説明

メタロプロテイナーゼMMP−2のヘモペキシン様ドメインに由来するポリペプチド

本発明は、メタロプロテイナーゼMMP-2のC末端非触媒ヘモペキシン様ドメインに由来する抗血管新生ポリペプチドに関する。本発明はまた、該抗血管新生ポリペプチドを含む医薬組成物を、及び血管新生疾患の治療、特に癌の治療のための該ポリペプチドの使用方法を、提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタロプロテイナーゼMMP-2のC末端非触媒ヘモペキシン様ドメインに由来する抗血管新生ポリペプチドに関する。本発明はまた、該抗血管新生ポリペプチドを含む医薬組成物、及び血管新生病の治療、特に癌の治療に該ポリペプチドを使用するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
血管新生は新しい血管が形成される基本的なプロセスであり、種々の正常な生体活動例えば生殖、発生及び成体の創傷治癒に不可欠である。血管新生プロセスは次の3つのうちいずれかの道をたどると考えられる:血管が既存血管から発芽する、血管が前駆細胞から新規形成される(脈管形成)、又は既存の小血管が径を拡大する。血管新生は増殖因子(VEGF、FGF)、細胞外マトリックスタンパク質、接着受容体、タンパク質分解酵素などを含む多様な分子の機能活性を必要とする。血管新生時には、これらのタンパク質の協調的制御が内皮細胞の増殖、マトリックス再形成、細胞の移動/浸潤、ひいては分化を招く。例えば、血管新生はインテグリンαvβ3によって介在される特定の内皮細胞接着事象に依拠することが最近の研究で報告されている(Brooks, PC, et al., Science, 264: 569-571 (1994); Brooks, P.C, et al. Cell, 79: 1157-1164 (1994); Friedlander, M, et al., Science 270: 1500-1502(1995))。従って、血管新生の生理的制御は血管微小環境内の活性化因子と抑制因子とのバランスに依拠する。
【0003】
血管新生は正常条件下では高度に制御されたプロセスではあるが、一貫して無秩序な血管新生は多くの疾患の原動力となる。そうした血管新生に関連する臨床症状は血管新生病という。
【0004】
例えば関節炎などのようなある種の既存疾患では、新たに形成される毛細血管が関節に浸潤し軟骨を破壊する。糖尿病では、網膜に形成される新毛細血管が硝子体に浸潤し、出血し、失明を引き起こす。
【0005】
固形腫瘍の成長と転移もまた新生血管病である(Folkman, J., Cancer Research, 46: 467-473 (1986))。例えば、腫瘍は独自の血液供給を確保しなければならないが、新毛細血管の成長を誘発することにより血液供給を確保していることがすでに立証されている。これらの新血管は、ひとたび腫瘍の中に組み込まれると、腫瘍細胞が循環血液中に入り、遠くの部位例えば肝臓、肺又は骨への転移を可能にする(Weidner, N., et al., The New England Journal of Medicine, 324(1) : 1-8 (1991))。
【0006】
血管新生病は毎年大勢の人々に影響を及ぼすため、治療のための組成物及び方法が大いに求められている。今後、血管新生の遮断がきわめて効果的な血管新生病治療法となりうることは明らかである。例えば新血管形成を遮断すれば腫瘍の成長を阻害しうるとの主張を裏付ける証拠が種々の動物モデルで得られており、ヒト臨床データはこの主張を支持し始めている(Varner, J. A., Brooks, P. C1 and Cheresh, D. A. (1995) Cell Adh. Commun. 3,367-374)。そのため、血管新生病治療用として数種の血管新生阻害薬が目下開発中である。
【0007】
ある研究で裏付けられているが、PEXと名づけられたメタロプロテイナーゼMMP-2のC末端非触媒ヘモペキシン様ドメインはインテグリンαvβ3と相互作用し、それによってこのインテグリンへのMMP-2の結合を阻害し、結果的に細胞-コラーゲン分解活性を失わせることができる(Brooks PC, et al., Cell. Feb 6;92(3): 391-400 (1998))。この研究ではさらに、組み換え型PEXの全身投与がin vivoの血管新生及び腫瘍成長を阻害することも示された。PEXの血管新生阻害能はすでに多くの研究で確認されている(Pfeifer A, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 97(22): 12227-32(2000); Bello L, et al., Cancer Res, 61(24): 8730-6 (2001); Pluderi M, et al., J Neurosurg Sci., 47(2): 69-78 (2003))。
【0008】
国際公開第9745137号パンフレットは、インテグリンαvβ3アンタゴニストを使用して組織中の血管新生を阻害する方法を開示している。そこで開示されている一実施形態では、該アンタゴニストは、ポリペプチド、特にMMP-2由来ポリペプチドの形態をとり、また特にPEXポリペプチドに関する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、野生型と同じin vitro及びin vivoでの血管新生阻害能を有するが、精製は野生型よりも容易である、メタロプロテイナーゼMMP-2のC末端非触媒ヘモペキシン様ドメイン(PEX)の新規変異体を提供する。実際に、本発明者らは、(配列番号1の配列の)PEXドメインの位置19及び210のシステインの間のジスルフィド結合の分断が、驚くべきことに、PEXの抗血管新生特性に影響を及ぼさないことを示した。実際に、ネズミの脳腫瘍モデルへの該変異体の投与は、寿命を著しく伸ばず。本発明者らはまた、該変異体が野生型ポリペプチドよりも高可溶性であるため、血管新生病治療薬として製造しやすいことも示した。
【0010】
従って、本発明の第1の態様は、配列番号1の位置19又は位置210の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失している、配列番号1の位置19から位置210に至るアミノ酸配列を含む抗血管新生ポリペプチド、あるいはその機能保存的変異体に関する。特に、該ポリペプチドは、配列番号1の位置19又は位置210の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失している配列番号1の位置13から位置210に至る配列、あるいはその機能保存的変異体を含んでもよい。該ポリペプチドはまた、配列番号1の位置19又は位置210の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失している配列番号1の配列、あるいはその機能保存的変異体を含有する。該ポリペプチドは別の実施形態によれば、配列番号2の位置46又は位置237の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失している配列番号2の位置35から位置237に至るアミノ酸配列、あるいはその機能保存的変異体を含有する。さらに別の実施形態によれば、該ポリペプチドは配列番号2の位置46又は位置237の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失している配列番号2の配列、あるいはその機能保存的変異体を含有する。
【0011】
本発明の第2の態様は前記のポリペプチドをコードする核酸に関する。
本発明の第3の態様は前記の核酸を含むベクターに関する。
本発明の第4の態様は前記の核酸及び/又はベクターでトランスフェクトした、感染させた又は形質転換した細胞に関する。
本発明の第5の態様は、それ必要とする生体の血管新生の阻害を意図した、前記のポリペプチド、核酸、ベクター又は細胞を、それぞれ少なくとも1つ含む医薬組成物に関する。
本発明の第6の態様は、血管新生病治療用の医薬の製造のための、前記のポリペプチドの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、mPEX又はPEX存在下での短期頭蓋内U87増殖実験を示す図である。
【図2】図2は、短期頭蓋内U87増殖実験の免疫組織学的分析を示す図である(CD31染色)。血管数、血管密度及び毛細血管間の間隔の測定値。PEX及びmPEXは、血管数と血管径の両方を減少させるが、毛細血管間の間隔を増大させる。
【図3】図3は、PEX又はmPEXで治療したマウスのU87腫瘍の組織切片における第VIII因子及びPDGF-β受容体の発現状況を示す図である。どちらの分子も二重陽性PDGF-β受容体/第VIII因子血管を同じように減少させている。
