説明

メタル担体

【課題】 ハニカム体の熱膨張を吸収・許容できると同時に、外筒と接続管との溶接性を良好にできるメタル担体の提供。
【解決手段】 ハニカム体9の軸方向両側で外筒13にそれぞれ溶接X1で固定され、中間筒10を介してハニカム体9を保持する一対の保持リング11,12を設け、各保持リング11,12は、ハニカム体9の一部端面及び中間筒10の端部に当接するストッパ部17と、中間筒10の端部と外筒との間に全周に亘って当接した状態で介在する保持部18を備え、中間筒10と外筒13との間にハニカム体9の熱膨張を吸収・許容する環状の隙間19を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化用のメタル担体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波状の金属箔と小波状または平板状の金属箔を重ねた状態で多重に巻回して成るハニカム体と、ハニカム体の外周に拡散接合された筒状の中間筒と、ハニカム体が収容された筒状の外筒と、外筒の両端部にそれぞれ溶接固定された接続管を備えるメタル担体の技術が公知となっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平06−79182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明にあっては、中間筒と外筒がろう付け接合されるために中間筒と外筒の隙間はほとんど無くなり高温の排気ガスにより半径方向に熱膨張した場合には外筒の剛性が高いため大きな熱応力が発生する。
また、ろう付けのため高温な加熱炉で熱処理された外筒は、結晶粒度が粗大化して靱性が低くなり、外筒の両端部と接続管との溶接性が悪化するという問題点があった。
この発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、ハニカム体の特に半径方向の熱膨張を許容できると同時に、外筒と接続管との溶接性を良好にできるメタル担体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明では、波状の金属箔と小波状または平板状の金属箔を重ねた状態で多重に巻回して成るハニカム体と、上記ハニカム体の外周に拡散接合された筒状の中間筒と、上記ハニカム体が収容され、両端部に接続管がそれぞれ溶接固定される筒状の外筒を備えるメタル担体において、上記ハニカム体の軸方向両側にそれぞれ外筒に溶接固定され、中間筒を介してハニカム体を保持する一対の保持リングを設け、上記各保持リングは、ハニカム体の一部端面または中間筒の端部に当接するストッパ部と、中間筒の端部と外筒との間に全周に亘って当接した状態で介在する保持部を備え、上記中間筒の中途部と外筒との間にハニカム体の熱膨脹を許容する環状の隙間を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明によれば、ハニカム体の熱膨張を許容できると同時に、外筒と接続管との溶接性を良好にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0007】
以下、実施例1を説明する。
図1は実施例1のメタル担体が採用された車両の排気系を示す図、図2は実施例1のメタル担体の内部を説明する断面図、図3は実施例1のハニカム体の斜視図、図4は実施例1の保持リングの斜視図である。
【0008】
先ず、全体構成を説明する。
図1に示すように、実施例1のメタル担体が採用された車両の排気系は、排気上流側となるエンジン1の図示しない排気ポートから各排気管2a〜2cを介してメタル担体3、サブマフラ4、メインマフラ5が連通接続されている。
メタル担体3の排気上流側及び排気下流側には、所定径まで縮径されて、それぞれ対応する排気管2とフランジ6で締結されたディフューザ7,8(請求項の接続管に相当)が接続されている。
【0009】
図2に示すように、メタル担体3は、ハニカム体9と、中間筒10と、一対の保持リング11,12と、外筒13とから構成されている。
図3に示すように、ハニカム体9は、それぞれ板厚30μm、材質をアルミニウムを含有するステンレス鋼とする波板状の金属箔14と平板状(または小波箔)の金属箔15を該金属箔15が外側に位置するように重ねた状態で多重に巻回することにより、全体形状が円柱状に形成されている。
また、両金属箔14,15には前述した巻回前にそれぞれ複数の穴16が形成されている。
なお、穴16の形状、形成位置、形成数、配置等については適宜設定できる。
【0010】
