説明

メンテナンス装置及び流体噴射装置

【課題】液体噴射処理を中断することなく線状部材の交換を行うことができるメンテナンス装置及び該メンテナンス装置を備えた流体噴射装置を提供する。
【解決手段】線状部材29に対してインクを噴射する複数のノズルが前後方向に沿って延びるノズル列Nを形成するように設けられた流体噴射ヘッド24を備えたプリンターのメンテナンス装置15であって、送り方向Xに沿って線状部材29を流体噴射ヘッド24と対応する敷設範囲に張設する一対の保持部と、敷設範囲に張設された線状部材29を送り方向Xにおける前側から後側に向けて移動させる駆動ローラー36,56と、敷設範囲に送られる前の線状部材29を巻着した状態で保持するリール43と、リール43から巻き解かれた線状部材29をたるみを持たせた滞留状態で収容する収容容器38とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス装置及び該メンテナンス装置を備えた流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体に対して流体を噴射する流体噴射装置として、インクジェット式プリンターが広く知られている。このプリンターは、流体噴射ヘッドに形成されたノズルからインク(流体)を噴射することにより媒体に印刷処理を施すようになっている。こうしたプリンターにおいては、ノズルの目詰まりを予防するため、印刷処理として媒体にインクを噴射するのとは別に、ノズル内のインクを強制的に排出するためにインクを噴射するフラッシング動作を行うプリンターがあった(例えば、特許文献1)。
【0003】
そして、特許文献1においては、媒体(被吐出媒体)を保持するためのベルトにシート状の吸収部材を設け、媒体を搬送する合間に、吸収部材に対してフラッシング動作を行うようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−119284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のプリンターでは、吸収部材が媒体のサイズに合わせて搬送ベルト上に複数配置される態様となっているため、媒体のサイズに制約が生じてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、吸収部材として線状部材を採用し、流体噴射ヘッドと搬送ベルトとの間に張設された線状部材でフラッシング動作に伴って噴射されたインクを受容することが提案されている。線状部材であれば軽量でスペースもとらないので、フラッシング動作時に流体噴射ヘッドの下方に移動させてインクを受容し、印刷処理時にはインクを受容しない位置に退避させることも可能になるためである。
【0007】
しかし、線状部材は従来のシート状の吸収部材に比べて受容できるインクの量が少ないため、例えばフラッシング動作10回毎など、従来の吸収部材よりも頻繁に交換を行う必要がある。そして、線状部材を交換する都度印刷処理を中断すると、処理効率が低下してしまうという課題がある。
【0008】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体噴射処理を中断することなく線状部材の交換を行うことができるメンテナンス装置及び該メンテナンス装置を備えた流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のメンテナンス装置は、線状部材に対して流体を噴射する複数のノズルが所定方向に沿って延びるノズル列を形成するように設けられた流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置のメンテナンス装置であって、前記線状部材を前記ノズル列方向に沿って前記流体噴射ヘッドと対応する敷設範囲に張設する一対の保持部と、前記敷設範囲に張設された前記線状部材を前記ノズル列方向における一方側から他方側に向けて移動させる移動機構と、前記敷設範囲に送られる前の前記線状部材を巻着した状態で保持するリールと、前記一方側に設けられた前記保持部と前記リールとの間で、前記リールから巻き解かれた前記線状部材をたるみを持たせた滞留状態で収容する収容容器とを備える。
【0010】
この構成によれば、使用済みの線状部材を移動機構によってノズル列方向における一方側から他方側に向けて順送りすることで、新しい線状部材を連続的に敷設範囲に移動させることができる。そして、送り方向上流側となる一方側に設けられた保持部とリールとの間には、リールから巻き解かれた線状部材を一時的に収容する収容容器が設けられているので、収容容器内に収容された線状部材を送り出している間に、リールの交換を行うことができる。ここで、線状部材が全て巻き解かれた空のリールに新たな線状部材を巻き直そうとすると、巻き順からすると後端側となる外側の端部から巻き解くことになるため、線状部材の順送りを停止して巻き直さざるを得ない。その点、線状部材を収容容器にたるみを持たせた滞留状態で収容する場合には、先に収容した先端側から順次送り出すことができるので、液体噴射処理を中断することなく線状部材の交換を行うことができる。
【0011】
本発明のメンテナンス装置において、前記リールと前記収容容器との間には、前記線状部材を切断する切断手段と、前記収容容器内に収容された前記線状部材の後端と前記リールから巻き解かれた前記線状部材の先端とを接続する接続手段とが設けられる。
【0012】
