説明

メタノール/水−混合物の蒸留による後処理法並びにアルカリ金属メチラートの製造法

本発明は、メタノール/水−混合物の蒸留による後処理法に関し、その際、メタノール/水−混合物を蒸留塔(1)に添加し、本質的にメタノールを含有する蒸気流を、蒸留塔(1)の頂部から取り出し、かつ本質的に水を含有する塔底流を、蒸留塔(1)の下部から取り出し、本質的にメタノールを含有する蒸気流の少なくとも一部を凝縮し、かつ凝縮された蒸気流を加熱蒸気として、分離されるべきメタノール/水−混合物の少なくとも一部が蒸発される蒸発器(11)に添加する。更に本発明は、反応塔(31)内でのアルカリ金属メチラートの製造法に関し、その際、反応蒸留塔(31)にメタノール及びアルカリ液を添加し、反応塔(31)の下端で、メタノールに溶解したアルカリ金属メチラートを取り出し、かつ反応塔(31)の上端で、メタノール/水−混合物を取り出し、かつメタノール/水−混合物を前記蒸留による後処理法によって後処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、メタノール/水−混合物の蒸留による後処理法に関する。更に本発明は、反応塔内でのアルカリ金属メタノラートの製造法に関し、その際、反応塔にメタノール及びアルカリ液を添加し、反応塔の下端で、メタノールに溶解したアルカリ金属メタノラートを取り出し、かつ反応塔の上端で、メタノール/水−混合物を取り出す。メタノール/水−混合物は、上記の蒸留による後処理法によって後処理する。
【0002】
例えば、メタノール及び水を含有する混合物は、場合によってはメタノールが混ぜられたアルカリ水溶液とメタノールとからのアルカリ金属メチラートの製造に際して生じる。アルカリ金属メチラートのかかる製造法は、例えばEP−A1242345に記載されている。この際、反応は反応塔内で実施され、該反応塔には、頂部で、場合によってはメタノールが混ぜられたアルカリ水溶液流が送り込まれ、かつ下部領域には蒸気状のメタノールが送り込まれる。反応塔の塔頂部で、水を含有するメタノール流が排出される。これは精留塔内で後処理される。メタノール及び水を含有する流は、後処理が行われる蒸留塔に、好ましくは蒸気状で供給される。蒸留塔内では、メタノール/水−混合物が、塔の頂部で抜き出される本質的にメタノールを含有する流と、塔の下部で抜き出される本質的に水を含有する流とに分離される。蒸留のために必要なエネルギーを供給するために、塔の下部で抜き出された本質的に水を含有する流の少なくとも一部が蒸発器中で蒸発される。このために蒸発器は、通常は加熱蒸気で加熱される。しかしながら、これは、プロセスに外部から大量のエネルギーを供給しなければならないという欠点を有する。そのため、殊に加熱蒸気による加熱に際しては、先ず加熱蒸気を発生させる必要がある。蒸留塔の頂部で取得されたメタノールは、部分的に凝縮器中で凝縮され、かつ塔内に返送され、残りの部分は、フィードとして反応塔内に導通される。
【0003】
アルカリ金属メチラートの更なる製造法は、EP−A1997794から公知である。この方法の場合も、反応塔内で生じるメタノール/水−混合物は蒸留塔に供給され、該蒸留塔内で、該混合物は、本質的にメタノールを含有する塔頂流と、本質的に水を含有する塔底流とに分離される。加熱は、同様に塔の底部で、通常の方法で加熱された蒸発器を介して行われる。
【0004】
本発明の課題は、公知の方法と比べて減少した需要量の、供給されるべき加熱蒸気で運転することができる、メタノール/水−混合物の調製法を提供することである。
【0005】
該課題は、以下の工程:
(a)蒸留塔にメタノール/水−混合物を添加する工程、
(b)蒸留塔の頂部で、本質的にメタノールを含有する蒸気流を取り出し、かつ塔の下部で、本質的に水を含有する塔底流を取り出す工程、
(c)本質的にメタノールを含有する蒸気流の少なくとも一部を圧縮する工程、
(d)圧縮された蒸気流を加熱蒸気として蒸発器に添加し、該蒸発器中で、分離されるべきメタノール/水−混合物の少なくとも一部を蒸発させる工程
を包含する、メタノール/水−混合物の蒸留による後処理法によって解決される。
【0006】
本質的にメタノールを含有する蒸気流の少なくとも一部を圧縮し、かつ該圧縮された蒸気流を加熱蒸気として、分離されるべきメタノール/水−混合物の少なくとも一部が蒸発される蒸発器に添加することによって、蒸留塔の運転のために必要とされる加熱蒸気の量を著しく減らすことができるか又は場合によってはそれどころか完全に節約することができる。エネルギーのみが、蒸気流を圧縮する圧縮機の運転のために供給されなければならない。蒸気流の少なくとも一部は、蒸発のためのエネルギーを解放し、かつ全ての蒸気流がプロセスから取り除かれはしないので、これによって同時に、外部から供給されるべきエネルギー量も減らされる。
【0007】
本発明の範囲内で、"本質的にメタノールを含有する"とは、メタノール割合が、少なくとも99質量%、有利には少なくとも99.9質量%、殊に少なくとも99.99質量%であることを意味する。
【0008】
"本質的に水を含有する"とは、物質流中での水の割合が、少なくとも95質量%、有利には少なくとも99質量%、殊に99.99質量%であることを意味する。
【0009】
蒸留塔の頂部での蒸気流の取り出しは、本発明の範囲内では、蒸気流が塔頂流として又は側方排出流として蒸留塔内の内部構造物より上で取り出されることを意味する。本質的に水を含有する塔底流の塔の下部での取り出しは、通常は塔の下方のトレイで行われるが、取り出しは底部における側方抜出路を介して行うこともできる。
【0010】
蒸留塔として、当業者に公知のすべての任意の蒸留塔を使用してよい。通常使用される蒸留塔は、内部構造物を有する。適した内部構造物は、例えばトレイ、不規則充填物又は規則充填物である。トレイとして、通常はバブルキャップトレイ、シーブトレイ、バルブトレイ、トンネルキャップトレイ又はスリットトレイが使用される。不規則充填物は、一般的に不規則充填材である。不規則充填物として、通常はラシヒリング、ポールリング、バールサドル又はIntalox(R)が使用される。規則充填物は、例えばSulzer社の商品名Mellapack(R)で販売されている。上記の内部構造物の外に更に別の適した内部構造物は、当業者に公知であり、かつ同様に用いられることができる。
