説明

メッシュ構造体、及びメッシュ構造体を用いた電界放出電子源装置

【課題】多数の貫通孔が形成された電極の機械的強度を確保しつつ、ターゲットに到達する電子ビーム量の低下を抑え、ターゲット上での電子ビームの広がりを抑える。
【解決手段】電界放出型電子源アレイ10から放出された電子ビームはメッシュ構造体8に形成された複数の貫通孔を通過してターゲット3に到達する。メッシュ構造体8の複数の貫通孔のそれぞれは、電界放出型電子源アレイ側の開口と、開口から連続した電子ビーム通過行路とを有する。メッシュ構造体8はN型又はP型にドープされたシリコンを含む材料からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を用いた電界放出電子源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体微細加工技術の進展により、半導体などの基板にミクロンオーダーの微細な冷陰極構造を多数集積化する真空マイクロエレクトロニクス技術が注目を集めている。これらの技術によって得られる微小冷陰極構造を備えた電界放出型電子源アレイは、平面型の電子放出特性や高い電流密度が期待できること、熱陰極とは異なりヒーター等の熱源を必要としないこと等から、低消費電力型の次世代フラットディスプレイ用電子源、センサ、平面型撮像装置用電子源として期待が集まっている。
【0003】
このような電界放出型電子源アレイを用いた真空装置としては特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に示される電界放出型電子源表示装置や、特許文献5等に示される電界放出型電子源撮像装置や、特許文献6に示される発光素子等が知られている。
【0004】
一般的にこのような電界放出型電子源アレイを用いた電界放出型電子源装置は、図26に示す様に、前面パネル101と、背面パネル105と、側面外周器104とを備え、これらはフリットガラスやインジウム等の封着材料109により固着固定され、その内部が真空に保持されている。
【0005】
前面パネル101の内面には、例えば外部からの入射光を透過する陽極電極102が形成され、その表面にターゲット103が形成されている。一般にターゲット103は、電界放出型電子源表示装置として使用される場合には3色に発光する蛍光体が規則正しく配列された蛍光体層であり、電界放出型電子源撮像装置として使用される場合には入射光を信号電荷に変換する光電変換膜である。
【0006】
背面パネル105の内面には、複数の冷陰極素子(エミッタ)107と、各冷陰極素子107の周辺に形成された絶縁層及び冷陰極素子107から電子を取り出す為の電圧を印加するゲート電極等からなる周辺素子108とが集積一体化された電界放出型電子源アレイが形成された半導体基板106が設置されている。冷陰極素子107から放出された電子ビームをターゲット103にランディングさせることにより、電界放出型電子源表示装置では蛍光体を発光させて画像を映し出し、電界放出型電子源撮像装置では光電変換膜上に入射光として結像した画像を読み取ることができる。
【0007】
電界放出型電子源としては、一般的に、半導体基板上に、先端が先鋭な冷陰極素子を形成し、その周りに絶縁層及びこの絶縁層上にゲート電極を形成して、冷陰極素子とゲート電極との間に電圧を印加して冷陰極素子の先端から電子放出を行なうスピント(Spindt)型を代表例として挙げることができる。その他には、カソード電極とゲート電極との間に絶縁層を形成し、絶縁層に電圧を印加してトンネル効果により電子放出を行なうMIM(Metal Insulator Metal)型、カソード電極とエミッタ電極との間に微小ギャップを設け、これら電極間に電圧を印加して微小ギャップから電子放出を行なうSCE(Surface Conduction Electron Source)型、あるいは電子源にDLC(Diamond Like Carbon)やCNT(Carbon Nanotube)等の炭素系材料を用いた電界放出型電子源を例として挙げることができる。
【0008】
このような冷陰極を含む電界放出型電子源は、個々の冷陰極素子からの電子放出量が微量であることから、電界放出型電子源表示装置として使用する場合や、電界放出型電子源撮像装置として使用する場合には、複数の電界放出型電子源を一単位とするセル(電子源セル)を形成し、所定の動作を行うのに必要な電流量を確保している。
【0009】
このセルは平面上に、例えばマトリクス状に配置される。詳細には、縦方向に延びた複数のエミッタラインが横方向に等ピッチで配置され、横方向に延びた複数のゲートラインが縦方向に等ピッチで配置され、これら複数のエミッタラインと複数のゲートラインとが交差する各位置にセルが配置される。電界放出型電子源装置の駆動時には、エミッタライン及びゲートラインを順次選択していくことにより、選択されたエミッタラインとゲートラインとが交差する位置のセルから電子ビームが順次放出される。本明細書では、このようにして電子ビームを放出するセルを、以下「指定セル」と呼ぶ。以上により、電界放出型電子源表示装置においては画像を映し出すことができ、電界放出型電子源撮像装置においては結像された画像を読み出すことができる。
【0010】
電界放出型電子源では、冷陰極素子とゲート電極との間に形成される強電界により電子を電界放出するので、個々の冷陰極素子から電子は所定の広がり(この広がり角度を「発散角」といい、例えばスピント型電界放出型電子源の場合30度程度である)をもって放出される。
【0011】
このような電界放出型電子源を用いる真空装置においては、図26で示した様に、電界放出型電子源アレイを真空容器の背面パネル105上に設置し、電界放出型電子源アレイからの電子ビームをランディングさせて所定の動作を行なうターゲット103を前面パネル101上に形成するのが一般的である。ここで、電界放出型電子源アレイからターゲット103までの距離は、それらが設けられた背面パネル105と前面パネル101との距離によって一意的に決定される。
【0012】
即ち、このような従来の電界放出型電子源装置においては、背面パネル105上に設置された電界放出型電子源アレイと前面パネル101上に形成されたターゲット103との距離は、前面パネル101及び背面パネル105と側面外周器104との接合部分の精度によって、理想的な設計距離に対して大きく変化する。
【0013】
例えば、前面パネル101及び背面パネル105と側面外周器104との接合がフリットガラスを用いて行われる場合には、フリットガラスの供給量のバラツキや、400℃程度で焼成し溶着させる過程で発生するシュリンクなどが、背面パネル105上に設置された電界放出型電子源アレイと前面パネル101上に形成されたターゲット103との距離のバラツキを生じさせる。
【0014】
また、前面パネル101及び背面パネル105と側面外周器104との接合がインジウムのような柔らかい金属を用いた低温封着にて行なわれる場合には、封着の際にインジウムを前面パネル101と側面外周器104との間、及び側面外周器104と背面パネル105との間で潰すために、インジウムの供給量やつぶし量のバラツキが、背面パネル105上に設置された電界放出型電子源アレイと前面パネル101上に形成されたターゲット103との距離のバラツキを生じさせる。
【0015】
電界放出型電子源アレイとターゲット103との間の距離のバラツキは数百ミクロン〜数ミリの程度になる。
【0016】
このように、従来の電界放出型電子源装置においては、背面パネル105上に設置された電界放出型電子源アレイと前面パネル101上に形成されたターゲット103との距離を高精度に管理することは困難である。そして、個々の冷陰極素子からは30度程度の発散角で電子が放出される。従って、電界放出型電子源アレイとターゲット103との距離のバラツキは、電子ビームがターゲット103上に形成する電子ビームスポットの拡がり具合(即ち、スポット径)のバラツキを生じさせる。これは均一な画像が求められる電界放出型電子源表示装置及び電界放出型電子源撮像装置にとって非常に不都合な問題である。
【0017】
また、高精細な電界放出型電子源表示装置や高精細な電界放出型電子源撮像装置を実現するためには、電界放出型電子源アレイ上のセルのサイズを十分小さくする必要がある。この場合には、電界放出型電子源アレイとターゲット103との距離も十分に小さくする必要があり、更にその誤差を例えば数十ミクロン程度以下に管理する必要がある。ところが、従来の電界放出型電子源装置では、電界放出型電子源アレイとターゲット103との距離に数百ミクロン〜数ミリ程度のバラツキを有する可能性があるから、高精細な電界放出型電子源表示装置や高精細な電界放出型電子源撮像装置を実現することは困難である。
【0018】
また、従来の電界放出型電子源装置においては、真空容器内を真空にした場合、前面パネル101が外気圧によって加圧されて湾曲する。前面パネル101の内面にはターゲット103が形成されているので、前面パネル101の湾曲により、電界放出型電子源アレイからの距離がターゲット103の中央部と周辺部とで異なることになり、この結果、ターゲット103上に形成される電子ビームスポット径がターゲット103の中央部と周辺部とで異なることになる。
【0019】
この結果、電界放出型電子源表示装置として使用する場合には画面中央と画面周辺とで表示される画質の差が発生し、電界放出型電子源撮像装置として使用する場合には画面中央と画面周辺とで撮像される画質に差が発生する。
【0020】
図26とは異なり、電界放出型電子源アレイとターゲットとの間にシールドグリッド電極を設けた電界放出型電子源アレイを用いた真空装置が特許文献1及び特許文献5に示されている。
【0021】
図27に特許文献5に示された、電界放出型電子源撮像装置として使用される電界放出型電子源装置の断面図を示す。
【0022】
真空容器118は、透光性の前面パネル115と、背面パネル117と、メッシュ状のシールドグリッド電極120を保持するスペーサー部を兼用した側面外周器116とを備え、これらはフリットガラスからなる封着材料133及びインジウムからなる封着材料119により固着固定され、その内部が真空に保持されている。
【0023】
前面パネル115の内面には、外部からの入射光111を透過する陽極電極113と、その表面に形成された光電変換膜112とからなる光電変換ターゲット114が形成されている。
【0024】
背面パネル117の内面には、冷陰極素子124と、冷陰極素子124に電位を供給する陰極導体125と、冷陰極素子124の周囲を囲むように陰極導体125上に形成された絶縁層126と、絶縁層126上に冷陰極素子124の周囲を囲むように配置されたゲート電極128とからなる電界放出型電子源アレイ129が形成されている。
【0025】
光電変換ターゲット114と電界放出型電子源アレイ129との間に、シールドグリッド電極120が配置されている。シールドグリッド電極120には、ゲート電極128に印加される電圧よりも高い電圧が印加されている。
【0026】
シールドグリッド電極120は複数の貫通孔120aを備える。複数の貫通孔120aと複数の冷陰極素子124とは一対一に対応しており、冷陰極素子124の電子ビームを放出する先端の真上に貫通孔120aの中心が位置している。
【0027】
冷陰極素子124の先端からは、約30度の発散角で電子ビームが放出される。この電子ビームのうち、ほぼ真上に向かって放出された電子ビームのみがシールドグリッド電極120のこの冷陰極素子124に対応する貫通孔120aを通過して光電変換ターゲット114に到達し、これ以外の斜めに向かって放出された電子ビームはシールドグリッド電極120に吸収されてしまう。
【0028】
特許文献5には、このようにして光電変換ターゲット114に到達する電子ビームの拡がりを小さくすることができるとされている。
【0029】
しかしながら、冷陰極素子124から放出された電子ビームのうち、ほぼ真上に向かって放出された電子ビームのみを光電変換ターゲット114に到達させるためには、冷陰極素子124の大きさ、隣り合う冷陰極素子124間の距離、電界放出型電子源アレイ129からシールドグリッド電極120までの距離、シールドグリッド電極120の貫通孔120aの開口径、シールドグリッド電極120の厚みの相対的関係を厳密に設定する必要がある。
【0030】
例えば、冷陰極素子124を小さくし、隣り合う冷陰極素子124間の距離を小さくすると、シールドグリッド電極120の隣り合う貫通孔120a間の距離も小さくするする必要が生じる。ところが、この場合、冷陰極素子124の先端から約30°の発散角で放出された電子ビームは、この冷陰極素子124の真上に配置された対応する貫通孔120aのみならず、この貫通孔120aの近傍の貫通孔120aを通過して光電変換ターゲット114に到達する可能性がある。
【0031】
また、電界放出型電子源アレイ129からシールドグリッド電極120までの距離を大きくした場合にも、冷陰極素子124の先端から約30°の発散角で放出された電子ビームは、この冷陰極素子124の真上に配置された対応する貫通孔120aのみならず、この貫通孔120aの近傍の貫通孔120aを通過して光電変換ターゲット114に到達する可能性がある。
【0032】
また、シールドグリッド電極120の貫通孔120aの数に対して、冷陰極素子124の数が多い場合には、電界放出型電子源アレイ129に形成された複数の冷陰極素子124のうちの一部の冷陰極素子124の先端の真上には貫通孔120aの中心が位置しないことになる。従って、このような冷陰極素子124から放出された電子ビームのうち、ほぼ真上に向かって放出された電子ビームは貫通孔120aを通過できずにシールドグリッド電極120に吸収されてしまい、斜めに向かって放出された電子ビームがこの冷陰極素子124の真上以外に位置する貫通孔120aを通過して光電変換ターゲット114に到達する可能性がある。
【0033】
このように、各構成要素の寸法の相対的関係を厳密に設定しないと、光電変換ターゲット114に到達する電子ビームの拡がりを小さくすることは不可能である。その結果、撮像画素サイズが拡大するという問題が生じる。
【0034】
また、図27に示した電界放出型電子源装置を、VGA(水平方向640ドット×垂直方向480ドット)の撮像を行なう平面型撮像装置に適用しようとした場合、次のような問題が発生すると考えられる。
【0035】
VGAの平面撮像装置では、水平方向に640ドット、垂直方向に480ドットの画素が配置されており、トータルの画素数は31万ドットである。仮に、1つの画素(ドット)に100個の冷陰極素子124を配置すると、冷陰極素子124の総数は3100万個となり、その数は膨大となる。この平面撮像装置の外形対角サイズを1インチ(2.54センチ)とすれば、電界放出型電子源アレイの水平方向サイズは1.275cm、電界放出型電子源アレイの垂直方向サイズは0.956cmとなり、1つのドットのサイズは0.02mm(=20μm)となる。この1つのドット内に100個の冷陰極素子124を格子点状に配置するのであれば、一方向に10個配置する必要がある。冷陰極素子124に一対一に対応して貫通孔120aをシールドグリッド電極120に形成するためには、貫通孔120aの内径は2μm以下にする必要がある。
【0036】
この場合、シールドグリッド電極120の厚みを1μm以下とすれば、内径2μm以下の貫通孔120aを形成することは可能と思われる。しかし、シールドグリッド電極120の厚みが1μm以下であれば、シールドグリッド電極120の強度不足や撓みなどが問題となる可能性が高い。一方、厚みを1μmより厚くすると、特許文献5にシールドグリッド電極120の材料として記載された、ニッケル、銅、アルミニウムなどの金属板に内径2μm以下の貫通孔120aを形成することは不可能であると考えられる。結局、冷陰極素子124と一対一に対応した貫通孔120aをシールドグリッド電極120に形成することは不可能に近いと考えられる。
【0037】
仮に、内径2μm以下の貫通孔120aを形成することができ、且つ、強度不足や撓みの問題が解決できたとしても、次に、電界放出型電子源アレイ129とシールドグリッド電極120とを高精度に位置合わせしなければならいという問題がある。
【0038】
即ち、冷陰極素子124の先端の真上に貫通孔120aの中心をズレなく配置するためには、電界放出型電子源アレイ129とシールドグリッド電極120との相対的位置関係を0.1μm以下の精度で管理しなければならない。しかし、現在の一般的なアセンブリ精度の限界は1μm程度であり、この点からも、図27に示した電界放出型電子源装置を用いて平面型撮像装置を実現することは困難であると考えられる。
【0039】
また、図27に示されているように、1つの画素に1つの冷陰極素子124を対応させる場合には、1画素の動作を行うのに必要な電流量を1つの冷陰極素子124から供給する必要がある。しかし、電界放出型冷陰極素子の電流放出特性がナノアンペア程度であることを考えると、1つの画素に1つのみの冷陰極素子124を配置した電界放出型電子源装置を実現することは困難であると考えられる。
【0040】
逆に、1つの画素に複数の冷陰極素子124を対応させて、且つ、1つの画素にシールドグリッド電極120の1つの貫通孔120aを対応させる場合、貫通孔120aの中心の真下以外の位置に、この貫通孔120aに対応する冷陰極素子124の先端が位置することになる。従って、前述のように、この冷陰極素子124から放出された電子ビームのうち、ほぼ真上に向かって放出された電子ビームは貫通孔120aを通過できずにシールドグリッド電極120に吸収されてしまい、斜めに向かって放出された電子ビームが隣の画素を構成する貫通孔120aを通過して光電変換ターゲット114に到達する可能性がある。従って、この場合も電界放出型電子源装置を実現することは困難であると考えられる。即ち、図27の電界放出型電子源装置において、冷陰極素子124からの電子ビームをこの真上に配置された貫通孔120aのみを通過させて光電変換ターゲット114に効率的に到達させることは非常に困難である。
【0041】
更に、図27の電界放出型電子源装置には別の以下の問題も存在する。
【0042】
図27に示される様に、電界放出型電子源アレイ129が形成された絶縁性の背面パネル117と、この電界放出型電子源アレイ129と対向する光電変換ターゲット114が形成された前面パネル115とは、これらの外周部間に側面外周器116を介して接合されて、真空容器118の内部は高真空に保持されている。
【0043】
この際、背面パネル117と側面外周器116との間に封着材料133としての低融点フリットガラスを付与して、400℃程度の温度で焼成することで、背面パネル117と側面外周器116とを接着し、真空容器内を気密に保持する。また、側面外周器116の段部121上にシールドグリッド電極120を位置決めして固定する場合にも、低融点フリットガラスが用いられる。従って、電界放出型電子源アレイ129とシールドグリッド電極120との距離は、背面パネル117と側面外周器116との間の低融点フリットガラスの厚み、及び側面外周器116の段部121とシールドグリッド電極120との間の低融点フリットガラスの厚みに依存することになる。
【0044】
従って、電界放出型電子源アレイ129とシールドグリッド電極120との間の平行度や距離にバラツキが生じてしまう。
【0045】
この結果、電界放出型電子源装置ごとに光電変換ターゲット114上での電子ビームの拡がり具合(フォーカス特性)が異なったり、1つの電界放出型電子源装置内であっても光電変換ターゲット114上の位置によって電子ビームの拡がり具合が異なったりする。従って、電界放出型電子源撮像装置として使用した場合には、撮像した画像が装置ごとにばらついたり、撮像画像内において部分的にばらついたりする。
