説明

メタクリル酸製造用触媒の再生方法及びメタクリル酸の製造方法

【課題】劣化触媒の触媒活性を効果的に回復させることができ、また、得られた再生触媒を用いて、良好な転化率、選択率でメタクリル酸を製造することができる方法を提供すること。
【解決手段】劣化触媒と、水と、硝酸根と、硝酸根に対するモル比率が1.3以下のアンモニウム根とを含む混合物を100℃以上で熱処理した後、乾燥して乾燥物を得、該乾燥物を焼成することにより、リン及びモリブデンを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒を再生する。また、この再生触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸から選ばれる化合物を気相接触酸化反応してメタクリル酸を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクリル酸製造用触媒を再生する方法に関するものである。また、この方法により得られた触媒を用いて、メタクリル酸を製造する方法にも関係している。
【背景技術】
【0002】
リン及びモリブデンを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒は、メタクロレイン等を原料とする気相接触酸化反応に長時間使用されると、熱負荷等により触媒活性が低下し、該触媒が劣化することが知られている。
【0003】
かかる劣化触媒の再生処理方法として、特開昭61−283352号公報(特許文献1)には、劣化触媒を水に溶解又は懸濁させ、モリブデン12原子に対してアンモニウム根が7〜15モル、硝酸根が0.1〜4.0モル含有する混合物(硝酸根に対するアンモニウム根のモル比率は1.75以上)を調製し、その後、該混合物を乾燥、焼成する方法が記載されている。
【0004】
特開2001−286763号公報(特許文献2)には、劣化触媒を水に分散させた後、含窒素ヘテロ環化合物、硝酸アンモニウム及び硝酸を70℃で加えて混合物を調製し、その後、乾燥、焼成する方法が記載されている。かかる方法において、上記混合物中の硝酸根に対するアンモニウム根のモル比率が1.7以下になるように硝酸アンモニウム及び硝酸の量を調整することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−283352号公報
【特許文献2】特開2001−286763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の再生方法では、触媒活性の回復効果が必ずしも十分でなく、得られた再生触媒の触媒活性は、必ずしも満足のいくものではなかった。そこで、本発明の目的は、劣化触媒の触媒活性を効果的に回復させることのできるメタクリル酸製造用触媒の再生方法を提供することにある。また、この方法により得られた再生触媒を用いて、良好な転化率、選択率でメタクリル酸を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意研究を行った結果、劣化触媒と、水と、硝酸根と、硝酸根に対するモル比率が1.3以下のアンモニウム根とを含む混合物を100℃以上で熱処理した後、乾燥して乾燥物を得、該乾燥物を焼成することにより、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、リン及びモリブデンを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒の再生方法であって、劣化触媒と、水と、硝酸根と、硝酸根に対するモル比率が1.3以下のアンモニウム根とを含む混合物を100℃以上で熱処理した後、乾燥して乾燥物を得、該乾燥物を焼成することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の再生方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記方法によりメタクリル酸製造用触媒を再生し、この再生触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸から選ばれる化合物を気相接触酸化反応に付す、メタクリル酸の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、劣化触媒の触媒活性を効果的に回復させることができ、また、得られた再生触媒を用いて、良好な転化率、選択率でメタクリル酸を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明が再生の対象とするメタクリル酸製造用触媒は、リン及びモリブデンを必須とするヘテロポリ酸化合物からなるものであり、遊離のヘテロポリ酸からなるものであってもよいし、ヘテロポリ酸の塩からなるものであってもよい。中でも、ヘテロポリ酸の酸性塩(部分中和塩)からなるものが好ましく、さらに好ましくはケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものである。
【0012】