【図4】図4は、PEX又はmPEXで治療したマウスのU87腫瘍の組織切片におけるデスミン及びNG2の発現状況を示す図である。どちらの分子もデスミンとNG2の発現を同じように減少させている。これはPEXとmPEX が周皮細胞の漸加を同じように阻害することを示唆している。
【図5】図5は、PEX又はmPEXで治療したマウスのU87腫瘍の組織切片におけるKi67発現状況とTUNELを示す図である。どちらの分子もKi67(増殖マーカー)の発現を減少させ、アポトーシス指数(TUNEL)を上昇させている。
【図6】図6は、PEX又はmPEXで治療したマウスのU87腫瘍の 組織切片におけるIV型コラーゲンの発現状況を示す図である。どちらの分子もIV型コラーゲンの発現を減少させている。
【図7】図7は、Tyrp TagトランスジェニックマウスモデルにおけるmPEX 及びPEXの効果を示す図である。どちらの分子も眼の網膜着色上皮に由来する腫瘍の増殖と浸潤を阻害する。
【図8】図8は、U87グリオーマを頭蓋内移植したマウスの長期生存実験(Kaplan-Meyer分析)を示す図である。どちらの分子も生存率を同じように高める。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
RNA、ポリペプチド、タンパク質又は酵素のような発現産物の「コード配列」又は「コードする」配列は、発現すると、該RNA、ポリペプチド、タンパク質又は酵素が産生されるヌクレオチド配列である。すなわち該ヌクレオチド配列は該ポリペプチド、タンパク質又は酵素のためのアミノ酸配列をコードしている。タンパク質のコード配列は開始コドン(通常はATG)と終止コドンとを含んでもよい。
【0014】
本明細書で用いる用語「PEX」は、メタロプロテイナーゼMMP-2のC末端非触媒ヘモペキシン様ドメインをいう。PEXは、本発明との関連では、ラット又はマウスなどのげっ歯類、ネコ科、イヌ科、霊長類、特にサル又はヒトなどを含む任意の哺乳動物種に由来する。PEXは、好ましくはヒト由来である。データベースPDBSEQに1RTGの受託番号で寄託されているPEXのポリペプチド配列は配列番号1に示すとおりである。
【0015】
用語「mPEX」又は「MPEX」は、配列番号1の位置19及び位置210の2つのシステイン残基がセリン残基によって置換されている配列を含むポリペプチドをいう。
【0016】
「抗血管新生ポリペプチド」は、血管新生阻害能を有するポリペプチドをいう。
【0017】
「精製(された)」又は「単離(された)」は、ポリペプチド(すなわち本発明の抗血管新生ポリペプチド)又はヌクレオチド配列との関連では、記載の分子が他の同種の生体高分子の実質的不存在下において存在することを意味する。本明細書で用いる用語「精製(された)」は、同種の生体高分子の存在量が、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらになお好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98%であることを意味する。特定のポリペプチドをコードする「単離(された)」核酸分子とは、該ポリペプチドをコードしない他の核酸分子が実質的に混合していない核酸分子をいうが、該分子は組成物の基本的な性質に悪影響を及ぼさないような若干の追加の塩基又は残基を含んでもよい。
【0018】
「機能保存的変異体」は、タンパク質又は酵素中の特定アミノ酸残基が変化しているのに該ポリペプチドの全体としての構造及び機能は変らないような変異体である。アミノ酸の、類似の特性(例えば極性、水素結合ポテンシャル、酸性、塩基性、疎水性、芳香族性など)をもつアミノ酸への置換もそうした変化の一例である。保存アミノ酸とされている以外のアミノ酸はタンパク質中で異なってもよいので、機能が類似する任意の2タンパク質間のタンパク質又はアミノ酸配列類似性のパーセントは変動することがあり、Cluster Methodなどのようなアラインメント法によりMEGALIGNアルゴリズムを用いて求めた類似性で、例えば70%〜90%でよい。「機能保存的変異体」はまた、BLAST又はFASTAアルゴリズムで求めたアミノ酸同一性が少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらになお好ましくは少なくとも95%であり、かつ比較対象の天然型又は親タンパク質と同じ又は実質的に類似した特性又は機能をもつポリペプチドを含む。
【0019】
2アミノ酸配列が「実質的に相同である」又は「実質的に類似する」とは、両アミノ酸の80%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超が同一であるか、又は約90%超、より好ましくは95%超が類似する(機能的に同一である)場合である。好ましくは、類似又は相同配列はアラインメントによって同定する。アラインメントには例えばGCG(Genetics Computer Group, Program Manual for the GCG Package, Version 7; 米国ウィスコンシン州マジソン)パイルアッププログラム、又はBLAST、FASTAなどのような配列比較アルゴリズムのうちの任意のものを用いる。
【0020】
用語「PEG」は、任意のポリエチレングリコール分子をそのサイズや末端修飾には関係なく包摂し、また一般式X-O(CH2CH2O)n-OH(式中、nは20〜2300の整数であり、XはH又は末端修飾例えばアルキル基である)によって表される。
【0021】
「PEG化」は、ポリペプチドにポリエチレングリコール(PEG)鎖が付加されるプロセスを意味する。用語「PEG化ポリペプチド」は、該ポリペプチドに共有結合された少なくとも1つのPEG鎖を含むポリペプチドをいう。
【0022】
「血管新生病」は無秩序な血管新生に関連する疾患である。
【0023】
用語「患者」は、哺乳動物、例えばげっ歯類、ネコ科、イヌ科及び霊長類の動物をいう。本発明による患者は好ましくはヒトである。
【0024】
抗血管新生ポリペプチド
従って、本発明は、配列番号1の位置19又は位置210の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失している、配列番号1の位置19から位置210に至るアミノ酸配列を含む抗血管新生ポリペプチド、あるいはその機能保存的変異体を提供する。
【0025】
配列番号1の位置19又は位置210の少なくとも1つのシステイン残基の置換又は欠失は、配列番号1の位置19及び位置210のシステイン残基の間のジスルフィド架橋を分断する。従って、本発明のポリペプチドは配列番号1の位置19及び位置210のシステイン残基の間に天然に存在する(すなわちPEXに天然に存在する)ジスルフィド架橋を欠く。従って、本発明のポリペプチドは天然PEXを包摂しない。
【0026】
従って、本発明の抗血管新生ポリペプチドは、配列番号1の位置19及び位置210のシステイン残基の間のジスルフィド架橋が該システイン残基のうち少なくとも1つの置換又は欠失によって分断されている、配列番号1の位置19から位置210に至るアミノ酸配列、又はその機能保存的変異体、特に抗血管新生活性を保持するその変異体を含む。
【0027】
本発明の抗血管新生ポリペプチドは、配列番号1の位置20から位置209に至るアミノ酸配列又はその機能保存的変異体を含み又はからなる。ただし、配列番号1の位置19から位置210に至るアミノ酸配列を含有しない。
【0028】
特に該ポリペプチドは、配列番号1の位置19又は位置210の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失している、配列番号1の位置13から位置210に至るアミノ酸配列、又はその機能保存的変異体を含有してもよい。該ポリペプチドはまた、配列番号1の位置19又は位置210の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失している、配列番号1のアミノ酸配列又はその機能保存的変異体を含有してもよい。
【0029】
さらに、本発明者らは、その配列を配列番号2として示す修飾PEXドメインを、コード配列へのXhol制限部位及びヒスチジンタグの導入を目的に開発した。従って、本発明のポリペプチドは配列番号2の位置46又は位置237の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失している、配列番号2の位置35から位置237に至るアミノ酸配列、又はその機能保存的変異体を含有してもよい。該ポリペプチドはまた、配列番号2の位置46又は位置237の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失している、配列番号2の配列、又はその機能保存的変異体を含有してもよい。
【0030】
一実施形態によれば、両システイン残基はどちらも置換又は欠失している。
両システイン残基は独立に、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン及びトリプトファンからなる群より選択される天然アミノ酸によって置換されていてもよい。好ましくは、両システイン残基は独立に、アラニン又はセリン残基によって置換されている。さらに好ましくは、両システイン残基は、セリン残基によって置換されている。
