説明

メータケースの製造方法と流量計及びその製造方法

【課題】欠陥製品の発生を抑えつつ軽量化することが可能なメータケースの製造方法、そのメータケースを有した流量計及びその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明によれば、メータケース11は、ケース本体12と1対の接続管40,40とを金属素材の塑性加工によって別々に成形しておき、ケース本体12の外面に1対の接続管40,40を摩擦接合して製造されるから、欠陥製品の発生を抑えつつメータケース11を薄肉化して、軽量化することができる。また、ケース本体と接続管40,40とを摩擦圧接により接合したので、他の接合方法に比べ、接合の信頼性が高く、接合に要する時間も比較的短くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース本体の外面から相反する方向に1対の接続管を突出してなるメータケースの製造方法と、そのメータケースを備えた流量計及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のメータケースは、ケース本体と1対の接続管とが、互いに異なる方向に突出しかつ内部で連通した中空構造になっているため、金属素材の塑性加工によって製造することが困難であり、一般的に、鋳造又は樹脂の射出成形によって製造されていた(特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平10−54742号公報(段落[0014]、第1図)
【特許文献2】特開平10−153460号公報(段落[0010]、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述した従来のメータケースのうち、鋳物製のメータケースは、樹脂製のものに比べて強度及びリサイクル性が優れる一方で重たいという問題があり、軽量化が望まれていた。
【0004】
鋳物製のメータケースを軽量化するには、薄肉化することが考えられるが、そのためには鋳型におけるキャビティを狭くする必要がある。しかしながら、キャビティを狭くすると、キャビティ内での溶融金属の流れ(湯流れ)が悪化して湯回り不良等が起き易くなり、欠陥製品の発生率が高まる虞があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、欠陥製品の発生を抑えつつ軽量化することが可能なメータケースの製造方法、そのメータケースを有した流量計及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るメータケースの製造方法は、上端開放筒形のケース本体の外面から相反する方向に1対の接続管を突出して備え、一方の接続管からケース本体に流入し、他方の接続管から流出する液体の流量を計測するための流量計測部をケース本体に収容可能なメータケースの製造方法であって、ケース本体と1対の接続管とを金属素材の塑性加工によって別々に成形しておき、ケース本体の外面に1対の接続管を接合するところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のメータケースの製造方法において、ケース本体のうち1対の接続管を接合する部分に接続管の軸方向と直交する平面部を形成しておき、その平面部に接続管を摩擦圧接により接合するところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のメータケースの製造方法において、1対の接続管は、パイプ材又は板金を塑性加工して小径筒部とその小径筒部より大径な大径筒部とを一体成形しておき、大径筒部の外周面に、液体が流れる配管とメータケースとを螺合接続するための雄螺旋部を転造成形してなるところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載のメータケースの製造方法において、塑性加工は、液圧加工であるところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載のメータケースの製造方法において、ケース本体は、両端開放の筒壁とその筒壁の一端開口を閉塞した底壁とを塑性加工により別々に成形しておき、それら筒壁と底壁とを接合してなるところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載のメータケースの製造方法において、ケース本体の内側に挿入される本体固定治具の外面に位置決用の凹部又は凸部を設け、本体固定治具の位置決用の凹部又は凸部に対応した位置決用の凸部又は凹部をケース本体の内面に成形しておき、本体固定治具の外面とケース本体