説明

モリブデン含有化合物、リン含有化合物および分散剤を組み合わせた潤滑剤

【課題】変速機の部品を傷つけることなく、その変速機に対して耐摩耗保護および粘度保護を与えることができる潤滑剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、主要量の潤滑粘性のあるオイル、(A)耐摩耗性を改良する量の少なくとも1種のモリブデン含有組成物;(B)少なくとも1種のリン含有耐摩耗剤または極圧剤、および(C)少なくとも1種の分散剤を含有する潤滑組成物であって、但し、ポリ硫化オレフィンを含まない、潤滑組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、1999年12月22日に出願された仮出願第60/171,357号から優先権を主張し、その全開示内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、モリブデン含有化合物、リン含有化合物および分散剤の組合せを含有する潤滑組成物に関する。これらの組成物は、変速機および差動装置の黄色金属部品に対して、特に穏やかに作用する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
変速機は、変速機の形状および変速機部品の冶金のために、潤滑剤を調合する人には、特に問題を引き起こす。手動変速機は、平歯車を使用するが、これらは、本質的に直線状の力ラインにおいて、圧力および剪断を生じる。言い換えれば、剪断力は、1方向成分にすぎない。このことは、動力伝達装置に使用されるギア(これは、ハイポイドギアである)とは対照的である。ハイポイドギアでは、それらのギアは、剪断力が2方向成分を有するような様式で、噛み合う。直線状成分および第二横成分は、そのギア面を横切る。変速機に必要な極圧保護のレベルは、ハイポイドギアアセンブリに必要なものよりも低い。
【0004】
この変速機には、その手動変速機がギアシフトを実行する性能を与えるために、その潤滑剤に由来の一定の摩擦特性が必要である。このギアをシフトするためには、この変速機は、そのドライブシャフトおよびギアを噛み合い位置にしなければならない。この噛み合いは、シンクロナイジング部品(プレートとプレートまたはリングとコーン)が相対的なゼロ速度に減速されるとき、シンクロナイザーにより達成される。もし、これらの部品でゼロ相対速度が得られないなら、シンクロナイザー衝突として知られている現象が起こる。シンクロナイザーの衝突は、噛み合いシンクロナイザー部品(プレートとプレートまたはリングとコーン)間で確立された動摩擦係数が臨界最小値より低くなるとき、起こる。この臨界最小値より低いと、これらのシンクロナイザー部品は、ゼロ相対速度には達せず、そのロックアップ機構(例えば、スプラインキャンファー(camphers))は、回転部材(例えば、コーンキャンファー)と接触して、大きな音(衝突音)が生じる。
【0005】
変速機の部品は、典型的には、青銅または黄銅である。これらの金属は、典型的な耐摩耗剤および極圧剤(これらは、イオウ(特に、活性イオウ)を含有する)に由来の腐食および化学攻撃を受けやすい。例えば、有機ポリスルフィド(これらは、典型的には、ハイポイドギア用の潤滑剤と併用される)は、手動変速機のシンクロナイザー部品に対して、損傷を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
変速機の部品を傷つけることなく、その変速機に対して耐摩耗保護および粘度保護を与えることができる潤滑剤を提供することが望まれている。変速機油の黄色金属成分に対して殆ど(たとえあったとしても)腐食性がない手動変速機油を提供することもまた、望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1) 主要量の潤滑粘性のあるオイル、(A)耐摩耗性を改良する量の少なくとも1種のモリブデン含有組成物;(B)少なくとも1種のリン含有耐摩耗剤または極圧剤、および(C)少なくとも1種の分散剤を含有する潤滑組成物であって、但し、ポリ硫化オレフィンを含まない、潤滑組成物。
(項目2) (A)が、上記潤滑組成物に約100ppm〜約900ppmのモリブデンを与える量で存在する、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目3) (A)が、モリブデン含有アルカリ金属またはアルカリ土類金属オーバーベース化スルホン酸塩、カルボン酸塩またはフェネートである、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目4) (A)が、モリブデン含有アルカリ金属またはアルカリ土類金属スルホン酸塩である、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目5) 上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属が、カルシウムまたはマグネシウムである、項目4に記載の潤滑組成物。
