説明

メタボリックシンドローム改善剤

【課題】安全性が高く、十分な効果を有する天然物由来のメタボリックシンドローム改善剤を提供する。
【解決手段】本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、メロン果肉の抽出物であって、85℃×20分間の熱処理に対して活性を維持する前記抽出物を有効成分として含有する。このメタボリックシンドローム改善剤は、熱処理加工物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタボリックシンドローム改善剤に関し、より詳細には、天然植物由来で安全性および効果の高いメタボリックシンドローム改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、「メタボ」とよく称される「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」は、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上の内臓脂肪型肥満の人であって、以下の症状:
(1)脂質異常症: 中性脂肪150mg/dl以上、および/または、HDLコレステロール40mg/dl未満、
(2)高血圧: 収縮期血圧130mmHg以上、および/または、拡張期血圧85mmHg以上、
(3)高血糖: 空腹時血糖110mg/dl以上
のうち、2つ以上に該当する者において強く疑われる。また、上記症状の1つに該当する者は、メタボ予備群と定義される。
【0003】
厚生労働省の統計によると、メタボリックシンドロームが強く疑われる人とその予備群とを合わせた割合は、男女とも40歳以上で高く、特に中高年男性で高くなっている。40〜74歳で見ると、メタボリックシンドロームが強く疑われる人は約940万人、メタボ予備群と考えられる人は約1,020万人で、あわせて約1,960万人と推計される。40〜74歳の男性の2人に1人、女性の5人に1人が、メタボリックシンドロームが強く疑われるかその予備群である。
【0004】
日本人では3つ以上の症状に該当する人は、1つも該当しない人の約36倍も心疾患を発症する危険度が高いというデータも存在する。したがって、体の非常事態をより早期に発見し、突然死を未然に防ぐ上で、メタボリックシンドロームは重要なカギといえる。
【0005】
脂質異常症には、中性脂肪とHDLコレステロールとが重要な管理ファクターとなる。血液中にはコレステロール(さらにHDLおよびLDLに分かれる)、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸が存在し、これらを併せて総コレステロールという。中性脂肪の基準範囲は、50〜149mg/dlであり、この基準範囲を超えると、脂質代謝異常症や高脂血症と診断される。基準値を上回る状態が長く続くと、動脈硬化が促進され、さらに脳梗塞、脳卒中などの脳動脈疾患や、狭心症、心筋梗塞などの心疾患を引き起こす可能性が高まる。一方、HDLコレステロール値は、余分なコレステロールを全身の組織から肝臓へ回収する働きがあるので、HDLは、「善玉コレステロール」と呼ばれる。総コレステロールに占めるHDLの割合が多いほど、疾患のリスクが減る。HDLコレステロールの基準範囲は、通常、男性で40〜86mg/dl、女性で40〜〜96mg/dlである。
【0006】
高脂血症の治療法としては、現在、病院が処方する「コレステロール値を下げる薬」に頼るところが大きい。コレステロール値を下げる薬のなかで多用されるものは、コレステロール合成阻害薬であるHMG-CoA還元酵素阻害剤(一般にスタチン系薬剤と言われる)である。
【0007】
高血圧症の治療法としては、通常、食塩制限の他に、利尿薬、カルシウム拮抗剤、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬などの薬物療法が行われる。
【0008】
高血糖および糖尿病の治療法としては、食事療法や運動療法の他に、グルニド系薬剤(速効型インスリン分泌促進薬)、α−グルコシダーゼ阻害薬、グルカゴン様ペプチド−1誘導体などの薬物療法が行われる。
【0009】
脂質異常症、高血圧症、糖尿病などの治療する手段は、いずれも化学合成薬剤が主であるから、化学合成薬剤の長期服用は好ましいといえない。例えば、スタチン系薬剤の副作用として、手足の筋肉の痛み、脱力、赤褐色尿などを誘発し、最終的に筋肉がとけてしまう横紋筋融解症が知られている。赤褐色尿は、筋の成分であるミオグロビンが血液中に流れ出るために起こる症状であり、放っておくと腎不全になることもある。このような副作用が見られなくても、長期間服用したために効き目が次第に低下することも多い。
【0010】
脂質異常症、高血圧症や糖尿病が重篤になる前、すなわちメタボリックシンドロームの段階で治癒するか、あるいは日頃からメタボリックシンドロームを予防することが望ましい。そして、メタボリックシンドロームを予防または治癒するための医薬や機能性食品は、患者が安心して摂取できるように天然素材に由来することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