の内面とを凹凸係合させて、ケース本体を回転不能かつ移動不能に位置決めした状態で、1対の接続管をケース本体に接合するところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明に係る流量計の製造方法は、請求項1乃至6の何れかに記載のメータケースの製造方法で製造したメータケースに対して、流量計測部と、流量計測部をメータケースに対して抜け止めするための環状部材と、流量計測部による計測結果を表示するための表示部とを組み付ける最終組付け工程を行う流量計の製造方法であって、ケース本体の底壁外面が載置されるケース固定治具の載置面に位置決用の凹部又は凸部を設け、ケース固定治具の位置決用の凹部又は凸部に対応した位置決用の凸部又は凹部をケース本体の底壁外面に成形しておき、ケース固定治具の載置面とケース本体の底壁外面とを凹凸係合させて、メータケースを回転不能かつ移動不能に位置決めした状態で、ケース本体に流量計測部を挿入し、次いで、環状部材をケース本体との間に備えたバヨネット構造によりケース本体の上端部に係止し、次いで、表示部をケース本体の上端部に組み付けるところに特徴を有する。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7に記載の流量計の製造方法において、最終組付け工程の後に行われる流量計の計測性能試験工程において、計測性能試験を行う試験装置のうち、ケース本体の底壁外面が載置される載置面に位置決用の凹部又は凸部を設け、試験装置の位置決用の凹部又は凸部に対応した位置決用の凸部又は凹部をケース本体の底壁外面に成形しておき、試験装置の載置面とケース本体の底壁外面とを凹凸係合させて、ケース本体を回転不能かつ移動不能に位置決めした状態で、計測性能試験を行うところに特徴を有する。
【0014】
請求項9の発明に係る流量計は、請求項1乃至6の何れかに記載のメータケースの製造方法で製造したメータケースと、メータケースに収容されてメータケースを通過する液体の流量を計測する流量計測部とを備えたところに特徴を有する。
【0015】
なお、本発明における「流量」には、「流速」に流路の断面積を乗じて求められる「瞬時流量」と、「瞬時流量」を所定時間に亘って積算した所謂「積算流量」とが含まれる。
【0016】
請求項10の発明は、請求項9に記載の流量計において、流量計測部は、1対の接続管の間を連絡した計測流路を有し、計測流路を流れる液体の流量を、超音波、電磁誘導、羽根車又は計測流路を通過する液体に発生させた渦を利用して計測するように構成されたところに特徴を有する。
【0017】
請求項11の発明は、請求項9又は10に記載の流量計において、メータケースは、計測原理の異なる複数種類の流量計測部の間で共通使用可能としたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0018】
[請求項1,9,10の発明]
上記のように構成した請求項1及び9の発明によれば、ケース本体と1対の接続管とを、金属素材の塑性加工によって別々の成形しておき、それらを接合してメータケースを製造するので、欠陥製品の発生を抑えつつメータケースを薄肉化して、軽量化することができる。
【0019】
また、ケース本体と1対の接続管とを別々に成形すると共に、1つのケース本体に対して口径の異なる複数種類の接続管を選択的に接合可能としておけば、管径が異なる複数種類の配管に対して、ケース本体を共通使用することが可能になる。ここで、流量計における流量計測部の計測原理は、特に限定するものではないが、超音波、電磁誘導、羽根車又は計測流路を通過する液体に発生させた渦を利用して計量するもののうち、何れかであることが好ましい(請求項10の発明)。
【0020】
[請求項2の発明]
ケース本体と1対の接続管との接合には、請求項2の発明に係る摩擦圧接の他に、接着剤、ロウ付け、溶接、圧入又は螺合接続が考えられるが、接合部分の信頼性が高く、接合に要する時間が比較的短いという点で、摩擦圧接による接合が好ましい。
【0021】
[請求項3及び4の発明]
請求項3の発明によれば、切削屑を出さずに雄螺旋部を形成することができる。また、雄螺旋部を切削で形成した場合に比べて、雄螺旋部の強度が向上する。ここで、小径筒部と大径筒部とを塑性加工によって一体成形する場合には、パイプ材又は板金を絞り加工してもよいし、請求項4の発明のように液圧加工してもよい。
【0022】
[請求項5の発明]
ケース本体は、例えば、板金を塑性加工(例えば、絞り加工)して一端有底筒形に成形してもよいし、請求項5の発明のように、両端開放の筒壁とその筒壁の一端開口を閉塞した底壁とを塑性加工により別々に成形しておき、それら筒壁と底壁とを接合してもよい。
