説明

モジュール検出及び放電源校正を用いるガス検出器

サンプルからのイオン化信号をモジュール測定する装置及び方法を備えたパルス形放電検出器である。パルス形放電検出器には、チャンバー中の放電源、放電源から一定間隔を空けたコレクタ、放電電極へ接続されたモニター、コレクタへ接続された電位計、校正器、及びサンプル・ホールドプロセッサが備えられる。放電電極には放電チャンバー壁に対して中心に位置するソース電極が含まれる。コレクタは放電チャンバー壁に対して中心に位置する。放電信号が時間及び強度に対してモニターされる。収集された信号は放電強度に基いて調整される。収集信号は放電発生時間に基いた時間帯中に収集される。検出器の出力はパルス形放電と整合された収集信号に基いて予測される。本発明に係る校正器により収集信号は調整され放電ノイズが低減される。サンプル・ホールドプロセッサにより選択された調整信号値が累積されサンプル濃度が定量される。
【選択図】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス状サンプルの濃度を測定するための検出器、より詳細には収集データを放電と相関させ、及び収集データを校正して放電ノイズの影響を減ずるパルス形放電検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルガス成分の定量には種々形式の検出器が使用される。既知の検出器は、サンプルを検出可能とする方法、検出器が必要とする成分の取り決め方法、さらにサンプルの特性を実際に検出し検出データを処理する方法において多様である。
【0003】
パルス形放電検出器は、チャンバー中において放電ガスをイオン化して光子を生成し、試験対象サンプルを投入し、前記光子のサンプルガスとの相互作用から生成される電子の電離電流を測定する。検出器のイオン化源は放電ガス中の電気放電である。前記放電ガスは希ガスあるいは希ガスの混合ガスである。
【0004】
試験器材として、パルス形放電検出器にはガスクロマトグラフカラムあるいは他の適当な供給源から溶出されたサンプル投入ガスが供される。前記カラム流出液には通常、特定の流速でカラムを通してごく一般的に投入されるキャリヤーガスが含まれる。カラムは、サンプル成分の揮発性によるが、特定の時間間隔で連続的に濃度ピーク状態にある種々成分を溶出する。
【0005】
ガスクロマトグラフカラムは化合物の分離は行うが、化合物濃度の定量はできない。定量分析の実施に際しては、ガスクロマトグラフ検出器はカラム下流に連結される。一連の校正ガス、一定の流速、及び特定の静止相物質を用いることにより、保持時間に基づいてガスクロマトグラフカラムを化合物種類の分離に用いることができる。ガスクロマトグラフカラムからの流出によって生成されるいくつかの溶出ピークについて定量が行われる。
【0006】
パルス形放電検出器のイオン化機構は主に光イオン化であり、この光イオン化において放電によって光子の二原子分子放出が発生する。この高エネルギー光子によって検出器チャンバー中のサンプル化合物が順次イオン化される。パルス形放電検出器が放電ガスとしてヘリウムを使用する場合、光子発生は下記工程を経て起こる。
1.放電によりヘリウム原子HeがヘリウムイオンHeへイオン化される。
2.生じたHeイオンはヘリウム原子Heと結合して二原子分子イオンHeを生成する。
3.各二原子イオンHeは電子1個を捕獲して2つのヘリウム原子2Heへと解離し、この過程において光子が放出される。
前記工程3の期間中、分子相互作用、すなわち二原子ヘリウム分子状イオンの基底状態へリウムへの転位によって光子の連続放出が起こる。これらの光子はヘリウム自体を除いて殆どすべての化合物をイオン化できる13.5〜17.5eVの範囲内のエネルギーレベルにある。他の分子相互作用の過程によってもヘリウム原子放出及びヘリウム準安定発生等の放電に影響が生ずる。
【0007】
パルス形放電検出器は他のガスクロマトグラフ検出器に勝る好ましい特徴を有する。第一に、より高感度である。標準的パルス形放電検出器を用いたヘリウムイオン化検出モードにおけるサンプル中に存在するガスの最小検出限界はフレームイオン化検出器を用いて確認できる最小検出限界の約1/10である。パルス形放電検出器によればppbレベルでの濃度測定が可能である。第二に、パルス形放電検出器は反応の選択が可能である。ヘリウムが放電ガスとして用いられる場合、パルス形放電検出器は自在な反応を行う。ヘリウムが放電ガスとしての別の希ガスでパージされる場合、パルス形放電検出器は選択的な反応を行うことができる。第三に、パルス形放電検出器は均質な反応係数をもつ。有機化合物の範囲内では前記反応係数はサンプル中の炭素数の増加に伴って直線的に増加する。第四に、パルス形放電検出器は放射性物質の使用を必要としない。
