好ましい化合物は次の化合物:
式Aの化合物、クロルヘキシジン
【化6】

ここで、X = C、R1 = -Cl、R2 = R3 = R5 = -HでR4 = -NH-C(NH)-NH-C(NH)-NH-(CH2)6-NH-C(NH)-NH-C(NH)-NH-C6H6-Clである、
【0022】
式Bの化合物、ベンゼトニウム クロライド
【化7】

ここで、X = C、R1 = R2 = R3 = R5 = -HでR4 = -CH2-NH2-(CH2)2-O-(CH2)2-O-C6H6-C(CH3)2-CH2-C(CH3)2-CH3である、
【0023】
式Dの化合物、ピリチオン ナトリウム
【化8】

ここで、X = N+-O-、R1 = SでR2 = R3 = R4 = R5 = -Hである。
【0024】
クロルヘキシジンは、防腐作用を有することが知られており、それは殺菌作用も示し、グラム陽性およびグラム陰性細菌の両方を殺す。
ベンゼトニウム クロライドは、界面活性剤特性、防腐作用および抗感染作用を有する合成4級アンモニウム塩である。
ピリチオン ナトリウム(CAS登録番号:15922-78-8;3811-73-2)は、広いスペクトルの抗菌剤であり、それは真菌、酵母菌、糸状菌および細菌の増殖を阻害する。
【0025】
それら3つの化合物は商業的に入手可能であり、それらの合成は文献に報告されており、クロルヘキシジンはUS特許第2,684,924号にしたがって製造することができ、ベンゼトニウム クロライドはUS特許第2,115,250号、第2,170,111号および第2,229,024号にしたがって製造することができ、クロトリマゾールは南アフリカ特許第68 05,392号および第69 00,039号(Bayer)にしたがって製造することができ、ピリチオン ナトリウムはShawら J. Amer. Chem Soc. 72, 4362 (1950)またはUS特許第2,745,826号にしたがって製造することができる。
【0026】
本発明を実施するもう一つの態様において、式(I)の化合物は、R1 およびR2 が前記の環を形成するようなものであり、好ましい化合物は一般式(Ia):
【化9】

【0027】
(式中、R3、R5、R6、R7およびR8 は前記のように定義され;
− R4 は、
− 水素原子;
− 1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含み、1個の酸素原子で任意に遮断されたアルキル基
であるか;または
R4およびR5はそれらが結合する炭素原子と一緒になって、環:
【化10】

を形成してもよい)
で定義される化合物または一般式(Ia)の化合物の医薬的に許容な塩である。
【0028】
特定の目的によれば、本発明は、薬物、特に活性薬剤としての一般式(Ia)の化合物に関する。
次の式(Ia)の化合物が好ましい:
式 1 の化合物(ICC005-L-001-A11)
【化11】

