説明

モジュール式クロックスプリング

本発明は、クロックスプリング全体の構成を変更する必要無く、クロックスプリングのモジュラー部品を変更可能な自動車ステアリングコラムで使用されるモジュラー式クロックスプリングに指向される。クロックスプリングは、少なくとも6つのモジュール、すなわち、カバー・モジュール、ハウジング・モジュール、内径(ID)コネクター・モジュール、外径(OD)コネクター・モジュール、錠止モジュール、及びフラット電気ケーブル・モジュールから構成される。クロックスプリングのモジュール特性は単一の総称的なクロックスプリングを様々なステアリングコラムで使用可能にする。取付スタイル、コネクタースタイル又は異なるステアリングコラム内の回路数の僅かな差異でクロックスプリング全体を再構成する必要なく関連モジュールへの変更に適合し得る。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材が固定部材に対する連続的電気接続を維持可能にする。自動車で使用されるモジュラー式クロックスプリングに関する。特に、モジュラー式クロックスプリングは、他のモジュールの機能に影響を及ぼさずに個々に変更し得る。その結果、特定のモジュールはクロックスプリング全体を再設計する必要無く異なる自動車内で使用すべく変更し得る。
【背景技術】
【0002】
本発明は多数の用途を有し得るが、最も普及しているのは自動車における使用である。極めて多数の自動車はエアバッグ・システムを有する。エアバッグは、通常、運転者に面するステアリング・ホイールに設置される。エアバッグは、電気信号をエアバッグ衝突組立体に送信する、車体におけるセンサと電気的に接続されなければならない。このエアバッグ衝突組立体は衝突時にエアバッグを瞬間的に膨張させる。クロックスプリングは、ステアリングコラムの回転装置を車両の他の部分の静止した構成要素に電気接続するために、実際、何れの車にも見られる。
【0003】
車両には極めて多数のタイプ及びモデルがあるからしばしば、対応する車両の要求に合致するように僅かな変更がクロックスプリングに対して必要である。通常、これらの差異は装着スタイル、コネクタースタイル、あるいはクロックスプリング内の回路数である。現在までのこれらの特徴の何れか1つにおける差異はクロックスプリング全体の完全な再設計を要し、クロックスプリングの生産のための高コスト及びより長いリードタイムに帰着する。
【0004】
本発明は、特定の車両要求に対処すべくクロックスプリングのモジュールの何れか1つを変更することによって、異なる車両で使用し得るモジュラー式クロックスプリングを提供する。多数のモジュールを有するクロックスプリングは当該業界では新規ではない。Horiutiの従来技術文献及びUenoの別の従来技術文献はこうしたクロックスプリングを開示する(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、これらのクロックスプリングは。一般的に、これらの組立を容易にする多数のモジュールを有し、かつ組立プロセスを単純に保つためにモジュール数を制限するように構成されてきた。例えば、Horiutiは、発明の概要において、発明の目的は”ケースへのフラット電気ケーブル接続部分の容易な取付を可能にし、かつフラット電気ケーブル接続部分の要求部品点数を最小化する(permit easy installation of the flat cable connecting portions to cases and which has [a] minimized number of required parts)”ことであると述べている。従来技術のクロックスプリングは多数の車両の特定の機能的要求及びデザイン要求に適合するように容易に変更することができるモジュールを有することを意図して構成されていなかった。
【特許文献1】米国特許第5,226,831号明細書
【特許文献2】米国特許第5,286,219号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、クロックスプリング全体の構成を変更する必要無く、クロックスプリングのモジュラー部品を変更可能な自動車ステアリングコラムで使用されるモジュラー式クロックスプリングを指向する。クロックスプリングは、少なくとも6つのモジュール、すなわち、カバー・モジュール、ハウジング・モジュール、内径(ID)コネクター・モジュール、外径(OD)コネクター・モジュール、錠止モジュール、及びフラット電気ケーブル・モジュールから組み立てられる。
【0006】
ハウジング・モジュールとカバー・モジュールは、フラット電気ケーブル・モジュールがカバー・モジュールに設置したハブの周りに巻回された状態で、フラットケーブル・モジュール用エンクロージャーを形成するために噛合される。フラット電気ケーブル・モジュールの内側及び外側端部は、IDコネクター・モジュール及びODコネクター・モジュールにそれぞれ固定される。IDコネクター・モジュールは、ステアリングコラム内の電装品への取付用カバー・モジュールの開口を貫通して延在する。ODコネクター・モジュールは、車両の他の固定構成要素に接続するためのハウジングの外部周辺エッジの周りに位置づけられる。錠止モジュールは、ODコネクター・モジュールをハウジング・モジュールに錠止すべくODコネクター・モジュールに係合する。