【0031】
一実施形態によれば、本発明は、mPEXポリペプチド自体すなわち配列番号1の位置19及び位置210の2システイン残基がセリン残基によって置換されている配列番号1の配列を含有するポリペプチドに関する。
【0032】
本発明のポリペプチドは、で、任意の化学的、生物学的、遺伝子的又は酵素的技法に限定されないそれ自体公知の任意の技法を単独で又は組み合わせて用いて製造できる。
【0033】
所望のアミノ酸配列を認知していれば、当業者は、標準的なポリペプチド生産法により、例えば周知の固相法を用いて、好ましくは市販のペプチド合成装置(例えばApplied Systems(米国カリフォルニア州フォスター)社製の装置)を用いて、メーカーの使用説明書に従って、該ポリペプチドを容易に生産することができる。
【0034】
あるいは、本発明のポリペプチドは、技術上周知の組み換えDNA法で合成してもよい。例えば所望の(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列を発現ベクターに組み込み、かかるベクターを好適な真核又は原核生物宿主に導入すれば、そこで所望のポリペプチドが発現されるので、後に周知の技法を用いて単離すれば、これらの断片をDNA発現産物として得ることができる。
【0035】
本発明のポリペプチドは、単離された(例えば精製された)形態として、又は膜もしくは脂質小胞(例えばリポソーム)などのようなベクターに納めた状態で用いることができる。
【0036】
核酸、ベクター及び組み換え宿主細胞
本発明の更なる目的は本発明のポリペプチドをコードする配列を含有する核酸に関する。
【0037】
典型的には、該核酸はDNA又はRNA分子であり、任意好適なベクター例えばプラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージ又はウイルスベクター中に含有された状態でもよい。用語「ベクター」、「クローニングベクター」及び「発現ベクター」は、DNA又はRNA配列(例えば外来遺伝子)を宿主細胞に導入し、宿主を形質転換させ、導入配列の発現(例えば転写と翻訳)を促進するための媒体を意味する。
【0038】
そこで、本発明のさらなる目的は本発明の核酸を含有するベクターに関する。
【0039】
かかるベクターは、患者への投与の際に該ポリペプチドの発現を直接引き起こすためのプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどのような調節要素を含有してもよい。ベクターは、1つ又は数個の複製起点及び/又は選択マーカーをさらに含有してもよい。プロモーター領域はコード配列と相同でも非相同でもよいし、またin vivoでの使用を含めて、任意の好適な宿主細胞において、ユビキタスな、構成的な、調節された、及び/又は組織特異的な発現を提供する。プロモーターの例は、細菌プロモーター(T7、pTAC、Trpプロモーターなど)、ウイルスプロモーター(LTR、TK、CMV-IEなど)、哺乳動物遺伝子プロモーター(アルブミン、PGKなど)等である。
【0040】
プラスミドの例には、複製起点を含む複製プラスミド、又は例えばpUC、pcDNA、pBRなどのような組み込み型プラスミドがある。ウイルスベクターの例には、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス及びAAVの各ベクターがある。かかる組み換えウイルスは、公知技術で、例えばパッケージング細胞へのトランスフェクション、又はヘルパープラスミド又はウイルスによる一過性トランスフェクションにより作製してもよい。ウイルスパッケージング細胞の代表例はPA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などである。かかる非複製型ウイルスを作製するための詳しいプロトコール、は例えば国際公開第95/14785号、96/22378号の各パンフレット、米国特許第5,882,877号、第6,013,516号、第4,861,719号、第5,278,056号の各明細書、及び国際公開第94/19478号パンフレットなどに開示されている。
【0041】
本発明のさらなる目的は、本発明の核酸及び/又はベクターでトランスフェクトした、感染させた又は形質転換した細胞に関する。用語「形質転換」は、「外来」(すなわち外因性又は細胞外)の遺伝子、DNA又はRNA配列を宿主細胞に導入して、宿主細胞が導入遺伝子又は配列を発現し、該導入遺伝子又は配列によってコードされる所望の物質、一般的にはタンパク質又は酵素を産生することを意味する。宿主細胞は導入されたDNA又はRNAを受け取り及び発現することにより、「形質転換」される。
【0042】
本発明の核酸は、好適な発現系において本発明の組み換えポリペプチドを産生させるために使用してもよい。用語「発現系」は、好適条件下の宿主細胞と適合ベクターを、例えば該ベクターを媒体として該宿主細胞に導入される外来DNAがコードするタンパク質を発現するための宿主細胞と適合ベクターを、意味する。
【0043】
一般的な発現系の例は、E. coli宿主細胞とプラスミドベクター、昆虫宿主細胞とバキュロウイルス、哺乳動物宿主細胞とベクターなどである。他の宿主細胞の非限定的な例は、原核細胞(細菌など)及び真核細胞(酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)である。具体例は、E.コリ(E. coli)、酵母菌クルイベロマイセス(Kluyveromyces)又はサッカロマイセス(Saccharomyces)、初代培養又は株化哺乳動物細胞(例えばリンパ球芽、線維芽、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞などから生成)、及び哺乳動物細胞株(例えばベロ細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)である。より具体的には、本発明は、血管又は血管内皮細胞又は血管由来細胞、例えばヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)又は内皮前区細胞(PEC)を考慮している。
【0044】
本発明はまた、本発明の抗血管新生ポリペプチドを発現する組み換え宿主細胞を製造する方法であって、(i) 前記の組み換え核酸又はベクターをコンピテント宿主細胞にin vitro又はex vivoで導入し、(ii) 得られた組み換え宿主細胞をin vitro又はex vivoで培養し、及び(iii) 場合により、該抗血管新生ポリペプチドを発現する及び/又は分泌する細胞を選別すること、からなる工程を含む方法に関する。かかる組み換え宿主細胞は、前記の本発明の抗血管新生ポリペプチドの製造に使用することができる。
【0045】
本発明はさらに、本発明の抗血管新生ポリペプチドを製造する方法であって、(i) 本発明の形質転換宿主細胞を、該抗血管新生ポリペプチドを発現させるのに好適な条件下で培養し、及び(ii) 発現したポリペプチドを回収すること、からなる工程を含む方法に関する。
【0046】
機能保存的変異体
本発明のさらなる目的は、本発明の抗血管新生ポリペプチドの機能保存的変異体を包摂する。
【0047】
本発明のポリペプチドの構造に、また該ポリペプチドをコードするDNA配列に、修飾又は変異を加えても、望ましい性質をもつポリペプチドをコードする機能分子がなお得られる場合もある。にもかかわらず、該機能保存的変異体はジスルフィド架橋を一切含んではならず、従って配列番号1に示すPEXドメイン配列との比較でシステイン残基の少なくとも1つが置換又は欠失しているものとする。
【0048】
アミノ酸変異は表1に従ってDNA配列のコドンを変えるにより達成される。
【0049】
【表1】

【0050】
例えば、タンパク質構造によってはある種のアミノ酸が他のアミノ酸に置換しても抗血管新生能がそれほど失われることはない。タンパク質の生物機能活性を特定するのはそのタンパク質の相互作用能と性質であるので、タンパク質の配列に、そしてもちろん対応するDNAコード配列にある種のアミノ酸置換が起きても、同様の性質をもつタンパク質が得られる場合もある。従って、本発明のポリペプチド配列又は該ポリペプチドをコードした対応するDNA配列に種々の変異を加えても、その生物活性はあまり低下しないものと考慮される。
【0051】
前記抗血管新生活性は、後述のような種々の公知技術によって評価することができる。
【0052】