【0011】
有利な内部構造物は、理論段当たりにつき低い比圧力損失を有する。規則充填物及び不規則充填物は、例えば、トレイより理論段当たりでの明らかに小さい圧力損失を有する。これは、蒸留塔内の圧力損失が可能な限り低く保たれ、それにより圧縮機の機械的出力と、蒸発されるべきメタノール/水−混合物の温度が低く保たれるという利点を有する。
【0012】
塔内に規則充填物又は不規則充填物が含まれている場合、これらは区分されていてもよく、又は充填物が絶え間なく存在していてもよい。しかしながら、通常は少なくとも2つの充填物が準備されており、1つは、メタノール/水−混合物の供給箇所より上に、もつ1つは、メタノール/水−混合物の供給箇所より下に準備されている。非構造化充填物、例えば不規則充填物が使用される場合、該充填体は、通常、適したシーブトレイ又はグリッドトレイ上に載置されている。
【0013】
有利な実施形態において、本質的にメタノールを含有する蒸気流の圧縮された部分で加熱される蒸発器は中間蒸発器である。これは、蒸発器が蒸留塔の底部より上に配置されていることを意味する。これが持つ利点とは、蒸留塔から取り出され、かつ蒸発器に導かれる、蒸発されるべきメタノール/水−混合物の温度が、塔の底部で取り出された、本質的に水を含有する塔底流より低い蒸発温度を有することである。中間蒸発器中でのメタノール/水−混合物の蒸発のために、それゆえ蒸気流はあまり強く圧縮される必要がなく、このことから圧縮に必要とされるエネルギー供給は、より僅かとなる。
【0014】
しかしながら、圧縮された蒸気流で中間蒸発器を加熱することの外に、蒸留塔の塔底流の少なくとも一部を加熱する蒸発器を加熱することも可能である。これには、しかしながら、蒸気流のより強い圧縮と、ひいては該蒸気流の圧縮のために必要なより大きなエネルギー量が必要になる。
【0015】
それゆえ有利には、圧縮された蒸気流が加熱蒸気として加えられる蒸発器は、中間蒸発器である。
【0016】
蒸発器は、通常は蒸留塔の外側に配置されている。塔からの抜出部により、蒸発器中で蒸発されるべきメタノール/水−混合物が抜き出され、かつ蒸発器に供給される。供給路を介して、蒸発された混合物は、場合によっては液体の残分と一緒に再び蒸留塔内に返送される。蒸発器が中間蒸発器である場合、メタノール/水−混合物を抜き出し、かつ蒸発器に供給することを担う抜出路は側方抜出路であり、かつ蒸発されたメタノール/水−混合物が塔に再び供給することを担う供給路は側方供給路である。蒸発器が塔底部を加熱する場合、塔底排出流の少なくとも一部が蒸発器に供給され、蒸発器中で蒸発され、かつ塔底領域で再び塔内に返送される。しかしながら、代替的に、例えば、中間蒸発器が使用される場合には適したトレイ上に、又は塔の底部で、圧縮された蒸気流が貫流する管を形成することも可能である。この場合、蒸発はトレイ上もしくは塔の底部で行われる。しかしながら、蒸発器を塔の外側に配置することが好ましい。
【0017】
圧縮された蒸気流で加熱することができる適した蒸発器は、例えば、自然循環式蒸発器、強制循環式蒸発器、強制循環式フラッシュ蒸発器、蒸気ボイラ、流下膜式蒸発器又は薄膜蒸発器である。蒸発器用の伝熱体として、自然循環式蒸発器及び強制循環式蒸発器の場合、通常、管束又はプレート器具が使用される。管束伝熱体が使用される場合、圧縮された蒸気流が管を流れ、かつ蒸発されるべきメタノール/水−混合物が管の周囲を流れるか、又は一方で、圧縮された蒸気流が管の周囲を流れ、かつ蒸発されるべきメタノール/水−混合物が貫流するかのいずれかであってよい。流下膜式蒸発器の場合、蒸発されるべきメタノール/水−混合物は、通常、薄膜として管の内側に加えられ、かつ該管は外側から加熱される。流下膜式蒸発器とは異なり、薄膜蒸発器中には付加的にワイパーを有するローターが備え付けられており、これは蒸発されるべき液体を管の内壁で薄膜に分散させる。
【0018】
しかし、上記の外に、蒸留塔での使用に適している、当業者に公知の他の任意の各々の蒸発器構造も用いることができる。
【0019】
加熱蒸気としての圧縮された蒸気流で運転される蒸発器が中間蒸発器である場合、該中間蒸発器が、蒸留塔の回収部に又はメタノール/水−混合物の供給箇所の領域に配置されている場合に有利である。中間蒸発器が、蒸留塔の回収部又はメタノール/水−混合物の供給箇所の領域に配置されることによって、加熱エネルギーの主要分が中間蒸発器によって導入されることができる。そのため、例えば、エネルギーの80%より多くを中間蒸発器により導入することが可能である。本発明により、中間蒸発器は、好ましくは、該中間蒸発器により、蒸留に必要とされる全エネルギーの50%より多くが、殊に75%より多くが導入されるように配置及び/又は形成される。
【0020】
中間蒸発器が使用される場合、蒸留塔が中間蒸発器より下に1〜50段の理論段を有し、中間蒸発器より上に1〜200段の理論段を有するように中間蒸発器が配置されている場合に殊に好ましい。殊に、蒸留塔が中間蒸発器より下に2〜10段の理論段を有し、かつ中間蒸発器より上に20〜50段の理論段を有する場合に有利である。
【0021】
メタノール/水−混合物を中間蒸発器に供給する側方排出流、及び、蒸発されたメタノール/水−混合物を蒸発器から再び蒸留塔に供給する側方供給流は、蒸留塔の同一トレイの間に位置決めされていてよい。しかしながら、側方排出部及び側方供給部とは異なる高さにあることも可能である。
【0022】
有利な実施形態では、中間蒸発器が使用される場合、中間蒸発器より上の蒸留塔の直径は、中間蒸発器より下の蒸留塔の直径より大きい。これが持つ利点とは、資本費を節約できるということである。
【0023】
工程(c)での蒸気流の圧縮は、当業者に公知の任意の方法で行ってよい。そのため、例えば、圧縮は単段式又は多段式に実施してよい。多段圧縮の場合、同一構造の複数の圧縮機又は異なる構造の圧縮機を使用してよい。
【0024】
単段圧縮又は多段圧縮を用いることは、蒸気流がどの圧力で圧縮されるべきかに依存する。圧縮された蒸気流が中間蒸発器を加熱するために用いられる場合、圧縮機により克服されるべき圧力差は、蒸留塔の底部で圧縮機を加熱するために蒸気流が使用される場合より小さい。より大きな克服されるべき圧力差は、付加的な圧縮機段によって又はより強力な圧縮機によって克服することができる。通常は、しかしながら、付加的な圧縮機段が使用される。
