説明

メダルを用いた遊技機とメダル検出

【課題】経路を通過するメダルの検出に際して、異物検出の信頼性を高める。
【解決手段】発光部216と受光部220とが対となった透過型の第1〜第3の光学系を備え、これら三つの光学系のうちの二つ以上の光学系を検出対象物の検出に有効な有効光学系として、メダルMや発光異物、液晶パネル異物の検出に用いる。この際、有効光学系においては、その光学系に含まれる各発光部での発光を行い、三つの光学系のうちの有効光学系以外の光学系では、発光部での発光を行わない。そして、有効光学系の組み合わせを、第1光学系と第2光学系が有効光学系の第1セットと、第2光学系と第3光学系が有効光学系の第2セットと、第1光学系と第3光学系が有効光学系の第3セットとから、所定のタイミングで設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メダル投入を受けて遊技を開始する遊技機、特に遊技機におけるメダル検出に関する。
【背景技術】
【0002】
メダルを用いた遊技機は、例えばスロットマシンが良く知られており、当該マシンでは、メダル投入を受けて遊技が開始される。遊技開始に際しては、実際にメダルが投入された事の検出のほか、投入されたメダルの真偽判定も要請されている。そして、こうした要請に応えるべく、種々の提案がなされている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−261778号公報
【0004】
この特許文献では、発光部が発した光を検出対象物で反射させ、メダル以外の異物の表面で光が反射した際の反射光の減衰を利用している。そして、メダルとそれ以外の異物とでは、こうした反射光減衰の結果として、メダルがない場合と透明な異物がある場合での受光部での受光レベルに差が出るので、この受光レベル差をメダル検出や真偽判定(異物判定)に用いている。
【0005】
また、発光部での光の射出を一定周期のパスル信号出力に基づいたパルス状のものとし、光の出射パスルと受光部での受光信号パルスとの同期を取ることで、異物判定の精度向上が図られている。
【0006】
ところで、自らが光を発して受光部に受光信号を出力させる発光性の異物(発光異物)がメダルに代わって遊技機に投入することも予想される。こうした発光性異物は、パルス状に発光を起こすよう構成し、そのパルス周期も調整されていることがある。そうすると、発光性異物の発光周期が遊技機における発光部の出射を起こすパルス信号の周期と一致すると、発光性異物はメダルを擬制することになり、発光性異物を誤ってメダルと誤判定してしまう危惧がある。この他、透光性・非透光性を切り替え可能な異物、例えば液晶パネル異物が投入されることも予想される。こうした液晶パネル異物は、それまで非透光性であった部位を透光性に切り替えつつ、当該非透光性部位をメダルが通過するように移動させるよう調整されていることがあるので、この非透光性部位の移動により液晶パネル異物はメダルを擬制することになり、液晶パネル異物を誤ってメダルと誤判定してしまう危惧がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、メダルを用いた遊技機におけるメダル検出に際しての上記問題点を解決するためになされ、異物検出の信頼性の向上を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の遊技機では、メダル経路を通過するメダルを検出するに当たり、メダル経路に沿って少なくとも三つ以上の検出器を備え、これら検出器でメダル経路における検出対象物の有無を、前記メダル経路の異なる位置で検出する。そして、前記検出対象物の検出に有効な検出器を、この三つ以上の検出器のうちから、少なくとも二つ設定し、検出対象物の検出に有効とされた検出器の検出状況に基づいて、前記検出対象物が真正のメダルであるかを検出し、その検出結果に応じて、前記遊技機の遊技の継続許可と遊技停止を決定する。
【0009】
つまり、上記した検出器の設定の都度、検出対象物の検出に有効な検出器(以下、単に有効検出器、とも呼ぶ)の組み合わせが変わるので、メダルの通過を擬制する異物を、こうした有効検出器の組み合わせに対応させて、その組み合わせの有効検出器の出力状況を擬制するものとすることは困難である。よって、真正のメダルMがメダル経路を通過する際の二つ以上の有効検出器での検出状況と、異物がメダルMに代わって投入された場合の二つ以上の有効検出器での検出状況とは、ほとんど一致することが無くなる。このため、異物検出の信頼性をより一層高めることができる。
【0010】
こうした有効検出器の設定は、有効検出器の個数についても設定する他、所定のタイミングで行うようにでき、例えば、前記遊技機への電源投入タイミング、ユーザーによる設定操作部の操作タイミング、所定時間ごとの周期タイミング、前記遊技機における所定の遊技状態(例えば、大当たり入賞)への推移タイミングの少なくともいずれかのタイミングで有効光学系の組み合わせを設定すればよい。こうすれば、有効検出器の組み合わせは設定タイミングの都度に変わるので、異物検出の更なる信頼性向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明の遊技機は、次のような態様とすることもできる。例えば、検出器には、光学式のものや、磁気式等種々のものを採用できるが、光学式検出器は保守が容易等の理由から普及が進んでいるので、本発明で取った態様は、三つ以上の前記検出器として、光を射出する発光部と受光した光量に応じた受光信号を出力する受光部とを備える光学系とし、この光学系にて、前記メダル経路を通過する前記検出対象物に前記発光部の光を照射して前記受光部から前記受光信号を得ることとした。その上で、前記検出対象物の検出に有効な光学系を、この三つ以上の光学系のうちから、少なくとも二つ設定し、検出対象物の検出に有効とされた光学系に含まれる前記受光部からの前記受光信号の出力状況に基づいて、前記検出対象物が真正のメダルであるかを検出し、その検出結果に応じて、前記遊技機の遊技の継続許可と遊技停止を決定する。
【0012】
つまり、上記した光学系の設定の都度、検出対象物の検出に有効な光学系(以下、単に有効光学系、とも呼ぶ)の組み合わせが変わるので、自らが光を発して受光部に受光信号を出力させる発光異物であれ、非透光性部位を移動させる液晶パネル異物であれ、こうした光学系の組み合わせに対応させて、その組み合わせの光学系の受光部に受光信号を出力させたりすることは困難である。よって、真正のメダルMがメダル経路を通過する際の二つ以上の有効光学系での受光部での受光信号の出力状態と、発光異物或いは液晶異物がメダルMに代わって投入された場合の二つ以上の有効光学系での受光部での受光信号の出力状態とは、ほとんど一致することが無くなる。このため、異物検出の信頼性をより一層高めることができる。
【0013】