【0046】
更に、図27の電界放出型電子源装置には別の以下の問題も存在する。
【0047】
電界放出型電子源アレイ129と光電変換ターゲット114との間に配置されるシールドグリッド電極120は、薄膜状であり、例えば薄膜状の銅メッシュを金属からなる保持枠に張力を付与して固定したり、多数の貫通孔が設けられたガラスやセラミック等の絶縁性材料の表面に、Ni,Cr,Cu、Ag,Coなどの金属や合金の膜を真空蒸着法、スパッタリング法、又は化学鍍金法等によって形成したりして作成される。
【0048】
しかしながら、薄膜状の銅メッシュを金属からなる保持枠に張力を付与して固定したシールドグリッド電極120では、張力分布にバラツキが生じやすい。例えば銅メッシュの中央部と周辺部とで張力が異なると、貫通孔120aの形状や隣り合う貫通孔120a間の距離が銅メッシュの中央部と周辺部とで異なってしまう。このような場合には、電界放出型電子源アレイ129の全ての冷陰極素子124の先端の真上に貫通孔120aの中心を配置することは困難になってしまう。即ち、冷陰極素子124の先端と貫通孔120aの中心との相対的位置関係が部分的にずれ、これによって、光電変換ターゲット114に到達する電子ビーム量が、光電変換ターゲット114の中央部と周辺部で異なったり、局所的にばらついたりする。よって、電界放出型電子源表示装置として使用した場合には輝度分布にバラツキが生じ、電界放出型電子源撮像装置として使用した場合には、撮像画像が不均一になるという問題が発生する。
【0049】
また、多数の貫通孔が設けられたガラスの表面に金属や合金の膜を形成したシールドグリッド電極120では、ガラス自体のガス吸着が多く、例え表面に上述のような金属膜を形成したとしても、電界放出型電子源装置の駆動中における電子ビームの衝突などにより容易にガスが放出されるといった問題がある。
【0050】
また、ガラスを薄くし、且つこれに多数の微細な貫通孔120aを形成すると、ガラスの機械的強度は劇的に劣化し、割れやすくなるという問題もある。特に、光電変換ターゲット114に多くの電子ビームを到達させようとすると、隣り合う貫通孔120a間の距離を小さくする必要があり、機械的強度は更に劣化する。
【0051】
また、多数の貫通孔が設けられたセラミックの表面に金属や合金の膜を形成したシールドグリッド電極120では、セラミックが焼成工程を必要とすること、隣り合う貫通孔120a間の距離を小さくすることが困難であること、ガラスの場合と同様に機械的強度が不足すること、等の問題がある。
【0052】
以上、電界放出型電子源装置に備えられたシールドグリッド電極について述べたが、このようなシールドグリッド電極に代表される複数の貫通孔を有するメッシュ構造体は、上述のような電界放出型電子源装置以外の各種用途にも使用される。例えば、メッシュ構造体の厚みを貫通孔の径よりも十分大きくすることで、一方の面から他方の面に向かって原子、分子、光等を通過させ、それらの進行方向に指向性を付与するコリメータとしての用途や、メッシュ構造体の貫通孔の径を調節することで、粒子を粒径で選別する粒子フィルタとしての用途がある。
【0053】
このような用途に用いられるメッシュ構造体は、上述と同様に、金属、ガラス、又はセラミック等の基材に貫通孔を形成して作成される場合が多い。しかしながら、このような基材を用いると次のような問題が発生する。
【0054】
即ち、メッシュ構造体の材料として金属を用いた場合、金属構造体に孔を深掘する必要があるが、現在の金型などによる孔加工方法を用いることは困難であるし、貫通孔径を小さくすることができない。
【0055】
また、メッシュ構造体の材料としてガラスを用いた場合、孔加工が困難であり、上述と同様、真空中でのガス放出の懸念や機械的強度不足の問題等がある。
そしてメッシュ構造体の材料としてセラミックを用いた場合、以下の問題がある。即ち、貫通孔同士の間隔を小さくすることは機械的強度を確保する観点から困難である。また、多数の貫通孔を形成できないために、コリメータとして用いる場合には、出射側の原子、分子、又は光の量が入射側の量に対して激減してしまう。また、一般にセラミックは焼成によって寸法バラツキが生じやすいので、貫通孔寸法を高精度にコントロールすることが困難であり、このため粒子の大きさに対して高精度に貫通孔径を決定しなければならないフィルタ用途にも不向きである。
【特許文献1】特開平9−270229号公報
【特許文献2】特開平9−69347号公報
【特許文献3】特開平6−111735号公報
【特許文献4】特開2000−251808号公報
【特許文献5】特開2000−48743号公報
【特許文献6】特開2002−313263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0056】
本発明は上記の従来の問題を解決することを目的とする。
【0057】
即ち、本発明は、機械的強度を有し、真空中でもガス放出が少なく、寸法精度良く貫通孔を形成できるメッシュ構造体を提供することを目的とする。
【0058】
また、本発明は、電界放出型電子源アレイとターゲットとの間に配置される多数の貫通孔が形成された電極の機械的強度を確保しつつ、ターゲットに到達する電子ビーム量の低下を抑え、そしてターゲット上での電子ビームの広がりを抑えた、高性能の電界放出型電子源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0059】
本発明のメッシュ構造体は、一次元的に形成された複数の貫通孔を有する。前記貫通孔を、光、電子、原子、イオン、又は分子が一方の面から他方の面に通過可能である。前記メッシュ構造体は、シリコンを含む材料からなり、前記シリコンを含む材料が結晶構造を有するシリコンを含むことを特徴とする。
【0060】
また、本発明の電界放出型電子源装置は、電界放出型電子源アレイと、前記電界放出型電子源アレイから放出された電子ビームにより所定の動作を行なうターゲットと、前記電界放出型電子源アレイと前記ターゲットとの間に配置され、前記電界放出型電子源アレイから放出された前記電子ビームが通過する複数の貫通孔が形成されたメッシュ構造体とを有する。
【0061】
前記複数の貫通孔のそれぞれは、前記電界放出型電子源アレイ側の開口と、前記開口から連続した電子ビーム通過行路とを有する。
【0062】
前記メッシュ構造体は、N型又はP型にドープされたシリコンを含む材料からなる。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、機械的強度を有し、真空中でもガス放出が少なく、寸法精度良く貫通孔を形成できるメッシュ構造体を提供することができる。
【0064】
また、本発明によれば、電界放出型電子源アレイとターゲットとの間に配置される多数の貫通孔が形成された電極の機械的強度を確保しつつ、ターゲットに到達する電子ビーム量の低下を抑え、そしてターゲット上での電子ビームの広がりを抑えた、高性能の電界放出型電子源装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
本発明の第1の好ましい形態に係るメッシュ構造体は、一次元的に形成された複数の貫通孔を有する。前記貫通孔を、光、電子、原子、イオン、又は分子が一方の面から他方の面に通過可能である。前記メッシュ構造体は、シリコンを含む材料からなり、前記シリコンを含む材料が結晶構造を有するシリコンを含む。
【0066】
かかる第1の好ましい形態では、メッシュ構造体がシリコンを含む材料からなり、シリコンを含む材料が結晶構造を有するシリコンを含むので、半導体で用いられる微細加工技術を用いて貫通孔の加工が可能となる。従って、メッシュ構造体の貫通孔形状、貫通孔径を高精度にコントロールすることができる。従って、例えば、貫通孔を用いた粒子のフィルタ機能を容易に実現できる。
【0067】
また、半導体の微細加工技術によりメッシュ構造体に、径よりも深い貫通孔を容易に加工できるので、粒子の選別を行なうフィルタ機能を備えたメッシュ構造体や、原子、分子、光などの進行方向に指向性を付与するコリメータ機能を備えたメッシュ構造体を安価に製作することができる。
【0068】
更に、半導体で用いられる高純度のシリコン板を用いることができるので、真空中でガス放出の懸念がない、原子、分子、電子などに指向性を付与するコリメータ機能を備えたメッシュ構造体を容易に得ることができる。
【0069】
本発明の第2の好ましい形態に係るメッシュ構造体では、上記第1の好ましい形態において、前記複数の貫通孔を離隔する隔壁の厚みは、前記貫通孔の開口径よりも小さい。
【0070】
かかる第2の好ましい形態によれば、メッシュ構造体の表面に対する貫通孔の開口面積の比(開口率)を大きくすることができるので、原子、分子、電子、光などに指向性を付与するコリメータとして使用する場合には、入射側の原子、分子、電子、光などの量に対する出射側の原子、分子、電子、光などの量の比(通過率)が大きなコリメータを提供することができる。
【0071】
本発明の第3の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置は、電界放出型電子源アレイと、前記電界放出型電子源アレイから放出された電子ビームにより所定の動作を行なうターゲットと、前記電界放出型電子源アレイと前記ターゲットとの間に配置され、前記電界放出型電子源アレイから放出された前記電子ビームが通過する複数の貫通孔が形成されたメッシュ構造体とを有する。前記複数の貫通孔のそれぞれは、前記電界放出型電子源アレイ側の開口と、前記開口から連続した電子ビーム通過行路とを有する。前記メッシュ構造体は、N型又はP型にドープされたシリコンを含む材料からなる。
【0072】
かかる第3の好ましい形態によれば、メッシュ構造体をシリコン基板を用いて、半導体技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術により作成することが可能となる。これにより、メッシュ構造体を作成する際に要求される、高アスペクト比の深掘や、高精度な微細加工を行なうことができる。
【0073】
例えば、VGA(水平方向640ドット×垂直方向480ドット)、外形対角サイズが1インチの電界放出型電子源撮像装置を考えると、1つのセルの大きさは20μm角程度となる。1つのセルが多数(例えば100個)の冷陰極素子(エミッタ)で構成される電界放出型電子源装置の場合、メッシュ構造体の貫通孔の開口径は例えば16μm程度となるから、メッシュ構造体の作成にはサブミクロンオーダーの精度が要求される。また、メッシュ構造体と電界放出型電子源アレイとの組立においても高精度が要求される。従って、半導体技術の極微細加工技術を用いることで、メッシュ構造体の高精度成形、及びメッシュ構造体と電界放出型電子源アレイとの高精度アセンブリが可能となり、その結果、品質の優れた電界放出型電子源装置を提供することができる。
【0074】
また、電界放出型電子源アレイは、シリコン基板上に半導体技術を用いてその一部又は全部を作成することが精度などの信頼性を確保する上で好ましい。また、その半導体技術も現在では一般化され、これを行う装置も数多く市場に出回っており、コスト面においても有利である。
【0075】
従って、メッシュ構造体がシリコン基板を用いて作成されていることにより、メッシュ構造体と電界放出型電子源アレイが形成された基板との熱膨張係数をほぼ一致させることができ、熱膨張において有利である。即ち、電界放出型電子源装置の熱膨張による破壊を防止することができる。また、電界放出型電子源装置の組立時におけるガス出しのためのベーキング等の焼成温度を高くすることができるので、得られる装置の信頼性を向上できる。
【0076】
本発明の第4の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第3の好ましい形態において、前記メッシュ構造体は、N型又はP型にドープされたシリコン層と、SiO2からなる絶縁層とを含む。
【0077】
一般的に半導体技術で使用されるシリコン基板は、純粋なシリコンからなる基板か、若しくは絶縁層であるSiO2層を間に挟み込んだSOI(Silicon On Insulator)基板が使用されることが多い。世界的に使用頻度の多いSOI基板は比較的安価に入手することが可能であるので、第4の好ましい形態によれば、安価な電界放出型電子源装置を提供することができる。
【0078】
本発明の第5の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第3の好ましい形態において、前記メッシュ構造体の、前記電界放出型電子源アレイ側の表面及び前記ターゲット側の表面のうちの少なくとも一方に、導電性の薄膜が形成されている。
【0079】
導電性の薄膜の材料としては、アルミニウム、金、銅、タンタル、モリブデン、チタン等が好適である。このような導電性材料の薄膜を、半導体製造工程で使用されるようなスパッタ、真空蒸着、CVDといった手法で成膜することは、使用する装置が半導体技術の発展により安価に入手できる点や、成膜技術が既に成熟し、確立されている点から好ましい。
【0080】
本発明の第6の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第3の好ましい形態において、前記メッシュ構造体は、前記メッシュ構造体の大部分をなす基層と、前記基層の表面に成膜され、前記基層よりも低抵抗の薄膜層とを有する。ここで、基層がメッシュ構造体の「大部分」をなすとは、メッシュ構造体のうち複数の貫通孔が形成された領域(後述するトリミング部9)において基層の厚さ比率が90%以上であることを意味する。
【0081】
かかる第6の好ましい形態によれば、N型又はP型の高抵抗のシリコンからなるメッシュ構造体の表面部分の抵抗を下げることができる。これにより、電子ビームの局部的な衝突等による電位変動が発生しにくい電界放出型電子源装置を提供することができる。
【0082】
本発明の第7の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第3の好ましい形態において、前記メッシュ構造体は、少なくとも2つの電極層と、前記少なくとも2つの電極層の間に設けられた少なくとも1つの中間層とを有する。
【0083】
かかる第7の好ましい形態によれば、少なくとも2つの電極層の電位を、異ならせたり、同じにしたり等、それぞれ独立して自由に設定することができる。これにより、電極層の電位や構造の自由度が向上するので、メッシュ構造体における電子ビームの吸収除去作用を調整したり、電子ビームに集束作用を与えたり、その集束作用を調整したりすることが容易に可能になる。
【0084】
このような機能を備えたメッシュ構造体を用いることにより、例えば、ターゲット上での電子ビームスポットを小さくして高解像度の電界放出型電子源表示装置や高解像度の電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。また、電界放出型電子源アレイからの電子ビームを広がりを抑えながらターゲットへ導くことにより、製造バラツキの少ない電界放出型電子源装置を提供することができる。
【0085】
本発明の第8の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第7の好ましい形態において、前記少なくとも1つの中間層は絶縁層であり、前記少なくとも2つの電極層は、前記電子ビーム通過行路に少なくとも2つの電位空間を形成する。
【0086】
かかる第8の好ましい形態によれば、少なくとも2つの電極層に互いに異なる電位を与えることにより、メッシュ構造体に入射した電子ビームに所望の集束作用を与えたり、メッシュ構造体が電子ビームを吸収除去するトリミング作用を自由にコントロールしたりすることが可能となり、電界放出型電子源アレイからの電子ビームを効果的にターゲットへ導くことが可能となる。
【0087】
本発明の第9の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第7の好ましい形態において、前記少なくとも2つの電極層のうちの1つは、前記少なくとも1つの中間層に対して前記電界放出型電子源アレイ側に配置されて、第1電圧が印加される第1電極層であり、他の1つは、前記少なくとも1つの中間層に対して前記ターゲット側に配置されて、第2電圧が印加される第2電極層である。前記少なくとも1つの中間層は、前記第1及び第2電極層よりも高い抵抗値を有する高抵抗層である。
【0088】
かかる第9の好ましい形態によれば、第7の好ましい形態の機能や効果を備えた上に、メッシュ構造体の製作が容易になる。
【0089】
少なくとも2つの電極層を備えたメッシュ構造体としては、例えばシリコン基板に絶縁層としてのSiO2層を形成したSOI基板を用いることが考えられる。しかしながら、SOI基板はシリコン層と絶縁層という材質の異なる層を含むために以下のような問題を有している。例えば、SOI基板に貫通孔をエッチングで形成しようとすると、シリコン層ではエッチングが容易であるのに対して、絶縁層ではエッチングが困難である。また、シリコン層と絶縁層との境界近傍に局所的な応力集中が生じてエッチング中に基板が割れてしまう。
【0090】
これに対して、第9の好ましい形態に係るメッシュ構造体は、例えば高抵抗のシリコン基板に貫通孔をエッチングで形成し、その後、両面にN型又はP型の材料をドープして両表面層を低抵抗にすることによって簡単に作成することができる。あるいは、高抵抗のシリコン基板の両面にN型又はP型の材料をドープして低抵抗の表面層を両面に形成し、中間層が高抵抗のままであるシリコン基板に貫通孔をエッチングで作成しても良い。
【0091】
あるいは、高抵抗の基板に貫通孔をエッチングで形成した後、電解エッチング処理などにより、メタルやその他の低抵抗の膜を両表面に形成しても良い。
【0092】
このように、第9の好ましい形態に係るメッシュ構造体は作成が容易である。しかも、電界放出型電子源アレイからの電子ビームを、電子ビーム通過行路のうち低抵抗である電極層部分の側壁に衝突させ吸収除去することができるので、少なくとも2つの電極層の電位をそれぞれ独立して自由に設定することで、上記の第7の好ましい形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】
本発明の第10の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第7の好ましい形態において、前記少なくとも2つの電極層のうち、前記少なくとも1つの中間層に対して前記電界放出型電子源アレイ側に配置された第1電極層に印加される電圧をV1、前記少なくとも1つの中間層に対して前記ターゲット側に配置された第2電極層に印加される電圧をV2としたとき、V1>V2を満足する。
【0094】
かかる第10の好ましい形態によれば、電界放出型電子源アレイから放出された電子ビームは、電界放出型電子源アレイ側の第1電極に印加された相対的に高い電圧V1により加速されてメッシュ構造体の貫通孔に入射した後、電子ビーム通過行路を通過中に、第2電極に印加された相対的に低い電圧V2により減速される。
【0095】
例えば、電界放出型電子源アレイの指定セルから放出された電子ビームのうち、指定セルの真上以外の位置にある貫通孔に入射した電子ビームについては、その進行方向を表す速度ベクトルの向きが電子ビーム通過行路の延設方向と異なるので、そのほとんどが電子ビーム通過行路の側壁に衝突し吸収され除去される。しかも、電子ビーム通過行路を第1電極側から第2電極側に向かって進むにしたがって電子ビームが減速されるので、電子ビームは電子ビーム通過行路の側壁に一層衝突しやすくなる。
【0096】