【0025】
蒸気流を圧縮するための圧縮機として、ガス流を圧縮させる、当業者に公知の任意の各々の圧縮機も適している。適した蒸発器は、例えば、単段タービン又は多段タービン、ピストン圧縮機、スクリュー圧縮機、遠心圧縮機又は軸流圧縮機である。
【0026】
多段圧縮の場合、そのつど克服されるべき圧力域に適した圧縮機が使用される。
【0027】
圧縮された蒸気流で運転される蒸発器に加えて、好ましくは、蒸留塔の底部に配置される、従来通り加熱される更なる蒸発器が使用される。蒸気流で加熱される蒸発器も同様に塔の底部で配置されている場合、従来通り加熱される蒸発器は、例えば、蒸留塔の運転中に付加的に熱を供給することに利用されることができる。しかしながら、一般的に、従来通り加熱される蒸発器は、塔の運転を開始することに利用される。塔の運転開始に際しては、蒸発器を加熱することができる蒸気がまだ十分には得られないので、先ず外側から熱を供給しなければならない。蒸留塔の運転開始後、塔の頂部で取り出すことができる蒸気の量は増え、そして運転を、圧縮された蒸気流で加熱される蒸発器に切り替えることができる。この際、一方では、蒸気流で加熱される蒸発器を、ゆっくりと運転に持ち込み、そして従来通り加熱される蒸発器は、その分だけより少なく加熱するか、又は蒸留塔内での定常運転状態が確立されるまでスタンバイさせ、次いで、従来通り加熱される蒸発器から、圧縮された蒸気流で加熱される蒸発器へと切り替えることが可能である。
【0028】
圧縮された蒸気流で中間蒸発器が加熱される場合、従来通り加熱される付加的な蒸発器が、更なる塔の底部で熱を蒸留塔に導入するために利用される。この場合、従来通り加熱される蒸発器は、蒸留塔の運転時間の全てにわたって運転される。ここでも、塔の運転を開始するために、中間蒸発器に十分な量の蒸気流が該蒸発器を加熱するのに供給されることができるまで、先ず、従来通り加熱される蒸発器を介して、より大きな熱量が蒸留塔に導入されなければならない。その時に、従来通り加熱される蒸発器により蒸留塔に導入される熱量を減らすことができる。代替的に、中間蒸発器が使用される場合、従来通り加熱される2つの蒸発器を塔の底部で使用することも可能である。付加的な従来通り加熱される蒸発器は、その時、塔の運転開始のために利用され、他の従来通り加熱される蒸発器は、塔の運転中に引き続き運転される。
【0029】
蒸留塔内で分離されるべきメタノール/水−混合物は、液状又はガス状で供給することができる。しかしながら、有利には、メタノール/水−混合物はガス状で供給される。メタノール/水−混合物の添加は、好ましくは側方供給部を介して行われる。
【0030】
蒸留塔内で分離されるべきメタノール/水−混合物がアルカリ金属メチラートの製造に由来する場合、該メタノール/水−混合物は、好ましくはガス状で蒸留塔に添加される。
【0031】
蒸留塔を運転するのに用いられる圧力は、好ましくは0.2〜10バールの範囲に、殊に0.5〜3バールの範囲にある。
【0032】
本発明の実施形態では、本質的にメタノールを含有する蒸気流の一部が凝縮され、かつ蒸留塔に返送される。凝縮され、かつ蒸留塔に返送された蒸気流の部分は、その際、一方では、蒸発器を加熱するのに用いられる圧縮された蒸気流から取り出されるか、又は代替的に、圧縮されていない余分な部分から取り出される。蒸発器を運転するのに用いられる蒸気流の一部が凝縮され、かつ蒸留塔内に返送される場合、蒸留塔内に返送された部分は、好ましくは、蒸留塔への添加前に、該蒸留塔の運転圧力に放圧される。凝縮された蒸気流を塔の頂部に返送することによって、メタノールの濃度が高められ、そしてメタノールの改善された分離と、蒸気流中での該メタノールのより高い純度が達成される。
【0033】
本質的にメタノールを含有する蒸気流の一部が凝縮され、かつ蒸留塔内に返送される場合、還流比は、好ましくは少なくとも0.4、殊に0.8〜1.4である。
【0034】
不活性ガスが蓄積されることを回避するために、蒸気圧縮機に液体分離装置を後接続することが好ましい。液体分離装置中で分離されたガスは、それから部分流の形で又は完全にプロセスから排出することができ、それによって、含まれる不活性ガスも除去される。
【0035】
メタノール/水−混合物の蒸留による後処理法が、アルカリ金属メチラートの製造法で用いられる場合、メタノール/水−混合物は、通常、アルカリ金属メチラートを製造する反応塔から塔頂流として取り出される。塔頂流として取り出されたメタノール/水−混合物は、それから蒸留塔に直接供給されることができる。しかしながら、代替的に、塔頂流として取り出されたメタノール/水−混合物を圧縮し、それから蒸留塔に供給する蒸気圧縮機を使用することも可能である。メタノール/水−混合物の圧縮によって、蒸留のために必要とされる蒸留塔のエネルギー需要量が更に減少される。
【0036】
メタノール/水−混合物の蒸留による後処理法と並んで、本発明は、反応塔でのアルカリ金属メチラートの製造法にも関し、その際、該反応塔にメタノール及びアルカリ液が添加される。反応塔の下端では、メタノール中に溶解されたアルカリ金属メタノラートが取り出される。反応塔の上端では、メタノール/水−混合物が取り出され、該混合物は、次いでメタノール/水−混合物の上記の後処理法に従って蒸留により後処理される。
【0037】
アルカリ金属メチラートの製造に使用されるメタノールは、本発明による方法の態様では、99.8%を上回るメタノール割合及び0.1%までの水の割合を有する市販のメタノールであってもよい。メタノールは、蒸留塔の濃縮部に又は頂部で直接供給してよい。最適な供給箇所は、使用されるメタノールの含水率と、他方では留出物中の所望の残留含水率に依存する。使用されるメタノール中の水割合が高ければ高いほど、そして留出物に要求される純度が高ければ高いほど、それだけ一層、供給路は蒸留塔の頂部より下のいくつかの理論段であることが好ましい。有利なのは、蒸留塔の頂部の下に20段までの理論段、殊に1〜5段の理論段があることである。
【0038】
