説明

ミリメートル波帯域パッチアンテナ

【課題】多層基板上に具現された高利得、高効率及び広帯域特性を有するミリメートル波帯域パッチアンテナを提供する。
【解決手段】ミリメートル波帯域パッチアンテナが提供される。このパッチアンテナは、複数の誘電体層が積層された多層基板、多層基板の中心領域を除いて、複数の誘電体層の間に介在された少なくとも一つの金属パターン層と、多層基板の上部面上に配置され、中心領域内に位置されたアンテナパッチと、多層基板の上部面に対向する下部面上に配置された接地層と、誘電体層を貫通して金属パターン層と接地層を電気的に連結し、中心領域を取り囲む複数のビアと、を含む。接地層及び複数のビアによって囲まれた多層基板の中心領域は、共振器の役割をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリメートル波帯域パッチアンテナに関し、より詳細には、多層基板上に具現された高利得、高効率及び広帯域特性を有するミリメートル波帯域パッチアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
ミリメートル波帯域(millimeter wave band)の周波数(frequency)は、マイクロ波帯域(micro wave band)の周波数に比べて、直進性が優秀であり、そして広帯域特性があるので、レーダー(radar)、或いは通信サービス(communications service)にの応用が注目されている。特に、ミリメートル波帯域は波長が小さいので、アンテナ(antenna)の大きさを小型化することが容易であるので、システム(system)の大きさを画期的に減らすことができる長所がある。このようなミリメートル波帯域を利用した通信サービスに60GHz帯域を利用した広帯域(broad band)通信と77GHz帯域の自動車用レーダーは、既に商用化がだいぶ進行されて製品が発売されている。
【0003】
このようなミリメートル波帯域のシステムを構成する方法に製品の小型化と費用節減のために、システムオンパッケージ(System On Package:SOP)の形態にシステムを具現しようとする研究が活発に進行されている。このようなシステムオンパッケージの方法に低温同時焼結セラミック(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)、或いは液晶ポリマ(Liquid Crystal Polymer:LCP)技術などが最も適合した技術の中の一つで考慮されている。このような低温同時焼結セラミック、或いは液晶ポリマ技術は、基本的に多層基板を利用する技術で基板内部にキャパシタ(capacitor)、インダクタ(inductor)、フィルタ(filter)などの受動部品を内蔵させて、モジュール(module)の小型化と低価格化になることができるという長所がある。又、このような多層基板の長所には、キャヴィティ(cavity)を自由に形成することができるので、モジュール構成の自由度が増加するということがある。
【0004】
特に、システムオンパッケージを利用したシステムの構成で、アンテナパッチ(patch)の具現システムの性能を左右する核心構成要素に考えられている。一般的にミリメートル波周波数帯域、特に60GHz以上の超高周波帯域で動作するパッチアンテナを製作する場合、パッチアンテナで誘電体基板の表面に沿って流れる表面波(surface wave)の形態に信号の漏洩が発生する。このような信号の漏洩は、基板の厚さが増加するほど大きくなり、又、基板の誘電率が高いほど大きくなる。このような信号の漏洩は、パッチアンテナの放射効率を落としてアンテナ利得(gain)を減少させる。又、60GHz帯域の通信システムでは、7GHz以上の広い帯域幅を要求しているが、一般的なパッチアンテナ構造ではこのような広い帯域幅を有するアンテナを具現することが不可能である。
【0005】
現在に製品化されているミリメートル波帯域のモジュールは、費用を減らすために低温同時焼結セラミック技術を利用して、システムオンパッケージの形態に製作されている。しかし、上述のように、低温同時焼結セラミックのようなセラミック基板は、有機(organic)基板に比べて誘電率が高いので、パッチアンテナに具現する場合、アンテナの放射効率と利得が減少して、望みのアンテナ利得を得るためには要求されるアレイ(array)の数が急激に増加し、又、広帯域特性を得ることが難しい。従って、従来の製品は、アンテナパッチ部分のみを誘電率が低い有機基板に製作して使用する。このために、低温同時焼結セラミックの単一基板上にアンテナパッチを含む全体システムオンパッケージモジュールの形態に製作されることに比べてモジュールの大きさと製作費用が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公開第2000−0017029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、誘電体基板の表面に沿って流れる表面波の形態に信号が漏洩されることを防止して、広帯域特性を有すると同時にモジュールの大きさ及び製作費用を減少させることができるパッチアンテナを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、上述で言及した目的に制限されずに、言及されないまた他の目的は、後述から当業者に明確に理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明は、ミリメートル波帯域パッチアンテナを提供する。