また、電界放出型電子源アレイの指定セルから放出された電子ビームのうち、指定セルの真上の位置にある貫通孔に入射した電子ビームについても、その進行方向を表す速度ベクトルが電子ビーム通過行路の延設方向と異なる、発散方向の速度ベクトルを有する電子ビームは電子ビーム通過行路の側壁に衝突し吸収され除去される。しかも、電子ビーム通過行路を第1電極側から第2電極側に向かって進むにしたがって電子ビームが減速されるので、このような発散方向の速度ベクトルを有する電子ビームは電子ビーム通過行路の側壁に一層衝突しやすくなる。
【0097】
このようなメッシュ構造体のトリミング作用により、指定セルからほぼ鉛直方向に放出された電子ビームのみがメッシュ構造体を通過し、メッシュ構造体からほぼ鉛直方向に進行してターゲットに到達する。
【0098】
従って、電界放出型電子源アレイからメッシュ構造体までの距離、及びメッシュ構造体からターゲットまでの距離が、設計値に対して多少異なっていていも、ターゲット上での電子ビームの広がり(スポット径)はほとんど変化しない。
【0099】
つまり、背面パネルと側面外周器との接合、及び側面外周器と前面パネルとの接合に、フリットガラスやインジウムを用いる場合、前述したように、背面パネルと前面パネルとの距離を高精度に管理することが困難である。本発明の第10の好ましい形態によれば、組み立てバラツキにより背面パネルと前面パネルとの距離が設計値と異なる場合であっても、ターゲット上での電子ビームのスポット径の変化を抑えることができる。
【0100】
また、背面パネルと側面外周器と前面パネルとからなる真空容器の内部を真空にすることにより、前面パネルが大気圧によって押されて湾曲状に歪む。この結果、背面パネルと前面パネルとの距離が、中央部と周辺部とで異なる。本発明の第10の好ましい形態によれば、このような場合であっても、ターゲット上での電子ビームのスポット径が中央部と周辺部とで異なるのを抑えることができる。
【0101】
よって、本発明の第10の好ましい形態によれば、均一な画質を表示できる電界放出型電子源表示装置、及び均一な画質を撮像できる電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0102】
更に、本発明の第10の好ましい形態によれば、メッシュ構造体の厚みを、第3の好ましい形態に比べて薄くすることができる。
【0103】
即ち、メッシュ構造体の貫通孔に入射した電子ビームのうち、その進行方向を表す速度ベクトルが電子ビーム通過行路の延設方向と異なる電子ビームは、電子ビーム通過行路を第1電極側から第2電極側に向かって進むにしたがって減速されるので、減速されない場合に比べて、電子ビーム通過行路の側壁により衝突しやすくなる。換言すれば、このような電子ビームが電子ビーム通過行路に入射後、電子ビーム通過行路の側壁に衝突するまでの距離は、減速されない場合に比べて短くなる。従って、メッシュ構造体の厚みを薄くしても所望のトリミング作用を得ることができる。
【0104】
メッシュ構造体の厚みを薄くすると、指定セルの真上の位置にある貫通孔に入射した電子ビームのうち、メッシュ構造体で吸収除去される割合を少なくすることができる。これにより、ターゲットに到達する電子ビーム量を多くすることができる。この結果、ターゲットに蛍光体を備えた電界放出型電子源表示装置においては輝度を増加させることができ、ターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置においてはターゲットに到達する電子ビーム量を十分に確保できるために残像を少なくすることができる。
【0105】
電界放出型電子源撮像装置の場合には、上述に加えて以下の効果が得られる。
【0106】
電界放出型電子源撮像装置では、動作中においてターゲットに設けられた光電変換膜の電位は、電子ビームのターゲットへの到達と正孔の読み出しとによって、電界放出型電子源アレイの冷陰極素子の電位とほぼ等しくなるまで低下する。ところが、第10の好ましい形態によれば、メッシュ構造体のターゲット側の第2電極層の電位V2とターゲットの電位との差を小さく設定することができるので、メッシュ構造体のターゲット側の電子ビーム出射部とターゲットとの電位差が小さくなる。従って、メッシュ構造体を出射後の電子ビームは、極端な減速や加速をされることがなく、また電子ビーム出射部付近に強い電界レンズが形成されないので、メッシュ構造体を出射後の電子ビームの軌道はほとんど変化しない。よって、メッシュ構造体の電子ビーム通過行路で吸収除去されずにこれを通過した電子ビームは、メッシュ構造体を出射後も鉛直方向に進んでターゲットに到達する。
【0107】
従って、組み立てバラツキにより背面パネルと前面パネルとの距離が設計値と異なる場合であっても、ターゲット上での電子ビームのスポット径の変化を抑えることができ、均一な画質を撮像できる電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0108】
本発明の第11の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第7の好ましい形態において、前記少なくとも2つの電極層のうち、前記少なくとも1つの中間層に対して前記電界放出型電子源アレイ側に配置された電極層を第1電極層、前記少なくとも1つの中間層に対して前記ターゲット側に配置された電極層を第2電極層とし、前記電子ビーム通過行路の長さのうち、前記第1電極層が占める長さをT1、前記第2電極層が占める長さをT2としたとき、T1<<T2を満足する。
【0109】
かかる第11の好ましい形態によれば、第1電極層に印加されれる電圧V1と第2電極層に印加される電圧V2とにより形成される電圧勾配を電界放出型電子源アレイに近づけ、且つ、電子ビーム通過行路において第2電極層が占める領域を大きくすることができる。電圧勾配が電界放出型電子源アレイに近づくことにより、電子ビーム通過行路内における減速領域が電界放出型電子源アレイ側に近づく。また、第2電極層が占める領域が大きくなることにより、電子ビームを吸収除去する範囲が拡大する。従って、メッシュ構造体の貫通孔に入射した電子ビームのうち、その進行方向を表す速度ベクトルが電子ビーム通過行路の延設方向と異なる電子ビームは、比較的早い段階で減速されて電子ビーム通過行路の側壁に衝突し吸収除去される。従って、電子ビームを効率よくトリミングすることができる。
【0110】
よって、メッシュ構造体を出射した電子ビームの進行方向を、鉛直方向により沿わせることができる。従って、組み立てバラツキにより背面パネルと前面パネルとの距離が設計値と異なる場合や、前面パネルが大気圧によって押されて湾曲状に歪んだ場合であっても、ターゲット上での電子ビームのスポット径の変化を一層抑えることができる。
【0111】
よって、本発明の第11の好ましい形態によれば、より均一な画質を表示できる電界放出型電子源表示装置、及びより均一な画質を撮像できる電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0112】
本発明の第12の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置は、上記第3の好ましい形態において、更に、前記電界放出型電子源アレイが形成された基板を有する。前記メッシュ構造体は、前記電界放出型電子源アレイと前記複数の貫通孔の前記開口とを離間させるスペーサー部を一体に備える。前記メッシュ構造体は前記スペーサー部を介して前記基板上に設置されている。
【0113】
かかる第12の好ましい形態によれば、電界放出型電子源アレイとメッシュ構造体の電界放出型電子源アレイ側の開口との距離のバラツキを少なくし、高精度に設定することができる。例えば、図27に示した従来の電界放出型電子源装置では、電界放出型電子源アレイ129とシールドグリッド電極120との距離は、電界放出型電子源アレイ129が形成された背面パネル117と側面外周器116との接着精度(即ち、低融点フリットガラス133の厚みバラツキ)、側面外周器116の段部121とシールドグリッド電極120との接着精度(即ち、低融点フリットガラスの厚みバラツキ)、及び、側面外周器116の背面パネル117と接着される下面から段部121までの寸法の製作精度(即ち、寸法バラツキ)の3つのバラツキによって変化する。
【0114】
これに対して、本発明の第12の好ましい形態では、メッシュ構造体がスペーサー部を一体に備えているので、電界放出型電子源アレイとメッシュ構造体の電界放出型電子源アレイ側の開口との距離は、電界放出型電子源アレイとスペーサー部との間の接着精度、及びスペーサー部の厚みの製作精度(即ち、寸法バラツキ)の2つのバラツキによって変化する。即ち、精度が最も劣る低融点フリットガラスによる接着部分がない。従って、電界放出型電子源アレイとメッシュ構造体の電界放出型電子源アレイ側の開口との距離精度が向上する。
【0115】
また、本発明の第12の好ましい形態によれば、メッシュ構造体の機械的強度が向上する。
【0116】
即ち、例えばVGA(水平方向640ドット×垂直方向480ドット)、外形対角サイズが1インチの電界放出型電子源撮像装置を考えると、上述したとおり、一つの画素のサイズは0.02mm程度となる。メッシュ構造体の厚みは、その機能を考慮すると1画素のサイズの1倍〜10倍程度が適当と思われるので、0.02mm〜0.2mm程度になる。メッシュ構造体の寸法は上述したとおり12mm×10mmよりも若干大きい程度であり、このメッシュ構造体に多数の貫通孔が形成されていることを考慮すれば、メッシュ構造体の機械的強度は非常に小さい。従って、電界放出型電子源装置の組み立て工程におけるメッシュ構造体の単体での取り扱いは、その機械的強度不足故に、非常に困難である。
【0117】
ところが、本発明の第12の好ましい形態では、メッシュ構造体は、その周囲に枠状のスペーサー部を一体に備えている。従って、スペーサー部がメッシュ構造体の機械的強度を向上させるので、電界放出型電子源装置の組み立て工程におけるメッシュ構造体の単体での取り扱いの困難性という問題が解消される。
【0118】
本発明の第13の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第12の好ましい形態において、前記スペーサー部と前記基板とは導電性材料を用いて接合されており、前記導電性材料を介して前記基板から前記メッシュ構造体の少なくとも一部に給電されている。
【0119】
かかる第13の好ましい形態によれば、メッシュ構造体への電圧供給を、電界放出型電子源アレイが形成された基板から行うことが可能になり、電圧供給のためのワイヤーボンディングが不要になる。従って、ワイヤーボンディングを行うための費用を省くことができ、またワイヤーボンディングした場合のワイヤー倒れ等の不良の発生を回避することができる。
【0120】
本発明の第14の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第7の好ましい形態において、前記少なくとも2つの電極層のうち、前記少なくとも1つの中間層に対して前記電界放出型電子源アレイ側に配置された第1電極層に印加される電圧をV1、前記少なくとも1つの中間層に対して前記ターゲット側に配置された第2電極層に印加される電圧をV2としたとき、前記電界放出型電子源装置を駆動中に、前記電圧V1及び前記電圧V2のうちの一方又は両方を変化させることにより、前記メッシュ構造体の前記複数の貫通孔を通過して前記ターゲットへ向かう電子ビームの量を変化させる。
【0121】
かかる第14の好ましい形態によれば、特にターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置において効果的な撮像動作を行なうことができる。
【0122】
即ち、ターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置では、ターゲットに入射し結像された光の像により生成された電子正孔対の量は入射した光の強さにより決定され、入射した光が強いほど、多くの電子正孔対が生成される。生成された電子正孔対のうち、正孔はターゲットの電界放出型電子源アレイ側の面である電子走査面まで輸送され(セレンを用いたアバランシュ増倍型の光電変換膜の場合は電子増倍されながら輸送され)蓄積される。
【0123】
ターゲットが電界放出型電子源アレイから放出された電子ビームによって走査されると、蓄積された正孔は電子ビームに含まれる電子と結合し、同時に電気信号が読み出される。ここで、もしも十分な電子がターゲットに到達しないと、ターゲットの電子走査面に蓄積された正孔の一部が読み出されずに次の走査まで残ってしまうことになる。
【0124】
そのため、1フレーム目の読み出し走査で読み出されずに残存した正孔が、2フレーム目の読み出し走査時に到達した電子で読み出されてしまうことになり、撮像画像において、入射光の強い部分が残像として残ってしまうことになる。
【0125】
この問題を解決するためには、1フレーム目の読み出し走査の終了後に、十分な量の電子ビームをターゲットに到達させ、読み出されずに残存した正孔を除去し、次のフレームの読み出し走査に備える必要がある。以下、この動作を「電荷リセット」という。
【0126】
しかし、電界放出型電子源アレイとターゲットとの間にメッシュ構造体のような電子の一部を除去してしまう作用を有する電極を配置すると、電荷リセット期間においても十分な量の電子ビームをターゲットに到達させることができない可能性がある。
【0127】
本発明の第14の好ましい形態では、電界放出型電子源装置を駆動中(具体的には、電荷リセット期間中)に、第1電極層に印加される電圧V1及び第2電極層に印加される電圧V2のうちの一方又は両方を変化させることにより、メッシュ構造体の複数の貫通孔を通過してターゲットへ向かう電子ビームの量を変化させる。これにより、電荷リセット期間中にターゲットに到達する電子ビーム量を増加させ、十分な電荷リセット電流を確保することができる。これにより、残像の少ない電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0128】
本発明の第15の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第3の好ましい形態において、前記電子ビーム通過行路の延設方向に垂直な方向に沿った断面形状は、円形、楕円形、いずれの内角も90度より大きな多角形、または隣り合う辺が円弧で接続された多角形である。
【0129】
かかる第15の好ましい形態によれば、メッシュ構造体を容易に製作することができる。
【0130】
例えば、開口の端縁形状が、いずれの内角も90度である長方形(又は正方形)である場合には、開口の端縁の四隅部分に応力が集中して、貫通孔の形成時にこの四隅部分でメッシュ構造体が割れるという問題が発生しやすい。
【0131】
第15の好ましい形態のように、開口の端縁形状が、円形、楕円形、いずれの内角も90度より大きな5角形以上の多角形、または隣り合う辺が円弧で接続された多角形であると、応力集中が緩和されるので、貫通孔の形成時にメッシュ構造体が割れにくくなり、製作が容易になる。
【0132】
メッシュ構造体の製作が容易であることは、メッシュ構造体の製作歩留まりが向上することを意味し、安価なメッシュ構造体を提供することができる。よって、安価な電界放出型電子源装置を提供することができる。
【0133】
また、メッシュ構造体の機械的強度が向上することにより、単体での取り扱い性が容易になるので、電界放出型電子源装置の組立が容易となる。この点からも、安価な電界放出型電子源装置を提供することができる。
【0134】
本発明の第16の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第3の好ましい形態において、前記電界放出型電子源アレイは、それぞれが電子を放出する複数の電子源を備えたセルを複数有する。前記複数の開口と前記複数のセルとが垂直方向に一対一に対応するように前記電界放出型電子源アレイと前記メッシュ構造体とが配置されている。前記セルから放出された電子ビームは、対応する前記開口に入り、前記電子ビーム通過行路を通過して、前記ターゲットに入射する。
【0135】
かかる第16の好ましい形態によれば、複数の電子源からなるセルの中心軸と、メッシュ構造体の貫通孔の開口の中心軸とを一致させることができるので、電界放出型電子源アレイから放出された電子ビームのうち、メッシュ構造体の貫通孔を最も多く通過するのは鉛直方向に進行する電子ビームとなる。従って、ターゲットに到達する電子ビーム量が最大になる。これにより、ターゲットに蛍光体を備えた電界放出型電子源表示装置においては輝度を増加させることができ、ターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置においてはターゲットに到達する電子ビーム量を十分に確保できるために残像を少なくすることができる。
【0136】
本発明の第17の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置では、上記第3の好ましい形態において、電界放出型電子源アレイと前記メッシュ構造体との間に、前記電界放出型電子源アレイから放出された前記電子ビームを予備集束する予備集束電極を更に有する。
【0137】
かかる第17の好ましい形態によれば、電界放出型電子源アレイから放出された電子ビームは予備集束電極により予備集束されることで、その広がりが狭められてメッシュ構造体の貫通孔に入射する。
【0138】
従って、個々の電子ビームの進行方向は、鉛直方向と平行な方向に近づき、貫通孔の電子ビーム通過行路の延設方向と平行な方向に近づく。従って、電子ビームは、メッシュ構造体の貫通孔を通過しやすくなる。
【0139】
従って、第17の好ましい形態では、予備集束しない場合に比べて、ターゲット上での電子ビームスポットが小さくなるので、更に高解像度の電界放出型電子源表示装置や更に高解像度の電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
本発明の好ましい形態に係る電界放出型電子源装置の駆動方法は、電界放出型電子源アレイと、前記電界放出型電子源アレイから放出された電子ビームにより所定の動作を行なうターゲットと、前記電界放出型電子源アレイと前記ターゲットとの間に配置され、前記電界放出型電子源アレイから放出された前記電子ビームが通過する複数の貫通孔が形成されたメッシュ構造体とを有する電界放出型電子源装置の駆動方法である。前記複数の貫通孔のそれぞれは、前記電界放出型電子源アレイ側の開口と、前記開口から連続した電子ビーム通過行路とを有する。前記メッシュ構造体は、N型又はP型にドープされたシリコンを含む材料からなる。前記メッシュ構造体は、少なくとも2つの電極層と、前記少なくとも2つの電極層の間に設けられた少なくとも1つの中間層とを有する。そして、前記少なくとも2つの電極層のうち、前記少なくとも1つの中間層に対して前記電界放出型電子源アレイ側に配置された第1電極層に印加される電圧をV1、前記少なくとも1つの中間層に対して前記ターゲット側に配置された第2電極層に印加される電圧をV2としたとき、前記電界放出型電子源装置を駆動中に、前記電圧V1及び前記電圧V2のうちの一方又は両方を変化させることにより、前記メッシュ構造体の前記複数の貫通孔を通過して前記ターゲットへ向かう電子ビームの量を変化させる。
かかる好ましい形態によれば、特にターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置において効果的な撮像動作を行なうことができる。