(項目6) (A)が、少なくとも1種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物、酸性有機化合物および少なくとも1種の炭化水素不溶有機モリブデン錯体を含有する混合物の炭酸化により調製される、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目7) 上記有機モリブデン錯体が、アミン−モリブデン錯体である、項目6に記載の潤滑組成物。
(項目8) (A)が、少なくとも1種のチオリン酸モリブデンまたは少なくとも1種のチオカルバミン酸モリブデンである、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目9) (A)が、少なくとも1種のジチオリン酸モリブデンオキシスルフィドまたは少なくとも1種のジチオカルバミン酸モリブデンオキシスルフィドである、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目10) (B)が、チオリン酸金属、そのリン酸エステルまたは塩、リン含有カルボン酸、そのエステル、そのエーテル、および亜リン酸エステルから選択される、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目11) 上記リン酸エステルまたはその塩が、ジチオリン酸とエポキシドとを反応させて中間体を形成し、該中間体を、さらに、リン含有酸またはその無水物と反応させることにより調製したリン酸エステル、または該リン酸エステルの塩である、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目12) 上記ジチオリン酸が、各ヒドロカルビル基中に、独立して、1個〜約24個の炭素原子を有するジヒドロカルビルジチオリン酸である、項目11に記載の潤滑組成物。
(項目13) 上記リン酸エステルまたはその塩が、該リン酸エステルとアンモニアまたはアミンとを反応させることにより、調製される、項目12に記載の潤滑組成物。
(項目14) 上記アミンが、第三級脂肪族第一級アミンである、項目13に記載の潤滑組成物。
(項目15) 上記リン酸エステルまたはその塩が、リン含有酸またはその無水物と少なくとも1種のアルコールとを反応させることにより調製したリン酸エステル、または該リン酸エステルの塩であり、ここで、各アルコールが、独立して、約1個〜約30個の炭素原子を含有する、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目16) 上記リン酸エステルまたはその塩が、リン酸トリアリールである、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目17) 上記リン酸トリアリールが、リン酸トリクレジルである、項目16に記載の潤滑組成物。
(項目18) (B)が、亜リン酸ジまたはトリヒドロカルビルであり、ここで、各ヒドロカルビル基が、独立して、1個〜30個の炭素原子を含有する、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目19) (C)が、(a)アシル化窒素分散剤、(b)ヒドロカルビル置換アミン、(c)カルボン酸エステル分散剤、(d)マンニッヒ分散剤、および(e)それらの混合物から選択される、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目20) 上記分散剤(C)が、ホウ酸塩化分散剤である、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目21) 変速機または差動装置を潤滑する方法であって、該変速機または差動装置に項目1に記載の潤滑組成物を導入する工程、および該差動装置または変速機を操作する工程を包含する、方法。
(発明の要旨)
本発明は、主要量の潤滑粘性のあるオイル、(A)耐摩耗性を改良する量の少なくとも1種のモリブデン含有組成物、(B)少なくとも1種のリン含有耐摩耗剤または極圧剤、および(C)少なくとも1種の分散剤を含有する潤滑組成物に関し、但し、該潤滑組成物は、ポリ硫化オレフィンを含まない。この潤滑組成物は、改良された耐摩耗特性を有する。該潤滑組成物を手動変速機油で使用するとき、黄銅摩耗の量は、少なくなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
用語「ヒドロカルビル」には、炭化水素基だけでなく実質的な炭化水素基が含まれる。実質的な炭化水素とは、主として基の炭化水素的性質を変えないヘテロ原子置換基を含有する基を示す。ヒドロカルビル基の例には、以下が挙げられる:
(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族置換基(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環族置換基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、芳香族置換された芳香族置換基、脂肪族置換された芳香族置換基および脂環族置換された芳香族置換基などだけでなく、環状置換基。ここで、この環は、分子の他の部分により、完成されている(すなわち、例えば、いずれか2個の指示された置換基は、一緒になって、脂環族基を形成し得る);
(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、非炭化水素基を含有する置換基。この非炭化水素基は、本発明の文脈内では、主として、置換基の炭化水素的な性質を変化させない;このような基(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホキシなど)は、当業者に知られている;
(3)ヘテロ原子置換基、すなわち、本発明の文脈内では、主として炭化水素的性質を有しながら、環または鎖の中に存在する炭素以外の原子を有するが、その他は炭素原子で構成されている基(例えば、アルコキシまたはアルキルチオ)である。適当なヘテロ原子は当業者に明らかであり、例えば、イオウ、酸素、窒素を包含する。このような置換基には、例えば、ピリジル、フリル、チエニル、イミダゾリルなどがある。
【0009】
一般に、このヒドロカルビル基では、各10個の炭素原子に対し、約2個以下のヘテロ原子置換基、好ましくは、1個以下のヘテロ原子置換基が存在する。典型的には、このヒドロカルビル基には、このようなヘテロ原子置換基は存在しない。従って、このヒドロカルビル基は、純粋な炭化水素である。
【0010】
ポリ硫化オレフィンとの用語は、イオウ、硫化水素またはその組合せと反応して1オレフィンあたり平均して1個より多いイオウ原子を含有する反応生成物を形成するオレフィンを意味する。典型的には、これらの生成物は、スルフィド結合を介して、2個のオレフィンとカップリングする。これらの結合は、一般に、約2個〜約8個のイオウ原子を含有する。これらの生成物は、一般に、ポリ硫化オレフィンと呼ばれる。これらの生成物の一例は、圧力下でのイソブチレン、イオウおよび硫化水素の反応生成物である。
【0011】
本明細書および請求の範囲において、「潤滑組成物」との用語は、潤滑粘性のあるオイルおよび添加剤の組合せを意味する。重量パーセントは、この添加剤および潤滑粘性のあるオイルの全量を基準にしている。
【0012】
本明細書中で記述のように、特定の添加剤と組み合わせて、モリブデン含有組成物を使用することにより、潤滑剤の耐摩耗性、特に、黄銅の摩耗が改良される。このモリブデン組成物は、一般に、この潤滑組成物に、約100ppmまたは約125ppmから約900ppmまで、または約150ppmから約700ppmまで、または約200ppmから約500ppmまでのモリブデン金属を供与するのに充分なレベルで、使用される。ここで、および本明細書の他の箇所では、比および範囲は、組み合わせてもよい。このモリブデン金属は、油溶形状または分散可能形状である。これらのモリブデン組成物には、酸性有機組成物のモリブデン含有オーバーベース化塩、チオカルバミン酸モリブデン、およびチオリン酸モリブデンが挙げられる。1実施形態では、このモリブデン組成物は、モリブデン含有分散剤(例えば、モリブデン含有スクシンイミド)以外のものである。
【0013】
1実施形態では、このモリブデン組成物は、ジチオカルバミン酸モリブデンである。このジチオカルバミン酸塩は、2個〜約6個のヒドロカルビル基、または約2個〜約4個のヒドロカルビル基を有し得る。このジチオカルバミン酸塩は、1個〜約4個のジチオカルバモイル基、または1個〜約2個のジチオカルバモイル基を有し得る。1実施形態では、このジチオカルバミン酸塩は、ビスジチオカルバミン酸塩である。これらのジチオカルバミン酸塩は、約1個〜約30個の炭素原子、または約3個〜約24個の炭素原子、または約4個〜約18個の炭素原子を独立して有するヒドロカルビル基を有する。1実施形態では、これらのヒドロカルビル基は、全て、アルキル基である。
【0014】
