説明

メタノール合成触媒及びその製造方法、メタノール合成方法及びその装置

【課題】メタノール合成の反応速度を向上させたメタノール合成触媒及びその製造方法、メタノール合成方法及びその装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るメタノール合成触媒は、Cu/Zn系触媒に増粘剤を添加し、圧縮成型してペレット化してなるメタノール合成触媒であって、平均細孔径を12〜25nmとするものである。これにより、二酸化炭素含有量が多い(5%以上)原料ガスからメタノールを合成する際においてもメタノール合成の反応活性が高いものとなり、メタノール合成効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノール合成の反応速度を向上させたメタノール合成触媒及びその製造方法、メタノール合成方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばメタノールの工業的な合成は、水素(H2)、一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO2)からなる合成ガスを原料とし、例えばCu/Znを主成分としたメタノール合成触媒を用いて合成されている(特許文献1及び2)。
前記触媒を用いた反応は例えば約250℃で、10MPa程度の高温・高圧で運転されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−170231号公報
【特許文献2】特開平10−277392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、メタノール合成の際においては、前記メタノール合成触媒の反応速度を高くすることができれば、運転温度或いは圧力を低く抑えることができ、合成に関わるエネルギーロスを低減することができるが、未だ実現されていない。
【0005】
また、用いる触媒量の低減も可能となり、メタノール合成プラントにかかるコストの低減にもつながることとなる。
特に、原料ガス中のCO2濃度が高い場合、メタノール合成反応の反応速度は低くなるため、反応速度の効果は顕著になる。
【0006】
これは、下記式(1)の原料として一酸化炭素(CO)及び水素(H2)を主体としたメタノール反応においては、反応活性が高いものの、下記式(2)の二酸化炭素(CO2)及び水素(H2)を主体としたメタノール反応においては、反応活性が低いという問題がある。
CO+2H2→ MeOH …(1)
CO2+3H2→ MeOH+H2O …(2)
【0007】
また、メタノールは、MTBE(メタルタ−シャリ−ブチルエーテル)、ガソリン、石油化学中間製品、さらに水素、一酸化炭素、都市ガスの製造などの原料として、また燃料用としても今後益々需要が多くなると考えられ、メタノール合成プラントの大型化プラントが建設される見通しである。
【0008】
一方、地球温暖化の主原因と言われている二酸化炭素の回収及び資源化の一つとして、二酸化炭素の接触水素化によるメタノール合成反応が注目されている。例えば石炭焚きボイラにより発電する発電プラントからの排出ガス中の二酸化炭素は二酸化炭素吸収液に吸収されて回収するようにしているが、これをそのまま用いてメタノール合成する場合には、二酸化炭素の固定化を図ることができるが、前述したように、反応活性が低いので、二酸化炭素濃度が高い(例えばCO2濃度が5%以上)ガスを用いてもメタノール反応活性が高いメタノール合成触媒の出現が切望されている。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み、メタノール合成の反応速度を向上させたメタノール合成触媒及びその製造方法、メタノール合成方法及びその装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、Cu/Zn系触媒に増粘剤を添加し、圧縮成型してペレット化してなるメタノール合成触媒であって、平均細孔径が、12〜25nmであることを特徴とするメタノール合成触媒にある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、細孔容積が、0.15〜0.65cc/gであることを特徴とするメタノール合成触媒にある。
【0012】
第3の発明は、第1又は2の発明において、ペレットの見かけ比重が、0.8〜1.9kg/Lであることを特徴とするメタノール合成触媒にある。
【0013】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記増粘剤が、有機系増粘剤及び無機系増粘剤であることを特徴とするメタノール合成触媒にある。