上記触媒には、リン及びモリブデン以外の元素として、バナジウムが含まれるのが望ましく、また、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、X元素ということがある。)や、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、Y元素ということがある。)が含まれるのが望ましい。通常、モリブデン12原子に対して、リン、バナジウム、X元素及びY元素が、それぞれ3原子以下の割合で含まれる触媒が、好適に用いられる。
【0013】
かかるメタクリル酸製造用触媒がメタクリル酸の製造に使用されたり、熱負荷を受けたりすると、活性点の分解や比表面積の減少等が起こり、その結果、触媒活性は低下する。本発明では、触媒活性の低下した、いわゆる劣化触媒を再生処理の対象とするものである。尚、活性点の分解については、XRD(X線回折)分析を行い、触媒の分解物である三酸化モリブデンが検出されるか否かで確認することができ、触媒の比表面積については、N吸着によるBET比表面積測定により求めることができる。
【0014】
再生処理では、劣化触媒と、水と、硝酸根と、硝酸根に対するモル比率が1.3以下のアンモニウム根とを含む混合物を100℃以上で熱処理する。このように該混合物中の硝酸根及びアンモニウム根の量を制御して、かつ該混合物を100℃以上で熱処理することにより、劣化触媒の触媒活性を効果的に回復させることができる。
【0015】
上記混合物の調製法については特に制限はなく、例えば、劣化触媒を水に懸濁させた後、アンモニウム根及び硝酸根の原料化合物を加えてもよいし、アンモニウム根及び硝酸根を含む水溶液に上記劣化触媒を懸濁させてもよい。
【0016】
上記劣化触媒が成形体である場合には、そのまま懸濁させてもよいし、成形体を粉砕して懸濁させてもよい。ただし、該成形体に触媒の強度を発現させるファイバー等が含まれている場合には、切断されると強度低下が懸念されるため、粉砕する際には、ファイバー等が切断されないようにすることが好ましい。
【0017】
アンモニウム根の原料化合物としては、例えば、アンモニアや、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウムのようなアンモニウム塩等が挙げられ、好ましくはアンモニア、硝酸アンモニウムが挙げられる。硝酸根の原料化合物としては、例えば、硝酸や、硝酸アンモニウムのような硝酸塩等が挙げられ、好ましくは硝酸、硝酸アンモニウムが挙げられる。これら原料化合物の使用量は、上述したとおり、硝酸根に対するアンモニウム根のモル比率が1.3以下になるように調整される。
【0018】
メタクリル酸製造用触媒は、メタクリル酸の製造に使用されたり、熱負荷を受けたりすると、リンやモリブデン等の触媒の構成成分が一部飛散することがある。このような場合、蛍光X線分析やICP発光分析により飛散した構成成分の種類と量を算出し、その飛散分を、上記混合物を調製する際にあわせて加えるのが好ましい。また、飛散分として加える化合物には、リンおよびモリブデンを含むヘテロポリ酸化合物を製造するために用いられる原料化合物を用いることができ、例えば、各元素のオキソ酸、オキソ酸塩、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が挙げられる。リンを含む化合物としては、リン酸、リン酸塩等が用いられ、モリブデンを含む化合物としては、モリブデン酸、モリブデン酸塩、酸化モリブデン、塩化モリブデン等が用いられ、バナジウムを含む化合物としては、バナジン酸、バナジン酸塩、酸化バナジウム、塩化バナジウム等が用いられる。また、X元素を含む化合物としては、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が用いられ、Y元素を含む化合物としては、オキソ酸、オキソ酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が用いられる。尚、飛散分として加える化合物に硝酸根やアンモニウム根を含む場合は、それらを含めて、上記混合物中の硝酸根及びアンモニウム根のモル比率が上記所定の範囲になるように、それらの添加量も調整される。
【0019】
水の供給源としては、通常イオン交換水が用いられる。水の使用量は、上記混合物中のモリブデン1重量部に対し、通常1〜20重量部である。
【0020】
本発明では、上述したとおり、上記混合物を100℃以上で熱処理し、熟成する。このような熱処理工程を経ることにより、触媒活性を効果的に回復させることができる。熱処理温度は、200℃以下であるのが好ましく、150℃以下であるのがより好ましい。かかる熱処理は、通常、密閉容器内で行うことができる。熱処理時間は、通常0.1時間以上であり、好ましくは2時間以上、より好ましくは2〜10時間である。0.1時間より短いと活性回復効果が十分には得られにくく、一方、生産性の点から10時間以下が好ましい。
【0021】
上述したとおり熱処理した後、乾燥する。かかる乾燥方法としては、この分野で通常用いられる方法、例えば、蒸発乾固法、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、気流乾燥法等を採用することができる。また、得られた乾燥物は、そのまま焼成してもよいが、好ましくは打錠成形や押出成形等によって、リング状、ペレット状、球状、円柱状等に成形される。この際、強度を高めるために、必要に応じてセラミックファイバーやグラスファイバー等の成形助剤を用いてもよい。