アルカリ金属メチラートを製造する反応塔は、好ましくは少なくとも2段、殊に15〜40段の理論段を、アルカリ液の供給箇所とメタノールの供給箇所との間に包含する。
【0039】
一般的に、反応塔は内部構造物を含有する。適した内部構造物は、例えば、トレイ、規則充填物又は乱雑充填物である。反応塔がトレイを含有する場合、バブルキャップトレイ、バルブトレイ又はシーブトレイが適している。反応塔がトレイを含有する場合、好ましくは、液体の最大5%、有利には1%未満が、そのつどのトレイを漏れ落ちるようなトレイが選択される。液体が漏れ落ちることを最小にするために必要な構造的措置は、当業者に一般に知られている。バルブトレイの場合、例えば、特に不浸透性に閉じられるバルブ構造が選択される。バルブの数を減らすことによって、そのうえ、トレイ開口部を通る蒸気速度は、一般に調整される倍の値にまで高められることができる。シーブトレイが使用される場合、トレイ開口部の直径を小さくし、かつ該開口部の数を変えないか又はその数をもっと増やすことが特に好都合である。
【0040】
規則充填物又は不規則充填物が使用される場合、液体を均一に分配させることに鑑みて規則充填物が有利である。そのうえ、この実施形態の場合、全体の塔断面の2%を超える分に相当する塔断面の全ての部分において、蒸気流に対する液体流の平均値比は液体に関して15%を上回って超過してはならず、有利には3%を上回って超過してはならない。これらの低く保たれた液体量により、ワイヤメッシュ部での毛細管効果が液体細流密度(Fluessigkeitsberieselungsdichte)の局所ピーク値を生じさせないことを可能にする。
【0041】
不規則充填物を有する、殊にランダム充填体を有する塔の場合と、規則充填物を有する塔の場合、液体分配の所望の特性は、全ての塔断面の約2〜5%に相当する、塔ジャケットに隣接した塔断面のエッジ領域で、液体細流密度が、残りの断面領域と比べて100%まで、有利には5〜15%減少することによって達成されることができる。これは、例えば、液体分配器の流滴箇所又はそれらの開口部を適切に分配することによって簡単な手段で達成されうる。
【0042】
アルカリ金属メチラートの製造は、連続的のみならず不連続的にも行うことができる。有利には、製造は連続的に行われる。連続的な方法の場合、アルカリ液は、通常は、場合によってはメタノールが混ぜられた水性の形態で、反応塔の頂部で供給される。反応塔は、その際、純粋なストリッピング塔として運転される。塔の下部領域では、蒸気状でメタノールが供給される。塔底抜出路を介して、規格に即したアルカリ金属メチラートが得られる。塔頂部から抜ける、なお水を含有するメタノール流(前出のメタノール/水−混合物)は、上記の通り、蒸留により後処理される。蒸留にて取得されたメタノールは、それから再び反応塔に供給される。
【0043】
使用されるメタノールの量は、これが同時に溶剤として、得られたアルカリ金属メチラートのために用いられるように選択される。好ましくは、メタノールの量は、反応塔の底部で、アルカリ金属メチラート溶液の所望の濃度が存在するように選択される。
【0044】
一般に使用されるアルカリ液は、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液である。
【0045】
反応塔は、好ましくは還流なしに運転される。これは、蒸気状で取り出された全てのメタノール/水−混合物が蒸留塔に供給されることを意味する。メタノール/水−混合物は、その際、蒸留塔に、好ましくは蒸気状で供給される。
【0046】
メタノールの一部が反応塔の上端で又は上端の領域で蒸気状に添加される場合、反応塔の下部領域における寸法を縮めることができる。メタノールの一部が反応塔の上端に又は上端の領域で蒸気状に添加される場合、10〜70%、有利には30〜50%の部分量のみが反応塔の下端で供給され、そして残りの部分量は単独流の形で又は複数の部分流に分配されて、アルカリ液の供給箇所より、有利には1〜10段の理論段分下で、特に有利には1〜3段の理論段分下で蒸気状に添加される。
【0047】
1つ以上の中間蒸発器を反応塔の上部領域で配置することによって、反応塔の下部領域における寸法を縮めることができる。中間蒸発器を伴う実施形態の場合、メタノールの部分流を液体の形態で反応塔の上部領域で供給することも可能である。
【0048】
反応塔は、好ましくは、0.5〜40バールの範囲の圧力、有利には1〜5バールの範囲の圧力、特に有利には1〜3バールの範囲の圧力で運転される。なぜなら、より高い圧力の場合、より小さいヒータ出力と、より小さいメタノール量が実現されうるからである。
【0049】
アルカリ金属メチラートの製造の際に反応塔と蒸留塔とを結び付けることで、蒸留塔は、好ましくは、蒸気圧縮が行われる場合の塔の間の圧力勾配が、メタノール/水−混合物のために又は選択的に反応塔に供給されたメタノール流のために、あまり手間を掛けずに可能となるように選択される圧力で運転される。
【0050】
アルカリ金属メチラート溶液の反応及び希釈のために必要とされるメタノールは、沸点に至るまでの温度にて、有利には室温にて、蒸留塔の頂部で添加される。この場合、付加的なメタノール用に独自の供給口が準備されていてよいが、又は蒸留塔の頂部で取り出されたメタノールの一部が返送される場合には、凝縮後にこれと混合し、そして一緒に塔内に供給してもよい。この場合、新しいメタノールが、蒸気流から凝縮されたメタノールを集める凝縮液容器に添加される場合、特に有利である。
【0051】
本発明の好ましい実施態様において、反応塔及びメタノール/水−混合物を後処理するための蒸留塔は、塔ジャケット内に収容されており、その際、塔の下部領域は隔壁によって区分されている。この場合、塔の一部において、アルカリ金属メチラートを得るための反応が実施され、その際、アルカリ液は、ほぼ隔壁の上端の高さで添加され、かつメタノールは蒸気状に下端で導入される。アルカリ液の供給箇所より上で生じるメタノール/水−混合物は、それから隔壁より上で、蒸留塔の濃縮部として利用される塔領域全体にわたって分散する。隔壁によって分けられた塔の第2の下部は、蒸留塔のストリッピング部である。次いで、蒸留に必要とされるエネルギーは、蒸発器により、隔壁によって分けられた塔の第2の部分の下端に供給され、その際、この蒸発器は、通常の方法で加熱されることができるか又は圧縮された蒸気流で加熱されることができる。蒸発器が通常の方法で加熱される場合、付加的に中間蒸発器が準備され、該蒸発器は、圧縮された蒸気流で加熱される。
