説明

メッシュインプラント

【課題】固定デバイスのさらなる使用を必要とせず、むしろ自己位置決めするインプラントを提供する。
【解決手段】インプラント110であって:多孔性基体120;この多孔性基体120に付与された第1のヒドロゲル前駆体および第2のヒドロゲル前駆体;およびこの多孔性基体内に包埋された第1の部分152、および組織接触のために剥き出た第2の部分154を有するメッシュ150、を含むインプラント110が提供される。一つの実施形態において、この多孔性基体120は発泡体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2009年10月1日に出願された米国仮出願番号第61/247,711号に基づく利益および優先権を主張しており、この仮出願の全体の開示は本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、メッシュおよびそれに付与された第1のヒドロゲル前駆体および第2のヒドロゲル前駆体を有する多孔性基体を含むインプラントに関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
ヘルニアは、正常では組織、構造物または器官に収容されている、損傷した筋肉組織または損傷した膜を通る、これらの組織、構造物または器官の一部分の突出である。ヘルニアのいくつかの例は、腹壁ヘルニア、横隔フィルムヘルニアおよび内ヘルニア(例えば、胃の傍食道へルニア)、骨盤ヘルニア、例えば、閉鎖孔ヘルニア、肛門ヘルニア、椎間板の髄核のヘルニア、頭蓋内ヘルニア、およびスピゲリウスヘルニアを含む。
【0004】
ヘルニアは手術により修復され得、そして主に、ヘルニア組織を押し戻すか、または「低減する」こと、そして次に損傷した筋肉組織中の欠陥を補強することによって修復される(ヘルニア縫合術と呼ばれる手術)。最新の筋肉補強技法は、欠陥を支持するために損傷した組織または欠陥の近傍に、外科用メッシュのようなインプラントの配置を含む。このインプラントは、欠陥の上(前部修復)に、またはよりしばしば欠陥の下(後部修復)のいずれかに配置される。
【0005】
種々の異なる固定デバイスがインプラントを組織中に係留するために用いられる。例えば、ニードルによる縫合糸が欠陥の近傍の組織を通り、またはその周りを通過され、損傷した組織にまたがる位置にインプラントを保持し得る。その他の例では、ステープル、タック、クリップおよびピンがまたは欠陥の近傍の組織を通り、またはその周りを通過されることが知られ、損傷した組織にまたがる位置にインプラントを係留する。このような方法は、組織中にインプラントを係留することにおいて効率的であることが証明されているが、このようなデバイスによる組織の貫通は、欠陥または欠陥の近傍の組織にさらなる外傷を与え、そして組織の治癒のためにさらなる時間を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、固定デバイスのさらなる使用を必要とせず、むしろ自己位置決めするインプラントを提供することが所望され得る。水性の生理学的流体の存在によって活性化される接着材料を含む多孔性基体とのメッシュの組み合わせは、移植の部位でデバイスのインサイチュ(in situ)接着を確実にし、それによって損傷した組織へのさらなる外傷を与えることなくインプラントを係留する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)インプラントであって:
多孔性基体;
該多孔性基体に付与された第1のヒドロゲル前駆体および第2のヒドロゲル前駆体;および
該多孔性基体内に包埋された第1の部分、および組織接触のために剥き出た第2の部分を有するメッシュ、を含むインプラント。
(項目2)前記多孔性基体が発泡体である、上記項目に記載のインプラント。
(項目3)前記メッシュが編まれた編物である、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目4)前記多孔性基体が、生体吸収性材料から作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目5)前記多孔性基体が、コラーゲン、キトサン、酸化セルロースおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料から作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目6)前記メッシュが、非生体吸収性材料から作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目7)前記メッシュが、ポリプロピレンから作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目8)前記第1のヒドロゲル前駆体が、粒子、発泡体、フィルムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目9)前記第2のヒドロゲル前駆体が、粒子、発泡体、フィルムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目10)接着障壁をさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目11)生物作用薬剤をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目12)インプラントであって:
多孔性基体;
該多孔性基体に付与された第1のヒドロゲル前駆体;
第2のヒドロゲル前駆体を含むフィルムであって、該多孔性基体の少なくとも一部分に付与されるフィルム;および
該多孔性基体と接触する第1の部分、および組織接触のために剥き出た第2の部分を有するメッシュ、を含むインプラント。
(項目13)前記多孔性基体が発泡体である、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目14)前記メッシュが織られた織物である、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目15)前記メッシュが不織布である、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目16)前記多孔性基体が、生体吸収性材料から作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目17)前記多孔性基体が、コラーゲン、キトサン、酸化セルロースおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料から作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目18)前記メッシュが、非生体吸収性材料から作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目19)前記メッシュが、ポリプロピレンから作製される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目20)前記第1のヒドロゲル前駆体が、粒子、発泡体、フィルムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目21)上記項目のうちのいずれかに記載のインプラントであって、その中に規定されたスリットをさらに備える、インプラント。