【0014】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記増粘剤を触媒100部に対して0.01〜3部添加してなることを特徴とするメタノール合成触媒にある。
【0015】
第6の発明は触媒粉末に、増粘剤と水を添加して混練する混練工程と、触媒混練物をペレット状に圧縮成型してペレット化する打錠成型工程ととを有することを特徴とするメタノール合成触媒の製造方法にある。
【0016】
第7の発明は、第1乃至5のいずれか一つのメタノール合成触媒を用いて、原料ガスからメタノールを合成することを特徴とするメタノール合成方法にある。
【0017】
第8の発明は、第7の発明において、前記原料ガス中のCO2濃度が、5%以上であることを特徴とするメタノール合成方法にある。
【0018】
第9の発明は、原料ガスを供給する原料ガス供給部と、請求項1乃至5のいずれか一つのメタノール合成触媒を充填した触媒部とを具備してなり、メタノールを合成することを特徴とするメタノール合成装置にある。
【0019】
第10の発明は、第9の発明において、前記原料ガス中のCO2濃度が、5%以上であることを特徴とするメタノール合成装置にある。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、Cu/Zn系触媒に増粘剤を添加し、圧縮成型してペレット化してなるメタノール合成触媒であって、平均細孔径を12〜25nmとするもので、二酸化炭素含有量が多い(5%以上)原料ガスからメタノールを合成する際においてもメタノール合成の反応活性が高いものとなり、メタノール合成効率が向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0022】
[発明の実施の形態]
本発明に係るメタノール合成触媒について以下に説明する。
本発明に係るメタノール合成触媒は、Cu/Zn系触媒に増粘剤を添加し、圧縮成型してペレット化してなるメタノール合成触媒であって、平均細孔径を12〜25nmとするものである。
これは、ガス拡散性能の向上のためには、細孔の数が多いほど良いとされているものの、単位重量あたりの細孔容積が同じ場合には、表1に示すように細孔径が大きくなればなるほど、細孔の数が少なくなり、ガス拡散性が低いという二律背反の関係となる。
【0023】
【表1】

【0024】
ここで、メタノール合成反応は、下記のような複数の反応の組み合わせで起こっていると考えられ、反応機構はまだ定説がない。しかしながら、式(3)〜(6)から、このメタノール合成反応は直接或いは間接的にCO及びCO2が関与していると思われ、CO及びCO2の拡散挙動を制御することにより、活性の高性能化に寄与することとなる。
CO+2H2→MeOH …(3)
CO2+3H2→MeOH+H2O …(4)
CO2+H2→CO+H2O …(5)
CO+H2O→CO2+H2 …(6)
【0025】
ここで本発明におけるメタノール合成触媒の高性能化とは、総括での反応速度の向上を意味している。また、一般にメタノールプラントにおいては、収率一定となるような運転がされており、反応速度が向上することにより、圧力などマイルドな反応条件で運転できることになり、高効率化が期待できることになる。
また、「総括反応速度」は下記(7)式のように、反応する分子が触媒表面に拡散する速度と、化学吸着した反応分子が反応する速度との関数で表される。
【0026】
総括反応速度 = 1/((1/反応分子の拡散速度)+(1/吸着分子の反応速度))…(7)
【0027】
ここで、前記(7)式において、吸着分子の反応速度は触媒が持つ真の反応速度であり、この部分の向上とは触媒組成、助触媒添加などの効果によるものである。
【0028】
本発明では、メタノール合成触媒の高性能化として、従来検討されている例えば触媒成分、触媒の調製方法の改良等による吸着分子の反応速度の改良ではなく、CO及びCO2を含む原料ガスのガス拡散性を向上させる(すなわち前記(7)式での反応分子の拡散速度を向上させる)観点から触媒構造の検討を行ったものである。
【0029】
以下、本発明におけるガス拡散性を向上のためについて説明する。
ここで、触媒は一般的に無数といえるような細孔を有しており、その細孔径は触媒種により、まちまちである。細孔は、細孔径を目安として0.1〜1.5nm(1〜15Å)までをミクロ孔、1.5〜100nm(15〜1000Å)までをメソ孔、100nm(1000Å)以上をマクロ孔という呼び方がされている(例えば「触媒講座」第5巻、4章、123頁参照)。
また、この細孔の中においてメタノール合成触媒は、メソ孔がメインの細孔である。
【0030】