【0022】
上記の如く成形した場合、得られた成形体を調温調湿処理、具体的には40〜100℃で0.5〜10時間、相対湿度10〜60%の雰囲気下にさらした後に、焼成を行うことで、さらに良好に触媒活性を回復させることができるため好ましい。該処理は、例えば、調温、調湿された槽内にて行ってもよいし、調温、調湿されたガスを成形体に吹き付けることで行ってもよい。また、該処理の雰囲気ガスとしては、通常、空気が用いられるが、窒素等の不活性ガスを用いてもよい。
【0023】
上記乾燥物をそのまま焼成するか、又は成形した後、上記調温調湿処理を行い、次いで焼成することにより、再生触媒を得ることができる。かかる焼成は、酸素等の酸化性ガスの雰囲気下で行ってもよいし、窒素等の非酸化性ガスの雰囲気下で行ってもよいが、酸化性ガスの雰囲気下に360〜410℃で第一段焼成を行い、次いで非酸化性ガスの雰囲気下に420〜500℃で第二段焼成を行うのが好ましい。このような二段階の焼成を行うことにより、より良好に触媒活性を回復させることができる。
【0024】
焼成を二段階で行う場合、第一段焼成で用いられる酸化性ガスは、酸化性物質を含むガスであり、例えば、酸素含有ガスが挙げられる。その酸素濃度は通常1〜30容量%程度である。この酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられ、必要に応じて不活性ガスで希釈される。また、必要に応じて水分を存在させてもよいが、その濃度は通常10容量%以下である。酸化性ガスとしては、中でも、空気が好ましい。第一段焼成は、通常、上記酸化性ガスの気流下で行われる。第一段焼成の温度は360〜410℃であり、好ましくは380〜400℃である。
【0025】
第二段焼成で用いられる非酸化性ガスは、実質的に酸素の如き酸化性物質を含有しないガスであり、例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。また、必要に応じて水分を存在させてもよいが、その濃度は通常10容量%以下である。非酸化性ガスとしては、中でも、窒素が好ましい。第二段焼成は、通常、上記非酸化性ガスの気流下で行われる。第二段焼成の温度は420〜500℃であり、好ましくは420〜450℃である。
【0026】
尚、上記焼成の前に、酸化性ガス又は非酸化性ガスの雰囲気下に、180〜300℃程度の温度で保持して、熱処理(前焼成)を行うのが好ましい。
【0027】
かくして得られる再生触媒は、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、遊離のヘテロポリ酸からなるものであってもよいし、ヘテロポリ酸の塩からなるものであってもよい。中でも、ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものが好ましく、さらにケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものがより好ましい。また、上記熱処理(前焼成)の際にケギン型へテロポリ酸塩の構造が形成されるようにするのがより好適である。
【0028】
かかる再生触媒は、触媒活性が良好に回復したものであり、この再生触媒存在下に、メタクロレイン等の原料化合物を気相接触酸化反応させることにより、良好な転化率、選択率でメタクリル酸を製造することができる。
【0029】
メタクリル酸の製造は、通常、固定床多管式反応器に触媒を充填し、これにメタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸から選ばれる原料化合物と酸素を含む原料ガスを供給することにより行われるが、流動床や移動床のような反応形式を採用することもできる。酸素源としては、通常、空気が用いられ、また原料ガス中には、上記原料化合物及び酸素以外の成分として、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気等が含まれうる。
【0030】
例えば、メタクロレインを原料として用いる場合、通常、原料ガス中のメタクロレイン濃度は1〜10容量%、メタクロレインに対する酸素のモル比は1〜5、空間速度は500〜5000h-1(標準状態基準)、反応温度は250〜350℃、反応圧力は0.1〜0.3MPa、の条件下で反応が行われる。なお、原料のメタクロレインは必ずしも高純度の精製品である必要はなく、例えば、イソブチレンやt−ブチルアルコールの気相接触酸化反応により得られたメタクロレインを含む反応生成ガスを用いることもできる。
【0031】
また、イソブタンを原料として用いる場合、通常、原料ガス中のイソブタン濃度は1〜85容量%、水蒸気濃度は3〜30容量%、イソブタンに対する酸素のモル比は0.05〜4、空間速度は400〜5000h-1(標準状態基準)、反応温度は250〜400℃、反応圧力は0.1〜1MPa、の条件下で反応が行われる。イソ酪酸やイソブチルアルデヒドを原料として用いる場合には、通常、メタクロレインを原料として用いる場合と、ほぼ同様の反応条件が採用される。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。各例で使用した空気は水分2容量%(大気相当)を含むものであり、また、各例で使用した窒素は実質的に水分を含まないものである。尚、転化率、選択率は次のとおり定義される。