【0008】
Wentworthらの米国特許5,394,091には、ヘリウムイオン化モードあるいは電子捕獲モードにおける使用に適合したイオン化検出器についての教示がある。この検出器は検出器セルあるいはチャンバーを通るヘリウムの流れを利用する。このチャンバーにはスパーク放電、サンプル投入及びサンプル検出のための領域がそれぞれある。前記ヘリウムの流れは前記スパークの領域を流れる唯一の物質である。サンプルガス及び/またはキャリヤーガスが注入され、前記サンプル投入領域中のスパーク下流においてヘリウムガスと混じり合う。一方がバイアス電極である2つの電極によってサンプルの放電特性が検出される。バイアス電極はサンプル投入口部位あるいはその上流、サンプル投入口下流に他の電極がある。電位計は、発生した電流間の差を測定する。これらの電流測定は一定時間間隔で記録される。放電ガスあるいはキャリヤーガス中の不純物の結果として基線電流が生成される。
【0009】
Stearnsらの米国特許5,767,683には、バイアス電圧帰還システムを備えたパルス形放電検出器についての教示がある。この帰還システムは比較回路を用いてコレクタ電極へ接続された電位計からの出力と基準電流との比較を行う。比較回路からの出力は制御回路へ入力され、ガス制御回路は次にバイアス電圧を出力する。検出器チャンバー内の電子電流の流れが投入サンプルガスのすべての濃度に対して一定に留まるように前記バイアス電圧が第一バイアス電極へ加えられる。即座に設定された制御回路を用いて第二の出力が生成される。この第二出力の大きさは電子捕獲検出器チャンバー内の選択されたサンプルガスの濃度に比例し、この第二出力は開示された電子捕獲検出器システムの反応信号である。パルス形放電検出器は断続的な電極放電を与える。典型的な放電電圧は300〜400Vの範囲内である。各放電間の典型的時間間隔は100〜800マイクロ秒の範囲内である。
【0010】
電流パルス形放電検出器はサンプルガスの電流出力を連続方式で測定する他、放電中及びパルス間の間隔中の状態の読み取りを行う。
【0011】
放電ノイズと称される放電変動によって感度測定結果に負の影響が及ぶ。放電ノイズは高品質パルサ及び汚れのない放電電極面の使用によって減ずることが可能であるが取り除くことは不可能である。
【0012】
従来型のパルス形放電検出器においては、比較的短い放電期間(放電間の間隔)とすることにより、測定感度が増大する。しかしながら、放電間の間隔を相対的に短縮すると平均電極温度が高くなり、電極の寿命が相対的に短縮される結果に帰す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、収集される電流とは対照的に、放電発生時にサンプルガス中のイオン化信号をモジュール方式で測定する装置及び方法を提供することによってパルス形放電検出器の感度を高めて信号収集を向上させる幾何学的形状に構成し、及び放電ノイズを考慮して収集信号の校正手段を与えることによって従来技術を改良することを目的とする。
【0014】
すなわち、本発明は、より長いパルス間隔を可能としてパルス形放電検出器の電力要求を減じ、相対的により長期にわたる耐用期間を与えることにより従来技術の改良を提供する。
【0015】
本発明に従った検出器の電力要求の低減により、検出器の携帯型検出器としての利用が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
パルス形放電検出器にはサンプルからのイオン化信号のモジュール測定のための手段及び方法が備えられている。かかるパルス形放電検出器には、チャンバー中の放電源、前記放電源から一定間隔を空けたコレクタ、前記放電源へ接続されたモニター、前記コレクタへ接続された電位計、校正器、及びサンプル・ホールドプロセッサが含まれている。放電電極には放電チャンバー壁に対して中心に位置したソース電極が含まれている。前記コレクタは前記チャンバー壁に対して中心に位置している。放電信号は時間と強度に対してモニターされる。収集された信号は放電強度に基いて調整される。収集された信号は放電発生時間に基いて一定時間帯中に収集される。検出器出力はパルス形放電と整合された収集信号に基いて予測される。本発明に係る前記校正器は収集信号を調整して放電ノイズを減少させる。前記サンプル及びホールドプロセッサは選択調整された信号値を累積してサンプル濃度を定量する。
【0017】
従って、本発明はとりわけ、
・対応する個々の放電の強度における変動に対して検出値を調整し、
・収集されたイオン化信号を各特定放電から分離し、
・各放電から生じたイオン化信号を積分してサンプル濃度を確立し、及び