【0023】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、本体固定治具によってケース本体を回転不能かつ移動不能に位置決めすることができるので、1対の接続管をケース本体に接合する際にケース本体が安定し接合不良を防止することができる
【0024】
[請求項7の発明]
請求項7の発明によれば、ケース固定治具によってメータケースを回転不能かつ移動不能に位置決めすることができるので、流量計測部と環状部材と表示部とをメータケースに対してスムーズに組み付けることができる。
【0025】
[請求項8の発明]
請求項8の発明によれば、計測性能試験を行う試験装置のうち、ケース本体の底壁外面が載置される載置面とケース本体の底壁外面とを凹凸係合させて、ケース本体を回転不能かつ移動不能に位置決めすることができるので、試験装置に対して流量計を正規の位置に位置決めすることができ、計測性能試験を正確に行うことができる。
【0026】
[請求項11の発明]
請求項11の発明によれば、計測原理の異なる流量計測部間でのメータケースの共通化により、メータケースの製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。図1には、本発明の流量計10の全体が示されている。同図における符号11は、金属製(具体的にはステンレス製)のメータケースであり、下端有底の円筒構造をなしたケース本体12の外周面から相反する方向に1対の接続管40,40を突出して備えている。接続管40,40は、水道水が流れる水道管90の途中に接続され、例えば、図1における左側の接続管40からケース本体12に流れ込んだ水道水が、図1における右側の接続管40から流出するようになっている。
【0028】
図3及び図4にはメータケース11のケース本体12のみが示されている。ケース本体12の筒壁12Aのうち、周方向で180度離れた位置には、筒壁12Aを外側に向かって袋状に膨出させた筒壁膨出部14,14が形成されている。筒壁膨出部14,14は、筒壁12Aの外面に対しては凸状に突出し(図3(B)参照)、筒壁12Aの内面に対しては凹状に凹んでいる(図3(A)参照)。各筒壁膨出部14,14には、接続管40,40の軸方向と直交した平坦壁15,15(本発明の「平坦部」に相当する)が備えられている。平坦壁15,15は互いに平行となっており、ケース本体12の内部領域を挟んで対向配置されている。各平坦壁15,15には円形の側部貫通孔16,16が貫通形成されている。そして、平坦壁15,15の外面のうち側部貫通孔16,16の周縁部から接続管40,40が突出している。
【0029】
図5には、メータケース11の接続管40のみが示されている。接続管40は、ケース本体12に近い側から順に小径筒部41、テーパ筒部42、大径筒部43を備えている。小径筒部41の内径は側部貫通孔16と同径であり、大径筒部43の内径は小径筒部41の内径よりも大きくなっている。また、大径筒部43の外径は小径筒部41の外径より大きくなっている。大径筒部43の外周面には、水道管90との接続用の雄螺旋部44が形成されている。
【0030】
即ち、図1に示すように、接続管40は大径筒部43側の端面と水道管90の端面とを突き合わせた状態で、水道管90に抜け止めされたスリーブナット91,91を雄螺旋部44に螺合することで、水道管90に接続されている。ここで、接続管40の端面には断面V字形のパッキン溝45が形成されている(図5参照)。そして、接続管40の端面と水道管90の端面との間には図示しないパッキンが挟まれている。
【0031】
メータケース11のうち、ケース本体12は上方に開放した上端開口17を備えている。また、ケース本体12(筒壁12A)のうち、筒壁膨出部14,14より上側部分は段付き状に拡径した大径部18となっており、その大径部18には、表示器36及び押さえリング37(図6(B)参照)を取り付けるために、所謂「バヨネット式」の係合部が形成されている。詳細には、大径部18の周壁の一部を段付き状に内側に突出させたバヨネット爪19が、大径部18の周方向で等間隔に複数(例えば4つ)設けられている。
【0032】
図3に示すように、ケース本体12の底壁12Bには、底壁12Bの中央部を下方に向かって膨出させた中央マウント部20と、中央マウント部20の側方部分を下方に向かって袋状に膨出させた複数の側方マウント部21とが形成されている。
【0033】
図8に示すように、中央マウント部20及び側方マウント部21は、底壁12Bの外面に対しては凸状に突出し、底壁12Bの内面に対しては凹状に凹んでいる。これら中央マウント部20と側方マウント部21により、底壁12Bの外面が凹凸形状になっている。
【0034】