【0029】
式 2 の化合物(ICC005-M204-C05)
【化12】

【0030】
式 3 の化合物(ICC005-L006-D11)
【化13】

【0031】
式 4 の化合物(ICC005-L028-D02)
【化14】

【0032】
式 5 の化合物(ICC005-L025-A02)
【化15】

【0033】
式 6 の化合物(ICC005-L023-B02)
【化16】

【0034】
式 7 の化合物(ICC005-L040-D06)
【化17】

【0035】
式 8 の化合物(ICC005-L134-H07)
【化18】

【0036】
式 9 の化合物(ICC005-L022-B05)
【化19】

【0037】
式 10 の化合物(ICC005-L040-E11)
【化20】

【0038】
式 11 の化合物(ICC005-L037-H11)
【化21】

【0039】
式 12 の化合物(ICC005-L037-G07)
【化22】

【0040】
式 13 の化合物(ICC005-L036-A07)
【化23】

【0041】
式 14 の化合物(ICC005-L024-E06)
【化24】

【0042】
式 15 の化合物(ICC005-L032-H02)
【化25】

【0043】
式 16 の化合物(ICC005-L034-E11)
【化26】

【0044】
式 17 の化合物(ICC005-L033-E02)
【化27】

【0045】
式 18 の化合物(ICC005-L018-C11)
【化28】

【0046】
式 19 の化合物(ICC005-L028-E06)
【化29】

【0047】
式 20 の化合物(ICC005-L018-E05)
【化30】

【0048】
式 21 の化合物(ICC005-L002-D06)
【化31】

【0049】
式 22 の化合物(ICC005-L002-F04)
【化32】

【0050】
式 23 の化合物(ICC005-L002-C03)
【化33】

【0051】
式 24 の化合物(ICC005-L002-G02)
【化34】

【0052】
式 25 の化合物(ICC005-L019-B10)
【化35】

【0053】
式 26 の化合物(ICC005-L001-B11)
【化36】

【0054】
式 27 の化合物(ICC005-L015-E03)
【化37】

【0055】
式 28 の化合物(ICC005-M204-C06)
【化38】

【0056】
式 29 の化合物(ICC005-L145-E05)
【化39】

【0057】
式 30 の化合物(ICC005-L145-E11)
【化40】

【0058】
式 31 の化合物(ICC005-L145-H02)
【化41】

【0059】
式 32 の化合物(ICC005-L145-H06)
【化42】

【0060】
式 33 の化合物(ICC005-L046-F07)
【化43】

【0061】
式 34 の化合物(ICC005-L044-H06)
【化44】

【0062】
式 35 の化合物(ICC005-L046-C11)
【化45】

【0063】
式 36 の化合物(ICC005-L045-E06)
【化46】

【0064】
一般式(Ia)の化合物の合成は次に記載される。
一般式(Ia)の化合物は、完全に無水の条件下、THF中、トリエチルアミンを用いて、サリチルアルデヒド
【化47】

【0065】
と(Z) β-クロロ-β-ニトロスチレン
【化48】

との縮合によって製造することができる。
【0066】
具体的には、
− 式3、4、5、6、7、9、11、12、13、14、15、16、19、20、21および25の化合物は、D. DAUZONNEらの論文(Synthesis, 66-70 (1990))にしたがって製造することができ;
− 式1、17、18、22、23、24および28の化合物は、D. DAUZONNEらの論文(Eur. J. Med. Chem., 32, 71-82 (1997))にしたがって製造することができ;
− 式2の化合物は、A. GONZALEZ DE PEREDOらの論文(Chem. Pharm. Bull. 46, 79-83 (1998))にしたがって製造することができ;
− 式26、27、29および30の化合物は、B. BAUVOISらの論文(J. Med. Chem. 46, 3900-3913 (2003))にしたがって製造することができる。
【0067】
本発明のもう一つの目的物は、式8、10、31、32、33、34、35および36の化合物に関する。
今まで未知の化合物8、10、31、32、33、34、35および36は、D. DAUZONNEおよびP. DEMERSEMANの論文(Synthesis, 66-70 (1990))で報告された手順にしたがって、適当なサリチルアルデヒドおよび(Z) b-クロロ-b-ニトロスチレンから出発して製造することができる。
【0068】
本発明によれば、一般式(Ia)の好ましい化合物は、化合物5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18、20、21、22、23、24、25、27、32および36である。
一般式(Ia)のより好ましい化合物は、化合物5、6、7、8、10、11、13、15、18、21、22、23、32および36である。
【0069】
一般式(I)の化合物の生物活性を評価した。
一般式(I)の化合物の酵母菌変異体の呼吸増殖を回復させる能力を、ATP6に変異を有する酵母菌株(図3および実施例1)およびATPアーゼ複合体の集合に影響を及ぼす酵母菌fmc1Δ変異体を用いても評価した。
これらの性質は、前記の化合物ならびにそれらの塩を、F1F0-ATP シンターゼ経路の変化に関連する障害または疾患の治療における薬物としての使用に適したものにさせ、そのような疾患または障害は、F1F0-ATP シンターゼによるATP合成の不全または欠如によって起こるものであり、それらは、ATP合成の不全または欠如によって起こる活性酸素種(ROS)の過剰な蓄積に関連する。
【0070】
一般式(I)の化合物の使用は、細胞内のATP産生の増加および/またはROS蓄積の減少に導く。
結果として、一般式(I)の化合物は、ミトコンドリア疾患の予防および/または治療用の、特にヒトのような哺乳類の治療用の薬物の製造に役立つ。
【0071】
既に説明したように、ミトコンドリア疾患は、心臓、脳および筋肉のような高エネルギー要求組織または器官をこれらの疾患の主な標的にさせる、酸化的リン酸化による-ATP産生の欠乏によってよく起こる。
他のミトコンドリアの変化は、重大な細胞の酸化的損傷に関与する活性酸素種(ROS)の増加した産生、NADH再酸化の低い速度および細胞小器官内でのカルシウム貯蔵不全の病状の一因にもなる。これらの病状の例は、症候群のNARP、LHON, MILS(母性遺伝のリー症候群)、MERRF(赤色ぼろ線維を伴うオクローヌスてんかん)およびHSP(遺伝性痙性対麻痺)である。
【0072】
ミトコンドリア疾患の症状は、通常、成長遅滞、筋の協応性の損失、筋力低下、視覚欠損、聴覚欠損、学習障害、精神発達遅滞、心臓病、肝臓病、腎臓病、胃腸障害、呼吸器障害、神経学的問題および認知症を含む。
【0073】
一般式(I)の化合物は、正常もしくは生理学的老化の加速の予防および/または治療用薬物の製造にも役立つと考えられる。生理学的老化は、多くの現象によって特徴付けられ、それは、細胞再生の減少、細胞寿命の減少ならびに/または器官の萎縮および時には機能不全に導く該器官の細胞数の減少によって特徴付けられる。老化の他の兆候は、毛髪の消失および/または白髪化のような容姿の変化、皮膚の外観の変化等である。
【0074】
ミトコンドリア疾患は神経変性疾患の進展の間に観察されるので、本発明は、アルツハイマー病、筋無力病(myasteny disease)、パーキンソン病等ような神経変性疾患の予防および/または治療のための一般式(I)の化合物の使用にも関する。
【0075】
もう一つの実施態様において、本発明は、成長遅滞、筋力低下、視覚欠損、聴覚欠損、心臓病、肝臓病、腎臓病、胃腸障害および呼吸器障害からなる群の中から選択されるミトコンドリア疾患の症状の予防および/または治療用、特にヒトのような哺乳類の治療用薬物の製造のための、式Cの化合物(クロトリマゾール):
【化49】