・電力消費を最小限化して検出器の携帯化を可能とすることを目的とする。
本発明の他の目的は本願における説明から明らかとされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1には本発明に従った検出器10が示されている。検出器10は典型例として分析システムと一体化されている。ガスクロマトグラフカラム(図示せず)等の装置が典型的には検出器10の上流において使用されてサンプルガスを与え、解釈ソフトウェア(図示せず)を備えたコンピュータ等の他の装置が生成されたデータの受け取り、記憶、処理、及び報告に使用される。検出器10の主目的はサンプルガス中の化合物の定量的測定である。
【0019】
検出器10には検出器ハウジング11内に密閉チャンバー12が設けられている。例示的実施態様においては、チャンバー12はハウジング11内の細長い中空の空間であり、その長手方向はチャンバー軸18に沿っている。チャンバー12の一端は放電端14であり、他の一端はコレクタ端16である。
【0020】
放電源20は放電端14近傍に位置している。例示的実施態様では、放電源20にはソース電極22及びレセプタ電極24が含まれる。ソース電極22はチャンバー12中においてハウジング11の放電端14近傍まで延びている。ソース電極22の先端42は円筒形チャンバー12の中心軸18に位置している。好ましい実施態様では、ソース電極22は放電端14中心を放電端14を貫通して延び、チャンバー12の中心軸18と同軸上に配置されている。電源接続部21はハウジング11の外部に位置して、ソース電極22を電源(図示せず)へ導電的に連結している。レセプタ電極24はハウジング11の壁中に周辺を取り囲むように据え付けられている。好ましい実施態様では、レセプタ電極24は円筒形チャンバー12の周囲を取り囲むように延びている。電気的レセプタ接続23はハウジング11の外部に位置してレセプタ電極24への導電的連結を与えている。電極24に対する先端42の配置により先端42が電極24の表面から均等に離れることが可能になっている。
【0021】
コレクタ26はチャンバー12中をコレクタ端16近傍まで延びている。コレクタ先端46は円筒形チャンバー12の中心軸18に位置している。好ましい実施態様では、コレクタ26はコレクタ端16の中心で該コレクタ端を貫通して延びており、チャンバー12の中心軸18と同軸上に配置されている。従って、コレクタ26はチャンバー壁28から均等に離れている。電気的コレクタ接続部25はハウジング11の外部に位置して、コレクタ26への導電的連結を与えている。
【0022】
例示的実施態様では、ソース電極22及びコレクタ26はそれぞれ軸18に沿って配列された細長い部材である。コレクタ先端46とソース電極先端42との間には一定間隔が空けられている。
【0023】
チャンバー12には放電領域70、膨張領域72、及び収集領域74が設けられている。放電領域70 、膨張領域72及び収集領域74のそれぞれは円形断面を呈している。収集領域74の直径は放電領域70の直径より大きい。膨張領域72の直径はその放電領域70との界面からその収集領域74との界面に至るまで大きくなっている。放電領域70はチャンバー12の放電端14から先端42を通り越して延びている。収集領域74はチャンバー12の放電端16からコレクタ先端46を通り越して延びている。
【0024】
放電ガス投入口34が放電端14の近傍に設けられて、放電領域70における放電ガス30のチャンバー12中への投入が可能になっている。放電ガス30は、ヘリウム、当該技術分野で公知な他の適当なガス、あるいはそれらの混合ガスでよい。放電ガス投入口34は放電ガス30の加圧供給源(図示せず)へ接続している。例示的実施態様では、放電ガス投入口34はチャンバー12中の放電端14とソース電極先端42の中間に開口している。
【0025】
サンプルガス投入口36は膨張領域72においてチャンバー12中へ入りサンプルガス32(図示せず)の投入を行う。サンプルガス投入口36はガスクロマトグラフカラム(図示せず)等のサンプルガス源へ連結されている。
【0026】
例示的実施態様では、サンプルガス32には、キャリヤーガス、典型例としてはヘリウム、及び一定容量のサンプル物質が含まれている。検出器はこのサンプルガス32中のサンプル物質をキャリヤーガスの異物又は変動物として識別する。
【0027】
チャンバー12のコレクタ端16にはガス排気口38が設けられている。例示的実施態様では、ガス排気口38は収集領域中のコレクタ端16に近いコレクタ先端46とコレクタ端16の中間においてハウジング11を貫通している。
【0028】