この構成によれば、切断手段がリールと収容容器との間で線状部材を切断することで、リールの交換を行うことができる。また、収容容器に収容された線状部材が残り少なくなった段階で、収容容器に収容された線状部材の後端とリールから巻き解かれた線状部材の先端とを接続手段によって接続することで、収容容器から線状部材を連続的に送り出すことができる。
【0013】
本発明のメンテナンス装置において、前記収容容器は1つの前記リールに対して複数設けられ、前記リールは、前記収容容器に対して相対移動可能に構成される。
この構成によれば、収容容器は1つのリールに対して複数設けられるので、複数本の線状部材が張設される場合にも、大型のリールから複数の小型の収容容器に対して線状部材を供給することで、リールの設置スペースと交換頻度を抑制することができる。そして、リールは収容容器に対して相対移動可能に構成されるので、一の収容容器に線状部材を供給した後に他の収容容器が配置された位置まで移動することができる。
【0014】
本発明のメンテナンス装置において、前記収容容器は、前記リールから巻き解かれた前記線状部材を導入するための上流側開口と、収容した前記線状部材を導出するための下流側開口と、前記上流側開口から前記下流側開口に向かって先細りとなる形状の収容室とを有する。
【0015】
この構成によれば、収容室は上流側開口から下流側開口に向かって先細りとなっているので、収容室内で線状部材が滞留して生じる絡みやもつれを抑制できる。
本発明のメンテナンス装置は、前記下流側開口を通じて前記収容室内を吸引する吸引機構をさらに備える。
【0016】
この構成によれば、吸引機構が下流側開口を通じて収容室内を吸引することにより、導入された線状部材を下流側開口に向けて移動させるとともに、線状部材の先端を下流側開口から導出させることができる。
【0017】
本発明のメンテナンス装置は、前記収容容器に収容された前記線状部材の残量を検知する残量検知手段をさらに備える。
この構成によれば、残量検知手段で収容容器に収容された線状部材の残量を検知することができるので、残量が少なくなった場合にはリールから収容容器に線状部材を供給することで、線状部材を連続的に送り出すことができる。
【0018】
本発明のメンテナンス装置は、前記敷設範囲から前記他方側に送られた使用済みの前記線状部材をたるみを持たせた状態で収容する回収容器をさらに備える。
この構成によれば、敷設範囲から他方側に送られた使用済みの線状部材を回収容器内に収容することができるので、流体が付着した線状部材を別のリールに巻き取る手間が省ける。また、線状部材がリールに巻着されていると、巻着時の径によって送り出す長さや巻着する際のトルクが変化してしまい、送り量や張力に誤差が生じる虞がある。その点、張設される線状部材の送り方向上流側となる一方側を収容容器に、送り方向下流側となる他方側を回収容器に、それぞれたるみを持たせた状態で収容することで、送り量や張力の変動を抑制することができる。
【0019】
本発明のメンテナンス装置において、前記回収容器は着脱可能に装着されるとともに、前記他方側に設けられた前記保持部と前記回収容器との間には、前記線状部材を切断するカッターが設けられている。
【0020】
この構成によれば、他方側に設けられた保持部と回収容器との間にはカッターが設けられているので、回収容器が線状部材で満杯になった場合には線状部材を切断して回収容器を脱着し、速やかに交換を行うことができる。
【0021】
本発明のメンテナンス装置において、前記回収容器は、前記敷設範囲と対向する位置に設けられる導入孔と、通気孔と、該通気孔を被覆するメッシュ状の通気部材とを有し、 前記通気孔を通じて前記回収容器内を吸引する吸引ファンをさらに備える。
【0022】
この構成によれば、吸引ファンを駆動すると通気孔を通じて回収容器内が吸引されるので、線状部材を導入孔側から通気孔側に移動させて隙間なく収容することができる。また、回収容器は通気孔を被覆するメッシュ状の通気部材を有するので、収容した線状部材を回収容器内に保持しつつ、回収容器内を吸気することができる。また、導入孔は敷設範囲と対向する位置に設けられるので、吸引ファンによって装置内に浮遊するミスト等の浮遊物質を装置外に排出することができる。
【0023】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置は、媒体に対して流体を噴射する複数のノズルが所定方向に沿って延びるノズル列を形成するように設けられた流体噴射ヘッドと、上記メンテナンス装置とを備える。
【0024】
この構成によれば、上記メンテナンス装置と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態におけるインクジェット式プリンター概略構成を示す正面図。
【図2】メンテナンス装置の配置を説明するための側面図。
【図3】メンテナンス装置の構成を示す平面図。
【図4】メンテナンス装置の作用を説明するための平面図。
【図5】供給機構の構成を説明するための断面図。
【図6】収容容器の構成を示す断面図。
【図7】供給機構の作用を説明するための平面図。
【図8】回収容器の構成を示す断面図。
【図9】メンテナンス装置の電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を流体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という)に具体化した一実施形態を図1〜図9を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は各図中に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0027】