天然由来の安全性と高い効果をうたうメタボリックシンドローム改善剤の報告例として、大豆胚芽タンパク質(特開2008-031121)、食用担子菌類の子実体もしくは菌糸体(特開2007-332336)、シソ乾燥物(特開2007-246471)、杜仲葉加工物(特開2007-230969)、シソ科植物の抽出物(特開2007-106718)、発根した脂肪種子(特開2007-097541)などがある。
【0012】
ウリ科植物の報告例としては、メタボリックシンドローム改善効果ではないが、特表2007-515407にカボチャ、スイカ、ヘチマタワシ、ヒョウタン、キュウリなどから単離されたデヒドロジコニフェリルアルコールにおいて脂質代謝改善作用が報告され(特許文献1)、特開2001-278804および特開2005-232145にニガウリの粉砕物や抽出物において脂質代謝改善作用が報告されている(特許文献2および3)。また、特開2005-289955に、マクワウリを含むウリ科植物の抽出物を有効成分とする肥満および糖尿病の予防および治療剤が記載されている(特許文献4)。
【0013】
しかし、従来の天然由来の脂質代謝改善剤や糖尿病治療薬は、実際に使用しても効果があまりないか、効果があっても食品に加工する途中の殺菌工程で高温に加熱すると失活してしまい、実用性に乏しいという問題があった。食品として安全性をクリアした形で流通する上で、病原菌を殺菌するための高温加熱行程は必須であり、高温加熱しても効力が衰えず、かつ食品として重要な「風味」を損なわない素材の開発が望まれているのが現状である。
【0014】
糖尿病、高血圧や脂質異常症の予防には、体の中で脂肪細胞から分泌される生理活性物質であるアディポネクチンの血中産生量を増やすことが有効である。アディポネクチンには、(1)インスリンの働きを良くし、血糖値を下げやすくする、(2)血管を広げる作用があり、血圧を下げる、(3)筋肉や肝臓などの脂肪の代謝をよくする作用があり、中性脂肪を下げることにつながるからである。したがって、本発明は、アディポネクチンの産生量を増やすことによりメタボリックシンドロームを改善する医薬および/または機能性食品を提供することを目的とする。
【特許文献1】特表2007-515407
【特許文献2】特開2001-278804
【特許文献3】特開2005-232145
【特許文献4】特開2005-289955
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、繊維素溶解作用の知られているメロンに注目して、その生理活性や薬理活性を検討していたところ、メロン抽出物の熱処理加工物に、メタボリックシンドローム改善効果、さらにアディポネクチン産生効果があることを発見し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、メロンの抽出物であって、85℃×20分間の熱処理に対して活性を維持する前記抽出物を有効成分として含有するメタボリックシンドローム改善剤を提供するものである。
【0016】
メロン抽出物は、これまで繊維素溶解剤としては知られている(特開2005-314412)ものの、本発明のようにメタボリックシンドローム改善剤として有効であることは、全く知られていなかった。
【0017】
本明細書において、「メタボリックシンドローム改善剤」という用語は、内臓脂肪型肥満の人の(1)脂質異常症、(2)高血圧、(3)高血糖の少なくとも二種の症状を治療または予防する意義で使用する。
【0018】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤に有効成分として含有される前記抽出物は、熱処理したものであることが好ましい。
【0019】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、特にアディポネクチン産生量を増加させる機能を有する。
【0020】
本発明は、また、上記メタボリックシンドローム改善剤を含有する機能性食品を提供する。
【0021】
本発明は、また、メロンの果実部を搾汁または裏ごししたものを乾燥させる工程を含む、メタボリックシンドローム改善剤の製造方法を提供する。
【0022】
上記製造方法では、前記乾燥前に、さらに80〜90℃×10〜30分の熱処理を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明品は、メロン抽出物であって85℃×20分間の熱処理に対して活性を維持するものには、中性脂肪を下げる、HDLコレステロール値を上げる、アディポネクチン産生量を上げる、血圧を適度に下げるなどの顕著な作用を有する。よって、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、内臓脂肪型肥満の人の(1)脂質異常症、(2)高血圧、(3)高血糖の少なくとも二種の症状によりメタボリックシンドロームが強く疑われる者に、その症状の緩和や治療あるいは予防の効果を大いに発揮する。これは、メタボリックシンドロームの進行によって起きる脳梗塞、脳卒中、狭心症、心筋梗塞などを未然に防ぐ。また、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、メタボ予備群や健常者に適用しても、予防的効果を発揮する。