また、ハニカム体9の金属箔14の波状の頂部と金属箔15との接合部位は拡散接合により接合されて軸方向に貫通しているセルが形成されている。
さらに、ハニカム体9の両金属箔14,15によって軸方向に貫通形成された各セル通路の表面には、前述した拡散接合処理後に貴金属、アルミナ等からなる排気ガス浄化用の触媒担持体層が形成されている。
【0011】
中間筒10は、板厚0.5mm、材質をSUS430のフェライト系ステンレス板材とする母材を加工して、ハニカム体9と同じ全長を有する円筒状に形成される他、ハニカム体9の熱膨張率と略同一となっている。
また、中間筒10の内周はハニカム体9の外周に拡散接合により接合されている。
【0012】
図2、4に示すように、保持リング11,12は、板厚1.5mm、材質をSUS430のフェライト系ステンレス板材とする母材を加工して、略環状に形成されている。
また、保持リング11,12は、中間筒10の対応する端部及びハニカム体9の対応する一部端面に当接するストッパ部17と、中間筒10の外周一部と外筒13の内周一部に当接した状態で介装される保持部18が備えられている。
さらに、保持リング11,12は、外筒13の端部と周上の複数の箇所または全周において溶接X1で固定され、これによって、保持リング11,12は外筒13に一体的に設けられている。
【0013】
外筒13は、板厚1.5mm、材質をSUS430のフェライト系ステンレス板材を加工して、ハニカム体9の全長に保持リング11,12のストッパ部17の厚みを加えた全長を有する円筒状に形成されている。
また、外筒13の両端部にはそれぞれ対応するディフューザ7,8の端部が外側から重ねられた状態でその全周に亘って溶接X2で固定されている。
【0014】
従って、実施例1のメタル担体3は、ハニカム体9は中間筒10を介して保持リング11,12で外筒13に保持されると共に、中間筒10の中途部と外筒13との間には保持リング11,12の保持部18の板厚分の隙間を有する環状の隙間19が形成されている。
なお、隙間19は保持部18の板厚の設定により適宜設定できる。
【0015】
次に、作用を説明する。
<メタル担体の製造について>
メタル担体3を製造するには、先ず、波板状の金属箔14と平板状(または小波状)の金属箔15を該金属箔15が外側に位置するように重ねた状態で多重に巻回することによりハニカム体9を形成する。
次に、中間筒10に波板ハニカム体9を圧入した後、これらを加熱炉内に搬送して真空中で1100℃以上の温度(約1300℃)まで加熱することにより、ハニカム体9の金属箔14の波状の頂部と金属箔15との接合部位、及びハニカム体9の外周の全周と中間筒10の内周とを拡散接合させて接合する。
【0016】
続いて、外筒13内にハニカム体9(中間筒10共)及び保持リング11,12を配置した後、保持リング11,12と外筒13を溶接X1で固定する。
この際、保持リング11,12の保持部18を中間筒10と外筒13との間に挿入して、ストッパ部17を中間筒10の端部及びハニカム体9の一部端面に当接させることにより、保持リング11,12を簡単に位置決めした状態で装着できる。
なお、保持リング11,12の一方を予め外筒13にスポット溶接で固定しておき、その後、中間筒10及びハニカム体9を組み付けた後、保持リング11,12の他方を組み付けて溶接X1を行うようにしても良い。
【0017】
最後に、外筒13の両端部にそれぞれ対応するディフューザ7,8の端部を全周に亘って溶接X2で固定する。
【0018】
<ディフューザの溶接性について>
このように、実施例1では、ハニカム体9は中間筒10を介して保持リング11,12で保持されている。
これにより、従来の発明のように外筒13を中間筒10と高温な加熱炉でろう付け処理する必要がなく、外筒13の結晶粒度を維持してディフューザ7,8の溶接X1性を良好にできる。
【0019】
<排気浄化作用について>
このように構成されたメタル担体3は、図1で示すように、ディフューザ7,8のフランジ6がそれぞれ対応する排気管2a,2bと締結された状態で車両の排気系に介装される。
そして、エンジン1側である排気上流側のディフューザ7からメタル担体3に流入した排気(破線矢印で図示)は、ハニカム体9のセル通路を通過する間に触媒作用により排気中の有害成分(HC、CO、NOx等)が無害成分(CO、HO等)に浄化されて排気下流側のディフューザ8へ排出され、サブマフラ4及びメインマフラ5によりエンジン騒音が消音されて大気へ放出される。
【0020】