図1に示すように、プリンター11は、媒体としての用紙Pを搬送する搬送ユニット12と、用紙Pに印刷処理を施すヘッドユニット13と、ヘッドユニット13に流体としてのインクを供給するインク供給ユニット14と、メンテナンス装置15とを備えている。
【0028】
搬送ユニット12は、一対の給紙ローラー16と、無端状の搬送ベルト17と、駆動ローラー18と、従動ローラー19と、駆動ローラー18に接続された駆動モーター20と、一対の排紙ローラー21とを備えている。搬送ベルト17は、駆動ローラー18及び従動ローラー19に巻き掛けられ、駆動モーター20の駆動によって駆動ローラー18が図1における時計回り方向に回転すると周回移動する。そして、給紙ローラー16、搬送ベルト17及び排紙ローラー21によって用紙Pを搬送方向Yに沿って搬送するようになっている。また、搬送方向Yにおいて駆動ローラー18と従動ローラー19との間には用紙Pの支持台である矩形板状のプラテン22が設けられている。
【0029】
ヘッドユニット13は、支持部材23と、支持部材23に支持された流体噴射ヘッド24とを備えている。流体噴射ヘッド24は、図1及び図2においては簡略化のために1つのみ図示しているが、図3に示すように前後方向及び左右方向に沿って千鳥状となる配置で複数設けられている。各流体噴射ヘッド24には、搬送ベルト17を介してプラテン22に支持された用紙Pに対してインクを噴射するためのノズル25が前後方向及び左右方向に沿って複数設けられている。図2に示すように、用紙Pの幅方向(前後方向)に沿って並ぶノズル25は、ノズル列Nを構成する。そして、図1に示すように、流体噴射ヘッド24には左右方向に沿って複数列のノズル列Nが形成されている。
【0030】
図1に示すように、インク供給ユニット14は、インクを収容したインクタンク26と、インクタンク26から流体噴射ヘッド24にインクを供給するためのインク供給管27と、インクタンク26からインクを加圧供給するためのポンプ28とを備えている。インクタンク26、インク供給管27及びポンプ28はインク色等に対応して複数設けられているが、図1では簡略化のために1つずつ図示している。そして、流体噴射ヘッド24に加圧供給されたインクを流体噴射ヘッド24のノズル25から搬送ベルト17上の用紙Pに噴射することで、印刷処理が実行されるようになっている。
【0031】
メンテナンス装置15は、図2に示すように、流体噴射ヘッド24と対応する敷設範囲にノズル列方向となる前後方向に沿って張設される線状部材29と、線状部材29を張設するための一対の保持機構30と、供給機構31とを備えている。保持機構30は対をなす保持機構30A及び保持機構30Bから構成される。また、線状部材29は、上下方向Zにおいては用紙P(用紙Pがないときは搬送ベルト17)と流体噴射ヘッド24との間に配置される。
【0032】
プリンター11は、メンテナンス処理の一つとしてノズル25内のインクを強制的に排出するフラッシング動作を行う。フラッシング動作とは、ノズル25の目詰まりの予防するために、印刷処理の合間などにインクを噴射することをいい、線状部材29はフラッシング動作に伴って噴射されたインクを受容するために設けられる。そのため、線状部材29の径(太さ)は、流体噴射ヘッド24と用紙Pとの隙間(ペーパーギャップ)よりも小さく、ノズル25の口径よりも大きくなるように設定される。例えば、ペーパーギャップが約2mm、ノズル25の口径が約0.02mmである場合には、線状部材29の直径を0.2〜1mm(ノズル25の口径の10〜50倍)程度に設定するのが好ましい。線状部材29の直径をノズル25の口径の10倍以上に設定することで、部品の製造誤差やノズル25と線状部材29との位置の誤差をカバーしてインクを補足するとともに、インクの受容量を確保することができる。また、線状部材29の直径をノズル25の口径の50倍以下に設定することで、流体噴射ヘッド24と用紙Pとの間となる空間域を通過させることができる。
【0033】
なお、線状部材29は、例えば絹、綿、親水性コートを施したポリアミド系合成繊維(例えばナイロン)、アラミド、ポリエステル、超高分子量ポリエチレン、ポリアリレート、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、商品名:ザイロン)等の繊維、ステンレスなどの金属、あるいはこれらの複数を含む複合繊維から形成することができる。こうした繊維は、素材自体にインクを吸収する性質がない場合であっても、複数本撚り合わされたり束ねられたりすることで、繊維間や繊維束間に生じる毛細管力によってインクを吸収することができる。さらに、線状部材29はインクを繊維間に吸収するだけではなく、表面張力や静電気力によってインクを吸着するものであってもよい。
【0034】
また、フラッシング動作が所定回数(例えば10回程度)実行されて線状部材29がインクを吸収すると、敷設範囲の線状部材29を入れ替えるために、保持機構30が一方側(前側)から他方側(後側)に向かう送り方向Xに沿って線状部材29を移動させるようになっている。なお、線状部材29を送るタイミングは、線状部材29が保持可能なインクの量に応じて決定される。そして、線状部材29が保持可能なインクの量は、線状部材29の材質、構造及び太さなどを変化させることで調整可能である。
【0035】
次に、メンテナンス装置15の構成について詳述する。