即ち、上記の好ましい形態に係る駆動方法では、電界放出型電子源装置を駆動中(具体的には、電荷リセット期間中)に、第1電極層に印加される電圧V1及び第2電極層に印加される電圧V2のうちの一方又は両方を変化させることにより、メッシュ構造体の複数の貫通孔を通過してターゲットへ向かう電子ビームの量を変化させる。これにより、電荷リセット期間中にターゲットに到達する電子ビーム量を増加させ、十分な電荷リセット電流を確保することができる。これにより、残像の少ない電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0140】
以下、本発明を、実施の形態を示しながら詳細に説明する。
【0141】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の断面図である。
【0142】
図1に示すように、本実施の形態1に係る電界放出型電子源装置は、光透過性のガラスからなる前面パネル1と、背面パネル5と、側面外周器4とで形成された真空容器を備える。前面パネル1と側面外周器4、及び、背面パネル5と側面外周器4は、例えば高温焼成用のフリットガラスや、低温封着用のインジウムなどの真空封着材7により固着され封着されて、真空容器内は真空に保たれている。以下の説明の便宜のために、前面パネル1及び背面パネル5の法線方向と平行な軸をZ軸と呼ぶ。
【0143】
背面パネル5の内面上には、電界放出型電子源アレイ10が形成された半導体基板6が設置されている。半導体基板6上には、スペーサー部8aを一体に備えるメッシュ構造体8が設置固定されている。前面パネル1のメッシュ構造体8と対向する内面上には、透光性の陽極電極2とターゲット3とが形成されている。ターゲット3は、電界放出型電子源アレイから放出された電子を受け取り所定の有益な動作を行なう層であり、例えば蛍光体層又は光電変換膜である。
【0144】
前面パネル1、背面パネル5、側面外周器4からなる真空容器内には、余分なガスを吸着除去することにより、内部を高真空に保持する為のゲッターポンプ(図示せず)が設置されている。
【0145】
図2はメッシュ構造体8の電界放出型電子源アレイに対向する側の面から見た概略斜視図である。メッシュ構造体8は、N型又はP型にドープされたシリコン基板を半導体加工技術であるMEMS技術を用いて製作された略平板状の電極であり、中央の薄肉のトリミング部9と、トリミング部9の周囲に連続して形成され、トリミング部9よりも厚い枠状のスペーサー部8aとを備える。トリミング部9には複数の貫通孔が形成されている。
【0146】
スペーサー部8aは、メッシュ構造体8の単体での機械的強度を向上させる機能と、電界放出型電子源アレイとトリミング部9に形成された複数の貫通孔の開口とを離間し、且つ両者間の距離を高精度に維持する機能とを備えている。
【0147】
図3はメッシュ構造体8のトリミング部9の一部拡大斜視図である。トリミング部9には、電界放出型電子源アレイから放出された電子ビームが通過するための、トリミング部9の表裏を貫通する多数の貫通孔90が形成されている。多数の貫通孔90は格子点状に配置されている。
【0148】
図4(A)はトリミング部9のZ軸方向の一部拡大断面図である。各貫通孔90は、トリミング部9の電界放出型電子源アレイ側の面に形成された開口91と、開口91からトリミング部9の厚さ方向に連続した電子ビーム通過行路92とを備えている。本明細書において、開口91とは、貫通孔90のうち、トリミング部9の電界放出型電子源アレイ側の面上に含まれる部分を意味し、Z軸方向成分は含まれない。また、電子ビーム通過行路92とは、貫通孔90のうち、トリミング部9の表裏面間の間の部分を意味する。
【0149】
電子ビーム通過行路92の長さは、開口91の径Dよりも十分に大きい。ここで、電子ビーム通過行路92の長さとは、電子ビーム通過行路92に沿った長さを意味する。従って、電子ビーム通過行路92が屈曲している場合にはトリミング部9のZ軸方向の厚さより長くなる。
【0150】
電子ビーム通過行路92の長さが開口91の径Dよりも十分に大きいことにより、電界放出型電子源アレイから放出された電子ビームのうち、電子ビーム通過行路92の延設方向(本実施の形態ではZ軸方向)に対して大きな角度をなす方向に進行する電子ビームを電子ビーム通過行路92の側壁に衝突させて吸収し除去することができる。例えば、開口91の径Dが16μm、電子ビーム通過行路92の長さが100μmのとき、Z軸に対して約9.2度以上の角度をなす方向に進行する電子ビームを電子ビーム通過行路92の側壁に衝突させて吸収し除去することができる。
【0151】
図5は、本実施の形態1に係る電界放出型電子源装置の分解斜視図である。図5を用いて、電界放出型電子源装置の組み立て方法の一例を簡単に説明する。
【0152】
背面パネル5上にフリットガラス7aを付与し、この上に環状の側面外周器4を載置して、約400℃程度の高温で焼成して、背面パネル5と側面外周器4とをフリットガラス7aを介して接合する。
【0153】
メッシュ構造体8のスペーサー部8aと半導体基板6とを例えば陽極接合や共晶接合などの接合方法により接合する。背面パネル5上の側面外周器4で囲まれた部分に、メッシュ構造体8が搭載された半導体基板6を、ダイボンディングして設置固定する。
【0154】
トリミング部9への給電は、半導体基板6から、メッシュ構造体8のスペーサー部8aと半導体基板6との接合部及びスペーサー部8aを介して行われる。メッシュ構造体8へ給電するための半導体基板6上の配線パターンは、背面パネル5上に形成された配線パターンとワイヤーボンディング(図示せず)により接続される。これにより、メッシュ構造体8への給電は、真空容器の外側より行なうことができる。
【0155】
半導体基板6上には、複数のセルをマトリクス状に並べた電界放出型電子源アレイが形成されている。各セルは、複数(例えば100個)の冷陰極素子(エミッタ)を含む。
【0156】
半導体基板6上の電界放出型電子源アレイの複数のセルと、メッシュ構造体8の複数の貫通孔90とは一対一に対応している。各セルの中心を通るZ軸と平行な軸が、このセルと対応するメッシュ構造体8の貫通孔90のほぼ中心を通るように(例えば、本実施の形態では、セルの中心を通るZ軸と平行な軸に対する貫通孔90の中心の位置ずれ量が3μm程度以下となるように)、半導体基板6とメッシュ構造体8とは高精度に位置合わせされる。
【0157】
このようにして組み立てられた背面パネル5、側面外周器4、メッシュ構造体8、及び半導体基板6からなる背面パネル構造体は、真空装置内で約120℃〜350℃程度の温度でガス出しの為の空焼きされる。
【0158】
空焼きが済んだ背面パネル構造体は、真空内にて、前面パネル1と、インジウムを付着させた金属リング7bにより接合一体化されて、内部が真空に封着された真空容器となる。
【0159】
半導体基板6上に形成される電界放出型電子源アレイは、図6に示される様に、先端が先鋭化された冷陰極素子(エミッタ)15と、冷陰極素子15の周辺に形成された絶縁層13と、絶縁層13上に設けられ、冷陰極素子15を取り囲む開口が形成されたゲート電極12等からなる多数のエミッター部が集積されてなる。
【0160】
電界放出型電子源アレイは、例えばVGA(水平方向640ドット×垂直方向480ドット)の撮像を行なう平面型撮像装置であれば、マトリックス状に配置された各画素位置に縦横方向寸法がいずれも20μm程度の1つのセルがそれぞれ配置される。ゲート電極12は、水平方向(又は垂直方向)に延びたストライプ状に複数形成され、エミッタ電極14は、ゲート電極12の長手方向と直交する方向に延びたストライプ状に複数形成される。Z軸と平行な方向から見て、複数のゲート電極12と複数のエミッタ電極14との交点位置にセルが1つずつ配置される。各セルには、エミッタ電極14上の縦横方向寸法がいずれも10μm程度の領域内に複数の冷陰極素子15がほぼ均等に分布するように配置されている。
【0161】
同一セル内の複数の冷陰極素子15には例えば30Vの基準電位から0Vに低下するパルス状のエミッタ電位が印加され、冷陰極素子15を取り囲む絶縁層13上に形成されたゲート電極12には例えば30Vの基準電位から中位の60Vに上昇するパルス状のゲート電位が印加される。冷陰極素子15とゲート電極12との間に形成される電位差により、冷陰極素子15の先端から電子が放出される。
【0162】
ゲート電極12及びエミッタ電極14は、背面パネル5上に、真空容器の内外を繋ぐように形成された配線パターンと接続されている。冷陰極素子15に与えられるエミッタ電位及びゲート電極12に与えられるゲート電位は、真空容器の外側からこの配線パターンを介して供給される。
【0163】
メッシュ構造体8には、ゲート電極12に印加される最大電圧よりも若干高い、中位の150〜500V程度の電圧が印加される。電界放出型電子源アレイから、メッシュ構造体8のトリミング部9に形成された複数の貫通孔の電界放出型電子源アレイ側の面までの距離は100μm程度である。
【0164】
メッシュ構造体8へ印加される電圧が高すぎると、メッシュ構造体8と電界放出型電子源アレイとの間の耐電圧特性上の問題を引き起こす可能性がある。更に、電界放出型電子源撮像装置として使用する場合にはターゲット3との間での耐電圧特性も問題となる可能性がある。逆に、メッシュ構造体8へ印加される電圧が低すぎると、電界放出型電子源アレイから放出された電子ビームを加速させる効果が薄れ、電子ビームの発散角が大きくなってしまい、メッシュ構造体8を通過する電子ビーム量が少なくなり、電子ビームの電流量を十分確保できない可能性がある。このため、発明者らは実験を通じてメッシュ構造体8へ印加される電圧の好適値が上述の範囲であることを確認している。
【0165】
ターゲット3はメッシュ構造体8から150〜数百μm程度離れて配置される。前面パネル1とターゲット3との間には、透明な陽極電極2が形成されている。陽極電極2にはメッシュ構造体8に印加される電圧よりも高い、高位の例えば数100V〜数kV程度の電圧が前面パネル1を貫通する電極43(図5参照)を介して印加される。
【0166】
電界放出型電子源アレイの冷陰極素子15とゲート電極12とにそれぞれ所定の電圧を印加すると、冷陰極素子15から電子ビーム11aが放出される。電子ビーム11aは、電界放出型電子源アレイからZ軸方向に100μm程度離れた、100μm程度の厚みを有するメッシュ構造体8の貫通孔90の開口91に入射し、開口91から連続する電子ビーム通過行路92内を通過する。そして、メッシュ構造体8から出射した電子ビーム11bは、メッシュ構造体から150〜数百μm程度離れたターゲット3に到達する。
【0167】
図7に示すように、電界放出型電子源アレイの1つのセル(指定セル)から放出された電子ビーム11aは所定の発散角を有してメッシュ構造体8に向かって進行し、メッシュ構造体8に形成された複数の貫通孔90に入射する。
【0168】
指定セルから放出された電子ビーム11aのうち、Z軸に対して斜めに進行し、この指定セルを通りZ軸と平行な直線から外れた位置にある貫通孔90に入射した電子ビームは、貫通孔90の電子ビーム通過行路92の側壁に衝突し、吸収され除去される。
【0169】
一方、指定セルから放出された電子ビーム11aのうち、Z軸とほぼ平行に進行し、この指定セルを通りZ軸と平行な直線上に位置する貫通孔(以下、この貫通孔を「指定セルに対応する貫通孔」という)90に入射した電子ビームは、Z軸と平行に延びた電子ビーム通過行路92内を通過し、メッシュ構造体8を出射してターゲット3に到達する。このメッシュ構造体8を出射した電子ビーム11bの発散角は小さく、進行方向がほぼ揃っており、ターゲット3に到達する過程で進行方向と垂直な方向の断面積が拡大することはない。
【0170】
このように、本実施の形態1の電界放出型電子源装置では、メッシュ構造体8が無い場合と比較して、発散角の小さな電子ビーム11bをターゲット3に入射させることができる。そのため、ターゲット3上において電子ビームのスポット径を小さくすることができる。従って、ターゲットに蛍光体を備えた電界放出型電子源表示装置においては高精細な画像を表示することができ、ターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置においては高精細な画像を撮像することができる。
【0171】
また、メッシュ構造体8を出射した電子ビーム11bの発散角が小さいので、例えば組み立て誤差により背面パネル5と前面パネル1との距離がばらついた場合や、大気圧によって背面パネル5及び/又は前面パネル1が湾曲変形した場合であっても、ターゲット3上での電子ビームのスポット径はほとんど変化しない。従って、均一な画質を表示できる電界放出型電子源表示装置、及び均一な画質を撮像できる電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0172】
次に、メッシュ構造体8について詳細に説明する。
【0173】
メッシュ構造体8は、シリコン基板を用いて、半導体技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術により作成できる。即ち、N型又はP型にドープして抵抗を低下させたシリコン基板に対して半導体技術を用いて微細加工を行い、図3に示すような貫通孔90を形成することができる。
【0174】
このようにメッシュ構造体8をシリコン基板を用いて半導体技術であるMEMS技術により作成することにより、以下のような利点がある。
【0175】
第1に半導体技術を用いたミクロン、サブミクロンオーダーの微細加工を行なうことが可能になる。これにより、例えば20μm角程度の1セル内に多数(例えば100個)の冷陰極素子15を備えたVGAの電界放出型電子源装置の場合、メッシュ構造体8の開口91の開口径Dは例えば16μm程度となり、その成形精度はサブミクロンオーダーである必要がある。MEMS技術を用いれば、このような微細加工が可能である。
【0176】
第2に、メッシュ構造体8と電界放出型電子源アレイとの組立においても高精度が求められる。MEMS技術を用いることで、メッシュ構造体8の高精度成形、及びメッシュ構造体8と電界放出型電子源アレイとの高精度アセンブリが可能となり、品質の優れた電界放出型電子源装置を得ることができる。
【0177】
第3に、シリコン基板を用いることにより、同じくシリコン基板を用いて作成される電界放出型電子源アレイが形成される半導体基板6と、熱膨張係数を同じにすることができる。
【0178】
電界放出型電子源アレイは、シリコン基板を用いて、半導体技術によりその一部あるいは全てを作成することが精度などの信頼性を確保する上で好ましく、その半導体技術も現在では一般化され、その際に必要とされる装置も数多く市場に出回っており、コスト面においても有利である。
【0179】
メッシュ構造体8の材料を、電界放出型電子源アレイが形成される基板の材料と同じにすることは、熱膨張の点で有利であり、例えば、電界放出型電子源装置の熱膨張による破壊が起こりにくくなり、また、電界放出型電子源装置の組立時におけるガス出しのためのベーキング等の焼成を高温で行うことができる。
【0180】
メッシュ構造体8にはスペーサー部8aが一体に形成されており、メッシュ構造体8のスペーサー部8aは電界放出型電子源アレイが形成された半導体基板6上に直接設置される。これにより、電界放出型電子源アレイとメッシュ構造体8との間の距離精度を向上させることができる。この結果、電界放出型電子源アレイとメッシュ構造体8のトリミング部9に形成された複数の貫通孔90の開口91との間の距離を高精度に維持するというスペーサー部8aの役割を効果的に発揮させることができる。
【0181】
メッシュ構造体8のスペーサー部8aの厚みHsは、例えば上述の電界放出型電子源アレイの1つのセルの縦横寸法がそれぞれ20μm程度である場合、50〜150μm程度(最適は100μm程度)が好ましい。ここで、スペーサー部8aの厚みHsとは、図7に示すように、メッシュ構造体8のトリミング部9の電界放出型電子源アレイ側の面と電界放出型電子源アレイとの間の距離を意味する。
【0182】
この場合、MEMS加工における寸法マージンとトリミング部9の機械的強度の観点から、縦横方向に隣り合う開口91間の距離(即ち、隣り合う電子ビーム通過行路92間の壁の厚さ)は4μm±2μmの範囲内であることが好ましい。従って、1セルの縦横寸法がそれぞれ20μmの場合には、メッシュ構造体8の貫通孔90の開口91の形状は一辺が16μm程度の四角形となる。トリミング部9の厚み(即ち電子ビーム通過行路92のZ軸方向寸法)Htは、開口91の上記の開口径の約1.5〜10倍程度、更には6〜8倍程度(上記の例では100〜120μm程度)が好ましい。
【0183】
トリミング部9の厚みHtが開口91の開口径の1.5倍未満であると、メッシュ構造体8に対して大きな入射角度で入射した電子ビームを電子ビーム通過行路92の側壁に衝突させて吸収除去することが困難となる。このため、指定セルから放出された電子ビーム11aのうち、Z軸に対して斜めに進行し、この指定セルを通りZ軸と平行な直線から外れた位置にある貫通孔90に入射した電子ビームもメッシュ構造体8の貫通孔90を通過して、ターゲット3に到達してしまう。従って、ターゲット3上での電子ビームのスポット径が拡大する。
【0184】
トリミング部9の厚みHtが開口91の開口径の10倍を超えると、メッシュ構造体8の貫通孔90を通過してターゲット3に到達する電子ビーム量が著しく少なくなり、ターゲット3において所望する動作を行うのに必要な電子ビーム量を確保できない可能性が生じる。
【0185】
スペーサー部8aの厚みHs及びトリミング部9の厚みHtに上記のような最適値がある理由は以下の通りである。
【0186】
スペーサー部8aの厚みHsとは、電界放出型電子源アレイとからトリミング部9に形成された貫通孔90の開口91までの距離を意味する(図7参照)。
【0187】
スペーサー部8aの厚みHsが厚いと、メッシュ構造体8の単体での機械的強度を強くすることができる。
【0188】
しかしながら、電界放出型電子源アレイからトリミング部9までの距離が大きくなり、トリミング部9の電界放出型電子源アレイ側の面上での電子ビームの広がりが大きくなる。これにより、電界放出型電子源アレイの指定セルに対応する貫通孔90に入射する電子ビーム量が少なくなり、その結果、この貫通孔を通過してターゲット3に到達する電子ビーム量が少なくなる。この結果、ターゲットに蛍光体を備えた電界放出型電子源表示装置においては、蛍光体を励起する電子ビーム量が少なくなるので所望の輝度を有する画像を表示することが困難となり、ターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置においては、光電変換膜で生成された正孔を読み出すための電流を十分に確保できなくなるので、残像が多くなってしまう。
【0189】
逆に、スペーサー部8aの厚みHsが薄いと、メッシュ構造体8の指定セルに対応する貫通孔90を通過してターゲット3に到達する電子ビーム量を確保することはできる。
【0190】
しかしながら、メッシュ構造体8の単体での機械的強度は低下する。この結果、例えば電界放出型電子源装置を組み立てる際、メッシュ構造体8が破壊して、歩留まりが低下するという問題が起こる可能性がある。
【0191】
トリミング部9の厚みHtが薄いと、メッシュ構造体8を通過してターゲット3に到達する電子ビーム量が増加する。
【0192】
