説明

ミラー、リソグラフィ装置、およびデバイス製造方法

本発明の実施形態はミラー(30)に関する。ミラーは、ミラー面と、外面を有するプロファイルドコーティング層(32a)とを有し、1つ以上のくさび形要素がミラー面に対して外面によって形成され、1つ以上のくさび形要素は約10〜200mradの範囲内のくさび角(θ)を有する。プロファイルドコーティング層は湾曲外面を有しうる。プロファイルドコーティング層は、次の材料:Be、B、C、P、K、Ca、Sc、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Ru、Nb、Mo、Ba、La、Ce、Pr、Pa、およびUの少なくとも1つから形成されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明の実施形態は、ミラー、リソグラフィ装置、およびデバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に用いることができる。その場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ以上のダイの一部を含む)に転写することができる。通常、パターンの転写は、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。公知のリソグラフィ装置としては、ターゲット部分上にパターン全体を一度に露光することにより各ターゲット部分を照射するいわゆるステッパ、および放射ビームによってある特定の方向(「スキャン」方向)にパターンをスキャンすると同時に、この方向に平行または逆平行に基板をスキャンすることにより各ターゲット部分を照射するいわゆるスキャナが含まれる。パターンを基板上にインプリントすることにより、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0003】
[0003] リソグラフィ装置では、基板上に結像可能なフィーチャのサイズは、投影放射の波長により制限される。デバイス密度の高い、したがって、動作速度の速い集積回路を生成するためには、より小さいフィーチャが結像可能であることが望ましい。最近では、極端紫外線(EUV)を用いるリソグラフィ装置が提供されている。
【0004】
[0004] 幾つかのEUV源、例えば放電生成プラズマ(DPP)源またはレーザ生成プラズマ(LPP)源は、赤外線(IR)、可視光(VIS)、紫外線(UV)、および深紫外線(DUV)でさえも含む広範囲の周波数に亘って放射を放出する。「更なる放射」とも呼ばれるこれらの不所望の周波数は、伝播してリソグラフィ装置の照明システムおよび投影システム内で加熱問題を引き起こし、また、遮蔽されない場合はレジストの不所望の露光を引き起こしうる。照明システムおよび投影システムの多層ミラーは、約6.7nmまたは約13.5nmである所望の波長の反射のために最適化されているが、多層ミラーは光学的に平らで、R波長、可視波長、およびUV波長に対し比較的高い反射率を有しうる。
【0005】
[0005] したがって、投影ビーム用に放射源からの比較的狭い周波数帯を選択する必要がある。放射源が比較的細い輝線を有する場合であっても、当該線、特に長い波長からの放射を除去することが有利でありうる。
【0006】
[0006] その全体を本願に参考として組み込む欧州特許出願第1496521号には、1次元または2次元の回折パターンを形成するように構成された突起部が設けられた多層ミラーを含むリソグラフィ装置が記載される。結果として、EUV放射は実質的に吸収されることなくこれらの突起部を通過し、その一方で不所望の更なる放射は、突起部に衝突した際のこの更なる放射の吸収、屈折、または偏向によって実質的に遮断される。
【0007】
[0007] この公知のリソグラフィ装置には、回折パターンを形成するために、個々に製造される要素である突起部を高精度に設けなければならないという欠点がある。このことは、公知の多層ミラーの製造コストを不必要に増加してしまいうる。さらに、公知の多層ミラーは、例えば突起部間の領域といった突起部の材料によって覆われない領域を含む。このような領域は、リソグラフィ装置の例えばH雰囲気といった反応環境に露出されると汚染物質によって覆われてしまいうる。これらの汚染物質は、EUV放射に対するミラー面の反射性を低下し、それによりビーム品質を劣化させてしまいうる。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 上記を鑑みて、特にEUV動作可能リソグラフィ装置における使用のためのミラーであって、容易に製造可能であり、また、使用時にEUVビーム品質を向上させるミラーが必要とされる。
【0009】
[0009] 本発明の一態様では、ミラー面と、外面を有するプロファイルドコーティング層とを有し、1つ以上のくさび形要素がミラー面に対して外面によって形成され、1つ以上のくさび形要素は約10〜200mradの範囲内のくさび角を有する、ミラーが提供される。
【0010】
[0010] 本発明の別の態様では、EUV放射投影ビームおよび更なる放射を供給するための放射システムを含むリソグラフィ投影装置が提供される。放射システムは、上述したミラーを含む。