【0024】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、天然に存在し食品として使用している植物由来成分であるために、従来の化学薬品のような副作用を心配する必要がない。さらに、本発明のメタボリックシンドローム改善剤を過度に服用しても、脂質、血圧や血糖を基準値より下げるような心配もないか極度に少ない。したがって、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、安全性が従来の化学薬品よりも格段に優れる。
【0025】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、殺菌のために高温加熱しても、メタボリックシンドローム改善剤としての効能を失わない。したがって、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、より一層安全なメタボリックシンドローム改善剤を市場に提供することができる。
【0026】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、食品として重要な「風味」を一切損なわないことから、メタボリックシンドローム改善機能を有する健康食品としても優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤の製造方法を以下に説明する。本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、製法に応じて、通常、メロン果汁(果汁濃縮物)および、繊維を含有するメロン果肉濃縮物(果肉濃縮物)の二種の形態を取る。
【0028】
原料であるメロンは、東アフリカ地方、中近東地方を原産地とするウリ科キュウリ属に属する果実的野菜である。本発明のメタボリックシンドローム改善剤の原料となるメロンは、特に制限がなく、例えばアーバン・デリシャスメロン、あっさぶメロン、アンデスメロン、エイネアメロン、キスミーメロン、クインシーメロン、サッポロレッドメロン、タカミメロン、ハニーゴールデンメロン、肥後グリーンメロン、ビューレッドメロン、ルピアメロン、レッドメロン、イエローキングメロン、カナリアメロン、キンショーメロン、クレオパトラIIメロン、しらかばメロン、ハネジューメロン、ホームランメロン、ユウカメロン、プリンスメロン、坂井メロン、パパイヤメロンなどが挙げられる。これらの中で、ハネジューメロンおよびホームランメロン(ハネジューメロンの改良種)が、一年を通して大量に入手可能な点で好ましい。メロンの採取時期は問わないが、服用の対象者に応じて、嗜好性の高い濃縮果汁を得る点では完熟したものが好ましく、糖尿病患者用に糖度を抑える必要のある場合には完熟前のものが好ましい。
【0029】
果汁FDおよび果肉FDのいずれにおいても、メロンの使用部位に特に制限ないが、果実部を用いることが好ましい。果実部には、果皮、果肉、果汁、胎座(わた)、種子などが含まれるが、より好ましくは果実部から種子やわたを除いた可食部である。
【0030】
果汁FDの場合、生メロンを洗浄後、剥皮して得た果実部を絞汁するために、メロン果肉を麻袋に詰めて、スクリュープレスなどの圧搾機で搾汁する。また、剥皮して遠心分離(デカンタ)により果汁を回収してもよい。果肉FDの場合は、生メロンを洗浄後、剥皮して得た果実部を裏ごしするために、パルパーフィニッシャーなどの裏ごし器にかける。
【0031】
上記で得られた搾汁液または裏ごし液は長期保存のために一旦凍結し、後でそれを解凍して用いてもよい。
【0032】
上記で得られた搾汁液または裏ごし液のメロン抽出物は、次いで乾燥させるが、乾燥前に殺菌などのためにメロン抽出物を熱処理することが好ましい。本発明のメタボリックシンドローム改善剤の有効成分は、85℃×20分間の熱処理によっても失活しない。熱処理には、スチーム(試料にはビニールを被せる)を使用するとよい。熱処理の温度は、通常、80〜90℃、好ましくは、82〜87℃である。熱処理時間は、温度に依存するが、通常、10〜30分であり、好ましくは10〜20分である。なお、処理前後の温度の上昇、下降時間を入れると、30〜40分間を要することもある。
【0033】
前記乾燥方法は、本発明の効果を損なわない方法であれば特に制限されない。例えば、凍結乾燥、熱風乾燥、遠赤外線乾燥、減圧乾燥などを用いることができる。好ましくは、凍結乾燥である。乾燥物は、必要に応じて剤形化する。
【0034】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、少量でメタボリックシンドローム改善効果を発揮するので、中性脂肪の高い者や肥満体質の者にメタボリックシンドローム改善剤を服用させても糖尿病などの悪化を危惧する必要は少ない。それでも、甘味成分が低減した果汁メロンおよび果肉メロンから抽出されたものを有効成分とするメタボリックシンドローム改善剤を提供することも可能である。それは、例えば、糖度の上がる前の未完熟メロンを保存中に完熟することのないように配慮しながらメロン抽出物に加工するか、あるいは通常の果汁メロンおよび果肉メロンから透析などの手段で糖分を除去してもよい。