【0052】
隔壁より上の塔の上部で還流を行うことによって、分離されるべきメタノール/水−混合物の一部が、反応塔として用いられる隔壁塔の部分にも逆流する。しかしながら、反応塔として用いられる隔壁塔の部分の直接上でトレーを適切に形成することによって、反応塔に逆流するこの割合は最小にすることができる。
【0053】
本発明の実施形態は図面に示されており、以下の記載において詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】メタノール/水−混合物の本発明による蒸留による後処理法のプロセスフロー図
【図2】第1の実施形態におけるアルカリ金属メチラートの製造方法に関するプロセスフロー図
【図3】第2の実施形態におけるアルカリ金属メチラートの製造方法に関するプロセスフロー図
【図4】第3の実施形態におけるアルカリ金属メチラートの製造方法に関するプロセスフロー図
【0055】
図1には、メタノール/水−混合物の本発明による蒸留による後処理法のプロセスフロー図が示されている。
【0056】
蒸留塔1には、供給路3を介してメタノール/水−混合物が供給される。その際、蒸留塔1には、トレイ、不規則充填物、殊にランダム充填体、又は規則充填物が備え付けられていてよい。蒸留塔1が充填物を含有している場合、2つの充填物を準備することが有利であり、一方の充填物は供給路3より上に、もう一方の充填物は供給路3より下に準備される。そのつど1つより多い充填物が供給路3の上と、供給路3の下に準備されていてもよい。
【0057】
供給路3は、好ましくは側方供給路であり、好ましくは、供給路3の下方には1〜50段の理論段、殊に2〜10段の理論段が存在し、かつ供給路3より上には1〜200段の理論段、殊に20〜50段の理論段が存在するように配置されている。
【0058】
蒸留塔1では、メタノール/水−混合物は、本質的にメタノールを含有する蒸気流と、本質的に水を含有する塔底流とに分離される。本質的にメタノールを含有する蒸気流は、蒸気抜出路5を介して塔の頂部で取り出される。蒸気抜出路5は、ここで示される実施形態の通り、蒸留塔1の頂部で存在するが、しかしながら、蒸気抜出路5を、例えば蒸留塔1の側方抜出路として構成することも可能である。側方抜出路として蒸気抜出路5を構成することで、低沸点成分、例えばブタンといったアルカンを持っているメタノールの使用も可能になる。低沸点成分は、側方抜出路として形成された蒸気抜出路5の場合、僅かなメタノール損失の下、蒸留塔1の頂部で排出されることができる。しかしながら、蒸気抜出路5は、蒸留塔1の頂部で位置決めすることが有利である。液体を蒸気とともに蒸留塔1から搬出しないために、蒸気抜出路5の下に、付加的な内部構造物として蒸留塔1に含まれている液滴分離装置を準備することが有利である。液滴分離装置として、例えば、付加的な充填エレメント又は当業者に公知の市販の任意の液滴分離を使用してよい。
【0059】
塔底排出路7を介して、本質的に水を含有する塔底流が排出される。本質的に水を含有する塔底流の一部が、排出口9によりプロセスから取り出される。本質的に水を含有する塔底流の他の部分は、蒸発器11中で少なくとも部分的に蒸発され、かつ蒸留塔1に下端で供給路13を介して供給される。返送された流と排出路9を介して取り出された流の比率は、バルブ15により調整されることができる。
【0060】
本発明により、蒸発器11は、蒸気抜出路5を介して取り出された、本質的に水を含有する蒸気流により加熱される。このために、本質的にメタノールを含有する蒸気流が、蒸気圧縮機17中で圧縮される。本質的にメタノールを含有する蒸気流を蒸気圧縮機17中で圧縮する圧力は、その際、本質的に水を含有する塔底流13の蒸発に要する温度に依存する。その際、蒸気圧縮は、蒸気圧縮機17中で単段式に行うことができ、又は複数の連続して接続された蒸気圧縮器によって多段式に行うことができる。複数の圧縮機段を有する1つの装置中で多段圧縮を行うことも可能である。蒸発器11中で本質的に水を含有する塔底流を蒸発するための熱放出によって、蒸気流の少なくとも一部が凝縮される。絞り弁19内で、蒸気流は蒸留塔1の運転圧力へと放圧され、そして供給路21を介して蒸留塔1の頂部でこれに返送される。メタノール抜出路23を介して、本質的にメタノールを含有する蒸気流の一部がプロセスから取り出される。蒸留塔1に返送されたメタノールを含有する蒸気流と、メタノール抜出路23を介してプロセスから取り出された本質的にメタノールを含有する蒸気流とからの比率は、バルブ25を介して調整される。返送された蒸気流と、取り出された蒸気流とからの比率は、その際、蒸気流中のメタノールの所望の純度に依存する。
【0061】
図2は、第1の実施形態におけるアルカリ金属メチラートの製造方法に関するプロセスフロー図を示す。
【0062】
アルカリ金属メチラートの製造のために、反応塔31に供給路33を介して、場合によってはメタノール又はメタノール/水−混合物が混ぜられているアルカリ水溶液が供給される。アルカリ液に、別個の供給流の形でもメタノール又はメタノール/水−混合物を加えることができる。供給路33には伝熱体35が組み込まれており、アルカリ水溶液は、該伝熱体に、反応塔31に流れる前に通される。伝熱体35中で、アルカリ水溶液は供給箇所の温度に加熱される。場合によっては、アルカリ水溶液は伝熱体35で部分的に蒸発される。場合によってはメタノール又はメタノール/水−混合物が混ぜられているアルカリ水溶液を添加するための供給路33は、反応塔31の上端に位置決めされている。
【0063】
反応塔31の下端に位置決めされているメタノール供給路37を介して、蒸気状のメタノールが反応塔31に導入される。塔の下端でメタノール供給路37により供給することに加えて、更なる蒸気状のメタノールを反応塔の上端で1つ以上の更なるメタノール供給路39を介して供給することができる。更なるメタノール供給路39は、アルカリ水溶液用の供給路33より、好ましくは1〜10段の理論段分下に、殊に1〜3段の理論段分下にある。