本発明のさらに別の態様では、デバイス製造方法が提供される。このデバイス製造方法の一実施形態では、放射システムを用いてEUV放射投影ビームが提供される。投影ビームにパターンが形成される。次に、パターン付きビーム放射感応材料の層のターゲット部分上に投影される。放射システムにおいて、上述したミラーが用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
[0011] 本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。これらの図面において同じ参考符号は対応する部分を示す。
【図1】[0012] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を示す。
【図2】[0013] 図2は、図1によるリソグラフィ投影装置のEUV照明システムおよび投影光学部の側面図を示す。
【図3】[0014] 図3は、本発明の一実施形態によるミラーを示す。
【図4】[0015] 図4は、本発明の更なる実施形態によるミラーを示す。
【図5】[0016] 図5は、本発明のさらに更なる実施形態によるミラーを示す。
【図6】[0017] 図6は、プロファイルドコーティング層が設けられたミラーの選択された実施形態の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0018] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。このリソグラフィ装置は、
放射ビームB(例えばUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構成され、かつ特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに接続されたサポート構造(例えばマスクテーブル)MTと、
基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、かつ特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、
パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PSと、
を含む。
【0013】
[0019] 照明システムとしては、放射を誘導し、整形し、または制御するために、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光コンポーネント、或いはそれらの任意の組み合せ等の様々なタイプの光コンポーネントを含むことができる。
【0014】
[0020] サポート構造MTは、パターニングデバイスMAを支持する、すなわち、パターニングデバイスMAの重量を支える。サポート構造は、パターニングデバイスMAの向き、リソグラフィ装置の設計、および、パターニングデバイスMAが真空環境内で保持されているか否か等の他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスMAを保持する。サポート構造MTは、機械式、真空式、静電式またはその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポート構造MTは、例えば、必要に応じて固定または可動式にすることができるフレームまたはテーブルであってもよい。サポート構造MTは、パターニングデバイスMAを、例えば投影システムPSに対して所望の位置に確実に置くことができる。本明細書において使用される「レチクル」または「マスク」という用語はすべて、より一般的な「パターニングデバイス」という用語と同義であると考えるとよい。
【0015】
[0021] 本明細書において使用される「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると広く解釈されるべきである。なお、放射ビームに付与されたパターンは、例えば、そのパターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分内の所望のパターンに正確に一致しなくてもよいことに留意されたい。一般に、放射ビームに付与されたパターンは、集積回路等のターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定の機能層に対応しうる。
【0016】
[0022] パターニングデバイスMAは、透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは周知であり、バイナリ、レべンソン型(alternating)位相シフト、およびハーフトーン型(attenuated)位相シフト等のマスク型、ならびに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられ、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように各小型ミラーを個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付与する。
【0017】
[0023] 本明細書において使用される「投影システム」という用語は、使われている露光放射に、或いは液浸液の使用または真空の使用といった他の要因に適切な屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁型、および静電型光学システム、またはそれらのあらゆる組合せを含むあらゆる型の投影システムを包含すると広く解釈されるべきである。本明細書において使用される「投影レンズ」という用語はすべて、より一般的な用語「投影システム」と同義であると考えてよい。