このパッチアンテナは、複数の誘電体層が積層された多層基板と、多層基板の中心領域を除いて、複数の誘電体層の間に介在された少なくとも一つの金属パターン層と、多層基板の上部面上に配置され、中心領域内に位置されたアンテナパッチと、多層基板の上部面に対向する下部面上に配置された接地層と、誘電体層を貫通して金属パターン層と接地層を電気的に連結し、中心領域を取り囲む複数のビアと、を含むことができる。接地層及び複数のビアによって囲まれた多層基板の中心領域は、誘電体共振器の役割をすることができる。
【0010】
複数のビアは、アンテナパッチから放射される波長の半分以下の距離に互いに離隔されることができる。
【0011】
複数のビアは、中心領域に蓄積された信号の漏洩を抑制する金属壁の役割をすることができる。
【0012】
複数のビアは、中心領域に対して放射状に配置される少なくとも一つの追加的なビアをさらに含むことができる。
【0013】
複数のビアによって多層基板の上部面と接地層との間の距離が近づく程度によって、表面波の伝達程度が抑制されることができる。
【0014】
ビアは、伝導性金属を含むことができる。
【0015】
中心領域は、設計周波数帯域で共振することができる大きさを有し、誘電体共振器に役割をすることができる。
【0016】
中心領域の平面断面は、設計周波数帯域で共振を作ることができる全てのことを有することができる。
【0017】
アンテナパッチと中心領域との間のカップリングによって、帯域幅が大きくなることができる。
【0018】
アンテナパッチの平面断面は、設計周波数帯域で共振を作ることができる全てのことを有することができる。
【0019】
アンテナパッチは、伝導性金属を含むことができる。
【0020】
多層基板は、低温同時焼結セラミック、或いは液晶ポリマを含むことができる。
【0021】
金属パターン層は、中心領域に対して放射状に広まった複数のラインパターンであることができる。複数のラインパターンの各々は、複数のビアに対応されることができる。
【0022】
金属パターン層は、伝導性金属を含むことができる。
【0023】
接地層は、伝導性金属を含むことができる。
【0024】
アンテナパッチに信号を供給するための伝送線路をさらに含むことができる。
【0025】
伝送線路の下部周囲に配置された追加的なビアをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0026】
上述のように、 課題を解決するための手段によると、多層基板の内部でビアに形成された壁と接地層によって囲まれた領域が共振器の役割をすることができる。これによって、アンテナパッチで多層基板の表面に沿って漏洩される表面波が共振器の外部では、多層基板の表面と接地層との間の減った距離によって伝達が難しくなり、共振器の内部では、蓄積されることができる。
【0027】
結果的に、多層基板の表面に沿って外部に漏洩される信号が多く減ることができ、そして共振器に蓄積された信号が外部に放射されることができる。これによって、放射効率及び利得が向上されたパッチアンテナが提供されることができる。
【0028】
又、アンテナパッチと共振器のカップリングによって、帯域幅が大きくなることができる。これによって、広帯域特性を有するパッチアンテナが提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの構造を説明するための立体図である。
【図2】図1のI-I’線に沿って切断した断面図である。
【図3】互いに異なる厚さの誘電体層を含むミリメートル波帯域パッチアンテナのマイクロストリップ伝送線路に信号が伝えられる際に、基板表面での電界分布特性を示したグラフである。
【図4】互いに異なる厚さの誘電体層を含むミリメートル波帯域パッチアンテナのマイクロストリップ伝送線路に信号が伝えられる際に、基板表面での電界分布特性を示したグラフである。
【図5】本発明の第1実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの反射特性を説明するためのグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの放射特性を説明するためのグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの構造を説明するための立体図である。
【図8】本発明の第3実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの構造を説明するための立体図である。
【図9】本発明の第4実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの構造を説明するための立体図である。
