説明

モジュラプラグ

【課題】耐久性が高く、意図しない接続解除を防ぐモジュラプラグを提供する。
【解決手段】突起部102を上面に備えた板状のロックレバー101をモジュラプラグ本体の上部の一部として形成し、ロックレバー101の両側に弾性を有する側面部103,104を形成し、側面部103,104それぞれの内側に傾斜面103A,104Cを互いにずらして形成する。これにより、ロックレバー101がモジュラプラグ本体から突出せず、側面部103,104を両側から押すことでモジュラジャックとのロックを解除できるモジュラプラグ1を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器にケーブルを接続するためのモジュラプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器と電話線やLAN(ローカルエリアネットワーク)ケーブルとを接続するために、通信機器にモジュラジャックを備え、ケーブルの端にモジュラプラグを取り付けて両者を接続する方法が取られている。
【0003】
図6に、従来のモジュラジャックとモジュラプラグを示す。同図右に示すモジュラプラグを同図左に示すモジュラジャックの挿入口301に挿入してケーブルと通信機器とを接続する。従来のモジュラプラグには、抜け防止のためのロック手段として可撓性のあるロックレバー201が設けられている。ロックレバー201の中間部には突起部202が形成されている。モジュラプラグをモジュラジャックに差し込んだときに、突起部202がモジュラジャックの係止部302と噛み合って安定した接続状態が維持され、不用意なケーブルの抜けや接続不良を防いでいる。
【0004】
モジュラプラグをモジュラジャックから抜く場合は、ロックレバー201をモジュラプラグ本体側へ押すことで、モジュラプラグの突起部202とモジュラジャックの係止部302との噛み合わせが解除されて、モジュラプラグをモジュラジャックから引き抜くことができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3479239号公報
【特許文献2】実公平8−2937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モジュラプラグの素材は、価格や形成の容易さから、プラスチックが用いられることが多く、モジュラプラグの大きさは10mm角以下の小さな寸法である。また、ロックレバーは、モジュラプラグ本体から突出し、弾性を持たせるために薄く形成されている。そのため、ロックレバーは破損しやすいという問題がある。例えば、ロックレバーに紐のようなものが引っかかったり、ロックレバーとモジュラプラグ本体との間にものが入り込み、ロックレバーにモジュラプラグ本体から離れる方向に力がかかるとロックレバーの付け根が折れてしまう。ロックレバーが折れたモジュラプラグを使用した場合、抜け防止機能が働かず、意図しない接続解除やケーブルの抜け落ちが発生しやすくなるという問題がある。ロックレバーが破損した場合はモジュラプラグ全体を交換する必要がある。特許文献1では、破損したロックレバーのみを交換する技術が開示されているが、ロックレバーの破損を防止することはできない。
【0007】
また、ケーブルに、モジュラジャックから引き抜く方向に張力が働いている状態で、ロックレバーを押し下げる方向に力がかかると、容易に接続が解除されてしまうという問題がある。特に、大規模なルータや複数段に重ねられたスイッチハブなどでは、モジュラジャックが高い密度で配置されており、ケーブルを抜く作業時に、近くのモジュラプラグのロックレバーに触れてしまい、意図せずにケーブルが抜けて人為故障となることがある。意図しないケーブルの接続解除は少しの間隔であっても大規模かつ重大なネットワーク障害を発生させる原因となる。意図しない接続解除を防止するために、ロックレバーを保護するロックガードが考案されている(特許文献2参照)。ロックガードはモジュラプラグに新たな部品を付ける必要があり、モジュラプラグが巨大化するため、高い密度で配置されたモジュラジャックへの接続で利用することはできない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、耐久性が高く、意図しない接続解除を防ぐモジュラプラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るモジュラプラグは、モジュラプラグ本体の上部の一部として形成され、上面に突起部を備える板状のロックレバーと、前記ロックレバーの両側に形成され、弾性を有する一対の側面部と、を有し、前記側面部のそれぞれは、前記ロックレバー側の面の互いに上下にずらした位置に傾斜面を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記モジュラプラグにおいて、前記側面部にスリットを有することを特徴とする。
【0011】