図7に示すように、中央マウント部20はケース本体12の軸方向から見た形状が円形をなしかつ、断面が扁平な皿形構造をなしている(図8(A)参照)。側方マウント部21は、底壁12Bを周方向で4等配した位置に形成されており、ケース本体12の軸方向から見た形状が扇形をなしかつ下方に向かって窄んでいる。
【0035】
図6に示すように、ケース本体12の内側には流量計測部30が収容されている。流量計測部30は、ケース本体12の上端開口17から挿入され、ケース本体12の内側に回動不能に嵌合している。
【0036】
流量計測部30は、全体として円柱構造をなしたボディ33の内部に計測流路32を備えている。ボディ33の上端部からは側方に向かってフランジ部33Fが張り出している。ボディ33の外周面からは、相反する方向に1対の膨出突部31,31が突出している。1対の膨出突部31,31は、ボディ33の径方向に直交した平坦面31A,31Aを有し、ケース本体12に形成された1対の筒壁膨出部14,14(図3参照)にそれぞれ凹凸係合している。これによりケース本体12に対する流量計測部30(ボディ33)の相対回転が禁止されている。
【0037】
計測流路32の一端は、一方の膨出突部31の平坦面31Aに開口しており、他端は他方の膨出突部31の平坦面31Aに開口している。計測流路32の途中には、図示しない羽根車が備えられており、羽根車が計測流路32を通過する水道水を受けて回転する。この羽根車の回転数に基づいて計測流路32を通過した水道水の流量が計量される。ここで、本実施形態では、流量計測部30における流量の計測原理が「羽根車式」であるが、計測流路32の途中に1対の超音波センサを備えた「超音波式」や、計測流路32の途中に1対の電極を備えた「電磁誘導式」や、計測流路32の途中に渦発生器と渦検出器とを備えた「渦式」や、その他の計測原理の流量計測ユニットでもよい。そして、ケース本体12は、これら計測原理の異なる複数の流量計測ユニットの間で共通使用することが可能となっている。
【0038】
ボディ33における膨出突部31,31の平坦面31A,31Aには、計測流路32の両端開口32A,32Aを囲むようにパッキン35,35が装着されており、このパッキン35,35が筒壁膨出部14,14における平坦壁15,15の内面と膨出突部31,31の平坦面31A,31Aとの間をシールしている。また、ボディ33のフランジ部33Fと、ケース本体12のうち大径部18の下端部に形成された段差部18Aとの間にはOリング34が圧縮状態で挟まれている。これら2つのシール構造により、メータケース11の外部への漏水が防がれている。
【0039】
図1及び図2に示すようにメータケース11(ケース本体12)の上端部には、流量計測部30を収容した状態で表示器36が組み付けられている。流量計測部30の羽根車(図示せず)と表示器36とは、図示しないマグネットカップリングで連結されており、流量計測部30で計測された水道水の積算流量がこの表示器36にて表示される。
【0040】
表示器36の下端部で、ケース本体12の上端開口17から大径部18に挿入された部分には、外側に突出したバヨネット爪(図示せず)が形成されており、大径部18に形成されたバヨネット爪19と係合している。
【0041】
本実施形態の流量計10及びメータケース11の構造は以上である。次に流量計10の製造方法について説明する。流量計10の製造方法には、以下に説明するメータケース11の製造工程と、流量計10の組付け工程と、完成検査工程とが含まれる。
【0042】
メータケース11は、ケース本体12と1対の接続管40,40とを金属素材の塑性加工によって別々に成形しておき、それらを接合して製造される。また、ケース本体12は、筒壁12Aと底壁12Bとを別々に成形しておき、それらを接合して製造される。
【0043】
具体的には、ケース本体12のうち、筒壁12Aは、金属製のパイプ素材を絞り加工することで、筒壁12Aにおけるバヨネット爪19以外の部分を成形する。次いで、大径部18を径方向外側からプレスしてバヨネット爪19を成形する。
【0044】
底壁12Bは、円盤状の板金をプレスして、中央マウント部20及び側方マウント部21を成形する。そして、これら別々に成形された筒壁12Aと底壁12Bとを、接着剤、ロウ付け、溶接、摩擦圧接の何れかによって接合する。接合部分の信頼性が高く、接合に要する時間が短いという点で、摩擦圧接による接合が好ましい。なお、摩擦圧接した場合には接合後、バリを除去しておく。以上がケース本体12の製造工程である。
【0045】