しかしながら、電界放出型電子源アレイの指定セルから放出された電子ビーム11aのうち、Z軸に対して斜めに進行し、この指定セルに対応する貫通孔の周辺に配置された貫通孔90に入射した電子ビームもこの貫通孔90を通過して、ターゲット3に到達してしまう。即ち、指定セルに対応する貫通孔以外の貫通孔に入射した電子ビーム11aをこの貫通孔の電子ビーム通過行路92の側壁で吸収除去し、指定セルに対応する貫通孔を出射した電子ビーム11bのみをターゲット3に到達させるというメッシュ構造体8のトリミング作用が弱まる。この結果、ターゲット3上での電子ビームのスポット径が拡大してしまう。従って、ターゲットに蛍光体を備えた電界放出型電子源表示装置においては高精細な画像を表示することが困難となり、ターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置においては高精細な画像を撮像することが困難となる。
【0193】
逆に、トリミング部9の厚みHtが厚いと、指定セルに対応する貫通孔の周辺に配置された貫通孔90に入射した電子ビームがこの貫通孔90を通過してターゲット3に到達するのを防止できる。
【0194】
しかしながら、指定セルに対応する貫通孔90を通過してターゲット3に到達する電子ビーム量が少なくなる。従って、ターゲットに蛍光体を備えた電界放出型電子源表示装置においては、蛍光体を励起する電子ビーム量が少なくなるので所望の輝度を有する画像を表示することが困難となり、ターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置においては、光電変換膜で生成された正孔を読み出すための電流を十分に確保できなくなるので、残像が多くなってしまう。
【0195】
図8(A)、図8(B)、図9(A)、図9(B)は本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源装置おけるシミュレーション結果を示した図である。
【0196】
図8(A)及び図8(B)はメッシュ構造体8に300Vの電圧を印加した場合を示し、図9(A)及び図9(B)はメッシュ構造体8に225Vの電圧を印加した場合を示している。
【0197】
シミュレーションは、上述のしたように、VGAに対応し、1つのセルサイズが20μm角、メッシュ構造体8の貫通孔90の開口91が一辺16μmの正方形、メッシュ構造体8からターゲット3までの距離が150μmである電界放出型電子源装置について行った。
【0198】
スペーサー部8aの厚み(即ち、電界放出型電子源アレイからトリミング部9の貫通孔90の開口91までの距離)Hsを25μmから125μmまで25μm間隔で変えた。各スペーサー部8aの厚みにおいて、トリミング部9の厚みHtを25μmから150μmまで25μm間隔で変えた。
【0199】
図8(A)及び図9(A)は、指定セルから放出された電子ビームのうち、メッシュ構造体8を通過してターゲット3に到達する電子ビームの割合(単位:%)を計算した結果を示したグラフである。横軸はトリミング部9の厚みHtをメッシュ構造体8の貫通孔90の径D(=16μm)で規格化した値を示し、縦軸は指定セルから放出された電子ビームのうちターゲット3に到達する電子ビームの割合(電子ビーム到達率、単位:%)を示す。
【0200】
図8(B)及び図9(B)は、指定セルから放出された電子ビームのうち、この指定セルの中心を通りZ軸に平行な直線がターゲット3と交差する点を中心とする1辺が40μmの正方形の領域内に到達する電子ビームの割合(単位:%)を計算した結果を示したグラフである。横軸はトリミング部9の厚みHtをメッシュ構造体8の貫通孔90の径D(=16μm)で規格化した値を示し、縦軸は指定セルから放出された電子ビームのうちターゲット3の上記領域内に到達する電子ビームの割合(電子ビーム集中率、単位:%)を示す。
【0201】
シミュレーションは、ターゲット3が光電変換膜を備える電界放出型電子源撮像装置について行なったが、ターゲット3が蛍光体を備える電界放出型電子源表示装置の場合にはターゲット3に印加される電圧が異なる以外は同様である。従って、メッシュ構造体8を通過してターゲット3に到達する電子ビームの割合については、電界放出型電子源表示装置の場合も図8(A)及び図9(A)と同じ計算結果が得られる。ターゲット3上の所定の領域内に到達する電子ビームの割合については、ターゲット3の電圧が電界放出型電子源撮像装置の場合よりも高いので、電界放出型電子源表示装置の場合には図8(B)及び図9(B)よりも、ターゲット3上の所定の領域内に到達する電子ビームの割合が高くなる。
【0202】
図8(A)及び図9(A)より、貫通孔90の径Dに対するトリミング部9の厚みHtの比(比Ht/D)が大きくなるにしたがって、ターゲット3に到達する電子ビームの割合は減少している。
【0203】
トリミング部9の電界放出型電子源アレイに対向した面には、1セルに対応する領域(一辺が20μmの正方形)内に1つの開口91(一辺16μmの正方形)が形成されている。従って、トリミング部9の電界放出型電子源アレイに対向した面における開口91の面積割合(開口率)は、(16μm×16μm)/(20μm×20μm)×100=64%である。
【0204】
ターゲット3に到達する電子ビームの割合は、比Ht/Dが1.5以上(トリミング部9の厚みHtが25μm以上)の領域では、図8(A)及び図9(A)のポイントD(スペーサー部8aの厚みHsが25μm、トリミング部9の厚みHtが25μmの場合)を除いて、トリミング部9の開口率である64%より十分に小さい。スペーサー部8aの厚みHsが50μm以上の場合には、スペーサー部8aの厚みHsにかかわらず、ターゲット3に到達する電子ビームの割合は、トリミング部9の開口率である64%より十分に小さい。
【0205】
これは以下を意味している。即ち、指定セルから放出された電子ビームのうち64%がトリミング部9の貫通孔90内に入射する。そして、この貫通孔90内に入射した電子ビームのうちの一部が、電子ビーム通過行路92の側壁に衝突して吸収され除去されて、メッシュ構造体8を通過することができない。即ち、ターゲット3に到達する電子ビームの割合が、トリミング部9の開口率である64%より小さい場合には、メッシュ構造体8のこのトリミング作用が有効に機能していることを意味している。
【0206】
上記ポイントDにおいて、スペーサー部8aの厚みHsを大きくすると、ターゲット3に到達する電子ビームの割合はトリミング部9の開口率である64%より小さくなる。これより、ポイントDの条件では、トリミング部9の電界放出型電子源アレイに対向した面側の開口91近傍に形成される電界レンズによって電子ビーム軌道が曲げられるために、ターゲット3に到達する電子ビームの割合がトリミング部9の開口率である64%より大きくなったと考えられる。従って、ポイントDの条件においてメッシュ構造体8に印加される電圧を低くして上記電界レンズを弱めれば、ターゲット3に到達する電子ビームの割合は64%未満となり、メッシュ構造体8のトリミング作用を発揮させることができると考えられる。
【0207】
以上より、各部に印加する電圧条件によって多少の違いはあるが、おおよそ比Ht/Dが1.5以上であれば、メッシュ構造体8の貫通孔90の電子ビーム通過行路92の側壁に電子ビームを衝突させて吸収除去することができる。
【0208】
次に、トリミング部9の厚みHtの好適な範囲について考える。厚みHtの範囲は、以下の条件を満足するように設定されなければならない。第1に、メッシュ構造体8の電子ビーム通過行路92の側壁で電子ビームの一部を除去吸収して、指定セルから放出された電子ビームの発散角よりも小さな発散角の電子ビームをメッシュ構造体8からターゲット3に向かって出射させる必要がある。第2に、ターゲット3において所望の動作を行うのに必要な電子ビーム量を確保する必要がある。
【0209】
指定セルから放出される電子ビームの発散角がガウス分布に従うと仮定し、そのうち1σ(全体の68.27%)以上の発散角の電子ビームをメッシュ構造体8で吸収除去する場合を考える。このためには、指定セルから放出された電子ビームのうちメッシュ構造体8を通過する電子ビームの割合を、トリミング部9の開口率(64%)に1σに相当する68.27%を乗じた43.7%以下に低減できることが好ましく、図8(A)及び図9(A)より比Ht/Dが1.5以上であることが好ましい。
【0210】
また、ターゲット3において所望の動作を行うためには、指定セルから放出された電子ビームのうちターゲット3に到達する電子ビームの割合が5%以上である必要があると考える。このためには、図8(A)及び図9(A)より比Ht/Dが10以下であることが好ましい。
【0211】
以上より、トリミング部9の厚みHtは、貫通孔90の開口径Dの1.5倍以上10倍以下であることが好ましい。
【0212】
但し、例えば指定セルから放出された電子ビームのうち40%以上の電子ビームが、ターゲット3上の1辺が40μmの正方形の領域内に到達することが、十分な解像度を得るために必要であると考えれば、図8(B)及び図9(B)より、トリミング部9の厚みHtは、貫通孔90の開口径Dの3倍以上である必要がある。
【0213】
また、電界放出型電子源アレイが、電子ビーム放出能力が比較的劣る種類である等の理由により、指定セルから放出された電子ビームのうち10%以上の電子ビームがターゲット3に到達すること必要であると考えれば、図8(A)及び図9(A)より、トリミング部9の厚みHtは、貫通孔90の開口径Dの8倍以下である必要がある。
【0214】
このように、トリミング部9の厚みHtの好適な範囲は、電界放出型電子源装置の用途、電界放出型電子源アレイの種類などによって変化する。
【0215】
上述した実施の形態では、電界放出型電子源が先端の尖った冷陰極素子15とその先端を囲む開口が形成されたゲート電極12とを備えたスピント型を例に説明したが、本発明の電界放出型電子源はこれに限定されない。例えばカソード電極とゲート電極との間に絶縁層を形成し、絶縁層に電圧を印加してトンネル効果により電子放出を行なうMIM(Metal Insulator Metal)型、カソード電極とエミッタ電極との間に微小なギャップを設け、これら電極間に電圧を印加して微小ギャップから電子放出を行なうSCE(Surface Conduction Electron Source)型、あるいは電子源にDLC(Diamond Like Carbon)やCNT(Carbon Nanotube)等の炭素系材料を用いた電界放出型電子源であっても良い。
【0216】
電子ビームが広がりをもって電界放出される電子源であって、ターゲット3上での電子ビームのスポット径を小さくする必要がある電界放出型電子源装置は、本発明の効果が効果的に発揮されるので、本発明が適用されることが特に好ましい。
【0217】
CNT(Carbon Nanotube)等の炭素系材料を用いた電界放出型電子源の一例を図10に示す(例えば特許文献6参照)。
【0218】
基板上に、無数のカーボンナノチューブ(CNT)からなるCNT層59が形成されている。CNT層59を取り囲むように、集束電極60が形成されている。CNT層59の上方にはCNT層59から電子を引き出すためのゲート電極61が形成されている。ゲート電極61には、無数の電子ビーム通過孔が形成されている。カーボンナノチューブからなるセルの平面視形状は四角形である。複数のセルが縦横方向にマトリックス状に配置されている。縦方向に並んだ複数のセルは互いに電気的に接続されてエミッタラインを形成する。ゲート電極61は、横方向に並んだ複数のセル上に配置されてゲートラインを形成する。複数のエミッタラインのうちの1つと、複数のゲートラインのうちの1つを選択することにより、選択されたエミッタラインとゲートラインとの交点に位置するセルから電子ビーム11aが放出される。
【0219】
ゲート電極61が薄いと、セルから放出される電子ビーム11aの量が多くなり、その発散角は大きくなり、ゲート電極61が厚いと、セルから放出される電子ビーム11aの量が少なくなり、その発散角は小さくなる。
【0220】
本発明は、このようなCNTを用いた電界放出型電子源を備えた電界放出型電子源装置にも適用することができる。特に、ゲート電極61が薄く、そのためにセルから放出される電子ビーム11aの量が多く、その発散角は大きい場合に適用すると、本発明の効果が効果的に発揮されるので好ましい。その場合、メッシュ構造体8の貫通孔90がセルと一対一に対応してセルのZ軸方向の上方に配置され、貫通孔90の開口がセルと同程度の大きさを有していることが好ましい。
【0221】
また、上記の実施の形態では、電界放出型電子源アレイからトリミング部9の貫通孔90の開口91までの距離が100μm程度、トリミング層9の厚みが100μm程度、メッシュ構造体8からターゲット3までの距離が150〜数百μm程度である例を示したが、本発明はこれに限定されず、電界放出型電子源装置の用途、電界放出型電子源の種類によってこれらの距離を自由に設定しても良いことは言うまでも無い。
【0222】
更に、上記の実施の形態では、ターゲット3が陽極電極2を覆っていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、陽極電極2がターゲット3より大きくても良い。また、ターゲット3が3色の蛍光体を含み、陽極電極2の表面にこの3色の蛍光体を交互に形成しても良い。この場合、隣り合う蛍光体の間にブラックマトリクスのような光吸収層を設けても良い。更に、陽極電極2のとターゲット3との間、又は陽極電極2と前面パネル1との間に、単色又は3色のカラーフィルター層を設け、カラーフィルター層の色に対応して蛍光体層又は光電変換膜層をターゲット3として形成しても良い。
【0223】
また、上記の実施の形態では、メッシュ構造体8をシリコン基板を用いて半導体技術であるMEMS技術により作成する例を示したが、メッシュ構造体8の作成方法はこれに限定されない。例えば金属板をエッチング処理することにより作成しても良いし、ガラス等の絶縁物に貫通孔90を形成後、その表面に金属膜をスパッタリングやCVD等の蒸着や塗布により形成しても良い。
【0224】
あるいは、シリコン基板を用いて半導体技術により作成したトリミング部9と、これとは別にシリコン、金属、ガラス等の材料で作成したスペーサー部8aとを接合して一体化して、メッシュ構造体8を作成しても良い。
【0225】
また、上記の実施の形態では、電界放出型電子源アレイからトリミング部9までの距離の組立誤差を少なくするために、スペーサー部8aを一体化に備えるメッシュ構造体8を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図11に示すように、側面外周器24の内周面に段差24aを設け、この段差24aでスペーサー部を有しないメッシュ構造体25を支持しても良い。この場合も、指定セルに対応する貫通孔以外の貫通孔に入射した電子ビームをこの貫通孔の電子ビーム通過行路の側壁で吸収除去するというトリミング作用を得ることができる。
【0226】
メッシュ構造体8の貫通孔90の電子ビーム通過行路92の内径は、上述した図4(A)のようにZ軸方向において一定である必要はなく、変化していても良い。電子ビーム通過行路92の内径をZ軸方向において変化させることにより、メッシュ構造体8のトリミング作用を調整することができる。例えば、図4(B)に示すように、電子ビーム通過行路92の内径が電子ビームの入射側よりも出射側で小さいと、メッシュ構造体8の貫通孔90を出射する電子ビーム11bの発散角をより小さくすることができるので好ましい。
【0227】
メッシュ構造体8の貫通孔90の電子ビーム通過行路92のZ軸に垂直な方向に沿った断面形状は、上記の例のように四角形に限定されない。例えば、円形、楕円形、いずれの内角も90度より大きな多角形、または隣り合う辺が円弧で接続された多角形(例えば後述する図14(B)を参照)であっても良い。これらの形状にすることにより、メッシュ構造体内における局所的な応力集中を防止して、高強度のメッシュ構造体を得ることができる。例えば、電子ビーム通過行路92の断面形状を6角形又は円形として、トリミング部9をハニカム構造としても良い。
【0228】
更に、上記の実施の形態では、Z軸方向から見た前面パネル1の形状が円形であったが、本発明はこれに限定されず、例えば四角形であっても良い。
【0229】
また、上記の実施の形態では、メッシュ構造体8は電界放出型電子源アレイ10が形成された半導体基板6上に設置されていたが、本発明はこれに限定されず、例えば背面パネル5上に半導体加工技術を用いてスピント型等の電界放出型電子源アレイを直接形成し、電界放出型電子源アレイを形成した背面パネル5上にメッシュ構造体8を設置しても良い。
【0230】
更に、上述の実施の形態では、VGAに対応した電界放出型電子源装置を想定して電界放出型電子源アレイの1つのセルの大きさを20μm角程度とし、これに合わせた各部の寸法を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えばSVGA、SXGAに対応する電界放出型電子源装置であれば、1つのセルの大きさは上記よりも小さくなり、その他の各部の寸法もこれに合わせて小さくしなければならない。
【0231】
また、上記の実施の形態では、電界放出型電子源アレイのセルとメッシュ構造体8の貫通孔90とが一対一に対応する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電界放出型電子源アレイの複数のセルに対してメッシュ構造体8の1つの貫通孔90が対応していても良い。例えば、縦方向に2つ、横方向に2つの合計4つのセルに対して、メッシュ構造体8の1つの貫通孔90を対応させることができる。この場合、セルに対応する貫通孔90の開口91の中心は、このセルの中心を通りZ軸と平行な直線に対して僅かにずれた位置にある。従って、指定セルから放出された電子ビームのうちZ軸に対して僅かに斜め方向に進行する電子ビームが貫通孔90に入射してターゲット3に到達するので、駆動方法に注意が必要がある。
【0232】
更に、上述の実施の形態に示した各部に印加される電圧は一例にすぎず、電界放出型電子源装置の用途、各部のサイズ等によって最適値は異なり、適宜変更しなければならないことは言うまでも無い。
【0233】
以上述べた如く、本実施の形態1では、電界放出型電子源アレイと有益な動作を行なうターゲットとを含む電界放出型電子源装置において、電界放出型電子源アレイとターゲットとの間に貫通孔90の開口91の径よりも十分に長い電子ビーム通過行路92を有する、シリコンを含む材料からなるメッシュ構造体8が配置されている。電界放出型電子源の指定セルから広がりをもって放出される電子ビームのうち、指定セルの中心を通りZ軸と平行な直線上に配置された貫通孔90以外の貫通孔90に入射した電子ビームは、メッシュ構造体の電子ビーム通過行路92の側壁に衝突して効果的に吸収除去される。このメッシュ構造体8のトリミング作用によって、指定セルから放出された電子ビームの中からZ軸方向と平行な方向の速度ベクトルを有してターゲト3へ向かう電子ビームのみが選択的に取り出される。従って、メッシュ構造体8を出射する電子ビームの広がりを小さくすることができる。この結果、ターゲット3に到達する電子ビームのスポット径が小さくなり、高精細な電界放出型電子源装置を実現することができる。
【0234】
また、メッシュ構造体8を半導体製造で使用される微細加工技術を用いて作成することにより、高精度でバラツキの少ない電界放出型電子源装置を実現できる。また、メッシュ構造体8が半導体基板6と同様にシリコン基板を用いて製作されるので、製造工程における加熱過程の温度を高くしてガス出しを十分行なうことができる。従って、ガス放出が少なく、耐電圧特性において信頼性の高い電界放出型電子源装置を実現することができる。
【0235】
更に、本実施の形態1のメッシュ構造体はシリコン基板を用いて半導体加工技術であるMEMS技術により製作できるので、複数の貫通孔を高精度且つ均一分布でメッシュ構造体に形成できる。従って、従来の金属からなるメッシュ構造体(例えば銅メッシュ等)のように、張力を付与して電界放出型電子源装置に固定すると、貫通孔の形状やサイズが中央部と周辺部とで異なってしまうという問題が発生することがなく、電界放出型電子源装置に用いた場合にターゲットに到達する電子ビーム量をターゲット上の位置によらずに均一にすることができるメッシュ構造体を提供することができる。