ポリペプチドのアミノ酸配列を改変させる際には、アミノ酸の疎水性指標(hydropathic index)が考慮される。タンパク質に相互作用型の生物機能を付与するうえでのアミノ酸疎水性指標の重要性は技術上広く理解されている。アミノ酸の相対的な疎水性指標は得られるタンパク質の二次構造に寄与するが、該タンパク質の他分子例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を規定するのはその二次構造である。各アミノ酸にはその疎水性及び電荷特性に基づいて疎水性指標が次のように割り当てられる: イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、トレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタミン酸(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラギン酸(<RTI3.5)、アスパラギン(-3.5)、リシン(-3.9)及びアルギニン(-4.5)。
【0053】
ある種のアミノ酸が同じような疎水性指標をもつ他のアミノ酸に置換しても、得られるタンパク質の生物活性に大差がない、すなわち生物学的機能等価タンパク質が得られることは技術上周知である。
【0054】
前記のように、そのため、アミノ酸置換は、一般にアミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えばその疎水性、親水性、電荷の有無、サイズなど基づく。以上のような特性を種々考慮に入れた置換例は技術上周知であり、アルギニンとリシン、グルタミン酸とアスパラギン酸、セリンとトレオニン、グルタミンとアスパラギン、バリンとロイシンとイソロイシンなどが挙げられる。
【0055】
機能保存的変異体の抗血管新生活性は、任意の公知の抗血管新生活性アッセイ、例えば本願で言及しているアッセイに従って評価することができる。
【0056】
PEG化
PEG化は、さまざまなポリペプチドの修飾方法として定着しており、実証されている(Chapman, A., Adv. Drug Deliv. Rev. 54: 531-545, 2002)。その利点は例えば次のとおりである: (a)PEGが分子の見掛けサイズを糸球体ろ過限度以上に大きくする結果としての腎クリアランスの回避及び/又は細胞クリアランス機構の回避によるin vivo循環半減期の著しい向上、(b)PEG付加分子の抗原性及び免疫原性の低下、(c)薬物動態の改善、(d)複合タンパク質のタンパク質分解耐性の向上(Cunningham-Rundles et.al., J. Immunol. Meth. 152: 177-190, 1992)、及び(e)PEG化ポリペプチドの熱的及び機械的安定性の向上。
【0057】
従って、本発明のポリペプチドには、1つ又は複数のポリエチレングリコール(PEG)鎖を共有結合させるのが有利である。
【0058】
従って、本発明の一態様は、修飾がポリペプチドに単一PEG鎖を共有結合させることを含む修飾ポリペプチドを提供する。他の態様は1つ、2つ、3つ、又はより多くのPEG鎖を共有結合させた修飾ポリペプチドを提供する。該1つ又は複数のPEG鎖は、分子量が約1kDaないし約100 kDa、好ましくは約10 kDaないし約60 kDa又は約10 kDaないし約40 kDaである。当業者は、望ましい用量、循環時間、タンパク質分解耐性、免疫原性など種々の因子を考慮することによって、PEG化ポリペプチドがどのように治療上使用されるかに基づいて、PEGの好適な分子量を決めることができる。
【0059】
一実施形態では、本発明のPEGは、一端がヒドロキシ基又はメトキシ基で終了する、すなわちXはH又はCH3である(メトキシPEG)。加えて、かかるPEGは、1つ又は互いに連結した複数のPEG側鎖からなってもよい。複数のPEG鎖をもつPEGは分岐PEGという。分岐PEGは。例えばグリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトールなどのような種々のポリオールへのポリエチレンオキシドの付加によって調製される。例えば4分枝の分岐PEGはペンタエリトリトールとエチレンオキシドとから調製される。PEGの一形態は、2本のPEG側鎖がリシンの第1級アミノ基を介して連結したもの(PEG2)を含む(Monfardini, C, et al., Bioconjugate Chem. 6 (1995) 62-69)。
【0060】
PEG鎖をポリペプチドに共有結合させるには、このポリマー分子のヒドロキシ末端基を活性型に、すなわち反応性官能基(例えば第1級アミノ基、ヒドラジド(HZ)、チオール、コハク酸(SUC)、コハク酸スクシンイミジル(SS)、スクシンイミジルスクシンアミド(SSA)、プロピオン酸スクシンイミジル(SPA)、スクシンイミジルカルボキシメチラート(SCM)、炭酸ベンゾトリアゾール(BTC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、アルデヒド、炭酸ニトロフェニル(NPC)、及びトレシラート(TRES)など)を付加した形にしておかなければならない。好適な活性化ポリマー分子は例えば米国Shearwater Polymers社(アラバマ州ハンツビル)又は英国PolyMASC Pharmaceuticals社などから市販されている。あるいは、公知の常法例えば国際公開第90/13540号パンフレットで開示されている方法によりポリマー分子を活性化してもよい。本発明における使用のための活性化線状又は分岐ポリマー分子の具体例は、参照により本明細書に援用されるShearwater Polymers社1997年版及び2000年版カタログ(Functionalized Biocompatible Polymers for Research and Pharmaceuticals, Polyethylene Glycol and Derivatives)に開示されている。活性化PEGポリマーの具体例は線状PEGについてはNHS-PEG (例: SPA-PEG、 SSPA-PEG、SBA-PEG、SS-PEG、SSA-PEG、SC-PEG、SG-PEG、SCM-PEG)及びNOR-PEG、BTC-PEG、EPOX-PEG、NCO-PEG、NPC-PEG、CDI-PEG、ALD-PEG1、TRES-PEG、VS-PEG、IODO-PEG、MAL-PEG、並びに分岐PEGについてはPEG2-NHSである。
【0061】
ポリペプチドと活性化ポリマー分子の結合は任意の常法を用いて行う。当業者には自明であろうが、使用する活性化法及び/又は結合法はポリペプチドの結合基とPEG分子の官能基(例: アミン、ヒドロキシ、カルボキシ、アルデヒド、ケトン、スルフヒドリル、スクシンイミジル、マレイミド、ビニルスルホン又はハロ酢酸)とに依拠する。
【0062】
一実施形態では、ポリペプチドは、(COOHについては)アミノ酸D及びEで、(OHについては)T、Y及びSで、(NH2については)Kで、(少なくとも1つのシステインが保存される場合にSHについては)Cで、及び/又は(アミド基については)Q、Nで、それぞれPEGと結合される。
【0063】
一実施形態では、PEG化のための追加部位を、部位特異的変異法による1つ又は複数のリシン残基の導入により導入することができる。例えば、1つ又は複数のアルギニン残基はリジン残基に変異される。別の実施形態では、追加のPEG化部位は本発明のポリペプチド上のアミノ酸を修飾することにより化学的に導入する。
【0064】
一実施形態では、ポリペプチドへのPEGの結合はリンカーを介して行う。好適なリンカーは技術上周知である。好ましい例は塩化シアヌルである(Abuchowski et al., (1977), J. Biol. Chem., 252, 3578-3581; 米国特許第4,179,337号明細書)。
【0065】
本発明のPEG化ポリペプチドの精製には技術上周知の通常の分離精製技術例えばサイズ排除(ゲルろ過)及びイオン交換クロマトグラフィーなどを使用してよい。またSDS-PAGE法で生成物を分離してもよい。
【0066】
一実施形態では、本発明のPEG化ポリペプチドは、in vivo血中半減期が非修飾ポリペプチドのそれの少なくとも50%、75%、100%、150%又は200%である。
【0067】
血管又は腫瘍標的薬剤
別の実施形態では、本発明のポリペプチドは、血管の又は腫瘍標的薬剤に結合される。
【0068】
該血管の及び/又は腫瘍標的薬剤の非限定的な例は、フィブロネクチンのEDBドメインを標的とする抗体、血管内皮増殖因子受容体2結合性の抗体又は薬剤、線維芽増殖因子受容体1結合性の抗体又は分子、CD31と相互作用する抗体又は薬剤、腫瘍リンパ管内皮と相互作用する抗体又は薬剤(ポドプラニン、Lyve-1)、又はαVβ3インテグリン結合性の抗体又は薬剤例えばRGDペプチドなどである。腫瘍血管標的の戦略については、例えばBrekken et al. (Int. J. Cancer. 2002; 100 (2): 123-130)を参照されたい。
【0069】
血管新生病