【0064】
塔底排出路41を介して、反応塔31で製造されたアルカリ金属メチラートが取り出される。アルカリ金属メチラートの一部が、蒸発器43及び還流路45を介して反応塔31に返送されることで、塔底排出路41で取り出されたアルカリ金属メタノラート溶液の濃度が調節される。
【0065】
反応塔31の頂部では、蒸気抜出路47を介して蒸気状でメタノール/水−混合物が取り出される。
【0066】
後処理のために、反応塔31の頂部で取り出されたメタノール/水−混合物は、供給路3を介して蒸留塔1に供給される。蒸留塔1内では、メタノール/水−混合物が、本質的に水を含有する塔底流と、本質的にメタノールを含有する塔頂流とに分けられる。
【0067】
塔底排出路7を介して、本質的に水を含有する塔底流が蒸留塔1から取り出される。本質的に水を含有する塔底流の一部が、蒸発器49中で少なくとも部分的に蒸発され、そして蒸留塔1に供給路13を介して返送される。蒸留塔1に返送されなかった本質的に水を含有する塔底流の部分は、排出路9を介して取り出される。
【0068】
ここで示される実施形態において、本質的に水を含有する塔底流を少なくとも部分的に蒸発する蒸発器49は、通常の方法で加熱される蒸発器である。蒸発器49の加熱は、その際、好ましくは加熱蒸気を用いて行われる。しかし、蒸発器49を加熱する、当業者に公知のその他のすべての任意の方法も考えられる。
【0069】
本質的にメタノールを含有する蒸気流は、蒸気抜出路5を介して蒸留塔1の頂部で取り出される。蒸気抜出路5から、ライン51が分岐しており、該ライン51には蒸気圧縮機17が位置決めされている。蒸気圧縮機17中で、本質的にメタノールを含有する蒸気流が、蒸発器11を加熱するために圧縮される。ここで示される実施形態では、蒸発器11は、蒸留塔1で分離されるべきメタノール/水−混合物の一部を蒸発させる中間蒸発器である。このために、例えば、蒸留塔1の側方抜出路を介して、分離されるべきメタノール/水−混合物の一部が取り出され、蒸発器に導かれ、かつ蒸留塔に返送される。蒸発されるべきメタノール/水−混合物を導く抜出路及び供給路は、その際、同じ理論段の高さにあってよいが、又は蒸留塔1の異なる位置にあってもよい。供給路及び抜出路が異なる位置にある場合、蒸発器11にメタノール/水−混合物を送る抜出路が、蒸留塔に通じる供給路(該供給路によって、蒸発されたメタノール/水−混合物が蒸留塔1に返送される)より上にある場合に有利である。
【0070】
ここで示される、中間蒸発器として利用される蒸発器11は、好ましくは、蒸発器11より下に蒸留塔1の2〜10段の理論段があり、かつ該蒸発器より上に20〜50段の理論段があるように位置決めされている。
【0071】
蒸発器11中では、本質的にメタノールを含有する蒸気流が、蒸発されるべきメタノール/水−混合物への熱伝達によって冷却され、かつ場合によっては部分的に又はそれどころか完全に凝縮される。冷却された、場合によっては少なくとも部分的に凝縮されたメタノール流は、供給路21を介して少なくとも部分的に再び蒸留塔1に返送される。蒸発器11中で完全には凝縮されなかった本質的にメタノールを含有する蒸気流の部分は、ライン51の分岐点の後方の蒸気ライン53を介して、再び蒸気抜出路5に返送される。蒸気抜出路5は、それから凝縮器55に通じる。代替的に、蒸気ライン53が、付加的に蒸気抜出路5と、該抜出路5とは別に凝縮器55に通じていることも可能である。凝縮器55中では、本質的にメタノールを含有する蒸気流の一部が凝縮され、かつ蒸留塔1に通じる供給路21を介して返送される。その際、凝縮器55中で完全に凝縮された本質的にメタノールを含有する蒸気流の部分が、先ず、蒸発器11に端を発する供給路21に流れ、そして全ての凝縮されたメタノールが一緒に蒸留塔1に返送されることができ、しかし、又は蒸発器11に端を発する供給路21は、凝縮器55から生じるメタノール流とは関係なく蒸留塔1に通じる。凝縮器55中で凝縮されなかった本質的にメタノールを含有する蒸気流分は、メタノール供給路37及び場合によっては少なくとも1つの更なるメタノール供給路39を介して反応塔31に返送される。反応塔31内で消費されたメタノールは、メタノール供給路57を介して、蒸留塔1の頂部で添加される。メタノール供給路57を介した蒸留塔1の頂部でのメタノールの添加によって、蒸気抜出路5を介して抜き出された本質的にメタノールを含有する蒸気流の純度を更に高めることができる。このようにして、反応塔31にメタノールとともに導入される水の割合は更に減らされる。メタノール供給路57を介した塔の頂部でのメタノールの添加に加えて、メタノール供給路57を、蒸留塔1の頂部より10段の理論段数まで下に配置することも可能である。
【0072】
凝縮器55から出る蒸気の一部を排出することができる。これによって、例えば、プロセスに連行される不活性成分が排出されうる。不活性成分は、例えば、メタノール及び/又はアルカリ液に溶解したガスの形態でプロセスに入り込む。少量のバリアガスも、シール部を介してプロセスに入り込む可能性がある。不活性成分の排出のために、ここで示される実施形態では、凝縮器55の後ろにライン63が分岐しており、該ライン63を介して、凝縮されなかった蒸気流の一部が取り出される。更なる凝縮器65中では、蒸気流が更に冷却される。凝縮器65中の冷媒として、例えば水又は塩水が使用される。冷媒として有利なのは塩水である。塩水の使用によって、水を用いた場合より低い温度が得られるので、より大部分の蒸気を凝縮することができる。凝縮器65中で完全には凝縮されなかった、ガス状の不活性成分を含有する部分がプロセスから取り出され、例えば、更なる処理のために火炎又はオフガススクラバーに供給されることができる。凝縮された部分は、還流路67を介して蒸留塔に返送される。その際、還流路67は、ここで示されるように、供給路21と合流してよいが、しかし、蒸留塔1に通じる別個の供給路として形成されていてもよい。
【0073】
更なる凝縮器65が使用される場合、1つの実施形態では、凝縮器55を省くことができる。この場合、メタノールの所望の純度を得るのに必要な還流は、凝縮器65を介して実現される。凝縮器65は、単段式又は多段式に、好ましくは三段式に構成されていてよい。この場合、1つの段では空気を用いて、次の段では水を用いて、そして3つ目の段では塩水を用いて冷却される。