次に、1対の接続管40,40の製造方法を図9に基づいて説明する。接続管40の製造方法には、以下の3通りがあり、何れの製造方法で製造してもよい。第1の製造方法は、まず、金属製のパイプ素材110を塑性加工(例えば、絞り加工)して小径筒部41、テーパ筒部42、大径筒部43を備えた第1中間品111を成形し、その第1中間品111における大径筒部43の外周面に雄螺旋部44を転造成形して接続管40とする方法である。
【0046】
第2の製造方法は、円盤形の板金120を塑性加工(例えば、絞り加工)して小径筒部41、テーパ筒部42、大径筒部43を備えた一端有底円筒形の第2中間品121を成形し、次いで、第2中間品121の底部を切除して第1中間品111とし、第1中間品111の大径筒部43の外周面に雄螺旋部44を転造成形して接続管40とする方法である。
【0047】
第3の製造方法は、金属製のパイプ素材130を塑性加工(例えば、液圧加工)して、軸方向の中間部分に大径筒部43が成形されかつ両端部に小径筒部41,41が成形された第3中間品131を成形し、第3中間品131を軸方向の中間位置で切断して2つの第1中間品111,111とし、各第1中間品111における大径筒部43の外周面に雄螺旋部44を転造成形して接続管40とする方法である。
【0048】
ここで、第3の製造方法では、液圧加工の際にパイプ素材130の膨張によって大径筒部43となる部分の肉厚が減少するので、液圧加工を行いながらパイプ素材130を軸方向の両端側から加圧して、所定の肉厚を確保する。
【0049】
また、大径筒部43の肉厚は、雄螺旋部44を転造成形する際の加圧力によって内径等の寸法変化が起きないような十分な厚さとしておく。以上が接続管40の製造工程である。
【0050】
次いで、ケース本体12と1対の接続管40,40とを摩擦圧接により接合する。具体的には、ケース本体12を位置決め固定しておき、接続管40を回転させながらその小径筒部41をケース本体12の平坦壁15に所定の圧力で押し付けて、回転摩擦による熱と圧力とにより両者を接合する。
【0051】
ここで、摩擦圧接を行う際には本体固定治具80によってケース本体12を位置決め固定する。本体固定治具80は、ケース本体12の内側に嵌合可能な形状となっている。即ち、図10に示すように、本体固定治具80は、円柱体の外周面から相反する方向に1対の位置決用の凸部80B,80Bが突出している。そして、本体固定治具80をケース本体12の上端開口17から挿入すると、1対の位置決用の凸部80B,80Bがケース本体12に形成された1対の筒壁膨出部14,14(図3参照。本発明に係る「位置決用の凹部」に相当する)の内側にそれぞれ凹凸係合すると共に、筒壁膨出部14における平坦壁15,15の内面に面当接して、ケース本体12を回転不能かつ移動不能に位置決め固定する。この状態で1対の接続管40の摩擦圧接を行うので、ケース本体12と接続管40,40との接合不良を防止することができる。また、ケース本体12(詳細には、筒壁膨出部14における平坦壁15,15)が本体固定治具80により内側から補強されるので、摩擦圧接時の加圧力によってケース本体12が変形することを防ぐことができる。
【0052】
ケース本体12と1対の接続管40との接合が完了したら、摩擦圧接によって各接続管40,40の内側に発生したバリを切除する。以上がメータケース11の製造工程に関する説明である。
【0053】
次に、上述したメータケース11に流量計測部30、押さえリング37及び表示器36を組付けて流量計10を完成させる組付け工程について説明する。メータケース11に流量計測部30を組付ける場合には、流量計測部30の外周面から突出した膨出突部31,31が、ケース本体12の筒壁12Aから膨出した筒壁膨出部14,14の内側に凹凸嵌合するように位置を合わせて、メータケース11の上端開口17から流量計測部30を挿入する(図11参照)。
【0054】
ここで、流量計測部30を挿入組み付けする際には、ケース固定治具83によってメータケース12を位置決め固定する。図11に示すように、ケース固定治具83は、ケース本体12における底壁12Bの外面が載置される載置面81に、底壁12Bの外面の凸部に対応した位置決用の凹部82を備えている。位置決用の凹部82は、底壁12Bの外面の中央マウント部20及び側方マウント部21を、載置面81に転写した形状となっている。そして、載置面81とケース本体12における底壁12Bの外面とを凹凸係合させることで、ケース本体12が回転不能かつ移動不能に位置決め固定される。これにより、メータケース11の位置が安定するので、流量計測部30の組付け作業をスムーズに行うことができる。なお、側方マウント部21は、本発明に係る「位置決用の凸部」に相当する
【0055】