従って、チャンバー12は、放電ガス投入口34のある比較的狭い放電領域70、サンプルガス投入口36のある円錐形の膨張領域72及びガス排気口33のある収集領域74から構成されている。収集領域74は投入口領域70よりも相対的に広い。かかる構造ゆえにチャンバー12内における放電端14からコレクタ端16へのガス流が増進される。作動中、かかる構造によってサンプルガス投入口36において投入されたサンプルガスの放電源20への直接接触が防止される。
【0029】
電気接続部25には電位計が取り付けられ、この電位計60はコレクタ26へ電気的に連結されている。例示的実施態様では、バイアス電圧66が電気接続部25へ加えられることによりコレクタ26及び電位計60へバイアス電圧が与えられる。
【0030】
電位計60は校正器62へ電気的に接続される。校正器62はサンプル・ホールドプロセッサ64に電気的に接続される。
【0031】
電気レセプタ接続部23はレセプタ電極24からモニター50への導電的連結を与え、該モニター50は発生回数又は周波数モニター52及び強度モニター54から構成される。周波数モニター52及び強度モニター54は校正器62と、サンプル・ホールドプロセッサ64へそれぞれ電気的に接続される。
【0032】
作動中、放電ガス投入口34が放電ガス供給路(図示せず)へ接続され、サンプルガス投入口36がサンプルガス供給路(図示せず)へ接続され、さらにガス排気口38がガス排気路(図示せず)へ接続される。各供給路と検出器10は、密閉環境を形成する。次いで検出器はヘリウム等の放電ガス30で充満される。
【0033】
放電ガス30の安定した流れが放電ガス投入口34を通して投入される。放電ガス30はチャンバー12中へ流れ込み、チャンバー12を通過してガス排気口38から流れ出る。サンプルガス投入口36が満たされサンプルガス32で加圧されているため、放電ガス30にとって有効な流路はチャンバー12を縦に通過して次いでガス排気口38へ至る通路だけである。いずれの物質についてもチャンバー12内へ入る手段は放電ガス投入口34とサンプルガス投入口36を通るのみであり、またチャンバー12内へ入る物質は放電ガス30とサンプルガス32だけである。
【0034】
一端放電ガス30がチャンバー12中を流れると、パルス形高電圧放電40が電気接続部21へ加えられ、ソース電極22とレセプタ電極24との中間にスパーク放電が発生する。ソース電極22とレセプタ電極24との間隔及び電圧レベルは、放電ガス30粒子をイオン化し光子の二原子分子放出を生ずるように調整される。チャンバー12の形状によって投入口34から排気口38への流れが強いられるので、イオン化された放電ガス30粒子はサンプルガス投入口36の方へ運ばれ、膨張領域72及び収集領域74においてサンプルガス32化合物が順次イオン化される。
【0035】
パルス形放電40はレセプタ電極24において放電信号80となる。図2Aは時間に対して放電信号80をグラフ表示した図である。
【0036】
パルス形放電40は完全かつ明瞭な放電信号80を生成するように設計されているが、パルス形放電40の反復ごとに強度の変動が起こる。このような変動はノイズと称される。
【0037】
例示的実施態様では、放電信号80は周波数モニター52及び強度モニター54から構成される放電モニター50へ伝達される。周波数モニター50は放電時間及びパルス形放電40間の間隔を含む放電期間を含めて同期周波数信号値84を識別する。強度モニター54は各パルス形放電40についてレセプタ電極24における強度信号値86を識別する。周波数信号値84及び強度信号値86は校正器62及び、サンプル・ホールドプロセッサ64へ個別あるいは集合的に伝達することができる。
【0038】
バイアス電圧66は電気接続部25を通してコレクタ26へ加えられる。このバイアス電圧66によってコレクタ先端46における放電サンプルガスイオンの受け取りが増進される。バイアス電圧は検出器の設計次第で正でも負でもよい。使用される電圧値は検出器のサイズによって選択される。
【0039】
収集信号90は電位計60によって定量される。バイアス電圧66によって測定基準点が与えられる。バイアス電圧66の変動によって収集信号90中にノイズが生成される。電位計60の入力リード線61へバイアス電圧を直接加えることにより、電気接続部25は電位計60と接続し前記ノイズを最小限に減らす。電位計60は収集信号90及びバイアス電圧66から収集信号値92を与える。
【0040】
図2Bには、時間に対して収集信号値92の強さが示されている。収集信号値92は校正器62へ伝達される。校正器62は強度信号値86に基いて収集信号値92を調整して調整信号値94を与える。この調整にはパルス形放電40ノイズに関する補正が含まれている。
【0041】