この際、ハニカム体9の両金属箔14,15には複数の穴16が形成されているため、排気の一部が穴16を介してハニカム体9の径方向へ流通し、これにより、各穴16の排気ガス流れ方向下流側周縁にリーディングエッジを形成して境界層を破壊することにより排気浄化性能を向上できる(リーディングエッジについては公知の特開2006−231167号公報参照)。
また、ハニカム体9における保持リング11,12のストッパ部17で塞がれた部位にも排気の一部が穴16を介してハニカム体9の径方向へ流通するため、排気浄化性能の低下を抑えることができる。
【0021】
<ハニカム体の熱膨張・収縮について>
ハニカム体9及び中間筒10は高温な排気の通過に伴って熱膨脹・収縮を繰り返す。
この際、実施例1では、ハニカム体9と中間筒10とは拡散接合されているため、ハニカム体9から中間筒10への熱伝導性を良好にして均熱化を図ることができ、熱応力による局部的な熱膨脹・収縮量を大幅に低減できる。
また、保持リング11,12のストッパ部17は中間筒10の端部及びハニカム体9の一部端面に当接され、中間筒10の中途部と外筒13との間には環状の隙間19が形成されているため、ハニカム体9及び中間筒10は隙間19に山状に膨出するように熱膨張し、これにより、ハニカム体9の熱膨張を吸収・許容し、中間筒10との間に発生する熱応力を大幅に低減できる。
【0022】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、実施例1の発明では、波状の金属箔14と小波状または平板状の金属箔15を重ねた状態で多重に巻回して成るハニカム体9と、ハニカム体9の外周に拡散接合された筒状の中間筒10と、ハニカム体9が収容され、両端部にディフューザ7,8がそれぞれ溶接X2で固定される筒状の外筒13を備えるメタル担体3において、ハニカム体9の軸方向両側で外筒13にそれぞれ溶接X1で固定され、中間筒10を介してハニカム体9を保持する一対の保持リング11,12を設け、各保持リング11,12は、ハニカム体9の一部端面及び中間筒10の端部に当接するストッパ部17と、中間筒10の端部と外筒との間に全周に亘って当接した状態で介在する保持部18を備え、中間筒10と外筒13との間にハニカム体9の熱膨張を吸収・許容する環状の隙間19を形成したため、ハニカム体9の熱膨張、特に半径方向に熱膨張を許容するため、膨張による応力の発生が低減され、波状の金属箔14と平板状(または小波状)の金属箔15の変形、はがれ等を防止できる。
加えて、外筒13とディフューザ7,8との溶接性を良好にできる。
【0023】
また、ハニカム体9の両金属箔14,15に複数の穴16を設けたため、排気の一部が穴16を介してハニカム体9の径方向へ流通し、これにより、排気浄化性能を向上できる。
また、ハニカム体9のストッパ部17で塞がれた部位にも排気の一部が穴16を介してハニカム体9の径方向へ流通するため、排気浄化性能の低下を抑えることができる。
【実施例2】
【0024】
以下、実施例2を説明する。
実施例2において、実施例1と同様の構成部材については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。
【0025】
図5は実施例2のメタル担体の内部を説明する断面図、図6は実施例2の保持リングの平面図、図7は図6のS7−S7線における断面図である。
【0026】
図5〜7に示すように、実施例2では、保持リング11,12のストッパ部17に円形状の穴20が複数形成されている点が実施例1と異なる。
なお、穴20の形状、形成位置、形成数、配置等については適宜設定できる。
【0027】
従って、実施例2では、実施例1の作用・効果に加えて、排気(図5の破線矢印で図示)の一部が保持リング11,12のストッパ部17の穴20を貫通してハニカム体9を軸方向に流通するため、ハニカム体9における排気の軸方向への流通量を増やして排気浄化性能を向上できる。
【実施例3】
【0028】
以下、実施例3を説明する。
実施例3において、実施例1と同様の構成部材については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。
【0029】
図8は実施例3のメタル担体の内部を説明する断面図である。
【0030】
図8に示すように、実施例3では、実施例1で説明したハニカム体9及び中間筒10を軸方向に沿って複数(実施例3では5つ)配置されている。
また、隣接するハニカム体9及び中間筒10の間に保持リング11,12と同形状の中間リング30が介装されている。
【0031】
中間リング30は、隣接するハニカム体9の一部端面に当接するストッパ部31と、隣接する中間筒10の一方側端部と外筒13の間に介在してこれら両者の間に環状の隙間32を形成する保持部33が備えられている。