図3に示すように、保持機構30Aはモーター32と、左右方向に沿って延びるリードスクリュー32aと、リードスクリュー32aに支持された移動テーブル34とを備えている。そして、モーター32の駆動に伴ってリードスクリュー32aが回転すると、移動テーブル34が左右方向に移動するようになっている。一方、保持機構30Bはモーター33と、左右方向に沿って延びるリードスクリュー33aと、リードスクリュー33aに支持された移動テーブル35とを備えている。そして、モーター33の駆動に伴ってリードスクリュー33aが回転すると、移動テーブル35が左右方向に移動するようになっている。
【0036】
保持機構30Aのモーター32と保持機構30Bのモーター33とは同期して駆動され、フラッシング動作が実行される際には、図4に示すように線状部材29がノズル25の下方に位置するように移動テーブル34,35が左右方向に沿って移動される。一方、印刷処理が実行される際には、図3に示すように線状部材29がノズル25の下方から退避するように移動テーブル34,35が左右方向に沿って移動される。
【0037】
保持機構30Aの移動テーブル34上には、駆動ローラー36と、ピンチローラー37と、収容容器38とが設けられている。ピンチローラー37は図示しない付勢部材によって駆動ローラー36に近接する方向に付勢されている。本実施形態のプリンター11においては、ノズル列Nが2列ずつフラッシング動作を行うのに合わせて、線状部材29が左右方向に2本並ぶように張設されている。そのため、駆動ローラー36、ピンチローラー37及び収容容器38は各線状部材29用に2つずつ設けられている。また、収容容器38は左右方向に並設される態様で配置されているとともに、収容容器38内には所定量の線状部材29がたるみを持たせた滞留状態で収容されるようになっている。
【0038】
保持機構30Aの前側には、各収容容器38内に線状部材29を供給するための供給機構31が設けられている。供給機構31は、モーター41と、左右方向に沿って延びるリードスクリュー41aと、リードスクリュー41aに支持された移動テーブル42とを備えている。そして、モーター41の駆動に伴ってリードスクリュー41aが回転すると、移動テーブル42が左右方向に移動するようになっている。
【0039】
移動テーブル42上には、敷設範囲に送られる前の線状部材29を巻着した状態で保持する大型のリール43と、一対の送りローラー44と、切断手段及び接続手段を構成する溶融部材45とが配置されている。リール43は移動テーブル42に着脱可能に装着される。また、溶融部材45は線状部材29を溶断可能な溶断モードと、線状部材29を溶着可能な溶着モードとを切り換えることにより、線状部材29の切断と接続が可能となっている。
【0040】
また、図5に示すように、移動テーブル34には吸引機構を構成する吸引ファン46及び導管47が支持されている。そして、保持機構30Aを構成する収容容器38は、支持部材48を介して移動テーブル34に支持されているとともに、下端側には供給機構31を構成する吸引ファン46に接続された導管47が着脱可能に装着されるようになっている。
【0041】
線状部材29はリール43の回転に伴ってリール43から巻き解かれ、送りローラー44の回転に伴って収容容器38内に収容された後に、敷設範囲に送られる。ここで、リール43に巻着可能な線状部材29の長さは、各収容容器38に収容可能な線状部材29の長さの合計のよりもかなり長く、複数回にわたって各収容容器38に線状部材29を供給するようになっている。そして、収容容器38は敷設範囲に送られる線状部材29を大型のリール43から巻き解いた状態で一時的に滞留させるためのバッファーとして機能する。
【0042】
図6に示すように、収容容器38は、リール43から巻き解かれた線状部材29を導入するための上流側開口49と、収容した線状部材29を導出するための下流側開口50と、上流側開口49から下流側開口50に向かって先細りとなる形状の収容室51と、下流側開口50を被覆するメッシュ状の通気部材52とを有する。なお、上流側開口49は下流側開口50よりも口径が小さく形成されるとともに、上流側開口49は重力方向における収容室51の上端側に、下流側開口50は重力方向における収容室51の下端側に設けられている。
【0043】
送りローラー44の回転に伴って線状部材29が上流側開口49を通じて収容室51内に導入される際には、導管47の一端側が下流側開口50に接続されて吸引ファン46が駆動される。なお、導管47の収容容器38との接続部付近には、線状部材29を送り出すための導出口53が設けられている。
【0044】
そして、吸引ファン46が下流側開口50を通じて収容室51内を吸引すると、収容室51内に導入された線状部材29は重力と吸引ファン46の吸引力によって、下流側開口50側となる下方から滞留していく。なお、空の収容室51内に線状部材29が導入される際には、吸引ファン46の吸引力によって線状部材29の先端側が下流側開口50から吸い出される。
【0045】
収容容器38内の線状部材29が所定量に達すると、送りローラー44と収容容器38との間に配置された溶融部材45が線状部材29を切断(溶断)する。また、右側の収容容器38に続いて左側の収容容器38に線状部材29を供給する際には、図7に示すように移動テーブル42が移動テーブル34に対して相対移動を行う。そして、溶融部材45が収容容器38内に収容された線状部材29の後端とリール43から巻き解かれた線状部材29の先端とを接続(溶着)する。
【0046】
このように、収容容器38は1つのリール43に対して複数設けられ、リール43が収容容器38を支持する移動テーブル34に対して相対移動しつつ、各収容容器38に線状部材29を供給する。また、リール43に保持された線状部材29がなくなると、収容容器38に収容された線状部材29を敷設範囲に送っている間に、リール43の交換を行う。