の使用に関する。
【0076】
クロトリマゾールは抗真菌剤である。
この化合物は商業的に入手可能であり、その合成は、文献に報告されており、クロトリマゾールは南アフリカ特許第68 05,392号および第69 00,039号(Bayer)にしたがって製造することができる。
【0077】
上記の規定に加えて、本発明は、一般式(I)の化合物の生物学的活性を示す実施例および添付の図面も参照とする次の記載から明らかになるであろう、その他の規定を含む。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1はミトコンドリア エネルギー変換機構およびそれらの形成を制御する遺伝子の概略図である。
【図2】図2Aおよび2Bは、ATPシンターゼの構造およびこのタンパク質複合体をコードする遺伝子を示す。ATPシンターゼは核DNAおよびミトコンドリアDNA(Atp6p, Atp8p)によってコードされるサブユニットから構成され、ミトコンドリア マトリックス中で会合する。図2BはミトコンドリアDNAおよびヒトのミトコンドリア疾患に関連する変異体(mitomap.orgから)に焦点を合わせている。
【図3】図3Aおよび3Bは、非醗酵性培地でのATPシンターゼ酵母菌変異体の呼吸増殖を回復させる、一般式(I)の化合物の能力を示すペトリ皿の写真である。図3Aの3つの上のパネルは、ATPシンターゼ変異株(3つのNARP株およびfmc1Δ)が、ATPシンターゼの欠陥のために呼吸培地(非醗酵性炭素源)で非常に遅く増殖することを示している(実施例 1)。 図3Aの3つの下のパネルは、化合物(DMSO、ネガティブ コントロールの代わりにクロルヘキシジン、ベンゼトニウム クロライドまたはクロトリマゾール)を異なる濃度で寒天培地に加えるときの呼吸増殖の改善を示している。 図3Bにおいて、変異体細胞を、非醗酵性炭素源を含む寒天培地の表面に層状に蒔き、濾紙上に化合物を加え、ペトリ皿上に並べる。ネガティブ コントロール、DMSOおよびポジティブ コントロール、オレエートを、上の左の濾紙および下の右の濾紙にそれぞれ載せる。
【図4】図4は、ミトコンドリア脳筋症を有するショウジョウバエの平均寿命への式Aの化合物の効果を示すグラフである(実施例 2)。
【図5】図5は、ミトコンドリア脳筋症を有するショウジョウバエの平均寿命への式Bの化合物の効果を示すグラフである(実施例 2)。
【図6】図6は、ミトコンドリア脳筋症を有するショウジョウバエの平均寿命への式Cの化合物の効果を示すグラフである(実施例 2)。
【図7】図7は、ミトコンドリア脳筋症を有するショウジョウバエの平均寿命への式Dの化合物の効果を示すグラフである(実施例 2)。
【図8】図8は、ミトコンドリア脳筋症を有するショウジョウバエの平均寿命への式13の化合物の効果を示すグラフである(実施例 2)。
【図9】図9は、NARP哺乳類モデルの増殖への式Aの化合物(クロルヘキシジン、CH)の効果を示すグラフである(実施例 3)。
【実施例】
【0079】
実施例 1:非醗酵性培地での変異酵母菌の呼吸増殖を回復させる、一般式(I)の化合物の能力の証明
ATP6酵母菌変異体は、ATPシンターゼの機能不全のために、非醗酵性炭素源から非常にゆっくりと増殖する。それゆえ、これらの酵母菌変異体は、該酵母菌が非醗酵性培地で増殖することを可能にするミトコンドリアによりATPシンターゼ機能またはATP産生のいずれかを回復させることによって変異の作用を修正することができる分子を特定するために用いられる。
【0080】
この実験に用いられた変異株は、
・MC6 (fmc1Δ) (Lefebvre-Legendre L.ら, J. Biol. Chem., 2001, Mar2, 276 (9) : 6789-96)
遺伝子型:MC6: Mat α, ade2, leu2, ura3, trp1, his3, fmc1::HIS3
・MR14 (NARP T8993G) (国際出願WO 2007/125225にしたがって得ることができる)
遺伝子型:MR14: Mat a, ade2, leu2, ura3, trp1, his3, arg8::HIS3[rho+ FY1679; atp6 T8993G]
である。
【0081】
活性試験の原理は次のとおりである:
工程 1: 変異酵母菌を、グルコースを含む培地(YPAD培地)で培養する。
工程 2: 該変異細胞を、グリセロールのような非醗酵性炭素源を含む寒天培地(YPG培地)の表面に層状に蒔く。
工程 3: それぞれが試験分子の一つの規定量を含む濾紙をペトリ皿上に置く、該分子は培地中で拡散し、濾紙の周りに濃度勾配を構築する。
工程 4: 前記の皿を35または36℃でインキュベートする。
これらの条件下、増殖ハロー(halo)が、変異体の作用に対抗することができる物質を含む濾紙の周りに現れるのが見られる。
【0082】
培地
YPG培地は、1% 酵母エキス; 2% バクトペプトン; 固体培地に対してのみ2% バクトアガー; 2% グリセロール (重量/容積で表される); アデニン 60mg/lL およびスペニシリン(spenicilline) 30 000UI/Lを含む。
液体YPAD培地は、1% 酵母エキス; 2% バクトペプトン; 2% グルコース (重量/容積で表される) およびアデニン 60mg/Lを含む。
【0083】
前の日
MC6およびMR14株のそれぞれに対して、YPAD寒天プレートからの一つのコロニーを、4 mlの液体YPAD培地に植菌した。
【0084】
アッセイの日
朝に、培養物の光学密度(OD)を測定する。培養物は液体YPAD培地中で希釈される(4mlの培地中、50μlまたはブロスが飽和されていれば100μl)。
4〜5時間後、培養物のODを測定する。培養物はODが0.2になるまで、YPG培地中で希釈される。
240μlの培養物を正方皿(12cm /12cm)に入れ、滅菌したガラス玉でたたいて表面をなめらかにする。
滅菌した濾紙を前記の皿の中に入れる。
次いで、濾紙に次のいずれかを含ませる:
− ポジティブ コントロール(オレエート 100 mM)の1μl/濾紙;
− ネガティブ コントロール(Sigmaからの純粋なDMSO、化合物ビヒクル)の1μl/濾紙;
− DMSO中10 mg/mlの一般式(Ia)を有する化合物の2.5μl/濾紙;
− DMSO中5 mg/mlの化合物A、B、CおよびDの2.5μl/濾紙。
前記の皿を、MR14酵母菌株に対しては35℃で、MC6酵母菌株に対しては36℃でインキュベートする。
【0085】
結果
クロルヘキシジン、ベンゼトニウム クロライドまたはクロトリマゾールに対する結果が図3Aに示される。
変異酵母菌が増殖ハローを形成して濾紙の周りで増殖するとき、化合物の活性が検出され、該ハローの大きさおよび密度が、活性に対する定性値を決めることを可能にする。選択された薬物全てが、両方の変異株(MR14およびfmc1Δ)に活性である。
【0086】
【表1】

