説明

モノリス状有機多孔質体、モノリス状有機多孔質イオン交換体、それらの製造方法及びケミカルフィルター

【課題】流体透過時の圧力損失が低く、比表面積が顕著に大きく、吸着効率が高くて吸着容量の大きな吸着剤や微粒子の捕捉性能に優れたイオン交換体として用いることのできるモノリス状有機多孔質体、モノリス状有機多孔質イオン交換体、それらの製造方法及びケミカルフィルタを提供すること。
【解決手段】気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径20〜200μmの開口となる厚みが1mm以上の連続マクロポア構造体であり、該連続マクロポア構造体の骨格部が、内層部と多孔構造の表層部からなるモノリス状有機多孔質体、その製造方法及びケミカルフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤や脱イオン水製造装置等に用いられるイオン交換体として有用な骨格にも多孔構造が導入され、比表面積が顕著に大きな連続マクロポア構造のモノリス状有機多孔質体、同様の構造を有する連続マクロポア構造のモノリス状有機多孔質イオン交換体、それらの製造方法及びケミカルフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2002−306976号には、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び必要に応じて重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを得、これを重合させて、連続マクロポア構造のモノリス状有機多孔質体を得る製造方法が開示されている。上記方法で得られる有機多孔質体やそれにイオン交換基を導入した有機多孔質イオン交換体は、吸着剤、クロマトグラフィー用充填剤および脱イオン水製造装置等に用いられるイオン交換体として有用である。
【0003】
しかし、該有機多孔質イオン交換体は、全細孔容積を低下させて水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量を大きくすると共通の開口となるメソポアが著しく小さくなり、更に全細孔容積を低下させていくと共通の開口が消失するといったその構造上の制約から、実用的に要求される低い圧力損失を達成しようとすると体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させていくと圧力損失が増加するといった欠点を有していた。
【0004】
また、該有機多孔質体および有機多孔質イオン交換体は骨格表面が平滑であり、比表面積が小さいため、被吸着物質の種類によっては吸着効率が低い、粒子捕捉性能に劣るといった欠点を有していた。
【0005】
一方、上記連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質イオン交換体の表面に、5〜800nmの凹凸が導入された多孔質イオン交換体が特開2003−166982号に開示されている。しかし、この方法で得られた多孔質イオン交換体は、細い骨格表面に凹凸が形成されているため機械的強度が低く、所望の大きさに切り出してカラムやセルに充填する際に破損しやすい等、ハンドリング性に劣るものであった。
【0006】
このため、化学的に安定で機械的強度が高く、かつ体積当りのイオン交換容量が大きく、連続した空孔が大きくて水や気体等の流体を透過させた際の圧力損失が低く、更に比表面積の大きなモノリス状有機多孔質体およびモノリス状有機多孔質イオン交換体の開発が望まれていた。また、特開2004−321930号には、連続気泡構造のモノリス状有機多孔質イオン交換体を吸着層として用いるケミカルフィルターが開示されている。このケミカルフィルターによれば、気体透過速度が速くてもガス状汚染物質の吸着除去能力を保持でき、ガス状汚染物質が超微量であっても除去可能なものである。しかしながら、従来にも増してガス状汚染物質の吸着除去能力の高いケミカルフィルターの開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2002−306976号
【特許文献2】特開2003−166982号
【特許文献3】特開2004−321930号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、上記従来の技術の問題点を解決したものであって、化学的に安定で、流体透過時の圧力損失が低く、比表面積が顕著に大きく、吸着効率が高くて吸着容量の大きな吸着剤や、化学的に安定で、流体透過時の圧力損失が低く、体積当りのイオン交換容量が大きく、微粒子の捕捉性能に優れたイオン交換体として用いることのできる連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質体、連続マクロポア構造を有するモノリス状有機多孔質イオン交換体及びそれらの製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、気体透過速度が速くてもガス状汚染物質の吸着除去能力を保持でき、ガス状汚染物質が超微量であっても除去可能なケミカルフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、(1)特開2002−306976号公報記載の方法で得られた比較的大きな細孔容積を有するモノリス状有機多孔質体(中間体)の存在下に、ビニルモノマーと架橋剤を、特定の脂肪族アルコール中、特定の組成で静置重合すれば、開口径が大きく、連続マクロポア構造体を形成する骨格の表面層に更に多孔構造を導入できること、(2)このような新規構造を有する有機多孔質体は、比表面積が格段に大きくなるため、吸着特性を格段に改善することができること、(3)また、上記新規構造を有するモノリス状有機多孔質体にイオン交換基を導入したモノリス状有機多高質イオン交換体は、イオン交換が迅速かつ均一であるばかりでなく、体積当りの吸着容量やイオン交換容量が大きい、開口の平均直径が大きいため圧力損失が格段に小さい、連続マクロポア構造を維持しているため機械的強度が高く、ハンドリング性に優れる、微粒子の捕捉能力に優れる等、従来のモノリス状有機多孔質体やモノリス状有機多孔質イオン交換体が達成できなかった、優れた特性を兼備していることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径20〜200μmの開口となる厚みが1mm以上の連続マクロポア構造体であり、該連続マクロポア構造体の骨格部の表層部が多孔構造であるモノリス状有機多孔質体を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、下記工程;イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、炭素数3〜9の脂肪族アルコール及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程であって、ビニルモノマー、架橋剤及び脂肪族アルコール混合物中のビニルモノマー濃度(重量%)を56〜80%とするか、若しくはビニルモノマー濃度を40%以上、56%未満とし、且つビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する該架橋剤の量を0.1〜1モル%とするII工程、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、有機多孔質体を得るIII工程、を行うことを特徴とするモノリス状有機多孔質体の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径20〜200μmの開口となる厚みが1mm以上の連続マクロポア構造体であり、該連続マクロポア構造体の骨格部の表層部が多孔構造であり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.4mg当量/ml以上であり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布していることを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記I工程、前記II工程、前記III工程及び該III工程で得られた有機多孔質体にイオン交換基を導入するIV工程、を行うことを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体の製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は前記モノリス状有機多孔質体を吸着層として用いることを特徴とするケミカルフィルターを提供するものである。
【0014】