【0033】
転化率(%)=反応したメタクロレインのモル数÷供給したメタクロレインのモル数×100。選択率(%)=生成したメタクリル酸のモル数÷反応したメタクロレインのモル数×100。
【0034】
また、本実施例中の蛍光X線分析とBET比表面積測定は以下のとおり行った。
【0035】
〔蛍光X線分析〕
蛍光X線分析装置として、リガク社製の「ZSX Primus II」を用いて測定した。
【0036】
〔BET比表面積測定〕
触媒約1gを真空脱気した後、200℃、0.5時間で脱水し、N2吸着させてBET比表面積を測定した。測定装置として、Mountech社製の「Macsorb Model−1208」を用いた。
【0037】
参考例1(a)
(新触媒の調製)
40℃に加熱したイオン交換水224kgに、硝酸セシウム[CsNO3]38.2kg、75重量%オルトリン酸27.4kg、及び70重量%硝酸25.2kgを溶解し、これをA液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水330kgに、モリブデン酸アンモニウム4水和物[(NH46Mo724・4H2O]297kgを溶解した後、メタバナジン酸アンモニウム[NH4VO3]8.19kgを懸濁させ、これをB液とした。A液とB液を40℃に調整し、攪拌下、B液にA液を滴下した後、密閉容器中120℃で5.8時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン[Sb23]10.2kg及び硝酸銅3水和物[Cu(NO32・3H2O]10.2kgを、イオン交換水23kgに懸濁させて添加した後、密封容器中、120℃で5時間攪拌した。こうして得られた混合物をスプレードライヤーにて乾燥し、この乾燥粉末100重量部に対して、セラミックファイバー4重量部、硝酸アンモニウム13重量部、及びイオン交換水9.7重量部を加えて混練し、直径5mm、高さ6mmの円柱状に押出成形した。この成形体を、温度90℃、相対湿度30%にて3時間乾燥した後、空気気流中220℃で22時間、空気気流中250℃で1時間の順に熱処理(前焼成)し、その後、窒素気流中で435℃に昇温して、同温度で3時間保持した。更に、窒素気流中で300℃まで冷却した後、窒素を空気に切り替え、空気気流中で390℃に昇温して、同温度で3時間保持した。その後、空気気流中で70℃まで冷却してから、触媒を取り出した。この新触媒は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムをそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4の原子比で含むケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものであった。この新触媒のBET比表面積を表1に示す。
【0038】
参考例1(b)
(新触媒の活性試験)
上記で得た触媒9gを、内径16mmのガラス製マイクロリアクターに充填し、この中に、メタクロレイン、空気、スチーム及び窒素を混合して調製したメタクロレイン4容量%、分子状酸素12容量%、水蒸気17容量%、窒素67容量%の組成の原料ガスを、空間速度670h-1で供給して、炉温(マイクロリアクターを加熱するための炉の温度)を355℃まで上げた後、該温度で1時間保持し、次いで炉温を280℃に下げた。その後、該温度で反応を1時間継続し、このときの転化率と選択率を求めた。この結果を表1に示す。
【0039】
参考例1(c)
(劣化触媒の調製及びその活性試験)
参考例1(a)で得られた新触媒を、長時間メタクロレインの接触気相酸化反応に付し、劣化触媒を得た。この劣化触媒のBET比表面積を表1に示す。また、かかる劣化触媒について参考例1(b)と同様の操作で活性試験を行い、転化率と選択率を求めた。この結果を表1に示す。
【0040】
実施例1(a)
(再生触媒の調製)
イオン交換水400gに参考例1(c)で得られた劣化触媒200gを加え攪拌した。参考例1(a)で得られた新触媒に対する劣化触媒の不足成分(飛散成分)の種類及び量を蛍光X線分析により算出し、これを補うために、三酸化モリブデン[MoO3]31.5g、75重量%オルトリン酸2.7gを添加した。次に、硝酸アンモニウム[NHNO]69.2gを加え、70℃に昇温して同温度で1時間保持した。その後、25重量%アンモニア水12.5gを添加し、70℃にて1時間保持した後、密閉容器中120℃で5時間攪拌した。このスラリー中の硝酸根に対するアンモニウム根のモル比率は、1.2であった。該スラリーを120℃にて乾燥し、得られた乾燥物に、該乾燥物100重量部に対して硝酸アンモニウム5重量部、イオン交換水7重量部を加えて混練し、直径5mm、高さ6mmの円柱状に押出成形した。この成形体を、温度90℃、相対湿度30%で3時間乾燥した後、空気気流中で220℃にて22時間、250℃にて1時間の順に熱処理し、空気気流中で390℃に昇温して、同温度で3時間保持し、次いで、空気を窒素に切り換え、窒素気流中で435℃に昇温して、同温度で4時間保持した。その後、窒素気流中で70℃まで冷却してから、再生触媒を取り出した。この再生触媒は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムをそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4の原子比で含むケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものであった。この再生触媒のBET比表面積を表1に示す。
