説明

モバイルプリンタ

【課題】 外乱光の影響を受けずにラベルの有無を正確に検出することができるモバイルプリンタを提供すること。
【解決手段】 搬送手段により搬送される台紙に貼られたラベルに印字手段により印字し、前記ラベルを台紙から剥離して発行するプリンタにおいて、反射型センサ18を用いてラベルが取られたか否かを判定している。この反射型センサ18は、パルス点灯される発光LED32とこの発光LED32からの光を受光する受光トランジスタQ12とが台紙21の裏面側に設けられている。反射型センサは、発光LED32が点灯する毎に受光トランジスタQ12で受光される受光レベルUを計測すると共に、発光LED32が消灯する毎に受光トランジスタQ12で受光される受光レベルVを計測し、受光レベルUが閾値を下回る回数を計数し、この回数が所定数以上であったと判定された場合にはラベル無しと判定するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離機能を備えたモバイルプリンタに関し、特に外光の影響を受けないで用紙の有無を検出することができるモバイルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
剥離発行モード機能を備えたバーコードプリンタが知られている。この剥離発行モード機能とは、台紙に貼られたラベルに印刷を行った後に、台紙にわずかにラベルが残るように剥離機構でラベルを剥離させて台紙の搬送を停止し、オペレータがラベルを取ると、次のラベルに印刷を行うものである。オペレータがラベルを取ったか否かは、ラベルの取り出し口近傍に設けられたラベルの有無を検出する透過型センサからの信号に基づいて判定されていた。
【特許文献1】特公平7−12704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の透過型センサでは、受光センサに外乱光が入り易いため、ラベルの有無を正確に検出することはできないという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、外乱光の影響を受けずにラベルの有無を正確に検出することができるモバイルプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、搬送手段により搬送される台紙に貼られたラベルに印字手段により印字し、前記ラベルを台紙から剥離して発行するプリンタにおいて、反射型センサを用いてラベルが取られたか否かを判定している。この反射型センサは、パルス点灯される発光素子とこの発光素子からの光を受光する受光素子とがラベルの裏面側に設けられている。反射型センサは、発光素子が点灯する毎に受光素子で受光される受光レベルUを計測すると共に、発光素子が消灯する毎に受光素子で受光される受光レベルVを計測し、受光レベルUが閾値を下回る回数を計数し、この回数が所定数以上であったと判定された場合にはラベル無しと判定するようにしている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、反射型センサをラベルの裏面側に設け、発光素子が点灯する毎に受光素子で受光される受光レベルを計測し、受光レベルUが閾値を下回る回数を計数し、この回数が所定数以上であったと判定された場合にはラベル無しと判定するようにしたので、外乱光の影響を受けずにラベルの有無を正確に検出することができるモバイルプリンタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。図1はサーマルヘッドで印字を行うポータブルプリンタのシステム構成図である。図1において、11は本ポータブルプリンタを統括して制御するCPU(中央処理装置)である。このCPU11からのシステムバス11aには、台紙21に貼られたラベル22上にサーマルヘッド19で印刷を行った後、ラベル22を剥離発行する位置まで搬送し、反射型センサ18でラベル22が取られたと判定されると次のラベル22に印刷を行わせる剥離発行等の各種制御プログラムが記憶されるROM(リード・オンリ・メモリ)12、作業エリアが設けられるRAM(ランダム・アクセス・メモリ)13、スイッチ14、運転モードを表示するLED15、ヘッド制御回路16、モータドライバ17、図4に示すように台紙21の裏面側に設けられラベルの有無を検出するための反射型センサ18が接続される。
【0008】
ヘッド制御回路16によりサーマルヘッド19が制御され、モータドライバ17により後述する台紙21を搬送するモータ20が駆動される。このモータ20により後述するプラテンローラ51が回転制御される。このモータドライバ27、モータ30、プラテンローラ51等により搬送手段が構成される。
【0009】