【図10】本発明の第5実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの構造を説明するための立体図である。
【図11】本発明の第6実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの構造を説明するための立体図である。
【図12】本発明の第7実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの構造を説明するための立体図である。
【図13】本発明の第8実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの構造を説明するための立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳細に説明する。本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付される図と共に詳細に後述される実施形態を参照すると明確になる。しかし、本発明は、ここで説明される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる形態に具体化されることができる。さって、ここで紹介される実施形態は、開示された内容が徹底で、完全になるように、そして当業者に本発明の思想が十分に伝えられるようにするために提供されることであり、本発明は、請求項の範囲によって定義されるのみである。明細書の全体にかけて同一の参照符号は、同一の構成要素を示す。
【0031】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのことであり、本発明を制限するものではない。本明細書で、単数型は、特別に言及しない限りに複数型も含む。明細書で使われる‘含む'は、言及された構成要素、段階、動作及び/または素子は、一つ以上の他の構成要素、段階、動作及び/または素子の存在または追加を排除しない。又、望ましい実施形態によることなので、説明の順序によって提示される参照符号は、その順序に必ず限定されるものではない。尚、本明細書で何の膜が異なる膜または基板上にあると言及される場合に、それは異なる膜または基板上に直接形成されうる、或いはこれらの間に第3の膜が介在されうるということを意味する。
【0032】
又、本明細書で記述する実施形態は、本発明の理想的な例示図である断面図及び/または平面図を参考にして説明される。図面において、膜及び領域の厚さは、技術的な内容の効果的な説明のために誇張されたことである。従って、製造技術及び/または許容誤差などによって例示図の形態が変形されうる。従って、本発明の実施形態は、図示された特定形態に制限されることでなく、製造工程によって生成される形態の変化も含む。例えば、直角に示されたエッチング領域は、ラウンド形、或いは所定の曲率を有する形態でありうる。従って、図面で例示された領域は、概略的な属性を有し、図面で例示された領域の模様は、素子の領域の特定形態を例示するためのことであり、発明の範囲を制限するためのことではない。
【0033】
図1は、本発明の第1実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの構造を説明するための立体図であり、図2は、図1のI-I’線に沿って切断した断面図である。
【0034】
図1及び図2を参照すると、パッチアンテナ100は、複数の誘電体層110f及び110sが積層された多層基板105と、多層基板105の中心領域R1を除いて複数の誘電体層110f及び110sの間に介在された金属パターン層(metal pattern layer)120fと、多層基板105の上部面上に配置され、中心領域R1内に位置されたアンテナパッチ140と、多層基板105の上部面に対向する下部面上に配置された接地層(ground layer)120gと、内部誘電体層110fを貫通して金属パターン層120fと接地層120gを電気的に連結し、中心領域R1を取り囲む複数のビア(via)130と、を含む。接地層120g及び複数のビア130によって囲まれた多層基板105の中心領域R1は、共振器(resonator)の役割をすることができる。即ち、本発明に実施形態によるパッチアンテナ100は、多層基板105の上部面に位置するアンテナパッチ140及び多層基板105の内部の中心領域R1内に位置する誘電体共振器DRを有する構造に形成されることができる。ここで中心領域R1と誘電体共振器DRの平面断面の大きさ及び形態は、同一でありうる。
【0035】
多層基板105は、低温同時焼結セラミック、或いは液晶ポリマを含むことができる。多層基板105は、誘電率が高い複数の誘電体層110f及び110sを積層した後、焼結工程を通じて形成されることができる。
【0036】
金属パターン層120fは、伝導性金属を含むことができる。望ましくは金属パターン層120fは、銀Agに形成されることができる。多層基板105の中心領域R1を除いて、複数の誘電体層110f及び110sの間に介在された金属パターン層120fは、プリンティング(printing)などのような印刷方式に一つの誘電体層110f上に形成されることができる。
