説明

メタボリックシンドローム改善剤

【課題】メタボリックシンドロームを有効に予防または治療可能なメタボリックシンドローム改善剤の提供。
【解決手段】アカギ加工物を有効成分として含有することを特徴とするメタボリックシンドローム改善剤である。好ましいアカギ加工物は、アカギの葉の粉砕物、あるいはアカギの葉の水抽出物である。これらはメタボリックシンドローム改善剤として、血糖値低減作用を有するもの、あるいは中性脂肪低減作用を有するもの、HDLコレステロール上昇作用を有するもの、または抗肥満作用を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アカギ加工物を有効成分とするメタボリックシンドローム改善剤に関し、より詳細には、血糖値および中性脂肪の低減作用やHDLコレステロールの上昇作用を有し、優れたメタボリックシンドローム改善効果を有するメタボリックシンドローム改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣病や動脈硬化との関連性からメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が大きな問題となってきている。内臓脂肪が過剰にたまっていると、糖尿病や高血圧症、高脂血症といった生活習慣病を併発しやすく、また、血糖値や血圧などの個別の指標が病気とは診断されない程度であっても、動脈硬化の進行を促進し、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患のリスクが高まるとされている。メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態をいうとされており、その判断基準として、血圧、中性脂肪値またはHDLコレステロール値、血糖値等が採用されている。
【0003】
このようなメタボリックシンドロームに対して様々な研究がなされ、例えば、コエンザイムQ10やアスタキサンチンがメタボリックシンドロームに対して有効であることが報告されているが(特許文献1および2)、有効性やコストの観点からさらなる有効な素材の開発が求められていた。
【0004】
【特許文献1】特開2007−246504号公報
【特許文献2】特開2008−44894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、メタボリックシンドロームを有効に予防または治療可能なメタボリックシンドローム改善剤を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アカギの粉砕物や抽出物が、血糖値を低減し、また中性脂肪や総コレステロールを低減するとともにHDLコレステロールを上昇させて脂質代謝異常を改善し、さらには、抗肥満作用をも有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、アカギ加工物を有効成分として含有することを特徴とするメタボリックシンドローム改善剤である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、優れた血糖値、中性脂肪および総コレステロールの低減効果、HDLコレステロール上昇効果を有し、さらには、抗肥満効果を有するため、有効にメタボリックシンドロームを予防・治療し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤には、有効成分としてアカギの加工物を用いる。アカギ(赤木、Bischofia javanica Blume)は、トウダイグサ科の常緑高木で、沖縄・小笠原・東南アジアなどに分布している植物であり、痢疾、消炎、解毒、鎮痛などに効果があるとして古くから民間療法で利用されてきた植物である。また、沖縄の高齢者が、アカギの若葉を野菜代わりに食したという記載や体験談がある。
【0010】
アカギ加工物に使用できるアカギの部位としては、葉、根、樹皮、果実、種子等が例示でき、これらのうち、葉、果実が好ましく用いられる。葉は、若葉、成葉等のいずれであっても用いることができるが、特に若葉はくせがなく摂取しやすいために好ましい。
【0011】
アカギ加工物には、上記アカギの種々の部位を粉砕した粉砕物や、適当な溶媒を用いて抽出した抽出物が含まれる。粉砕物の調製における粉砕方法や条件は、使用するアカギの部位等に応じて常法に従って適宜設定することができ、また必要に応じて、粉砕の前後において乾燥することもできる。例えば、アカギの葉の粉砕物を調製する方法としては、送風加熱乾燥機や、送風を行わない加熱乾燥機等を用いて水分1〜10%程度に乾燥し、これをミキサー等を用いて粉砕する方法が例示できる。
【0012】
一方、アカギ抽出物の調製にあたっては、通常使用される極性溶媒や非極性溶媒を抽出溶媒として用いることができるが、水やアルコールなどの極性溶媒を用いることがコストの面から好ましく、特に水が好ましい。また、アルコールとしては、泡盛などの蒸留酒を用いることもできる。抽出条件としては、60〜100℃で1〜12時間程度行えばよい。得られた抽出液は、そのまま液状物として用いることも可能であるが、必要に応じて濃縮・精製してもよく、更に加熱乾燥や凍結乾燥等の通常の乾燥手段により乾燥させて粉末状として用いることもできる。
【0013】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、医薬品、飲食品等の形態とすることができる。医薬品とする場合には、上記アカギ加工物を、適当な医薬用担体を用いて製剤化することができ、また剤形も粉剤、顆粒剤、錠剤、液剤、ソフトカプセルなどとすることが可能である。
【0014】
また、飲食品とする場合には、適当な飲食品用の素材を用いて種々の形態のものを製造することができる。例えば、グミ、クッキー、ドーナツ、さーたーあんだぎー等の菓子や、ヨーグルト、プリン等の乳製品、うどん、蕎麦、沖縄そば等の麺類などの食品や、茶、スポーツドリンクなどの飲料、さらに、カプセル、錠剤等の形態の健康食品や栄養補助食品などが例示できる。
【0015】
かくして得られた本発明のメタボリックシンドローム改善剤を摂取することにより、血糖値を低減することができる。また脂質異常に関しては、総コレステロールを低減しながらも、動脈硬化の防止に役立つとされるHDLコレステロール量を上昇させる効果を有し、中性脂肪も低減させる。さらに抗肥満効果を有し痩身に有効である。メタボリックシンドローム改善剤の摂取量は、アカギの葉の粉砕物の場合、乾燥前の重量で一日大人一人当たり10〜250g程度であり、10〜25g程度が好ましい。また、アカギの葉の抽出物の場合は、乾燥物換算で0.6〜38g程度である。
【0016】