【0047】
図3に示すように、保持機構30Bは、移動テーブル35上に配置された駆動ローラー56と、ピンチローラー57と、一対の送りローラー58と、カッター59と、回収容器60と、吸引ファン61とを備えている。そして、ピンチローラー57は図示しない付勢部材によって駆動ローラー56に近接する方向に付勢されている。なお、駆動ローラー56及びピンチローラー57は2本の線状部材29に対応して2つずつ設けられているが、送りローラー58、カッター59、回収容器60及び吸引ファン61は各1つ設けられている。
【0048】
本実施形態において、駆動ローラー36,56は移動機構を構成する。また、駆動ローラー36及びピンチローラー37は、送り方向Xにおいて敷設範囲の上流側に配置された一方側の保持部を構成し、駆動ローラー56及びピンチローラー57は、一方側の保持部と対をなすように送り方向Xにおいて敷設範囲の下流側に配置された他方側の保持部を構成する。
【0049】
収容容器38内に収容された線状部材29は、導出口53から収容室51外に引き出されてピンチローラー37及び駆動ローラー36に巻き掛けられ、さらに送り方向Xに沿う敷設範囲の下流側において、駆動ローラー56及びピンチローラー57に巻き掛けられる。そして、ピンチローラー37,57の付勢力と駆動ローラー36,56の回転によって、敷設範囲にある線状部材29に張力が付与される。また、駆動ローラー36,56の回転に伴って、敷設範囲に張設された線状部材29は前後方向における一方側(前側)から他方側(後側)に向けて順送りされるように移動する。
【0050】
駆動ローラー36,56の回転時には、送りローラー58及び吸引ファン61も連動して駆動される。そして、敷設範囲から他方側に送られた使用済みの各線状部材29は対をなす送りローラー58に狭持され、送りローラー58の回転に伴って回収容器60内にたるみを持たせた状態で収容される。
【0051】
図8に示すように、回収容器60は、線状部材29を導入するための導入孔62と、導入孔62と対向する位置に設けられた通気孔63と、導入孔62及び通気孔63によって大気に連通する収容室64と、通気孔63を被覆するメッシュ状の通気部材65とを有している。収容室64は送り方向Xにおける上流側となる導入孔62側が円筒形状に形成されるとともに、送り方向Xにおける下流側となる通気孔63側が先細りとなるテーパ形状に形成される。
【0052】
導入孔62は敷設範囲と対向する位置に設けられるとともに、通気孔63よりも径が小さく形成される。そして、送りローラー58とともに吸引ファン61が駆動されると、吸引ファン61が通気孔63を通じて収容室64内を吸引するので、使用済みの線状部材29が導入孔62から収容室64内に導入され、通気孔63側に引き寄せられる。
【0053】
また、回収容器60は移動テーブル35に対して着脱可能に装着される。そして、収容室64内が使用済みの線状部材29で満杯になると、送りローラー58と回収容器60との間に配置されたカッター59が線状部材29を切断する。その後、満杯になった回収容器60を移動テーブル35から脱着するとともに、空の回収容器60を装着する。
【0054】
次に、メンテナンス装置15の電気的構成と作用について説明する。
図9に示すように、メンテナンス装置15は残量検知手段を構成する制御部100を有する。制御部100は、CPU101と記憶部102とを備える。そして、CPU101は、モーター32,33,41、吸引ファン46,61、リール43、駆動ローラー36,56、送りローラー44,58、溶融部材45及びカッター59の駆動制御を行う。
【0055】
フラッシング動作を行う際には、印刷処理の合間となるタイミングで、CPU101が保持機構30Aのモーター32及び保持機構30Bの33を同時に正方向に駆動し、線状部材29をノズル列Nの下方に配置する。そしてノズル25から噴射されたインクが線状部材29に受容されると、モーター32,33を同時に逆方向に駆動し、線状部材29をノズル列Nの下方から退避させる。なお、他のノズル列Nからもフラッシング動作を行う場合には、モーター32,33の正方向への駆動と逆回転への駆動とを、駆動量を変化させつつ繰り返す。
【0056】
複数回のフラッシング動作が行われると、CPU101は敷設範囲の線状部材29を送り方向Xに沿って移動させるべく、保持機構30Aの駆動ローラー36及び保持機構30Bの駆動ローラー56を同時に回転させる。なお、CPU101は、保持機構30のモーター32,33の駆動状態から線状部材29を移動させるタイミングを決定する。すなわち、例えばモーター32,33が正逆両方向に交互に10回駆動されると、10回フラッシング動作が実行されたと判断されるので、モーター32,33が逆方向に10回駆動される毎に駆動ローラー36,56を回転させ、敷設範囲の線状部材29を交換する。なお、線状部材29を移動は印刷処理を実行している間に行うのが好ましい。また、敷設範囲の線状部材29を一度に入れ替えるのではなく、複数回のフラッシング動作の合間に分けて少しずつ入れ替えるようにしてもよい。
【0057】
また、CPU101は収容容器38に収容された線状部材29の残量を所定の時間間隔で検知し、残量が規定値を下回ると、供給機構31から線状部材29の供給を行う。具体的には、CPU101は各収容容器38に収容された線状部材29の長さを供給機構31に設けられた送りローラー44の回転量から検知して、これを現在の収容量(残量)として記憶部102に記憶させる。また、CPU101は、収容容器38から敷設範囲に送り出された線状部材29の長さを、保持機構30Aに設けられた駆動ローラー36の回転量に基づいて把握する。そして、CPU101は、記憶部102から読み出した残量から送り出された線状部材29の長さを差し引いた値を、新しい残量として記憶部102に記憶させる。