そして、図1の触媒のイメージモデル図に示すように、一般的に用いられるペレット触媒11は、ミクロ孔又はメソ孔13を有する触媒粉末12が集まって成型されてなるものである。
【0031】
図1の触媒のイメージモデル図に示すように、触媒粉末12のミクロ孔又はメソ孔13への拡散は、拡散分子の平均自由工程及び細孔径により、ほぼ分子拡散とクヌーセン(Knudsen)拡散に大別できるが、一般的に分子拡散は平均自由工程に比べて細孔径が大きくなると支配的になり、クヌーセン(Knudsen)拡散は細孔径の方が小さい場合に支配的になる。
【0032】
ここで、メタノール合成触媒はミクロ孔又はメソ孔13が最も多い構造であり、拡散機構はクヌーセン(Knudsen)拡散が支配的であると推定されている。
またクヌーセン(Knudsen拡散)における拡散係数は、毛細管径に比例して大きくなるという性質があるため、メタノール合成反応においてガスの拡散性を向上させることは、毛細管径を大きくすればよいことになる。
【0033】
一方、ガス拡散性の向上には細孔の数が多いほど良いと考えられるが、単位重量あたりの細孔容積が同じ場合には、前述した表1に示すように細孔径が大きくなるほど、細孔の数は少なくなるという二律背反の関係になる。
【0034】
そこで、ペレット化する際の圧縮強度を所定条件下とすることにより、できるだけ圧縮時の圧力を下げると共に、ペレット化した際の強度の低下を図るようにしている。以下、メタノール合成触媒のペレット化の具体例について説明する。
メタノール合成触媒の最終的な使用形態はペレット状態とするので、触媒原料の触媒用粉体に対して打錠成型機を用いて圧力をかけることにより、押し固めることでペレット化している。
ここで、本実施の形態ではペレット化の際には、「単式打錠成型装置『FYSS7−S』(商品名、富士薬品機械(株)製)を用いた。
【0035】
本発明に係るCu−Zn系の触媒粉末は、比較的柔らかいため、成型時に所定量以上の圧力を加えると、メソ孔が一部閉塞した状態になる。
そこで、メソ孔の一部閉塞状態を抑制するには、できるだけ成型時の圧力を下げることが好ましいこととなるが、単に圧力だけを下げると、ペレットの強度が低下することとなる。
このため、本発明においては、図1において、ペレット触媒11を成型する際に、触媒粉末12の粒子同士が癒着しやすくなるように増粘剤(図示せず)を用いて粉末の粘性を高めることにより、成型時の圧力を下げても強度が下がらないようにしている。これは、粉末の粘性が高まると触媒粉末の粒子径が大きくなる傾向にあるからである。
【0036】
ここで、本発明で用いる増粘剤としては、有機系増粘剤と無機系増粘剤とを組み合わせた複合増粘剤を用いるようにしている。
また、有機系増粘剤としては、例えばPVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルピロリドン)、グリセリン、ジブチルヒドロキシトルエン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルアルコール及びメチルセルロース等を例示することができる。また、無機系増粘剤としては、例えばシリカゾル(Si:10重量%)、アルミナゾル(Al:10重量%)、ジルコニアゾル(Zr:10重量%)、水酸化アルミニウムゲル、二酸化珪素粉末及び水ガラス等を例示することができる。
【0037】
このように、有機系増粘剤と無機系増粘剤との組み合わせとすることにより、好適な範囲の細孔径(12〜25nm)を有すると共に、圧壊強度が所定以上のものとなる。
有機系増粘剤と無機系増粘剤との組み合わせとするのは、有機系増粘剤のみであると強度が不足し好ましくなく、一方、無機系増粘剤のみとすると細孔径が大きくならないからである。
【0038】
ここで、前記増粘剤の配合は、触媒100部に対して0.01〜3部添加してなることが好ましい。これは、前記範囲外であると好適な範囲の細孔径(12〜25nm)とならず、しかも圧壊強度が所定以下となるからである。
【0039】
このように、本発明においては、触媒の構造を工夫することにより、反応速度の向上を図るようにしている。
この結果、後述する試験例に示すように、従来の触媒に較べて、反応速度を2割向上させることができた。
【0040】
本発明に係るメタノール合成触媒の製造方法の工程図を図4に示す。図4に示すように、触媒粉末12に、有機系及び無機系増粘剤21と水22を添加して混練する混練工程(S11)と、触媒混練物をペレット状に圧縮成型してペレット化する打錠成型工程(S12)とを有するものである。
これにより、好適な範囲の細孔径(12〜25nm)を有すると共に、圧壊強度が所定以上のものとなるペレット触媒11を得ることができる。
【0041】