また、本発明は、前記モノリス状有機多孔質イオン交換体を吸着層として用いることを特徴とするケミカルフィルターを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のモノリスは、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口径が大きいため、低圧、大流量の処理が可能であり、更に連続マクロポア構造体を形成する骨格の表層部に多孔構造が導入されており、比表面積が大きいため、吸着特性にも優れている。したがって、従来用いられてきた合成吸着剤を代替可能であるばかりでなく、その優れた吸着特性を生かして、合成吸着剤では対応できなかった微量成分の吸着除去等新しい用途分野への応用が可能となる。また、本発明のモノリスイオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が大きく、かつ共通の開口径も格段に大きいため、被処理水を低圧、大流量で長期間通水することが可能であり、2床3塔式純水製造装置や電気式脱イオン水製造装置に充填して好適に用いることができる。また、本発明のケミカルフィルターは、吸着層として用いる細孔容積や比表面積が格段に大きく、その表面や内部にイオン交換基が高密度に導入されているため、気体透過速度が速くてもガス状汚染物質の吸着除去能力を保持でき、また、ガス状汚染物質が超微量であっても除去可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書中、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質イオン交換体」を単に「モノリスイオン交換体」と、「モノリス状の有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」とも言う。
【0017】
(モノリスの説明)
本発明のモノリスの基本構造を模式図である図10を参照して説明する。図10中、右側の四角図は、モノリスの壁部(骨格部)Aを拡大した模式図である。本発明のモノリス10は気泡状のマクロポア1同士が重なり合い、この重なる部分が共通の開口(メソポア)2となる連続マクロポア構造であり、開口2の平均直径が20〜200μm、好ましくは20〜150μm、特に20〜100μmであり、マクロポア1と開口2で形成される気泡内が流路となる。上記メソポアの平均直径は、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値を指すものである。なお、本発明のモノリス10は骨格の表層部に多孔構造を有するが、骨格中に占める表層部の割合が小さいこと、更に多孔構造が「巣」のような非連続孔が大部分であることから、水銀圧入法によりメソポアの平均直径を求めることができる。
【0018】
連続マクロポア構造は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。開口の平均直径が20μm未満であると、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、開口の平均直径が大き過ぎると、流体とモノリスとの接触が不十分となり、その結果、吸着特性が低下してしまうため好ましくない。
【0019】
本発明のモノリス10において、連続マクロポア構造体の骨格部6は内層部3と表層部4からなり、表層部4が多孔構造である。すなわち多孔構造は表層部4中に直径が0.1〜20μm、特に0.1〜10μmの細孔7が無数に存在する、所謂蜂の巣に類似する構造のものである。多数の細孔7は、互いに独立のものあるいは隣接の孔同士が連続しているものもある。表層部4の厚みは概ね1〜30μmである。なお、図10中、符号5は気相(気泡)部である。骨格部6の多孔構造は、連続マクロポア構造体(乾燥体)を切断した面のSEM(走査型電子顕微鏡による二次電子像)画像で確認することができる。
【0020】
なお、本発明のモノリスは、連続マクロポア構造体の骨格部の表層部に多孔構造が導入されているため比表面積が格段に大きく、ほとんどの場合、その比表面積は20m/g〜70m/gである。比表面積が20m/g未満であると、流体との接触効率が低下して吸着特性等も低下してしまうため好ましくない。一方、70m/gを超えると、モノリスの機械的強度が低下してしまうため好ましくない。なお、本発明で用いる比表面積の値は、水銀圧入法により求めた値である。
【0021】
また、本発明のモノリスは、0.5〜5ml/g、好適には0.8〜4ml/gの全細孔容積を有するものである。全細孔容積が小さ過ぎると、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、体積当りの吸着容量が低下してしまうため好ましくない。本発明のモノリスは、連続マクロポア構造体の骨格部分にも多孔構造が導入されているため比表面積が大きく、これを吸着剤として用いた場合、流体との接触面積が大きく、かつ流体の円滑な流通が可能となるため、優れた性能が発揮できる。
【0022】
なお、モノリスに水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.005〜0.1MPa/m・LVの範囲、特に0.005〜0.05MPa/m・LVであることが好ましい。
【0023】
本発明のモノリスにおいて、連続マクロポア構造体の骨格を構成する材料、すなわち、内層部3及び表層部4の骨格部41は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.1〜10モル%、好適には0.2〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.1モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、連続マクロポア構造体の骨格部分への多孔構造導入が認められなくなるため好ましくない。該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニルポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー等の架橋重合体が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸・アルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
【0024】
本発明のモノリスは、その厚みが1mm以上であり、膜状の多孔質体とは区別される。厚みが1mm未満であると、多孔質体一枚当りの吸着容量が極端に低下してしまうため好ましくない。該モノリスの厚みは、好適には3mm〜1000mmである。
【0025】
本発明のモノリスを吸着剤として使用する場合、例えば、円筒型カラムや角型カラムに、該モノリスを当該カラムに挿入できる形状に切り出したものを吸着剤として充填し、これにベンゼン、トルエン、フェノール、パラフィン等の疎水性物質を含有する被処理水を通水させれば、該吸着剤に前記疎水性物質が効率よく吸着される。
【0026】
(モノリスイオン交換体の説明)
次ぎに、本発明のモノリスイオン交換体について説明する。モノリスイオン交換体において、モノリスと同一構成要素については説明を省略し、異なる点について主に説明する。モノリスイオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μm、好ましくは30〜200μm、特に35〜150μmの開口となる連続マクロポア構造体である。モノリスイオン交換体の開口の平均直径は、モノリスにイオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの開口の平均直径よりも大となる。開口の平均直径が30μm未満であると、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、開口の平均直径が大き過ぎると、流体とモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、イオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。上記開口の平均直径は、乾燥状態におけるモノリスイオン交換体の平均直径を水銀圧入法にて求めた後、モノリスイオン交換体を水湿潤状態にした際の乾燥状態からの膨潤率を乗じて算出した値を指す。
【0027】
本発明のモノリスイオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.4mg当量/ml以上、好ましくは0.4〜1.8mg当量/mlのイオン交換容量を有する。体積当りのイオン交換容量が0.4mg当量/ml未満であると、破過までに処理できるイオンを含んだ水の量、即ち脱イオン水の製造能力が低下してしまうため好ましくない。なお、本発明のモノリスイオン交換体において、重量当りのイオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3〜5mg当量/gである。なお、イオン交換基が表面のみに導入された多孔質体のイオン交換容量は、多孔質体やイオン交換基の種類により一概には決定できないものの、せいぜい500μg当量/gである。
【0028】