好ましい実施態様では、前記調整はパルス形放電40の発生に応じた時間帯において実施される。このような時間調整は放電発生から始まりユーザーによって決められるイオン化されたサンプル物質を識別するのに十分な期間までの時間帯において実施される。校正器62にはデジタル回路構成あるいは収集時間帯期の長さ調整するためのマイクロプロセッサを備えることも可能である。
【0042】
図2Cは時間に対して調整信号値94の強さを示したグラフである。図2Cのグラフは放電ガス30に関する信号値94を示しているがサンプルガス32中の物質に関連した上昇ピークについては示していない。調整信号値94は、パルス形放電40とパルス形放電49発生間に介在する無視信号と相関関係をもつ調整信号値94の所望の成分を定量するサンプル・ホールドプロセッサ64へ伝達される。
【0043】
別の実施態様では、強度信号値86は測定されなくても良いが、一定な信号値86として処理される。かかる別の実施態様では、パルス形放電40に応じて開始される時間帯中に収集信号92が収集される。この実施態様において結果的に得られる測定感度は前記開示した好ましい実施態様の感度に比べれば低くなる。しかしながら、上記別の実施態様には平均誘導電流の測定ではなく放電粒子のモジュール確認が組み込まれているので、従来方法よりも改善された測定方法を提供している。
【0044】
例示的実施態様では、シグナル・ホールドプロセッサ64によって各パルス形放電40について調整収集信号値94の全数値が累積される。この処理は調整収集信号値94の積分を介しても行うことができる。
【0045】
周波数信号値84はサンプル・ホールドプロセッサ64及び校正器62のためのタイミング機構を提供する。周波数信号値84は、パルス形放電40発生に比例するオン・パルスを伴う一連のオン/オフ・パルスを含むデジタル出力であってもよい。好ましい実施態様では、周波数信号値84は、オン・パルス条件下において、シグナル・ホールドプロセッサ64による信号94収集の引き金となり、また校正器62による収集信号92収集の引き金となる。より具体的には、校正器62に関しては、前記オン・パルス条件は校正器62が収集信号92を累積及び調整する時間帯を開始する引き金となる。従って、サンプル・ホールドプロセッサ64による信号94の収集間の間隔及び校正器62による収集信号92の収集時間帯間の間隔はパルス形放電40間の間隔に従って変動する。
【0046】
図2Dは時間を通した累積値96を示す図である。図2Dのグラフは放電ガス30に関する信号値96を示しているが、サンプルガス32に関連した上昇ピークについては示していない。かかる信号値96は図2Cに図示したピーク93の累積から成っている。
【0047】
図2Eは時間に対して累積値96を示した図であるが、時間を通した結果として測定対象となる2種化合物の出現を伴っている。ピーク95は第一の化合物を示し、ピーク97は第二の化合物を示している。
【0048】
図2A〜2Eに関して、図2A、2B及び2Cに示した時間の長さは図2D及び2Eに示した時間の長さよりもかなり短いことが分かる。図2A、2B及び2Cに示した時間はマイクロ秒あるいはミリ秒単位での測定に関わり、一方図2D及び2Eに示した時間は分単位での測定に関わる時間表示である。
【0049】
収集信号90は、純粋な放電ガス30によって生じた場合にはほぼ均質である。検出処理を放電ガス30及びサンプルガス32(キャリヤーガスのみから成る)を用いて開始することにより収集信号90、収集信号値92、調整信号値94及び累積値96についての基準値が明らかとなる。これらの基準値への変動から、サンプルガス32中の他のサンプル物質(図示せず)が識別されることになる。
【0050】
収集信号90及び結果的に得られる数値(収集信号値92、調整信号値94及び累積値96)の変動程度によってサンプルガス32中の物質の濃度が指示される。
【0051】
図3は、周波数モニター152及び強度モニター154から成るモニター150、校正器162、サンプル・ホールドプロセッサ164、電位計160、及び分離検出器チャンバー124をもつ密閉スパークチャンバー112を含むガスサンプリング装置100へ加えられるバイアス電圧166から構成される本発明に係る検出器の別の実施態様を示した図である。前記装置100の構造及び操作はStearnsらに付与された米国特許5,528,150において開示されている。前記装置100には、本願において電極114及び116を横切るパルス形放電140として言及されている、キャリヤーガス、好ましくはヘリウム及びクリプトン、中におけるパルス形直流からの光放出が組み込まれている。図3において、電極114及び116は放電電極114及びレセプタ電極116を構成している。