【0035】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤の投与形態としては、例えば散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、チュアブル錠、ドロップのような固形製剤や、ドリンク剤、水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ、ドライシロップのような液剤などの経口投与剤が挙げられる。
【0036】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、上記メロン抽出物またはその加熱処理物を単独で経口用の固体または液体状の経口用投与剤として調製されてもよい。あるいは、それに加えて製薬学的または食品学上許容される担体や助剤を配合してもよい。具体的には、経口投与剤の形態に応じて、汎用の賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、ビタミン、キサンチン誘導体、アミノ酸、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、粘稠剤、溶解補助剤、抗酸化剤、コーティング剤、可塑剤、界面活性剤、水、アルコール類、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料、香料、着色剤などを発明の効果を損なわない質的および量的範囲で添加することが可能である。
【0037】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤には、本発明の有効成分に加えて、脂質代謝改善作用、血圧降下作用、血糖値低下作用などが公知の成分を配合することもできる。
【0038】
本発明は、また、上記メタボリックシンドローム改善剤を含有する機能性食品を提供する。該機能性食品は、メタボリックシンドローム改善機能を有する健康食品、特定保健用食品、病者用食品などに利用することができる。さらに、本発明のメタボリックシンドローム改善剤を日常の栄養剤や食品素材に添加してもよい。具体的には、パン、ケーキ、クッキー、パイ、ベーカリーミックス、そば、うどん、ラーメン、スープなどの飲食品類;だし巻き、卵豆腐、プリンなどの卵製品;フレンチドレッシング、ソースなどの調味料;マヨネーズ、マーガリン、ピーナツバター、スプレッド、ホイップクリームなどの油脂加工品;バター、チーズ、ヨーグルト、アイスクリーム、加工乳、脱脂乳などの乳製品;チョコレート、ガム、キャンディー、キャラメル、クッキー、ポテトチップス、スナック菓子、ゼリー、グミ、錠菓などの菓子類;ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの飲料水;ハム、ソーセージ、ハンバーグ、ソーセージ、レバー、蒲鉾、竹輪、さつま揚げなどの魚肉加工品;冷凍食品のような食品素材が挙げられる。
【0039】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤の用量は、対象とする疾患や症状、患者の体重や年齢などにより異なるので特定できないが、メロンの果実部の摂取量に換算(一玉600gとして)して、成人1日あたり、通常、1/50〜1個分、好ましくは1/20〜1/2個分、特に好ましくは1/5〜1/3個分に相当する量が望ましい。一日1回服用しても、何回かに分けて服用してもよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の内容を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0041】
〔実施例1〕
生メロン(品種:ハネジューメロン)を洗浄後、剥皮した。剥皮したメロン果肉を麻袋に詰めて、圧搾機で搾汁した。搾汁液をビニール袋内で凍結(-25℃)し、メロン果汁凍結体を得た(生メロンの40%w/w)。次いで、凍結メロン果汁を室温まで解凍し、80℃×20分間の加熱処理にて殺菌した後、凍結乾燥機にて凍結乾燥させた。こうして、搾汁液の20%w/wのメロン果汁凍結乾燥体(果汁FD)を得た。
【0042】
以下の条件:
1. 高コレステロール血症(TC>220)または高中性脂肪血症と診断されている、あるいは境界型コレステロール血症(TC>220)と診断されている
2. 臨床試験参加時および過去60日間に薬剤による治療を受けていない
3. 重篤な心疾患、肝疾患および腎疾患を罹患していない
4. 20歳以上で文書による同意能力を有する
5. 担当医師が、試験参加が適切であると判断した
を満たす患者4名(男性3名、女性1名、平均年齢48.8歳)を選別した。被験者4名の総コレステロール平均値は225.3±22.87と200を大きく超え、中性脂肪平均値も117.25±34.17と100を大きく超え、血圧平均値も120mmHgを越え、高脂血症もしくはその境界域および高血圧と判断された。
【0043】
上記被験者に、上記果汁FDからなるメタボリックシンドローム改善剤を7.5g×2回/日を8週間にわたって服用させた。摂取方法は、朝夕食後30分以内に計2回水またはぬるま湯と一緒に飲用させた。8週間の服用を終えた後、4週間の経過観察も行った。
【0044】