【0007】
クロックスプリングのモジュール特性は単一の総称的なクロックスプリングを様々なステアリングコラムで使用可能にする。取付スタイル、コネクタースタイル又は異なるステアリングコラム内の回路数の僅かな差異でクロックスプリング全体を再構成する必要なく関連モジュールへの変更に適合し得る。例えば、車両で使用されるコネクターのタイプの変更は、クロックスプリングの残りのモジュールを変更せずに、ID又はODコネクターの何れかを変更することによって適合し得る。
【0008】
従って、本発明の目的は、クロックスプリングの残りのモジュールを変更する必要なく、クロックスプリングの様々なモジュールを車両の特定要求に対処すべく変更可能にするクロックスプリングを提供することである。本発明の更なる目的は、システム間のほとんどの周波数を変更し、かつクロックスプリング内のこれらのモジュールを分離するこれらのモジュールを認識し、クロックスプリングの他のモジュールに影響を及ぼさずに変更し得ることである。本発明のまた更なる目的は、単純且つ効率的な態様で再構成し得るモジュラー式クロックスプリングを提供し、これによりクロックスプリングを生産する全体的コストを減じることである。
【0009】
これら及び他の目的によって、本発明の利点及び特徴は明らかに成り得る。本発明の以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲及び本願明細書に添付された幾つかの図面を参照することによって本発明の本質を明瞭に理解し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ここで、図1を詳細に参照すると、図1は、ハウジング・モジュール2、カバー・モジュール4、フラット電気ケーブル・モジュール6、内径(ID)コネクター・モジュール8、外径(OD)コネクター・モジュール10及び錠止モジュール12を備える、モジュール式クロックスプリングの分解組立図を示す。
【0011】
フラットケーブル・モジュール6はクロックスプリングと共に使用すべき当該分野で周知のタイプである。フラットケーブル・モジュール6は、IDコネクター・モジュール8及びODコネクター・モジュール10のそれぞれに取り付けられた内側端部7及び外側端部9を有する。任意の方法のうちの1つにID及びODコネクター・モジュール8および10への接続を遂行することができるが、図1に示すような好ましい方法は、IDコネクター・モジュール8及びODコネクター・モジュール10の両方が、フラットケーブル・モジュール6の内側端部7及び外側端部9と噛合する、それぞれ、平らな壁部分14及び16を含むことを示す。
【0012】
クロックスプリングの幾つかのモジュール及びこれらのモジュールがどのように互いに取り付けられるのかを説明する。IDコネクター・モジュール8は、カバー4に形成された開口18から挿入される。図4及び図4Aに最も良く示すように、カバー4はハブ20を有し、このハブ20の周りにフラットケーブル6が巻回される。図4及び図4Aは、カバー4へ取付前後のIDコネクター・モジュール8及びフラットケーブル・モジュール6を示す。クロックスプリング1を組み立てる際に、ハウジング2への取付に先立って図4Aに示すように、フラットケーブル・モジュール6及びIDコネクター・モジュール8はカバー4に固定しなければならない。これは、カバー4及びハウジング2が(図3に示すように)組み立てられた後では、ハウジング2の内部へのアクセスが出来ないからであり、その結果、フラットケーブル・モジュール6及びIDコネクター・モジュール8を挿入することが不可能になるからである。
【0013】
ここで、図3及び図3Aを参照すると、ハブ20はハウジング2のスロット24内で摺動する外向きに延在するフランジ22を有する。スロット24は2つの部分、外側部分26及び内側部分28を有し、外側部分26は内側部分28より僅かに大きな幅を有する。ハブ20及びそのフランジ22が通過し得るように、外側部分26の幅が構築される。ハブ20のみが通過し得るように、スロットの内側部分28の幅が寸法づけられる。
【0014】
ハブ20がスロットの外側部分26を通じて挿入された後、それはハウジング2の中心に向かって摺動されて内側部分28内に入る。フランジ22はハウジングの内側部分28の外周エッジ23に係合し、こうして、カバー4がハウジング2から分離するのを阻止する。カバー・プレート4はハウジング壁5の頂部に載り、かつハウジング2の内側を密封する。
【0015】