【0018】
[0024] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば反射型マスクを採用しているもの)である。或いは、リソグラフィ装置は、透過型のもの(例えば透過型マスクを採用しているもの)であってもよい。
【0019】
[0025] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または2つ以上のマスクテーブル)を有するタイプのものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械では、追加のテーブルを並行して使うことができ、すなわち、予備工程を1つ以上のテーブル上で実行しつつ、別の1つ以上の基板テーブルを露光用に使うこともできる。
【0020】
[0026] また、リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を満たすように、例えば水といった比較的高い屈折率を有する液体によって基板の少なくとも一部を覆うことができるタイプのものであってもよい。また、例えばマスクと投影システムの間といったリソグラフィ装置内の別の空間に液浸液を加えてもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させることで当技術分野において周知である。本明細書にて使用される「液浸」という用語は、基板のような構造物を液体内に沈めなければならないという意味ではなく、単に、露光中、投影システムと基板との間に液体があるということを意味するものである。
【0021】
[0027] 図1を参考すると、イルミネータILは、放射源SOから放射ビームを受ける。例えば放射源がエキシマレーザである場合、放射源とリソグラフィ装置は、別個の構成要素であってもよい。その場合、放射源は、リソグラフィ装置の一部を形成しているとはみなされず、また、放射ビームは放射源SOからイルミネータILへ、例えば適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDを使って送られる。その他の場合、放射源はリソグラフィ装置の一体部分とすることもできる。放射源SOおよびイルミネータILは、必要ならばビームデリバリシステムBDとともに、放射システムと呼んでもよい。
【0022】
[0028] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するアジャスタADを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOといった様々な他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布を持たせることができる。
【0023】
[0029] 放射ビームBは、サポート構造(例えばマスクテーブルMT)上に保持されているパターニングデバイス(例えばマスクMA)上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。マスクMAを横断した後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点を合わせる。第2ポジショナPWおよび位置センサIF2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)を使い、例えば、様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めするように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPMおよび別の位置センサIF1を使い、例えば、マスクライブラリから機械的に取り出した後またはスキャン中に、マスクMAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることもできる。通常、マスクテーブルMTの移動は、第1ポジショナPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を使って実現することができる。同様に、基板テーブルWTの移動も、第2ポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使って実現することができる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTは、ショートストロークアクチュエータのみに接続されてもよく、または固定されてもよい。マスクMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2と、基板アライメントマークP1、P2を使って位置合わせされてもよい。例示では基板アライメントマークが専用ターゲット部分を占めているが、基板アライメントマークをターゲット部分とターゲット部分との間の空間内に置くこともできる(これらは、スクライブラインアライメントマークとして公知である)。同様に、複数のダイがマスクMA上に設けられている場合、マスクアライメントマークは、ダイとダイの間に置かれてもよい。
【0024】