血管新生病の非限定的な例は、原発性又は転移性の固形腫瘍、例えば乳、結腸、直腸、肺、中咽頭、下咽頭、食道、胃、膵臓、肝、胆嚢・胆管、小腸、腎、膀胱、尿路上皮、女性生殖系(子宮頸、子宮、卵巣; 絨毛腫、妊娠性絨毛性疾患を含む)、男性生殖系(甲状腺、副腎及び下垂体を含む)、皮膚の癌、及び血管腫、メラノーマ、肉腫(骨や軟骨組織に由来する肉腫、並びにカポジ肉腫を含む)、並びに脳、神経、眼の腫瘍、例えば星状細胞腫、グリオーマ、グリア芽腫、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽細胞腫、シュワン腫、髄膜腫などである。
【0070】
血管新生病はまた、造血器悪性腫瘍例えば白血病及びホジキン並びに非ホジキンリンパ腫に由来する腫瘍にも関係する。
【0071】
血管新生病はまた、リウマチ性、免疫性及び変性関節炎; 各種眼疾患例えば糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植拒絶、水晶体後線維増殖症、血管新生緑内障、ルベオーシス、黄斑変性症に起因する網膜新血管形成、低酸素症、感染症又は外科的介入に伴う眼の血管新生、及び眼の他の異常新血管形成にも関係する。
【0072】
血管新生病はさらに、皮膚疾患例えば乾癬; 血管疾患例えば血管腫、アテローム斑内の毛細血管増殖;オスラー・ウェバー症候群; 心筋血管新生; プラーク血管新生;血友病性関節炎; 血管線維腫; 及び創傷肉芽形成をも含む。
【0073】
他の血管新生病は、内皮細胞の過剰又は異常刺激を特徴とする疾患例えば腸管癒着症、クローン病、アテローム性動脈硬化症、強皮症及び肥厚性瘢痕すなわちケロイド、猫引っ掻き病(Rochele ninalia quintosa)や潰瘍(Helicobacter pylori)などのような病理学的帰結として血管新生を伴う疾患などである。
【0074】
治療方法と治療への使用
一実施形態では、本発明は、治療上有効量の本発明のポリペプチド又は核酸を、それを必要とする患者に投与することを含む血管新生病の治療方法を提供する。
【0075】
本明細書で用いる「治療する」又は「治療」は本発明との関連では、そうした用語が適用される疾患もしくは症状又はかかる疾患もしくは症状の1つ又は複数の症候の進行を逆転、緩和、阻害し、あるいは該疾患もしくは症状又は該疾患もしくは症状の1つ又は複数の症候を予防すること、を意味する。
【0076】
本発明では、用語「患者」又は「それを必要とする患者」は、血管新生病にかかった又はかかりそうなヒト又はヒト以外の哺乳動物を意図している。
【0077】
「治療上有効量」の本発明のポリペプチドは、任意の医学的治療に適用される合理的なリスク効果比で血管新生病を治療する(例えば腫瘍の成長を制限する、又は腫瘍の転移を遅くするもしくは阻止する)に足る量のポリペプチドを意味する。しかし、本発明のポリペプチド及び組成物の合計日用量は、当然ながら、主治医が正しい医学的判断により決定することになろう。特定の患者に応じた具体的な治療上有効量レベルは種々の因子、例えば対象疾患とその重篤度; 使用個別ポリペプチドの活性; 使用個別組成物、患者の年齢、体重、全身健康状態、性別及び食事; 使用される個別ポリペプチドの投与時間、投与経路及び排泄速度; 治療期間; 使用個別ポリペプチドとの併用又は同時使用薬; 及び医術上周知の同様の因子に依存しよう。例えば所望の治療効果をあげるために要求されるよりも低レベルの用量で化合物の投薬を開始し、所望の効果が得られるまで次第に投与量を増やしていくことは技術上十分に可能である。
【0078】
別の実施形態では、本発明は本発明の少なくとも1つのポリペプチド又は核酸の、血管新生病治療用医薬の製造のための使用に関する。
【0079】
医薬組成物
本発明のポリペプチド又は核酸は、薬学的に許容される賦形剤、及び場合により徐放用マトリックス例えば生分解性ポリマーと混合して治療用組成物としてもよい。
【0080】
「薬学的」又は「薬学的に許容される」は、哺乳動物特にヒトに適宜投与したときに副作用、アレルギー反応又は他の有害反応を生じない分子化合物及び組成物をいう。薬学的に許容される担体又は賦形剤は、無害の固体、半固体又は液体の増量剤、希釈剤、カプセル化材又は任意の調合助剤をいう。
【0081】
本発明の経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所又は直腸投与用の医薬組成物では、活性成分を単独で又は別の活性成分と組み合わせて、通常の医薬担体との混合物として、単位投与形態で動物及び人間に投与することができる。好適な単位投与形態は錠剤、ゲルカプセル剤、散剤、顆粒剤及び経口懸濁剤又は液剤などのような経口投与形態; 舌下及び口腔投与形態; エアロゾル、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、髄腔内及び鼻内投与形態; 直腸投与形態などを含む。
【0082】
医薬組成物は、好ましくは、薬学的に許容される注射製剤用ビヒクルを含有する。 医薬組成物は、特に等張滅菌食塩液(リン酸一ナトリウム又は二ナトリウム、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウム又はマグネシウムなどの塩又はかかる塩の混合物)でもよいし、あるいは滅菌水又は生理食塩水を適宜添加すればすぐに注射液の構成を許容するような乾燥特に凍結乾燥組成物でもよい。
【0083】
注射用の好適な剤形の例は、滅菌水溶液又は分散液; ゴマ油、落花生油又は水性プロピレングリコールを含有する製剤; 及び滅菌注射溶液又は分散液への即時調製に適した滅菌粉末などである。いずれの場合にも、剤形は滅菌済みで、かつ容易に注射できる程度に流動的でなければならない。また製造・貯蔵条件下で安定的で、かつ細菌や真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0084】
本発明の遊離塩基としての抗血管新生ポリペプチド又は薬理学的に許容される塩としての溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどのような界面活性剤を適宜混ぜた水で調製することができる。分散液をグリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物で、また油類で調製してもよい。これらの調製液は、通常の貯蔵・使用条件下では、微生物の増殖を防止するための防腐剤を含む。
【0085】
本発明の抗血管新生ポリペプチドは、中性又は塩の形に調製することができる。薬学的に許容される塩には、酸付加塩があり、これはタンパク質の遊離アミノ基との反応で形成されるし、また塩酸もしくはリン酸などのような無機酸又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸との反応で形成される。遊離カルボキシ基との反応で形成される塩を無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は鉄の水酸化物や、有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどから派生させることもできる。
【0086】
担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒でもよい。適正な流動性は、例えばレシチンなどのようなコーティングの使用によって、分散液の場合は要求される粒子径の維持によって、また界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物作用は、種々の抗菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどで防止することができる。多くの場合、組成物には、等張剤、例えば砂糖又は塩化ナトリウムを添加するのが好ましい。注射用組成物の長時間吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどを組成物に添加すれば実現可能である。
【0087】
滅菌注射溶液の調製では、適正な溶媒に所要量の活性ポリペプチドを、必要に応じて前記の様々な他成分と共に加え、次いでろ過滅菌する。分散液は一般に、種々の滅菌活性成分を、基本的な分散媒と前記のうちの必要な他成分とを含有する滅菌ビヒクルに加えて調製する。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、活性成分と追加の所要成分とからなる粉末を、予め滅菌ろ過しておいたその溶液から精製させる真空乾燥法及び凍結乾燥法である。
【0088】
さらに高濃度の又は高濃縮した直接注射用溶液の調製もまた考慮される。その狙いは溶媒としてDMSOを使用して、きわめて急速な浸透を起こし、高濃度の活性成分を狭い腫瘍部位に送達することにある。
【0089】
溶液は調製後、剤形にふさわしいやり方で、かつ治療有効量を、投与する。製剤は種々の剤形で容易に投与されるが、前記の注射剤ばかりでなく、徐放カプセル剤などにしてもよい。
【0090】