【0236】
本実施の形態1で説明した結晶構造を有するシリコンを含む材料からなるメッシュ構造体は、電界放出型電子源装置以外の用途にも使用することができる。
【0237】
例えば、メッシュ構造体の厚みを貫通孔の径よりも十分大きくすることで、一方の面から他方の面に向かって原子、分子、光等を通過させ、それらの進行方向に指向性を付与コリメータとして使用することができる。
【0238】
あるいは、例えば、メッシュ構造体の貫通孔の径を調節することで、粒径により粒子を選別する粒子フィルタとして使用することができる。
【0239】
即ち、一次元的に形成された複数の貫通孔を有し、その貫通孔に光、電子、原子、イオン、又は分子などの検知し得る物質を一方の面から他方の面に向かって通過させることが可能なメッシュ構造体において、このメッシュ構造体が結晶構造を有するシリコンを含む材料からなることによって、半導体で用いられる微細加工技術を用いて貫通孔の加工が可能となる。従って、メッシュ構造体の貫通孔形状、貫通孔径を高精度にコントロールすることができる。よって、例えば貫通孔を用いた粒子のフィルタ機能を容易に実現できる。
【0240】
また、半導体の微細加工技術によりメッシュ構造体に、径よりも深い貫通孔を容易に加工できるので、粒子の選別を行なうフィルタ機能を備えたメッシュ構造体や、原子、分子、光などの進行方向に指向性を付与するコリメータ機能を備えたメッシュ構造体を安価に製作することができる。
【0241】
更に、半導体で用いられる高純度のシリコン板を用いることができるので、真空中でガス放出の懸念がない、原子、分子、電子などに指向性を付与するコリメータ機能を備えたメッシュ構造体を容易に得ることができる。
【0242】
また、複数の貫通孔を離隔する隔壁の厚みを貫通孔の開口径よりも小さくすることにより、メッシュ構造体の表面に対する貫通孔の開口面積の比(開口率)を大きくすることができるので、原子、分子、電子、光などに指向性を付与するコリメータとして使用する場合には、入射側の原子、分子、電子、光などの量に対する出射側の原子、分子、電子、光などの量の比(通過率)が大きなコリメータを提供することができる。
この場合、場所によらず均一な通過率を得るために、複数の貫通孔の開口径は均一で、且つ、複数の貫通孔が規則正しく配置されていることが好ましい。
本発明において、複数の貫通孔を離隔する隔壁の厚み及び貫通孔の開口径は、ある貫通孔とこの貫通孔に最も近い貫通孔のそれぞれの中心軸を含む断面において定義されることが好ましい。
【0243】
(実施の形態2)
図12は、本発明の実施の形態2に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の断面図である。
【0244】
図12に示すように、本実施の形態2に係る電界放出型電子源装置は、メッシュ構造体20が3層構造を有している点で実施の形態1のメッシュ構造体8と異なる。以下では実施の形態1と同じ部分についての説明を省略する。
【0245】
本実施の形態2のメッシュ構造体20は、図12、図13、図14(A)及び図14(B)に示すように、電界放出型電子源アレイ側の第1電極層19と、ターゲット3側の第2電極層16と、これらの間の絶縁層(中間層)17とからなる3層構造を有している。絶縁層17は、第1電極層19と第2電極層16との間の絶縁を確保する。
【0246】
このメッシュ構造体20は、シリコン基板を用いて半導体技術により作成される。図15(A)〜図15(D)を用いてメッシュ構造体20の製造方法の一例を説明する。一実施例として、電界放出型電子源アレイの1つのセルの大きさが20μm角程度、1セル内の多数の電子源が並べられた領域の大きさが10μm角程度の電界放出型電子源装置の数値例を併記する。但し、この数値例は一例にすぎず、開口91の径や電界放出型電子源アレイからトリミング部9の貫通孔90までの距離、電界放出型電子源アレイの1セル内において多数の電子源が並べられた領域の大きさなどが異なる場合には、適宜変更する必要がある。
【0247】
まず、図15(A)に示すように、中間層として絶縁層17となる酸化膜(SiO2膜)17'を有し、この両側に所望の厚みのシリコン層16',18'を有するSOI基板を用意する。
【0248】
一実施例では、トリミング部9となるシリコン層16'の厚みを100μm程度、スペーサー部18となるシリコン層18'の厚みを90μm程度にすることができる。酸化膜17'の厚みは0.5〜3μmが好適であり、耐電圧を確保するため、及び、シリコン層16',18'、酸化膜17'を良好にエッチング処理するためには、2μm程度が最適である。
【0249】
シリコン層16'は第2電極層16となる層であり、第2電極層16の機能を発揮させるめに、予めN型又はP型の材料がドープされて低抵抗化されている。
【0250】
次に、図15(B)に示すように、SOI基板のシリコン層18'の中央部のみをエッチング処理して除去し、SOI基板の中央部を薄肉化する。かくしてSOI基板の周囲のみにシリコン層18'が残り、スペーサー部18となる。
【0251】
次に、図15(C)に示すように、シリコン層18'側の面にアルミニウム、金、銅、タンタル、モリブデン、又はチタン等の金属を、真空蒸着、スパッタ、又はCVD法等により堆積させて第1電極層19となる金属薄膜19'を形成する。
【0252】
次に、図15(D)に示すように、シリコン層16'側からエッチング技術を用いて貫通孔90を形成する。かくして、金属薄膜19'からなる第1電極層19、酸化膜17'からなる絶縁層17、シリコン層16'からなる第2電極層16が形成される。
【0253】
貫通孔90を形成する際、各層の被エッチング特性の相違によっては、貫通孔90の電界放出型電子源アレイ側の開口91周辺の形状が、所望する図13のようにならず、図16(A)〜図16(C)のようになる可能性がある。しかしながら、いずれの形状であってもトリミング部9としての機能に大差はない。
【0254】
図15(C)において形成される金属薄膜19'が厚すぎると、図15(D)のエッチング処理時に貫通孔90を形成しにくい。金属薄膜19'が薄すぎると、電界放出型電子源アレイからの電子ビームを貫通孔90の開口91内に導く作用が弱くなる。従って、金属薄膜19'の厚みには最適値が存在する。上述の一実施例の場合には、金属薄膜19'(第1電極層19)の厚みは2μm程度が好適である。
【0255】
本実施の形態2は、このようにメッシュ構造体20をSOI基板を用いて加工し上述の様にして第1電極層19を形成するので、実施の形態1で述べた利点に加え、メッシュ構造体を安価に製作することができるという利点を有する。
【0256】
メッシュ構造体20の作成方法は上記に限定されない。
【0257】
例えば貫通孔90を形成する図15(D)の工程を図15(A)の工程後図15(B)の工程前に行なっても良い、また、SOI基板を使用せずにシリコン基板を用い、作成工程の途中で酸化処理を施しSiO2膜を形成しても良い。
【0258】
このようにして作製されたメッシュ構造体20は電界放出型電子源アレイ10が設けられた半導体基板6上に、メッシュ構造体20に一体に設けられたスペーサー部18を介して設置固定される。そして、メッシュ構造体20の第1電極層19には半導体基板6を介して例えば中位の150〜500V程度の第1電圧V1が印加され、第2電極層16には別に設けた電圧供給用ワイヤーを介して例えば低位の50〜200V程度の第2電圧V2が印加される。
【0259】
電界放出型電子源アレイの指定セルでは、この指定セル内の複数の冷陰極素子15(図6参照)に例えば50Vの基準電位から0Vに低下するパルス状のエミッタ電位が印加され、ゲート電極12(図6参照)には例えば50Vの基準電位から100Vに上昇するパルス状のゲート電位が印加される。
【0260】
指定セルから放出された電子ビーム11aは、メッシュ構造体20の第1電極層19に印加された150〜500V程度の中位の第1電圧V1により加速され、その進行方向がZ軸に平行になるように修正されながらメッシュ構造体20に入射する。
【0261】
図12に示すように、指定セルから放出された電子ビーム11aは、この指定セルの中心を通りZ軸と平行な直線上に位置する貫通孔90のみならず、この周囲に位置する貫通孔90にも入射する。
【0262】
第1電極層19によって加速された電子ビームは、メッシュ構造体20の貫通孔90に入射後、第2電極層16に印加された50〜200V程度の第1電極層19の第1電圧V1よりも低い第2電圧V2により急激に減速される。
【0263】
電子ビームが急激に減速されることにより、電子ビームのZ軸方向の速度成分が小さくなり、Z軸と直交する方向の速度成分が相対的に大きくなる。従って、電子ビームは、第2電極層16の領域内において電子ビーム通過行路92の側壁に衝突しやすくなる。
【0264】
電子ビームを第2電極層16の領域内において電子ビーム通過行路92の側壁に効率よく衝突させるためには、電子ビーム通過行路92の長さのうち、第1電極層19が占める長さをT1、第2電極層16が占める長さをT2としたときT1<<T2を満足することが好ましい。具体的にはT2/T1≧50を満足することが好ましい。即ち、第2電極層16による減速電界が、電子ビーム通過行路92中の電界放出型電子源アレイに近い領域に配置されるのが好ましい。但し、T1>T2であっても、程度は劣るが電子ビームを第2電極層16の領域内において電子ビーム通過行路92の側壁に衝突させることは可能である。
【0265】
かくして、本実施の形態2では、電子ビーム通過行路92の長手方向(Z軸方向)に対して斜めに入射した電子ビームは、実施の形態1に比べて、電子ビーム通過行路92内に入射後の早い段階でその側壁に衝突し、吸収除去される。
【0266】
従って、本実施の形態2では、実施の形態1に比べて、指定セルに対応する貫通孔以外の貫通孔に入射した電子ビーム11aをこの貫通孔の電子ビーム通過行路92の側壁で吸収除去し、指定セルに対応する貫通孔に入射した電子ビーム11aのみをターゲット3に到達させるというトリミング作用を向上させることができる。
【0267】
このため、本実施の形態2では、実施の形態1に比べて、ターゲットに蛍光体を備えた電界放出型電子源表示装置においてはより高精細な画像を表示することが可能となり、ターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置においてはより高精細な画像を撮像することが可能となる。
【0268】
また、本実施の形態2では、実施の形態1に比べて、電界放出型電子源アレイからターゲットまでの距離が組み立てバラツキや大気圧によって設計値に対してばらついても、ターゲット3上での電子ビームスポットの大きさの変化を一層抑えることができる。従って、一層均一な画質を表示できる電界放出型電子源表示装置、及び一層均一な画質を撮像できる電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0269】
また、本実施の形態2では、メッシュ構造体20に入射した電子ビームの速度ベクトルを変えることでトリミング作用が向上されるので、実施の形態1に比べてメッシュ構造体のトリミング部9の厚みHtを薄くすることが可能になる。これにより、実施の形態1に比べて、指定セルに対応する貫通孔90を通過してターゲット3に到達する電子ビーム量を増加させることができ、ターゲット3において必要な電子ビーム量を確保することが容易になる。
【0270】
図17(A)、図17(B)、図18(A)、図18(B)は本発明の実施の形態2に係る電界放出型電子源装置おけるシミュレーション結果を示した図である。
【0271】
図17(A)及び図17(B)はメッシュ構造体20の第1電極層19に300Vの電圧を印加し、第2電極層16に100Vの電圧を印加した場合を示し、図18(A)及び図18(B)はメッシュ構造体20の第1電極層19に225Vの電圧を印加し、第2電極層16に75Vの電圧を印加した場合を示している。
【0272】
シミュレーションは、実施の形態1の上述のシミュレーションと同様に、VGAに対応し、1つのセルサイズが20μm角、メッシュ構造体20の貫通孔90の開口91が一辺16μmの正方形、メッシュ構造体20からターゲット3までの距離が150μmである電界放出型電子源装置について行った。
【0273】
第1電極層19の厚みを2μm、絶縁層17の厚みを2μmとした。スペーサー部18aの厚み(即ち、電界放出型電子源アレイからトリミング部9の貫通孔90の開口91までの距離)Hsを25μmから125μmまで25μm間隔で変えた。各スペーサー部18aの厚みにおいて、トリミング部9の厚みHtを第2電極層16の厚みを変えることで25μmから150μmまで25μm間隔で変えた。
【0274】
図17(A)及び図18(A)は、指定セルから放出された電子ビームのうち、メッシュ構造体20を通過してターゲット3に到達する電子ビームの割合(単位:%)を計算した結果を示したグラフである。横軸はトリミング部9の厚みHtをメッシュ構造体20の貫通孔90の径D(=16μm)で規格化した値を示し、縦軸は指定セルから放出された電子ビームのうちターゲット3に到達する電子ビームの割合(電子ビーム到達率、単位:%)を示す。
【0275】
図17(B)及び図18(B)は、指定セルから放出された電子ビームのうち、この指定セルの中心を通りZ軸に平行な直線がターゲット3と交差する点を中心とする1辺が40μmの正方形の領域内に到達する電子ビームの割合(単位:%)を計算した結果を示したグラフである。横軸はトリミング部9の厚みHtをメッシュ構造体20の貫通孔90の径D(=16μm)で規格化した値を示し、縦軸は指定セルから放出された電子ビームのうちターゲット3の上記領域内に到達する電子ビームの割合(電子ビーム集中率、単位:%)を示す。
【0276】
シミュレーションは、ターゲット3が光電変換膜を備える電界放出型電子源撮像装置について行なったが、ターゲット3が蛍光体を備える電界放出型電子源表示装置の場合にはターゲット3に印加される電圧が異なる以外は同様である。従って、メッシュ構造体20を通過してターゲット3に到達する電子ビームの割合については、電界放出型電子源表示装置の場合も図17(A)及び図18(A)と同じ計算結果が得られる。ターゲット3上の所定の領域内に到達する電子ビームの割合については、ターゲット3の電圧が電界放出型電子源撮像装置の場合よりも高いので、電界放出型電子源表示装置の場合には図17(B)及び図18(B)よりも、ターゲット3上の所定の領域内に到達する電子ビームの割合が高くなる。
【0277】
実施の形態1で示した図8(A)及び図9(A)と比較すると、図17(A)及び図18(A)では、ターゲット3に到達する電子ビームの割合は減少している。これは、本実施の形態2では、実施の形態1に比べて、トリミング部9の電子ビームの吸収除去能力が向上していることを意味している。
【0278】
また、実施の形態1で示した図8(B)及び図9(B)と比較すると、図17(B)及び図18(B)では、ターゲット3上の所定の領域内に到達する電子ビームの割合は増加している。特に、貫通孔90の径Dに対するトリミング部9の厚みHtの比(比Ht/D)が3以上、更には4以上のとき、電子ビーム集中率が顕著に増加している。
【0279】
以上のシミュレーション結果から、上述したように、メッシュ構造体を3層構造とし、第2電極層16の第2電圧V2を第1電極層19の第1電圧V1よりも低くして、電子ビーム通過行路92内にて電子ビームを減速させることにより、電子ビームを電子ビーム通過行路92の側壁に衝突させて吸収除去する効果を増加させることができることが判る。
【0280】
このシミュレーション結果から実施の形態2におけるトリミング部9の厚みHtの好適な範囲について考える。実施の形態1で説明したように、指定セルから放出された電子ビームのうちメッシュ構造体8を通過する電子ビームの割合を43.7%以下に低減できるトリミング部9の厚みHtの最小値は、実施の形態1よりも小さい。また、指定セルから放出された電子ビームのうちターゲット3に到達する電子ビームの割合が5%以上にすることができるトリミング部9の厚みHtの最大値は、実施の形態1とほとんど同じである(図17(A)及び図18(A))。
【0281】
図17(B)及び図18(B)より、指定セルから放出された電子ビームのうち40%以上の電子ビームをターゲット3上の1辺が40μmの正方形の領域内に到達させるためには、比Ht/Dが1.5倍以上であれば良い。指定セルから放出された電子ビームのうち40%以上の電子ビームをターゲット3上の該領域内に到達させて、更なる高解像度を実現するためには、比Ht/Dが4倍以上であれば良い。比Ht/Dが6倍以上であれば、指定セルから放出された電子ビームのうち90%以上の電子ビームをターゲット3上の該領域内に到達させることができる。
【0282】
実施の形態2の上記シミュレーションでは、第1電極層19の厚みを2μm、絶縁層17の厚みを2μmとしたが、第1電極層19及び絶縁層17の厚みを3μm、2μm、1μm、0.5μm等に変えて同様にシミュレーションしたところ定性的に同様の結果が得られた。
【0283】
以上述べた如く、本実施の形態2では、シリコンを含む材料からなるメッシュ構造体20を3層構造とし、電界放出型電子源アレイから放出された電子ビーム11aを、電界放出型電子源アレイ側の第1電極層19の第1電圧V1により加速してメッシュ構造体20の貫通孔90に入射させ、ターゲット3側の第2電極層16の第2電圧V2により減速させることにより、電子ビーム通過行路92内で電子ビーム軌道が曲げられるので、更に効果的にトリミング作用を行うことができる。従って、メッシュ構造体20を出射する電子ビームの広がりを実施の形態1よりも小さくすることができる。この結果、ターゲット3上において電子ビームのスポット径がより小さくなり、実施の形態1よりも高精細な電界放出型電子源装置を実現することができる。
【0284】
あるいは、実施の形態1と同程度のトリミング作用が得られれば十分な場合には、メッシュ構造体20のトリミング部9の厚みHtを薄くすることができる。その結果、ターゲット3に到達する電子ビーム量を実施の形態1よりも増加させることができる。これにより、ターゲットに蛍光体を備えた電界放出型電子源表示装置においては輝度を増加させることができ、ターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置においては残像を少なくすることができる。
【0285】
(実施の形態3)
図19は、本発明の実施の形態3に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の断面図である。
【0286】
図19に示すように、本実施の形態3に係る電界放出型電子源装置は、メッシュ構造体23が5層構造を有している点で実施の形態1のメッシュ構造体8、実施の形態2のメッシュ構造体20と異なる。以下では実施の形態1及び実施の形態2と同じ部分についての説明を省略する。
【0287】
本実施の形態3のシリコンを含む材料からなるメッシュ構造体23は、図19及び図20に示すように、実施の形態2のメッシュ構造体20のターゲット3側の面に、第2絶縁層21と第3電極層22とが順に設けられたものである。第3電極層22には第2電極層16に印加される第2電圧V2とあまり変わらない第3電圧V3が印加される。
【0288】
一実施例では、第3電極層22の厚みは第1電極層19と同じ2μm程度、第2電極層16と第3電極層22との間の第2絶縁層21の厚みも2μm程度とすることができる。