[0030] 例示の装置は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用できる。
【0025】
[0031] 1.ステップモードでは、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTを基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度にターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTは、Xおよび/またはY方向に移動され、それにより別のターゲット部分Cを露光することができる。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光時に結像されるターゲット部分Cのサイズが限定される。
【0026】
[0032] 2.スキャンモードでは、マスクテーブルMTおよび基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。マスクテーブルMTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率および像反転特性によって決めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光時のターゲット部分の幅(非スキャン方向)が限定される一方、スキャン動作の長さによって、ターゲット部分の高さ(スキャン方向)が決まる。
【0027】
[0033] 3.別のモードでは、プログラマブルパターニングデバイスを保持した状態で、マスクテーブルMTを基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTを動かす、またはスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードでは、通常、パルス放射源が採用されており、さらにプログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの移動後ごとに、またはスキャン中の連続する放射パルスと放射パルスとの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述の型のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0028】
[0034] 上述の使用モードの組合せおよび/またはバリエーション、或いは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
【0029】
[0035] 図2は、放射システム3(すなわち「放射源‐コレクタモジュール」)、照明システムIL、および投影システムPLを含む、図1のリソグラフィ投影システムのEUV照明システムおよび投影光学部の一実施形態の側面図を示す。放射システム3には、放電プラズマ源を含みうる放射源LAが設けられる。放射源LAは、例えば、XeガスまたはLi蒸気といったガスまたは蒸気を用いてよく、このガスまたは蒸気内では、非常に高温のプラズマが放射源の電極間の放電によって生成されて電磁スペクトルのEUV範囲内の放射が放出される。この非常に高温のプラズマは、放電の部分的にイオン化されたプラズマを光軸0上に崩壊させることにより生成される。0.1mbarの分圧のXe、Li蒸気、または任意の他の好適なガスまたは蒸気が、放射の効率のよい発生には必要となりうる。
【0030】
[0036] キセノンが用いられる場合、プラズマは約13.5nmのEUV範囲において放射しうる。当然ながら約6.7nmの波長を有するEUV放射も検討される。放射源LAによって放出される放射は、放射源チャンバ7から汚染物質バリア9へと導かれる。汚染物質バリア9は、例えば、その全体を本願に参考として組み込む欧州特許出願第1057079号に詳細に記載されるようなチャネル構造を含みうる。
【0031】
[0037] 放射システム3(すなわち「放射源‐コレクタモジュール」)は、かすめ入射コレクタによって形成されうる放射コレクタ10を含む。放射コレクタ10を通り過ぎたEUV放射は、アパーチャにおける中間焦点12に集束されるように格子スペクトル純度フィルタまたはミラー11に反射する。本発明の一態様では、ミラー11は、ミラー11のミラー面に対してくさび形要素が設けられた外面を有するプロファイルドコーティング層を含み、これらのくさび形要素は、約10〜200mradの範囲内のくさび角を有する。結果として、放射源LAから伝播する放射ビーム内にある不所望の波長が中間焦点12から離れるように偏向される。当然ながら、くさび角の絶対値は幾つかの要因によって決定される。まず、この値は、ミラーと、光学システム内の適切な後続の構造との間、例えばミラーと中間焦点との間の経路長によって決定される。さらに、下流方向においてミラーに続く光学素子のサイズもくさび角の値に影響を及ぼす。一実施形態では、くさび角は、ミラー11と中間焦点12との間の約2メートルの経路長について約50mradであり、この中間焦点12は、例えば約4mmの大きさのスリットによって決定されうる。当然ながら、ミラー11と中間焦点12との間の別の距離についてくさび角は適宜増減されうる。
【0032】
