説明

メンブレンスイッチ

【課題】より一層、薄型化及び低コスト化を図ることができるメンブレンスイッチを提供する。
【解決手段】メンブレンスイッチ1は、絶縁樹脂上にスクリー印刷により下部接点電極3を印刷した下部電極シート5と、絶縁樹脂上に前記下部電極シート5の下部接点電極3と対応する位置に上部接点電極7を印刷し、かつ前記上部接点電極7を中央にしてエンボス加工によりエンボス部9を設けた上部電極シート11と、を備える。また、前記エンボス部9が前記下部接点電極3の外方に位置するように、前記上部電極シート11と前記下部電極シート5が、前記エンボス部9以外の部分で無数の小ドットからなる通気可能なドット模様粘着印刷層15で粘着されて一体化されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、メンブレンスイッチに関し、特に電子機器内で使用されるもので、明瞭なクリック感触を有する薄型のメンブレンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
図3及び図4を参照するに、従来、メンブレンスイッチ101は、絶縁樹脂上に下部接点電極103を設けた下部電極シート105と、この下部電極シート105の表面に印刷により形成されたスペーサ用レジスト107と、絶縁樹脂上に前記下部電極シート105の下部接点電極103と対応して整合する位置に上部接点電極109を銀印刷し、かつ前記上部接点電極109を中央にしてエンボス加工によりエンボス部111を設けた上部電極シート113と、で構成されている。なお、上記の下部電極シート105には、下部接点電極103に接続する配線パターン115が印刷されている。なお、スペーサ用レジスト107にはエンボス部111に対応する部分に孔部117が形成されている。
【0003】
また、前記上部電極シート113のエンボス部111を除いて下部電極シート105のスペーサ用レジスト107に重ねられる面に、両面粘着材119が印刷により形成されている。なお、両面粘着材119にはエンボス部111に対応する部分に孔部121が形成されている。
【0004】
前記エンボス部111が前記下部接点電極103の外方に位置するように、上部電極シート113が前記下部電極シート105のスペーサ用レジスト107に両面粘着材119で粘着されて一体型に構成したスイッチ装置である。
【0005】
これによって、指でエンボス部111を押圧すると、エンボス部111が撓んで所定以上の圧力がかかると前記エンボス部111が座屈することでクリック感が発生する。このスイッチを操作する人は上記のクリック感でスイッチを押したことを認識する。
【0006】
メンブレンスイッチ101の製造方法としては、図4に示されているように、下部電極シート105は、絶縁樹脂としての例えばPETの表面にスクリーン印刷により銀ペーストを印刷して下部接点電極103を形成し、スペーサ用レジスト107を印刷して下部電極シート105を形成する。
【0007】
上部電極シート113は、図4に示されているように、絶縁樹脂としての例えばPET上にスクリーン印刷により銀ペーストを印刷して、上部接点電極109を形成する。この上部電極シート113に対して金型を使用して上部接点電極109側からPET側に向かってエンボス加工を行ってエンボス部111(押下部)を形成する。
【0008】
上部電極シート113と下部電極シート105は上部接点電極07と下部接点電極103の位置が合うように両面粘着材119を使用して粘着されることにより、メンブレンスイッチ101が形成される。
【0009】
上記の従来のメンブレンスイッチ101に該当するものとしては特許文献1に示される。
【特許文献1】特開平10−97818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来のメンブレンスイッチ101においては、クリック感触が良好なスイッチ装置を得るためには、クリック時にエンボス部111の内部の空気がスムーズに移動できるスイッチ構造である必要がある。そこで、良好なクリック感触を得るために、図3及び図4に示されているように、空気の通路123を設けたスペーサ用レジスト107を使用する必要があり、スイッチの薄型化を図る上で課題となっていた。
【0011】
この発明は、より一層薄型化を図り、かつ低コストに寄与するメンブレンスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明のメンブレンスイッチは、絶縁樹脂上にスクリーン印刷により下部接点電極を印刷した下部電極シートと、
