説明

メチレンビス脂肪酸アミド組成物、粘着シート及びその製造方法

【課題】種々の環境下においても安定した接着特性及び剥離特性を得ることができるとともに、被着体への汚染を最小限に止めることができるメチレンビス脂肪酸アミド組成物、粘着シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】脂肪酸モノアミドとホルムアルデヒドとの反応により得られたメチレンビス脂肪酸アミドを主成分として含有するメチレンビス脂肪酸アミド組成物であって、前記脂肪酸モノアミド及び該脂肪酸モノアミドを構成する脂肪酸からなる不純物の含有量が、0〜1重量%未満であるメチレンビス脂肪酸アミド組成物及び熱可塑性樹脂フィルムの片面に感圧性粘着剤層が形成されてなる粘着シートであって、少なくとも熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層のいずれか一方に、前記メチレンビス脂肪酸アミド組成物が含有されてなる粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチレンビス脂肪酸アミド組成物、粘着シート及びその製造方法に関し、より詳細には、粘着シートの製造に好適に使用されるメチレンビス脂肪酸アミド組成物、これが含有された層を備える粘着シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造プロセス等において再剥離可能な粘着シートの基材層として、PVCフィルム等が使用されている。粘着シートは、このようなPVCフィルム等からなる基材層の一面に粘着剤層が塗布されて構成されており、基材又は粘着剤中に、脂肪酸アミドを添加し(特許文献1)、粘着剤面に、脂肪酸アミドを適度にブリードさせることによって、巻き戻し性、被着体への接着性が制御されている。
また、尿素化合物及びハイドロタルサイトを塩化ビニル系樹脂に添加することによって、良好な剥離性と耐汚染性とを得ることが提案されている(特許文献2)。
しかし、現状においては、その粘着特性が安定しておらず、また、粘着シートを剥がした際の半導体ウェハなどの被着体に対する汚染が大きい。特に、粘着シートの保管状態、被着体への貼り合せ後の保存状態等によって、被着体から粘着シートを剥離しようとした際に、剥がれにくくなる又は被着体に粘着剤等の汚染物が残る等という不具合が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−139163号公報
【特許文献2】特開平07−276516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、種々の環境下においても安定した接着特性及び剥離特性を得ることができるとともに、被着体への汚染を最小限に止めることができるメチレンビス脂肪酸アミド組成物、粘着シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、現状の再剥離可能な粘着シートの粘着特性及び剥離特性について鋭意研究を行った結果、粘着シートの基材層又は粘着剤層に添加剤として含有されるメチレンビス脂肪酸アミドには、合成時の原材料、副生成物由来の不純物が多数存在すること、また、その市販品には、不純物量が製造ロット毎に大きなばらつきを有していることを突き止めた。そこで、メチレンビス脂肪酸アミドの不純物を除去して粘着シートの基材層又は粘着剤層に添加することにより、予想外にも、接着特性を安定させることができるとともに、剥離した際の被着体に対する汚染を顕著に低減させることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0006】
つまり、本発明のメチレンビス脂肪酸アミド組成物は、脂肪酸モノアミドとホルムアルデヒドとの反応により得られたメチレンビス脂肪酸アミドを主成分として含有するメチレンビス脂肪酸アミド組成物であって、
前記脂肪酸モノアミド及び該脂肪酸モノアミドを構成する脂肪酸からなる不純物の含有量が、0〜1重量%未満であることを特徴とする。
このようなメチレンビス脂肪酸アミド組成物では、
メチレンビス脂肪酸アミドが、式(I)で表される化合物であるか、
−Am−CH−Am−R (I)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数6〜23の飽和又は不飽和炭化水素基を表し、Amは2級アミド基を表す。)
脂肪酸モノアミドとホルムアルデヒドとの反応により得られたメチレンビス脂肪酸アミドは、前記脂肪酸モノアミド及びこれを構成する脂肪酸を溶解し、かつメチレンビス脂肪酸アミドを溶解しない溶媒を用いた抽出によって不純物である前記脂肪酸モノアミド及び脂肪酸が除去されたものであることが好ましい。
【0007】
また、本発明の粘着シートは、熱可塑性樹脂フィルムの片面に感圧性粘着剤層が形成されてなる粘着シートであって、少なくとも熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層のいずれか一方に、上記のメチレンビス脂肪酸アミド組成物が含有されてなることを特徴とする。
このような粘着シートは、
メチレンビス脂肪酸アミド組成物が、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1〜3.0重量部で添加されてなるか、
熱可塑性樹脂フィルムが、ポリ塩化ビニルからなるフィルムであるか、
熱可塑性樹脂フィルムが、さらにエステル系可塑剤を含むか、
感圧性粘着剤層が、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むか、
感圧性粘着剤層が、さらにエステル系可塑剤を含むか、
保存後において、初期値の±0.5N/20mm以内の変動値のシリコンウェハ接着力を示すことが好ましい。
【0008】
さらに、本発明の粘着シートの製造方法は、
脂肪酸アミドとホルムアルデヒドとの反応により得られたメチレンビス脂肪酸アミドを、前記脂肪酸モノアミド及びこれを構成する脂肪酸を溶解し、かつメチレンビス脂肪酸アミドを溶解しない溶媒を用いた洗浄によって精製してメチレンビス脂肪酸アミド組成物を得、
該メチレンビス脂肪酸アミド組成物を、添加剤として樹脂に添加して熱可塑性樹脂フィルム又は感圧性粘着剤層を形成し、
前記熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層を積層することを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、種々の環境下においても安定した接着特性及び剥離特性を得ることができるとともに、被着体への汚染を最小限に止めることができるメチレンビス脂肪酸アミド組成物、これを用いた粘着シート及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔メチレンビス脂肪酸アミド組成物〕
本発明のメチレンビス脂肪酸アミド組成物は、脂肪酸アミドとホルムアルデヒドとの反応により得られたメチレンビス脂肪酸アミドを主成分として含有する。メチレンビス脂肪酸アミドは単一成分であってもよいし、2種以上の混合成分であってもよい。ここで「主成分」とは、組成物中で最も重量の多い成分を意味する。