上記患者に対して、以下の項目:体重、体脂肪率、ウェスト、ヒップおよび二の腕、収縮期血圧、拡張期血圧、中性脂肪、総コレステロール、HDLコレステロール、リポ蛋白分画HDL、LDLコレステロール、酸化LDL、リポ蛋白分画LDL、リポ蛋白分画IDL、リポ蛋白分画VLDL、動脈硬化指数、アディポネクチンを摂取前(0w)、摂取4週間目(4w)、摂取8週間目(8w)、および摂取後4週間経過目(12w)に計測した。また、副次評価項目として、総蛋白、アルブミン、尿酸、尿素窒素、クレアチニン、GOT、GPT、ALP、およびγ-GTPも測定した。測定結果を、4名の平均値とその標準偏差として表1に示す。また、結果の統計的有意性を検証するために、摂取前(0w)と摂取8週間後(8w)との間でt検定を行った。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

*;p<0.05
【0046】
表1から摂取期間を通じて、被験者の体重、BMI、体脂肪率、ウェスト、ヒップ、二の腕に、変化がほとんど見られなかった。これは、本発明のメタボリックシンドローム改善剤が被験者に悪影響を与えていないことを示している。
【0047】
血圧(図1)は、収縮期、拡張期ともに、摂取期間を通して減少した。摂取を止めても、減少傾向を維持した。統計学的に有意とはならなかったものの、本発明のメタボリックシンドローム改善剤が良い影響を与えていることが充分に示唆される。
【0048】
8週間の摂取期間において、中性脂肪の減少(図2)と、HDLコレステロールの上昇(図3)、リポ蛋白分画HDLの上昇(図4)が確認された。t検定によれば、HDLコレステロール(図3)およびリポ蛋白分画HDL(図4)について有意であった(p<0.05)。さらに、本発明のメタボリックシンドローム改善剤の摂取を止めてから、中性脂肪が再び上昇し、HDLコレステロールおよびリポ蛋白分画HDLコレステロールが再び減少したことから、本発明のメタボリックシンドローム改善剤が脂質代謝に良い影響を与えていることが検証された。
【0049】
アディポネクチンは、摂取期間において上昇傾向にあり、摂取を止めることで低下した(図5)。動脈硬化指数は、摂取期間を通じて減少傾向にあり、摂取を止めることで上昇した(図6)。動脈硬化指数は統計学的にも有意であった。アディポネクチンは統計学的に有意とならなかったものの、動脈硬化指数の結果を総合すると、本発明のメタボリックシンドローム改善剤が、アディポネクチンの産生を促し、糖尿病や動脈硬化を改善することが充分に期待される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のメタボリックシンドローム改善剤の摂取前、摂取4および8週間、および摂取終了から4週間経過後の血圧(収縮期および拡張期)の測定値(平均値)を示す図である。
【図2】本発明のメタボリックシンドローム改善剤の摂取前、摂取4および8週間、および摂取終了から4週間経過後の中性脂肪の測定値(平均値)を示す図である。
【図3】本発明のメタボリックシンドローム改善剤の摂取前、摂取4および8週間、および摂取終了から4週間経過後のHDLコレステロールの測定値(平均値)を示す図である。
【図4】本発明のメタボリックシンドローム改善剤の摂取前、摂取4および8週間、および摂取終了から4週間経過後のリポ蛋白分画HDLの測定値(平均値)を示す図である。
【図5】本発明のメタボリックシンドローム改善剤の摂取前、摂取4および8週間、および摂取終了から4週間経過後のアディポネクチンの測定値(平均値)を示す図である。
【図6】本発明のメタボリックシンドローム改善剤の摂取前、摂取4および8週間、および摂取終了から4週間経過後の動脈硬化指数の測定値(平均値)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メロンの抽出物であって、85℃×20分間の熱処理に対して活性を維持する抽出物を有効成分として含有するメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項2】
前記抽出物を熱処理したものを有効成分として含有することを特徴とする、請求項1に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項3】
アディポネクチン産生量を増加させる、請求項1または2に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載のメタボリックシンドローム改善剤を含有するメタボリックシンドローム改善用機能性食品。
【請求項5】
メロンの果実部を搾汁または裏ごししたものを乾燥させる工程を含む、メタボリックシンドローム改善剤の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥前に、さらに80〜90℃×10〜30分の熱処理を行うことを含む、請求項5に記載のメタボリックシンドローム改善剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−256234(P2009−256234A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105943(P2008−105943)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(503027861)トーシン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】