上記モジュラプラグにおいて、前記ロックレバーの上面の角を削ったことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐久性が高く、意図しない接続解除を防ぐモジュラプラグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態におけるモジュラプラグの斜視図である。
【図2】本実施の形態におけるモジュラプラグの断面図である。
【図3】本実施の形態におけるモジュラプラグの分解斜視図である。
【図4】側面部が押されたときのロックレバーの位置を示す断面図である。
【図5】本実施の形態における別のモジュラプラグの断面図である。
【図6】従来のモジュラジャックとモジュラプラグを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態におけるモジュラプラグの構成を示す斜視図である。
【0016】
本実施の形態におけるモジュラプラグ1は、ロックレバー101をモジュラプラグ本体の上部の一部として形成し、モジュラプラグ本体の両側面部103,104を押すことでロックレバー101とともにロックレバー101の上面に形成された突起部102が下がり、モジュラジャックとのロックが解除されて、モジュラプラグ1を抜くことができるようになっている。
【0017】
ロックレバー101は、モジュラプラグ本体の上部の一部として形成されてモジュラプラグ1の上面を構成し、モジュラジャックに噛み合う突起部102をその上面に備え、一端をモジュラプラグ本体に固定した弾性を有する板状の部材である。ロックレバー101の図1の奥側、つまりケーブルが接続される側が下がることで突起部102も下がり、モジュラジャックとのロックが解除される。
【0018】
ロックレバー101の両側、つまりモジュラプラグ本体の両側面には弾性を有する側面部103,104が形成される。側面部103,104の下部にはスリット105が形成され、側面部103,104を容易にたわませることができる。この側面部103,104は、モジュラプラグとモジュラジャックとのロックを解除するボタンとして機能する。
【0019】
続いて、側面部103,104の断面について説明する。
【0020】
図2は、本実施の形態におけるモジュラプラグのケーブル側(図の奥側)の断面図である。
【0021】
図2に示すように、側面部103,104の内側(モジュラプラグ1内部)にはロックレバー101が上下して動く面に対して傾斜した傾斜面103A,104A,104Cが形成される。この傾斜面103A,104A,104Cにより、側面部103,104が外側から内側へ横方向に押された場合に、横方向からの力がロックレバー101が下がる力へ変換される。
【0022】
一方の側面部104の傾斜面の途中には、ロックレバー101が上下して動く面と平行な垂直面104Bを設けて傾斜面を階段状に構成している。これにより、側面部103,104のいずれか一方だけが押された場合は、ロックレバー101が十分に下がることがなく、モジュラジャックとのロックは解除されない。片側から押しただけではロックが解除されないしくみについては後述する。
【0023】
図2に示すように、本実施の形態におけるロックレバー101の断面は、ロックレバー101の上面の角が削られた六角形である。ロックレバー101の上面の角を丸く削るものでもよい。ロックレバー101の上面の角を削ることで、ロックレバー101が上面側に反り返ってしまっても、側面部103,104が押されたときに傾斜面103A,104Aをロックレバー101に接触させてロックレバー101を下げることができる。
【0024】
図3は、本実施の形態におけるモジュラプラグの分解斜視図である。
【0025】
本実施の形態におけるモジュラプラグ1は、材質としてプラスチックを用い、モジュラプラグ上部110とモジュラプラグ下部120の2部品に分かれるものを形成する。
【0026】
モジュラプラグ上部110には、ロックレバー101、突起部102、側面部103,104、およびスリット105を設ける。
【0027】
モジュラプラグ下部120は、従来と同様のものを利用することができる。これにより、新たな金型を作成する必要がなくなる。
【0028】
モジュラプラグ下部120にケーブルの端子を差し込み、モジュラプラグ上部110を上から被せ、かしめ工具で上下の部品をはさみ固めて、モジュラプラグ1をケーブルに接続する。
【0029】
次に、側面部103,104を両側から押さない場合はモジュラジャックとのロックが解除されないしくみについて説明する。図4は、側面部103,104が片側から押されたとき、および両側から押されたときのロックレバー101の位置を示す断面図である。
【0030】