本発明のメチレンビス脂肪酸アミド組成物は、その製造原料に起因する、脂肪酸モノアミド及び該脂肪酸モノアミドを構成する脂肪酸からなる不純物の含有量が、全組成物の0〜1重量%未満に止められている。脂肪酸モノアミド及び該脂肪酸モノアミドを構成する脂肪酸は、それぞれ、単一物質のみならず、2種以上の物質が混在していてもよく、後者の場合においては、それらの合計の含有量が1重量%未満である。言い換えると、本発明のメチレンビス脂肪酸アミド組成物は、実質的に、脂肪酸モノアミド及び該脂肪酸モノアミドを構成する脂肪酸からなる不純物を含有しないことを意味する。
ここで、実質的に含有しないとは、通常の分析機器(液体クロマトグラフ装置、高速液体クロマトグラフ装置等)において、脂肪酸モノアミド及び脂肪酸が単一種で又は複数種で含有されていたとしても、それぞれ0.25重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%、検出限界以下で測定されるか、上述したように複数種であってもその合計量が1重量%未満であることを意味する。また、0.8重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下であることが好ましい。
なお、本発明のメチレンビス脂肪酸アミド組成物は、上述した不純物以外の成分、例えば、原料となる脂肪酸アミドのトリス体のような副成分が含有されることがある。このようなトリス体も、実質的には含有されていないことが好ましい。
【0011】
本発明におけるメチレンビス脂肪酸アミドは、例えば、式(I)
−Am−CH−Am−R (I)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数6〜23の飽和又は不飽和炭化水素基を表し、Amは2級アミド基を表す。)で表わすことができる。
式(I)で表される化合物としては、式(II)又は式(III)で表される化合物が挙げられる。

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数6〜23の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。)
なお、式(II)及び式(III)で表される化合物は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上の混合物であってもよいし、式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物との混合物であってもよい。また、式(I)〜式(III)において、R及びRは、互いに異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
なかでも、式(II)で表される化合物が好ましい。
さらに、式(II)で表される化合物としては、式(IV)で表される化合物がより好ましい。
CH−(CH−CO−NH−CH−NH−CO−(CH−CH (IV)
(式中、n及びmは、それぞれ独立して、5〜22の整数を表す。)
【0012】
ここで、飽和又は不飽和炭化水素基としては、直鎖、分岐、環状及びこれらの組み合わせのいずれをも含む。
飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デキル基、ドデキル基、テトラデキル基、ヘキサデキル基、オクタデキル基等の鎖状アルキル基;
エチルヘキシル、エチルオクチル、プロピルヘキシル等の分岐アルキル基;
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルキル基等が挙げられる。
不飽和炭化水素基としては、プロペニル基、イソプロペニル基、2−プロペニル基、9−オクタデシル基等のアルケニル基が挙げられる。
【0013】
式(I)〜式(III)においては、炭素数が8〜20が好ましく、10〜18がより好ましい。また、飽和炭化水素が好ましい。
式(IV)においては、n及びmは、炭素数が7〜19が好ましく、9〜17がより好ましく、11〜17又は13〜15がさらに好ましい。
式(I)における2級アミド基は、2価のアミド基を意味し、アミド基における炭素原子は、R又はRとメチレン基とのいずれに結合していてもよい。
【0014】
式(II)の具体的な化合物としては、
N,N’−メチレンビスカプリン酸アミド、
N,N’−メチレンビスラウリン酸アミド、
N,N’−メチレンビスミリスチン酸アミド、
N,N’−メチレンビスパルミチン酸アミド、
N,N’−メチレンビスオレイン酸アミド、
N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド、
N,N’−メチレンビスベヘン酸アミド、
N,N’−メチレンビスエルカ酸アミド等が挙げられる。
【0015】
式(III)の具体的な化合物としては、
N,N’−ジカプリルマロン酸アミド、
N,N’−ジラルリルマロン酸アミド、
N,N’−ジミリスチルマロン酸アミド、
N,N’−ジパルミチルマロン酸アミド、
N,N’−ジオレイルマロン酸アミド、
N,N’−ジステアリルマロン酸アミド、
N,N’−ジベヘニルマロン酸アミド、
N,N’−ジエルカリルマロン酸アミド等が挙げられる。
【0016】
なかでも、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−メチレンビスパルミチン酸アミド及びこれらの組み合わせ等が好ましく、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド及びN,N’−メチレンビスパルミチン酸アミドの混合物がより好ましい。なお、混合物の場合には、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド及びN,N’−メチレンビスパルミチン酸アミドの含有率は、メチレンビスステアリン酸アミド:メチレンビスパルミチン酸アミド=1〜10:10〜1程度で含有されていることが好ましく、5〜8:2〜5程度であることがより好ましい。
【0017】
通常、メチレンビス脂肪酸アミドは、以下に示すように、脂肪酸アミドとホルムアルデヒドとの反応により生成される。また、脂肪酸アミドは、脂肪酸とアンモニアとの反応によって工業的に生成されている。
2R−CO−NH+HCHO→R−CO−NH−CH−NH−CO−R
R−CO−NH+HCHO→R−CO−NH−CHOH
(式中、Rは飽和又は不飽和炭化水素基を表す)
なお、合成方法及び/又は条件等によっては、R−NH−CO−CH−CO−NH−Rのようなメチレンビス脂肪酸アミドともなり得る。
【0018】
しかし、上述した製造方法では、ビス脂肪酸アミドのみならず、モノ脂肪酸アミドも生成され、製造条件等によって、メチレンビス脂肪酸アミドの純度が変動するとともに、工業プロセスにおいては、厳密にその精度が制御されていないようである。現に、市販品であるメチレンビス脂肪酸アミドの純度を分析すると、以下のように、不純物成分を多く含み、製造ロットごとのばらつきも大きいことが確認された。