[0038] 投影ビームPBは、照明システムIL内で、法線入射リフレクタ13、14を介してレチクルまたはマスクテーブルMT上に位置決めされたレチクルまたはマスク上に反射される。パターン付きビーム17が形成され、このビームは、投影光学システムPL内で、反射素子18、19を介してウェーハステージまたは基板テーブルWT上に結像される。通常、図示するよりも多くの素子が照明システムILおよび投影システムPL内に存在しうる。
【0033】
[0039] 本発明の実施形態はミラー11を参照して説明するが、当然ながら、一般に、複数のミラーに、上述したようにプロファイルドコーティング層が設けられてよい。具体的には、図2の放射コレクタ10または法線入射リフレクタ13、14が、本発明の実施形態によるミラーであってもよい。コーティング層の材料は、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)、炭素(C)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、臭素(Br)、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、プロトアクチニウム(Pa)、およびウラン(U)の少なくとも1つから選択されることが好適である。
【0034】
[0040] 図3に、本発明の一実施形態によるミラー30を概略的に示す。本実施形態では、スペクトル純度フィルタまたはミラー30には、くさび形要素32a、32bを有するプロファイルドコーティング層が設けられる。当然ながら、用語「層」とは非ゼロの厚さを有する連続構造として解釈される。
【0035】
[0041] プロファイルドコーティング層には1つ、2つ、またはそれ以上のくさび形構造が設けられることが可能である。特定の実施形態では、プロファイルドコーティング層は、2つのくさび形要素を含んでよく、これらは想像上の対称軸Sに対して対称でありうる。当然ながら、対称軸Sはくさび形要素に対して画定されるのであって、スペクトル純度フィルタまたはミラー31の中心線と一致する必要はない。一実施形態では、対称軸Sと、スペクトル純度フィルタまたはミラー31の中心線は一致する。
【0036】
[0042] 本発明の一実施形態では、放射ビームは、EUV放射38と更なる放射35とを含みうる。EUV放射38と更なる放射35が、プロファイルドコーティングに衝突すると、EUV放射38と更なる放射35の各々は、プロファイルドコーティングとの異なる相互作用を経る。一実施形態では、EUV放射38は、くさび形要素32a、32bを有するプロファイルドコーティング層を実質的に透過し、その一方で更なる放射35は、くさび形要素の表面において反射される。結果として、EUV38放射の反射角は、更なる放射35の反射角とは異なり、結果として、反射されたEUVビーム38aの伝播方向から離れる更なる放射38aの実質的な偏向がもたらされる。一実施形態では、角度θは、更なる放射35が図2に示す中間焦点2から離れるように偏向されるように選択される。
【0037】
[0043] 本発明の一実施形態によるコーティング層によってプロファイルされたミラーは、例えば、ミラー面上に次の材料:Be、B、C、P、K、Ca、Sc、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Ru、Nb、Mo、Ba、La、Ce、Pr、Pa、Uの1つ以上を含む好適なコーティング層が配置されて製造されうる。一実施形態では、13.5nmのEUV放射については、この波長に対する吸収が低いのでMo、Y、Zr、Sr、またはRuが用いられる。このようなコーティング層をリソグラフィ装置のミラーに設けることによって、コーティング層はミラー面の保護層としても作用し、ミラー面上に汚染物質が凝結することを阻止するという追加の利点がある。結果として、反射されたEUVビーム(例えば反射されたEUVビーム38a)の光学品質は減少しない。本発明の一実施形態によるミラーをEUVリソグラフィ装置において用いると、赤外線(IR)、可視光(VIS)、紫外線(UV)、および深紫外線(DUV)といった不所望の放射について約100倍の抑制が達成されうることが分かっている。
【0038】
[0044] 図3に示すプロファイルドコーティング層の形状は、様々な製造手順を用いて得られうる。例えば、コーティング層は、ダイアモンドターニングまたはレーザアブレーションによって加工されうる。当然ながら、結果として得られるプロファイルドコーティング層はくさび形要素32a、32b間の領域においても非ゼロの厚さを有しうる。
【0039】
[0045] 図4は、本発明の更なる実施形態によるミラー40を示し、本実施形態では、くさび形要素42a、42bの外面は湾曲している。この場合、くさび角の値は、接線46と、図3を参照して説明した構造31の表面とによって決定される最大値θを有してよく、この最大値θは、一例では約10〜200mradの範囲で選択される。この構成では、くさび形要素42aに衝突する更なる放射44、47の反射角は、くさび形要素42aの表面に沿って変動する。結果として、更なる放射は中間焦点から偏向されて散乱迷光を形成しうる。一方、EUV放射45、45’は構造31によって反射されて、有用な方向、例えば中間焦点の方向に伝播する共平面光線ビーム45a、45’を生成する。
【0040】
[0046] 本実施形態においても、構造31には1つ、2つ、またはそれ以上のくさび形要素が設けられることが可能である。したがって、くさび形要素42a、42bが、想像上の対称線Sに対して対称的に配置されることが可能である。
【0041】