【0289】
実施の形態2で説明したように、メッシュ構造体23の貫通孔90に入射した電子ビーム11aは、第1電極層19及び第2電極層16を通過することで電子ビーム通過行路92の側壁に衝突して効果的に吸収除去される。吸収除去されなかった電子ビームは、第3電極層22に印加された第3電圧V3により、その発散角を微調整された後、貫通孔90を出射してターゲット3に到達する。これにより、ターゲット3上に電子ビームの良好なスポットを形成することができる。
【0290】
ターゲット3が光電変換膜を備える電界放出型電子源撮像装置について行なったシミュレーション結果によれば、1フレームの読み出し後、ターゲット3の電位がエミッタ電位に落ち着いた状態において、V2>V3とすることにより、ターゲット3上において電子ビームのスポット径を実施の形態2よりも更に小さくすることができることを確認した。その際、メッシュ構造体23を通過してターゲット3に到達する電子ビーム量は若干減少した。
【0291】
ターゲットに蛍光体を備えた電界放出型電子源表示装置においては、ターゲット3の電位が第2電圧V2よりも高いので、V2<V3とする方がターゲット3上に電子ビームの良好なスポットを形成することができる。
【0292】
以上述べた如く、本実施の形態3では、実施の形態2のメッシュ構造体20のターゲット3側に電子ビームの最終調整用の第3電極層22を設けた5層構造のメッシュ構造体23を用いる。これにより、メッシュ構造体23を出射する電子ビームの拡がりを実施の形態2よりも小さくすることができる。この結果、実施の形態2と同じ効果が得られることに加えて、ターゲット3に到達する電子ビームのスポット径がより小さくなり、実施の形態2よりも高精細な電界放出型電子源装置を実現することができる。
【0293】
(実施の形態4)
図21は、本発明の実施の形態4に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の断面図である。
【0294】
図21に示すように、本実施の形態4に係る電界放出型電子源装置は、電界放出型電子源アレイ10とシリコンを含む材料からなるメッシュ構造体8との間に予備集束用のフォーカス電極26が設けられている点で実施の形態1に係る電界放出型電子源装置と異なる。以下では実施の形態1と同じ部分についての説明を省略する。
【0295】
フォーカス電極26は、電界放出型電子源アレイ10のマトリックス状に配置された複数のセルのそれぞれの位置に開口を有し、各セルを包囲する複数の筒状体を備えている。フォーカス電極26には、メッシュ構造体8の電界放出型電子源アレイ10側の部分に印加される電圧よりも低い電圧が供給される。これにより、メッシュ構造体8からフォーカス電極26の筒状体内に浸透する電界が形成される。
【0296】
電界放出型電子源アレイ10のセルから放出された電子ビームは、フォーカス電極26の筒状体内に形成された電界により予備集束されたのち、メッシュ構造体8に向かって放出される。電子ビームはフォーカス電極26による予備集束を受けるので、フォーカス電極26を出射する電子ビームの発散角は、フォーカス電極26を備えない場合に比べて、小さくなる。このために、Z軸方向(電子ビーム通過行路92の長手方向)に対してなす角度が小さな速度ベクトルを有する電子ビームが多くなるので、メッシュ構造体8を通過する電子ビーム量が多くなる。従って、指定セルに対応する貫通孔90に入射する電子ビーム量が多くなる。この結果、フォーカス電極26を備えない場合に比べて、ターゲット3に到達する電子ビーム量が多くなり、且つ、ターゲット3上において電子ビームのスポット径が小さくなる。
【0297】
以上述べた如く、本実施の形態4では、電界放出型電子源アレイ10から放出された電子ビームがメッシュ構造体8に入射する前に、フォーカス電極26により予備集束される。これにより、実施の形態1に比べて、ターゲット3に到達する電子ビーム量を多くすることができ、且つ、ターゲット3上において電子ビームのスポット径を小さくすることができる。これにより、高輝度且つ高精細の電界放出型電子源表示装置や、残像が少なく且つ高精細の電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0298】
上記の例では単一電極を有するフォーカス電極を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、Z軸方向に複数の電極を有していても良い。各電極に異なる電圧を印加することにより、フォーカス電極内に予備集束のための電界を形成することができる。この場合、メッシュ構造体に最も近い電極に印加する電圧は、メッシュ構造体8のフォーカス電極側の部分に印加される電圧よりも低くても良いし、同じであっても良い。同じ場合には供給電圧回路を共通化できる。
【0299】
上記の例では、実施の形態1に示した電界放出型電子源装置にフォーカス電極を設けたが、本発明はこれに限定されず、上述した又は後述するいずれの電界放出型電子源装置に本実施の形態で説明したフォーカス電極を設けることができ、その場合も上記と同様の効果を得ることができる。
【0300】
(実施の形態5)
図12を用いて本発明の実施の形態5に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置を説明する。
【0301】
本実施の形態5では、電界放出型電子源装置の駆動中にシリコンを含む材料からなるメッシュ構造体20の第1電極層19に印加される第1電圧V1及び第2電極層16に印加される第2電圧V2の一方又は両方を変化させる点で、実施の形態2と異なる。以下では実施の形態2と同じ部分についての説明を省略する。
【0302】
本実施の形態では、これにより特にターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置において効果的な撮像動作を行なうことができる。
【0303】
即ち、ターゲット3に光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置では、ターゲット3に入射し結像された光の像により生成された電子正孔対の量は入射した光の強さにより決定され、入射した光が強いほど、多くの電子正孔対が生成される。生成された電子正孔対のうち、正孔はターゲット3の電界放出型電子源アレイ10側の面である電子走査面まで輸送され(セレンを用いたアバランシュ増倍型の光電変換膜の場合は電子増倍されながら輸送され)蓄積される。
【0304】
ターゲット3が電界放出型電子源アレイ10から放出された電子ビーム11cによって走査されると、蓄積された正孔は電子ビームに含まれる電子と結合し、同時に電気信号が読み出される。ここで、もしも十分な電子がターゲット3に到達しないと、ターゲット3の電子走査面に蓄積された正孔の一部が読み出されずに次の走査まで残ってしまうことになる。
【0305】
そのため、1フレーム目の読み出し走査で読み出されずに残存した正孔が、2フレーム目の読み出し走査時に到達した電子で読み出されてしまうことになり、撮像画像において、入射光の強い部分が残像として残ってしまうことになる。
【0306】
この問題を解決するためには、1フレーム目の読み出し走査の終了後に、十分な量の電子ビームをターゲット3に到達させ、読み出されずに残存した正孔を除去する動作(電荷リセット)を行い、次のフレームの読み出し走査に備える必要がある。
【0307】
しかし、電界放出型電子源アレイ10とターゲット3との間にメッシュ構造体20のような電子の一部を除去してしまう作用を有する電極を配置すると、電荷リセット期間においても十分な量の電子ビームをターゲット3に到達させることができない可能性がある。
【0308】
そこで、本実施の形態5では、電界放出型電子源装置を駆動中(具体的には、電荷リセット期間中)に、第1電極層19に印加される第1電圧V1及び第2電極層16に印加される第2電圧V2のうちの一方又は両方を変化させることにより、メッシュ構造体20の複数の貫通孔90を通過してターゲット3へ向かう電子ビーム11cの量を変化させる。これにより、電荷リセット期間中にターゲット3に到達する電子ビーム量を増加させ、十分な電荷リセット電流を確保することができる。これにより、残像の少ない電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0309】
特に、電荷リセット期間中に、第1電圧V1を一定にしたまま、第2電圧V2を上昇させるのが好ましい。これにより、電子ビーム通過行路92内に形成される電界により電子ビームの速度ベクトルの方向がZ軸方向に近づく。その結果、貫通孔90を通過してターゲット3に到達する電子ビーム量が増加する。例えば、通常駆動中には指定セルから放出された電子ビームのうち、この指定セルに対応する貫通孔90に入射した電子ビームのみしかメッシュ構造体20を通過することができなかった場合には、その貫通孔の周辺の貫通孔に入射した電子ビームもメッシュ構造体20を通過することができるようになり、且つ、指定セルに対応した貫通孔90を通過できる電子ビーム量も増加する。
【0310】
例えば、通常駆動時(読み出し期間中)に、第1電極層19に第1電圧V1として250V程度が印加され、第2電極層16に第2電圧V2として75V程度が印加される図12に示す電界放出型電子源撮像装置を考える。この状態でこの電界放出型電子源撮像装置は電界放出型電子源アレイ10のセルを順次駆動してターゲット3に蓄積された正孔を読み出す。
【0311】
そして1画像分又は1ライン分の正孔の読み出しが終わった後の電荷リセット期間中に、全セル又は1ラインに対応するセルから電子ビームを放出するのと同時に、メッシュ構造体20の第2電圧V2を75Vから150V程度に上昇させる。
【0312】
これにより、メッシュ構造体20のトリミング作用が弱められ、電子ビームが放出されているセルに対応する貫通孔90の周辺の貫通孔90に入射した電子ビームもメッシュ構造体20を通過してターゲット3に到達するようになる。従って、ターゲット3に到達する電子ビーム量は、通常駆動時に比べて格段に増加し、これにより、読み出し動作時に読み出されずにターゲット3の電子走査面に残った正孔を除去することができる。
【0313】
上記の場合において、電荷リセット期間中に、第2電圧V2を上昇させると同時に第1電圧V1を下降させても良い。これにより、駆動が若干複雑になるものの、メッシュ構造体20を出射する電子ビーム量を更に多くすることができる。
【0314】
このように電荷リセット期間中のターゲット3に到達する電子ビーム量を増加させることができるので、ターゲット3上に残存していた余分な正孔を除去するのに必要な電子ビーム量を確保することができる。よって、残像の残らない電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0315】
また、本実施の形態5によれば、1画像分又は1ライン分の通常の読み出し期間終了時にターゲット3の電子走査面に正孔が残存しても、これに続く電荷リセット期間中にターゲット3に到達する大量の電子ビームによって正孔を除去することができるので、通常の読み出し期間において全ての正孔の除去(読み出し)を行うのに必要な量の電子ビームがターゲット3に到達しなくても良い。従って、例えば、メッシュ構造体20の厚みHtを増大させて、ターゲット3上での電子ビームのスポット径を小さくすることが可能になる。あるいは、電界放出型電子源アレイ10のセルの配置や駆動回路を余裕のある設計にして、信頼性を向上させることが可能になる。
【0316】
以上述べた如く、本実施の形態5では、メッシュ構造体20がZ軸方向の異なる位置に第1電極層19及び第2電極層16を備える場合において、読み出し期間中と電荷リセット期間中とで第1電極層19に印加される第1電圧V1及び第2電極層16に印加される第2電圧V2の一方又は両方を異ならせる。これにより、ターゲット3に到達する電子ビーム量を、読み出し期間よりも電荷リセット期間中において増加させることができ、読み出し期間終了時に残存した正孔を除去することができる。
【0317】
従って、残像の残らない電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0318】
また、読み出し期間中にターゲット3に到達する電子ビーム量が全ての正孔の除去(読み出し)を行うのに必要な量よりも少なくても良い、従って、例えば、メッシュ構造体20の厚みHtを増大させて、ターゲット3上での電子ビームのスポット径を小さし、解像度を向上させることができる。あるいは、電界放出型電子源アレイ10のセルの配置や駆動回路を余裕のある設計にして、信頼性を向上させることが可能になる。
【0319】
上記の例では、実施の形態2の電界放出型電子源装置において第1電圧V1及び第2電圧V2の一方又は両方を変化させる場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、実施の形態3(図19)の電界放出型電子源装置や、これ以外の、2以上の電極を備えたメッシュ構造体を備える電界放出型電子源装置に対して同様の駆動を行っても良く、いずれも上記と同様の効果を得ることができる。
【0320】
また、電圧の変化のさせ方は上述の例に限定されず、例えば第2電圧V2を一定にしたまま第1電圧V1を低下させても良く、あるいは、第1電圧V1を低下させ、且つ第2電圧V2を上昇させても良い。
【0321】
(実施の形態6)
図22及び図23は、本発明の実施の形態6に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の部分拡大断面図である。
【0322】
図22に示す電界放出型電子源装置は、シリコンを含む材料からなるメッシュ構造体8のターゲット3側の面に低抵抗の薄膜からなるシールド電極層45を備える点で、実施の形態1の図1に示した電界放出型電子源装置と異なる。
【0323】
また、図23に示す電界放出型電子源装置は、メッシュ構造体20のターゲット3側の面に低抵抗の薄膜からなるシールド電極層45を備える点で、実施の形態2の図12に示した電界放出型電子源装置と異なる。
【0324】
以下では実施の形態1,2と同じ部分についての説明を省略する。
【0325】
シールド電極層45は、例えばシリコンを含む材料からなるメッシュ構造体のターゲット側の面に金属の薄膜をスパッタリング、真空蒸着、化学鍍金法等により成膜することで形成できる。あるいは、シリコンからなるメッシュ構造体のターゲット側の面から所定深さまでN型又はP型の物質をドープしてその濃度を高めることで形成できる。シールド電極層45は、電界放出型電子源装置の真空容器外の電圧供給源に接続される。
【0326】
シールド電極層45を設けることにより、メッシュ構造体8,20を通過した電子ビーム11b,11cのうち、ターゲット3へ到達せずに戻ってくる電子ビームをシールド電極層45が的確にトラップするので、メッシュ構造体8,20の局部的な電圧変動を抑制することができる。
【0327】
即ち、メッシュ構造体8,20から出射した電子ビーム11b,11cの殆どはターゲット3へ到達するが、一部はターゲット3へ到達せずにメッシュ構造体8,20へ戻ってくる場合がある。これにより以下のような問題が生じる可能性がある。
【0328】
例えばメッシュ構造体8,20のターゲット3側の面に比較的高抵抗の材料が露出した状態になっていると、ターゲット3へ到達せずメッシュ構造体8,20に戻ってきた電子ビームがメッシュ構造体8,20に衝突して2次電子放出等による局所的な電圧変動が発生したり、戻ってきた電子ビームをメッシュ構造体8,20がトラップした後、この電子が短時間で外部へ放出されないために電圧変動が発生したりする可能性がある。また、電界放出型電子源アレイ10のゲート電極に印加されるパルス電圧がメッシュ構造体8,20に重畳してしまう可能性がある。
【0329】
このような現象が起こるとメッシュ構造体8,20のトリミング作用が局所的に変動することによりメッシュ構造体8,20から出射する電子ビーム量が変動する。この結果、電界放出型電子源表示装置では輝度にムラが発生したり、電界放出型電子源撮像装置ではメッシュ構造体の局所的な電圧変動がターゲット3面に伝わり出力信号に雑音が重畳されたりする。
【0330】
これに対して、本実施の形態6によれば、メッシュ構造体8,20のターゲット3側の面が低抵抗の薄膜からなるシールド電極層45で覆われており、このシールド電極層45は電界放出型電子源装置の真空容器外の電圧供給源に接続されているので、メッシュ構造体8,20から出射しターゲット3へ到達せずにメッシュ構造体8,20に戻ってくる電子による2次電子放出がシールド電極層45により抑制されると共に、シールド電極層45にトラップされた電子を短時間で電圧供給源へ放出することができるので、メッシュ構造体8,20の局部的な電圧変動が起こることが無い。
【0331】
また、メッシュ構造体8,20のターゲット3側の面に形成されたシールド電極層45が電界放出型電子源装置の真空容器外の電圧供給源に接続されているので、電界放出型電子源アレイ10のゲート電極に印加されるパルス電圧がメッシュ構造体8,20の特にターゲット3側の面に形成されたシールド電極層45に重畳されることは無い。
【0332】
従って、メッシュ構造体8,20のトリミング作用が局所的に変動することによりメッシュ構造体8,20から放出される電子ビーム量が変動するという問題が生じない。よって、電界放出型電子源表示装置では輝度ムラが抑制され、電界放出型電子源撮像装置ではメッシュ構造体の局所的な電圧変動がターゲット面に伝わることで出力信号に雑音が重畳されるという問題が生じない。従って、高性能の電界放出型電子源装置を提供することができる。
【0333】
(実施の形態7)
図24は、本発明の実施の形態7に係る別のメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の部分拡大断面図である。
【0334】
図24に示すように、本実施の形態7に係る別の電界放出型電子源装置は、シリコンを含む材料からなるメッシュ構造体54が、高抵抗層56と、高抵抗層56の電界放出型電子源アレイ10側に形成された第1電圧が印加される低抵抗の第1電極層55と、高抵抗層56のターゲット3側に形成された第2電圧が印加される低抵抗の第2電極層57とを備える点で、実施の形態1に係る電界放出型電子源装置と異なる。以下では実施の形態1と同じ部分についての説明を省略する。
【0335】
本実施の形態7では、実施の形態1と同じ効果が得られる上に、メッシュ構造体の製作が容易になるという効果が得られる。
【0336】
例えば、メッシュ構造体を、実施の形態2で示したように、SiO2からなる絶縁層の両側にシリコン層を含むSOI基板を用いて貫通孔90をエッチングで形成する場合、厚さ方向に異なる材質の層が積層されているので、例えばエッチング処理がシリコン層では容易であるのに対して絶縁層では困難であるという問題や、材質の違いによる局部的な応力集中によりエッチング処理中に基板が割れてしまうという問題などが発生する。
【0337】
これに対して、本実施の形態7では、例えば高抵抗のシリコン基板に貫通孔90をエッチングで形成し、その後、両表面層が低抵抗となるようにN型又はP型の材料をドープすることでメッシュ構造体54を簡単に作成することができる。あるいは高抵抗のシリコン基板の両表面層を低抵抗となるようにN型又はP型の材料をドープした後、貫通孔90をエッチングで形成してメッシュ構造体54を作成しても良い。
【0338】
あるいは、高抵抗の基板に貫通孔90をエッチングで形成した後、電解エッチング処理などにより、メタルやその他の低抵抗の膜を両表面に形成しても良い。
【0339】
メッシュ構造体54が上記のような構成を有することにより、メッシュ構造体54を容易に作成することができる。