水溶液の非経口投与では、例えば溶液を必要に応じて適宜緩衝化し、また希釈液をまず十分な量の食塩水又はグルコースで等張化するとよい。この種の特定水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に特に好適である。この場合、使用可能な滅菌水性溶媒は、本願開示に照らして当業者には自明であろう。例えば1用量を等張NaCl溶液1 mlに溶解し、1000 mlの皮下注入液に添加するか、又は注入予定部位に注射する。用量は、患者の症状に応じてある程度加減する必要があろう。いずれにしろ、個別患者のための適正投与量を決めるための投与責任者である。
【0091】
抗血管新生ポリペプチドは、1回分あたり約0.0001〜1.0ミリグラム又は約0.001〜0.1ミリグラム又は0.1〜1.0さらには約10ミリグラム程度を含む治療用混合物として調製してもよい。複数回分の投与も可能である。
【0092】
非経口投与用例えば静脈又は筋肉注射用に調製されたポリペプチドに加えて、他の薬学的に許容される形態として、例えば錠剤等の経口投与用固形剤;リポソーム製剤;徐放カプセル剤;及び他の任意の現用形態もある。
【0093】
本発明のポリペプチドは、薬学的に許容される眼科用ビヒクルを使用して、該ポリペプチドが角膜や眼の内部領域、例えば前房、後房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜及び強膜などに浸透しうるように、送達してもよい。薬学的に許容される眼科用ビヒクルは、例えば軟膏、植物油又は封入材料などでもよい。あるいは、本発明のポリペプチドは、エレクトロポレーション法により、硝子体液、眼房水、毛様体組織又は細胞及び/又は外眼筋へと直接注入してもよい。
【0094】
本発明のポリペプチドは、他の抗血管新生剤と併用してその効果を高めるようにしても、又は他の抗血管新生剤と併用し他の細胞傷害剤と一緒に投与してもよい。特に固形腫瘍の治療に使用するときは、本発明のポリペプチドの投与は、IL-12、レチノイド、インターフェロン、アンギオスタチン、エンドスタチン、サリドマイド、トロンボスポンジン-1、トロンボスポンジン-2、カプトプリル、抗腫瘍薬例えばαインターフェロン、COMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキサート及びプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン及びデキサメタゾン)、PRO-MACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキサート(+ロイコボリン救済療法)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール、エトポシド/メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン及びプロカルバジン)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンギオインヒビン、TNP-470、ペントサンポリ硫酸、血小板第4因子、アンギオスタチン、LM609、SU-101、CM-101、テクガラン(Techgalan)、サリドマイド、SP-PGなどや放射線療法と併用してもよい。
【0095】
本発明は、特定の実施形態では、本発明のポリペプチドを、国際公開第0206300号パンフレットで開示されているようなPF-4、PF-4由来の断片及び融合タンパク質を含む群より選択される他の抗血管新生ポリペプチドと組み合わせて含む組成物を包摂する。
【0096】
抗血管新生アッセイ
本発明のポリペプチド特に機能保存的変異体は、その血管新生阻害能を測定することができる。測定には技術上周知の任意好適なアッセイ法を用いてよい。本明細書ではそのうちのいくつか開示する。
【0097】
例えば、鶏漿尿膜(CAM)の血管新生を測定するCAMアッセイと呼ばれるアッセイがある。CAMアッセイは他所で詳しく開示されており、また血管新生と腫瘍組織の新血管形成の両方の測定にすでに使用されている(Ausprunk et al., Am. J. Pathol, 79: 597-618 (1975)及びOssowski et al., Cancer Res., 40: 2300-2309 (1980))。CAMアッセイはよく知られたin vivo血管新生アッセイモデルである。というのは、全組織の新血管形成が起こり、また実際のニワトリ胚血管がCAM中に又はCAM上の増殖組織中に延びていくためである。そのうえ、CAM上に移植した任意の組織例えば腫瘍組織の増殖を測定するのも容易である。最後に、CAMアッセイはアッセイ系内に毒性の内部対照が存在するため、特に有用である。ニワトリ胚はどの試験試薬にもさらされるため、胚の健康状態は毒性の指標となる。
【0098】
血管新生を測定する第2のアッセイはin vivo兎眼モデルであり、「兎眼アッセイ」と呼ばれる。兎眼アッセイは他所で詳しく開示されており、また血管新生とサリドマイドなどのような血管新生阻害薬の存在下の新血管形成の両方の測定にすでに使用されている(D'Amato et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. 91: 4082-4085)。兎眼アッセイはよく知られたin vivo血管新生アッセイモデルである。というのは、角膜周縁から角膜中に延びていくウサギ血管などのような新血管形成がもともと透明な角膜を通して容易に視覚化されるためである。加えて、新血管形成の刺激もしくは阻害又は新血管形成の退行について、その程度と大きさの両方を経時的に測定するのが容易である。最後に、ウサギはどの試験試薬にもさらされるため、ウサギの健康状態は試験試薬の毒性の指標となる。
【0099】
第3のアッセイはキメラのマウス:ヒトマウスモデルで血管新生を測定するものであり、「キメラマウスアッセイ」と呼ばれる。このアッセイは他所で詳しく開示されており、また本明細書でも血管新生、新血管形成、及び腫瘍組織の退行の測定を目的にさらに開示されている(Yan, et al. (1993) J. Clin. Invest. 91: 986-996)。キメラマウスアッセイは有用なin vivo血管新生アッセイモデルである。というのは、移植皮膚片が正常なヒト皮膚と組織学的に近似しているうえに、全組織の新血管形成が起こり、そこで実際のヒト血管が移植ヒト皮膚から移植ヒト皮膚表面のヒト腫瘍組織中に延びていくためである。ヒト移植片中への新血管形成の起点は、ヒト特異的内皮細胞マーカーによる新生血管系の免疫組織化学的染色により証明することができる。キメラマウスアッセイは新血管成長の退行の大きさと程度から新血管形成の退行を示す。さらに、移植皮膚表面に移植された任意の組織、例えば腫瘍組織の増殖に対する効果をモニターするのが容易である。最後に、このアッセイは、アッセイ系内に毒性の内部対照が存在するため有用である。キメラマウスはどの試験試薬にもさらされるため、マウスの健康状態は試験試薬の毒性の指標となる。
【0100】
第4のアッセイは同所移植腫瘍モデルで血管新生を測定する(Bello et al. Cancer Treat Res. 2004; 117: 263-84)。例えば、脳悪性腫瘍では、脳腫瘍細胞をマウス脳に移植し、その増殖と血管新生を短期又は長期実験で測定する。所定時点がすぎた後、脳の血管密度、血管周皮細胞の存在、腫瘍細胞の増殖及びアポトーシスを分析する。
第5のアッセイではRip Tag又はTyrp-Tagなどのようなトランスジェニックマウスの腫瘍モデルで腫瘍成長及び血管新生を測定する(Rousseau et al. Cancer Res. 2004 Apr 1; 64(7): 2490-5)。
【実施例】
【0101】
実施例1:実験方法
組み換えPEX及びMPEXの産生: PCR法によりU87グリア芽腫細胞からPEX RNAを増幅した。PCRには次のプライマーを用いた: 5' CCG CTC GAG CCT GTC ACT CCT GAG 3'(センス鎖、配列番号3)及び5' CGG AAT CTC AGC AGC CTA GCC AG 3'(アンチセンス鎖、配列番号4)。増幅断片をpRSETベクター(Invitrogen社; 米国カリフォルニア州カールズバッド)中にクローニングし、BL21細菌の形質転換に用いた。形質転換したBL21細菌をLB培地で培養し、次いで1mMのイソプロピルチオールガラクトシド(IPTG)で発現を誘導した。PEXを変性条件下で精製した。大半のPEXが封入体を形成していたためである。次にPEXをNiキレートアガロース(Ni-NTAアガロース)で精製した。組み換えタンパク質をリフォールディングし、水で透析し、タンパク質濃度を求めた。精製タンパク質を12% SDS-PAGEにかけて、その純度を確認した。
【0102】
Cys19SerとCys210Ser(配列番号1の配列による)又はCys46SerとCys237Ser(配列番号1の配列による)の変異を導入したPEXは、鋳型としてのwtPEX、及び次のプライマーを用いて作製した:
プライマー 1 : 5' GAG CTC GAG CCT GTC ACT CCT GAG ATC TCC AAA C 3'(配列番号5);