ここで図2及び図3Aを参照すると、これらの図はODコネクター・モジュール10がハウジング2にどのようにして固定されるのかを示す。スロット24の外側エッジ31には、レッジ32及びブラケット34によって溝30が形成される。ODコネクター・モジュール10は、溝30内に摺動し、かつ、図3Aに示すように、レッジ32とブラケット34の中間に固定される。リップ36の前面はハウジング2に対してハブ20を確実に保持するようにフランジ22の真下でハブ20の周りにぴったり嵌まる。
【0016】
ここで、図3A、図5及び図6を参照して、錠止モジュール12のハウジング2への取付を説明する。図3Aは、ODコネクター・モジュール10のベース・プレート17がハウジング2の耳部分7の頂上に着座するように、ハウジング2に固定されたODコネクター・モジュール10を示す。耳部分7及びベース・プレート17には、ピン(図示せず)又は他の取付手段の挿入のために、それぞれ、開口40及び42が形成される。
【0017】
図5は、明瞭化のために、ハウジング2から取り外されたカバー4の分解組立図を示すが、錠止モジュール12のハウジング2への取付に先立って、カバー4が上述したように、ハウジング2に固定されることを理解すべきである。錠止モジュール12は、ODコネクター・モジュール16のベース・プレート17及びハウジング2の耳部分7の周りで摺動する溝が形成された内部(図示せず)を具備するベース部分13を含む。ベース部分13の溝が形成された内部の輪郭は締まり嵌めを与えるべく、ベース・プレート17及び耳部分7の輪郭と一致する。ベース部分13の頂部部分は、錠止モジュール12がODコネクター・モジュール10のレセプタクル部分19の周りにぴったり嵌まる。最終的に組み立てられたクロックスプリング1を図6に示す。
【0018】
本発明のモジュール式クロックスプリングは幾つかの独立したモジュール、特に、IDコネクター・モジュール8、ODコネクター・モジュール10、カバー4、ハウジング2、フラット電気ケーブル・モジュール6及び錠止モジュール12を有する。その結果、システム要件の通常の変更はクロックスプリング1の完全な再構成を必要としない。例えば、取付スタイルの変更はハウジング構造体の変更を要するのみであるか、あるいは回路数の変更は使用されるフラットケーブルのタイプ又はID及びODコネクター・モジュールを単に変更することを要する。
【0019】
本発明のクロックスプリングは、自身に取り付けられた特定のモジュールがクロックスプリングの残りのモジュールに影響を及ぼさずに変更し得るように構成される。これは、費用をかけて再設計せずに異なるシステムの要求に対処すべく特定のモジュールを変更する柔軟性を製造者に許容する。さらにまた、このクロックスプリングは、一列のクロックスプリングが様々に異なる車両モデルを供するための基体として役立ち得る。何故なら、様々なクロックスプリングは幾つかの共通なモジュールを有するからである。これは、設計、製造及び貯蔵するための部品がいらないから製造費用及び開発費用を減じる。
【0020】
本願明細書では好ましい実施形態のみを特に説明し且つ記載してきたが、本発明の多くの変更及び変形は、上記教示に照らし、かつ本発明の精神及び意図した範囲から逸脱せずに添付の特許請求の範囲の範囲内で可能であることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のクロックスプリングの分解組立斜視図である。
【図2】ハウジング、フラット電気ケーブル・モジュール、IDコネクター・モジュール及びODコネクター・モジュールの分解組立斜視図である。
【図3】ハウジングに固定されたODコネクター無しの該ハウジングに固定されたカバーの底面図である。
【図3A】ハウジングに固定されたODコネクター付きの該ハウジングに固定されたカバーの底面図である。
【図4】カバー・プレートへの取付前のIDコネクター及びフラットケーブルの斜視図である。
【図4A】カバー・プレートへの取付後のIDコネクター及びフラットケーブルの斜視図である。
【図5】ハウジングにフラットケーブルを具備した、本発明のクロックスプリングの斜視図である。
【図6】組み立てられた状態の本発明のクロックスプリングの斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 クロックスプリング
2 ハウジング・モジュール
4 カバー
5 ハウジング壁
6 フラット電気ケーブル・モジュール
7 内側端部
8 内径(ID)コネクター・モジュール
9 外側端部
10 外径(OD)コネクター・モジュール
12 錠止モジュール
13 ベース部分
14、16 壁部分
16 錠止モジュール
17 ベース・プレート
18 開口
19 レセプタクル部分
20 ハブ
22 フランジ
23 外周エッジ
24 スロット
26 外側部分
28 内側部分
30 溝
31 外側エッジ
32 レッジ
34 ブラケット
36 リップ
40、42 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個々に変更可能なモジュールを具備するモジュラー式クロックスプリングであって、