メチレンビスステアリン酸アミド/メチレンビスパルミチン酸アミド 併せて約70%、
ステアリン酸アミド 1〜4%、
パルミチン酸アミド 0.5〜1.5%、
ステアリン酸 1〜5%、
パルミチン酸 0.5〜1.5%及び
トリスアミド体 約20%。
【0019】
このように、理論的には、脂肪酸アミドとホルムアルデヒドとの反応によって得られ、その精製によって非常に純度の高いメチレンビス脂肪酸アミドからなる組成物は存在し得るが、現実には、工業製品としては、不純物が実質的に含有されていないメチレンビス脂肪酸アミド組成物は存在していない。
【0020】
一方、本発明のメチレンビス脂肪酸アミド組成物は、精製するなどの必要がなくそのまま、粘着シートの製造に(特に、粘着シートの基材層及び/又は粘着剤層の添加剤として)利用することができるとともに、その意図する作用を阻害することなく、高い品質及び特性の粘着シートの製造を実現し得る形態で提供するものである。
そのために、脂肪酸アミドとホルムアルデヒドとの反応により得られたメチレンビス脂肪酸アミドは、所定の溶媒による洗浄又は抽出等に付されて精製される。
ここでの溶媒としては、原料として用いた脂肪酸アミド、さらにその原料として用いた脂肪酸を溶解するが、メチレンビス脂肪酸アミドを溶解しない溶媒を用いることが適している。ここで、溶解するとは、溶質1gを溶解するために必要な溶媒量が10g以下であることを意味し、溶解しないとは、溶質1gを溶解するために必要な溶媒量が100g以上であることを意味する。
この溶媒としては、具体的には、クロロホルム、低級アルコール等及びこれらの混合溶媒が挙げられる。ここで、低級アルコールとは、炭素数が1〜6程度のものが適しており、炭素数1〜4程度のものが好ましく、さらに炭素数1〜3程度のものがより好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等が挙げられる。なかでもメタノール、エタノール、イソプロパノールが好ましい。これらは、常温で用いてもよいが、蒸発しない程度の温度で加熱したものを用いることがより好ましく、加熱エタノール、加熱メタノール、加熱イソプロパノール等がさらに好ましい。
【0021】
ここでの洗浄又は抽出とは、一般に公知の方法のいずれをも使用することができる。例えば、脂肪酸モノアミドとホルムアルデヒドとの反応により得られたメチレンビス脂肪酸アミドを溶媒に浸漬して洗浄する方法、得られたメチレンビス脂肪酸アミドを、溶媒を用いたソックスレー抽出する方法等が挙げられる。この際の条件は、特に限定されるものではなく、例えば、メチレンビス脂肪酸アミドの30〜100倍容量又は重量程度の溶媒を加え、30分間〜数時間程度、浸漬、浸とう、洗浄又は抽出等を行う。用いる溶媒の種類によっては、室温〜100℃程度に溶媒を加熱してもよい。また、必要に応じて、このような操作を複数回繰り返してもよい。得られた不溶物をろ過等の公知の手段により分離する。洗浄又は抽出後、不溶物を乾燥することが好ましい。乾燥は、当該分野で通常行われる方法のいずれをも利用することができる。乾燥条件及び温度は、特に限定されるものではなく、適宜調整することが好ましい。
具体的には、クロロホルム抽出の場合には、例えば、市販のメチレンビス脂肪酸アミド約1gにクロロホルム40mlを加え、浸とう機を用いて1時間浸とうさせ、その後、吸引ろ過により不溶分と可溶分に分離する。任意に、得られたクロロホルム不溶分について、同様の操作をさらに2回程度行うことにより、精製したメチレンビス脂肪酸アミド組成物を得ることができる。
また、エタノール抽出の場合には、例えば、市販のメチレンビス脂肪酸アミド約1gにエタノール40mlを加え、80℃(ホットプレート温度)で1時間加熱抽出する。その後、上澄み液(可溶分)と沈殿物(不溶分)とに分離し、任意に、得られたエタノール不溶分について、同様の操作をさらに2回行い、精製したメチレンビス脂肪酸アミド組成物を得ることができる。
【0022】
本発明は別の観点から、上述したような洗浄又は抽出に付して、メチレンビス脂肪酸アミドを精製する工程を含む組成物の製造方法を提供する。また、精製したメチレンビス脂肪酸アミド組成物の使用方法、この組成物を用いた粘着シート(基材層及び/又は粘着剤層)の製造方法等を提供することができる。
【0023】
本発明のメチレンビス脂肪酸アミド組成物では、実質的に含有されない不純物としては、上述したように、原料に起因する脂肪酸であって、上記に対応するもの、つまり、カプリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸等が挙げられる。特に、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等が含有されないことが好ましく、ステアリン酸、パルミチン酸等が含有されないことがより好ましい。
【0024】
また、実質的に含有されない不純物としては、上述したように、原料に起因する脂肪酸モノアミドが含まれ、上記に対応するもの、つまり、ラウリン酸モノアミド、ステアリン酸モノアミド、オレイン酸モノアミド、エルカ酸モノアミド、カプリン酸モノアミド、パルミチン酸モノアミド、ミリスチン酸モノアミド、ベヘン酸モノアミド;
N−オレイルステアリン酸モノアミド、N−オレイルオレイン酸モノアミド、N−ステアリルステアリン酸モノアミド、N−ステアリルオレイン酸モノアミド、N−オレイルパルミチン酸モノアミド、N−ステアリルエルカ酸モノアミド等が挙げられる。特に、ステアリン酸モノアミド、パルミチン酸モノアミド等が含有されないことが好ましい。
【0025】
〔粘着シート〕
本発明の粘着シートは、基材層として熱可塑性樹脂フィルムと、その片面に形成された感圧性粘着剤層とによって形成されている。これら熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層のいずれか一方には、上述した実質的に特定の不純物を実質的に含有しないメチレンビス脂肪酸アミド組成物が、添加剤として含有されている。
メチレンビス脂肪酸アミド組成物は、熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層の双方に含有されていてもよい。後述するように、熱可塑性樹脂フィルム及び/又は感圧性粘着剤層が積層構造の場合には、そのうちの一層に含有されていてればよいが、少なくとも、熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層が互いに接触する層において含有されていることが好ましい。
従って、本発明の粘着シートには、基材層である熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層のいずれにおいても、添加剤として添加されたメチレンビス脂肪酸アミド組成物の製造原料に起因する脂肪酸モノアミド及び脂肪酸を含有していないことが好ましい。
【0026】