また、本発明の遊技機は、次のような態様とすることもできる。例えば、前記光学系ごとの前記発光部を光学系ごとに異なる色の光を射出するものとし、前記光学系ごとの前記受光部は、該受光部が属する光学系における前記発光部が射出する色の光を受光する第1受光部と、他の色の光を受光する第2受光部とを有する。こうすれば、有効光学系の設定の都度に、その設定された有効光学系の発光部が射出する光の色(以下、この色を有効色とも呼ぶ)の組み合わせも変わることになる。また、有効光学系の発光部が射出した有効色以外の色の光が射出されれば、第2受光部によって他の色の光が受光されるが、有効光学系の発光部は、有効色の光しか射出しないので、通常、この第2受光部での受光は起きない。
【0014】
多くの場合、発光異物は単一の色の光(例えば、白色光)を発するので、この発光異物が有効光学系に有る場合、この有効光学系における第1受光部での光の受光が起きる他、他の色の光を受光する第2受光部でも光の受光が起きる。よって、二つ以上の有効光学系における真正のメダルMによるそれぞれの有効光学系における第1、第2の受光部での受光状態と、二つ以上の有効光学系における発光異物によるそれぞれの有効光学系における第1、第2の受光部での受光状態とは、第2受光部での受光の有無により顕著に相違する。しかも、二つ以上の有効光学系の組み合わせは一律ではなく、その設定の度に変わることから、発光異物における二つ以上の発光箇所の組み合わせと、二つ以上の有効光学系の組み合わせとが一致することはほとんど無い。
【0015】
それぞれの有効光学系での発光部からの光の色の光を定めるに当たっては、光学系ごとの発光部の光路に光の3原色であるいわゆるRGBフィルタを設置したり、RGBの発光源を発光部に備え付け、各発光源の出力を調整することで、発光部からの光の色を設定すればよい。また、有効色の光を受光する第1受光部については、例えばRGBの一つの色のフィルタを備え付け、そのフィルタを通過した光を受光するようにすることができる。第2受光部は、第1受光部と異なる色のフィルタにて、当該フィルタで規定される色の光を受光するようにすることができる。例えば、赤色の光を射出する発光部を有する有効光学系では、赤のフィルタを備えた第1受光部と、青のフィルタを備えた第2受光部を用意する。こうすれば、この有効光学系では、第1受光部での光の受光は起き、第2受光部では光の受光は起きないが、当該有効光学系において発光異物が白色光を発している場合には、第1受光部でも第2受光部でも光の受光は起きるので、高い信頼性で発光異物の検出が可能となる。また、こうした受光状態の相違の他、先に説明したように、有効光学系の組み合わせと発光異物における発光箇所の組み合わせの相違の点からも、発光異物検出の信頼性を高めることができる。
本発明は、既述した遊技機の他、メダル検出装置やメダル経路を通過するメダル検出方法として適用できる。そして、本発明のメダル検出装置と検出方法によっても、異物検出の信頼性を高めることができる。また、光学式の検出器に限らず、磁気式等の他の形式の検出器を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スロットマシン100の概略構成を表す斜視図である。
【図2】スロットマシン100の内部構造の概略を表す斜視図である。
【図3】メダル識別機構200の概略構成を示す説明図である。
【図4】メダル検出部210の外観を概略的に示す説明図である。
【図5】メダル検出部210を破断して示す説明図である。
【図6】発光部・受光部を有する三対の光学系の様子を模式的に示した説明図である。
【図7】スロットマシン100の電気的な構成の概略を示すブロック図である。
【図8】有効光学系の組み合わせ設定処理の内容を示すフローチャートである。
【図9】メダルMや異物の検出処理の内容を示すフローチャートである。
【図10】発光異物検出の様子を模式的に示す説明図である。
【図11】変形例における光学系の構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。本実施例では、メダル検出が不可欠な遊技機の一例であるスロットマシン100について説明する。図1はスロットマシン100の概略構成を表す斜視図、図2はスロットマシン100の内部構造の概略を表す斜視図である。
【0018】
図示するように、スロットマシン100は、中空の箱状をなす本体102に対して前面扉103を開閉自在に備え、正面視略矩形状とされている。本体102は、スロットマシン100の骨格をなす部材であり、スロット遊技に必要な種々の機器を収納するが、本発明の要旨とは直接関係しないので、概略的な詳細に止めることとする。
【0019】
図2に示すように、本体102は、その内部上段に、各種の図柄等が表示され三つの回胴111を回転可能に備え、内部下段には、ホッパ装置112や電源ボックス113を備える。ホッパ装置112は、メダルを貯留する補助タンク112a内のメダルを前面扉103の側のメダル払出口114へ払い出す。電源ボックス113は、スロットマシン100の遊技を制御する制御装置120を始めとする種々の機器に電源を供給する。
【0020】
前面扉103は、その前面に、それぞれの回胴111を臨ませる窓103aを備える他、遊技者に操作されるボタン群やライン表示灯、メダル投入口104、メダル払出口114からのメダルを受け取るメダル受皿115等を有する。また、前面扉103は、その背面側に、既述した制御装置120の他、扉ロック用のキーシリンダ118や、メダル識別機構200、メダル補給経路116、メダル排出経路117等を有する。メダル識別機構200は、メダル投入口104から投入されたメダルをメダル補給経路116とメダル排出経路117に振り分ける機能も果たす。つまり、メダル識別機構200は、使用できるメダルと否であるメダルとをメダル直径に応じて選別する周知の振分機構を有し、メダル投入口104から投入されたメダルがスロットマシン100に不適合のメダルであった場合には、このメダル識別機構200にて選別され、その下方に位置するメダル排出経路117へ排出される。
【0021】
一方、メダル投入口104から投入されたメダルがスロットマシン100に適合するメダルであった場合には、このメダル識別機構200にて選別されたメダルは、メダル補給経路116へと排出される。このメダル補給経路116は、前面扉103から奥方(本体102の背面側)にむかって延出されており、前面扉103が閉状態となると、補助タンク112aの上方にその先端部が位置するように構成されている。これにより、本スロットマシン100に適合するメダルは、メダル識別機構200とメダル補給経路116とにより導かれて、補助タンク112aに補給され当該タンクにて貯留される。
【0022】
また、メダル識別機構200は、メダル投入口104から投入されたメダルの真偽判別や計数に必要なセンサ信号を取得し、当該信号を制御装置120に送信する。制御装置120は、メダル識別機構200からのセンサ信号に基づいてメダルの真偽判別や計数を行う。こうしたセンサ信号収得については、メダル識別機構200の構成と共に後述する。
【0023】