【0087】
実施例 2 - ミトコンドリア脳筋症に罹患するショウジョウバエの寿命を改善する、一般式(I)の化合物の能力の証明
次に、一般式(I)の化合物を、Celottoら(Mitochondrial Encephalomyopathy in Drosophila, The Journal of Neuroscience, January 18, 2006 - 26(3):810-820)によって記載されたショウジョウバエのモデルで試験した。これらのショウジョウバエの変種は、より短い寿命を示すことが知られている。
【0088】
ショウジョウバエ薬物選別の方法
研究のための遺伝子型mtATP6[1];sesB[1]/+を有する雌を作るために、mtATP6[1];sesB[1]/sesB[1] ハエが一回異系交配された。
各薬物は0.09% DMSO中で次の最終濃度:15 μM、1 μM、50 nMおよび2.5 nMに溶解された。
バイアル当たり約20匹のハエが試験され、各薬物の各濃度に対して3つの独立したバイアルが試験された。
【0089】
新しく羽化した雌を数えて、約10ミリリッターの標準コーンミル糖蜜培地を有するバイアルに入れた。培地の表面の約1/2を覆う半円の濾紙に試験化合物を塗った(特定の濃度で25ミリリッター)。
寿命実験を25℃で12:12の明暗型を用いて行った。
餌、濾紙および薬物が取り替えられる一日おきに、全てのハエが死んでしまうまで、ハエを数えた。生存曲線を作成し、Prism 4.0bを用いて解析し、ビヒクルのみのコントロールからの有意差を決定するためにログランク検定を行った。
【0090】
結果
図4〜8のグラフは、式Aの化合物-クロルヘキシジン(図4)、式Bの化合物-ベンゼトニウム クロライド(図5)、式Cの化合物-クロトリマゾール(図6)、式Dの化合物-ピリチオン ナトリウム塩(図7)および式13の化合物(図8)での処理後のショウジョウバエの寿命の有意な増加を示している。
【0091】
実施例 3 - グルコース欠乏培地中でNARP哺乳類モデルの増殖を改善する、式Aの化合物(クロルヘキシジン)の能力の証明
NARP酵母菌モデルで活性な薬物の単離後、化合物の活性が、考えられる疾患の哺乳類モデルで実証された。
NARP患者からの線維芽細胞の細胞分裂の限定された数およびmtDNAのヘテロプラスミー(heteroplasmy)の不安定性のため、トランスミトコンドリア(transmitochondrial)サイブリッドを用いることが決められ、その細胞株は、ヘテロプラスミックレベルのmtDNA変異を含むNARP患者の血小板とmtDNAが欠けているヒトの骨肉腫細胞との融合により得られる。線維芽細胞のように、サイブリッドは主として解糖代謝を利用している。それゆえ、グルコース培地において、糖分解が細胞のATPの大部分を与え、WTおよびNARPサイブリッド(JCP213およびJCP239系列)の両方は、同じ増殖曲線を示す。反対に、ピルベートおよびウリジンが補完されるが、グルコースがない培地において、前記細胞は(ミトコンドリアATP産生に依存する)より酸化的な代謝を利用せざるを得ない(Weber, BioChem 2002)。
【0092】
グルコース欠乏培地でのJICP239の増殖能力を試験し、実施例1で選択された薬物のヒトでのNARP遺伝子型を抑える能力の表示(readout)として用いた。
【0093】
− 細胞株および培養条件
サイブリッド系列JCP213およびJCP239は、ヒトの骨肉腫細胞株143BK-ρ0と野生型の患者またはT8993G変異を有する患者からの血小板との融合によって作り出された(Manfredi, G.ら (1999). J Biol Chem 274, 9386-9391)。
JCP213は、WT mtDNAの100%を含み、JCP239は、T8993Gトランスバージョンを有するmtDNAの84 ± 4%を含み、5% CO2の雰囲気中、37℃で、5%ウシ胎仔血清(FBS Gold, PAA)、1 mM ピルビン酸ナトリウム、4 mM グルタミン、200 μM ウリジンおよび20 U・ml-1 ペニシリン/ストレプトマイシンが補完された高グルコース(4.5 g・l-1)、ダルベッコの修正イーグル培地(DMEM)中で培養された。