次いで、Oリング34と押さえリング37(本発明の「環状部材」に相当する)を組み付ける。押さえリング37は扁平円筒構造をなし、その外周面に複数のバヨネット爪37Tが突出している。メータケース11のバヨネット爪19と押さえリング37のバヨネット爪37Tとを周方向で互いにずらした状態で、メータケース11の大径部18の内側に押さえリング37を嵌め込み、次いで、押さえリング37をメータケース11に対して一方向に所定角度だけ回転させる。すると、メータケース11と押さえリング37のバヨネット爪19,37T同士が上下方向で係合しかつ、押さえリング37の下端部が流量計測部30(詳細には、フランジ部33F)をメータケース11の底壁12Bに押し付けて、流量計測部30がメータケース11に対して抜け止めされる。また、Oリング34がフランジ部33Fと段差部18Aとの間で押し潰されてシールされる(図6(B)参照)。
【0056】
次いで、メータケース11の上端部に表示器36を組付ける。即ち、メータケース11のバヨネット爪19と表示器36のバヨネット爪(図示せず)とを周方向で互いにずらした状態で、メータケース11の大径部18に表示器36の下端部を嵌め込み、次いで、表示器36をメータケース11に対して一方向に所定角度だけ回転させる。すると、メータケース11と表示器36のバヨネット爪同士が上下方向で係合して両者が一体に固定される。押さえリング37及び表示器36を取り付ける過程でも、ケース固定治具83によって、メータケース11が回転不能かつ移動不能に位置決め固定されるので、メータケース11に対する押さえリング37及び表示器36の組付けをスムーズに行うことができる。なお、表示器36がバヨネット爪同士の係合を解除する方向に回動しないように、回動ロック機構を設けてもよい。以上が流量計10の組付け工程の説明である。
【0057】
次に、完成した流量計10に対する完成検査工程について説明する。完成検査工程では、例えば、完成した流量計10の外観検査や水漏れ検査を行うと共に、計測性能試験を行う。計測性能試験は、流量計10に実際に通水し、その指示値と実際の通水量との差(器差)が、許容範囲にあるか否かを検査する。ここで、計測性能試験を行う試験装置95は、流量計10の指示値を、例えば、以下のようにして読み取る。
【0058】
即ち、図12に示すように、羽根車式の流量計10に備えた表示器36の表示盤36Aには、通常、羽根車と連動回転する八角形のパイロットPが備えられている。これに対し、試験装置95は、パイロットPに向けて光を照射するための発光素子96と、パイロットPによる反射光を受光する受光素子97とを備えている。そして、パイロットPの回転に伴う反射光の変化を電気パルスに変換し、この電気パルスを計数することで、パイロットPの回転数を流量計10の指示値の代用値として読み取る。
【0059】
ところが、流量計10が試験装置95に対して正規の位置に設置されず、発光素子96及び受光素子97とパイロットPとが正規の位置関係になっていない場合、本来ならば合格であるべき流量計10が不合格になってしまうという検査ミスが起こり得る。
【0060】
これに対し、試験装置95のうち、ケース本体12における底壁12B外面が載置される載置面98には、前記したケース固定治具83に形成された位置決用の凹部82と同様の位置決用の凹部99が形成され、その載置面98に底壁12Bの外面の凸部、即ち、側方マウント部21を凹凸係合させることで、流量計10が回転不能かつ移動不能に位置決めされる。これにより、試験装置95に対して流量計10を正規の位置に設置することができ、また、試験中の位置ずれも防止可能であるので、上述した検査ミスを防止することができる。以上が、完成検査工程の説明である。
【0061】
このように、本実施形態のメータケース11の製造方法によれば、メータケース11は、ケース本体12と1対の接続管40,40とを金属素材の塑性加工によって別々に成形しておき、ケース本体12の外面に1対の接続管40,40を摩擦接合して製造されるから、欠陥製品の発生を抑えつつ薄肉化して、軽量化することができる。また、このメータケース11は全体が金属製であるから、樹脂製のメータケースに比べて強度の点で優れる。
【0062】
また、ケース本体と接続管40,40とを摩擦圧接により接合したので、他の接合方法に比べ、接合の信頼性が高く、接合に要する時間も比較的短くすることができる。また、メータケース11に対して流量計測部30、押さえリング37及び表示器36を組み付ける際に、ケース固定治具83によってメータケース11が回転不能かつ移動不能に位置決め固定されるので、これらの組み付け作業をスムーズに行うことができる。
【0063】
さらに、流量計10の計測性能試験を行う際に、試験装置95のうちケース本体12が載置される載置面98に形成した位置決用の凹部99と、ケース本体12の底壁12Bの外面とを凹凸係合させて、ケース本体12を回転不能かつ移動不能に位置決めするので、試験装置95に対して流量計10を正規の位置に位置決めすることができ、計測性能試験を正確に行うことができる。