全体的に円形であり、かつエンクロージャーを構成するために係合可能なハウジング・モジュール及びカバー・モジュールと、
前記ハウジング・モジュール及び前記カバー・モジュールによって構成された前記エンクロージャー内部に配置されたフラット電気ケーブル・モジュールと、
前記フラットケーブル・モジュールの内側端部に固定されたIDコネクタ・モジュールと、
前記フラット電気ケーブル・モジュールの外側端部に固定されたODコネクタモジュールと、を備えるモジュラー式クロックスプリング。
【請求項2】
前記IDコネクタ・モジュールは前記カバー・モジュールの開口を貫通して突出し、前記IDコネクタ・モジュール及び前記カバー・モジュールは前記ハウジング・モジュールに対して回転することができる、請求項1に記載のモジュラー式クロックスプリング。
【請求項3】
前記ハウジング・モジュールは外側スロット部分及び内側スロット部分を具備するスロットを含み、
前記外側スロット部分は前記内側スロット部分より幅が拡く、前記カバー・モジュールは自身の端部にフランジを具備するハブを含み、
前記ハブは前記外側スロット部分内に挿入され、かつ前記内側スロット部分に移動するように構成され、
前記フランジは前記内側スロット部分のエッジに係合して前記カバー・モジュールを前記ハウジング・モジュールに噛合させる、請求項1に記載のモジュラー式クロックスプリング。
【請求項4】
前記ハウジング・モジュールのスロットは該スロットの側辺に沿って形成した溝を含み、
前記ODコネクタは前記溝内に挿入されて前記ODコネクタを前記ハウジング・モジュールに固定するリップを含む、請求項1に記載のモジュラー式クロックスプリング。
【請求項5】
前記ハウジング・モジュール及び前記ODコネクタ・モジュールに噛合して該ODコネクタモジュールを該ハウジングモジュールに固定する錠止モジュールを更に備える、請求項4に記載のモジュラー式クロックスプリング。
【請求項6】
前記クロックスプリングは自動車のステアリングコラムで使用される、請求項1に記載のモジュラー式クロックスプリング。
【請求項7】
自動車で使用するモジュラー式クロックスプリングであって、前記クロックスプリングは複数のモジュールを具備し、各モジュールは前記クロックスプリングの他のモジュールに影響を及ぼすことなく変更することができるモジュラー式クロックスプリングにおいて、
エンクロージャーを形成し、かつフラットケーブル・モジュールを保持する、ハウジング・モジュール及びカバー・モジュールと、
前記フラット電気ケーブル・モジュールの内側端部に固定されたIDコネクタと、前記フラット電気ケーブル・モジュールの外側端部に固定されたODコネクタと、を備え、
前記IDコネクタはステアリングコラムの構成要素に連結されるように構成され、
前記ODコネクタは前記車両の別部分の構成要素に連結されるように構成されるモジュラー式クロックスプリング。
【請求項8】
前記IDコネクタ・モジュールは前記カバー・モジュールの開口を貫通して突出し、
前記IDコネクタ・モジュール及び前記カバー・モジュールは前記ハウジング・モジュールに対して回転することができる、請求項1に記載のモジュラー式クロックスプリング。
【請求項9】
前記カバー・モジュールはハブを含み、かつ前記フラット電気ケーブル・モジュールは前記ハブの周りに配置され、
前記ハブは自身の外側端部にフランジを備え、前記フランジは前記ハウジング・モジュールに形成したスロットに係合して前記カバー・モジュールを前記ハウジング・モジュールに固定する、請求項1に記載のモジュラー式クロックスプリング。
【請求項10】
前記ハウジング・モジュールに形成した前記スロットは自身の側辺に沿って形成した溝を具備し、
前記ODコネクタ・モジュールは前記溝に係合し、かつ前記ハブに当接し、前記カバー・モジュールを前記ハウジング・モジュールに固定するリップを含む、請求項1に記載のモジュラー式クロックスプリング。
【請求項11】
前記ハウジング・モジュール及び前記ODコネクタ・モジュールに係合して該ODコネクタ・モジュールを該ハウジング・モジュールに固定する錠止モジュールを更に備える、請求項1に記載のモジュラー式クロックスプリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−503355(P2007−503355A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524713(P2006−524713)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/026622
【国際公開番号】WO2005/022693
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(500446638)メソード・エレクトロニクス・インコーポレーテッド (13)
【Fターム(参考)】