絶縁樹脂上に前記下部電極シートの下部接点電極と対応する位置に上部接点電極を印刷し、かつ前記上部接点電極を中央にしてエンボス加工によりエンボス部を設けた上部電極シートと、を備え、
前記エンボス部が前記下部接点電極の外方に位置するように、前記上部電極シートと前記下部電極シートが、前記エンボス部以外の部分で無数の小ドットからなる通気可能なドット模様粘着印刷層で粘着されて一体化されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、この発明のメンブレンスイッチは、前記メンブレンスイッチにおいて、前記ドット模様粘着印刷層が、前記下部電極シートの表面に少なくとも前記下部接点電極を除く部分に無数の小ドット状に印刷して形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、ドット模様粘着印刷層が無数の小ドットにより通気可能に構成されているので、クリック時にエンボス部の内部の空気が小ドット間を通過できる。これにより、従来と同等なクリック感を得ているにもかかわらず、従来の厚い両面粘着材やスペーサ用レジストが不要となり、従来よりも薄型化かつ低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1及び図2を参照するに、この実施の形態に係るメンブレンスイッチ1は、基本的に、絶縁樹脂上にスクリーン印刷により下部接点電極3を印刷した下部電極シート5と、絶縁樹脂上に前記下部電極シート5の下部接点電極3と対応して整合する位置に上部接点電極7を銀印刷し、かつ前記上部接点電極7を中央にしてエンボス加工によりエンボス部9を設けた上部電極シート11と、で構成されている。
【0017】
また、上記の下部電極シート5には、下部接点電極3に接続する配線パターン13が印刷されている。また、少なくとも前記下部接点電極3を除く表面に、例えば薄いシートの表面に無数の小ドット状に印刷した通気可能なドット模様粘着印刷層15を設けた粘着シートが粘着されている。
【0018】
なお、他の実施の形態としては、上述したように無数の小ドット状の通気可能なドット模様粘着印刷層15が、少なくとも前記下部接点電極3を除く下部電極シート5の表面に直接印刷されても良く、この限りではない。
【0019】
一方、上記のエンボス部9は半球状のドーム型に形成されており、ドーム型の頭頂部を下方へ押圧すると、頭頂部の付近が反転して凹むように押し込まれて上部接点電極7が下部接点電極3に接触し、導通する構成である。
【0020】
前記エンボス部9が前記下部接点電極3の外方に位置するように、前記上部電極シート11と前記下部電極シート5が、前記エンボス部9以外の部分で前記ドット模様粘着印刷層15により粘着されて一体的に構成されている。
【0021】
上記構成により、指でエンボス部9を押圧すると、エンボス部9が撓んで所定以上の圧力がかかると前記エンボス部9が座屈することでクリック感が発生する。このスイッチを操作する人は上記のクリック感でスイッチを押したことを認識する。
【0022】
このとき、ドット模様粘着印刷層15が無数の小ドットにより通気可能に構成されていることで、クリック時にエンボス部9の内部の空気がドット模様粘着印刷層15の小ドット間を通過できる。その結果、良好なクリック感触が得られる。しかも、従来の厚い両面粘着材119やスペーサ用レジスト107や空気の通路123が不要となり、従来よりも薄型化を図ることができる。
【0023】
ドーム状のエンボス部9の押圧により、その頭頂部が反転して凹んで上部接点電極7が下部接点電極3に接触する。
【0024】
この実施の形態のメンブレンスイッチ1の製造方法としては、図2に示されているように、下部電極シート5は、図2に示されているように、シート状の絶縁樹脂であるPET(ポリエチレンテレフタレート)の上に、スクリーン印刷により銀ペーストで配線パターン13及び下部接点電極3を印刷し、粘着インクでドット模様粘着印刷層15を印刷して形成される。このとき、下部接点電極3以外のPET表面が粘着インクによりドット模様粘着で形成され、空気が通過できる構造とされている。また、ドット径は0.3mmで、ピッチは0.5mmで、膜厚は10μmである。
【0025】
一方、上部電極シート11は、絶縁樹脂としての例えばPETの上にスクリーン印刷により銀ペーストを印刷して、上部接点電極7を有する上部電極シート11を形成する。この上部電極シート11に金型を使用して上部接点電極7側からPET側に向かって上部接点電極7を中央にして円弧状にエンボス加工を行ってエンボス部9(押下部)を形成する。