【0064】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0065】
(1)前記実施形態では、ケース本体12の筒壁12Aと底壁12Bとを別々に成形しておき、それらを接合していたが、板金を塑性加工(例えば、絞り加工)することで一端有底筒形のケース本体12を成形してもよい。
【0066】
(2)前記実施形態では、ケース本体12と1対の接続管40,40とを摩擦圧接によって接合していたが、接着剤、ロウ付け、溶接によって接合してもよいし、接続管40の小径筒部41をケース本体12の側部貫通孔16に圧入又は螺合接続してもよい。
【0067】
(3)前記実施形態において、1つのケース本体12に対して口径の異なる複数種類の接続管40,40を選択的に接合可能としておけば、管径が異なる複数種類の配管に対して、ケース本体12、さらには、流量計測部30や表示器36を共通使用することが可能になる。
【0068】
(4)前記実施形態において、メータケース11の底壁12Bを鏡板構造にしてもよい。
【0069】
(5)前記実施形態では、水道メータとして流量計10を使用していたが、水道水以外の液体を計測するために使用してもよい。
【0070】
(6)前記実施形態において流量計10のメータケース11には表示器36が一体に組付けられていたが、メータケース11とは離れた位置に配置してもよい。例えば、図13に示す流量計200では、ケース本体12の上端部が側方に張り出してフランジ部201となっており、ケース本体12の内側に流量計測部30を収容した状態で、ケース本体12の上端開口17がフランジ部201に螺旋止めされた板状の蓋202によって閉塞されている。そして、流量計測部30から延びたリード線203が、メータケース11の外側に引き出されて、メータケース11から離れた位置に設置された図示しない表示器に接続されている。
【0071】
(7)接続管40のうち、大径筒部43側の端面にパッキンの敷設面を確保するために、図14(A)に示すように、大径筒部43側の端部に接続管40の径方向内側に折れ曲がった鍔壁46を設けてもよい。
【0072】
鍔壁46は、例えば、図14(B)に示すように、雄螺旋部44を転造成形する前に、第1中間品111の大径筒部43側の端部を塑性加工(例えば、へら絞り加工)することにより成形することができる。または、液圧成形した第3中間品131に対して塑性加工(例えば、へら絞り加工)を行って、図14(C)に示すように、軸方向の中間部分に括れ部47を成形し、その括れ部47で第3中間品131を切断して成形することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態に流量計の側面図
【図2】流量計の正面図
【図3】(A)ケース本体を上方から見た斜視図、(B)ケース本体を下方から見た斜視図
【図4】ケース本体の正面図
【図5】接続管の(A)斜視図、(B)正面図、(C)側断面図
【図6】流量計測部を収容したメータケースの(A)平面図、(B)側断面図
【図7】メータケースの平面図
【図8】(A)図7におけるA−A線断面図、(B)図7におけるB−B線断面図
【図9】接続管の成形方法を説明するための断面図
【図10】ケース本体に接続管を接合する工程における側面図
【図11】組付け工程を説明する流量計の分解側面図
【図12】計測性能試験を行っている状態の流量計の側面図
【図13】変形例に係る流量計の分解斜視図
【図14】接続管の成形方法の変形例を示す断面図
【符号の説明】
【0074】
10,200 流量計
11 メータケース
12 ケース本体
12A 筒壁
12B 底壁
14 筒壁膨出部(位置決用の凹部)
15 平坦壁(平坦部)
20 中央マウント部
21 側方マウント部(位置決用の凸部)
30 流量計測部
32 計測流路
33 ボディ
37 押さえリング(環状部材)
40 接続管
41 小径筒部
43 大径筒部
44 雄螺旋部
80 本体固定治具
80B 位置決用の凸部
81 載置面
82 位置決用の凹部
83 ケース固定治具
90 水道管(配管)
95 試験装置
98 載置面
99 位置決用の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端開放筒形のケース本体の外面から相反する方向に1対の接続管を突出して備え、一方の前記接続管から前記ケース本体に流入し、他方の前記接続管から流出する液体の流量を計測するための流量計測部を前記ケース本体に収容可能なメータケースの製造方法であって、