ここで、スロットマシン100による遊技の様子について簡単に説明する。遊技者が前面扉103のメダル投入口104にメダルを投入すると、当該メダルは、メダル投入口104からメダル識別機構200にメダルを導く後述のメダル経路を通過し、メダル識別機構200に達する。メダル識別機構200は、メダル経路を通過するメダルが既述した適正のものであれば、メダルをホッパ装置112に振り分けて送り込み、適正でなければ、メダルをメダル排出経路117を経て外部に排出する。この振り分けと共に、メダル識別機構200は、後述するようなセンサ信号を制御装置120に出力するので、制御装置120にてメダル真偽が判定され、真正のメダルであれば、遊技が開始できる状態となる。真正なメダルでなければ、制御装置120は、その旨を前面扉103の表示灯等で報知する。
【0024】
遊技開始ができる状態となれば、遊技者は、前面扉103のスタートレバー105を操作する。そうすると、制御装置120は、回胴111をそれぞれ回転させるので、遊技者は、回胴111に対応したストップボタン106を押圧する。その押圧を受けて、制御装置120は回胴111をそれぞれ停止させる。そして、停止した三つの回胴111の縦横斜めの図柄の一致状況に基づいて景品メダルをメダル受皿115に排出する。
【0025】
次に、メダル識別機構200について説明する。図3はメダル識別機構200の概略構成を示す説明図である。図示するように、メダル識別機構200は、投入を受けたメダルMを導くメダル経路202を有する。このメダル経路202は、メダルが1列で通過するよう形成されており、前面扉103のメダル投入口104からメダル補給経路116(図2参照)を経てメダルMを受け取り、下流に通過させる。メダル経路202は、装置上方から図において装置右方に湾曲した軌道を有する主経路203と、装置上方から真っ直ぐ下方に延びる軌道の排出経路204とを分岐して備える。主経路203は、上記の湾曲軌道に沿ってメダルMを通過させ、当該メダルを既述した図2のメダル補給経路116に送り出す。排出経路204は、主経路203の経路分岐箇所に設置された通路切替片205の駆動による経路切替により、メダルMをメダル排出経路117に送り出す。通路切替片205は、図示しないソレノイドによりメダル経路202の経路内に突出し、これにより経路を切り替える。なお、ソレノイド駆動を伴うこうした経路切替は、直径に基づく既述したメダル振り分けの結果に応じて行われる他、メダル詰まり時の遊技者による返却スイッチ操作によっても行われる。また、上記した各メダル経路は、メダル設置箇所が凸条とされており、メダルMは凸条の頂上に接しつつ転がるように搬送される。
【0026】
メダル識別機構200は、主経路203の経路途中に、メダル検出部210を有する。図4はメダル検出部210の外観を概略的に示す説明図、図5はメダル検出部210を破断して示す説明図である。これら図面に示すように、メダル検出部210はボディ212を備え、メダル識別機構200の筐体にネジ止め固定される。メダル検出部210は、主経路203を通過するメダルMの手前側(図3の紙面での手前側)にボディ212から突出した光路形成体214を備え、当該形成体基部に、発光ダイオードからなる3個の発光部216a〜216cを有する。
【0027】
発光部216a〜216cのそれぞれから射出された光(射出光)は、各発光部の前方側の小径の貫通孔217を光路として進み、光路形成体214先端の反射面218にて反射する。反射面218は、図示するように傾斜して形成されていることから、反射面218での反射光は、図中に符号Aで示す軌跡を光軸として斜めにボディ212の側に進む。つまり、メダル検出部210は、主経路203を通過するメダルMに対して、メダル表面と斜めに交差する方向から光を射出する。
【0028】
メダル検出部210は、ボディ212にフォトセンサからなる受光部220a〜220cを備え、これら受光部は上記の発光部に対応して配置されている。反射面218が光路形成体214の先端側に位置し、受光部220a〜220cがボディ212の側に位置し、メダルMは光路形成体214と受光部220a〜220cとの間に位置するという位置関係から、受光部220a〜220cのそれぞれは、主経路203を通過するメダルMに対して斜めに交差する方向から光を受光して、その受光光量に応じた受光信号を出力する。発光部216a〜216cと受光部220a〜220cのこうした位置関係から、この発光部216a〜216cと受光部220a〜220cは、主経路203を通過するメダルMに光を射出して検出する光透過型の検出部を構成し、この検出部は、発光部216a〜216cから射出されて受光部220a〜220cに受光される光の光軸を、メダルMに対して傾斜させていることになる。
【0029】
メダル検出部210は、上記した発光部216a〜216cと反射面218および受光部220a〜220cを対として光学系を構成し、この光学系をボディ212に三対組み込んで備える。図6は発光部・受光部を有する三対の光学系の様子を模式的に示した説明図である。なお、以下の説明に際しては、三対の上記の光学系を区別するため、それぞれの光学系の発光部と受光部とを、第1発光部216a、第2発光部216b、第3発光部216c、第1受光部220a、第2受光部220b、第3受光部220cと呼ぶ。
【0030】
図6に模式的に示されているように、第1発光部216aと第1受光部220aを有する光学系(第1光学系)と、第2発光部216bと第2受光部220bとを有する光学系(第2光学系)と、第3発光部216cと第3受光部220cとを有する光学系(第3光学系)とは、所定の間隔、即ち上記の発光部・受光部のメダル検出部210への組み込み間隔だけ隔たっている。
【0031】
本実施例では、三つの光学系のうちの二つ以上の光学系を検出対象物の検出に有効な有効光学系として、メダルMや発光異物、液晶パネル異物の検出に用いる。この際、有効光学系においては、その光学系に含まれる各発光部での発光を行い、三つの光学系のうちの有効光学系以外の光学系では、発光部での発光を行わないようにした。つまり、受光部220a〜220cの出力する三つの受光信号のうち、二つ以上の有効光学系についての受光信号をメダルMの検出に用いるようにした。こうすることで、後述するように、この有効光学系以外の光学系の受光部からの受光信号を異物検出に利用できる。
【0032】
本実施例では、第1〜第3の三つの光学系を有することから、設定可能な二つ以上の有効光学系の組み合わせは、第1光学系と第2光学系が有効光学系の第1セットと、第2光学系と第3光学系が有効光学系の第2セットと、第1光学系と第3光学系が有効光学系の第3セットとである。そして、これら組み合わせが後述するように所定のタイミングで設定される。この場合、第1〜第3の総ての光学系を有効光学系に設定する組み合わせ(全光学系セット)も採用できるが、本実施例では、この全光学系セットは採用しなかった。この点については、後述する。なお、有効光学系の組み合わせを増やす場合には、メダル検出部210が有する光学系の数を四以上とすればよく、例えば四つの光学系を用いれば、このうち、二つの光学系を有効光学系とした組み合わせが6で、三つの光学系を有効光学系とした組み合わせが4つとなる。