【0037】
即ち、金属パターン層120fを含む多層基板105を形成することは、一つの誘電体層110f上に金属パターン層120fを形成し、金属パターン層120fが形成された誘電体層110f上に再び追加的な誘電体層110fを積層した後、追加的な誘電体層110f上に金属パターン層120fを追加に形成することを反復的に実行し、最後に表面誘電体層110sを積層することを含むことができる。
【0038】
アンテナパッチ140は、伝導性金属を含むことができる。望ましくは、アンテナパッチ140は、銀に形成されることができる。アンテナパッチ140は、プリンティングなどのような印刷方式に多層基板105の上部面を含む表面誘電体層110s上に形成されることができる。アンテナパッチ140は、多様な形態を有することができる。これに対して、後述される本発明の他の実施形態で説明される。
【0039】
接地層120gは、伝導性金属を含むことができる。望ましくは、接地層120gは、銀に形成されることができる。接地層120gは、プリンティングなどのような印刷方式に多層基板105の下部面を含む最下部誘電体層110fの下部に形成されることができる。
【0040】
複数のビア130は、伝導性金属を含むことができる。望ましくは、複数のビア130は、銀に形成されることができる。多層基板105の中心領域R1を取り囲む複数のビア130を形成することは、多層基板105の表面誘電体層110sを積層する前に内部誘電体層110f及び金属パターン層120fを貫通するビア孔(via hole)を形成した後、ビア孔を伝導性金属に満たすことでありうる。この際、ビア孔を形成することは、パンチング(punching)などのような方法を利用することでありうる。これは、焼結前の誘電体層110f又は110sは、柔軟性(flexibility)を有しているためである。ビア孔130を形成した後、表面誘電体層110sを積層し、多層基板105の上部面及び下部面上に各々のアンテナパッチ140及び接地層120gを形成した後に、結果物を焼結することいよって、パッチアンテナ100が製造されることができる。
【0041】
複数のビア130によって金属パターン層120fと接地層120gが電気的に連結されることによって、多層基板105の上部面と接地層120gとの間の距離が近づくことができる。これによって、アンテナパッチ140で表面波の形態に漏洩される信号が抑制されることができる。
【0042】
又、多層基板105の中心領域R1を取り囲む複数のビア130は、アンテナパッチ140から放射される波長の半分(λ/2)以下の距離に互いに離隔されることができる。これは、アンテナパッチ140から放射される波長λが複数のビア130の間を抜け出さない距離に該当するためである。これによって、アンテナパッチ140で表面波の形態に漏洩される信号が誘電体共振器DRに蓄積されることができる。
【0043】
多層基板105の中心領域R1を取り囲む複数のビア130の他にも中心領域R1に対して放射状に配置される追加的なビア130が多層基板105の内部によって含まれることができる。これは、アンテナパッチ140から放射される波長が中心領域R1の外部に抜け出すことを最小化するためのことであることができる。
【0044】
中心領域R1は、パッチアンテナ100の設計周波数帯域で共振することができる大きさを有することができる。
【0045】
アンテナパッチ140と中心領域R1との間のカップリング(coupling)によって、パッチアンテナ100の帯域幅が大きくなることができる。これによって、アンテナパッチ140と中心領域R1が適当なカップリング値を有するように調節することによって、広帯域特性を有するパッチアンテナ100が具現されることができる。中心領域R1は、多様な形態を有することができる。これに対して、後述される本発明の他の実施形態で説明される。
【0046】
パッチアンテナ100は、アンテナパッチ140に信号を供給するための伝送線路150をさらに含むことができる。伝送線路150は、マイクロストリップ(microstrip)形態、同軸プローブ(coaxial probe)形態、開口面の結合(apertured-coupled)形態、又は近接結合(proximity-coupled)形態などのような多様な形態に形成されることができる。
【0047】
図1及び図2では、マイクロストリップ形態の伝送線路150が示されている。マイクロストリップ形態の伝送線路150は、伝導性金属を含むことができる。望ましくは、マイクロストリップ形態の伝送線路150は、銀に形成されることができる。マイクロストリップ形態の伝送線路150は、プリンティングなどのような印刷方式に多層基板105の上部面を含む表面誘電体層110s上にアンテナパッチ140と接触するように形成されることができる。マイクロストリップ形態の伝送線路150とアンテナパッチ140は、互いに電気的に連結されるので、この二つは、同時に形成されることができる。
【0048】
マイクロストリップ形態の伝送線路150の下部周囲に多層基板150内に配置された追加的なビア130をさらに含むことができる。これは、上述されたことのように、多層基板105の上部面と接地層120gとの間の距離が近づくようにして、マイクロストリップ形態の伝送線路150による表面波の形態に漏洩される信号を抑制するためのことでありうる。