(項目22)接着障壁層をさらに備える、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
(項目23)生物作用薬剤をさらに含む、上記項目のうちのいずれかに記載のインプラント。
【0008】
(要約)
本発明のインプラントは、多孔性基体、第1のヒドロゲル前駆体、第2のヒドロゲル前駆体およびメッシュを含む。この第1および第2のヒドロゲル前駆体は、多孔性基体に付与されている。このメッシュは、多孔性基体と接触する第1の部分および組織接触のために剥き出た第2の部分を有する。いくつかの実施形態では、第1のヒドロゲル前駆体または第2のヒドロゲル前駆体の少なくとも1つは、フィルムとして多孔性基体に付与され得る。いくつかの実施形態では、この第1のヒドロゲル前駆体は、第2のヒドロゲル前駆体と空間的に分離されていてもよく、インプラントが移植の部位に配置され、そしてこの第1および第2のヒドロゲル前駆体が患者の生理学的流体に曝されるまで互いに反応することを防ぐ。インプラントを生理学的流体に曝すことは、第1のヒドロゲル前駆体を多孔性基体を通って移動させ、第2のヒドロゲル前駆体と反応させ得る。特定の実施形態では、本発明のインプラントは、接着性質を示すのみならず、さらに止血性質をもまた示す。
【0009】
組織を支持するための方法もまた、記載される。本発明の方法によれば、多孔性基体、第1のヒドロゲル前駆体、第2のヒドロゲル前駆体、およびメッシュを有するインプラントは、患者の生理学的流体と接触して位置決めされる。このインプラントは損傷した組織上に位置決めされてもよく、そして次に患者の組織と接触し、その結果、生理学的流体が多孔性基体を通って運ばれ、順次、第1のヒドロゲル前駆体を、そして次に第2のヒドロゲル前駆体コーティングを溶解する。一旦、溶解されると、第1のヒドロゲル前駆体と第2のヒドロゲル前駆体が反応し、生体適合性の架橋された接着材料を形成する。この接着材料は多孔性基体を組織に係留し、メッシュは損傷した組織を横切ってまたがり、そして損傷した組織を支持する。いくつかの実施形態では、第1のヒドロゲル前駆体は、上記基体の第1の部分へのフィルムとして付与され得る。生理学的流体との接触に際し、このフィルムは溶解し、そしてこの第1の前駆体は多孔性基体に運ばれて第2のヒドロゲル前駆体と接触し、生体適合性の架橋された材料を形成する。
【0010】
(摘要)
本開示は、多孔性基体、第1のヒドロゲル前駆体、第2のヒドロゲル前駆体およびメッシュを含むインプラントに関する。この第1および第2のヒドロゲル前駆体は、多孔性基体に付与されている。このメッシュは、多孔性基体と接触する第1の部分および組織接触のために剥き出た第2の部分を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の種々の実施形態を、選択された実施形態と添付の図面とを組み合わせて以下により詳細に論議する。
【図1】図1Aは、本開示によるメッシュインプラントの1つの実施形態の斜視図である。図1Bは、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、図1Aのインプラントの断面図を示す。
【図2】図2Aは、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、多孔性基体中へのメッシュの取り込みを概略的に示す。図2Bは、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、多孔性基体中へのメッシュの取り込みを概略的に示す。図2Cは、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、図2Aのインプラントの平面図である。
【図3−1】図3Aは、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、メッシュインプラントへの第1のヒドロゲル前駆体の付与を概略的に示す。図3Bは、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、メッシュインプラントへの第1のヒドロゲル前駆体の付与を概略的に示す。図3Cは、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、メッシュインプラントへの第1のヒドロゲル前駆体の付与を概略的に示す。
【図3−2】図3Dは、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、メッシュインプラントへの第2のヒドロゲル前駆体の付与を概略的に示す。図3Eは、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、メッシュインプラントへの第2のヒドロゲル前駆体の付与を概略的に示す。図3Fは、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、メッシュインプラントへの第2のヒドロゲル前駆体の付与を概略的に示す。
【図4】図4Aは、本開示に従うメッシュインプラントの代替の実施形態の斜視図を示す。図4Bは、本開示に従うメッシュインプラントの代替の実施形態の断面図を示す。図4Cは、本開示に従うメッシュインプラントの代替の実施形態の断面図を示す。
【図5】図5Aは、本開示に従うメッシュインプラントの代替の1つの実施形態の斜視図を示す図5Bは、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、図5Aのインプラントの断面図を示す。
【図6】図6は、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、メッシュインプラントの平面図を示す。
【図7】図7は、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、メッシュインプラントの平面図を示す。
【図8】図8は、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、メッシュインプラントの平面図を示す。
【図9】図9は、本開示における少なくとも1つの実施形態に記載されるような、メッシュインプラントの平面図を示す。
【図10】図10は、本開示に従うメッシュインプラントのなお別の実施形態の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(詳細な説明)