このジチオカルバミン酸塩は、単一金属ジチオカルバミン酸塩、またはジチオカルバモイル部分との酸素および/またはイオウ錯体であり得る。これらのモリブデン組成物には、チオカルバミン酸モリブデンオキシスルフィドおよびチオリン酸モリブデンオキシスルフィドが挙げられる。チオカルバミン酸塩およびそれらの調製は、以下に記述する。モリブデン含有チオカルバミン酸塩(ジチオカルバミン酸塩を含めて)は、当該技術分野で公知である。これらの物質は、米国特許第4,098,705号、第4,259,194号、第4,259,195号、第4,265,773号、第4,272,387号、第4,282,822号、第4,283,295号、第4,369,119号、第4,395,423号および第4,402,840号に記述されている。これらの特許の内容は、モリブデン含有カルバミン酸塩およびそれらの製造方法に開示について、本明細書中で参考として援用されている。市販のモリブデン含有チオカルバミン酸塩の例には、Sakura Lube 500(Sakura Chemicalの20%ジチオカルバミン酸モリブデン)、およびMolyvan 807(Vanderbilt Chemicalの5%ジチオカルバミン酸モリブデン)が挙げられる。本発明者は、このモリブデン含有ジチオカルバミン酸塩が、熱安定性が必要な潤滑組成物で有用であることを発見した。1実施形態では、モリブデン含有ジチオカルバミン酸塩に好ましいモリブデンのレベルは、約200ppm〜約800ppm、好ましくは、約250ppm〜約600ppm、さらに好ましくは、約300ppm〜約500ppmである。
【0015】
他の実施形態では、このモリブデン含有組成物は、チオリン酸モリブデンである。チオリン酸のモリブデン塩は、当該技術分野で公知である。このチオリン酸(ジチオリン酸を含めて)は、以下に記述する。このモリブデン塩およびそれらの調製方法は、米国特許第3,223,625号、第3,256,184号、第3,400,140号、第3,494,866号、第3,840,463号および第4,156,099号に記述されている。これらの特許の内容は、このような開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0016】
1実施形態では、このモリブデン組成物は、酸性有機化合物のモリブデンオーバーベース化塩の形状である。このモリブデンオーバーベース化塩は、熱安定性が必要な潤滑剤にて、特に有用である。このモリブデン含有オーバーベース化塩は、この金属およびこの金属と反応する特定の有機化合物の化学量論に従って、存在するであろう量よりも過剰の金属含量により特徴づけられる。過剰の金属量は、通常、金属比により表わされる。「金属比」との用語は、この酸性有機化合物の当量に対する金属の全当量の比である。正塩中に存在する金属の4.5倍の金属を有する塩は、有機酸1当量あたり、3.5当量過剰の金属、すなわち、4.5の金属比を有する。このモリブデン含有オーバーベース化塩は、好ましくは、約1.5から、または約3からの金属比を有する。このモリブデン含有オーバーベース化塩は、一般に、約40まで、または約30まで、または約25までの金属比を有する。1実施形態では、この金属塩は、約10から、好ましくは、約12から、約40まで、または約30までの金属比を有する。
【0017】
このモリブデン含有オーバーベース化塩は、さらに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有し得る。このような金属の例には、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛が挙げられ、好ましくは、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムである。このアルカリ金属またはアルカリ土類金属は、典型的には、このモリブデン含有オーバーベース化塩の約2重量%から約20重量%までの量、または約4重量%から約18重量%までの量、または約6重量%から約14重量%までの量で、存在し得る。
【0018】
このモリブデン含有オーバーベース化金属塩を調製するのに使用する酸性有機化合物は、一般に、スルホン酸、カルボン酸、リン含有酸、フェノールおよびそれらの誘導体からなる群から選択される。好ましくは、このオーバーベース化物質は、スルホン酸、カルボン酸、またはこれらの酸の誘導体(例えば、エステル、無水物など)からなる群から選択される。これらのスルホン酸は、好ましくは、モノ−、ジ−およびトリ脂肪族炭化水素置換芳香族スルホン酸である。この炭化水素置換基は、ポリアルケンから誘導され得る。これらのポリアルケンには、2個から約16個までの炭素原子、好ましくは、約6個までの炭素原子、さらに好ましくは、約4個までの炭素原子を有する重合可能なオレフィン性モノマーの単独重合体およびインターポリマーが挙げられる。これらのオレフィンは、モノオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンおよび1−オクテン)、またはポリオレフィン性モノマー(例えば、1,3−ブタジエンおよびイソプレン)であり得る。1実施形態では、このインターポリマーは、単独重合体である。好ましい単独重合体の例には、ポリブテン、好ましくは、重合体の約50%がイソブチレンから誘導されたポリブテンがある。これらのポリアルケンは、通常の方法により調製される。