図4(a)は、傾斜面104A,104Cが階段状に形成された側面部104だけが押されたときの様子を示す断面図である。側面部104だけが押された場合は、垂直面104Bにより、側面部104が押された力は、ロックレバー101を下げる力に変換されず、ロックレバー101が下がることはない。そのため、モジュラジャックとのロックは解除されない。なお、ロックレバー101は板状であるので、上下方向に対しては容易にたわむが、左右方向に対してはほとんどたわまないので、ロックレバー101が反対側の傾斜面103Aに押しつけられて下がることはない。
【0031】
図4(b)は、傾斜面103Aが形成された側面部103だけが押されたときの様子を示す断面図である。側面部103だけが押された場合は、傾斜面103Aが形成された分だけロックレバー101が下がるが、モジュラジャックとのロックが解除されるまではロックレバー101の突起部102は下がらない。
【0032】
図4(c)は、側面部103,104が両側から押されたときの様子を示す断面図である。側面部103,104が両側から押された場合は、側面部103の傾斜面103Aにより途中までロックレバー101が下がり、側面部104の傾斜面104Cによりロックレバー101がさらに下がる。その結果、突起部102が十分に下がり、モジュラプラグ1とモジュラジャックとのロックが解除される。
【0033】
図5は、本実施の形態における別のモジュラプラグの断面図である。図5に示すモジュラプラグは、側面部103,104の傾斜面を互いにずらして形成している。また、ロックレバー101の断面を四角形としている。図5に示すように傾斜面を形成した場合でも、側面部103,104が両側から押されなければロックは解除されない。側面部103が押されることでロックレバー101が下がり、側面部104が押されることでロックレバー101がさらに下がる。側面部104だけが押された場合は、垂直面がロックレバー101に接触するので、ロックレバー101は下がらない。
【0034】
なお、側面部103,104の傾斜面は、側面部103,104全体にわたって形成する必要はなく、側面部103,104が押される箇所、モジュラプラグ1にケーブルを接続する側に形成されていればよい。側面部103,104の外側にボタン形状の突起を配置して側面部103,104を押しやすくしてもよい。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態によれば、突起部102を上面に備えた板状のロックレバー101をモジュラプラグ本体の上部の一部として形成し、ロックレバー101の両側に弾性を有する側面部103,104を形成し、側面部103,104それぞれの内側に傾斜面103A,104Cを互いにずらして形成することで、ロックレバー101がモジュラプラグ本体から突出せず、側面部103,104を両側から押すことでモジュラジャックとのロックを解除できるモジュラプラグ1を提供することができる。ロックレバー101がモジュラプラグ本体から突出していないので、ロックレバー101の破損を防ぐことができ、さらに、意図せずロックレバー101を押して接続解除されることを防止できる。また、側面部103,104を両側から押さなければモジュラジャックとのロックが解除されないので、意図しない接続解除が防止できる。
【0036】
本実施の形態によれば、側面部103,104にスリットを設けることにより、側面部103,104がたわみやすくなる。
【0037】
本実施の形態によれば、ロックレバー101の上面の角を削ることにより、側面部103を押したときに側面部103をロックレバー101にぶつけることなく、ロックレバー101を傾斜面103Aに接触させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…モジュラプラグ
101…ロックレバー
102…突起部
103,104…側面部
103A,104A,104C…傾斜面
104B…垂直面
105…スリット
110…モジュラプラグ上部
120…モジュラプラグ下部
201…ロックレバー
202…突起部
301…挿入口
302…係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュラプラグ本体の上部の一部として形成され、上面に突起部を備える板状のロックレバーと、
前記ロックレバーの両側に形成され、弾性を有する一対の側面部と、を有し、
前記側面部のそれぞれは、前記ロックレバー側の面の互いに上下にずらした位置に傾斜面を備えたことを特徴とするモジュラプラグ。
【請求項2】
前記側面部にスリットを有することを特徴とする請求項1記載のモジュラプラグ。
【請求項3】
前記ロックレバーの上面の角を削ったことを特徴とする請求項1又は2記載のモジュラプラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−138275(P2012−138275A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290263(P2010−290263)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】