【0340】
また、電界放出型電子源の指定セルから広がりをもって放出された電子ビームのうち、指定セルに対応する貫通孔90以外の貫通孔90に入射した電子ビームをメッシュ構造体の電子ビーム通過行路92の側壁に衝突して効果的に吸収除去するというトリミング作用を、実施の形態1と同様に得ることができる。
【0341】
第1電極層55に印加される第1電圧をV1、第2電極層57に印加される第2電圧をV2としたとき、V1>V2としても良い。これにより、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0342】
即ち、V1>V2とすることにより、高抵抗層56に電圧勾配が形成され、これがメッシュ構造体54の貫通孔90に入射した電子ビームを減速させる。これにより、電子ビームのZ軸方向の速度成分が小さくなり、Z軸と直交する方向の速度成分が相対的に大きくなる。従って、電子ビームは、第2電極層16の領域内において電子ビーム通過行路92の側壁に衝突しやすくなる。よって、指定セルに対応する貫通孔以外の貫通孔に入射した電子ビーム11aをこの貫通孔の電子ビーム通過行路92の側壁で吸収除去し、指定セルに対応する貫通孔に入射した電子ビーム11aのみをターゲット3に到達させるというトリミング作用を向上させることができる。
【0343】
よって、本実施の形態7では実施の形態2と同様に以下の効果が得られる。即ち、電界放出型電子源アレイからターゲットまでの距離が組み立てバラツキや大気圧によって設計値に対してばらついても、ターゲット3上での電子ビームスポットの大きさの変化を一層抑えることができる。従って、均一な画質を表示できる電界放出型電子源表示装置、及び均一な画質を撮像できる電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0344】
第1電極層55に印加される第1電圧をV1、第2電極層57に印加される第2電圧をV2としたとき、電界放出型電子源装置の駆動中に電圧V1,V2の一方又は両方を変化させても良い、これにより、実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
【0345】
即ち、ターゲット3に光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置において、読み出し期間中と電荷リセット期間中とで第1電圧V1及び第2電圧V2の一方又は両方を異ならせることで、メッシュ構造体54のトリミング作用を読み出し期間中と電荷リセット期間中とで異ならせる。これにより、ターゲット3に到達する電子ビーム量を、読み出し期間よりも電荷リセット期間中において増加させることができ、読み出し期間終了時に残存した正孔を除去することができる。従って、本実施の形態7では実施の形態5と同様に、残像の残らない電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0346】
(実施の形態8)
図25は、本発明の実施の形態8に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の断面図である。
【0347】
図25に示すように、本実施の形態8に係る電界放出型電子源装置は、メッシュ構造体65のトリミング部66を薄くした点で、図1に示した実施の形態1に係る電界放出型電子源装置と異なる。以下では実施の形態1と同じ部分についての説明を省略する。
【0348】
図25に示される本実施の形態8では、シリコンを含む材料からなるメッシュ構造体65のトリミング部66が薄い。これにより、シリコンを含む材料を半導体加工技術であるMEMS技術で加工してメッシュ構造体65を作成することができるので、複数の貫通孔を高精度且つ均一分布でメッシュ構造体に形成できる。従って、従来の金属からなるメッシュ構造体(例えば銅メッシュ等)のように、張力を付与して電界放出型電子源装置に固定すると、貫通孔の形状やサイズが中央部と周辺部とで異なってしまうという問題が発生することがなく、電界放出型電子源装置に用いた場合にターゲットに到達する電子ビーム量をターゲット上の位置によらずに均一にすることができるメッシュ構造体を提供することができる。
【0349】
更に、電界放出型電子源アレイ10が形成された半導体基板6がシリコンを含む材料からなる場合、半導体基板6及びメッシュ構造体65の材料が同じになるので、製造工程における加熱工程の温度を高くしてガス出しを十分行なうことができる。従って、ガス放出が少なく、耐電圧特性において信頼性の高い電界放出型電子源装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0350】
本発明のメッシュ構造体及び電界放出型電子源装置の利用分野は特に制限はなく、例えば電界放出型電子源表示装置及び電界放出型電子源撮像装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0351】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源装置に使用されるメッシュ構造体の概略斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源装置に使用されるメッシュ構造体のトリミング部に形成された貫通孔を示した一部拡大斜視図である。
【図4】図4(A)及び図4(B)は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源装置に使用されるメッシュ構造体のトリミング部の厚さ方向の一部拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源装置の分解斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源装置において、電界放出型電子源アレイの一例を示した断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の部分拡大断面図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源装置おけるシミュレーション結果を示した図である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源装置おけるシミュレーション結果を示した図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源装置において、電界放出型電子源アレイの別の例を示した断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態1に係る別のメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の断面図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態2に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の断面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態2に係る電界放出型電子源装置に使用されるメッシュ構造体のトリミング部の厚さ方向の一部拡大断面図である。
【図14】図14(A)及び図14(B)は、本発明の実施の形態2に係る電界放出型電子源装置に使用されるメッシュ構造体のトリミング部の一部拡大斜視図である。
【図15】図15(A)〜図15(D)は、本発明の実施の形態2に係る電界放出型電子源装置に使用されるメッシュ構造体の製造方法の一工程を示した断面図である。
【図16】図16(A)〜図16(C)は、本発明の実施の形態2に係る電界放出型電子源装置に使用されるメッシュ構造体の貫通孔の電界放出型電子源アレイ側の開口周辺の形状の例を示した拡大断面図である。
【図17】図17(A)及び図17(B)は、本発明の実施の形態2に係る電界放出型電子源装置おけるシミュレーション結果を示した図である。
【図18】図18(A)及び図18(B)は、本発明の実施の形態2に係る電界放出型電子源装置おけるシミュレーション結果を示した図である。
【図19】図19は、本発明の実施の形態3に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の断面図である。
【図20】図20は、本発明の実施の形態3に係る電界放出型電子源装置に使用されるメッシュ構造体のトリミング部の厚さ方向の一部拡大断面図である。
【図21】図21は、本発明の実施の形態4に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の断面図である。
【図22】図22は、本発明の実施の形態6に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の部分拡大断面図である。
【図23】図23は、本発明の実施の形態6に係る別のメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の部分拡大断面図である。
【図24】図24は、本発明の実施の形態7に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の部分拡大断面図である。
【図25】図25は、本発明の実施の形態8に係るメッシュ構造体、及びメッシュ構造体を含む電界放出型電子源装置の断面図である。
【図26】図26は、従来の電界放出型電子源アレイを用いた電界放出型電子源装置の断面図である。
【図27】図27は、従来の別の電界放出型電子源アレイを用いた電界放出型電子源装置の断面図である。
【符号の説明】
【0352】
1,101,115 前面パネル
2,102,113 陽極電極
3,103 ターゲット
4,24,104,116 側面外周器
5,105,117 背面パネル
6,106 半導体基板
7,109 封着材料
7a フリットガラス真空封着部
7b,119 インジウム真空封着部
8,20,23,25,54 メッシュ構造体
8a スペーサー部
9,66 トリミング部
10 電界放出型電子源アレイ
11a,11b,11c 電子ビーム
12,128 ゲート電極
13,17,21,126 絶縁層
14,125 エミッタ電極層
15,107,124 冷陰極素子(エミッタ)
16 第2電極
18 スペーサー部
19 第1電極
22 第3電極
26 フォーカス電極
55 第1電極層
57 第2電極層
65 メッシュ構造体
43 電圧供給ピン
45 シールド電極層
50 ゲッター
51 第1空間
52 第2空間
56 抵抗層
59 CNT
60 集束電極
61 ゲート電極
90 貫通孔
91 開口
92 電子ビーム通過行路
108 周辺素子(ゲート電極及び絶縁層)
111 入射光
112 光電変換膜
114 光電変換ターゲット
118 真空容器
120 シールドグリッド電極
121 段差
122 電圧供給端子
123 電圧供給用リード
129 電界放出型電子源アレイ
133 フリットガラス封着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次元的に形成された複数の貫通孔を有し、前記貫通孔を、光、電子、原子、イオン、又は分子が一方の面から他方の面に通過可能であるメッシュ構造体であって、
前記メッシュ構造体は、シリコンを含む材料からなり、前記シリコンを含む材料が結晶構造を有するシリコンを含むことを特徴とするメッシュ構造体。
【請求項2】
前記複数の貫通孔を離隔する隔壁の厚みは、前記貫通孔の開口径よりも小さい請求項1に記載のメッシュ構造体。
【請求項3】
電界放出型電子源アレイと、前記電界放出型電子源アレイから放出された電子ビームにより所定の動作を行なうターゲットと、前記電界放出型電子源アレイと前記ターゲットとの間に配置され、前記電界放出型電子源アレイから放出された前記電子ビームが通過する複数の貫通孔が形成されたメッシュ構造体とを有する電界放出型電子源装置であって、
前記複数の貫通孔のそれぞれは、前記電界放出型電子源アレイ側の開口と、前記開口から連続した電子ビーム通過行路とを有し、
前記メッシュ構造体は、N型又はP型にドープされたシリコンを含む材料からなることを特徴とする電界放出型電子源装置。
【請求項4】
前記メッシュ構造体は、N型又はP型にドープされたシリコン層と、SiO2からなる絶縁層とを含む請求項3に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項5】
前記メッシュ構造体の、前記電界放出型電子源アレイ側の表面及び前記ターゲット側の表面のうちの少なくとも一方に、導電性の薄膜が形成されている請求項3に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項6】
前記メッシュ構造体は、前記メッシュ構造体の大部分をなす基層と、前記基層の表面に成膜され、前記基層よりも低抵抗の薄膜層とを有する請求項3に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項7】
前記メッシュ構造体は、少なくとも2つの電極層と、前記少なくとも2つの電極層の間に設けられた少なくとも1つの中間層とを有する請求項3に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの中間層は絶縁層であり、前記少なくとも2つの電極層は、前記電子ビーム通過行路に少なくとも2つの電位空間を形成する請求項7に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項9】
前記少なくとも2つの電極層のうちの1つは、前記少なくとも1つの中間層に対して前記電界放出型電子源アレイ側に配置されて、第1電圧が印加される第1電極層であり、他の1つは、前記少なくとも1つの中間層に対して前記ターゲット側に配置されて、第2電圧が印加される第2電極層であり、
前記少なくとも1つの中間層は、前記第1及び第2電極層よりも高い抵抗値を有する高抵抗層である請求項7に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項10】
前記少なくとも2つの電極層のうち、前記少なくとも1つの中間層に対して前記電界放出型電子源アレイ側に配置された第1電極層に印加される電圧をV1、前記少なくとも1つの中間層に対して前記ターゲット側に配置された第2電極層に印加される電圧をV2としたとき、V1>V2を満足する請求項7に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項11】
前記少なくとも2つの電極層のうち、前記少なくとも1つの中間層に対して前記電界放出型電子源アレイ側に配置された電極層を第1電極層、前記少なくとも1つの中間層に対して前記ターゲット側に配置された電極層を第2電極層とし、前記電子ビーム通過行路の長さのうち、前記第1電極層が占める長さをT1、前記第2電極層が占める長さをT2としたとき、T1<<T2を満足する請求項7に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項12】
更に、前記電界放出型電子源アレイが形成された基板を有し、
前記メッシュ構造体は、前記電界放出型電子源アレイと前記複数の貫通孔の前記開口とを離間させるスペーサー部を一体に備え、
前記メッシュ構造体は前記スペーサー部を介して前記基板上に設置されている請求項3に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項13】
前記スペーサー部と前記基板とは導電性材料を用いて接合されており、前記導電性材料を介して前記基板から前記メッシュ構造体の少なくとも一部に給電されている請求項12に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項14】
前記少なくとも2つの電極層のうち、前記少なくとも1つの中間層に対して前記電界放出型電子源アレイ側に配置された第1電極層に印加される電圧をV1、前記少なくとも1つの中間層に対して前記ターゲット側に配置された第2電極層に印加される電圧をV2としたとき、前記電界放出型電子源装置を駆動中に、前記電圧V1及び前記電圧V2のうちの一方又は両方を変化させることにより、前記メッシュ構造体の前記複数の貫通孔を通過して前記ターゲットへ向かう電子ビームの量を変化させる請求項7に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項15】
前記電子ビーム通過行路の延設方向に垂直な方向に沿った断面形状は、円形、楕円形、いずれの内角も90度より大きな多角形、または隣り合う辺が円弧で接続された多角形である請求項3に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項16】
前記電界放出型電子源アレイは、それぞれが電子を放出する複数の電子源を備えたセルを複数有し、
前記複数の開口と前記複数のセルとが垂直方向に一対一に対応するように前記電界放出型電子源アレイと前記メッシュ構造体とが配置されており、
前記セルから放出された電子ビームは、対応する前記開口に入り、前記電子ビーム通過行路を通過して、前記ターゲットに入射する請求項3に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項17】
電界放出型電子源アレイと前記メッシュ構造体との間に、前記電界放出型電子源アレイから放出された前記電子ビームを予備集束する予備集束電極を更に有する請求項3に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項18】
電界放出型電子源アレイと、前記電界放出型電子源アレイから放出された電子ビームにより所定の動作を行なうターゲットと、前記電界放出型電子源アレイと前記ターゲットとの間に配置され、前記電界放出型電子源アレイから放出された前記電子ビームが通過する複数の貫通孔が形成されたメッシュ構造体とを有する電界放出型電子源装置の駆動方法であって、
前記複数の貫通孔のそれぞれは、前記電界放出型電子源アレイ側の開口と、前記開口から連続した電子ビーム通過行路とを有し、
前記メッシュ構造体は、N型又はP型にドープされたシリコンを含む材料からなり、
前記メッシュ構造体は、少なくとも2つの電極層と、前記少なくとも2つの電極層の間に設けられた少なくとも1つの中間層とを有し、
前記少なくとも2つの電極層のうち、前記少なくとも1つの中間層に対して前記電界放出型電子源アレイ側に配置された第1電極層に印加される電圧をV1、前記少なくとも1つの中間層に対して前記ターゲット側に配置された第2電極層に印加される電圧をV2としたとき、前記電界放出型電子源装置を駆動中に、前記電圧V1及び前記電圧V2のうちの一方又は両方を変化させることにより、前記メッシュ構造体の前記複数の貫通孔を通過して前記ターゲットへ向かう電子ビームの量を変化させることを特徴とする電界放出型電子源装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−250532(P2007−250532A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33537(P2007−33537)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(503217783)MT映像ディスプレイ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】