【0074】
更に、ここで図示されない実施形態においては、蒸発器11中で完全に凝縮された本質的にメタノールを含有する蒸気流分で、凝縮器55から抜き出された本質的にメタノールを含有する蒸気流を、これがメタノール供給路37、39を介して反応塔31に供給される前に更に加熱することも可能である。
【0075】
メタノール供給路37及び更なるメタノール供給路39を介して反応塔31に供給され、蒸留塔1の蒸気抜出路5を介して抜き出された蒸気流は、蒸気圧縮機59中で圧縮されることができる。しかしながら、蒸気状のメタノールは、蒸気圧縮機59を使用せずに反応塔31に供給することも可能である。
【0076】
図3には、第2の実施形態におけるアルカリ金属メチラートの製造方法に関するプロセスフロー図が示されている。
【0077】
図3に示される実施形態は、図2で示される実施形態とは、蒸気抜出路5を介して蒸留塔1の頂部から取り出され、かつ凝縮器55中で完全には凝縮されなかった蒸気状のメタノール分を圧縮する蒸気圧縮機59が含まれていないという点で相違する。
【0078】
しかしながら、図3で示される実施形態では、供給路3として蒸留塔1に通じる蒸留塔31からの蒸気抜出路47内に、更なる蒸気圧縮機61が位置決めされている。蒸気圧縮機61中では、蒸留塔31からの蒸気抜出路47を介して取り出されたメタノール/水−混合物に、付加的に蒸留のためにエネルギーが供給される。一方では、メタノール/水−混合物は、蒸留塔1が反応塔31より高い圧力で運転される場合に、蒸留塔1の圧力に圧縮されることができる。代替的に、メタノール/水−混合物を、蒸留塔1が運転される圧力より高い圧力に圧縮して、該メタノール/水−混合物が蒸留塔に流入するに際して急激に放圧することも可能である。
【0079】
図4には、第3の実施形態におけるアルカリ金属メチラートの製造方法に関するプロセスフロー図が示されている。図2で示される実施形態とは異なり、別個の反応塔31及び蒸留塔1は準備されておらず、塔は、共通の塔ジャケット内に隔壁塔71の形態で収納されている。
【0080】
隔壁塔71内で、下部領域は隔壁73によって、第1の部分領域75と第2の部分領域77とに分けられる。第1の部分領域75は反応塔として用いられ、かつ第2の部分領域は蒸留塔のストリッピング部として用いられる。
【0081】
第1の部分領域75の上端では、供給路33を介して伝熱体35中で加熱された、場合によってはメタノール又はメタノール/水−混合物が混ぜられているアルカリ水溶液が供給される。第1の部分領域75の下部領域中では、メタノール供給路37を介して蒸気状にメタノールが供給される。付加的に、図2にも同様に示されるように、更なるメタノール供給路39を介して蒸気状にメタノールが供給されることができる。
【0082】
第1の部分領域75の底部では、塔底排出路41を介して、生成物の、メタノール中のアルカリ金属メチラートが取り出される。塔底排出路41を介して取り出された流の一部が、蒸発器43及び還流路45を介して、隔壁塔71の第1の部分領域75に返送される。その際、還流路45は、好ましくはメタノール供給路37より下で隔壁塔71の第1の部分領域75に通じている。反応の際に生じるメタノール/水−混合物は、蒸気状で隔壁73の上端を超え、蒸留塔1の濃縮部として作用する隔壁塔の上部79に流れる。隔壁塔71の第2の部分領域77は、メタノール/水−混合物を蒸留するためのストリッピング部として用いられる。隔壁塔71の上部79にある蒸気抜出路5を介して、本質的にメタノールを含有する蒸気が蒸留から抜き出される。図2及び3で示されるように、本質的にメタノールを含有する蒸気流の部分流が、ライン51を介して蒸気圧縮機17に供給され、該圧縮機17中で、本質的にメタノールを含有する蒸気流が圧縮される。圧縮された蒸気流は、それから加熱蒸気として蒸発器11中で用いられる。蒸発器11は、ここで示される実施形態でも中間蒸発器として、蒸留塔として用いられる隔壁塔71の部分のストリッピング部中に配置されている。蒸留されるべきメタノール/水−混合物への熱伝達によって、本質的にメタノールを含有する蒸気流の一部が凝縮する。完全に凝縮された部分は、供給路21を介して上部79に、好ましくは隔壁塔71の頂部で返送される。同様に隔壁塔の頂部には、反応に際してアルカリ金属メチラートを得るために消費されたメタノールを取り替えるために、新しいメタノールを供給することができるメタノール供給路57が通じている。蒸発器11中で凝縮されなかった本質的にメタノールを含有する蒸気流分は、蒸気ライン53を介して凝縮器55に供給される。凝縮器55中では、蒸気ライン53に導かれた本質的にメタノールを含有する蒸気流分と、蒸気圧縮機17には導かれなかった本質的にメタノールを含有する蒸気流分とに部分的に凝縮される。凝縮分は、同様に隔壁塔71の頂部を介して隔壁塔71に返送される。凝縮されなかった部分は、蒸気圧縮機59と、反応塔として用いられる第1の部分領域75に通じるメタノール供給路37及び39とを介して、隔壁塔71に返送される。
【0083】
隔壁塔は、好ましくは、0.2〜10バールの範囲の圧力、殊に0.5〜3バールの範囲の圧力で運転される。
【0084】
第2の部分領域77の底部では、本質的に水を含有する塔底流が、塔底排出路7を介して取り出される。本質的に水を含有する塔底流の一部が、蒸発器49を介して少なくとも部分的に蒸発され、かつ第2の部分領域77に、好ましくは塔底部で返送される。第2の蒸発器49は、その際、通常の方法で、好ましくは加熱蒸気で加熱される。
【0085】
全ての実施形態における蒸気圧縮機として、例えば、単段ターボ圧縮機又は多段ターボ圧縮機又はスクリュー圧縮機を使用することができる。蒸気圧縮機17の技術的な詳細実施態様は、一般的に製造規定に従い、かつ該態様は当業者によく知られている。そのため例えば、蒸気圧縮機17に液滴分離装置を前接続することが可能である。
【0086】