台紙31の表面には図2に示すように所定間隔でラベル32が貼られている。
【0010】
次に、図3を参照して反射型センサ28の電気回路について説明する。図3において、31はパルス電圧を出力する発振回路である。この発振回路31の出力はスイッチングトランジスタQ11のベースに接続される。このトランジスタQ11のエミッタは接地され、そのコレクタは抵抗r11、発光LED32を介して電源に接続される。この発光LED32から放たれた光は受光センサである受光トランジスタQ12で受光される。なお、発振回路31はパルス電圧を出力するため、この発光LED32の出力は,図8(A),(C),(E),(G)に示すようにパルス状となる。このトランジスタQ12のコレクタには電源が供給され、エミッタは抵抗r12を介して接地される。この抵抗r12の非接地側端子はA/Dコンバータ33に入力される。
【0011】
次に、図4及び図5を参照して反射型センサ18の取り付け位置について説明する。サーマルヘッド19とプラテン41との間に搬送された台紙21上に貼られたラベル22に、サーマルヘッド19で印字が行われる。そして、そのラベル22は台紙21に対して一部だけ貼られている箇所が残るようにして剥離板42で剥離された後、台紙21の搬送はラベル22がオペレータにより取られるまで搬送された後停止される。
【0012】
オペレータによりラベル22が取られたか否かは、発光LED32と受光トランジスタQ12からなる反射型センサ18で検出される。つまり、ラベル22が取られないで図5に示すような状態のように有る場合には、発光LED32から放たれた光はラベル22で反射されるため受光トランジスタQ12に届く。これは、例えば図8(D)に示すように外乱光の影響がない状態で、発光LED32から放たれたパルス状の光が受光トランジスタQ12で受光されることにより検出される。
【0013】
一方、ラベル22が取られた場合には、発光LED13から放たれた光は受光センサ14に届かない。このようにして、受光トランジスタQ12で光が検出されないと、ラベル32が取られたと判定される。これは、例えば図8(B)に示すように外乱光の影響がない状態で、発光LED32から放たれたパルス状の光が受光トランジスタQ12に届かないことを検出することにより行われる。
【0014】
なお、図4は図5をラベル取り出し方向から見た図である。
【0015】
次に、図6のフローチャートを参照して反射型センサ18の動作について説明する。まず、測定回数n,mの初期化がされる(ステップS1)。つまり、測定回数n,mのいずれも「1」とされる。ここで、測定回数nは、発光LED32を点灯したときに、受光トランジスタQ12で受光される受光レベルを計測した回数を示す。また、測定回数mは、発光LED32を消灯したときに、受光トランジスタQ12で受光される受光レベルを計測した回数を示す。
【0016】
次に、発光LED32を点灯したときに、受光トランジスタQ12で受光される受光レベルを計測し、A/Dコンバータ32でデジタルデータに変換した受光レベルV(n)、つまりV(1)をRAM13に記憶する(ステップS2)。
【0017】
次に、発光LED32を消灯したときに、受光トランジスタQ12で受光される受光レベルを計測し、A/Dコンバータ32でデジタルデータに変換した受光レベルV(m)、つまりV(1)をRAM13に記憶する(ステップS3)。
【0018】
さらに、発光LED32を消灯したときに、受光トランジスタQ12で受光される受光レベルを計測し、A/Dコンバータ32でデジタルデータに変換した受光レベルV(m+1)、つまりV(2)をRAM13に記憶する(ステップS4)。
【0019】
このようにして、発光LED32を点灯したときの受光レベルが1回、発光LED32を消灯したときの受光レベルが2回だけサンプリングされる。つまり、図8のaに示すように発光LED32を点灯したときの受光レベルが1回、b及びcに示すように発光LED32を消灯したときの受光レベルが2回だけサンプリングされる。
【0020】
そして、測定回数が「+1」される(ステップS5)。つまり、n=n+1,m=m+1とされる。
【0021】
そして、測定回数は5回であるかが判定される(ステップS6)。ステップS2〜S5の処理が5回行われると、nは「6」となるので、ステップS6の判定はn=6であるか否かが判定される(ステップS6)。
【0022】
このステップS6の判定で「NO」と判定された場合には、再度ステップS2〜S5の処理が行われる。そして、発光LED32を点灯したときの1回の受光レベルU(2)、発光LED32を消灯したときの2回の受光レベルV(3),V(4)がサンプリングされる。
【0023】