メチレンビス脂肪酸アミド組成物の熱可塑性樹脂フィルムにおける添加量は、例えば、熱可塑性樹脂フィルムにおける熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1〜3.0重量部であることが好ましい。
また、メチレンビス脂肪酸アミド組成物の感圧性粘着剤層における添加量は、例えば、後述するベースポリマー100重量部に対し、0.1〜3.0重量部となる範囲で添加することができる。
メチレンビス脂肪酸アミド組成物を、熱可塑性樹脂フィルム及び/又は感圧性粘着剤層双方に添加する場合には、添加する総量が、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1〜3.0重量部となる範囲で、適宜調整することが好ましい。
【0027】
(熱可塑性樹脂フィルム)
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル系ポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、セルロース樹脂及びこれらの架橋体などの熱可塑性樹脂からなるフィルムが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は必要に応じて数種をブレンドしたものを用いてもよい。なかでも、塩化ビニル系樹脂フィルムが好ましい。
【0028】
塩化ビニル系樹脂は、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニルへのグラフト共重合体、他の樹脂との混合物を含む。
塩化ビニル共重合体における共単量体としては、例えば、酢酸ビニルのようなビニルエステル類、エチレンビニルエーテルのようなビニルエーテル類、エチレン、プロピレン、1−ブテン等のα−オレフィン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0029】
熱可塑性樹脂フィルムは、それより得られる粘着シートが適度の柔軟性を示すように、可塑剤を含んでいることが好ましく、さらに、必要に応じて、安定剤、フィラー滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
可塑剤は、特に限定されるものではなく、例えば、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系(大日本インキ(株)製W−700、トリメリット酸トリオクチル等)、アジピン酸エステル系((株)ジェイプラス製D620、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等)、リン酸エステル系(リン酸トリクレシル等)、アジピン酸系エステル、クエン酸エステル(アセチルクエン酸トリブチル等)、セバシン酸エステル、アセライン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、ポリエーテル系ポリエステル、エポキシ系ポリエステル(エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)、ポリエステル(カルボン酸とグリコールからなる低分子ポリエステル等)等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、エステル系可塑剤を用いることが好ましい。
可塑剤は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば、10〜60重量部の割合で用いることが適しており、10〜30重量部が好ましい。
【0030】
安定剤は、特に限定されるものではないが、バリウム−亜鉛系、スズ系、カルシウム−亜鉛系、カドミウム−バリウム系等の複合安定剤が挙げられる。
フィラーとしては、炭酸カルシウム、シリカ、雲母などの無機フィラー、鉄、鉛等の金属フィラー等が挙げられる。
着色剤としては、顔料、染料等が挙げられる。
その他の添加剤は、当該分野で公知のもののいずれをも使用することができる。
【0031】
熱可塑性樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、各樹脂の長所を生かした又は材料もしくは組成の異なるフィルムの積層体(多層フィルム)であってもよい。
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、得ようとする粘着シート等の物性によって調節することができ、例えば、30〜1000μm、好ましくは40〜800μm、さらに好ましくは50〜500μm、特に好ましくは60〜200μmが挙げられる。
熱可塑性樹脂フィルムの表裏面、特に、上面、すなわち粘着剤層が設けられる側の面には粘着剤との密着性を向上するために、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理などが施されていてもよい。
【0032】
(感圧性粘着剤層)
感圧性粘着剤(以下、単に「粘着剤」ということがある)層は、感圧性粘着剤によって形成されている。感圧性粘着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、粘着剤を構成するベースポリマーの種類によって、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられるが、これら公知の粘着剤の中から適宜選択することができる。なかでも、アクリル系粘着剤は、耐熱性、耐候性など種々の特性に優れ、アクリル系重合体を構成するモノマー成分の種類等を選択することにより、所望の特性を発現させることが可能であるため、好適に使用することができる。
【0033】
アクリル系粘着剤は、通常、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主モノマー成分として構成されるベースポリマーによって形成される。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステル(好ましくは(メタ)アクリル酸C2−12アルキルエステル。さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C1−8アルキルエステル)などが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0034】
アクリル系重合体は、凝集力、耐熱性、架橋性などの改質を目的として、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分に対応する単位を含んでいてもよい。
このような単量体成分としては、例えば、
アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;
スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;
【0035】
2−ヒドロキシエチルアクロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;