本発明のモノリスに導入するイオン交換基としては、スルホン酸基、カルボキシル基、イミノ二酢酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;アミノリン酸基、スルホベタイン等の両性イオン交換基が挙げられる。
【0029】
本発明のモノリスイオン交換体において、導入されたイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。イオン交換基の分布状況は、EPMA等を用いることで、比較的簡単に確認することができる。また、イオン交換基が、モノリスの表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
【0030】
本発明のモノリスは、上記I工程〜III工程を行なうことにより得られる。本発明のモノリスの製造方法において、I工程は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス中間体を得る工程である。このモノリス中間体を得るI工程は、特開2002−306976号公報記載の方法に準拠して行えばよい。
【0031】
(モノリス中間体の製造方法)
イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーが挙げられる。これらモノマーの好適なものとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ただし、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくとも油溶性モノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%とすることが、後の工程でイオン交換基量を多く導入するに際して必要な機械的強度が得られる点で好ましい。
【0032】
界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモ
ノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量としては、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
【0033】
また、I工程では、油中水滴型エマルジョン形成の際、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム−酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
【0034】
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水及び重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。
【0035】
I工程で得られるモノリス中間体は、連続マクロポア構造を有する。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を鋳型としてモノリス中間体の骨格表面に多孔構造の表層部が形成されるため、表面層が多孔構造を有する骨太骨格を有する多孔構造が形成される。また、モノリス中間体は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.1モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくない。特に、全細孔容積が10〜16ml/gと大きい場合には、連続マクロポア構造を維持するため、架橋構造単位を0.2モル%以上含有していることが好ましい。一方、5モル%を越えると、連続マクロポア構造体の骨格部の表層部に多孔構造を導入することが困難となる。
【0036】
モノリス中間体のポリマー材料の種類としては、特に制限はなく、前述のモノリスのポリマー材料と同じものが挙げられる。これにより、モノリス中間体の骨格に同様のポリマーを形成して、表層部に多孔構造を有する骨太の骨格構造のモノリスを得ることができる。
【0037】
モノリス中間体の全細孔容積は、5〜16ml/g、好適には6〜16ml/gである。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの全細孔容積が小さくなりすぎ、流体透過時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が連続マクロポア構造から逸脱するため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積を上記数値範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:5〜1:16とすればよい。
【0038】
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が20〜200μmである。開口の平均直径が20μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、200μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、流体とモノリスやモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
【0039】
(モノリスの製造方法)
II工程は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、炭素数3〜9の脂肪族アルコール及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程であって、ビニルモノマー、架橋剤及び脂肪族アルコール混合物中のビニルモノマー濃度(重量%)を56〜80%とするか、若しくはビニルモノマー濃度を40%以上、56%未満とし、且つビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する該架橋剤の量を0.1〜1モル%とする工程である。なお、I工程とII工程の順序はなく、I工程後にII工程を行ってもよく、II工程後にI工程を行ってもよい。
【0040】
II工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のビニルモノマーであれば、特に制限はないが、上記重合系に共存させるモノリス中間体と同種類もしくは類似のポリマー材料を生成するビニルモノマーを選定することが好ましい。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等の芳香族ビニルモノマーである。
【0041】
ビニルモノマー、架橋剤及び脂肪族アルコール混合物中のビニルモノマー濃度(重量%)が56〜80%の場合、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する該架橋剤の量は、好ましくは0.1〜5モル%、更に好ましくは0.3〜4モル%である。一方、架橋剤及び脂肪族アルコール混合物中のビニルモノマー濃度が40%以上、56%未満の場合、架橋剤は0.1〜1モル%、好ましくは0.2〜1モル%である。ビニルモノマー濃度が上記範囲を逸脱すると、骨格部への多孔構造導入が認められなくなる。また、ビニルモノマー濃度が80%を超えると、重合熱の除熱が困難となり、重合反応の制御が困難になるため好ましくない。
【0042】
これらビニルモノマーの添加量は、重合時に共存させるモノリス中間体に対して、重量で3〜70倍、好ましくは4〜50倍である。ビニルモノマー添加量が多孔質体に対して3倍未満であると、骨格部への多孔構造導入が困難になるため好ましくない。一方、ビニルモノマー添加量が70倍を超えると、開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0043】
II工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、脂肪族アルコールへの溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤使用量は、ビニルモノマー、架橋剤、脂肪族アルコール混合物中のビニルモノマー濃度(重量%)により変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して0.1〜10モル%、特に0.2〜5モル%であることが好ましい。架橋剤使用量が0.1モル%未満であると、モノリスの機械的強度が不足するため好ましくない。一方、5モル%を越えると、骨格部分への多孔構造導入が困難になるため好ましくない。なお、上記架橋剤使用量は、ビニルモノマー/架橋剤重合時に共存させるモノリス中間体の架橋密度とほぼ等しくなるように用いることが好ましい。両者の使用量があまりに大きくかけ離れると、生成したモノリス中で架橋密度分布の偏りが生じ、イオン交換基導入反応時にクラックが生じやすくなる。
【0044】