【0033】
メダルMが主経路203を通過するにつれて、メダルMは、まず、第1光学系の光軸に掛かり、次いで、第2光学系、第3光学系の順にそれぞれの光軸に掛かる。よって、各光学系にて発光を行う本実施例では、メダルMの通過により、第1受光部220a、第2受光部220b、第3受光部220cの順にメダル通過に伴う受光信号が得られる。そして、主経路203を通過するメダルMの経路に沿った光学系の間隔が所定のものであり、主経路203におけるメダルMの通過速度も予め判明していることから、第1〜第3の光学系での受光状況により、主経路203におけるメダルMの通過有無や真偽が判明する。こうした処理については後述する。
【0034】
ここで、本実施例のスロットマシン100の電気的な構成について、本発明に関連する構成を中心に説明する。図7はスロットマシン100の電気的な構成の概略を示すブロック図である。
【0035】
制御装置120は、本装置全般の制御を司る制御部121を備える。この制御部121は、論理演算を実行するCPUを中心に構成され、遊技プログラム等を記憶したROM、データの一時的な記憶を行うRAM等と協働して、メダル検出、メダル真偽判定、メダル計数、表示機器制御、回胴111の回動制御等を行う。制御部121は、CPUの他、メダル数カウンタ等も備え、リセットスイッチ122、スタートレバー105、第1発光部216a、第2発光部216b、第3発光部216c、第1受光部220a、第2受光部220b、第3受光部220cや、光学系設定スイッチ225、各種センサ・スイッチ群123、表示機器や回胴、その他の制御対象機器群124と接続されて、上記の各発光部の発光制御や各種機器制御を行う。また、制御部121は、CPUやROMのプログラムと協働して、光学系自動設定部125と、検出部126と、遊技継続決定部127を構成する。
【0036】
ここで、制御部121が行う発光部216の発光制御について簡単に説明する。本実施例では、発光部216を単純に発光制御するのではなく、各光学系の発光部216にパルス状の発光信号を出力して各光学系の発光部216からはパルス状に光を射出し、このパルス状の光を主経路203を通過するメダルMに照射する。各光学系の受光部220は、パルス状の光を受光し、パルス状に受光信号を出力する。そして、メダルMの通過に伴うメダルMによる光の遮光により、受光状態が変わることから、制御部121は、メダルMの通過に伴って受光レベルが推移するパルス状の受光信号を各光学系の受光部220から入力する。
【0037】
光学系自動設定部125は、所定のタイミング、例えば、スロットマシン100への電源投入タイミング、所定時間ごとの周期タイミングで、二つ以上の有効光学系の設定、即ち上記した第1〜第3のセットうちのいずれかの有効光学系の組み合わせを設定する。この周期タイミングとしては、10時、11時等の定時タイミングとすることができる他、15分ごとのタイミングや、遊技者が一回の遊技に通常要する時間(約2〜3分)よりも短い時間ごとのタイミング(例えば、1分ごと、30秒ごとのタイミング)、遊技状況が大当たりに推移したタイミングを採用できる。これに対し、光学系設定スイッチ225は、ホールの係員が手動にて二つ以上の有効光学系の設定をおこなうためのものであり、制御部121は、このスイッチ操作をタイミングとして、上記した第1〜第3のセットうちのいずれかの有効光学系の組み合わせを設定する。
【0038】
検出部126は、設定された有効光学系の受光部220からの受光信号の出力状況や、有効光学系の発光部216に出力したパルス信号と受光部220からのパルス状の受光信号の同期の状況等に基づいてメダルMの真偽判定を行う。遊技継続決定部127は、この真偽判定の結果に応じて、スロットマシン100の遊技の継続許可と遊技停止を決定する。具体的には、メダルMが真正なメダルであると判定されると、その後のスロットマシン100の遊技の継続を許可するので、遊技者はスタートレバー105やストップボタン106の操作を伴う遊技を行うことができる。その一方、検出対象物がメダルMを擬制した発光異物や液晶パネル異物であるとすれば、遊技を停止するよう、各種機器を制御する。例えば、スタートレバー105やストップボタン106の操作を無効として遊戯できないようにしたり、種々の表示装置やスピーカー等にて、真正ではないメダルMが検出されたと報知する。
【0039】
次に、本実施例のスロットマシン100の制御装置120(詳しくは制御部121)が行う処理について、真性のメダル検出、メダルを擬した異物検出の様子や、発光部216での発光の様子、受光部220での受光の様子を併記しつつ、説明する。図8は有効光学系の組み合わせ設定処理の内容を示すフローチャート、図9はメダルMや異物の検出処理の内容を示すフローチャートである。
【0040】
図8に示す設定処理は所定時間ごとに繰り返し実行され、制御部121は、まず、設定のタイミングであるか否かを判定する(ステップS100)。つまり、制御部121は、上記したように光学系自動設定部125にて、今回のこの設定処理において、上記した所定時間ごとの周期タイミングであるとすれば、上記した第1〜第3のセットうちのいずれかの有効光学系の組み合わせを設定(再設定)する(ステップS110)。一方、上記のタイミングでなければ、何の処理を行うことなく本ルーチンを終了する。
【0041】
上記した有効光学系の組み合わせ設定の際は、第1〜第3の組み合わせを無作為に、例えば乱数発生装置により発生させた乱数に応じて第1〜第3の組み合わせを選択する手法がある。或いは、第1〜第3の組み合わせを所定の規則に従って切替設定する手法を取ることもできる。
【0042】
図8の設定処理はスロットマシン100の稼働中のものであり、スロットマシン100の電源投入タイミングでは、制御部121の光学系自動設定部125により、ステップS110と同様にして、有効光学系の組み合わせが自動設定される。また、ホール係員による光学系設定スイッチ225の操作タイミングでは、制御部121は、当該スイッチ操作を受けて、ステップS110と同様にして、有効光学系の組み合わせを設定する。
【0043】
図9に示す検出処理にあっても所定時間ごとに繰り返し実行され、制御部121は、第1〜第3の各光学系の受光部220a〜220cからの受光信号を入力、監視する(ステップS200)。次いで、この監視結果から、有効光学系以外の光学系の受光部からの受光信号の有無を判定し(ステップS210)、有効光学系以外の光学系の受光部からの受光信号が有れば、発光異物を検出したとしてステップS215に移行し、遊技の停止処理と異物検出報知を行う。遊技の停止処理としては、スタートレバー105やストップボタン106の操作を無効として遊戯できないようにすること等であり、異物検出報知としては、種々の表示装置やスピーカー等にて、真正ではないメダルMが検出されたと音声や表示で報知する。