N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;
N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;
【0036】
N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;
【0037】
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;
(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;
(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチルグリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;
(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどの複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子などを有するアクリル酸エステル系モノマー;
【0038】
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマー;
イソプレン、ジブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;
ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は1種又は2種以上を使用することができる。
【0039】
アクリル系共重合体は、上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、必要に応じてその他の単量体を公知適宜な方法により重合に付すことにより製造できる。
アクリル系共重合体の分子量等は特に制限されず、例えば、重量平均分子量1000000〜2000000、好ましくは150000〜1000000、さらに好ましくは300000〜1000000の範囲であるものを使用できる。
【0040】
粘着剤は、エネルギー線重合性化合物を添加するか、ベースポリマーにエネルギー線重合性二重結合を導入すること等によって、エネルギー線硬化型粘着剤とすることができる。エネルギー線硬化型粘着剤を使用した粘着剤層は、エネルギー線照射前には十分な接着力を発現するが、エネルギー線照射後には接着力が著しく低下し、被着体にストレスを与えることなしに容易に剥離することが可能である。なお、エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線などが挙げられる。
【0041】
エネルギー線重合性化合物としては、エネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を分子中に2以上有する化合物を使用することができる。このような化合物としては、例えば、多官能アクリレート系化合物が挙げられる。
多官能アクリレート系化合物としては、例えば、1,4−ブチレンジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートやポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの直鎖状脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレート;
シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどの脂環式基を有する脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの分岐鎖状脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレートやこれらの縮合物(ジトリメチロールプロパンテトラクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなど)が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
エネルギー線重合性化合物として、例えば、ウレタンアクリレート系オリゴマーなどの多官能アクリレート系オリゴマーを使用してもよい。
ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ジイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応により得られたウレタンオリゴマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを反応させて得られる。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0043】
ポリオール化合物としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコール類、前記多価アルコール類と、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸などの脂肪族ジカルボン酸又はテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸との縮合反応により得られるポリエステル系ポリオール化合物;
ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル系ポリオール化合物;
ポリカプロラクトングリコール、ポリプロピオラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコール等のラクトン系ポリオール化合物;
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール等の多価アルコールと、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリカーボネート系ポリオール化合物が挙げられる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−
ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
エネルギー線重合性化合物は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば、5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは10〜45重量部の範囲で用いることができる。
【0045】