【0049】
本発明に実施形態によるパッチアンテナ100の構造では、アンテナパッチ140が接地層120gから距離が遠くて、アンテナパッチ140のインピーダンス(impedance)が放射に適合したインピーダンスを有することができ、多層基板105の内部の中心領域R1内に位置する誘電体共振器DRを抜け出した領域では、ビア130によって多層基板105の上部面と接地層120gとの間の距離が近づくことができる。
【0050】
一般的に伝送線路150が接地層120gから遠ざかるほど、即ち、多層基板150の厚さが厚くなるほど表面波が容易に伝えられるので、本発明に実施形態による構造では、アンテナパッチ140を除外した領域では接地層120gを伝送線路150に近くすることによって、表面波の伝達が抑制されることができる。これによって、アンテナパッチ140で表面波の形態に漏洩される信号は、外部に漏洩されることができなく、誘電体共振器DRの内に蓄積されることができる。誘電体共振器DRの大きさを設計周波数帯域で共振するように調節すると、共振された信号が多層基板105の外部に放射するようになって、全体パッチアンテナ100の放射効率及びアンテナ利得を高めるようになることができる。又、アンテナパッチ140と多層基板105内部の誘電体共振器DRが適当なカップリング値を有するように調節にされると、全体パッチアンテナ100の帯域幅が拡張されて、広帯域特性を有するパッチアンテナ100が得られることができる。
【0051】
図3及び図4は、互いに異なる厚さの誘電体層を含むミリメートル波帯域パッチアンテナのマイクロストリップ伝送線路に信号が伝えられる際に、基板表面での電界分布特性を示したグラフである。
【0052】
図3を参照すると、一つの誘電体層(図1の110f又は110sを参照する)が0.1mmの厚さを有する多層基板上に具現されたマイクロストリップ伝送線路(図1の150を参照する)に信号が伝えられると、伝送線路の周囲に電界が集中される。伝送線路から遠ざかるほど、電界の大きさが急激に減少することが分かる。
【0053】
図4を参照すると、一つの誘電体層が0.5mmの厚さを有する多層基板上に具現されたマイクロストリップ伝送線路に信号が伝えられると、誘電体層の厚さがより薄い図3とは異なり、伝送線路から遠く離れている部分まで電界がより分布される。これは、多層基板の表面に沿って電界が漏洩されることを意味し、このような電界の漏洩は、一つの誘電体層の厚さが厚くなるほど増加する。
【0054】
パッチアンテナ(図1の100を参照する)では、供給される信号がアンテナパッチ(図1の140を参照する)から放射されることが理想的であるが、誘電体層の誘電率が増加するほど、また誘電体層の厚さが増加するほど、多層基板の表面に沿って漏洩される表面波が増加してパッチアンテナの放射効率及び利得が減少する。
【0055】
図5及び図6は、本発明の第1実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの反射特性S11及び放射特性(アンテナ利得)を各々説明するためのグラフである。
【0056】
図5及び図6を参照すると、パッチアンテナ(図1の100を参照する)の反射特性及び放射特性を調べるために高周波数摸写ソフトウェア(High Frequency Simulation Software:HFSS)を利用して、電磁気場摸写実験結果値が示されている。S-パラメーター(Scattering parameter)の中、S11値に対する結果値である。S11は、入力ポート(input port)で入力した波と、その波が反射されて、また入力ポートから出力された波との間の強さ比を示す値である。
【0057】
パッチアンテナは、誘電率が7.2であり、一層の厚さが0.1mmである5個の誘電体層(図1の110f及び110sを参照する)が積層されて形成された多層基板(図1の105を参照する)の上部面上に菱形のアンテナパッチ(図1の140を参照する)を有する。多層基板の内部に複数のビア(図1の130を参照する)に形成された壁(wall又はfense)及び接地層120gによって囲まれた誘電体共振器(図1のDRを参照する)は、多層基板の上部面の一層下に位置して、4個の誘電体層の厚さを有する円形であることができる。
【0058】
菱形のアンテナパッチの大きさは、60GHz帯域で共振周波数を有するように設計された。
【0059】
図5を参照すると、パッチアンテナの帯域は、57.0〜64.3GHzm1〜m2であり、パッチアンテナは、7.3GHzの帯域幅を有することが分かる。本発明の実施形態による金属パターン層(図1の120f)及びこれを接地層に連結するための複数のビアが除外された同一な従来のパッチアンテナの場合、パッチアンテナの帯域は、58.0〜61.8GHzに、このようなパッチアンテナは、3.8GHzの帯域幅を有した。これによって本発明の実施形態によるパッチアンテナは、従来のパッチアンテナに比べて広帯域特性が向上されることが分かる。
【0060】