プライマー 2 : 5' TCG GAA TTC TAA GGA GCC TAG 3'1(配列番号6)。
【0103】
PCR産物をPGEM-Tベクター中にクローニングし、XhoIとEcoRIによる切断及び精製後に変異PEX (mPEX)cDNAを得た。このmPEX cDNAをpRSETベクターのXhoI及びEcoRI部位にサブクローニングした。次いで、形質転換細菌をIPTGで発現誘導処理し、前記の要領でmPEXを精製した。血管新生及び増殖アッセイ法により、PEX及びMPEXの生物活性をin vitroで試験した。
【0104】
細胞培養: U87-MG細胞(ATCC; 米国メリーランド州)を動物実験に使用した。U87-MG細胞は2 mM L-グルタミンと10%FBSとを添加したMEMアルファ培地で培養した。この培地に1,000 U/mlペニシリン/ストレプトマイシン溶液を加え、5% CO2、37℃で細胞を培養した。
【0105】
ウェスタンブロット法: ウェスタンブロット法では、試料を煮てSDS-PAGEで分析した。タンパク質試料をImmobilin-Pメンブラン(Millipore社; 米国マサチューセッツ州ベッドフォード)に電気泳動法でブロットし、5%脱脂乳/トリス緩衝食塩水(TBS、10 mM Tris、pH 8.00、0.9% NaCl)+0.1% Tween-20(TBS-T)で1時間ブロックした。ブロットを一次抗体(ヒトPEX:モノクローナル抗体IM3LL 抗MMP-2、PBSで1:100希釈; Calbiochem; 米国カリフォルニア州ラホーヤ)と室温で1時間インキュベートした。次いでブロットを抗マウス又は抗ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ標識二次抗体(PBSで1:1500希釈)と1時間、室温でインキュベートした。抗体検出はECL-Plusシステム(Amersham Life Science)を用いて行った。
【0106】
動物実験
A) 短期組み合わせ実験
この一連の実験では、6週齢雄性ヌードマウス10頭からなる群に5万個のU87又はGL261グリア芽腫細胞を移植した。腫瘍細胞注射から12日後に、0.5 mg/Kg/日に相当する総濃度0.5mgのヒトPEX もしくはMPEX、又はPBSをリザーバに満たした皮下用Alzet 2004浸透圧ミニポンプを動物に埋め込んだ。最終群のマウスは対照とした。第2の一連の実験では、4週齢Tyrp1-TagSV40T マウスに、同様の濃度のヒトPEX、MPEX又はPBSを充填した皮下用Alzet 2004浸透圧ミニポンプを埋め込んだ。両実験条件で、治療を28日間続けた。これはポンプの作動期間に相当する。動物は副作用又は神経ストレスが生じた時点で、また最終的にはポンプ埋め込みから29日後に、犠牲にした。犠牲時に脳を摘出して、5%パラホルムアルデヒド/PBSにより4℃で24時間にわたり固定処理し、30%ショ糖/PBSにより4℃で24時間にわたり脱水処理し、OCT(Tissue-Tek、Miles社; 米国インディアナ州エルクハート)包埋し、-70℃で貯蔵した。次いで脳を切片に切断し、その一部を通常のH&E(ヘマトキシリン/エオシン)染色による組織検査にかけた。腫瘍の体積を計算し、平均±標準誤差として表した。腫瘍の体積は楕円体の公式(幅2×長さ)/2を用いて推定した。残りのスライドは後述のような免疫組織化学分析に用いた。腫瘍体積の統計分析には二元分散分析を用いた。投薬ごとの治療群間の一対比較をNewman-Keuls事後検定によって実行した。
【0107】
B) 長期実験
この一連の実験では、6週齢雄性ヌードマウス10頭からなる群に5万個のU87細胞を移植した。腫瘍細胞注射から12日後に、濃度0.5 mg/Kg/日のヒトPEX もしくはMPEX、又はPBSをリザーバに満たした皮下用Alzet 2004浸透圧ミニポンプを動物に埋め込んだ。ミニポンプのリザーバは3回交換し治療期間が都合110日間となるようにした。動物は副作用又は神経ストレスが生じた時点で、また最終的にはポンプ埋め込みから110日後に、犠牲にした。犠牲後ただちに脳を摘出し、前記のように処理した。Kaplan-Meyer 生存曲線を作成し、治療マウス、非治療マウスの生存率をログランク検定で比較した。動物実験はすべて少なくとも2回繰り返した。
【0108】
免疫組織化学及び免疫蛍光分析: 免疫組織化学分析のために、試料をOCT(Tissue-Tek、Miles社; 米国インディアナ州エルクハート)包埋し、ドライアイス/ブタン上で凍結処理し、-80℃で貯蔵した。クライオスタット(ICE Microtome)を用いて凍結切片(6μm)を切り出した。各試料の切片をヘマトキシリン/エオシン染色した。楕円体モデルを用いて腫瘍体積を計算した。一次抗体には、CD31(B&D, Pharmigen社; 米国カリフォルニア州サンノゼ)、CD3(MCA1825, Serotec社; 英国)、デスミン(Dako社; カリフォルニア州カルピンテリア)、S平滑筋AC(Sigma社)、PDGFβ受容体(CD140b, Bioscience社)、NG2(Chemicon社) 及びKi-67 核抗原(Dako社; カリフォルニア州カルピンテリア)、IV型コラーゲン(Chemicon社)、HIF-1 α(Chemicon社)などが含まれた。EDBフィブロネクチンドメイン検出用のL19は、Luciano Zardi(Istituto Ricerca sul Cancro、ジュネーブ)及びDario Neri(Swiss Federal Institute of Technology)より提供を受けた(Kaspar M, Zardi L, Neri D. Fibronectin as target for tumor therapy(腫瘍治療の標的としてのフィブロネクチン), Int J Cancer. 2006 Mar 15; 118(6): 1331-9)。免疫組織化学分析にはVectastain Elite ABCキット(Vector Laboratories社; カリフォルニア州バーリンゲーム)を用いた。検出は陽性で茶色になる発色団DABを用いて行った。免疫蛍光分析のために、10 μm切片を5%PAFのPBS、エタノール又は冷アセトン溶液で固定した。二次抗体の例は抗ウサギ及び抗ラットTexas red及びフルオレセイン標識抗体(Vector Laboratories社)、又は抗ウサギCyan 5(Bioscience社)などである。切片をDAPIで対比染色した(6-12)。腫瘍の低酸素状態を検出するため、脳を急速冷凍する1時間前にピモニザドール60 mg/Kg を静脈注射した。腫瘍切片中のピモニザドール-タンパク質付加体の検出には、hypoxyprobe-1 kit plus(Chemicon社)を用いた(21)。切片をヘマトキシリンで対比染色した。Ki-67染色を、無作為抽出した20フィールド内の全核のうちの陽性細胞数を数えて、定量した。
【0109】
血管密度と血管数の定量は、異なる腫瘍領域(腫瘍縁辺部、腫瘍中心部)を対象に、各領域につき少なくとも5枚のスライドで、また各試料につきCD31染色切片上の少なくとも15のフィールドで、実行した。血管径の測定は同じ切片及びフィールドを対象に、Mac Power Book G4コンピューターによりNIH Image 1.63ソフトウェアを用いて実行した。基底膜厚とEDB染色の測定は免疫蛍光切片を対象に、異なる腫瘍領域で、各領域につき少なくとも5枚のスライドで、また各試料につきCD31及びIV型コラーゲン又はEDBフィブロネクチンドメインについて二重染色した少なくとも15のフィールドで、またNIH 1.63ソフトウェア及びPhotoshopソフトウェアを用いて実行した。αSMA、デスミン、 PDGFβ受容体又はNG2 陽性細胞の定量は免疫蛍光切片を対象に、異なる腫瘍領域で、各領域につき少なくとも5枚のスライドで、また各試料につきCD31及びαSMA、デスミン、PDGFβ受容体又はNG2について二重染色した少なくとも15のフィールドで、またNIH 1.63ソフトウェア及びPhotoshopソフトウェアを用いて実行した。データは平均±標準偏差として表す。
【0110】
アポトーシス・アッセイ: アポトーシスのin situ検出も、TUNEL(ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ仲介d-UTP-ビオチンニック末端ラベリング)法により、ApopTag Plus Kit(Oncor社; 米メリーランド州ゲイサーズバーグ)を使用し、続いて1%メチルグリーンで対比染色して、実行した。アポトーシスは、切片あたり20の無作為抽出フィールドにおける全核に対する陽性染色細胞の百分率を求めて定量した。
【0111】
実施例2:結果
ヒトPEX又はMPEXの産生:
細菌培地10LからヒトPEXが2mg抽出された。同様の条件下で同量の培地からはMPEXが20 mg抽出された。従って、MPEXではタンパク質抽出歩留まりが10倍向上すると言える。ウェスタンブロット法では両分子とも28 kDaで単一バンドとして現れた。