【0044】
こうした異物検出について、例を挙げ説明する。今、例えば第1セットの組み合わせで第1光学系と第2光学系が有効光学系であるとされ、第3光学系が有効光学系以外の光学系であるとする。この場合は、有効光学系の第1光学系と第2光学系では第1発光部216aと第2発光部216bが発光して、それぞれの光学系において、第1受光部220aと第2受光部220bにて受光される。有効光学系以外の第3光学系では、第3発光部216cは発光しないので、対応する第3受光部220cは受光信号を発しない、或いは最小レベル(=ゼロレベル)の受光信号を発する。
【0045】
図10は発光異物検出の様子を模式的に示す説明図である。発光異物は、本実施例の光学系が透過型であるので、発光部216からの射出光を遮るため、一面を非透光性の部材で構成し、他面、即ち受光部220の側の面で発光する。図10(a)に示すように、発光異物が、図中に示す発光箇所DPを一つしか持たない場合は、この発光異物は、発光箇所DPからの発光により、第1〜第3の総ての光学系の受光部220a〜220cに光を受光させる。そうすると、有効光学系以外の第3光学系においても、その第3受光部220cにて受光がなされるが、真正のメダルMが主経路203を第1光学系の側から第3光学系に向けて通過する際には、有効光学系以外の第3光学系では第3発光部216cは発光していないので第3受光部220cにて受光されることはない。第2セットや第3セットでの有効光学系の組み合わせについても同様である。つまり、総ての光学系を有効光学系とした組み合わせの全光学系セットを有効光学系の組み合わせとして採用しないことで、図10(a)に示すような発光異物を即座に検出できる。なお、この総ての光学系を有効光学系とした組み合わせの全光学系セットを、上記の第1〜第3セットと同様に、有効光学系の組み合わせの一つとして設定することもできる。この場合は、ステップS210を省略し、後述のステップS220やステップS230にて、発光異物検出を行うようにすればよい。
【0046】
また、発光異物が、図10(b)に示すように、仮に各光学系に対応させて三つの発光箇所DP1〜DP3を備えて各発光箇所での発光をメダル通過を擬制するよう制御している場合は、この発光異物が発光箇所DP3で発光すれば、単一の発光箇所DPしか持たない図10(a)の発光異物と同様に第3光学系の第3受光部220cの受光により、ステップS210で否定判定され、ステップS215にて異物検出・報知がなされる。この発光異物が発光箇所DP1と発光箇所DP2を発光制御している場合は、後述する。
【0047】
一方、ステップS210で有効光学系以外の光学系の受光部からの受光信号が無いと判定すると、現在の有効光学系の設定組み合わせ(例えば、第1セット)における各有効光学系でのメダルM通過に伴った受光信号の入力があったかを判定する(ステップS220)。この判定は次のようにしてなされる。
【0048】
真正のメダルMが主経路203を通過する場合には、有効光学系のうちの上流側の光学系、第1セットの有効光学系の組み合わせであれば、第1光学系、第2光学系の順に、メダルMはそれぞれの光学系の光軸に掛かる。よって、有効光学系にて発光を行う本実施例では、第1セットの有効光学系の組み合わせであれば、制御部121は、メダルMの通過により、第1受光部220a、第2受光部220bの順にこれら受光部から、メダル通過に伴う受光信号を入力する。
【0049】
ところで、御装置120は、既述したように有効光学系の発光部(第1セットの有効光学系では第1光学系、第2光学系の第1発光部216a、第2発光部216b)を所定周期に従ってパルス状に発光制御するので、各光学系の受光部は、メダル通過がない場合には、発光部のパルスに応じてパルス状の受光信号(ON信号)を周期的に出力する。その一方、メダルMが投入されると、メダル通過に伴って第1光学系の第1発光部216aの光が遮られ、次いで第2光学系の第2発光部216bの光が遮られる。第1光学系と第2光学系との隔たりがメダル径より大きければ、第1光学系の第1受光部220aで第1発光部216aの各パルス状発光の光を受光しない期間が続いた後に、第1発光部216aでは受光(パルス状のON信号出力)して第2光学系の第2受光部220bでは第2発光部216bの各パルス状発光の光を受光しない期間が続き、最後に第2発光部216bで受光(パルス状のON信号出力)することになる。
【0050】
その一方、経路の短縮等のために第1光学系と第2光学系との隔たりがメダル径より小さくなることは多々ある。こうした場合には、メダルMの通過に伴って第1光学系、第2光学系の順で発光部からのパルス状の光が遮られるものの、両光学系で同時に光が遮られた後、第1光学系、第2光学系の順に再度、発光部からの光が受光部で受光される。よって、各光学系での受光部でのパルス状の受光信号の出力は、メダル通過に伴ってまず最初に第1光学系での第1受光部220aでの未受光(OFF信号)の期間があり、次いで、両光学系での未受光(OFF信号)の期間、第1光学系での第1受光部220aでは受光(パルス状のON信号出力)で第2光学系での第2受光部220bでは未受光(OFF信号)の期間、両光学系で受光(パルス状のON信号出力)の期間が連続することになる。
【0051】
上記した有効光学系でのメダルM通過に伴う受光部220の受光状況(パルス状の受光信号出力状況)は、上記の第1、第2の光学系の間隔が所定のものであり、主経路203におけるメダルMの通過速度も予め判明していることから、有効光学系の組み合わせによって定まる。制御部121は、ステップS200で監視した有効光学系についての受光信号の入力・監視に基づいて、設定済み組み合わせの有効光学系の受光部220からの上記の受光状況が、真正のメダルMが主経路203を通過した場合のものであるかを判定する。
【0052】
このステップS220では、真正のメダルMの投入時には肯定判定され、後述のステップS230に移行する。ところが、図10に示した発光異物では、次のようになる。なお、単一の発光箇所DPしか有しない発光異物は、ステップS210で異物として検出されるため、以下の説明は、複数の発光箇所を有する発光異物について説明する。
【0053】
ステップS220は、その前のステップS210での肯定判定後のものであるため、例えば、第1セットの有効光学系の組み合わせであれば第3光学系の第3受光部220cの受光が無かったこと、つまり、発光異物は、発光箇所DP1と発光箇所DP2を発光制御していることになる。
【0054】
今、発光異物が発光箇所DP1と発光箇所DP2を同時に発光させているとする。そうすると、第1光学系の第1受光部220aと第2光学系の第2受光部220bからの受光状況は、真正のメダルMが主経路203を通過した場合のものと明らかに相違する。よって、ステップS220では発光異物検出だとして否定判定され、ステップS215にて遊技停止と異物検出報知がなされる。
【0055】