【0094】
増殖速度測定のために、抗生物質を除いた上記のグルコースを有するDMEMを含む24ウエルプレート中に104 個の細胞を蒔いた。24時間後、増殖培地を取り除き、細胞をPBSで洗浄し、薬物またはDMSOを含む、グルコース無しのDMEMを加える。処理の各条件に対して、4つのウエルを用いた。
【0095】
DMSO中のクロルヘキシジン(CH)溶液を媒体で1,000倍に希釈し、CHに対して12.5〜80 nMの最終濃度で用いた。
DMSOおよび200 μMジヒドロリポ酸(DHLA)をそれぞれネガティブおよびポジティブ コントロールとして用いる。
【0096】
薬物とのインキュベーションの3日後、細胞増殖をニュートラル レッド染色(Aure, K. ら (2007) Neuromuscul Disord 17, 368-37)により評価した。簡単に言えば、細胞を、グルコース無しのDMDM中で、33 μg・ml-1 ニュートラル レッドの存在下、37℃で4時間インキュベートし、PBS中で2回洗浄し、15分間空気乾燥した。次いで、ニュートラル レッドを50% エタノール 1% 酢酸の1 ml中で可溶性にし、その吸光度(540 nm)により定量した。
試験は条件につき少なくとも3回行った。
【0097】
− クロルヘキシジン活性の測定
NARPサイブリッドは、WTサイブリッドよりずっと遅い増殖を示す。酵母菌に基づくスクリーニングで活性として単離された薬物の効率を評価する目的で、NARPサイブリッドの細胞生存/増殖への薬物の効果を試験するため、上記の培養条件を用いた。
【0098】
それゆえ、グルコース培地の24ウエル-プレートにサイブリッドを播種後24時間、培地を抜き取り、細胞を洗浄し、グルコース欠損(ピルベートおよびウリジン含有)の試験化合物を含む培地を加えた。DMSOがネガティブ コントロールとしての役割を果たした。薬物の存在下で3日後、細胞増殖をニュートラル レッド染色(Aureら 2007)で評価した。4つのウエルを用いて各条件を実施し、各実験を少なくとも3重で行った。DMSOがネガティブ コントロールとしての役割を果たした。
【0099】
酵母菌スクリーニングに関して、このサイブリッドに基づくアッセイを立証する最初の工程は、ポジティブ コントロールを見出すことであった。
NARP線維芽細胞欠陥を部分的に修正することが以前に示されており(Mattiazzi, M. ら (2004) Hum Mol Genet 13, 869-879)、そしてミトコンドリア神経障害を患う患者を処置するための治療における使用も以前に示されている(DiMauro, S. ら (2006). Muscle Nerve 34, 265-283) DHLAが、NARPサイブリッド増殖におけるポジティブ コントロールとして試験された。
【0100】
グルコース欠損培地での3日後、200 μMのDHLAの存在下、NARPサイブリッド、JCP239の数は2.2倍に増加した。酵母菌スクリーニングに関して、ポジティブ コントロールとしてDHLAが用いられた。
次に、CHを試験した。この化合物は、ポジティブ コントロールとしてDHLAを用いるNARP酵母菌モデルで活性であることを示していた。播種の翌日、グルコースを培地から取り除き、5 nM〜1 μMの範囲の濃度でCHを加えた。
【0101】
− 結果(図9)
100 nM〜1 μMの間の範囲の濃度に関して、CHは有毒であり、細胞死を誘導した。対照的に、12.5 nM〜50 nMの間に含まれる濃度で、NARPサイブリッドの増殖は明らかに改善された。12.5、25および50 nMのCHの存在下、NARPサイブリッドの増殖は、それぞれ1.4、1.5および1.2に増加した(図9参照)。
それゆえ、DHLAまたはCHでの処理は、酸化的代謝が必要な条件において、NARPサイブリッドの増殖を改善した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