ベースポリマーにエネルギー線重合性二重結合を導入する方法としては、例えば、ベースポリマーであるアクリル系ポリマーを調製する際に、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基などの反応性官能基を有する共重合性モノマーを共重合させる方法が挙げられる。これにより、ベースポリマーに反応の基点となる官能基を導入し、エネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を有する多官能性モノマー又はオリゴマーを前記反応の基点となる官能基を介して結合させることができ、側鎖にエネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーを得ることができる。
【0046】
エネルギー線硬化型粘着剤は、必要に応じて光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤はエネルギー線を照射することにより励起、活性化してラジカルを生成し、粘着剤層の効率的な重合硬化反応を促進する。
光重合開始剤としては、例えば、
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル系開始剤;
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;
α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等の芳香族ケトン系開始剤;
ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール系開始剤;
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤、ベンジル等のベンジル系開始剤、ベンゾイン等のベンゾイン系開始剤、α−ケトール系化合物(2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなど)、芳香族スルホニルクロリド系化合物(2−ナフタレンスルホニルクロリドなど)、光活性オキシム化合物(1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなど)、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナートなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
粘着剤は、ベースポリマーとしてカルボキシル基などの酸性基を有するポリマーを使用し、中和剤を添加してベースポリマー中の酸性基の全部又は一部を中和することにより親水性を付与した親水性粘着剤としてもよい。親水性粘着剤は一般に被着体への糊残りが少なく、また、糊残りが生じた場合であっても、純水で洗浄することにより簡易に除去することができる。
酸性基を有するポリマーは、ベースポリマーを調製する際に上述のカルボキシル基含有モノマー等の酸性基を有する単量体を共重合することにより得られる。
中和剤としては、例えば、モノエチルアミン、モノエタノールアミンなどの1級アミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミンなどの2級アミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンなどの3級アミン等、アルカリ性を示す有機アミノ化合物が挙げられる。
【0048】
粘着剤は、必要に応じて架橋剤を含んでいてもよい。
架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などの架橋剤を使用することができ、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等を好適に使用することができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテル、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0049】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類、;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられる。
【0050】
粘着剤層は、可塑剤を含んでいることが好ましい。可塑剤としては、上述したものと同様のものが挙げられる。この場合の可塑剤の添加量は、粘着剤を構成する熱可塑性樹脂、つまりベースポリマー100重量部に対して、例えば、10〜100重量部の割合で用いることが適しており、好ましくは10〜80重量部、より好ましくは10〜60重量部が好ましい。
粘着剤層は、さらに、必要に応じて、安定剤、フィラー滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、上述したものと同様のものが挙げられる。
【0051】
粘着剤層は、上記粘着剤をナイフコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーターなど、適宜な方法で基材上に塗布することにより形成することができる。また、例えば、表面に離型処理を施したフィルムなど適当なキャスト用工程シート上に粘着剤層を形成し、この粘着剤層を熱可塑性樹脂フィルム上に転写してもよい。
粘着剤層の厚みは特に制限されないが、好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは5〜60μm、特に好ましくは5〜30μmである。粘着剤層の厚みが上記範囲内であると、熱可塑性樹脂フィルムの応力を軽減し、粘着シートの応力緩和率を向上させることができる。
【0052】
本発明の粘着シートは、例えば、シリコンウェハ接着力が、保存の状態にかかわらず、保存前後において、±0.5N/20mm以内の変動値に抑制されているものが好ましい。このような範囲とすることにより、保存状態にかかわらずに、粘着シートの粘着力の低下を防止することができ、被着体からの剥離を容易に行うことができる。ここで、保存前とは、粘着シートを製造した直後又は何着シートを製造し、剥離ライナーを粘着剤層側に接触させた直後を意味する。保存後とは、通常、製造した時又は剥離ライナーを粘着剤層側に接触させた時から、1週間程度以上経過した時点の後を意味する。
【0053】
この粘着シートは、種々の用途に用いることができる。例えば、光学装置又はフィルム、樹脂、ガラス、金属等からなる板状又は曲面を有する製品等の様々な部材、半導体プロセスにおけるウェハ等の固定用、半導体バックグラインド用、半導体ダイシング用、半導体パッケージ、ガラス、セラミックス等のダイシング用、これらプロセス時の回路面等の保護用に貼着する粘着シート等として使用することができる。
【0054】