発光異物が発光箇所DP1と発光箇所DP2をメダル通過を擬制して発光制御している場合、この発光制御による第1光学系の第1受光部220aと第2光学系の第2受光部220bからの受光状況が真正のメダルMの通過に伴う受光状況と一致していないと、ステップS220では発光異物検出だとして否定判定され、ステップS215にて遊技停止と異物検出報知がなされる。発光異物における発光箇所DP1と発光箇所DP2の発光制御により上記の両受光状況が一致していれば、ステップS220では肯定判定されるが、この発光異物検出については後述する。
【0056】
ステップS230では、設定された有効光学系の受光部220からの受光信号の出力状況と、有効光学系の発光部216に出力したパルス信号と受光部220からのパルス状の受光信号の同期の状況が、メダルMの通過に伴うものであるか否かを判定する。つまり、既述したように、有効光学系の発光部216は、パルス状の発光信号に基づきパルス状に光を射出し、受光部220は、当該光学系における光軸に検出対象物が掛かっていなければ、上記の発光信号に同期したパルス状の受光信号を出力し、検出対象物が光軸に掛かることでその受光レベルが最小レベルに推移した受光信号を出力する。
【0057】
つまり、真正のメダルMが主経路203を通過する場合、メダルMは、発光部216からの射出光が反射面218で反射して受光部220に到る光軸に掛かる。メダルMは通常金属製であるために発光部216からの射出光(反射面218での反射光)を遮る。これにより、受光部220では、それまで受光可能であった光を受光しなくなるので、制御装置120は、受光なしに対応する受光信号(最小レベル信号=ゼロレベル信号)を受けることを意味する。メダルMが主経路203を更に通過し光軸から脱すると、受光部220は、発光部216からの射出光(反射面218での反射光)を直接受光し、その受光光量に応じた受光信号を制御装置120に出力する。このように、受光信号は、主経路203におけるメダルMの通過により、受光信号が最小レベルから推移(増大推移)する。なお、こうした受光信号レベルの推移は、発光がパルス状であることから、その各パルスの光を受光したパルス状の受光信号のそれぞれで発現する。
【0058】
制御部121は、こうしたメダル通過に伴う受光光量の推移に基づく受光信号(センサ出力)を、有効光学系、例えば第1セットであれば、第1光学系の第1受光部220aと、第2光学系の第2受光部220bとから入力する。そして、制御部121は、こうした信号入力を、現状の有効光学系である第1光学系と第2光学系から順次受けることで、メダルMの通過を検知してメダル計数を行うと共に、発光信号と受光信号の同期状態およびその受光信号レベル推移が真正のメダルMのセンサ通過に適ったものであれば、ステップS230で肯定判定して、既述したように遊技継続を許可し(ステップS240)、本ルーチンを終了する。
【0059】
図10(b)に示す発光異物が発光箇所DP1と発光箇所DP2をメダルMの通過に伴うタイミングでこの発光制御している場合であれば、この発光箇所DP1と発光箇所DP2のそれぞれが、真正のメダルMの通過に伴う有効光学系での発光信号と受光信号との同期状態を再現するよう、且つ、真正のメダルMの通過に伴う受光信号の信号レベル推移と一致していないと、ステップS230では発光異物検出として否定判定され、ステップS215にて遊技停止と異物検出報知がなされる。発光異物における発光箇所DP1と発光箇所DP2の発光制御状況が真正のメダルMの通過に伴う発光信号と受光信号の同期状態と、真正のメダルMの通過に伴う受光信号の信号レベル推移と一致していれば、ステップS230では肯定判定されるが、この場合の発光異物検出については後述する。
【0060】
以上説明したように、上記構成を有する本実施例のスロットマシン100では、三つの光学系のうちの二つの光学系をメダルMの検出に用いる有効光学系とし、その組み合わせを所定のタイミングで切替設定する(図8参照)。その上で、設定された有効光学系での受光部220の受光信号の出力状態や発光信号と受光信号の同期状況(ステップS210〜230)に応じて、メダルMの検出並びに発光異物の検出を行い、その結果に応じて遊技継続の許可、遊技停止・異物検出報知を行う。よって、次の利点がある。
【0061】
まず、図10(a)に示す単一の発光箇所DPを有する発光異物については、有効光学系以外の光学系における受光部220の受光信号により、簡便に異物検出が行われる。図10(b)に示す複数箇所の発光箇所DP1〜DP3を有する発光異物については、有効光学系以外の光学系に対応する発光箇所DP3での発光および当該光学系での受光部220の受光信号により、簡便に異物検出が行われる。そして、図10(b)に示す複数箇所の発光箇所DP1〜DP3を有する発光異物でメダルMの通過を擬制する場合、発光箇所DP1〜DP3の発光状況は、メダル検出部210が有する光学系での発光部216のパルス状の発光と、発光信号と受光信号の同期、受光部220での受光信号レベルのそれぞれがメダル検出部210の発光部216のパルス状発光を模して、外部で調整済みである。そして、こうして調整された発光箇所DP1〜DP3の発光状況が、メダル検出部210における二つの有効光学系の発光部216と一致していれば、複数箇所の発光箇所DP1〜DP3を有する発光異物は、主経路203のメダル通過を擬制することができる。このことは、発光異物でありながら、ステップS220やステップS230で肯定判定されたことに相当する。
【0062】
しかしながら、本実施例では、既述したように、有効光学系の組み合わせは、所定タイミングでの再設定により、その都度変化するので、このように都度変化する有効光学系の組み合わせに対応させて、その組み合わせの有効光学系の受光部220に受光信号を出力させるよう、発光異物の発光箇所DP1〜DP3の発光状況を調整することは困難である。よって、真正のメダルMが主経路203を通過する際の二つ以上の有効光学系での受光部220での受光信号の出力状態と、発光異物がメダルMに代わって投入された場合の二つ以上の有効光学系での受光部220での受光信号の出力状態とはほとんど一致することが無くなり、ステップS220やステップS230では否定判定される。仮に、一旦は有効光学系の組み合わせに対応して発光箇所DP1〜DP3の発光状況をメダルMの通過に伴うものと一致したとしても、有効光学系の組み合わせの再設定により、この一致状況は続くことはなく、その後の遊技期間において、ステップS220やステップS230で否定判定される。このため、本実施例のスロットマシン100によれば、異物検出の信頼性をより一層高めることができ、異物検出の検出結果に応じた遊技機の遊技の継続許可と遊技停止との決定についても信頼性を高めることができる。
【0063】
そして、本実施例では、有効光学系の設定を、スロットマシン100への電源投入タイミングとか、定時タイミングとかの有る特定の時間タイミングで行う他、光学系設定スイッチ225の操作タイミング、15分ごとのタイミング、遊技者が一回の遊技に要する時間(約2〜3分)よりも短い時間ごとのタイミング、遊技状況が大当たりに推移したタイミングでも、実行する。よって、いわゆる抜き打ち的な有効光学系設定が可能となるので、発光異物の使用が疑われる都度に有効光学系の設定を変えることができ、異物検出の更なる信頼性向上を図ることができる。