【0019】
このポリアルケンは、一般に、少なくとも約8個の炭素原子、または少なくとも約15個の炭素原子、または少なくとも約20個の炭素原子を含有することにより、特徴づけられる。このポリアルケンは、一般に、約40個までの炭素原子、または約30個までの炭素原子を含有する。1実施形態では、これらのポリアルケンは、約250から、または約300から、約600まで、または約500まで、または約400までのMnを有する。略字Mnは、数平均分子量を表わす普通の記号である。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、重合体の重量平均分子量および数平均分子量の両方を知る方法であるだけでなく、この重合体の全分子量分布を知る方法でもある。本発明の目的では、イソブテン、ポリイソブテンの一連の分画された重合体が、GPCの較正標準として用いられる。
【0020】
スルホン酸の例には、マホガニースルホン酸、ブライトストックスルホン酸、石油スルホン酸、モノ−およびポリワックス置換ナフタレンスルホン酸、飽和のヒドロキシ置換スルホン酸および不飽和のパラフィンワックススルホン酸、ワックス置換ベンゼンまたはナフタレンスルホン酸、テトライソブチレンスルホン酸、テトラアミレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルベンゼンスルホン酸、少なくとも1種の上記ポリアルケン(好ましくは、ポリブテン)をクロロスルホン酸で処理することにより誘導されるスルホン酸などが挙げられる。
【0021】
これらのスルホン酸には、ドデシルベンゼン「ボトムス」スルホン酸が挙げられる。ドデシルベンゼンボトムス(主として、モノ−およびジドデシルベンゼンの混合物)は、家庭用洗剤の製造の副生成物として、入手可能である。線状のアルキルスルホン酸塩(LAS)の製造中に形成されるアルキル化ボトムスから得られる類似生成物も、本発明で用いられるスルホン酸塩を製造する際に、有用である。スルホン酸の製造は、当業者に周知である。例えば、John Wiley & Sons、N.Y.(1969年)により発行されたKirk−Othmerの「Encyclopedia of Chemical Technology」(2版、19巻、p.291以下)の「Sulfonates」の章を参照せよ。
【0022】
1実施形態では、この酸性有機化合物は、カルボン酸またはそれらの誘導体であり得る。適当なカルボン酸には、脂肪族、環状脂肪族および芳香族の1塩基性または多塩基性カルボン酸が挙げられる。1実施形態では、このカルボン酸またはそれらの誘導体は、約8個から、または約12個からの炭素原子を含有する脂肪族酸またはそれらの誘導体である。このカルボン酸またはそれらの誘導体は、一般に、約50個まで、または約25個までの炭素原子を含有する。例示のカルボン酸およびそれらの誘導体には、2−エチルヘキサン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、ポリブテン(Mnは、約200〜1500、好ましくは、約300〜1500、さらに好ましくは、約800〜1200に等しい)から誘導されるポリブテニル置換コハク酸またはその無水物、ポリプロペン(Mnは、200〜2000、好ましくは、約300〜1500、さらに好ましくは、約800〜1200に等しい)から誘導されるポリプロピレン置換コハク酸またはそれらの無水物、ペトロラタムまたは炭化水素ワックスの酸化により形成される酸、2種またはそれ以上のカルボン酸(例えば、トール油酸およびロジン酸)の市販混合物、オクタデシル置換アジピン酸、ステアリル安息香酸、およびこれらの酸の混合物、および/またはそれらの誘導体が挙げられる。
【0023】
1実施形態では、このカルボン酸またはそれらの誘導体は、ヒドロカルビル置換カルボン酸アシル化剤である。これらのアシル化剤には、ハロゲン化物、エステル、無水物などが挙げられ、好ましくは、酸、エステルまたは無水物であり、さらに好ましくは、無水物である。好ましくは、このカルボン酸アシル化剤は、コハク酸アシル化剤である。このアシル化剤は、モノカルボン酸アシル化剤またはポリカルボン酸アシル化剤、および1種またはそれ以上の上記ポリアルケンから誘導され得る。1実施形態では、このポリアルケンは、少なくとも約400、または少なくとも約500のMnにより特徴づけられる。一般に、このポリアルケンは、約500から約5000まで、または約700から約2500まで、または約800から約2000まで、または約900から約1500までのMnにより特徴づけられる。1実施形態では、このポリアルケンは、約400から約1200までのMn、好ましくは、約400から約800までのMnを有する。
【0024】