蒸気圧縮機17中で圧縮された本質的にメタノールを含有する蒸気流により、中間蒸発器基として用いられる蒸発器11が加熱される場合、蒸発器11の面積の大きさは、好ましくは、温度差が50Kを上回らないように、殊に30Kを上回らないものにされる。低い温度差によって、蒸気圧縮機17の必要とされる駆動力を減らすことができる。蒸気圧縮機17中での本質的にメタノールを含有する蒸気流の圧縮は、好ましくは、1.5〜19倍の範囲で、殊に2〜4倍の範囲で行われる。その際、蒸気圧縮機17中での圧力上昇の正確な値は、蒸発器11の熱伝達面の大きさに従う。
【0087】
隔壁73は、ここで示されるように、塔断面を2つの循環帯に分けることができるが、しかしながら、代替的に、隔壁を同軸状に形成することも可能であり、その際、蒸留のストリッピング部が内側の領域に構成されており、かつ反応が隔壁を取り囲む環状部分において実施されるのが有利である。
【0088】
図4に示される実施形態でも、蒸発器11から取り出された凝縮された本質的にメタノールを含有する蒸気流分により、凝縮器55から取り出された本質的にメタノールを含有する蒸気流分を、適した伝熱体で更に加熱することが可能である。
【0089】
不活性成分の排出は、図3及び4に示される実施形態の場合、図2に示される実施形態と同じ方法で行うことができる。代替的に、不活性成分を排出するための凝縮器を、ライン53内で蒸気圧縮機11に続けて位置決めすることも可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 蒸留塔
3 供給路
5 蒸気抜出路
7 塔底排出路
9 排出路
11 蒸発器
13 供給路
15 バルブ
17 蒸気圧縮機
19 絞り弁
21 供給路
23 メタノール抜出路
25 バルブ
31 反応塔
33 供給路
35 伝熱体
37 メタノール供給路
39 更に別の供給路
41 塔底排出路
43 蒸発器
45 還流路
47 蒸気抜出路
49 蒸発器
51 ライン
53 蒸気ライン
55 凝縮器
57 メタノール供給路
59 蒸気圧縮機
61 更に別の蒸気圧縮機
63 ライン
65 凝縮器
67 還流路
71 隔壁塔
73 隔壁
75 第1の部分領域
77 第2の部分領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノール/水−混合物の蒸留による後処理法であって、以下の工程:
(a)蒸留塔(1)にメタノール/水−混合物を添加する工程、
(b)蒸留塔(1)の頂部で、本質的にメタノールを含有する蒸気流を取り出し、かつ蒸留塔(1)の下部で、本質的に水を含有する塔底流を取り出す工程、
(c)本質的にメタノールを含有する蒸気流の少なくとも一部を圧縮する工程、
(d)圧縮された蒸気流を加熱蒸気として蒸発器(11)に添加し、該蒸発器(11)中で、分離されるべきメタノール/水−混合物の少なくとも一部を蒸発させる工程
を包含する、メタノール/水−混合物の蒸留による後処理法。
【請求項2】
蒸発器(11)は中間蒸発器であることを特徴とする、請求項1項記載の方法。
【請求項3】
中間蒸発器(11)は、蒸留塔(1)のストリッピング部又はメタノール/水−混合物の供給箇所(3)の領域に配置されていることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
中間蒸発器(11)は、蒸留塔(1)が中間蒸発器(11)より下に1〜50段の理論段を有し、かつ中間蒸発器(11)より上に1〜200段の理論段を有するように配置されていることを特徴とする、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
中間蒸発器(11)より上の蒸留塔(1)の直径は、中間蒸発器(11)より下の蒸留塔(1)の直径より大きいことを特徴とする、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
蒸留塔(1)の底部に、通常の方法で加熱される更に別の蒸発器(49)が配置されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
メタノール/水−混合物を蒸留塔(1)にガス状で供給することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
蒸留塔(1)を、0.2〜10バールの範囲の圧力で運転することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
本質的にメタノールを含有する蒸気流の一部を凝縮し、そして蒸留塔(1)に返送することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
メタノール/水−混合物を、アルカリ金属メチラートを製造するための反応塔(31)から塔頂流として取り出すことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
反応塔(31)内でのアルカリ金属メチラートの製造法であって、その際、反応塔(31)にメタノール及びアルカリ液を添加し、反応塔(31)の下端で、メタノールに溶解したアルカリ金属メチラートを取り出し、かつ反応塔(31)の上端で、メタノール/水−混合物を取り出し、そしてメタノール/水−混合物を、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法によって後処理する、反応塔(31)内でのアルカリ金属メチラートの製造法。
【請求項12】
反応塔(31)及びメタノール/水−混合物を後処理するための蒸留塔(1)は、塔ジャケット内に収容されており、その際、塔(71)の下部領域は、隔壁(73)によって分けられていることを特徴とする、請求項11記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−518667(P2012−518667A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551461(P2011−551461)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051981
【国際公開番号】WO2010/097318
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】