【0064】
また、本実施例では、有効光学系の組み合わせの再設定に加え、その設定された有効光学系における発光信号と受光信号の同期、受光信号レベルの状況についても、これらをメダルMの検出に用いるので、信号の同期・信号レベルの一致までが得られるよう、発光箇所DP1〜DP3を発光制御することは、さらに困難である。よって、この点からも、異物検出の信頼性をより一層高めることができる。
【0065】
しかも、有効光学系の発光部216にパルス状の発光信号を出力して発光部からパルス状の光の射出を行う場合、図6に模式的に示したように、各光学系の発光部216に出力する発光信号に、パルス振幅に差を持たせるようにすることもできる。具体的には、第1光学系から第3光学系の順にパルス振幅を小さくする。こうすれば、各光学系ごとに異なる光量の射出光とできるので、光学系(有効光学系)ごとの受光部220での受光信号レベルも相違する。また、発光異物でメダルMの通過を擬制するには、発光箇所DP1〜DP3を発光箇所ごとに異なる光量で発光制御する必要があるが、こうした制御はより困難であるため、異物検出の信頼性はさらに高まる。
【0066】
更には、上記したように光学系ごとにパスル振幅に差を持たせるに当たり、光学系ごとのパスル振幅にあっても、有効光学系の設定ごとに設定するようにすることもできる。例えば、あるタイミングで第1光学系が有効光学系の一つとして設定している場合には、その発光信号のパスル振幅を小さく設定し、他のタイミングで第1光学系が有効光学系の一つとして設定した場合には、その発光信号のパスル振幅を大きく設定する。こうすれば、有効光学系の設定に併せて発光状態(発光量)をも設定できることから、こうした設定変更に適合した発光箇所の発光制御はより一層困難となり、異物検出の信頼性はより一層高まる。
【0067】
透光性・非透光性を切り替えて非透光性部位を移動させる液晶パネル異物であっても、非透光性部位の移動状況を、所定タイミングで組み合わせが変化する有効光学系の組み合わせに応じて実行することは困難であることから、発光異物と同様に、液晶パネル異物を高い信頼性で検出できることは勿論である。
【0068】
次に、変形例について説明する。図11は変形例における光学系の構成を概略的に示す説明図である。図示するように、この変形例は、光学系ごとに射出する光の色を変えた点と、光学系ごとに当該光学系が発する色の光の受光部と他の色の受光部を有する点に特徴がある。
【0069】
図示するように、この変形例のスロットマシン100では、第1光学系は、第1発光部216aの光路に赤色フィルタRfにより赤色の光を発する。同様に、第2光学系では、緑色フィルタGfにより緑色の色を発し、第3光学系では、青色フィルタBfにより青色の光を発する。そして、第1光学系は、赤色のフィルタ220Rfと赤色光の受光用の受光部220aRと、緑色のフィルタ220Gfと緑色光の受光用の受光部220aGとを備え、第2光学系は、緑色のフィルタ220Gfと緑色光の受光用の受光部220bGと、青色のフィルタ220Bfと青色光の受光用の受光部220bBとを備え、第3光学系は、青色のフィルタ220Bfと青色光の受光用の受光部220cBと、赤色のフィルタ220Rfと赤色光の受光用の受光部220cRとを備える。
【0070】
そして、この変形例にあっては、第1〜第3の光学系のうちから、二つの有効光学系の組み合わせを上記の実施例と同様にして所定のタイミングで設定するので、有効光学系の組み合わせの設定の都度に、その設定された有効光学系の射出光の色(有効色)の組み合わせも変わることになる。また、有効光学系の射出した有効色以外の他の色の光が射出されれば、例えば、第1光学系において白色や緑色の光が発せられれば、フィルタ220Gfにより、第1光学系の受光部220aGで受光されるが、第1光学系が有効光学系であれば、有効色である赤色の光しか射出しないので、通常、受光部220aGでの受光は起きない。
【0071】
上記構成を有する変形例での発光異物検出の様子について説明する。多くの場合、発光異物は、図10(a)(b)に示すような発光箇所の数に拘わらず、それぞれの発光箇所から、単一の色の光(例えば、白色光)を発する。従って、今、第1光学系と第2光学系が有効光学系とされている場合、発光異物がこれら光学系に掛かっていると、第1光学系では、発光異物の発した白色光が、フィルタ220Rfとフィルタ220Gfにより、赤色の光の受光用の受光部220aRに加え、緑色の光の受光用の受光部220aGでも受光される。第2光学系でも同様である。よって、真正のメダルMによるそれぞれの有効光学系における受光部220aRと受光部220aGの受光状態と、発光異物によるこれら受光部での受光状態とは、顕著に相違する。しかも、二つ以上の有効光学系の組み合わせは一律ではなく、その設定の度に変わることから、発光異物における二つ以上の発光箇所DP1〜DP3の組み合わせと、二つ以上の有効光学系の組み合わせとが一致することはほとんど無い。この結果、上記構成の変形例にあっても、高い信頼性で発光異物の検出が可能となる。
【0072】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、上記の実施例と変形例では、発光部216の射出光DLを反射面218にて反射させ、その反射光を射出光DLとしてメダルMや発光異物、液晶パネル異物と言った検出対象物に照射する透過型の構成としたが、発光部216自体を反射面218の設置箇所に配設し、発光部216の射出光DLを直接検出対象物に照射する透過型とすることもできる。これに限らず、発光部216からの出射光をメダルMや発光異物、液晶パネル異物に照射してこれら表面で反射させ、その反射光を受光部220で受光する反射型の構成とすることもできる。
【0073】
さらに、各光学系での発光部216の発光をパルス状とするに当たり、図6にて模式的に示したようにパルス信号の性状としてパルス振幅を光学系ごとに変えるようにできるほか、例えばパルス周期やパルス幅を光学系ごとに変えるようにすることもできる。こうしても、光学系ごとの受光信号の出力状態、本実施例に即して説明すれば、設定された有効光学系ごとの受光信号の出力状態に、発光異物の発光箇所の発光制御や液晶パネル異物における非透光性部位の移動制御を一致させることは困難であり、異物検出の信頼性向上に有益である。
【0074】
また、図11に示した変形例では、各光学系ごとの発光部216からの出射光をフィルタにて特定の色の光となるようにしたが、RGBの発光源を光学系ごとの発光部に備え付け、各発光源の出力を調整することで、発光部からの光の色を設定するようにもできる。そして、組み合わされた有効光学系での光の色を、有効光学系の設定と共に変更設定するようにすることもできる。こうすれば、発光異物がそれぞれの発光箇所DP1〜DP3での光の色を変更できる構成を取っても、有効光学系の組み合わせ設定と光の色の設定とに適合するよう、各発光箇所の光の色を変更することは困難であり、高い信頼性で発光異物検出を行うことができる。