本開示に従うインプラントは、多孔性基体、第1のヒドロゲル前駆体、第2のヒドロゲル前駆体およびメッシュを含む。この第1および第2のヒドロゲル前駆体は、多孔性基体に付与され得る。このメッシュは、多孔性基体と接触する第1の部分および組織接触のために剥き出た第2の部分を有する。使用の間に、この第1のヒドロゲル前駆体と第2のヒドロゲル前駆体は、生理学的流体への曝露に際し反応して止血を提供し、そしてインプラントを損傷された組織中に係留し、メッシュが損傷された組織を支持することを可能にする。いくつかの実施形態では、これら第1および第2のヒドロゲル前駆体は、造影色素の添加、表面の手ざわり、着色またはその他の視覚合図により互いから区別可能であり得る。いくつかの実施形態では、これら第1のヒドロゲル前駆体および第2のヒドロゲル前駆体は、多孔性基体の異なる部分上に位置決めされ得る。例えば損傷した組織などの組織との接触に際し、インプラントは、生理学的流体を吸い上げ得、そして第1のヒドロゲル前駆体は、この流体によって溶解され得る。この流体が多孔性インプラントを横切って運ばれ、そして移動するとき、それは、溶解された第1のヒドロゲル前駆体をインプラントに沿って通って運ぶ。最終的には、この流体は、インプラントを通って十分に移動し、第2のヒドロゲル前駆体が付与され得る第2の位置に到達し、それによって、第2のヒドロゲル前駆体を溶解する。これら第1および第2のヒドロゲル前駆体は、次いで、反応し、生体適合性の架橋された材料を形成し、それによって、インプラントを組織中に係留し、そしてまた止血を支援する。
【0013】
インプラントの多孔性基体は、その表面の少なくとも一部分上に開口部または孔を有する。これらの孔は、移植前または移植後のいずれかで形成され得る。以下でより詳細に記載されるように、この多孔性基体を形成するために適切な材料は、制限されないで、繊維構造物(例えば、編まれた構造物、織られた構造物、不織構造物など)および/または発泡体(例えば開放または閉鎖セル発泡体)を含む。いくつかの実施形態では、これらの孔は、この多孔性基体の全厚みを横切って相互連結するに十分な数およびサイズであり得る。織られた織物、編まれた編物および開放セル発泡体は、孔が、多孔性基体の全厚みを横切って相互連結するように十分な数およびサイズであり得る構造物の例示の例である。その他の実施形態では、これらの孔は多孔性基体の全厚みを横切っては相互連結しない。閉鎖セル発泡体または融合された不織材料は、これら孔が多孔性基体の全厚みを横切って相互連結しないかも知れない例示の例である。発泡体多孔性基体の孔は、多孔性基体の全厚みを横切ってまたがり得る。なおその他の実施形態では、これら孔は多孔性基体の全厚みを横切って延びなくてもよく、むしろその厚みの一部分に存在し得る。実施形態では、これら開口部または孔は、多孔性基体の表面の一部分上に位置決めされ得、多孔性基体のその他の部分は、非多孔性の構成(テクスチャー)を有する。その他の実施形態では、これらの孔は、移植後にインサイチュで形成され得る。このインサイチュの孔形成は、任意の適切な方法を用いて実施され得る。いくつかの非限定的な例は、接触リソグラフィー、凍結乾燥、リビングラジカル光ポリマー(LRPP)システムおよび塩リーチングを含む。本開示を読む当業者は、孔分布パターンを、そして多孔性基体のための形態を作製するその他の方法を想定し得る。
【0014】
多孔性基体が繊維状である場合、繊維は編むこと、または織ることに適したフィラメントまたはスレッドであり得るか、または不織材料を調製するために頻繁に用いられるようなステープルファイバーであり得る。これら繊維は、任意の生体適合性材料から作製され得る。従って、これら繊維は天然材料または合成材料から形成され得る。上記繊維が形成される材料は、生体吸収性または非生体吸収性であり得る。勿論、天然材料、合成材料、生体吸収性材料および非生体吸収性材料の任意の組み合わせが上記繊維を形成するために用いられ得ることが理解されるべきである。上記繊維が作製され得る材料のいくつかの非制限的な例は、制限されないで、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ホスファジン)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリ酢酸、ポリカプロラクトン、ポリプロピレン、脂肪族ポリエステル、グリセロール、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリ(サッカライド)、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリオキサエステル、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、バイオポリマー、ポリマー薬物およびそれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、それらのブレンドおよび組み合わせを含む。
【0015】
多孔性基体が繊維状である場合、この多孔性基体は、繊維状構造を形成することに適した任意の方法を用いて形成され得、これには、制限されないで、編む技法、織る技法、不織技法、ウェットスピニング、電気スピニング、押出し、同時押出しなどが含まれる。繊維状構造物を作製するために適切な技法は、当業者の範囲内である。
【0016】
いくつかの実施形態では、上記多孔性基体は、酸化セルロースの繊維から作製され得る。このような材料は公知であり、そして商標名SURGICEL(登録商標)の下で市販され入手可能な酸化セルロース止血材料を含む。酸化セルロース止血材料を調製する方法は公知であり、そして、例えば、米国特許第3,364,200号;同第4,626,253号;同第5,484,913号;および同第6,500,777号に開示されており、これらの開示は、それらの全体がこの参照によって本明細書中に援用される。
【0017】
上記多孔性基体が発泡体である場合、この多孔性基体は、発泡体またはスポンジを形成することに適した任意の方法を用いて形成され得、これには、制限されないで、組成物の凍結乾燥またはフリーズドライすることが含まれる。発泡体は架橋されても、架橋されなくてもよく、そして共有結合またはイオン結合を含み得る。発泡体を作製する適切な技法は当業者の範囲内である。
【0018】
多孔性基体は少なくとも0.1cm厚み、実施形態では約0.2〜約1.5cm厚みであり得る。多孔性基体中の孔のサイズは、約2μm〜約300μm、実施形態では約50μm〜約150μmであり得る。基体の孔は基体中で任意の様式で配列され得ることが想定される。例えば、これらの孔はランダム様式または均一な様式の形態であり得る。いくつかの実施形態では、これらの孔はアルギン酸銅の使用で形成され得、ハニカム形状の多孔性基体を生成する。なおその他の実施形態では、こららの孔は多孔性基体中で勾配を形成するような形態であり得る。この勾配はさらに、生理学的流体を吸収する多孔性基体の能力を増大し、そして第1のヒドロゲル前駆体を第2のヒドロゲル前駆体に向かって運ぶ生理学的流体の移動を指示する。
【0019】