II工程で用いられる溶媒は、炭素数3〜9の脂肪族アルコールである。該脂肪族アルコールの具体例としては、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられる。また、上記脂肪族アルコール以外の溶媒であっても、その使用量が少ない場合には、上記脂肪族アルコールに添加して使用することができる。これら脂肪族アルコールの使用量は、上記ビニルモノマー濃度が40〜80重量%となるように用いることが好ましい。脂肪族アルコール使用量が上記範囲から逸脱してビニルモノマー濃度が40%未満となると、骨格部分への多孔構造導入が困難になるため好ましくない。一方、ビニルモノマー濃度が80重量%を超えると、重合熱の除熱が困難となり、重合反応の制御が困難になるため好ましくない。
【0045】
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
【0046】
III工程は、II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス中間体の存在下に重合を行い、該モノリス中間体の骨格より太い骨格を有し、更に、骨格の表面層に多孔構造を有するモノリスを得る工程である。
【0047】
反応容器の内容積は、モノリス中間体を反応容器中に存在させる大きさのものであれば特に制限されず、反応容器内にモノリス中間体を載置した際、平面視でモノリスの周りに隙間ができるもの、反応容器内にモノリス中間体が隙間無く入るもののいずれであってもよい。このうち、重合後の骨格中に多孔構造を有するモノリスが容器内壁から押圧を受けることなく、反応容器内に隙間無く入るものが、モノリスに歪が生じることもなく、反応原料などの無駄がなく効率的である。なお、反応容器の内容積が大きく、重合後のモノリスの周りに隙間が存在する場合であっても、ビニルモノマーや架橋剤は、モノリス中間体に吸着、分配されるため、反応容器内の隙間部分に粒子凝集構造物が生成することはない。
【0048】
III工程において、反応容器中、モノリス中間体は混合物(溶液)で含浸された状態に置かれる。II工程で得られた混合物とモノリス中間体の配合比は、前述の如く、モノリス中間体に対して、ビニルモノマーの添加量が重量で3〜70倍、好ましくは4〜50倍となるように配合するのが好適である。これにより、適度な開口径を有しつつ、骨格中にも多孔構造が導入されたモノリスを得ることができる。反応容器中、混合物中のビニルモノマーと架橋剤は、静置されたモノリス中間体の骨格に吸着、分配され、モノリス中間体の骨格内で重合が進行する。この重合が進行する過程において、多孔構造が形成される理由の詳細については不明であるものの、ビニルモノマー濃度が著しく高い場合や架橋剤量が著しく少ない場合、重合の進行が不均一となり、架橋構造が偏在してしまうためと考えられる。
【0049】
重合条件は、モノマーの種類、開始剤の種類により様々な条件が選択できる。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。加熱重合により、モノリス中間体の骨格に吸着、分配したビニルモノマーと架橋剤が該骨格内で重合し、該骨格を太らせるとともに、更に骨格中に多孔構造を形成していく。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、メタノールやアセトン等の溶剤で抽出してモノリスを得る。
【0050】
(モノリスイオン交換体の製造方法)
次に、本発明のモノリスイオン交換体の製造方法について説明する。該モノリスイオン交換体の製造方法としては、特に制限はないが、上記の方法によりモノリスを製造した後、イオン交換基を導入する方法が、得られるモノリスイオン交換体の多孔構造を厳密にコントロールできる点で好ましい。
【0051】
上記モノリスにイオン交換基を導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、モノリスがスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法;モノリスに均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部に導入し、スチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。また、四級アンモニウム基を導入する方法としては、モノリスがスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法;モノリスをクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法;モノリスに、均一にラジカル開始基や連鎖移動基を骨格表面及び骨格内部導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。また、ベタインを導入する方法としては、上記の方法によりモノリスに三級アミンを導入した後、モノヨード酢酸を反応させ導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、スルホン酸基を導入する方法については、クロロ硫酸を用いてスチレン-ジビニルベンゼン共重合体にスルホン酸基を導入する方法が、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合によりモノリスを製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するイオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;アミノリン酸基、ベタイン、スルホベタイン等の両性イオン交換基が挙げられる。
【0052】
本発明のモノリスイオン交換体は、骨格中にも多孔構造が導入され、その比表面積は30m/g以上と極めて大きいためイオンの捕捉効率が高く、2床3塔式純水製造装置や電気式脱イオン水製造装置に充填して好適に用いることができる。
【0053】
本発明のケミカルフィルターは、上記モノリス、該モノリスに貫通孔を設けたもの、モノリスイオン交換体又は該モノリス状イオン交換体に貫通孔を設けたもの、更には既に公知のイオン交換樹脂やイオン交換繊維を用いた吸着層と上記モノリスを組み合わせたものを吸着層として備えるものであれば、フィルターの構成に特に制限はないが、通常、吸着層と該吸着層を支持する支持枠体(ケーシング)とで構成される。該支持枠体は吸着層を支持するとともに、既存設備(設置場所)との接合を司る機能を有する。支持部材の被処理気体流通部分は、脱ガスのないステンレス、アルミニウム、プラスチック等からなる。吸着層の形状としては、特に制限されず、所定の厚みを有するブロック形状、薄板を複数枚重ね合わせた積層形状、定形状又は不定形状の粒状物を多数充填した充填構造などが挙げられる。また、吸着層からガス状有機系汚染物質が極微量発生する恐れのある場合、あるいは被処理気体中の有機性ガス状汚染物質の濃度が高い場合には、吸着層の下流側に物理吸着層を付設することが、下流側の物理吸着層で上流側の吸着層で除去できなかった残部のガス状有機系汚染物質を確実に除去できる点で好適である。
【0054】
本発明のケミカルフィルターの比表面積は20m/g以上、好ましくは40m/g以上、70m/g以下である。比表面積が小さ過ぎると、処理能力が低下するため好ましくなく、大き過ぎると、モノリス状多孔質体等の強度が著しく低下するため、好ましくない。比表面積を上記範囲とするには、II工程において、特定の溶媒を使用し、ビニルモノマーと架橋剤を上記の特定の配合で使用すればよい。比表面積は水銀圧入法で測定することができる。
【0055】
該物理吸着層としては、脱臭用途に使用できる吸着剤が使用できる。具体的には、活性炭、活性炭素繊維及びゼオライトなどが挙げられる。該吸着剤は、比表面積が200m/g以上の多孔質体が望ましく、比表面積が500m/g以上の多孔質体がさらに好ましい。また、該物理吸着層から物理吸着剤などが飛散する恐れのある場合には、該物理吸着層の下流側に通気性を有するカバー材を配置することが好ましい。カバー材としては、有機分子材料からなる不織布及び多孔質膜、並びにアルミニウム及びステンレス製メッシュ等が挙げられる。これらの中、有機高分子材料からなる不織布や多孔質膜は低圧力損失で気体をと透過でき、且つ微粒子補足能力が高いため、特に好適である。
【0056】
貫通孔は所定の厚みを有するブロック形状のモノリス又はモノリスイオン交換体において、通気方向に延びるように複数個形成するのがよい。貫通孔を設けることにより、通気差圧を更に低下させることができる。モノリス又はモノリスイオン交換体に貫通孔を設けたものを吸着層として使用する場合、見かけのモノリスに占める貫通孔の空隙率は20〜50%、好ましくは25〜40%である。貫通孔の空隙率が低すぎると、ガス状汚染物質の除去効率が低下する。
【0057】