電極131はアースされ、また電極130にはサンプルチャンバー124内で生成された所望の放電粒子を引きつけるのに十分なバイアス電圧166が与えられる。窓膜140はスパークチャンバー112内において生ずる光放出に対して透明である。サンプルガス132は窓膜140を通して上記したような光放出へ暴露される。サンプルガス132は投入口136を通して入り、排出口133から出る。パルス放電140によって発生された光子はサンプルガス132及びサンプルガス中の化合物へエネルギーを与えてサンプルガス132中の化合物から自由となった電子を生成する。自由電子は電極130において定量される化合物の濃度に比例した電子の大きさによって確認される。本発明の好ましい実施態様における教示は前記装置100へ直ちに適用される。パルス放電140はパルス信号を発生し、このパルス信号は周波数モニター152及び強度モニター154を含むモニター150によってモニターされる。周波数信号値184及び強度信号値186は校正器162へ伝達される。収集信号190は電位計160へ伝達され、収集信号値192は校正器162へ伝達される。校正器162は周波数信号値184及び強度信号値186に基いて収集信号192を調整して調整信号値194を生成する。前記調整にはパルス放電141ノイズの補正も含まれる。また前記調整には信号値192補正時間をパルス放電141発生と整合させる時間的調整も含まれる。サンプル・ホールドプロセッサ164は各パルス放電141について調整された収集値194の全数値を累積する。これにより、前記装置100は放電ノイズの影響を最小化するために調整された収集後の読み取りのモジュール測定を行う。
【0052】
本発明の別の簡略化された実施態様では、校正器62が排除され、サンプル・ホールドプロセッサ64による収集信号値92の一定時間内の収集が行われる。かかる別の実施態様では、収集信号値92は放電信号値82に基いては調整されない。かかる実施態様においては、収集信号値92はサンプル・ホールドプロセッサ64回路構成あるいはマイクロプロセッサによって決められた時間帯において猶測定される。この別の実施態様では、収集信号値92のモジュール補正という利点が得られる。
【0053】
本発明の上記開示及び記載は本発明を例証するための例示的説明である。上記説明した構成の詳細については、本発明の精神から逸脱することなく添付の特許請求の範囲の範囲内において種々変形を加えることが可能である。従って、本発明は本願添付の特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ限定されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に従った検出器を構成部分を含めて概略的に示した断面図である。
【図2A】モニターされた放電信号を時間に対して示したグラフである。
【図2B】図2Aと同様に収集信号を時間に対して示したグラフである。
【図2C】図2Aと同様に調整信号を時間に対して示したグラフである。
【図2D】図2Aと同様に出力信号を時間に対して示したグラフである。
【図2E】サンプル化合物濃度を表す出力信号を時間に対して示したグラフである。
【図3】本発明に従った構成部分を組み入れた別の実施態様の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電源及びコレクタを有するパルス形放電検出器であって、該検出器は、
電位計と、
校正器と、
前記放電源及び前記校正器に電気的に接続された放電モニターとを具備し、
前記電位計は前記コレクタ及び前記校正器に電気的に接続され、
前記電位計はコレクタ信号を検出し、
前記電位計は前記コレクタ信号に比例する収集信号値を生成し、
前記放電モニターは放電信号を検出し、
前記放電モニターは前記放電信号に比例する少なくとも1つの放電信号値を生成し、及び
前記校正器は前記少なくとも1つの放電信号値を受け取る、
ことを特徴とする放電検出器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの放電信号値に放電信号強度が含まれ、及び前記校正器が前記放電信号強度値に比例する前記収集信号値を調整することを特徴とする請求項1に記載の検出器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの放電信号値に放電時間値が含まれ、及び
前記校正器が前記放電時間値に応じて開始される時間帯中に前記収集信号値を処理することを特徴とする請求項1に記載の検出器。
【請求項4】
前記校正器がプロセッサへ電気的に接続され、
前記校正器が前記調整された収集値に比例する調整信号値を生成し、及び
前記プロセッサが前記調整された収集値の少なくとも1つの特性を累積するようにさらに構成されることを特徴とする請求項2に記載の検出器。