【0041】
実施例1(b)
(再生触媒の活性試験)
実施例1(a)で得られた再生触媒について参考例1(b)と同様の操作で活性試験を行い、転化率と選択率を求めた。この結果を表1に示す。
【0042】
実施例2(a)
(再生触媒の調製)
実施例1(a)において、25重量%アンモニア水を12.5gから16.9gに変更して、硝酸根に対するアンモニウム根のモル比率を1.3に調整した以外は、実施例1(a)と同様の操作を行って再生触媒を得た。この再生触媒のBET比表面積を表1に示す。
【0043】
実施例2(b)
(再生触媒の活性試験)
実施例2(a)で得られた再生触媒について参考例1(b)と同様の操作で活性試験を行い、転化率と選択率を求めた。この結果を表1に示す。
【0044】
実施例3(a)
(再生触媒の調製)
実施例1(a)において、25重量%アンモニア水を12.5gから5.7gに変更して、硝酸根に対するアンモニウム根のモル比率を1.1に調整した以外は、実施例1(a)と同様の操作を行って再生触媒を得た。この再生触媒のBET比表面積を表1に示す。
【0045】
実施例3(b)
(再生触媒の活性試験)
実施例3(a)で得られた再生触媒について参考例1(b)と同様の操作で活性試験を行い、転化率と選択率を求めた。この結果を表1に示す。
【0046】
実施例4(a)
(再生触媒の調製)
実施例1(a)において、25重量%アンモニア水12.5gにかえて70重量%硝酸78.4gを添加して、硝酸根に対するアンモニウム根のモル比率を0.5に調整した以外は、実施例1(a)と同様の操作を行って再生触媒を得た。この再生触媒のBET比表面積を表1に示す。
【0047】
実施例4(b)
(再生触媒の活性試験)
実施例4(a)で得られた再生触媒について参考例1(b)と同様の操作で活性試験を行い、転化率と選択率を求めた。この結果を表1に示す。
【0048】
比較例1(a)
(再生触媒の調製)
実施例1(a)において、25重量%アンモニア水を12.5gから22.8gに変更して、硝酸根に対するアンモニウム根のモル比率を1.4に調整した以外は、実施例1(a)と同様の操作を行って再生触媒を得た。この再生触媒のBET比表面積を表1に示す。
【0049】
比較例1(b)
(再生触媒の活性試験)
比較例1(a)で得られた再生触媒について参考例1(b)と同様の操作で活性試験を行い、転化率と選択率を求めた。この結果を表1に示す。
【0050】
比較例2(a)
(再生触媒の調製)
実施例2(a)において、25重量%アンモニア水を12.5gから41.2gに変更して、硝酸根に対するアンモニウム根のモル比率を1.7に調整した以外は、実施例1(a)と同様の操作を行って再生触媒を得た。この再生触媒のBET比表面積を表1に示す。
【0051】
比較例2(b)
(再生触媒の活性試験)
比較例2(a)で得られた再生触媒について参考例1(b)と同様の操作で活性試験を行い、転化率と選択率を求めた。この結果を表1に示す。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン及びモリブデンを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒の再生方法であって、劣化触媒と、水と、硝酸根と、硝酸根に対するモル比率が1.3以下のアンモニウム根とを含む混合物を100℃以上で熱処理した後、乾燥して乾燥物を得、該乾燥物を焼成することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
【請求項2】
前記乾燥物を酸化性ガスの雰囲気下に360〜410℃で第一段焼成し、次いで非酸化性ガスの雰囲気下に420〜500℃で第二段焼成する請求項1に記載の再生方法。
【請求項3】
前記乾燥物を成形した後、40〜100℃で0.5〜10時間、相対湿度10〜60%の雰囲気下にさらし、次いで焼成する請求項1又は2に記載の再生方法。
【請求項4】
ヘテロポリ酸化合物が、バナジウムと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムから選ばれる元素と、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムから選ばれる元素とを含む請求項1〜3のいずれかに記載の再生方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法によりメタクリル酸製造用触媒を再生し、この再生触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸から選ばれる化合物を気相接触酸化反応に付す、メタクリル酸の製造方法。

【公開番号】特開2009−248034(P2009−248034A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101352(P2008−101352)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】