本発明のケミカルフィルターは、半導体産業や医療用等に用いられるクリーンルームやクリーンベンチ等の高度清浄空間を形成するため、クリーンルーム内の空気や雰囲気中に含まれる有機系又は無機系のガス状汚染物質及びその他の汚染物質としては、二酸化硫黄、塩酸、フッ酸、硝酸等の酸性ガス、アンモニア等の塩基性ガス、塩化アンモニウム等の塩類、フタル酸エステル系に代表される各種可塑剤、フェノール系及びリン系の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、リン系及びハロゲン系の難燃剤等が挙げられる。酸性ガス、塩基性ガス及び塩類はイオン交換により除去でき、各種可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び難燃剤は強い極性を有するため、吸着により除去することができる。
【0058】
本発明のケミカルフィルターの使用条件としては、公知の条件で行うことができる。使用雰囲気の湿度としては、相対湿度で30〜80%程度である。気体透過速度としては、特に制限されないが、例えば0.1〜10m/sの範囲である。従来の粒状イオン交換樹脂を吸着層として使用する場合、気体透過速度は0.3〜0.5m/s程度であるが、本発明のケミカルフィルターによれば、気体透過速度が5〜10m/sのように速くても、イオン交換容量が大きく且つ効率良くイオン交換が行われるため、ガス状汚染物質を吸着できる。また、被処理空気中の汚染物質濃度において、従来のケミカルフィルターによれば、適用範囲はアンモニアの場合、通常0.1〜10μg/m、塩化水素の場合、通常5〜50ng/m、二酸化硫黄の場合、通常0.1〜10μg/m、フタル酸エステルの場合通常0.1〜5μg/mであるが、本発明のケミカルフィルターによれば、上記範囲に加えて、アンモニア100ng/m以下、塩化水素5ng/m以下、二酸化硫黄100ng/m以下、フタル酸エステル100ng/m以下の極微量濃度であっても十分除去できる。なお、吸着層として用いるモノリス状有機多孔質イオン交換体は、使用に際しては、従来のイオン交換樹脂の場合と同様、得られた有機多孔質イオン交換体を公知の再生方法により処理して用いる。すなわち、多孔質イオン交換体は、酸処理により酸型として用い、多孔質陰イオン交換体は、アルカリ処理によりOH型として用いる。また、ケミカルフィルター処理気体が使用雰囲気の湿度になるよう、予めケミカルフィルターをその使用空間における平衡水分率となる水分保有量にしておくことが慣らし運転を省略できる点で好ましい。本発明のケミカルフィルターをブロック状で用い、気体透過速度が5〜10m/sの場合、ブロック状の吸着層の通気方向の長さは概ね50〜200mmである。
【0059】
本発明のケミカルフィルターは、吸着層として用いるモノリス又はモノリスイオン交換体の細孔容積や比表面積が格段に大きく、その表面や内部にイオン交換基が高密度に導入されているため、気体透過速度が速くてもガス状汚染物質の吸着除去能力を保持でき、また、ガス状汚染物質が超微量であっても除去可能である。すなわち、従来の粒状イオン交換樹脂は、粒子内部のイオン交換が遅く、イオン交換容量のすべてが有効に使用されない。例えば粒径500μmの粒状イオン交換樹脂の場合、効率よく吸着が行われる範囲が表面から100μmと仮定すると、表面層の体積分率は約50%であり、効率よく吸着が行われる範囲のイオン交換容量は約半分となる。一方、本発明に係るモノリス状イオン交換体は壁の厚みが2〜10μmであるため、全てのイオン交換基が効率よく使用される。
【0060】
本発明のケミカルフィルターの吸着層に用いるモノリス状イオン交換体はイオン交換体長さについても、従来の粒状イオン交換樹脂に比べて約1/4と非常に小さく、同じ体積の吸着層を用いても寿命が長くなる。
【0061】
本発明のケミカルフィルターは、送風機ユニットと組み合わせて又は送風機ユニットに組み込まれて使用することができる。送風機ユニットとしては、特に制限はないが、通常、軸流ファンまたはブロアを送風源とする送風機と、その出力を調整するコントローラーと、該送風機と該コントローラーを収める第一ケーシングと、該ケーシングに連結される微粒子除去用のHEPAまたはULPAフィルターと、HEPAまたはULPAフィルターを収める第2ケーシングからなる。第1ケーシング及び第2ケーシングの被処理気体流通部分は脱ガスのないステンレス、アルミニウム、プラスチック等の素材からなる。微粒子除去用フィルターのろ材についても特に制限はなく、一般的なガラス繊維やPTFEを用いることができる。クリーンルーム等で用いる場合には、ボロンや有機物を放出しないガラス繊維やPTFEがなお好ましい。
【0062】
本発明のケミカルフィルターは微粒子除去用のHEPAまたはULPAフィルターの上流側に付設される。本発明のケミカルフィルターと送風機ユニットを組合せる形態としては、互いのケーシング同士を接続して一体化して使用する方法が挙げられる。本発明のケミカルフィルターを送風機ユニットに組み込む形態としては、吸着層を送風機ユニットに組み込む形態である。ケミカルフィルターを送風機ユニットに組み込む形態において、送風機とケミカルフィルターを送風機ユニットとを組み合わせて使用すれば、ガス状汚染物質と微粒子を共に除去できる点で望ましい。
【0063】
本発明においては、モノリス又はモノリスイオン交換体等をケミカルフィルターの吸着層として用いるため、大きな空孔と均一に導入されたイオン交換基により、静圧の小さな小型の送風機においても効率よく被処理気体中の不純物を除去できる。また、体積あたりのイオン交換容量、比表面積が非常に大きく均一にイオン交換基が導入されているため、除去率の向上と長寿命化が図れる。
【0064】
実施例
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0065】
実施例1
(I工程;モノリス中間体の製造)
スチレン19.9g、ジビニルベンゼン0.4g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)1.1gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.26gを混合し、均一に溶解させた。次に,当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物をTHF1.8mlを含有する180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて5〜20℃の温度範囲において減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを反応容器に速やかに移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。該モノリス中間体のマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は56μm、全細孔容積は7.5ml/gであった。
【0066】
(モノリスの製造)
次いで、スチレン59.4g、ジビニルベンゼン0.6g、1-オクタノール50g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5gを混合し、均一に溶解させた(II工程)。次に上記モノリス中間体を外径75mm、厚さ約20mmの円盤状に切断して、7.8g分取した。分取したモノリス中間体を内径90mmの反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、モノリス状の内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III工程)。
【0067】
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を0.6モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した結果を図1に示す。図1のSEM画像は、モノリスを任意の位置で切断して得た表層部の任意の位置における画像である。図1から明らかなように、当該モノリスは連続マクロポア構造を有しており、連続マクロポア構造体を構成する骨格部にもハニカム状の多孔構造が導入されていた。
【0068】
次に、水銀圧入法を用いて当該モノリスの多孔構造を解析した。その結果、当該モノリスの開口の平均直径は34μm、全細孔容積は1.7ml/g、比表面積は55.0m/gであった。結果を表1にまとめて示す。
【0069】
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。モノリスの重量は32gであった。これにジクロロメタン1500mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸178gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して連続マクロポア構造を有するモノリスカチオン交換体を得た。
【0070】