【0112】
短期及び長期実験:
まず、ヌードマウスのU87グリオーマ細胞モデルでの短期実験によりin vivoグリオーマ増殖に対するMPEXの効果を調べ、ヒトPEXの効果と比較した。この実験では、動物の右わき腹皮下に埋め込んだ浸透圧ミニポンプにより阻害剤を連続全身投与した。ポンプは腫瘍細胞の注射から12日後に埋め込んだ。ポンプの作動期間が終わる埋め込みから29日後に動物を犠牲にした。犠牲後、脳を摘出、固定し、切片に切断し、腫瘍体積を計算した。PEXとMPEXによる治療はどちらもU87グリオーマの増殖を強力に阻害する(腫瘍体積ベースの阻害はそれぞれ98%、97%)結果となった(図2)。
【0113】
MPEX又はヒトPEXのin vivo腫瘍増殖阻害能は、Tyrp1-TagSV40T マウスモデルでも調べた。このモデルでは、腫瘍が誕生時に網膜内皮から発生し、視神経、視交叉及び大脳基底核への浸潤により脳内へと次第に成長していく。このモデルでは、自発的な腫瘍増殖環境で該分子の阻害効果を試験できる。第2の利点は、このモデルでは、腫瘍細胞の脳内への浸潤を試験できる点である。MPEX及びヒトPEXはどちらも、これらのマウスに4週齢から皮下ミニポンプで全身投与すると、腫瘍の増殖を強力に阻害することができた。MPEXによる治療は97%の腫瘍体積減を伴い、またPEXによる治療は99%の腫瘍体積減を招いた(図7)。
【0114】
U87ヌードマウスグリオーマモデルで長期実験を行い、MPEXのin vivoグリオーマ増殖長期阻害持続能を調べた。この実験では、MPEXの効果をヒトPEXの効果と比較した。両分子とも、阻害剤0.5 mg/Kgを充填した浸透圧ミニポンプで連続全身投与した。長期間の治療を可能にするため、ポンプを3回交換した。MPEX及びヒトPEXによる治療で対象動物の生存は有意に延長した。MPEX及びPEX治療動物の50%生存率は90日を超えたが、この時点では治療動物の80%、75%がそれぞれまだ生きていた。どちらの治療も副作用がなく、非常に寛容であった(図8)。
【0115】
組織分析:
MPEX及びヒトPEXで治療したグリオーマ異種移植片を組織分析すると、腫瘍増殖の阻害は血管数の著減、血管径の縮小、及び毛細血管間の間隔の増大を伴うことが判明した。基底膜の厚さも減少した。アポトーシス率は上昇し、増殖率は低下した(図5)。周皮細胞の被覆状況を分析すると、両分子による治療は腫瘍血管系の再形成を伴うことが判明した。対照動物に由来する腫瘍では、血管は層状に不規則配置された内皮細胞で構成され、また周皮細胞で不均一に被覆されていたが、MPEX又はPEXで治療した動物に由来する腫瘍では、血管系は小長円形の血管で形成され、血管は単層の内皮細胞で構成され、連続被覆層をなす周皮細胞で均一に被覆されていた。対照腫瘍では内皮細胞はPDGFβ受容体、デスミン及びNG2の各陽性周皮細胞で被覆されていたが、MPEX又はPEX治療腫瘍では、NG2陽性周皮細胞が有意に増加していた(図3及び4)。血管基底膜のIV型コラーゲンもまた両分子の作用で減少する(図6)。同様の所見はTyrp1-TagSV40T マウスモデルでも認められた。
【0116】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の位置19〜210のアミノ酸配列を含む単離された抗血管新生ポリペプチドであって、配列番号1の位置19又は210の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失されている、ポリペプチド、あるいはその機能保存的変異体。
【請求項2】
配列番号1の位置19及び210のシステイン残基の間のジスルフィド結合が、該システイン残基の少なくとも1つの置換又は欠失により分断されている、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号1の位置20〜209のアミノ酸配列又はその機能保存的変異体を含むが、配列番号1の位置19〜210のアミノ酸配列を含まない、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号1の位置19又は210の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失されている、配列番号1の位置13〜210のアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド、あるいはその機能保存的変異体。
【請求項5】
配列番号1のアミノ酸配列を含み、配列番号1の位置19又は210の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド列、あるいはその機能保存的変異体。
【請求項6】
配列番号2の位置35〜237のアミノ酸配列を含み、配列番号2の位置46又は237の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド列、あるいはその機能保存的変異体。
【請求項7】
配列番号2のアミノ酸配列を含み、配列番号2の位置46又は237の少なくとも1つのシステイン残基が置換又は欠失されている、請求項1〜3及び6のいずれか1項に記載のポリペプチド列、あるいはその機能保存的変異体。
【請求項8】
前記少なくとも1つのシステイン残基が、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン及びトリプトファンからなる群より選択されるアミノ酸によって置換されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
2つのシステイン残基が置換又は欠失されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
2つのシステイン残基がセリン残基によって置換されている、請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
少なくとも1つのポリエチレングリコール基によって共有結合的に結合されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
血管の又は腫瘍の標的剤に共有結合的に結合されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする配列を含む核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含むベクター。
【請求項15】
請求項13に記載の核酸及び/又は請求項14に記載のベクターによって形質転換された宿主細胞。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリペプチドを製造する方法であって、以下のステップ:
(i) 請求項15に記載の形質転換宿主細胞を、該ポリペプチドの発現を許容する好適な条件下で培養し;及び
(ii) 発現したポリペプチドを回収すること、
を含む、前記方法。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリペプチドを薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項13に記載の核酸又は請求項14に記載のベクターを薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項15に記載の宿主細胞を薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物。
【請求項20】
血管新生病治療用の医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項21】
血管新生病治療用の医薬の製造のための、請求項13記載の核酸の使用。
【請求項22】
前記医薬が、関節炎、関節リウマチ、固形腫瘍転移、固形腫瘍、網膜症、糖尿病性網膜症又は黄斑変性症、乾癬及び慢性炎症性皮膚疾患からなる群より選択される症状を治療するためのものである、請求項20又は21に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−538612(P2009−538612A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512699(P2009−512699)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001413
【国際公開番号】WO2007/138455
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(505287391)エンスティテュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル(イ エヌ エス ウ エール エム) (3)
【Fターム(参考)】