他の実施形態では、このヒドロカルビル基は、少なくとも1300から約5000までのMn、および約1.5から約4まで、または約1.8から約3.6まで、または約2.5から約3.2までのMw/Mnを有するポリアルケンから誘導される。このヒドロカルビル置換カルボン酸アシル化剤は、公知の方法により調製される。
【0025】
他の実施形態では、これらのアシル化剤は、上記ポリアルケンと、過剰の無水マレイン酸とを反応させて、各当量の置換基に対するコハク酸基の数が各当量の置換基あたり約1.3個〜約4.5個のコハク酸基となる置換コハク酸アシル化剤を提供することにより、調製される。その適当な範囲は、置換基1当量あたり、約1.3個から3.5個まで、または約1.5個から約2.5個までのコハク酸基である。本実施形態では、このポリアルケンは、約1300〜約5000のMn値を有する。Mnのさらに好ましい範囲は、約1500〜約2800であり、最も好ましい範囲のMn値は、約1500〜約2400である。
【0026】
カルボン酸またはそれらの誘導体(例えば、アシル化剤)およびそれらの調製は、米国特許第3,215,707号(Rense);第3,219,666号(Normanら);第3,231,587号(Rense);第3,912,764号(Palmer);第4,110,349号(Cohen);および第4,234,435号(Meinhardtら);および英国特許第1,440,219号に記述されている。これらの特許の開示内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0027】
他の実施形態では、この酸性有機化合物は、アルキルオキシアルキレン酢酸またはアルキルフェノキシ酢酸、さらに好ましくは、アルキルポリオキシアルキレン酢酸またはそれらの誘導体である。これらの化合物のある特定の例には、以下が挙げられる:イソステアリルペンタエチレングリコール酢酸;イソステアリル−O−(CHCHO)CHCONa;ラウリル−O−(CHCHO)2.5CHCOH;ラウリル−O−(CHCHO)3.3CHCOH;オレイル−O−(CHCHO)−CHCOH;ラウリル−O−(CHCHO)4.5CHCOH;ラウリル−O−(CHCHO)10CHCOH;ラウリル−O−(CHCHO)16CHCOH;オクチルフェニル−O−(CHCHO)CHCOH;オクチルフェニル−O−(CHCHO)19CHCOH;2−オクチルデカニル−O−(CHCHO)CHCOH。これらの酸は、Sandoz Chemicalから、Sandopan酸の商品名で市販されている。
【0028】
他の実施形態では、この酸性有機化合物は、芳香族カルボン酸である。有用な芳香族カルボン酸の群には、次式のものがある:
【0029】
【化1】


ここで、Rは、好ましくは、上記ポリアルケンから誘導した脂肪族ヒドロカルビル基、aは、1〜約4の範囲の数、通常、1または2であり、Arは芳香族基、各Xは、独立して、イオウまたは酸素、好ましくは、酸素、bは、1〜約4の範囲の数、通常、1または2、cは、0〜約4の範囲の数、通常、1または2であるが、但し、a、bおよびcの合計は、Arの原子価数を超えない。芳香族酸の例には、置換されたまたは非置換の安息香酸、フタル酸およびサリチル酸が挙げられる。このR基は、芳香族基Arに直接結合したヒドロカルビル基である。R基の例には、上記ポリアルケンから誘導した置換基が挙げられる。
【0030】
Arは、1核性または多核性であり得る。1核性の基には、フェニル、ピリジル、またはチエニルが挙げられる。この多核性の基は、1個の芳香核が他の核に2点で縮合した縮合タイプ(例えば、ナフチル、アントラニルなど)であり得る。この多核性の基はまた、結合タイプであり得、これは、架橋結合(例えば、アルキレン結合、エーテル結合、ケト結合、スルフィド結合、およびポリスルフィド結合(3個〜約6個のイオウ原子を含有する))によって結合している。芳香族基の例には、フェニル基、フェニレン基およびナフチレン基が挙げられる。
【0031】
1実施形態では、このカルボン酸またはそれらの誘導体は、サリチル酸またはそれらの誘導体である。好ましくは、このサリチル酸またはそれらの誘導体は、脂肪族炭化水素置換サリチル酸またはそれらの誘導体である。この炭化水素置換基は、一般に、1種またはそれ以上の上記ポリアルケンから誘導される。
【0032】
上の芳香族カルボン酸は、当該技術分野で公知であるか、または当該技術分野で公知の方法により調製され得る。これらの式により例示されるタイプのカルボン酸、およびそれらの中性金属塩および塩基性金属塩の調製方法は、周知であり、例えば、米国特許第2,197,832号;第2,197,835号;第2,252,662号;第2,252,664号;第2,714,092号;第3,410,798号;および第3,595,791号に開示されている。これらの特許の内容は、芳香族カルボン酸、それらの塩およびその調製方法の開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0033】