実施形態では、インプラントは非変性コラーゲン、または加熱または任意のその他の方法によってそのらせん構造を少なくとも部分的に失った、分子量が100kDaに近い、加水分解されていないα鎖から主になるコラーゲンから作製され得る。用語「非変性コラーゲン」は、そのらせん構造を失っていないコラーゲンを意味する。本発明のインプラントのために用いられるコラーゲンは、特にペプシン消化によって得られる、および/または先に規定されたような穏和な加熱後のようなネイティブコラーゲンまたはアテロコラーゲンであり得る。コラーゲンは、酸化、メチル化、エチル化、スクシニル化または任意のその他の公知のプロセスによって予め化学的に改変されていてもよい。コラーゲンはまた、ジェニピン、イソシアナート、およびアルデヒドのような任意の適切な架橋剤で架橋されていてもよい。コラーゲンの起源およびタイプは、上記に記載の非インプラントのために示されるようであり得る。
【0020】
実施形態では、インプラントは、2〜50g/lの濃度および4〜25℃の初期温度でコラーゲンの水性酸溶液を凍結乾燥することによって得られ得る。溶液中のコラーゲンの濃度は、約1g/l〜約30g/l、実施形態では、約10g/lであり得る。この溶液は、有利には、ほぼ6〜8のpHまで中和される。
【0021】
インプラントはまた、可変の個々の量(約1〜約10で変化する空気:水の容量)の空気の容量の存在下で乳化されたコラーゲンまたは加熱されたコラーゲンの溶液から調製された流体発泡体を凍結乾燥することにより得られ得る。
【0022】
多孔性基体は、それに付与された第1のヒドロゲル前駆体、およびそれに付与された第2のヒドロゲル前駆体を有する。用語「第1のヒドロゲル前駆体」および「第2のヒドロゲル前駆体」の各々は、反応に参加し得、架橋された分子、例えば、ヒドロゲルのネットワークを形成するポリマー、機能的ポリマー、高分子、小分子、または架橋剤を意味する。
【0023】
実施形態では、第1または第2のヒドロゲル前駆体の少なくとも1つは、約1000Da以下の小分子であり得、そして「架橋剤」と称される。この架橋剤は、水性溶液中で少なくとも1g/100mLの溶解度を有し得る。架橋された分子は、イオン結合または共有結合、物理的な力、またはその他の引力を経由して架橋され得る。
【0024】
実施形態では、第1または第2のヒドロゲル前駆体の少なくとも1つは高分子であり得、そして「機能的ポリマー」と称される。この高分子は、架橋剤と組み合わせて反応するとき、小分子架橋剤より分子量が少なくとも5〜50倍より大きくてもよく、そして約60,000Da未満であり得る。いくつかの実施形態では、上記架橋剤より分子量が7〜30倍より大きい高分子が用いられ得、そしていくつかの実施形態では、重量で約10〜20倍異なる高分子が用いられ得る。さらに、5,000Da〜50,000Daの高分子の分子量が有用であり得る。本明細書で用いられるとき、用語「ポリマー」は、少なくとも3つの繰り返し基から形成される分子を意味する。
【0025】
第1および第2のヒドロゲル前駆体の各々は多官能性であり、それは、2つ以上の求電子官能基または求核官能基を含むことを意味し、その結果、例えば、第1のヒドロゲル前駆体上の求核官能基が第2のヒドロゲル前駆体上の求電子官能基と反応して、共有結合を形成し得る。これら第1または第2のヒドロゲル前駆体の少なくとも1つは、2つ以上の官能基を含み、その結果、求電子−求核反応の結果として、これら前駆体は組み合わさって架橋されたポリマー産物を形成する。このような反応は、「架橋反応」と称される。
【0026】
特定の実施形態では、第1および第2のヒドロゲル前駆体の各々は、求核前駆体および求電子前駆体の両方が架橋反応で用いられる限り、求電子基のみ、または求核基のみのいずれかである、1つのみのカテゴリーの官能基を含む。それ故、例えば、第1のヒドロゲル前駆体がアミンのような求核官能基を有する場合、第2のヒドロゲル前駆体は、N−ヒドロキシスクシンイミドのような求電子官能基を有し得る。一方、第1のヒドロゲル前駆体がスルホスクシンイミドのような求電子官能基を有する場合、第2のヒドロゲル前駆体はアミンまたはチオールのような求核官能基を有し得る。それ故、タンパク質、ポリ(アリルアミン)、スチレンスルホン酸、またはアミン末端ジ−または多官能性ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)のような官能性ポリマーが用いられ得る。
【0027】
第1および第2のヒドロゲル前駆体は、生物学的に不活性でかつ水溶性のコアを有し得る。このコアが水溶性であるポリマー領域であるとき、用いられ得るポリマーは以下を含む:ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリエチレンオキシド−コ−ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、コ−ポリエチレンオキシドブロックまたはランダムコポリマー、およびポリビニルアルコール(「PVA」)のようなポリアルキレンオキシド;ポリ(ビニルピロリドン)(「PVP」);ポリ(アミノ酸);デキストラン、キトサン、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒアルロン酸のようなポリ(サッカライド)、およびアルブミン、コラーゲン、カゼイン、およびゼラチンのようなタンパク質。ポリエーテル、そしてより詳細には、ポリ(オキシアルキレン)またはポリ(エチレングルコール)またはポリエチレングリコールが特に有用である。コアが本質的に小分子であるとき、任意の種々の親水性官能性が、第1および第2のヒドロゲル前駆体を水溶性にするために用いられ得る。例えば、水溶性である、ヒドロキシル、アミン、スルホネートおよびカルボキシレートのような官能基が、前駆体を水溶性にするために用いられ得る。さらに、スベリン酸のN−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステルは水に不溶性であるが、スクシンイミド環にスルホン酸基を付加することにより、このスベリン酸のNHSエステルは、そのアミン基への反応性に影響することなく水溶性にされ得る。
【0028】
第1および第2のヒドロゲル前駆体の反応から得られる架橋された生体適合性ポリマーが生分解性または吸収可能であることが所望される場合、第1および第2のヒドロゲル前駆体の1つ以上は、官能基の間に存在する生分解性の結合を有し得る。この生分解性の結合はまた、必要に応じて1つ以上の前駆体の水溶性コアとして役立ち得る。あるいは、またはそれに加えて、第1および第2のヒドロゲル前駆体の官能基は、それらの間の反応の産物が生分解性の結合を生じるように選択され得る。各々のアプローチのために、生分解性の結合は、得られる生分解性の生体適合性の架橋されたポリマーが所望の時間の期間に分解、溶解または吸収されるように選択され得る。実施形態では、生分解性の結合は、生理学的条件下で非毒性産物に分解するものが選択され得る。
【0029】