(式中、
− X は炭素原子または窒素原子であり、両原子は酸素原子で任意に置換され;
− R1 は酸素原子、ハロゲン原子または硫黄原子であり;
− R2 は水素原子であるか、または
R1 およびR2 はそれらが結合する炭素原子と一緒になって、次の環
【化2】

を形成してもよく、但し、R1 およびR2 が上記の環を形成するとき、X は炭素原子であり;
− R3 は、水素原子;ハロゲン原子;1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含み、1個の酸素原子もしくは1個のエステル官能基で任意に遮断されたアルキル基、または2〜6個の炭素原子、好ましくは2〜3個の炭素原子を含むアルケニレン基である、但し、R1 およびR2 が上記の環に相当しないとき、R3 は水素であり;
− R4 は、
− 水素原子、
− 1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含み、1個の酸素原子で任意に遮断されたアルキル基、
− 5〜15個の間の炭素原子および1〜10個の間の窒素原子を含む直鎖
であり、前記の鎖は1〜5個の酸素原子を任意に含み、1個のハロゲン原子で任意に置換されたベンジル基で任意に遮断され、前記の鎖の炭素および/または窒素原子は、1〜3個の炭素原子を含む1もしくは2個のアルキル基、好ましくはメチル基で任意に置換され、前記の鎖の炭素原子は=NH官能基で任意に置換され;
− R5 は、水素原子、ハロゲン原子または基:
【化3】