図6を参照すると、パッチアンテナは、最高8.2dBiのアンテナ利得を有することが分かる。又、伝送線路(図1の150を参照する)に垂直な方向と水平な方向に利得がほとんど類似であることが分かる。これは、表面波による信号の漏洩が多層基板の表面に沿って流れ、放射されることが抑制されているためである。さらに、摸写実験の結果、パッチアンテナは、67.8%の放射効率を有することが分かる。
【0061】
一般的に断層基板を有するパッチアンテナは、断層基板に垂直な方向に利得がもっとも大きい値を有する。しかし、図5で説明された従来のパッチアンテナの場合、多層基板に垂直な方向に対して傾斜θが−15゜である方向に最大値が見られた。又、アンテナパッチの形態が菱形であるので、伝送線路に垂直な方向と水平な方向の放射特性がほとんど類似の特性を見せなければならないが、伝送線路に垂直な方向には、利得が左右対称の形状を見せたが、伝送線路に水平な方向には、利得が15゜程度移動して左右対称の形状が見られなかった。これは、表面波による信号の漏洩が多層基板の表面に沿って流れ、放射されているためである。さらに、摸写実験の結果、従来のパッチアンテナは、32.8%の放射効率を有した。
【0062】
これによって、本発明の実施形態によるパッチアンテナは、従来のパッチアンテナに比べて、アンテナ利得及び放射効率の全てが大きく向上されたことが分かる。
【0063】
図7は、本発明の第2実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの構造を説明するための立体図である。
【0064】
図7を参照すると、図1に示された本発明の第1実施形態と金属パターン層220fの形態が異なる場合である。金属パターン層220fは、多層基板205内の中心領域R1に対して放射状に広まった複数のラインパターンであることができる。
【0065】
上述の図1及び図2で説明されたように、多層基板205の中心領域R1を取り囲む複数のビア230は、アンテナパッチ240から放射される波長の半分(λ/2)以下の距離に互いに離隔されるので、アンテナパッチ240から放射される波長λが複数のビア230の間を抜け出さない。即ち、多層基板205の中心領域R1を取り囲む複数のビア230のみでもアンテナパッチ240で表面波の形態に漏洩される信号が誘電体共振器(図2のDRを参照する)に蓄積されるようにすることができる。
【0066】
但し、多層基板205の上部面と接地層220gとの間の距離が近づくようにして、マイクロストリップ形態の伝送線路250による表面波の形態に漏洩される信号を抑制するためにマイクロストリップ形態の伝送線路250の下部の多層基板205内に最小限の金属パターン層220fが存在しなければならない。これによって、金属パターン層220fは、ラインパターン形態であることができる。
【0067】
図8乃至図11は、各々本発明の第3乃至第6の実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの構造を説明するための立体図である。
【0068】
図8乃至図11を参照すると、パッチアンテナ300、400、500、600は、八角形の平面断面を有する誘電体共振器を有する中心領域R2及び各々に円形、菱形、八角形、正方形の平面断面を有するアンテナパッチ340、440、540、640を含むことができる。示さなかったが、リング形、四角形又は三角形などのような異なる形態のアンテナパッチが含まれることができる。
【0069】
以下の表1は、このようなパッチアンテナ300、400、500、600の特性を示したことである。
【表1】

【0070】
表1から分かるように、アンテナパッチ340、440、540、640の形態と大きい関係なく、パッチアンテナ300、400、500、600は、高利得、高効率及び広帯域特性を有することが分かる。
【0071】
図12及び図13は、本発明の第7及び第8実施形態によるミリメートル波帯域パッチアンテナの構造を説明するための立体図である。
【0072】
図1、図11及び図12を参照すると、パッチアンテナ100、700、800は、菱形の平面断面をアンテナパッチ140、740または840及び各々の円形、八角形及び正方形の平面断面を有する誘電体共振器を有する中心領域R1、R2、R3を含むことができる。示さなかったが、正多角形などのような他の形態の共振器が含まれることができる。
【0073】
以下の表2は、このようなパッチアンテナ100、700、800の特性を示したことである。
【表2】

【0074】
表2から分かるように、中心領域R1、R2、R3内の誘電体共振器の形態と大きい関係なく、パッチアンテナ100、700、800は、高利得、高効率及び広帯域特性を有することが分かる。
【0075】
前記の本発明の実施形態によるパッチアンテナは、アンテナパッチとその下部に金属に囲まれた誘電体共振器を有することによって、アンテナパッチが接地層から距離が遠くなることができる。これによって、アンテナパッチのインピーダンスが放射に適合したインピーダンスを有することができ、多層基板の内部に位置する誘電体共振器を抜け出した領域では、多層基板の上部面と接地層との間の距離が近づくことができる。
【0076】