このように、本発明の粘着シートは、メチレンビス脂肪酸アミドの原料に起因する、脂肪酸及び脂肪酸モノアミドからなる不純物を実質的に含有しないメチレンビス脂肪酸アミド組成物を用いることにより、市販されているメチレンビス脂肪酸アミドを使用した場合の不具合を予想外にも解消することができる。つまり、保管状態にかかわらず(つまり、高温での保存又は処理によっても)、常に十分な粘着力を得ることができる。さらに、シリコンウェハなどの被着体に貼り付けた状態で60℃程度の温度で保存しても(つまり、被着体貼り合わせ後の保存状態にかかわらず)、再度被着体から剥離しようとした際に、粘着力が上昇して剥がれにくくなる又は被着体に粘着剤が残る等という不具合を防止することができる。このような不具合は、低分子量の不純物成分が被着体と粘着剤との界面に液状で析出し、その後、室温に戻ると結晶化するために、被着体に対して接着剤様の効果を発現するものと推察される。これに対して、低分子量成分等の不純物量を低減させると、ある程度高温に保持してもメチレンビス脂肪酸アミドの移動が起こりにくく、経時での接着力の変化が少なくなると考えられる。
【0055】
(剥離ライナー)
本発明の粘着シートは、粘着剤層を保護等するために、剥離ライナーを備えていてもよい。
剥離ライナーとしては、当該分野で通常使用されているものであれば、特に限定されることなく用いることができる。例えば、紙、ゴム、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、鉄箔、ジュラルミン箔、錫箔、チタン箔、金箔などの各種金属箔、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミドなどの各種樹脂よりなるフィルム、ポリウレタンフォーム、ビニールフォーム、ポリエチレンフォーム、スチレンフォームなどの発泡体、不織布、織布、フェルトならびにこれらを高分子材料でラミネートしてなるフィルム等を基材として用いることができる。基材の厚みは特に限定されず、例えば、5μm〜5mm、好ましくは30μm〜100μm程度とすることが適当である。
このような基材における粘着剤層と接する側の表面にはシリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂、低分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ゴム系ポリマー、リン酸エステル系界面活性剤等の離型剤を層状に塗布するなど、当該分野で公知の離型処理を施したものが挙げられる。
剥離ライナーは、粘着シートを被着体へ貼付する際の貼付操作性を向上させるために、直線状、波状、鋸歯状、ギザギザ状のスリット(所謂、背切り)を一本又は複数本入れてもよい。
【0056】
〔粘着シートの製法〕
本発明の粘着シートは、脂肪酸アミドとホルムアルデヒドとの反応により得られたメチレンビス脂肪酸アミドを、前記脂肪酸モノアミド及びこれを構成する脂肪酸を溶解し、かつメチレンビス脂肪酸アミドを溶解しない溶媒を用いた洗浄によって精製したメチレンビス脂肪酸アミド組成物を得、
該メチレンビス脂肪酸アミド組成物を、添加剤として樹脂に添加して熱可塑性樹脂フィルム又は感圧性粘着剤層を形成し、
前記熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層を積層することを含む。
【0057】
ここで、精製したメチレンビス脂肪酸アミド組成物は、上記のようにして得ることができる。
また、この精製したメチレンビス脂肪酸アミド組成物を添加剤として樹脂等に添加して、熱可塑性樹脂フィルム又は感圧性粘着剤層を形成する方法自体は、当該分野で公知の方法を利用することができる。
なお、このような熱可塑性樹脂フィルム又は感圧性粘着剤層の形成及び積層は、順次に行ってもよい。つまり、当該分野で公知の方法によって、熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層をそれぞれ単独で形成してもよい。そのために、例えば、溶融押出成形法(インフレーション法、Tダイ法等)、溶融流延法、カレンダー法等を利用することができる。また、粘着剤層については、上述した方法によって、別途形成してもよい。このように、熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層を単独で形成した場合には、当該分野で公知の方法によって、両者を積層することができる。
【0058】
熱可塑性樹脂フィルム又は感圧性粘着剤層の形成及び積層は同時に行ってもよい。つまり、熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層を、共押出法、ラミネート法(押出ラミネート法、接着剤を用いたラミネート法等)、ヒートシール法(外部加熱法、内部発熱法等)によって多層構造として形成してもよい。
剥離ライナーは、通常、粘着シートを形成した後、粘着剤層側に貼着することによって、剥離ライナー付き粘着シートを得ることができる。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0060】
実施例1:メチレンビス脂肪酸アミド組成物及びその製造
まず、市販の製造ロットの異なるメチレンビス脂肪酸アミド(1)及び(2)(日本化成(株)製)を準備した。
これらのメチレンビス脂肪酸アミド(1)及び(2)について、各成分の含有量を、HPLCを用いて、以下の条件で測定した。その結果を表1に示す。
次いで、これらのメチレンビス脂肪酸アミド(1)及び(2)について、脂肪酸モノアミド及び該脂肪酸モノアミドを構成する脂肪酸からなる不純物を除去した。具体的には、これらのメチレンビス脂肪酸アミド(1)及び(2)約1gに、それぞれクロロホルム40mlを加え、浸とう機を用いて1時間浸とうさせた。その後、吸引ろ過により不溶分と可溶分に分離した。得られたクロロホルム不溶分について、それぞれ同様の操作をさらに2回行い、実質的に不純物を含まないメチレンビス脂肪酸アミド組成物を得た。
【0061】
メチレンビス脂肪酸アミド組成物の不純物の分析は、以下のように行った。その結果を表1に示す。
まず、メチレンビス脂肪酸アミド組成物を約0.5g採取し、クロロホルムとアセトニトリルとの混合溶媒に約1日間浸漬して浸とうし、その後、上澄み液を、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、HPLC装置(Waters, W2695/W2420)によって、以下の条件で測定した。
HPLC条件
カラム:Inertsil C8-3(4.6mm×150mm、5μm)
流量:1.0ml/min
検出器:ELS
カラム温度:40℃
注入量:30μl
Grain:30
ドリフトチューブ温度:50℃
ガス圧:40psi
溶離液成分:Gradient(min) 0→20→40
A:0.1%TFA水溶液 A% 50→0→0
B:アセトニトリル B% 50→100→100
【0062】
【表1】

【0063】
実施例2:粘着シート及びその製造
以下の組成材料を準備し、予めヘンシェルミキサーでブレンドし、可塑剤を樹脂に染み込ませてドライアップした。これをバンバリミキサーで混練することで得たポリ塩化ビニル混和物を用い、カレンダー成膜機により厚さ110μmの熱可塑性樹脂フィルムを得た。
メチレンビス脂肪酸アミド組成物は、表2の実施例及び比較例の配合に従い、バンバリミキサー混練時に添加した。
熱可塑性樹脂:ポリ塩化ビニル樹脂(平均重合度1050) 100重量部
可塑剤:ジエチルヘキシルフタレート 30重量部
安定剤:Ba−Zn混合安定剤 3重量部
滑剤 0.7重量部