このように処理が繰り返し行われて、発光LED32を点灯したときの5回の受光レベルU(1)〜U(5)、発光LED32を消灯したときの10回の受光レベルV(1)〜V(10)が判定される。
【0024】
そして、ステップS6の判定で「YES」と判定されると、ステップS7以降の処理が行われる。
【0025】
まず、下限判定カウンタCを初期化する(C=0)とする(ステップS7)。次に、発光LED32を点灯したときの計測値の最小値、最大値、判定値の夫々にn=1の受光レベルU(1)をセットする(ステップS8)。
【0026】
そして、判定値<閾値であるかが判定される(ステップS9)。つまり、U(1)<閾値であるかが判定される。ここで、発光LED32を点灯したとき、その光がラベル22で反射されて受光トランジスタQ12で受光される。閾値はラベル22で反射されて受光トランジスタQ12で受光された受光レベルより少し小さい値に設定されている。つまり、ラベル22がある場合には、U(1)>閾値、ラベル22が無い場合にはU(1)<閾値となる。
【0027】
このステップS9の判定で「YES」と判定された場合には、下限判定カウンタCが「+1」される(ステップS10)。
【0028】
そして、最小値>受光レベルU(n+1)[つまり、U(2)]であるかが判定される(ステップS11)。
【0029】
このステップS11において、「YES」と判定された場合には、最小値に受光レベルU(2)がセットされる(ステップS12)。つまり、最小値が更新される。
【0030】
続いて、最大値<受光レベルU(n+1)[つまり、U(2)]であるかが判定される(ステップS13)。
【0031】
このステップS13の判定で「YES」と判定された場合には、最大値に受光レベルU(2)がセットされる(ステップS14)。
【0032】
このようにして、ステップS9〜14の処理により、受光レベルU(n+1)に対して最小値及び最大値の更新が行われる。
【0033】
次に、受光レベルU(n+1)[つまり、U(2)]<閾値であるかが判定される(ステップS15)。このステップS15の判定で「YES」と判定された場合には、下限判定カウンタCが「+1」される(ステップS16)。
【0034】
一方、ステップS15の判定で「NO」と判定された場合には、下限判定カウンタCは初期設定、つまり0クリアされる(ステップS17)。
【0035】
そして、5回の計測に対する処理が終了したかが判定される(ステップS18)。このステップS18の判定で「NO」と判定された場合には、前述したステップS11以降の処理が繰り返し行われる。
【0036】
受光レベルU(1)〜U(5)に対する処理が終了すると、ステップS18で「YES」と判定され、ステップS19以降の処理に進む。
【0037】
まず、受光レベルU(1)〜U(5)のうち最大値と最小値を取り除いた受光レベルの平均値を算出する(ステップS19)。この平均値を発光時の受光レベルUaveとする。
【0038】
次に、発光LED32を消灯したときの受光レベルの最小値、最大値、判定値の夫々にm=1の受光レベルV(1)をセットする(ステップS20)。
【0039】
そして、最小値>受光レベルV(n+1)[つまり、V(2)]であるかが判定される(ステップS21)。
【0040】
このステップS21において、「YES」と判定された場合には、最小値に受光レベルV(2)がセットされる(ステップS22)。つまり、最小値が更新される。
【0041】
続いて、最大値<受光レベルV(n+1)[つまり、V(2)]であるかが判定される(ステップS23)。
【0042】
このステップS23の判定で「YES」と判定された場合には、最大値に受光レベルV(2)がセットされる(ステップS24)。
【0043】
このようにして、ステップS21〜24の処理により、受光レベルV(m+1)に対して最小値及び最大値の更新が行われる。
【0044】
次に、10回の計測に対する処理が終了したかが判定される(ステップS25)。ステップS25の判定で「NO」と判定された場合には、前述したステップS21以降の処理が繰り返し行われる。
【0045】
受光レベルV(1)〜V(10)に対する処理が終了すると、ステップS25で「YES」と判定されてステップS26以降の処理に進む。
【0046】
まず、受光レベルV(1)〜V(10)のうち最大値と最小値を取り除いた受光レベルの平均値を算出する(ステップS26)。この平均値を消灯時の受光レベルVaveとする。
【0047】
そして、点灯時の受光レベルU(1)〜U(5)が閾値以下であったかが判定される(ステップS27)。つまり、下限判定カウンタ>2かが判定される。ここで、前述したように、点灯時の受光レベルU(1)〜U(5)が閾値以下であると、ステップS10あるいはS16の処理で下限判定カウンタが「+1」されている。『下限判定カウンタ>2』ということは、5回の計測のうち3回以上点灯時の受光レベルが閾値より小さかったことを意味している。