[0047] くさび形要素42a、42bは、例えばリソグラフィまたはエッチングといった複数の適切な製造方法を用いて製造されうる。或いは、凸状のくさび形要素42a、42bは、例えば構造31のミラー面上に一連の連通する小滴(communicating droplets)を配置することによって形成されうる。一実施形態では、小滴はミラー面を濡らさない材料から形成される。リソグラフィ装置において用いられている従来のミラーでは、Moを小滴形成材料として用いうる。小滴がミラー面上に設けられた後、構造31は高温に晒され、その温度において小滴は凝固し凸状の外面を有するプロファイルドコーティング層が形成される。
【0042】
[0048] 図5は、本発明のさらに更なる実施形態によるミラー50を示す。この特定例では、くさび形要素52a、52bを含むプロファイルドコーティング層が、図3を参照して説明した構造31のミラー面上に設けられる。くさび形要素52a、52bは、接線56と構造31のミラー面によって形成される可変のくさび角θを有して凹面であってよい。本実施形態でもミラー50が、1つ、2つ、またはそれ以上の52aのタイプのようなくさび形要素を含むことが可能である。一実施形態では、2つの対称的に配置されたくさび形要素52a、52bがミラー面上に設けられる。
【0043】
[0049] くさび形要素52a、52bは、例えばレーザアブレーションを用いて製造されてよく、アブレーションに用いられたレーザビームの断面に実質的に対応する凹状キャビティが形成される。本実施形態は、少なくとも図3を参照して説明した実施形態に対して、プロファイルドコーティング層の厚さxが、コーティング層の完全性を維持しつつ最小限にされるという利点を有しうる。厚さが最小限にされたプロファイルドコーティング層は、コーティング層における非ゼロ吸収によるEUVビームの強度の損失を減少するのに有利でありうる。
【0044】
[0050] 図5に概略的に示されるように、凹面を用いて不所望の更なる放射45を方向54aに偏向させうる。EUVビーム57、57’は構造31から反射して、有用方向57、57a’に伝播する。一実施形態では、更なる放射は、図2を参照して説明した中間焦点から離れるように偏向される。図3〜図5を参照して説明したくさび形要素は、環状対称(annular symmetry)を有する各々のプロファイルとして設けられうる。これは、不所望の更なる放射用の偏向パターンに関して利点がありうる。
【0045】
[0051] 図6は、プロファイルドコーティング層が設けられたミラーの選択された実施形態の平面図を示す。図60aは、上述したようにプロファイルドコーティング層によって覆われた例えば多層ミラーであるミラーの平面図を概略的に示す。明確にするために、くさび形要素間のプロファイルドコーティング層の領域を61と示す。ミラーは、図平面の範囲を超えており図示されない。
【0046】
[0052] くさび形要素62a、62b、62c、62d、62e、62f、62gは、図3〜図5を参照して説明したプロファイルを含むがそれらに限定されない任意のプロファイルに従って構成されうる。具体的には、くさび形要素62a、62b、62c、62d、62e、62f、62gは、くさび形要素の各々の外周において厚さが増加するように構成されても、または、或いは、くさび形要素の各々の外周において厚さが減少するように構成されてもよい。
【0047】
[0053] 図60aは、くさび形要素62a、62b、62c、62d、62e、62f、62gが六角形パターンに従って配置される構成を概略的に示す。このパターンは、適切なマトリクスにミラーの表面領域に沿って伝播するように適切に繰り返されてよい。
【0048】
[0054] 図60bは、矩形パターンに配置されたくさび形要素64a、64b、64c、64dを有するプロファイルドコーティングを含むミラーの一実施形態を概略的に示す。当然ながら、くさび形要素は、各々の外周において厚さが増加するように配置されても、または、或いは、くさび形要素は、各々の外周において厚さが減少するように配置されてもよい。
【0049】
[0055] 図60cは、本発明のさらに更なる実施形態によるミラーを概略的に示し、ここでは、くさび形要素66a、66b、66c、66d、66eは、ピラミッド形のプロファイルで構成される。ミラーのミラー面はプロファイルドコーティング層によって覆われてよく、くさび形要素66a、66b、66c、66d、66eは行列で配置されてよく、それにより適切な矩形マトリクスが形成される。
【0050】
[0056] 図60a、図60b、および図60cは実質的に等しいサイズのくさび形要素の規則的なパターンを示すが、当然ながら、プロファイルドコーティング層が不規則に位置決めされたくさび形要素で構成されることも可能である。追加的に、または、或いは、くさび形要素は異なるサイズであってもよい。さらに当然ながら、図6に示すようなミラーが、例えば約6.7〜13.5nmの範囲内のEUV放射を用いて動作可能であるリソグラフィ装置において用いられる場合、マトリクスにおける連続するくさび形要素間の周期は、EUV放射の波長に少なくとも等しい値に設定されることが有利でありうる。
【0051】