この生分解性の結合は、キレートであり得るか、または化学的もしくは酵素的に加水分解可能であり得るか、または吸収可能であり得る。例示の化学的に加水分解可能な生分解性結合は、グリコリド、dl−ラクチド、l−ラクチド、カプロラクトン、ジオキサノン、およびトリメチレンカーボネートのポリマー、コポリマーおよびオリゴマーを含む。例示の酵素的に加水分解可能な生分解性結合は、メタロプロテイナーゼおよびコラゲナーゼによって切断可能なペプチド結合を含む。さらなる例示の生分解性結合は、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(酸無水物)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(カーボネート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(ホスホネート)、およびそれらの組み合わせのポリマーおよびコポリマーを含む。
【0030】
実施形態では、生分解性結合はエステル結合を含み得る。いくつかの非制限的な例は、コハク酸、グルタル酸、プロピオン酸、アジピン酸、もしくはアミノ酸のエステル、およびカルボキシメチルエステルを含む。
【0031】
実施形態では、トリリジンのような多官能性求核性ポリマーが第1のヒドロゲル前駆体として用いられ得、そして複数のNHS基で官能化された多−アームPEGのような多官能性求電子ポリマーが第2のヒドロゲル前駆体として用いられ得る。この複数のNHS基で官能化された多−アームPEGは、例えば、4、6または8のアームを有し得、そして約5,000Da〜約25,000Daの分子量を有する。適切な第1および第2のヒドロゲル前駆体の多くのその他の例は、米国特許第6,152,943号;同第6,165,201号;同第6,179,862号;同第6,514,534号;;同第6,566,406号;同第6,605,294号;同第6,673,093号;同第6,703,047号;同第6,818,018号;同第7,009,034号;および同第7,347,850号に記載され、これら各々の全体の内容は本明細書中に参考として援用される。
【0032】
第1のヒドロゲル前駆体は、多孔性基体の第1の部分に付与され得、そして第2のヒドロゲル前駆体は、多孔性基体の第2の部分に付与され得る。例えば、これら前駆体は、粒子状物質のような、またはフィルムもしくは発泡体のような固体もしくは半固体状態にある乾燥形態で付与され得る。実施形態では、第1または第2のヒドロゲル前駆体の少なくとも1つは、フィルムとして多孔性基体に付与され得る。実施形態では、基体の第1の部分に付与された第1のヒドロゲル前駆体を有する基体の第1の部分は、多孔性基体の第2の部分に付与された第2のヒドロゲル前駆体を有する多孔性基体の第2の部分から空間的に分離され得る。互いから空間的に分離された第1および第2のヒドロゲル前駆体を有することは、インプラントが移植の部位に配置され、そして患者の生理学的流体に曝されるまで互いと反応することを防ぐ。
【0033】
実施形態では、第1のヒドロゲル前駆体は、当業者に公知の任意の適切な方法を用いて多孔性基体に付与され得る。例えば、第1のヒドロゲル前駆体は、多孔性基体を形成する前に多孔性基体中に組み込まれ得る。別の非制限的な例では、第1のヒドロゲル前駆体は、多孔性基体の形成後、多孔性基体の孔の中に、またはこの基体の表面上に位置決めされ得る。さらなる実施形態では、多孔性基体は、第1のヒドロゲル前駆体の付与の前にカレンダー(ロール機械)にかけらてもよく、それによって、第1のヒドロゲル前駆体がカレンダー加工プロセスによって生成された基体上の開口部中に浸透する。なおその他の実施形態では、第1のヒドロゲル前駆体は、溶液中の多孔性基体に付与されてもよく、次いで溶媒を蒸発または凍結乾燥する。
【0034】
第2のヒドロゲル前駆体は同様に、当業者に公知の任意の適切な方法を用いて多孔性基体に付与され得る。いくつかの実施形態では、インプラントを形成し得る任意の濃度、寸法および形態で、コーティングが基体に付与され得ることが想定される。実施形態では、第2のヒドロゲル前駆体コーティングは、多孔性基体の孔に浸透し得る。コーティングは、非多孔性の層または多孔性の層を形成し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1のヒドロゲル前駆体は、溶液中の多孔性基体に付与され得る。いくつかの実施形態では、第2のヒドロゲル前駆体は、溶液中の多孔性基体に付与され得る。第1および第2のヒドロゲル前駆体は、任意の適切な溶媒に可溶化され得る。適切な溶媒のいくつかの例は、制限されないで、水、塩水、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、C〜Cアルカノール、プロピレングリコール、アセトン、アルキルエステル(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチルなど)、アルキルケトン(メチルエチルケトンなど)、ジアルキルアミド(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラヒドロフランなど)、環状アルキルアミド(カプロラクタムなど)、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸、プロピレンカーボネート、N,N−ジエチル−m−トルアミドのような芳香族アミド、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オンなどを含む。溶媒は多孔性基体から除去され得、粒子または脱水形態で多孔性基体中に位置決めされた第1および/または第2のヒドロゲル前駆体を残す。溶媒は、溶媒を乾燥または追い出すために適切な任意の方法を用いて除去され得る。
【0036】
多孔性基体に加え、本明細書中に記載されるインプラントは、損傷した組織および組織内成長を支持するために有用なメッシュを含む。このメッシュは、多孔性基体のように、繊維状材料から作製され得、これら繊維は、編まれることまたは織られることに適したフィラメントまたはスレッドであり得るか、または不織材料を調製するために頻繁に用いられるようなステープルファイバーであり得る。これらの繊維は、任意の生体適合性材料から作製され得る。これら繊維は、天然材料または合成材料から形成され得る。繊維が形成される材料は、生体吸収性であっても良く、生体非吸収性であってもよい。勿論、天然材料、合成材料、生体吸収性材料および生体非吸収性材料の任意の組み合わせが繊維を形成するために用いられる得ることが理解されるべきである。繊維が作製され得る材料の非制限的な例は、制限されないで、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ホスファジン)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリ酢酸、ポリカプロラクトン、ポリプロピレン、脂肪族ポリエステル、グリセロール、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリ(サッカライド)、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリオキサエステル、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、バイオポリマー、ポリマー薬物およびそれらのコポリマー、ブロックコポリマー、ホモポリマー、それらのブレンドおよび組み合わせを含む。