【0058】
収容容器38の残量が規定量を下回ると、CPU101は供給機構31の移動テーブル42を移動させて、リール43から線状部材29を供給する。その際、CPU101は供給機構31に設けられたモーター41の各回転方向における駆動量から移動テーブル42の位置を把握し、どの収容容器38に供給機構31が接続されているかを判断する。また、CPU101はリール43及び送りローラー44を回転させつつ、送りローラー44の回転数から収容容器38の残量検知を行う。すなわち、記憶部102から読み出した収容量に、送りローラー44によって収容容器38内に導入された線状部材29の長さを加算して、現在の収容量として記憶部102に記憶させる。そして、線状部材29の収容量が規定量に達すると、リール43及び送りローラー44の回転を停止させて線状部材29の供給を終了するとともに、溶融部材45を溶断モードで駆動して線状部材29を切断する。
【0059】
また、一の収容容器38への線状部材29の供給を終了した後に他の収容容器38へ線状部材29を供給する場合には、CPU101が供給機構31のモーター41を駆動して移動テーブル42を他の収容容器38と対応する位置に移動させる。そして、他の収容容器38に収容された線状部材29の後端とリール43から巻き解かれた線状部材29の先端とを接続すべく、溶融部材45を溶着モードで駆動して、線状部材29を溶着する。
【0060】
さらに、CPU101は、回収容器60における線状部材29の収容量を所定の時間間隔で検知し、収容量が規定値を上回るとカッター59を駆動して線状部材29を切断する。その際、CPU101は、保持機構30Bに設けられた送りローラー58の回転量から回収容器60に収容された線状部材29の長さ(収容量)を算出し、記憶部102に記憶させる。なお、回収容器60に収容された線状部材29の収容量は、駆動ローラー36又は駆動ローラー56の駆動量から判断するようにしてもよい。
【0061】
また、CPU101は、カッター59が駆動されると、回収容器60の交換が行われたと判断して、記憶部102に記憶された回収容器60の収容量の値をリセットする。なお、回収容器60の着脱を検知するセンサーを設け、このセンサーの出力値に基づいて回収容器60の収容量の値をリセットするようにしてもよい。
【0062】
このように、メンテナンス装置15においては、線状部材29は敷設範囲に張設された状態で送り方向Xに沿って順送りとなるように移動されるので、印刷処理やフラッシング動作を停止することなく交換が行われる。また、線状部材29は大型のリール43から直接巻き出されるのではなく、バッファーとして設けた収容容器38に一時滞留させつつ敷設範囲に送り出される。そのため、収容容器38から線状部材29を送り出しながら収容容器38に線状部材29を供給したり、収容容器38内の線状部材29を送り出している間にリール43を交換したりすることができる。これにより、印刷処理やフラッシング動作を線状部材29の交換や補給のために中断することないので、長時間にわたって処理を継続し、処理効率を向上させることが可能になる。
【0063】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)インクを受容した使用済みの線状部材29を駆動ローラー36,56によって送り方向Xにおける一方側から他方側に向けて順送りすることで、新しい線状部材29を連続的に敷設範囲に移動させることができる。そして、ピンチローラー37とリール43との間には、リール43から巻き解かれた線状部材29を一時的に収容する収容容器38が設けられているので、収容容器38内に収容された線状部材29を送り出している間に、リール43の交換を行うことができる。
【0064】
ここで、線状部材29が全て巻き解かれた空のリール43に新たな線状部材29を巻き直そうとすると、巻き順からすると後端側となる外側の端部から巻き解くことになるため、線状部材29の順送りを停止して巻き直さざるを得ない。その点、線状部材29を収容容器38にたるみを持たせた滞留状態で収容する場合には、先に収容した先端側から順次送り出すことができるので、インク噴射処理(印刷処理やフラッシング動作)を中断することなく線状部材29の交換を行うことができる。
【0065】
(2)溶融部材45がリール43と収容容器38との間で線状部材29を切断することで、リール43の交換を行うことができる。また、収容容器38に収容された線状部材29が残り少なくなった段階で、収容容器38に収容された線状部材29の後端とリール43から巻き解かれた線状部材29の先端とを溶融部材45で接続することで、収容容器38から線状部材29を連続的に送り出すことができる。
【0066】
(3)収容容器38は1つのリール43に対して複数設けられるので、複数本の線状部材29が張設される場合にも、大型のリール43から複数の小型の収容容器38に対して線状部材29を供給することで、リール43の設置スペースと交換頻度を抑制することができる。そして、リール43は収容容器38に対して相対移動可能に構成されるので、一の収容容器38に線状部材29を供給した後に他の収容容器38が配置された位置まで移動することができる。
【0067】
(4)収容室51は上流側開口49から下流側開口50に向かって先細りとなっているので、収容室51内で線状部材29が滞留して生じる絡みやもつれを抑制できる。