【0048】
このステップS27の判定で「YES」と判定された場合には、用紙、つまりラベル22は無しと判定される(ステップS28)。
【0049】
一方、ステップS27の判定で「NO」と判定される、つまり5回の計測のうち2回以下点灯時の受光レベルが閾値より小さかったと判定された場合には、点灯時の受光レベル(Uave)<消灯時の受光レベル(Vave)であるかが判定される(第1の判定手段)(ステップS28)。
【0050】
このステップS28の判定で「NO」と判定、つまりUave≧Vaveであると判定されると、その差Uave−Vave≧一定値αであるかが判定される(ステップS29)。
【0051】
このステップS29の判定で「YES」と判定されると、用紙、つまりラベル22は有りと判定される(第2の判定手段)(ステップS30)。
【0052】
一方、ステップS28で「YES」と判定されるかあるいはステップS29の判定で「NO」と判定されると、外乱光の影響によるものであると判定される(第3の判定手段)(ステップS31)。
【0053】
このようにして、外乱の影響により、ラベル22がないにも拘わらず受光LED32でxで示すように外乱光が受光された場合でも、ラベル無しと判定することができる。
【0054】
さらに、ラベル22が有る場合、外乱光の影響により発光LED32が非点灯中にyで示すように外乱光が受光された場合でも、ラベル有りと判定することができる。
【0055】
なお、上記した実施の形態では、発光LED32を点灯したときの受光レベルを1回、発光LED32を消灯したときの受光レベルを2回サンプリングしたが、これに限るものではない。
【0056】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形及び応用が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施の形態に係るポータブルプリンタのシステム構成を示すブロック図。
【図2】同実施の形態に係るラベルが貼られた台紙を示す図。
【図3】同実施の形態に係る反射型センサの主要部の回路図。
【図4】同反射型センサの設置位置を示す図。
【図5】同ポータブルプリンタの剥離機構を示す図。
【図6】同実施の形態の動作を説明するためのフローチャートの一部。
【図7】同実施の形態の動作を説明するためのフローチャートの一部。
【図8】同実施の形態の動作を説明するためのタイミングチャート。
【符号の説明】
【0058】
11…CPU、12…ROM、13…RAM、19…サーマルヘッド、18…反射型センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段により搬送される台紙に貼られたラベルに印字手段により印字し、前記ラベルを台紙から剥離して発行するプリンタにおいて、
前記台紙の裏面側に設けられ、パルス点灯される発光素子とこの発光素子からの光を受光する受光素子とを具備し、ラベルが取られたかを検出する反射型センサと、
前記台紙に貼られたラベル上に前記印字手段で印刷を行った後、前記ラベルを剥離発行する位置まで前記搬送手段を制御し、前記反射型センサでラベルが取られたと判定されると次のラベルに印刷を行わせる剥離発行手段と、
前記発光素子が点灯する毎に前記受光素子で受光される受光レベルUを計測すると共に、前記発光素子が消灯する毎に前記受光素子で受光される受光レベルVを計測し、前記受光レベルUが閾値を下回る回数を計数し、この回数が所定数以上であったと判定された場合にはラベル無しと判定する第1の判定手段を具備したことを特徴とするモバイルプリンタ。
【請求項2】
更に、前記回数が所定数未満で、受光レベルUの平均値が受光レベルVの平均値より大きく、受光レベルUの平均値と受光レベルVの平均値の差が一定値以上ある場合には用紙有りと判定する第2の判定手段と、
前記回数が所定数未満で、受光レベルVの平均値が受光レベルUの平均値より大きい場合、あるいは前記回数が所定数未満で受光レベルUの平均値と受光レベルVの平均値の差が一定値未満である場合には外乱光によりラベルを誤検出したと判定する第3の判定手段とを具備したことを特徴とする請求項1記載のモバイルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−15182(P2007−15182A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197801(P2005−197801)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】