【0075】
また、メダルMを用いて遊戯するスロットマシンを例に挙げ説明したが、本発明は、スロットマシン以外の遊技機であってメダルMを用いる他の遊技機に加え、メダル検出装置やメダル経路を通過するメダル検出方法としても適用できる。この他、磁石を内蔵した磁気式のセンサ等を利用することもできる。
【0076】
更に、メダル検出部210における光学系を四つ以上の光学系とすることもでき、この場合には、有効光学系を二つの光学系の組み合わせ、三つの光学系の組み合わせのいずれにも設定できる。よって、こうした場合には、有効光学系の個数についても上記したタイミングで設定するようにでき、こうすれば、有効光学系の個数に応じた異物の発光制御等がより困難となり、異物検出の信頼性は高まる。
【符号の説明】
【0077】
100…スロットマシン
102…本体
103…前面扉
103a…窓
104…メダル投入口
105…スタートレバー
106…ストップボタン
111…回胴
112…ホッパ装置
112a…補助タンク
113…電源ボックス
114…メダル払出口
115…メダル受皿
116…メダル補給経路
117…メダル排出経路
118…キーシリンダ
120…制御装置
121…制御部
122…リセットスイッチ
123…各種センサ・スイッチ群
124…制御対象機器群
125…光学系自動設定部
126…検出部
127…遊技継続決定部
200…メダル識別機構
202…メダル経路
203…主経路
204…排出経路
205…通路切替片
210…メダル検出部
212…ボディ
214…光路形成体
216…発光部
216a…第1発光部
216b…第2発光部
216c…第3発光部
217…貫通孔
218…反射面
220…受光部
220Bf…フィルタ
220Gf…フィルタ
220Rf…フィルタ
220a…第1受光部
220aG…受光部
220aR…受光部
220b…第2受光部
220bB…受光部
220bG…受光部
220c…第3受光部
220cB…受光部
220cR…受光部
225…光学系設定スイッチ
Rf…赤色フィルタ
Gf…緑色フィルタ
Bf…青色フィルタ
DL…射出光
DP…発光箇所
DP1〜DP3…発光箇所
M…メダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メダルを用いて遊技する遊技機であって、
投入を受けたメダルを導くメダル経路と、
該メダル経路に沿って配置され、該メダル経路における検出対象物の有無を、前記メダル経路の異なる位置で検出する少なくとも三つ以上の検出器と、
該三つ以上の前記検出器のうち、少なくとも二つの検出器を前記検出対象物の検出に有効な検出器として所定のタイミングで設定する検出器設定部と、
前記有効とされた検出器の検出状況に基づいて、前記検出対象物が真正のメダルであるかを検出する検出部と、
該検出部の検出結果に応じて、前記遊技機の遊技の継続許可と遊技停止を決定する遊技継続決定部とを備える
遊技機。
【請求項2】
請求項1に記載の遊技機であって、
前記検出器設定部は、前記検出対象物の検出に有効な検出器の個数についても設定する
遊技機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の遊技機であって、
前記検出器設定部は、前記遊技機への電源投入タイミング、ユーザーによる設定操作部の操作タイミング、所定時間ごとの周期タイミング、前記遊技機における所定の遊技状態への推移タイミングの少なくともいずれかのタイミングを前記所定タイミングとして、前記検出対象物の検出に有効な少なくとも二つの検出器を設定する
遊技機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3いずれかに記載の遊技機であって、
三つ以上の前記検出器は、
光を射出する発光部と受光した光量に応じた受光信号を出力する受光部とを備え、前記メダル経路を通過する前記検出対象物に前記発光部の光を照射して前記受光部から前記受光信号を得る光学系とされ、
前記検出器設定部は、
前記三つ以上の前記光学系のうち、少なくとも二つの光学系を前記検出対象物の検出に有効な光学系として所定のタイミングで設定し、
前記検出部は、
前記有効とされた光学系に含まれる前記受光部からの前記受光信号の出力状況に基づいて、前記検出対象物が真正のメダルであるかを検出する
遊技機。
【請求項5】
請求項4に記載の遊技機であって、
前記光学系ごとの前記発光部は、光学系ごとに異なる色の光を射出し、
前記光学系ごとの前記受光部は、該受光部が属する光学系における前記発光部が射出する色の光を受光する第1受光部と、他の色の光を受光する第2受光部とを有する
遊技機。
【請求項6】
メダルの通過を検出するメダル検出装置であって、
光を射出する発光部と受光した光量に応じた受光信号を出力する受光部とを備え、投入を受けたメダルを導くメダル経路を通過する検出対象物に前記発光部の光を照射して前記受光部から前記受光信号を得る光学系を、前記メダル経路に沿って少なくとも三つ以上備え、
該三つ以上の前記光学系のうち、少なくとも二つの光学系を前記検出対象物の検出に有効な光学系として所定のタイミングで設定する光学系設定部と、
前記有効とされた光学系に含まれる前記受光部からの前記受光信号の出力状況に基づいて、前記検出対象物が真正のメダルであるかを検出する検出部とを備える
メダル検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載のメダル検出装置であって、
前記光学系設定部は、前記検出対象物の検出に有効な光学系の個数についても設定する
メダル検出装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のメダル検出装置であって、
前記光学系設定部は、メダル検出装置の組み込み機器への電源投入タイミング、ユーザーによる設定操作部の操作タイミング、所定時間ごとの周期タイミング、前記組み込み機器における所定の機器駆動状況への推移タイミングの少なくともいずれかのタイミングを前記所定タイミングとして、前記検出対象物の検出に有効な少なくとも二つの光学系を設定する
メダル検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−99702(P2013−99702A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−47364(P2013−47364)
【出願日】平成25年3月8日(2013.3.8)
【分割の表示】特願2011−220894(P2011−220894)の分割
【原出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000144522)株式会社三洋物産 (4,662)
【Fターム(参考)】