現在の日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準は、(1)内臓脂肪の蓄積があって(腹囲男性85cm以上、女性90cm以上)、(2)脂質異常(中性脂肪150mg/dL以上HDLコレステロール40mg/dL未満のいずれかまたは両方)(3)高血圧(最高(収縮期)血圧130mmHg以上、最低(拡張期)血圧85mmHg以上のいずれかまたは両方(4)高血糖(空腹時血糖値110mg/dL以上)のうち2つ以上に該当することである。本発明においてメタボリックシンドローム改善剤とは、上記(1)ないし(4)の診断基準のうち、少なくとも1つ以上の項目について、予防または治療する効果を有するものをいう。
【実施例】
【0017】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0018】
製造例1
アカギ葉粉砕物の調製:
アカギの若葉1kgを送風加熱乾燥機(ADVANTEC FC-610)を用いて水分5〜8%まで乾燥した。これをミキサー(テスコム FOODMILL TML17)によって粉砕し、アカギの葉の粉砕物を得た。
【0019】
製造例2
アカギ葉抽出物の調製:
アカギの若葉6gと水600gをガラス製ビーカーに入れ、80℃で12時間抽出してアカギの葉の水抽出物を得た。
【0020】
実施例1
8週齢のddY系雄マウス(日本SLC会社)を用いた。6日間の馴化後に、実験群と対照群に分けた(n=4)。対照群のマウスに対して、市販粉末飼料(CE2、日本クレア株式会社製)を投与した。実験群に対しては、市販粉末飼料CE2に製造例1で得られたアカギ葉粉砕物を2.5%の割合で添加しよく混合したものを投与した。餌と水は自由摂取とした。12-12時間の明-暗サイクル(明期: 08:00-20:00)にて4ヶ月飼育した。投与開始から112−114日後に、ネンブタール腹腔内投与による深麻酔下に開胸し、右心室より採血した。血漿分離後、冷凍保存し、測定キット(グルコースCII―テストワコー、コレステロールE―テストワコー、HDL−コレステロールE―テストワコー、トリグリセライドE−テストワコー;和光純薬株式会社製)を使用して、血糖値、総コレステロール値、HDLコレステロール値、中性脂肪値を測定し平均値を求めた(n=3)。この結果を図1〜4に示す。また、各群の体重を投与後2日毎に測定し平均値を求めた(n=4)。その結果を図5に示す(Ex:実験群)。また、採血に先立って、スーパーメックス運動量測定システム(室町機械株式会社製)を使用して、活動量を測定した。装置は天井部にスーパーメックスセンサが取り付けられた防音チャンバーを使用した。センサ直下に飼育ケージを配置した。明期(12時間)と暗期(12時間)における各群の測定値を図6に示した。
【0021】
この結果から明らかなように、アカギ投与群では、総コレステロール値、血糖値、中性脂肪値がいずれも減少し、一方、HDLコレステロール値が上昇した。また、アカギ投与群は対照群と比較して体重が減少した。一般に、抗肥効果を示す場合、動物の活動量を増やして(結果として、消費エネルギーを増やして)体重を減少させている可能性が考えられるが、図6に示す結果は、アカギ投与群(Ex)においてむしろ活動量が減少している。この結果は、アカギ投与群の体重減少が、運動量の増加による体重減少ではないことを示している。また、アカギが鎮静作用および睡眠改善作用を有する可能性が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、これを摂取することにより糖や脂質の代謝異常を改善することができ、また長期間利用されてきたものであるため安全性の高いものである。したがって、これを用いた医薬品や飲食品は、安全で有効にメタボリックシンドロームを予防・治療し得る有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】各群の血中総コレステロール濃度を示す図である。
【図2】各群の血中HDLコレステロール濃度を示す図である。
【図3】各群の血糖値を示す図である。
【図4】各群の中性脂肪値を示す図である。
【図5】各群の体重変化を示す図である。
【図6】各群の活動量の変化を示す図である。 以上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アカギ加工物を有効成分として含有することを特徴とするメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項2】
アカギ加工物が、アカギの葉の粉砕物である請求項1記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項3】
アカギ加工物が、アカギの葉の水抽出物である請求項1記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項4】
血糖値低減作用を有するものである請求項1ないし3のいずれかの項記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項5】
中性脂肪低減作用を有するものである請求項1ないし4のいずれかの項記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項6】
HDLコレステロール上昇作用を有するものである請求項1ないし5のいずれかの項記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項7】
抗肥満作用を有するものである請求項1ないし6のいずれかの項記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかの項記載のメタボリックシンドローム改善剤を含有する医薬品。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかの項記載のメタボリックシンドローム改善剤を含有する飲食品。
【請求項10】
アカギ加工物を有効成分として含有することを特徴とする血糖値低減剤。
【請求項11】
アカギ加工物を有効成分として含有することを特徴とする中性脂肪低減剤。
【請求項12】
アカギ加工物を有効成分として含有することを特徴とするHDLコレステロール上昇剤。
【請求項13】
アカギ加工物を有効成分として含有することを特徴とする抗肥満剤。
【請求項14】
アカギ加工物を有効成分として含有することを特徴とする鎮静剤。
【請求項15】
アカギ加工物を有効成分として含有することを特徴とする睡眠改善剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−1243(P2010−1243A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161191(P2008−161191)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年6月2日 インターネットアドレス「http://sangakukan.jp/piCal+index.action+View+event_id+3927+front+small.htm」に発表
【出願人】(504145308)国立大学法人 琉球大学 (100)
【Fターム(参考)】