ここで、圧縮成型条件としては、触媒の粒径及び増粘剤との組み合わせにより、左右されるが、例えば40〜1500kg/cm2Gとし、加圧時間を0.1〜5秒程度とするのが好ましい。
【0042】
また、増粘剤添加後の触媒粉末の粒径は、10〜500μm程度とするのが好ましい。
【0043】
また、後述する試験例に示すように、かさ密度が、従来のもの(かさ密度:1.8g/cc)よりも低いものとなる。このようにかさ密度が低いものとなると、触媒原料を少なくすることも可能となり、好ましい。
【0044】
また、本発明に係るメタノール合成触媒における細孔容積としては、0.15〜0.65cc/gであることが好ましい。
【0045】
また、本発明に係るペレットの見かけ比重が、0.8〜1.9kg/Lであることが好ましい。
【0046】
本発明に係るメタノール合成触媒を用いて、原料ガスからメタノールを合成することでメタノール合成の反応速度を向上させることができる。
【0047】
特に、二酸化炭素濃度が高い(例えばCO2濃度が5%以上)ガスを用いた場合であってもメタノール反応活性が高いので、効率的なメタノール合成をできることとなる。
この結果、例えば石炭焚きボイラにより発電する発電プラントからの排出ガス中において、二酸化炭素が高い場合であってもこれをそのまま用いてメタノールの合成効率が向上するので、二酸化炭素の固定化の促進を図ることができる。
【0048】
[試験例]
以下、本発明の効果を示す試験例について説明するが、本発明はこれらの試験例に限定されるものではない。
【0049】
<メタノール合成触媒粉末の調製>
先ず、炭酸ナトリウム2.5mol%を水2リットルに溶解し、60℃で保温する。このアルカリ水溶液を水溶液Aとする。
次に、硝酸マグネシウム0.003mol及び硝酸ガリウム0.0012molを水300ccに溶解し、60℃に保温する。この酸性溶液を溶液Bとする。
また硝酸アルミニウム0.0015mol及び硝酸亜鉛0.15molを水400ccに溶解し、60℃に保温する。この酸性溶液を溶液Cとする。
さらに、硝酸銅0.3molを水400ccに溶解し、60℃で保温する。この酸性溶液を溶液Dとする。
攪拌しながら溶液Aに溶液Bを30分にわたり均一に滴下し、沈殿生成液Eを得る。
次に溶液Cを前記沈殿生成液Eに30分にわたり均一に滴下し、沈殿生成液Fを得る。
さらに溶液Dを沈殿生成液Fに30分にわたり均一に滴下し、バリウム、ガリウム、アルミニウム、亜鉛及び銅を含有した沈殿生成液Gを得る。
得られた沈殿生成液Gを2時間そのまま攪拌することにより熟成を行う。その後沈殿生成液Gのろ過及びNaイオン、NOイオンが検出されないよう洗浄する。
さらに、100℃で24時間乾燥し、その後300℃で、3時間焼成することによりメタノール合成触媒を得た。
この得られた触媒粉末を触媒粉末Xとする。
【0050】
<成型方法>
粒子径がおよそ30μmの触媒粉末Xを1kg用いて、これに6.5gのPVA(ポリビニルアルコール)及び3.5gのシリカゾル(Si分10重量%)を加え、ニーダーで混錬する。
混錬中に粉末の粒径が大きくなるが、粒径が300μm程度になった時点で、混錬を停止する。
その後、混錬した触媒粉末を「単式打錠成型装置『FYSS7−S』(商品名、富士薬品機械(株)製)にセットし、圧力200kg/cm2、加圧時間0.1秒の条件で打錠成型を実施して触媒1を得た。
また、同様にして触媒1を用いて、表2及び3に示す種々の増粘剤を用いて触媒2〜11を得た。表4に用いた増粘剤の種類と量及び打錠成型を実施した条件を示す。
ここで、市販触媒としては、同一形状Cu/Zn系触媒として、ズードケミー社製の「MDC−3(商品名)」を用いた。
また、比較1として増粘剤を一切用いないもの、比較2として有機系増粘剤のみ、比較3として無機系増粘剤のみを用いて比較触媒1〜3を得た。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
触媒1〜11、比較1〜3及び市販触媒についての「かさ密度(見かけ比重)」及び圧壊強度の比較結果を表5に示す。なお、圧壊強度は、ペレットの縦、横(円周)方向について、それぞれ10個を実施しその平均値とした。
【0055】
【表5】

【0056】
表5の圧壊強度の結果より、本発明に係る触媒1〜11は比較触媒1〜3および市販触媒と比較してほぼ同程度かそれ以上の強度を有している。
【0057】
また、触媒1の試験品1と比較1の比較品1の細孔分布を計測して、その結果を図2に示す。
【0058】
図2の横軸は細孔径の対数、縦軸は細孔ボリュームを示している。
試験品1は比較品1より細孔径のピーク位置が右になっており、全体的なピークも試験品1の方が大きく、細孔容積が大きいことが判明した。
また、表4の触媒についても同様に細孔分布を測定し、これらから平均細孔径及び細孔容積を算出した結果を表6に示す。