【0037】
メッシュは、繊維状構造物を形成するために適切な任意の方法を用いて形成され得、これには、制限されずに、編む技法、織る技法、不織技法などが含まれる。メッシュを作製するために適切な技法は、当業者の範囲内である。実施形態では、メッシュは、米国特許第7,021,086号および同第6,433,964号に記載されるような編まれたテキスタイルのような三次元構造を有し、これら特許の開示は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0038】
組織支持および止血を提供することに加え、インプラントはさらに、生物作用薬剤の送達のために用いられ得る。それ故、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの生物作用薬剤が、多孔性基体、第1のヒドロゲル前駆体、第2のヒドロゲル前駆体、メッシュを含むインプラントの任意の部分と組み合わせられ得るか、そして/またはインプラントに別個に付与され得る。これらの薬剤は、前駆体と自由に混合され得るか、または任意の種々の化学的結合によって前駆体につながれ得る。これらの実施形態では、本発明のインプラントはまた、生物作用薬剤の送達のためのビヒクルとして役立ち得る。
【0039】
本明細書で用いられるとき、用語「生物作用薬剤」はその最も広い意味で用いられ、そして臨床使用を有する任意の物質または物質の混合物を含む。結果として、生物作用薬剤は、それ自体、薬理学的活性を有してもよいし、有さなくてもよく、例えば、色素、または芳香剤である。あるいは生物作用薬剤は、治療または予防効果を提供する任意の薬剤、組織成長、細胞成長、細胞分化に影響または関与する化合物、抗接着化合物、免疫応答のような生物学的作用を誘起し得る可能性があるか、または1つ以上の生物学的プロセスで任意のその他の役割を演じ得る化合物であり得る。この生物作用薬剤は、物質の任意の適切な形態、例えば、フィルム、粉末、液体、ゲル等の組み合わせなどで本発明のインプラントに付与され得る。
【0040】
本開示に従って利用され得る生物作用薬剤の非制限的なクラスの例は以下を含む:抗接着剤、抗微生物剤、鎮痛剤、解熱剤、麻酔薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、心臓血管薬物、診断薬剤、交感神経作用剤、コリン様作用剤、抗ムスカリン剤、鎮痙薬、ホルモン、成長因子、増殖因子、筋肉弛緩剤、アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、抗新生物剤、免疫原性薬剤、免疫抑制剤、胃腸管薬物、利尿剤、ステロイド、脂質、リポ多糖、血小板活性化薬物、凝固因子および酵素を含む。生物作用薬剤の組み合わせが用いられ得ることがまた想定される。
【0041】
抗接着剤が、癒着がインプラントと標的組織に対向する周辺組織との間に形成されることを防ぐために用いられ得る。さらに、抗接着剤は、癒着が、インプラントとパッケージング材料との間で形成されることを防ぐために用いられ得る。これら薬剤のいくつかの例は、制限されないで以下を含む。ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、およびそれらの組み合わせ。
【0042】
本明細書中に記載されるインプラントにおいて生物作用薬剤として含まれ得る適切な抗微生物薬剤は、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとして知られるトリクロサン;クロルヘキシジンアセテート、クロルヘキシジングルコネート、クロルヘキシジンヒドロクロライド、およびクロルヘキシジンサルフェートを含むクロルヘキシジンおよびその塩;酢酸銀、安息香酸銀、炭酸銀、クエン酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、銀タンパク質、および銀スルファジアジンを含む銀およびその塩;ポリミキシン;テトラサイクリン;トブラマイシンおよびゲンタマイシンのようなアミノグリコシド;リファンプシン;バシトラシン;ネオマイシン;クロラムフェニコール;ミコナゾール;オキサリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン、エノキサシンおよびシプロフロキサシンのようなキノロン;オキサシリンおよびピプラシルのようなペニシリン;ノンオキシノール9;フシジン酸;セファロスポリン;およびそれらの組み合わせを含む。さらに、ラクトフェリンおよびラクトフェリシンBのような抗微生物タンパク質およひペプチドが本開示のインプラントにおける生物作用薬剤として含まれ得る。
【0043】
本開示に従ってインプラントの任意の部分に生物作用薬剤として含まれ得るその他の生物作用薬剤は以下を含む;局所麻酔薬;非ステロイド系不妊薬剤;副交感神経作用薬剤;精神治療薬;トランキライザー;充血除去剤;鎮静催眠剤;ステロイド;スルホンアミド;交感神経作用剤;ワクチン;ビタミン;抗マラリア剤;抗偏頭痛薬剤;L−dopaのような抗パーキンソン病薬剤;抗痙攣剤;抗コリン作用薬(例えばオキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張薬;血管拡張薬およびニトログリセリンのような心臓血管薬剤;アルカロイド;鎮痛剤;コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、およびモルヒネのような麻酔剤;サリシレート、アスピリン、アセタミノフェン、およびd−プロポキシフェンのような鎮痛剤;ナルトレキソンおよびナロキキソンのようなオピオイドレセプター;抗癌剤;抗痙攣薬;抗催吐薬;抗ヒスタミン剤;ホルモン薬剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン薬剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなどのような抗炎症薬剤;プロスタグランジンおよび細胞傷害性薬物;化学療法剤;エストロゲン;抗生物質;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝固剤;抗痙攣薬;抗鬱薬;抗ヒスタミン薬;および免疫学的薬剤。
【0044】