(5)吸引ファン46が下流側開口50を通じて収容室51内を吸引することにより、導入された線状部材29を下流側開口50に向けて移動させるとともに、線状部材29の先端を下流側開口50から導出させることができる。
【0068】
(6)制御部100によって収容容器38に収容された線状部材29の残量を検知することができるので、残量が少なくなった場合にはリール43から収容容器に線状部材29を供給することで、線状部材29を連続的に送り出すことができる。
【0069】
(7)敷設範囲から他方側に送られた使用済みの線状部材29を回収容器60内に収容することができるので、インクが付着した線状部材29を別のリールに巻き取る手間が省ける。また、線状部材29がリールに巻着されていると、巻着時の径によって送り出す長さや巻着する際のトルクが変化してしまい、送り量や張力に誤差が生じる虞がある。その点、張設される線状部材29の送り方向上流側となる一方側を収容容器38に、送り方向下流側となる他方側を回収容器60に、それぞれたるみを持たせた状態で収容することで、送り量や張力の変動を抑制することができる。
【0070】
(9)ピンチローラー57と回収容器60との間にはカッター59が設けられているので、回収容器60が線状部材29で満杯になった場合には線状部材29を切断して回収容器60は脱着し、速やかに交換を行うことができる。また、脱着した回収容器60から使用済みの線状部材29を取り出せば、同じ回収容器60を再度装着して繰り返し使用することができる。
【0071】
(10)吸引ファン61を駆動すると通気孔63を通じて回収容器60内が吸引されるので、線状部材29を導入孔62側から通気孔63側に移動させて隙間なく収容することができる。また、回収容器60は通気孔63を被覆するメッシュ状の通気部材65を有するので、収容した線状部材29を回収容器60内に保持しつつ、回収容器60内を吸気することができる。また、導入孔62は敷設範囲と対向する位置に設けられるので、吸引ファン61によって装置内に浮遊するミスト等の浮遊物質を装置外に排出することができる。
【0072】
(11)回収容器60の収容室64は導入孔62側が円筒形状に形成されるとともに、通気孔63側が先細りとなるテーパ形状に形成されるので、収容室64内で使用済みの線状部材29に付着していたインクが滴下すると、収容室64の形状に沿って導入孔62側となる円筒形状部分に溜まる。したがって、通気孔63からインクが流出したり吸引ファン61がインクで汚染されたりすることが抑制される。
【0073】
(12)リール43を支持する移動テーブル42は、移動テーブル34,35とは別個に移動することができるので、移動テーブル34,35を移動させて線状部材29に対するフラッシング動作を実行している間に、移動テーブル42を停止させてリール43の交換を行うことができる。すなわち、インク噴射処理(印刷処理やフラッシング動作)を中断することなく、リール43の交換を行うことができる。
【0074】
(13)上流側開口49は重力方向における収容室51の上端側に、下流側開口50は重力方向における収容室51の下端側に設けられているので、収容容器38に吸引ファン46の導管47が接続されていないときでも、収容室51内に収容した線状部材29を重力によって下流側開口50側に移動させることができる。また、収容容器38は往復移動する移動テーブル34上に配置されているので、往復移動や方向転換に伴って生じる振動で収容室51内における線状部材29の下方への移動を促進することができる。
【0075】
(14)上流側開口49は下流側開口50よりも口径が小さく形成されるので、吸引ファン46の駆動によって上流側開口49から収容室51内に向かう外気の流れによって、線状部材29を収容室51内に導入することができる。
【0076】
(15)導入孔62は通気孔63よりも径が小さく形成されるので、吸引ファン61の駆動によって導入孔62から収容室64内に向かう外気の流れによって、線状部材29を収容室64内に導入することができる。
【0077】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・制御部100はプリンター11の制御部と兼用してもよい。
・回収容器60及び吸引ファン61を移動テーブル35上に配置しなくてもよい。この場合には、移動テーブル35を移動させる駆動源であるモーター33の負荷を軽減することができる。
【0078】
・切断手段と接続手段とを別個に備えるようにしてもよい。また、切断や接続においては、熱、超音波、レーザーなど、任意の方式を採用できる。
・接続手段は、線状部材29を結んだり結ったりすることで繋いでもよい。また、接続で生じた繋ぎ目部分はインクの受容に用いず、敷設範囲で停止させることなく回収容器60側に移動させてもよい。
【0079】
・収容容器38や回収容器60の重さを計量する計量手段を残量検知手段として採用し、その重さの変化から線状部材29の残量(収容量)を検知するようにしてもよい。この構成によれば、送り誤差を含まないので実際の残量を検知することができる。あるいは、収容室51,64内に光を照射する照射部と、照射部から照射された光を受光した場合に信号を出力する光センサーとを残量検知手段として採用してもよい。この場合には、収容された線状部材29で照射部から照射された光が遮られると光センサーからの出力信号が変化するので、規定値と対応する位置に照射部と光センサーを設置しておくことで、残量(収容量)が規定値に達したことを検知することができる。
【0080】
・吸引ファン46を備えない構成としてもよいし、吸引ファン61を備えない構成としてもよい。