【0059】
【表6】

【0060】
表6の結果より、本発明に係る触媒1〜11は比較触媒1〜3および市販1と比較して、大きな細孔径及び細孔容積を有していることが判明した。
また、試験品1(触媒1)と比較品1(比較触媒1)で示される平均細孔径の比は152/117≒1.3であり、体積はこの2乗と概算すると、1.32≒1.7となり、同じ細孔数であれば1.7倍の細孔容積を有することになるが、細孔容積は0.27/0.15で1.8倍であり、ほぼ同じ細孔数を有していることも確認できた。
【0061】
<メタノール合成活性評価結果>
試験品1(触媒1)と比較品1(比較触媒1)につき、メタノール合成活性を評価した。
充填方法及び活性評価条件を表7に示す。
【0062】
【表7】

【0063】
表7での試験条件におけるメタノール合成活性を図3に示す。
図3の結果より、試験品1(触媒1)の活性は、比較品1(比較触媒1)と比較して、高性能であることが判明した。
なお、図3では反応速度を用いたシミュレーション線を記載しているが、反応速度定数に乗じる活性比の比較では比較品1の活性を1とした場合、試験品1は約1.2倍程度である。
【0064】
この結果より、二酸化炭素濃度が高い(例えばCO2濃度が7.5%)ガスを用いてもメタノール反応活性が高いメタノール合成触媒を得ることができることが確認され、メタノール合成効率の向上に寄与することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明に係るメタノール合成触媒は、二酸化炭素濃度が高いガスを用いてもメタノール反応活性が高いものとなり、例えば発電所からの排出ガス中を用いてメタノール合成する際に用いて適している。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】触媒のイメージモデル図である。
【図2】試験品1と比較品1の細孔分布を計測した結果図である。
【図3】メタノール合成活性を示す図である。
【図4】メタノール合成触媒の製造方法の工程図である。
【符号の説明】
【0067】
11 ペレット触媒
12 触媒粉末
13 ミクロ孔又はメソ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu/Zn系触媒に増粘剤を添加し、圧縮成型してペレット化してなるメタノール合成触媒であって、
平均細孔径が、12〜25nmであることを特徴とするメタノール合成触媒。
【請求項2】
請求項1において、
細孔容積が、0.15〜0.65cc/gであることを特徴とするメタノール合成触媒。
【請求項3】
請求項1又は2において、
ペレットの見かけ比重が、0.8〜1.9kg/Lであることを特徴とするメタノール合成触媒。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記増粘剤が、有機系増粘剤及び無機系増粘剤であることを特徴とするメタノール合成触媒。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記増粘剤を触媒100部に対して0.01〜3部添加してなることを特徴とするメタノール合成触媒。
【請求項6】
触媒粉末に、増粘剤と水を添加して混練する混練工程と、
触媒混練物をペレット状に圧縮成型してペレット化する打錠成型工程とを有することを特徴とするメタノール合成触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一つのメタノール合成触媒を用いて、
原料ガスからメタノールを合成することを特徴とするメタノール合成方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記原料ガス中のCO2濃度が、5%以上であることを特徴とするメタノール合成方法。
【請求項9】
原料ガスを供給する原料ガス供給部と、
請求項1乃至5のいずれか一つのメタノール合成触媒を充填した触媒部とを具備してなり、メタノールを合成することを特徴とするメタノール合成装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記原料ガス中のCO2濃度が、5%以上であることを特徴とするメタノール合成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−148674(P2009−148674A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327680(P2007−327680)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】