であり;
R4 およびR5 はそれらが結合する炭素原子と一緒になって、次の環:
【化4】

を形成してもよく;
− R6、R7 およびR8は同一または異なっていてもよく、
− 水素原子;
− ハロゲン原子;
− ベンジル基を任意に含む、1個の酸素原子または1個のエステル官能基で任意に遮断された、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含むアルキル基;
− 基-NH2
− 基:
【化5】

であり、
R6 およびR8 はそれらが結合する炭素原子と一緒になって、ベンジル基を形成してもよい;
但し、R1 およびR2 が上記で定義された環に相当し、R4 = R5 = R7 = R8 = H およびR6 = Clであるとき、R3 は-O-CH3 ではないか、または
R1 およびR2 が上記で定義された環に相当し、R3 = R5 = R4 = R8 = Hであり、R7 がR6のオルト位にあるとき、R6 およびR7 は同時に-O-CH3ではない)
を有する化合物または医薬的に許容な塩の、ATP合成の不全もしくは欠如に関するか、または活性酸素種(ROS)の過剰な蓄積に関する障害または疾患の予防および/または治療用薬物の製造のための使用。
【請求項2】
前記化合物が化合物A、BおよびDの中から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記化合物が、式(Ia):
【化6】

(式中、R3、R5、R6、R7およびR8 は前記のように定義され;
− R4 は、
− 水素原子;
− 1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含み、1個の酸素原子で任意に遮断されたアルキル基
であるか;または
R4およびR5はそれらが結合する炭素原子と一緒になって、環:
【化7】

を形成してもよい)
で定義されるかまたは一般式(Ia)の化合物の医薬的に許容な塩であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記化合物が、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18、20、21、22、23、24、25、27、32および36の中から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記の障害または疾患がミトコンドリア疾患である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の使用。
【請求項6】
前記ミトコンドリア疾患が、症候群のNARP(神経性薄弱運動失調網膜色素変性症)、LHON(レーバー遺伝性視神経萎縮)、MILS(母性遺伝のリー症候群)、MERRF(赤色ぼろ線維を伴うオクローヌスてんかん)およびHSP(遺伝性痙性対麻痺)である、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記化合物が、生理学的老化の加速の予防および/または治療用薬物の製造のために用いられる、請求項1〜4のいずれか一つに記載の使用。
【請求項8】
前記化合物が、アルツハイマー病、筋無力病、パーキンソン病のような神経変性疾患の予防および/または治療用薬物の製造のために用いられる、請求項1〜4のいずれか一つに記載の使用。
【請求項9】
薬物としての前記で定義された一般式(Ia)の化合物。
【請求項10】
式8、10、31、32、33、34、35および36の化合物。
【請求項11】
成長遅滞、筋力低下、視覚欠損、聴覚欠損、心臓病、肝臓病、腎臓病、胃腸障害および呼吸器障害からなる群の中から選択されるミトコンドリア疾患の症状の予防および/または治療用薬物の製造のための、式Cの化合物(クロトリマゾール)の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−524059(P2012−524059A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505253(P2012−505253)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001006
【国際公開番号】WO2010/119344
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(500056471)
【出願人】(511248397)ユニバーシティー オブ ピッツバーグ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF PITTSBURGH
【住所又は居所原語表記】Pittsburgh, PA 15260, U.S.A.
【Fターム(参考)】