・収容容器38を上流側開口49と下流側開口50が水平方向に並ぶように横置きで配置してもよいし、回収容器60を導入孔62と通気孔63が上下方向に並ぶように縦置きで配置してもよい。あるいは、収容容器38や回収容器60を上下方向に傾斜するように斜めに配置してもよい。
【0081】
・糸状の線状部材の他に、断面矩形状の帯状の線状部材を採用してもよい。
・流体噴射ヘッド24やノズル25の数、ノズル列Nの列数は任意に設定することができる。また、線状部材29の設置数も任意に設定することができる。
【0082】
・プリンター11は、長尺の流体噴射ヘッドを備えるフルラインタイプのラインヘッド式プリンターや、ラテラル式プリンター、あるいはシリアル式プリンターとして実現してもよい。
【0083】
・上記実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化したが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
11…流体噴射装置としてのプリンター、15…メンテナンス装置、24…流体噴射ヘッド、25…ノズル、29…線状部材、36,56…保持部及び移動機構を構成する駆動ローラー、37,57…保持部を構成するピンチローラー、38…収容容器、43…リール、45…切断手段及び接続手段を構成する溶融部材、46…吸引機構を構成する吸引ファン、47…吸引機構を構成する導管、49…上流側開口、50…下流側開口、51…収容室、59…カッター、60…回収容器、61…吸引ファン、62…導入孔、63…通気孔、65…通気部材、100…残量検知手段を構成する制御部、N…ノズル列、P…媒体としての用紙、X…ノズル列方向と一致する送り方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状部材に対して流体を噴射する複数のノズルが所定方向に沿って延びるノズル列を形成するように設けられた流体噴射ヘッドを備える流体噴射装置のメンテナンス装置であって、
前記線状部材を前記ノズル列方向に沿って前記流体噴射ヘッドと対応する敷設範囲に張設する一対の保持部と、
前記敷設範囲に張設された前記線状部材を前記ノズル列方向における一方側から他方側に向けて移動させる移動機構と、
前記敷設範囲に送られる前の前記線状部材を巻着した状態で保持するリールと、
前記一方側に設けられた前記保持部と前記リールとの間で、前記リールから巻き解かれた前記線状部材をたるみを持たせた滞留状態で収容する収容容器とを備えることを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
前記リールと前記収容容器との間には、前記線状部材を切断する切断手段と、前記収容容器内に収容された前記線状部材の後端と前記リールから巻き解かれた前記線状部材の先端とを接続する接続手段とが設けられることを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
前記収容容器は1つの前記リールに対して複数設けられ、
前記リールは、前記収容容器に対して相対移動可能に構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメンテナンス装置。
【請求項4】
前記収容容器は、前記リールから巻き解かれた前記線状部材を導入するための上流側開口と、収容した前記線状部材を導出するための下流側開口と、前記上流側開口から前記下流側開口に向かって先細りとなる形状の収容室とを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項5】
前記下流側開口を通じて前記収容室内を吸引する吸引機構をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のメンテナンス装置。
【請求項6】
前記収容容器に収容された前記線状部材の残量を検知する残量検知手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項7】
前記敷設範囲から前記他方側に送られた使用済みの前記線状部材をたるみを持たせた状態で収容する回収容器をさらに備えることを特徴とする請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置。
【請求項8】
前記回収容器は着脱可能に装着されるとともに、
前記他方側に設けられた前記保持部と前記回収容器との間には、前記線状部材を切断するカッターが設けられていることを特徴とする請求項7に記載のメンテナンス装置。
【請求項9】
前記回収容器は、前記敷設範囲と対向する位置に設けられる導入孔と、通気孔と、該通気孔を被覆するメッシュ状の通気部材とを有し、
前記通気孔を通じて前記回収容器内を吸引する吸引ファンをさらに備えることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のメンテナンス装置。
【請求項10】
線状部材に対して流体を噴射する複数のノズルが所定方向に沿って延びるノズル列を形成するように設けられた流体噴射ヘッドと、請求項1〜請求項9のうち何れか一項に記載のメンテナンス装置とを備えることを特徴とする流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−131192(P2011−131192A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295639(P2009−295639)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】