ここで、滑剤は、実施例1ではメチレンビス脂肪酸アミド(1)のクロロホルム抽出後のもの、比較例1では、メチレンビス脂肪酸アミド(1)のクロロホルム抽出前のもの、比較例2では、チレンビス脂肪酸アミド(1)のクロロホルム抽出前のものとした。
【0064】
また、粘着剤組成物を以下の組成で調製した。
アクリルポリマー(ブチルアクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=84/14/2) 100重量部
可塑剤:ジエチルヘキシルフタレート 20重量部
架橋剤:ブチル化メラミン樹脂 10重量部
得られた粘着剤組成物をトルエンにて20%に希釈し、乾燥後の厚さが10μmになるように、上記熱可塑性樹脂フィルムに塗布し、150℃、1分間の乾燥工程を経て、ロール状に巻き取った。
その後、50℃、24時間のエージングを行い、剥離ライナー(シリコーン処理ポリエステルフィルム、MRF、38μm(三菱樹脂社製))に貼り合せて巻き取った。
【0065】
得られた粘着シートを用いて、以下の評価を行った。1)テープ加熱保存後の接着力評価
剥離ライナー付き粘着シートを60℃の乾燥機中で一週間保存した後、1時間室温で放置したものから幅20mm、長さ100mmの試験片を切り出し、以下の条件にて接着力を測定した。
測定装置:インストロン型引張試験機 島津製作所製 AUTOGRAPH AG−IS
測定雰囲気:23℃、50%RH
被着体:8インチミラーウェハ
貼り合せ条件:2kgローラーで1往復
測定条件:90°ピール、300mm/min
合否判定;初期値に対して±0.5N/20mm以内のものを合格とした。
【0066】
2)シリコンウェハ貼り合せ後の加熱保存接着力評価
幅20mm、長さ100mmに切断した試験片をシリコンウェハに貼り付け、60℃の乾燥機中で一週間保存した後、1時間室温で放置したものを、以下の条件にて接着力を測定した。
測定装置:インストロン型引張試験機 島津製作所製 AUTOGRAPH AG−IS
測定雰囲気:23℃、50%RH
被着体:8インチミラーウェハ
貼り合せ条件:2kgローラーで1往復
測定条件:90°ピール、300mm/min
合否判定:初期値に対して±0.5N/20mm以内のものを合格とした
【0067】
3)接着力試験後のウェハ面汚染性評価
接着力試験後のウェハ面への後付き性(汚染性)を以下の判断基準で評価した。
5:全く後付きなし
4:うっすらと全面に見える(凝視しないと見えない程度)
3:凝視せずとも確認できる(黒っぽい後付き)
2:白く曇って見える
1:白い後付きがはっきり確認できる(こすると塊が取れる程度)
評価3以上の黒色汚染のものまでは合格とした。
【0068】
得られた結果を、表2に示す。
【表2】

【0069】
表2の結果から、不純物を実質的に含有しないメチレンビス脂肪酸アミド組成物を用いた実施例1では、テープ保存及び貼付保存ともに接着力が安定していることが確認された。また、耐汚染性も非常に良好であった。
不純物を実質的に含有するメチレンビス脂肪酸アミド組成物を使用した比較例1及び2は、貼付保存での接着力上昇性が高い。また、テープ保存では、接着力が、比較例1では上昇するのに対し、比較例2では逆に減少している。また、テープ保存では汚染性が非常に高く、実際の使用でも問題となるレベルである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の粘着シートは、電子部品など種々の被着体の表面保護用シート、ダイシング時の加工用又は保護用シート等として広範に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸モノアミドとホルムアルデヒドとの反応により得られたメチレンビス脂肪酸アミドを主成分として含有するメチレンビス脂肪酸アミド組成物であって、
前記脂肪酸モノアミド及び該脂肪酸モノアミドを構成する脂肪酸からなる不純物の含有量が、0〜1重量%未満であることを特徴とするメチレンビス脂肪酸アミド組成物。
【請求項2】
メチレンビス脂肪酸アミドが、式(I)で表される化合物である請求項1に記載のメチレンビス脂肪酸アミド組成物。
−Am−CH−Am−R (I)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数6〜23の飽和又は不飽和炭化水素基を表し、Amは2級アミド基を表す。)
【請求項3】
脂肪酸モノアミドとホルムアルデヒドとの反応により得られたメチレンビス脂肪酸アミドは、前記脂肪酸モノアミド及びこれを構成する脂肪酸を溶解し、かつメチレンビス脂肪酸アミドを溶解しない溶媒を用いた抽出によって不純物である前記脂肪酸モノアミド及び脂肪酸が除去されたものである請求項1又は2に記載のメチレンビス脂肪酸アミド組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂フィルムの片面に感圧性粘着剤層が形成されてなる粘着シートであって、少なくとも熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層のいずれか一方に、請求項1〜3のいずれかに記載のメチレンビス脂肪酸アミド組成物が含有されてなることを特徴とする粘着シート。
【請求項5】
メチレンビス脂肪酸アミド組成物が、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1〜3.0重量部で添加されてなる請求項4記載の粘着シート。
【請求項6】
熱可塑性樹脂フィルムが、ポリ塩化ビニルからなるフィルムである請求項4又は5に記載の粘着シート。
【請求項7】
熱可塑性樹脂フィルムが、さらにエステル系可塑剤を含む請求項4〜6のいずれか1つに記載の粘着シート。
【請求項8】
感圧性粘着剤層が、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む請求項4〜7のいずれか1つに記載の粘着シート。
【請求項9】
感圧性粘着剤層が、さらにエステル系可塑剤を含む請求項4〜8のいずれか1つに記載の粘着シート。
【請求項10】
保存後において、初期値の±0.5N/20mm以内の変動値のシリコンウェハ接着力を示す請求項4〜9のいずれか1つに記載の粘着シート。
【請求項11】
脂肪酸アミドとホルムアルデヒドとの反応により得られたメチレンビス脂肪酸アミドを、前記脂肪酸モノアミド及びこれを構成する脂肪酸を溶解し、かつメチレンビス脂肪酸アミドを溶解しない溶媒を用いた洗浄によって精製したメチレンビス脂肪酸アミド組成物を得、
該メチレンビス脂肪酸アミド組成物を、添加剤として樹脂に添加して熱可塑性樹脂フィルム又は感圧性粘着剤層を形成し、
前記熱可塑性樹脂フィルム及び感圧性粘着剤層を積層することを含む粘着シートの製造方法。

【公開番号】特開2012−31215(P2012−31215A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162736(P2010−162736)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】