【請求項5】
前記プロセッサが前記放電モニターへ電気的に接続され、
前記プロセッサが前記放電モニターから放電時間値を受け取り、及び
前記プロセッサが前記放電時間値に応じて開始される時間帯中に前記調整信号値を受け取ることを特徴とする請求項4に記載の検出器。
【請求項6】
前記コレクタ信号に前記コレクタにおいて受け取られるイオンの測定単位が含まれることを特徴とする請求項1に記載の検出器。
【請求項7】
前記コレクタ及び前記電位計へ電気的に接続されたバイアス電圧発生器をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の検出器。
【請求項8】
放電源及びコレクタを有するパルス形放電検出器であって、該検出器は、
電位計と、
サンプル・ホールドプロセッサと、
前記放電源及び前記シグナル・ホールドプロセッサに電気的に接続された放電モニターとを具備し、
前記電位計は前記コレクタ及び前記シグナル・ホールドプロセッサに接続され、
前記電位計はコレクタ信号を検出し、
前記電位計は前記コレクタ信号に比例した収集信号値を生成し、
前記放電モニターは放電信号を検出し、
前記放電モニターは前記放電信号に比例した放電時間値を生成し、及び
前記プロセッサは前記放電時間値に応答して開始される時間帯中に前記収集信号値を受け取る、
ことを特徴とする放電検出器。
【請求項9】
前記コレクタ及び前記電位計へ電気的に接続されたバイアス電圧発生器をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の検出器。
【請求項10】
密閉チャンバー、
前記密閉チャンバーへそれぞれアクセス可能な放電ガス投入口、サンプルガス投入口、及びガス排気口、
前記チャンバー中の放電源、
前記放電源を電気的にモニターし、かつ放電信号値を生成する放電モニター、
前記チャンバー内のコレクタ、
前記コレクタを電気的にモニターし、かつ前記コレクタに接触するイオン化原子比例する収集信号値を生成する電位計、及び、
前記放電信号値の変動に対して前記収集信号値を調整する、前記電位計及び前記放電モニターへ電気的に接続された校正器を備えて構成される、キャリヤーガス中物質量検出器。
【請求項11】
前記チャンバーが細長いチャンバー壁、放電端、及びコレクタ端によって画定され、
前記チャンバー壁によって前記放電端において円筒部が画定され、
前記チャンバー壁によって前記コレクタ端において円筒部が画定され、
前記チャンバーが中心チャンバー軸を有し、
前記放電源には前記放電端近傍において放電電極及びレセプタ電極が含まれ、
前記放電電極は前記チャンバー軸の方位を向き、
前記チャンバー壁中の前記レセプタ電極は前記放電電極に近接し、
前記コレクタは前記コレクタ端に近接し、及び、
前記コレクタは前記コレクタ軸の方位を向くようにさらに構成されることを特徴とする請求項10に記載の検出器。
【請求項12】
前記放電ガス投入口は前記放電端近傍において前記チャンバーへアクセス可能であり、
前記サンプル投入口は前記放電電極と前記コレクタの中間において前記チャンバーへアクセス可能であり、及び、
前記ガス排気口は前記コレクタ近傍において前記チャンバーへアクセス可能であることを特徴とする請求項11に記載の検出器。
【請求項13】
前記チャンバーが放電端の直径を有し、
前記チャンバーがコレクタ端の直径を有し、及び、
前記コレクタ端の直径が前記放電端の直径より大きいことを特徴とする請求項12に記載の検出器。
【請求項14】
前記チャンバー壁が前記放電端と前記投入口端との中間に円錐台状のチャンバーを含み、及び、
前記サンプル投入口が前記円錐台状のチャンバー壁において前記チャンバーへアクセス可能であることを特徴とする請求項13に記載の検出器。
【請求項15】
前記放電信号モニターが前記レセプタ電極へ電気的に接続され、
前記電位計が前記コレクタへ電気的に接続され、
前記校正器が前記信号モニター及び前記電位計へ電気的に接続され、及び、
プロセッサによって前記校正器から調整信号値が受け取られるようにさらに構成されることを特徴とする請求項11に記載の検出器。
【請求項16】
前記放電源は断続的に放電可能であり、
前記放電信号モニターが前記プロセッサへ放電時間信号を伝達し、及び、
前記プロセッサは前記放電時間信号との関連において決められる時に前記調整された信号値を受け取ることを特徴とする請求項15に記載の検出器。
【請求項17】
前記放電信号モニターによって放電強度値信号が前記校正器へ伝達され、及び
前記校正器によって前記放電強度値信号に比例する前記収集信号が校正されることを特徴とする請求項16に記載の検出器。
【請求項18】