得られたカチオン交換体の乾燥状態から水湿潤状態にした際の膨潤率は1.8倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.72mg当量/mlであった。水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径を、乾燥状態から水湿潤状態にした際の膨潤率から見積もったところ60μmであり、全細孔容積は1.7ml/g、比表面積は55.0m/gであった。結果を表2にまとめて示す。
【0071】
次に、モノリスカチオン交換体中のスルホン酸基の分布状態を確認するため、EPMAにより硫黄原子の分布状態を観察した。その結果、スルホン酸基はカチオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、均一に導入されていることが確認できた。
【0072】
実施例2〜9
(モノリスの製造)
スチレンの使用量、ジビニルベンゼンの使用量、脂肪族アルコールの種類と使用量、スチレン及びジビニルベンゼン含浸重合時に共存させるモノリス中間体の多孔構造、架橋密度および使用量を表1に示す配合量に変更した以外は、実施例1と同様の方法でモノリスを製造した。結果を表1に示す。また、得られたモノリス(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察した結果を図2〜図9に示す。これらのSEM画像は、モノリスを任意の位置で切断して得た切断面の任意の位置における画像である。なお、図2の中央で傾斜して上下方向に延びる帯び状のものは内層部である。また、図5から、切断面ではない、骨格表面には多孔構造が表れていないことが判る。表1から、実施例2〜9のモノリスは、いずれも連続マクロポア構造体の骨格部の表層部に多孔構造が導入されており、その比表面積も20m/g以上と大きな値を示した。
【0073】
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、それぞれ実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、連続マクロポア構造を有するモノリスカチオン交換体を製造した。その結果を表2に示す。実施例2〜9に示すモノリスカチオン交換体は、イオン交換基導入反応後も骨格部に導入された多孔構造を維持しており、比表面積も大きく、体積当りの交換容量も大きな値を示した。
【0074】
実施例10
(モノリスの製造)
実施例1と同様の方法でモノリスを製造した。結果を表1に示す。実施例10のモノリスは、マクロポアとマクロポアの重なり部分の開口を示すメソポアが平均直径で35μmと大きく、骨格中にも多孔構造が導入されており、比表面積も55.2μmと大きな値を示した。
【0075】
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、外径70mm、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジメトキシメタン1400ml、四塩化スズ40mlを加え、氷冷下クロロ硫酸560mlを滴下した。滴下終了後、昇温して35℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、母液をサイフォンで抜き出し、THF/水=2/1の混合溶媒で洗浄した後、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリス状有機多孔質体にTHF1000mlとトリメチルアミン30%水溶液600mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノール/水混合溶媒で洗浄し、次いで純水で洗浄して単離した。
【0076】
得られたアニオン交換体の反応前後の膨潤率は1.5倍であり、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.75mg当量/mlであった。水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径を、乾燥状態から水湿潤状態にした際の膨潤率から見積もったところ53μmであり、全細孔容積は1.7ml/g、比表面積は55.2m/gであった。結果を表2にまとめて示す。
【0077】
次に、多孔質アニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、アニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩素原子の分布状態を観察した。その結果、塩素原子はアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
【0078】
比較例1
(モノリスの製造)
脂肪族アルコールとして本発明の範囲外である1-デカノールを用い、その他のパラメーターは表1に示すように本発明の範囲内として、実施例1と同様の方法でモノリスを製造した。表1に示すように、溶媒として1−デカノールを用いると、連続マクロポア構造体の骨格部への多孔構造導入が認められなくなり、その比表面積も15.5m/gと実施例に比べて小さな値を示した。
【0079】
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、連続マクロポア構造を有するモノリスカチオン交換体を製造した。結果を表2に示すが、得られたモノリスカチオン交換体は骨格部への多孔構造導入がなく、比表面積も実施例に比べ小さな値であった。
【0080】
比較例2
(モノリスの製造)
モノマー濃度を本発明の範囲外である38%に設定し、その他のパラメーターは表1に示すように本発明の範囲内として、実施例1と同様の方法でモノリスを製造した。表1に示すように、モノマー濃度を本発明の範囲外である38%に設定すると、連続マクロポア構造体の骨格部への多孔構造導入が認められなくなり、その比表面積も13.7m/gと実施例に比べて小さな値を示した。
【0081】
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、連続マクロポア構造を有するモノリスカチオン交換体を製造した。結果を表2に示すが、得られたモノリスカチオン交換体は骨格部への多孔構造導入がなく、比表面積も実施例に比べ小さな値であった。
【0082】
比較例3
(モノリスの製造)
モノマー濃度と架橋剤量を本発明の範囲外に設定し、その他のパラメーターは表1に示すように本発明の範囲内として、実施例1と同様の方法でモノリスを製造した。表1に示すように、モノマー濃度と架橋剤量を本発明の範囲外に設定すると、連続マクロポア構造体の骨格部への多孔構造導入が認められなくなり、その比表面積も19.5m/gと実施例に比べて小さな値を示した。
【0083】
(モノリスカチオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスを、実施例1と同様の方法でクロロ硫酸と反応させ、連続マクロポア構造を有するモノリスカチオン交換体を製造した。結果を表2に示すが、得られたモノリスカチオン交換体は骨格部への多孔構造導入がなく、比表面積も実施例に比べ小さな値であった。
【0084】
実施例11
厚さ20mmの円盤状に切断して7.8g分取したことに代えて、I工程の試薬量を2倍にしてモノリス中間体を製造し、厚さ50mmの円盤状に切断して19.5g分取したこと、II工程の試薬量を3倍にしたこと以外は、実施例1と同様の方法でモノリスを製造した。
【0085】
(モノリスカチオン交換体の製造)
外径70mm、厚み約15mmの円盤に代えて、外径70mm、厚み50mmの円盤としたこと、ジクロロメタン1,500mlに代えて、5,000mlとしたこと、クロロ硫酸178gに代えて、593gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法でモノリス状カチオン交換体を製造した。得られたモノリス状カチオン交換体の反応前後の膨潤率、体積当たりのイオン交換容量、水湿潤状態での有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径、モノリスと同様の方法で求めた骨格を構成する壁部の平均厚み、骨格部面積及び全細孔容積は実施例1と同じ値であった。
【0086】
(モノリス状カチオン交換体を用いた塩基性ガスの吸着)
実施例11で得られたモノリス状カチオン交換体を3N塩酸中に24時間浸漬した後、純水で十分洗浄し、乾燥させた。得られたモノリス状カチオン交換体を25℃、相対湿度40%の状態で48時間放置した後、直径50mm、厚み50mmの円盤状に切り出し、円筒状カラムに充填してケミカルフィルターを作製した。このフィルターに25℃、40%の温湿度条件下、アンモニア濃度5,000ng/mの空気を面風速0.5m/sで供給したときの透過気体を超純水インピンジャー法でサンプリングし、イオンクロマト法でアンモニウムの定量を行った。その結果、空気中のアンモニア濃度は50ng/m未満であり、完全にアンモニアを除去できた。
【0087】
比較例4
製造例1(有機多孔質陽イオン交換体の製造)