本発明の実施形態によるパッチアンテナは、アンテナパッチを除外した領域では、接地層が伝送線路に近づくなることによって、表面波の伝達が抑制されることができる。これによって、アンテナパッチで表面波の形態に漏洩される信号が外部に漏洩されなくて、誘電体共振器内に蓄積されることができる。誘電体共振器の大きさが設計周波数帯域で共振するように調節されると、共振された信号が多層基板の外部に放射するようになって、全体パッチアンテナの放射効率及びアンテナ利得が高まることができる。又、アンテナパッチと多層基板内部の誘電体共振器が適当なカップリング値を有するように調節されると、全体パッチアンテナの帯域幅が拡張されることができる。これによって、誘電体が積層された多層基板上に具現された高利得、高効率及び広帯域特性を有するミリメートル波帯域パッチアンテナが提供されることができる。
【0077】
以上、添付された図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者は本発明がその技術的な思想、或いは必須的な特徴を変更しなくて他の具体的な形態に実施されることができるのを理解することができる。従って、上述の実施形態に全ての面で例示的であり、限定的ではないことと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0078】
100、200、300、400、500、600、700、800 パッチアンテナ
110、210、310、410、510、610、710、810 誘電体層
105、205、305、405、505、605、705、805 多層基板
110f、210f、310f、410f、510f、610f、710f、810f
内部誘電体層
110s、210s、310s、410s、510s、610s、710s、810s
表面誘電体層
120f、220f、320f、420f、520f、620f、720f、820f
金属パターン層
120g、220g、320g、420g、520g、620g、720g、820g
接地層
130、230、330、430、530、630、730、830 ビア
140、240、340、440、540、640、740、840 アンテナパッチ
150、250、350、450、550、650、750、850 伝送線路
DR 誘電体共振器、
R1、R2、R3 中心領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層された多層基板と、
前記多層基板の中心領域を除いて、前記複数の誘電体層の間に介在された少なくとも一つの金属パターン層と、
前記多層基板の第1面上に配置され、前記中心領域内に位置されたアンテナパッチと、
前記多層基板の前記第1面に対向する第2面上に配置された接地層と、
前記誘電体層を貫通して前記金属パターン層と前記接地層を電気的に連結し、前記中心領域を取り囲む複数のビアと、を含み、
前記接地層及び前記複数のビアによって囲まれた前記多層基板の前記中心領域は、共振器の役割をすることを特徴とするパッチアンテナ。
【請求項2】
前記複数のビアは、前記アンテナパッチから放射される波長の半分以下の距離に互いに離隔されていることを特徴とする請求項1に記載のパッチアンテナ。
【請求項3】
前記複数のビアは、前記中心領域に蓄積された信号の漏洩を抑制する金属壁の役割をすることを特徴とする請求項1に記載のパッチアンテナ。
【請求項4】
前記複数のビアは、前記中心領域に対して、放射状に配置される少なくとも一つの追加的なビアをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のパッチアンテナ。
【請求項5】
前記複数のビアによって、前記多層基板の前記第1面と前記接地層との間の距離が近づく程度によって、表面波の伝達程度が抑制されることを特徴とする請求項1に記載のパッチアンテナ。
【請求項6】
前記中心領域は、設計周波数帯域で共振することができる大きさを有することを特徴とする請求項1に記載のパッチアンテナ。
【請求項7】
ビアによって囲まれた中心領域は、設計周波数帯域で誘電体共振器に役割をすることを特徴とする請求項6に記載のパッチアンテナ。
【請求項8】
前記アンテナパッチと前記中心領域との間のカップリングによって帯域幅が大きくなることを特徴とする請求項1に記載のパッチアンテナ。
【請求項9】
前記アンテナパッチに信号を供給するための伝送線路をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のパッチアンテナ。
【請求項10】
前記伝送線路の下部周囲に配置された追加的なビアをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のパッチアンテナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−61754(P2011−61754A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275490(P2009−275490)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】