【0026】
上記の上部電極シート11と下部電極シート5は、上部接点電極7と下部接点電極3の位置が合うようにドット模様粘着印刷層15で粘着されることで、メンブレンスイッチ1が形成される。
【0027】
次に、上記の実施の形態のメンブレンスイッチ1の効果を調べるために、この実施の形態の構成に基づいた実施例を作成し、さらに、この実施例と比較するために図3の従来のメンブレンスイッチ101を比較例として作成した。
【0028】
なお、実施例と比較例は、それぞれ、下記に示す材料を用い、実施例及び比較例の製造方法でメンブレンスイッチ1,101を作製した。
【0029】
使用材料としては、上部電極シート11,113及び下部電極シート5,105は、材質がPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム〔帝人デュポンフィルム(株)社製 型番:HSL〕で、厚さが100μmである。絶縁樹脂に接触電極を含む電気回路を形成する銀を主成分とする導電性インクは、銀ペースト〔東洋紡(株)社製 型番;DX−351H−30〕である。
【0030】
スペーサ用レジスト107は、絶縁インク〔十条ケミカル(株) 型番;JELCON INシリーズ〕である。
【0031】
実施例のドット模様粘着印刷層15は粘着インク〔東洋インキ製造(株)社製型番;オリバインBPS6080TFK〕を用いている。
【0032】
スペーサは、材質がPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム〔帝人デュポンフィルム(株)社製 型番:HSL〕で、厚さが25μmである。
【0033】
以上の実施例と比較例のメンブレンスイッチ1,101に対して厚み測定及びクリック感触測を実施した。なお、メンブレンスイッチ1,101の厚みはデジタルノギスで測定した。その結果は表1に示す通りである。
【表1】

【0034】
また、実施例と比較例のメンブレンスイッチ1,101のエンボス部9,111に対してクリック感触を測定した。その結果、各クリック率は、表2に示されている通りである。なお、クリック率を図るための押し子には真鍮製φ2.0mmで、先端が平面となっているものを使用した。
【表2】

【0035】
以上の表1及び表2から分かるように、実施例のメンブレンスイッチ1は、薄型かつ低コストを図ることができ、比較例のメンブレンスイッチ101と同等のクリック感触を有するスイッチ装置を得ることが可能であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施の形態のメンブレンスイッチの断面図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】従来のメンブレンスイッチの断面図である。
【図4】図3の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 メンブレンスイッチ
3 下部接点電極
5 下部電極シート
7 上部接点電極
9 エンボス部
11 上部電極シート
13 配線パターン
15 ドット模様粘着印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂上にスクリーン印刷により下部接点電極を印刷した下部電極シートと、 絶縁樹脂上に前記下部電極シートの下部接点電極と対応する位置に上部接点電極を印刷し、かつ前記上部接点電極を中央にしてエンボス加工によりエンボス部を設けた上部電極シートと、を備え、 前記エンボス部が前記下部接点電極の外方に位置するように、前記上部電極シートと前記下部電極シートが、前記エンボス部以外の部分で無数の小ドットからなる通気可能なドット模様粘着印刷層で粘着されて一体化されていることを特徴とするメンブレンスイッチ。
【請求項2】
前記ドット模様粘着印刷層が、前記下部電極シートの表面に少なくとも前記下部接点電極を除く部分に無数の小ドット状に印刷して形成されていることを特徴とする請求項1記載のメンブレンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−27383(P2010−27383A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187248(P2008−187248)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】