前記ケース本体と前記1対の接続管とを金属素材の塑性加工によって別々に成形しておき、前記ケース本体の外面に前記1対の接続管を接合することを特徴とするメータケースの製造方法。
【請求項2】
前記ケース本体のうち前記1対の接続管を接合する部分に前記接続管の軸方向と直交する平面部を形成しておき、その平面部に前記接続管を摩擦圧接により接合することを特徴とする請求項1に記載のメータケースの製造方法。
【請求項3】
前記1対の接続管は、パイプ材又は板金を塑性加工して小径筒部とその小径筒部より大径な大径筒部とを一体成形しておき、前記大径筒部の外周面に、前記液体が流れる配管と前記メータケースとを螺合接続するための雄螺旋部を転造成形してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のメータケースの製造方法。
【請求項4】
前記塑性加工は、液圧加工であることを特徴とする請求項3に記載のメータケースの製造方法。
【請求項5】
前記ケース本体は、両端開放の筒壁とその筒壁の一端開口を閉塞した底壁とを塑性加工により別々に成形しておき、それら筒壁と底壁とを接合してなることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のメータケースの製造方法。
【請求項6】
前記ケース本体の内側に挿入される本体固定治具の外面に位置決用の凹部又は凸部を設け、
前記本体固定治具の前記位置決用の凹部又は凸部に対応した位置決用の凸部又は凹部を前記ケース本体の内面に成形しておき、前記本体固定治具の外面と前記ケース本体の内面とを凹凸係合させて、前記ケース本体を回転不能かつ移動不能に位置決めした状態で、前記1対の接続管を前記ケース本体に接合することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のメータケースの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載のメータケースの製造方法で製造したメータケースに対して、前記流量計測部と、前記流量計測部を前記メータケースに対して抜け止めするための環状部材と、前記流量計測部による計測結果を表示するための表示部とを組み付ける最終組付け工程を行う流量計の製造方法であって、
前記ケース本体の底壁外面が載置されるケース固定治具の前記載置面に位置決用の凹部又は凸部を設け、
前記ケース固定治具の前記位置決用の凹部又は凸部に対応した位置決用の凸部又は凹部を前記ケース本体の底壁外面に成形しておき、
前記ケース固定治具の載置面と前記ケース本体の底壁外面とを凹凸係合させて、前記メータケースを回転不能かつ移動不能に位置決めした状態で、前記ケース本体に前記流量計測部を挿入し、次いで、前記環状部材を前記ケース本体との間に備えたバヨネット構造により前記ケース本体の上端部に係止し、次いで、前記表示部を前記ケース本体の上端部に組み付けることを特徴とする流量計の製造方法。
【請求項8】
前記最終組付け工程の後に行われる前記流量計の計測性能試験工程において、前記計測性能試験を行う試験装置のうち、前記ケース本体の底壁外面が載置される載置面に位置決用の凹部又は凸部を設け、
前記試験装置の前記位置決用の凹部又は凸部に対応した位置決用の凸部又は凹部を前記ケース本体の底壁外面に成形しておき、
前記試験装置の載置面と前記ケース本体の底壁外面とを凹凸係合させて、前記ケース本体を回転不能かつ移動不能に位置決めした状態で、前記計測性能試験を行うことを特徴とする請求項7に記載の流量計の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至6の何れかに記載のメータケースの製造方法で製造したメータケースと、
前記メータケースに収容されて前記メータケースを通過する液体の流量を計測する前記流量計測部とを備えたことを特徴とする流量計。
【請求項10】
前記流量計測部は、前記1対の接続管の間を連絡した計測流路を有し、前記計測流路を流れる液体の流量を、超音波、電磁誘導、羽根車又は前記計測流路を通過する液体に発生させた渦を利用して計測するように構成されたことを特徴とする請求項9に記載の流量計。
【請求項11】
前記メータケースは、計測原理の異なる複数種類の前記流量計測部の間で共通使用可能としたことを特徴とする請求項9又は10に記載の流量計。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−107406(P2010−107406A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280729(P2008−280729)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【Fターム(参考)】