本明細書中に記載されるインプラントに含まれ得る適切な生物作用薬剤のその他の例は以下を含む;ウイルスおよび細胞;ペプチド;ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにそれらのアナログ、ムテイン、および活性フラグメント;例えば、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン);血液凝固因子;造血因子;インターロイキン(IL−2、IL−3、IL−4、IL−6);インターフェロン(β−IFN、α−IFNおよびγ−IFN);エリスロポイエチン;ヌクレアーゼ;腫瘍壊死因子;コロニー刺激因子(例えばGCSF、GM−CSF、MCSF);インシュリン;抗腫瘍薬剤および腫瘍抑制剤;血液タンパク質;フィブリン;トロンビン;フィブリノーゲン;合成トロンビン;合成フィブリン;合成フィブリノーゲン;ゴナドトロピン(例えばFSH、LH、CGなど);ホルモンおよびホルモンアナログ(例えば成長ホルモン);ワクチン(例えば腫瘍抗原、細菌抗原およびウイルス抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;成長因子(例えば神経成長因子およびインシュリン様成長因子);骨形態形成タンパク質;TGF−β;タンパク質インヒビター;タンパク質アンタゴニストおよびタンパク質アゴニスト;アンチセンス分子、DNA、RNAおよびRNAiのような核酸;オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチド;およびリボザイム。
【0045】
ここで、図1Aおよび1Bを参照して、多孔性基体120およびメッシュ150を含むインプラント110が示される。多孔性基体120は、第1のヒドロゲル前駆体および第2のヒドロゲル前駆体を含み、そしてメッシュ150の周囲に位置決めされる。メッシュ150は、多孔性基体120に包埋される第1の部分152、および基体120がなく、そして移植されたとき周囲組織と相互作用し得る第2の部分154を含む。使用の間、これら第1および第2のヒドロゲル前駆体は、移植に際し相互作用し、この多孔性基体を組織に係留するために有用な材料を形成する。この材料はまた、移植の部位に止血を提供する。
【0046】
図2A〜2Cは、メッシュ250が凍結乾燥により多孔性基体220中に組み込まれる順序を示す。図2Aおよび2Cでは、メッシュ250は、コンテナ215内に位置決めされる鋳型222中に位置決めされる。メッシュ250は鋳型222より大きくてもよく、その結果、メッシュ250の第1の部分252は、鋳型222の周囲を超えて延びる。鋳型222はまた、メッシュ250の第2の部分254を格納し、そしてメッシュ250の第2の部分254が多孔性基体220と相互作用することを防ぐ。液体形態にある多孔性基体220は、鋳型222とコンテナ215の外壁217との間で、メッシュ250より深い深さに位置決めされ、そして凍結乾燥されてその中に取り込まれたメッシュの部分とともに多孔性の発泡体を形成する(図2Bを参照)。コンテナ215、外壁217、および鋳型222のサイズ、形状および寸法は変動してもよく、それによって、移植に適した任意の形状の多孔性基体を生成する。
【0047】
実施形態では、第1のヒドロゲル前駆体および第2のヒドロゲル前駆体は、凍結乾燥前に多孔性基体を形成するために用いられる液体材料と組み合わせられ得る。実施形態では、この第1および第2のヒドロゲル前駆体は、多孔性基体の形成またはメッシュの取り込みの後、多孔性基体に添加され得る。
【0048】
図3A〜3Fは、メッシュをインプラント中に取り込んだ後に、第1のヒドロゲル前駆体が多孔性基体の孔内に付与され、そして第2のヒドロゲル前駆体が多孔性基体の第2の部分に付与される順序が示される。図3Aでは、多孔性基体320は、その中に形成された複数の孔325を有する発泡体である。メッシュ350の第1の部分352は多孔性基体320中に包埋され、そしてメッシュ350の第2の部分354には多孔性基体320はない。溶媒中に溶解された第1のヒドロゲル前駆体を含む第1の溶液335がコンテナ315中に貯蔵されている。図3Bでは、多孔性基体320が、第1の溶液335に浸漬されている。除去に際し、インプラントは乾燥され、溶媒を第1の溶液335から除去し、そして図3Cに示されるように、基体320の孔325内に第1のヒドロゲル前駆体330を含む粒子を堆積する。
【0049】
図3Dおよび3Eでは、第1のヒドロゲル前駆体330の粒子を含む多孔性基体320が逆さにされ、そして第2の溶液336を含むコンテナ321中に浸漬される。第2の溶液336は、溶媒に溶解された第2のヒドロゲル前駆体を含む。除去に際し、インプラントは乾燥され、第2の溶液336から溶媒を除去し、そして図3Fに示されるように、基体320の孔325内に第2のヒドロゲル前駆体340を含む粒子を堆積する。示される実施形態では、第1および第2のヒドロゲル前駆体は、メッシュ350に直接には付与されない。しかし、実施形態では、この第1および/または第2のヒドロゲル前駆体はまた、メッシュの部分に付与され得る。
【0050】
図4Aを参照して、インプラント410は、多孔性基体420、メッシュ450およびフィルム460を含む。多孔性基体420は第1のヒドロゲル前駆体を含み、そしてフィルム460は第2のヒドロゲル前駆体を含む。いくつかの実施形態では、メッシュ450は、凍結乾燥プロセスの間に多孔性基体420中に取り込まれ得る(図4Bを参照のこと)。その他の実施形態では、メッシュ450は、多孔性基体420の形成後でかつフィルム460の付与の前にインプラント410中に取り込まれ得、それによって、基体420とフィルム460との間に位置決めされる(図4Cを参照のこと)。第2のヒドロゲル前駆体の溶融物が、メッシュが取り込まれた後に多孔性基体の頂部に位置決めされ得ることが想定される。冷却に際し、第2のヒドロゲル前駆体の溶融物は、固化して基体および/またはメッシュの少なくとも一部分上にフィルムを形成する。
【0051】
図5Aおよび5Bのインプラント510は、メッシュ550の周囲の周りで延び、そしてまたメッシュ550の中央部分を横切る基体520を含む。第1のヒドロゲル前駆体がまた、多孔性基体520内に含まれる。フィルム560は第2のヒドロゲル前駆体を含み、そして多孔性基体520の少なくとも一部分の頂部上に位置決めされる。さらに、インプラント510は障壁層570を含む。示されるように、この障壁層はメッシュから離れて間隔を置かれ、それによって、移植後、組織がメッシュの周りで成長するスペースを生成する。しかし、実施形態では、メッシュの一部分がまた、この障壁層と接触され得る。
【0052】
障壁層570は、移植に適する任意の適切な抗接着性材料から作製され得る。いくつの例は、制限されずに、ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、およびそれらの組み合わせのような親水性ポリマーを含む。
【0053】
図6〜10に描写されるように、本明細書中に記載されるインプラントの種々のデザインが示される。例えば、図6では、インプラント610は形状が八角形であり、そして多孔性基体620がメッシュ650の周囲を取り囲む。このインプラントは任意の形状、サイズおよび/または寸法に形成され得ることが想定される。実施形態では、多孔性基体は、図7に示されるようにメッシュの周囲の一部分に沿ってのみ延びてもよく、ここで、メッシュ750は、多孔性基体720を含まず、そして位置に巻かれることはなく、または取り付けられることはない遊離のエッジ775を含む。
【0054】