[0057] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造といった他の用途を有し得ることが理解されるべきである。当業者には当然のことであるがそのような別の用途においては、本明細書で使用される「ウェーハ」または「ダイ」という用語はすべて、それぞれより一般的な「基板」または「ターゲット部分」という用語と同義であるとみなしてよい。本明細書に記載した基板は、露光の前後を問わず、例えば、トラック(通常、基板にレジスト層を塗布し、かつ露光されたレジストを現像するツール)、メトロロジーツール、および/またはインスペクションツールで処理されてもよい。適用可能な場合には、本明細書中の開示内容を上記のような基板プロセシングツールおよびその他の基板プロセシングツールに適用してもよい。さらに基板は、例えば、多層ICを作るために複数回処理されてもよいので、本明細書で使用される基板という用語は、すでに多重処理層を包含している基板を表すものとしてもよい。
【0052】
[0058] 本明細書において使用される「放射」および「ビーム」という用語は、文脈によって、紫外線(UV)(例えば、365nm、355nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)、および極端紫外線(EUV)(約5〜20nmの範囲内の波長を有する)、ならびにイオンビームや電子ビームなどの微粒子ビームを含むあらゆる種類の電磁放射を包含している。
【0053】
[0059] 「レンズ」という用語は、文脈によって、屈折、反射、磁気、電磁気、および静電型光コンポーネントを含む様々な種類の光コンポーネントのいずれか1つまたはこれらの組合せを指すことができる。
【0054】
[0060] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述以外の態様で実施できることが明らかである。
【0055】
[0061] 上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー面を有するミラーであって、前記ミラー面に対して形成される1つ以上のくさび形要素が設けられた外面を有するプロファイルドコーティング層を含み、前記1つ以上のくさび形要素は10〜200mradの範囲内のくさび角を有する、ミラー。
【請求項2】
前記プロファイルドコーティング層は、前記ミラー面全体に亘って実質的に延在する、請求項1に記載のミラー。
【請求項3】
前記プロファイルドコーティング層は、2つのくさび形要素を含む、請求項1または2に記載のミラー。
【請求項4】
前記プロファイルドコーティング層の前記外面は湾曲している、請求項1、2、または3に記載のミラー。
【請求項5】
前記プロファイルドコーティング層の前記外面は凹面である、請求項4に記載のミラー。
【請求項6】
前記プロファイルドコーティング層は一連の凝固小滴を含む、請求項4に記載のミラー。
【請求項7】
前記小滴は前記ミラー面を濡らさない材料から形成される、請求項6に記載のミラー。
【請求項8】
前記プロファイルドコーティング層を形成する材料は、Be、B、C、P、K、Ca、Sc、Br、Rb、Sr、Y、Zr、Ru、Nb、Mo、Ba、La、Ce、Pr、Pa、およびUからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のミラー。
【請求項9】
前記プロファイルドコーティング層は、前記ミラーの表面全体に亘る実質的に規則的なマトリクスに配置される複数のくさび形要素を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のミラー。
【請求項10】
前記マトリクスは矩形または六角形である、請求項9に記載のミラー。
【請求項11】
前記少なくとも1つのくさび形要素の形状は環状またはピラミッド形である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のミラー。
【請求項12】
EUV放射投影ビームおよび更なる放射を供給するための放射システムを含むリソグラフィ投影装置であって、
前記放射システムは、請求項1から11のいずれか一項に記載のミラーを含む、リソグラフィ投影装置。
【請求項13】
前記放射システムは、前記EUV放射の焦点を中間焦点上に合わせるように構成され、前記ミラーは、前記中間焦点から前記更なる放射を離れるように偏向させるように構成される、請求項12に記載のリソグラフィ投影装置。
【請求項14】
前記マトリクスにおけるくさび形要素間の周期は、前記EUV放射の波長に少なくとも等しい、請求項9または10に従属した場合の請求項12または13に記載のリソグラフィ装置。
【請求項15】
デバイス製造方法であって、
放射システムを用いてEUV放射投影ビームを供給することと、
前記投影ビームにパターンを形成することと、
前記パターン付きビームを放射感応性材料の層のターゲット部分上に投影することと、
を含み、
前記放射システム内には、請求項1から11のいずれか一項に記載するミラーが設けられる、デバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−500468(P2012−500468A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522457(P2011−522457)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059178
【国際公開番号】WO2010/018046
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】