また、隣接するハニカム体9同士間には中間リング30のストッパ部31の厚み分の隙間34が形成されている。
【0032】
<排気ガス浄化作用について>
このように構成されたメタル担体3では、排気上流側から排気(破線矢印で図示)がハニカム体9と隙間34を交互に通過しながら下流側へ流通する。
【0033】
従って、排気ガスの流れに対しリーディングエッジとなるハニカム体9の端面を5つ形成できる。
これにより、境界層をより多く破壊して排気ガスとメタル担体3のセルの表面に付けられた触媒との接触を促進でき、触媒排気浄化性能を向上できる。
また、実施例1と同様に各ハニカム体9の熱膨張を隙間32で吸収・許容できる。
<中間リングについて>
中間リング30は保持リング11,12と同一形状部品であるため、部品の種類を減らすことができる。
また、中間リング30は保持リング11,12に軸方向の移動を規制されるため、外筒13に溶接固定する必要がなく、外筒13に挿入して配置するだけで容易に組み付けが可能となる。
なお、これらの組み付けは、予め外筒13に保持リング12を溶接X1で固定しておき、ハニカム体9、中間リング30を交互に挿入した後、最後に保持リング11を装着して溶接X1で固定する。
【0034】
従って、実施例3では、実施例1の作用・効果に加えて、排気浄化性能の向上を図ることができる。
【0035】
以上、実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、中間筒10の全長をハニカム体9よりも長く形成することにより、保持リング11,12のストッパ部17とハニカム体9の端面との接触を回避して、該ハニカム体9を保護するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1のメタル担体が採用された車両の排気系を示す図である。
【図2】実施例1のメタル担体の内部を説明する断面図である。
【図3】実施例1のハニカム体の斜視図である。
【図4】実施例1の保持リングの斜視図である。
【図5】実施例2のメタル担体の内部を説明する断面図である。
【図6】実施例2の保持リングの平面図である。
【図7】図6のS7−S7線における断面図である。
【図8】実施例3のメタル担体の内部を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 エンジン
2a、2b、2c 排気管
3 メタル担体
4 サブマフラ
5 メインマフラ
6 フランジ
7、8 ディフューザ
9 ハニカム体
10 中間筒
11、12 保持リング
13 外筒
14、15 金属箔
16 穴
17 ストッパ部
18 保持部
19 隙間
20 穴
30 中間リング
31 ストッパ部
32 隙間
33 保持部
34 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波状の金属箔と小波状または平板状の金属箔を重ねた状態で多重に巻回して成るハニカム体と、
前記ハニカム体の外周に拡散接合された筒状の中間筒と、
前記ハニカム体が収容され、両端部に接続管がそれぞれ溶接固定される筒状の外筒を備えるメタル担体において、
前記ハニカム体の軸方向両側にそれぞれ外筒に溶接固定され、中間筒を介してハニカム体を保持する一対の保持リングを設け、
前記各保持リングは、ハニカム体の一部端面または中間筒の端部に当接するストッパ部と、中間筒の端部と外筒との間に全周に亘って当接した状態で介在する保持部を備え、
前記中間筒の中途部と外筒との間にハニカム体の熱膨脹を許容する環状の隙間を形成したことを特徴とするメタル担体。
【請求項2】
請求項1記載のメタル担体において、
前記ハニカム体及び中間筒を軸方向に沿って複数配置すると共に、隣接するハニカム体及び中間筒の間に前記保持リングと同形状の中間リングを介装したことを特徴とするメタル担体。
【請求項3】
請求項1または2記載のメタル担体において、
前記ストッパ部に穴を設けたことを特徴とするメタル担体。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれかに記載のメタル担体において、
前記ハニカム体の両金属箔に複数の穴を設けたことを特徴とするメタル担体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−450(P2010−450A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161382(P2008−161382)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】