スチレン38g、ジビニルベンゼン2.0g、ソルビタンモノオレート2.1gおよびアゾビスイソブチロニトリル0.1gを混合し、均一に溶解させた。次に当該スチレン/ジビニルベンゼン/ソルビタンモノオレート/アゾビスイソブチロニトリル混合物を360gの純水に添加し、遊星式攪拌装置である真空攪拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて13.3kPaの減圧下、底面直径と充填物の高さの比が1:1、公転回転数1000回転/分、自転回転数330回転/分で2分間攪拌し、油中水滴型エマルジョンを得た。乳化終了後、系を窒素で十分置換した後密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで18時間ソックスレー抽出し、未反応モノマー、水およびソルビタンモノオレエートを除去した後、85℃で一昼夜減圧乾燥した。このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を3モル%含有した有機多孔質体の内部構造をSEMにより観察した結果、当該有機多孔質体は連続気泡構造を有していた。
【0088】
次いで上記有機多孔質体を切断して18gを分取し、ジクロロエタン2400mlを加え60℃で30分加熱した後、室温まで冷却し、クロロ硫酸90gを徐々に加え、室温で24時間反応させた。その後、酢酸を加え、多量の水中に反応物を投入し、水洗して有機多孔質陽イオン交換体を得た。この有機多孔質陽イオン交換体のイオン交換容量は、乾燥多孔質体換算で4.8mg当量/gであり、EPMAを用いた硫黄原子のマッピングにより、スルホン酸基がμmオーダーで有機多孔質体に均一に導入されていることを確認した。また、SEM観察により、有機多孔質体の連続気泡構造はイオン交換基導入後も保持されていることを確認した。また、この有機多孔質陽イオン交換体のメソポアの平均径は、30μm、全細孔容積は10.2ml/gであった。
【0089】
(有機多孔質陽イオン交換体を用いた塩基性ガスの吸着)
製造例1で製造した有機多孔質陽イオン交換体を3N塩酸中に24時間浸漬した後、純水で十分洗浄し、乾燥させた。得られたモノリスカチオン交換体を25℃、相対湿度40%の状態で48時間放置した後、直径50mm、厚み50mmの円盤状に切り出し、円筒状カラムに充填してケミカルフィルターを作製した。このフィルターに実施例11と同様の方法でアンモニア除去試験を行った結果、透過空気中のアンモニア濃度は120ng/mとなり、完全にアンモニアを除去することはできなかった。
【0090】
実施例12
モノリス状カチオン交換体を3N塩酸中に浸漬する前に、内径2mmのSUS316製パイプにより、円柱状モノリスの見かけの円に対して、直径2mmの孔による空隙率が30%となるよう、軸方向に延びる貫通孔をあけた以外は、実施例11と同様の方法で貫通孔を有するモノリス状カチオン交換体を得、更に実施例11と同様の方法で塩基性ガスの吸着を行った。その結果、面風速0.5m/sのときの通気差圧は75Paと非常に低圧損であり、空気中のアンモニア濃度は450ng/mであった。
【0091】
比較例5
上記モノリス状有機多孔質カチオン交換体に代えて、比較例4の連続気泡型モノリス状有機多孔質カチオン交換体を使用したこと以外は、実施例12と同様の方法で貫通孔をあけると共に、塩基性ガスの吸着を行った。その結果、通気差圧は85Paであり、空気中のアンモニア濃度は850ng/mであった。
【0092】
実施例13
(モノリス状アニオン交換体を用いた酸性ガスの吸着)
実施例11により製造したモノリスを用いて、ジメトキシメタン使用量1400mlに代えて4700mlとしたこと、四塩化スズ使用量40mlに代えて133mlとしたこと、クロロ硫酸使用量560mlに代えて1870mlとしたこと、THFとトリメチルアミン30%水溶液使用量をそれぞれ1000mlに代えて3400ml、600mlに代えて2000mlとしたこと以外は、実施例10と同様の方法により製造したモノリス状アニオン交換体を1N水酸化ナトリウム水溶液中に24時間浸漬した後、純水で十分洗浄し、乾燥させた。得られたモノリス状アニオン交換体を25℃、相対湿度40%の状態で48時間放置した後、直径50mm、厚み50mmの円盤状に切り出し、円筒状カラムに充填してケミカルフィルターを作製した。このフィルターに25℃、40%の温湿度条件下、二酸化硫黄5,000ng/mの空気を面風速0.5m/sで供給したときの透過気体を超純水インピンジャー法でサンプリングし、イオンクロマトグラフ法で硫酸イオンの定量を行った。その結果、空気中の二酸化硫黄濃度は50ng/m未満であり、完全に二酸化硫黄を除去できた。
【0093】
比較例6
スチレン38gに代えてクロロメチルスチレン38gを用いたこと及びソルビタンモノオレートの量2.1gに代えて4.5gとしたこと以外は、比較例4と同様の方法でモノリス状有機多孔質体を製造した。この有機多孔質体を切断して15.0gを分取し、テトラヒドロフラン1500gを加え60℃で30分加熱した後、室温まで冷却し、トリメチルアミン(30%)水溶液195gを徐々に加え、50℃で3時間反応させた後、室温で一昼夜放置した。反応終了後、有機多孔質体を取り出し、アセトンで洗浄後水洗し、乾燥して有機多孔質陰イオン交換体を得た。この有機多孔質陰イオン交換体のイオン交換容量は、乾燥多孔質体換算で3.7mg当量/gであり、SIMSにより、トリメチルアンモニウム基が有機多孔質体にμmオーダーで均一に導入されていることを確認した。また、SEM観察により、有機多孔質体の連続気泡構造はイオン交換基導入後も保持されていることを確認した。また、この有機多孔質陰イオン交換体のメソポアの平均径は、25μm、全細孔容積は9.8ml/gであった。得られたアニオン交換体を実施例13と同様の方法で二酸化硫黄の除去試験を行った。その結果、空気中の二酸化硫黄の濃度は200ng/mであり、完全に除去することはできなかった。
【0094】
実施例14
(モノリスを用いた有機性ガスの吸着)
実施例11に準拠して製造したモノリス状有機多孔質体を純水で十分洗浄し、乾燥させた。得られたモノリス状有機多孔質体を25℃、相対湿度40%の状態で48時間放置した後、直径50mm、厚み50mmの円盤状に切り出し、円筒状カラムに充填してケミカルフィルターを作製した。このフィルターに25℃、40%の温湿度条件下、トルエン濃度1,000ng/m3の空気を面風速0.5m/sで供給したときの透過空気を固体吸着剤(TENAX−GR)を用いて捕集し、ガスクロマトグラフ質量分析法でトルエンの定量を行った。その結果、空気中のトルエン濃度は110ng/m3となり、約89%の除去率であった。
【0095】
比較例7
比較例4に準じて連続気泡型モノリス状有機多孔質体を製造し、実施例14と同様に直径50mm、厚み50mmの円盤状ケミカルフィルターを作製した。
【0096】
このフィルターを実施例14と同様の条件でトルエン除去試験を行った結果、透過空気中のアンモニア濃度は200ng/mとなり、除去率は約80%であり、実施例14よりも低い除去率となった。
【0097】
実施例15
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体を用いた高風速下での塩基性ガスの吸着)
アンモニア濃度5,000ng/mの空気に代えて、アンモニア濃度2,000ng/mの空気としたこと、面風速0.5m/sに代えて、5.0m/sとしたこと以外は、実施例11と同様の方法でアンモニアの除去試験を行った。その結果、空気透過速度が速いにもかかわらず、透過空気中のアンモニア濃度は50ng/m未満であり、アンモニアを除去することができた。
【0098】
実施例16
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体を用いた極微量濃度塩基性ガスの吸着)
アンモニア濃度2,000ng/mの空気に代えて、アンモニア濃度100ng/mの空気とした以外は、実施例15と同様の方法でアンモニア除去の性能評価を行なった。その結果、透過気体中のアンモニア濃度は50ng/m未満であり、空気透過速度が5.0m/sと速くても、極微量のアンモニアを完全に除去することができた。
【0099】
実施例17
(モノリス状有機多孔質カチオン交換体を用いた高濃度塩基性ガスの吸着)
アンモニア濃度5,000ng/mの空気に代えて、アンモニア濃度100μg/mの空気としたこと以外は、実施例11と同様の方法でアンモニア除去の寿命試験を行った。その結果、90%以上の浄化効率を維持できる期間は27日間であった。
【0100】
比較例8
比較例4と同様のケミカルフィルターを用いて、実施例17と同様のアンモニア除去の寿命試験を行った。その結果、90%以上の除去率を維持できる期間は10日間であった。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のモノリス及びモノリスイオン交換体は、化学的に安定で、体積当りのイオン交換容量が大きく、連続した空孔が大きくて水や気体等の流体を透過させた際の圧力損失が低い上に比表面積が極めて大きいといった特長を有しているため、ケミカルフィルターや吸着剤;2床3塔式純水製造装置や電気式脱イオン水製造装置に充填して用いられるイオン交換体;各種のクロマトグラフィー用充填剤;固体酸/塩基触媒として有用であり、広範な用途分野に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施例1で得られたモノリスのSEM画像である。