パルス形放電源とコレクタを有するパルス形放電検出器からの収集値を処理する装置であって、該装置は、
電位計と、
校正器と、
前記放電源及び校正器に電気的に接続された放電モニターとを具備し、
前記電位計は前記コレクタ及び校正器に電気的に接続され、
前記電位計はコレクタ信号を検出し、
前記電位計は前記コレクタ信号に比例した収集信号値を生成し、
前記放電モニターは放電信号を検出し、
前記放電モニターは前記放電信号に比例した少なくとも1つの放電信号値を生成し、及び
前記校正器は前記少なくとも1つの放電信号値を受け取る、
ことを特徴とする収集値処理装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの放電信号値に放電信号強度値が含まれ、及び
前記校正器によって前記放電信号強度値に比例する前記収集値が調整されることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つの放電信号値に放電時間値が含まれ、及び
前記校正器によって前記放電時間値に応じて開始される時間帯中に前記収集信号値が処理されることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記校正器がプロセッサへ電気的に接続され、
前記校正器によって前記調整された収集値に比例する調整信号値が処理され、及び
前記プロセッサによって前記調整された収集値の少なくとも1つの特性が累積されるようにさらに構成されることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記プロセッサが前記放電モニターへ電気的に接続され、
前記プロセッサによって前記放電モニターから放電時間値が受け取られ、及び
前記プロセッサによって前記放電時間値に応じて開始される時間帯中に前記調整信号値が受け取られることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記コレクタ及び前記電位計へ電気的に接続されたバイアス電圧発生器をさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
パルス放電強度値をモニターし、
所定の時間期間中に前記検出器のコレクタへ衝突する電子数を測定し、及び
少なくとも1つの放電強度値に基いて前記収集値を調整する各工程から構成される、パルス放電源及びコレクタを有するパルス形放電検出器からの収集信号処理方法。
【請求項25】
パルス放電時間値をモニターし、及び
前記パルス放電時間値との関連において決められる時間帯中に収集値を調整する工程をさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記放電時間値に関連して決められる時間帯中に前記調整収集値の選択された特性をプロセッサへ伝達する工程をさらに含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
密閉チャンバーを通して放電ガスを流し、
前記放電ガスを複数回の放電へ暴露することにより前記放電ガスから光子を生成し、
前記複数回の放電の放電値をモニターし、
前記放電ガスと前記チャンバー中の前記光子との流れ中へサンプルガスを投入して前記サンプルガスの少なくとも一部をイオン化し、
前記複数回の放電のそれぞれにおいて前記サンプルガス中に生成されるイオン量を測定し、及び
前記放電値のそれぞれに基いて前記測定されたイオン量のそれぞれを調整する各工程から構成される、サンプルガスの特性測定方法。
【請求項28】
前記放電それぞれの発生時間をモニターし、及び
前記放電発生時間それぞれとの関連で決められる時間帯中に前記測定されたイオン量を調整する工程をさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記放電発生時間のそれぞれとの関連で決められる時間帯中に前記調整された測定イオン量それぞれの特性を収集する工程をさらに含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−524803(P2007−524803A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518597(P2005−518597)
【出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/006981
【国際公開番号】WO2004/081523
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(505315487)
【出願人】(505315498)
【Fターム(参考)】