なお別の実施形態では、図8および9に示されるように、多孔性基体820、920はそれぞれ、メッシュ850、950にそれぞれ沿って断続的に分散されている。より詳細には、インプラント810は、メッシュ850の一部分に沿って断続的に位置決めされる多孔性基体820の複数の細片を含む。図9では、インプラント910は、メッシュ950の一部分に沿って断続的に位置決めされた多孔性基体920の複数の島を含む。勿論、図6〜9に示されるインプラントの各々はまた、第1のヒドロゲル前駆体および第2のヒドロゲル前駆体を、障壁層、生物作用薬剤などのようなその他の必要に応じた要素とともに、粒子、発泡体および/またはフィルム形式で含む。
【0055】
なおその他の実施形態では、本明細書中に記載されるインプラントは、少なくとも1つのスリットを含み得る。図10に示されるように、インプラント1010は、ほぼメッシュ1050の中心からインプラント1010の外側周囲まで延びるスリット1080を有するメッシュ1050を含む。多孔性基体1020は、インプラント1010の周囲の周りに延びる。さらに、障壁層1070がスリット1080の周囲に沿って位置決めされ、組織のインプラント1010への接着を防ぐ。
【0056】
図1〜10に示されるように、発泡体であるよりはむしろ、多孔性基体が繊維状構造であり得ることが理解されるべきである。それ故、実施形態では、多孔性基体は、繊維状構造物、すなわち、織られた、または不織構造物であり得る。第1および第2のヒドロゲル前駆体は、発泡体多孔性基体に関して上記に記載したのと実質的に同じ技法を用いて繊維状多孔性基体に付与され得る。従って、上記で記載された発泡体多孔性基体でのように、多孔性基体が繊維状である場合、この第1および/または第2のヒドロゲル前駆体は、例えば、溶液から堆積された粒子、フィルム形成性溶液を乾燥することにより形成された非多孔性フィルムとして、または繊維状多孔性基体の少なくとも一部分に付与される発泡体として付与され得る。
【0057】
種々の実施形態が本明細書中に開示される実施形態になされ得ることが理解される。例えば、2つより多い前駆体が多孔性基体に付与されてインプラントを形成してもよい。別の例として、第1および第2のヒドロゲル前駆体は各々、フィルムとして多孔性基体に付与されてもよい。それ故、当業者は、請求項の範囲および趣旨内でその他の改変物を想定し得る。
【符号の説明】
【0058】
110 インプラント
120 多孔性基体
150 メッシュ
152 第1の部分
154 第2の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントであって:
多孔性基体;
該多孔性基体に付与された第1のヒドロゲル前駆体および第2のヒドロゲル前駆体;および
該多孔性基体内に包埋された第1の部分、および組織接触のために剥き出た第2の部分を有するメッシュ、を含むインプラント。
【請求項2】
前記多孔性基体が発泡体である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記メッシュが編まれた編物である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記多孔性基体が、生体吸収性材料から作製される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記多孔性基体が、コラーゲン、キトサン、酸化セルロースおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料から作製される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記メッシュが、非生体吸収性材料から作製される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記メッシュが、ポリプロピレンから作製される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記第1のヒドロゲル前駆体が、粒子、発泡体、フィルムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記第2のヒドロゲル前駆体が、粒子、発泡体、フィルムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
接着障壁をさらに備える、請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
生物作用薬剤をさらに含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
インプラントであって:
多孔性基体;
該多孔性基体に付与された第1のヒドロゲル前駆体;
第2のヒドロゲル前駆体を含むフィルムであって、該多孔性基体の少なくとも一部分に付与されるフィルム;および
該多孔性基体と接触する第1の部分、および組織接触のために剥き出た第2の部分を有するメッシュ、を含むインプラント。
【請求項13】
前記多孔性基体が発泡体である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
前記メッシュが織られた織物である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項15】
前記メッシュが不織布である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項16】
前記多孔性基体が、生体吸収性材料から作製される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項17】
前記多孔性基体が、コラーゲン、キトサン、酸化セルロースおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料から作製される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項18】
前記メッシュが、非生体吸収性材料から作製される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項19】
前記メッシュが、ポリプロピレンから作製される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項20】
前記第1のヒドロゲル前駆体が、粒子、発泡体、フィルムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項21】
請求項12に記載のインプラントであって、その中に規定されたスリットをさらに備える、インプラント。
【請求項22】
接着障壁層をさらに備える、請求項12に記載のインプラント。
【請求項23】
生物作用薬剤をさらに含む、請求項12に記載のインプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−72797(P2011−72797A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224399(P2010−224399)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】