【図2】実施例2で得られたモノリスのSEM画像である。
【図3】実施例3で得られたモノリスのSEM画像である。
【図4】実施例4で得られたモノリスのSEM画像である。
【図5】実施例5で得られたモノリスのSEM画像である。
【図6】実施例6で得られたモノリスのSEM画像である。
【図7】実施例7で得られたモノリスのSEM画像である。
【図8】実施例8で得られたモノリスのSEM画像である。
【図9】実施例9で得られたモノリスのSEM画像である。
【図10】本発明のモノリスの構造を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0105】
1 マクロポア
2 共通の開口(メソポア)
3 内層部
4 表層部
5 気泡(気相)部
6 連続マクロポア構造体の骨格部
7 表層部中の非連続孔
10 連続マクロポア構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径20〜200μmの開口となる厚みが1mm以上の連続マクロポア構造体であり、該連続マクロポア構造体の骨格部の表層部が多孔構造であることを特徴とするモノリス状有機多孔質体。
【請求項2】
比表面積が30〜70m/gであることを特徴とする請求項1に記載のモノリス状有機多孔質体。
【請求項3】
気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径20〜200μmの開口となる厚みが1mm以上の連続マクロポア構造体であって、下記工程;
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、
ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、炭素数3〜9の脂肪族アルコール及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程であって、ビニルモノマー、架橋剤及び脂肪族アルコール混合物中のビニルモノマー濃度(重量%)を56〜80%とするか、若しくはビニルモノマー濃度を40%以上、56%未満とし、且つビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する該架橋剤の量を0.1〜1モル%とするII工程、
II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、有機多孔質体を得るIII工程、
を行い得られることを特徴とするモノリス状有機多孔質体。
【請求項4】
下記工程;
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、
ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、炭素数3〜9の脂肪族アルコール及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程であって、ビニルモノマー、架橋剤及び脂肪族アルコール混合物中のビニルモノマー濃度(重量%)を56〜80%とするか、若しくはビニルモノマー濃度を40%以上、56%未満とし、且つビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する該架橋剤の量を0.1〜1モル%とするII工程、
II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、有機多孔質体を得るIII工程、
を行うことを特徴とするモノリス状有機多孔質体の製造方法。
【請求項5】
I工程で得られるモノリス状の有機多孔質中間体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径20〜200μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積が5〜16ml/gであることを特徴とする請求項4記載のモノリス状有機多孔質体の製造方法。
【請求項6】
気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径20〜200μmの開口となる厚みが1mm以上の連続マクロポア構造体であり、該連続マクロポア構造体の骨格部の表層部が多孔構造であり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.4mg当量/ml以上であり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布していることを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体。
【請求項7】
比表面積が30〜70m/g以上であることを特徴とする請求項6に記載のモノリス状有機多孔質イオン交換体。
【請求項8】
気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径20〜200μmの開口となる厚みが1mm以上の連続マクロポア構造体であって、下記工程;
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、
ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、炭素数3〜9の脂肪族アルコール及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程であって、ビニルモノマー、架橋剤及び脂肪族アルコール混合物中のビニルモノマー濃度(重量%)を56〜80%とするか、若しくはビニルモノマー濃度を40%以上、56%未満とし、且つビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する該架橋剤の量を0.1〜1モル%とするII工程、
II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、有機多孔質体を得るIII工程、
該III工程で得られた有機多孔質体にイオン交換基を導入するIV工程、
を行い得られることを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体。
【請求項9】
下記工程;
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が5〜16ml/gの連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体を得るI工程、
ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋剤、炭素数3〜9の脂肪族アルコール及び重合開始剤からなる混合物を調製する工程であって、ビニルモノマー、架橋剤及び脂肪族アルコール混合物中のビニルモノマー濃度(重量%)を56〜80%とするか、若しくはビニルモノマー濃度を40%以上、56%未満とし、且つビニルモノマーと架橋剤の合計量に対する該架橋剤の量を0.1〜1モル%とするII工程、
II工程で得られた混合物を静置下、且つ該I工程で得られたモノリス状の有機多孔質中間体の存在下に重合を行い、有機多孔質体を得るIII工程、
該III工程で得られた有機多孔質体にイオン交換基を導入するIV工程、
を行うことを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノリス状有機多孔質体を吸着層として用いることを特徴とするケミカルフィルター。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のモノリス状有機多孔質イオン交換体を吸着層として用いることを特徴とするケミカルフィルター。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモノリス状有機多孔質体に貫通孔を設けたものを吸着層として用いることを特徴とするケミカルフィルター。
【請求項13】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のモノリス状有機多孔質イオン交換体に貫通孔を設けたものを吸着層として用いることを特徴とするケミカルフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−191148(P2009−191148A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32757(P2008−32757)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】