他の実施形態では、この酸性有機化合物は、リン含有酸またはその誘導体である。このリン含有酸またはその誘導体には、リン含有酸(例えば、リン酸またはそのエステル);およびチオリン含有酸またはそのエステル(モノおよびジチオリン含有酸またはそのエステルを含めて)が挙げられる。1実施形態では、このリン含有酸は、1種またはそれ以上の上のポリアルケンと硫化リンとの反応生成物である。有用な硫化リンには、五硫化リン、セスキ硫化リン、七硫化リンなどが挙げられる。このポリアルケンと硫化リンとの反応は、一般に、両者を、80℃より高い温度、通常、100℃と300℃の間の温度で単に混合することにより、起こり得る。一般に、これらの生成物は、約0.05%〜約10%のリン含量、好ましくは、約0.1%〜約5%のリン含量を有する。このオレフィン重合体に対するリン化剤の相対的な割合は、一般に、このポリアルケン100部あたり、この硫化リン0.1部〜50部である。これらのリン含有酸は、Le Suerに発行された米国特許第3,232,883号に記述されている。この文献の内容は、リン含有酸およびその製造方法の開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0034】
他の実施形態では、この酸性有機化合物はフェノールである。このフェノールは、式(R−Ar−(OH)で表され得、ここで、Rは上で定義されている;Arは上で定義の芳香族基である;aおよびbは、独立して、少なくとも1の数であり、aとbの合計は、2から、芳香核Ar上の置換可能な水素の全数までの範囲である。好ましくは、aおよびbは、独立して、1から約4まで、または約2までの範囲の数である。1実施形態では、Rおよびaは、各フェノール化合物に対し、R基によって、平均して少なくとも約8個の脂肪族炭素原子が与えられるような値である。
【0035】
他の実施形態では、このモリブデン含有オーバーベース化金属塩は、ホウ酸塩化モリブデン含有オーバーベース化金属塩である。このモリブデン含有ホウ酸塩化オーバーベース化金属塩は、以下に記述のホウ酸塩化オーバーベース化金属塩とモリブデン含有アニオンとを反応させることにより、調製される。他方、このモリブデン含有ホウ酸塩化オーバーベース化金属塩は、このモリブデン含有金属塩を製造するのに使用した初期反応混合物に、ホウ素含有化合物を含有させることにより、調製できる。
【0036】
(モリブデン含有オーバーベース化組成物の調製)
1実施形態では、このモリブデン含有オーバーベース化組成物は、モリブデン含有アニオンと酸性有機化合物のアルカリ金属またはアルカリ土類金属オーバーベース化塩とを反応させることにより、調製される。このアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は、以下で記述の酸性物質(典型的には、二酸化炭素)と、酸性有機化合物(例えば、上記のもの)、この有機物質に対し不活性な少なくとも1種の有機溶媒を含有する反応媒体、化学量論的に過剰な塩基性アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物(典型的には、水酸化金属または酸化金属)および促進剤を含有する混合物とを反応させることにより、調製され、この促進剤には、アルコール性促進剤およびフェノール性促進剤が挙げられ、例えば、約1個〜約12個の炭素原子を有するアルコール(例えば、メタノール、エタノール、アミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、およびそれらの混合物など)、およびアルキル化フェノール(例えば、ヘプチルフェノール、オクチルフェノールおよびノニルフェノール)がある。
【0037】
この塩基性アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の例には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、アルコキシド(典型的には、このアルコキシ基が、10個までの炭素原子、好ましくは、7個までの炭素原子を含有するもの)、水素化物およびアミドが挙げられる。有用な塩基性金属化合物には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムおよび水酸化バリウムが挙げられる。これらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩およびそれらの調製方法は、米国特許第4,627,928号に記述されている。この特許の内容は、このような開示について、本明細書中で参考として援用されている。適当な促進剤の広範囲にわたる論述は、米国特許第2,777,874号;第2,695,910号;第2,616,904号;第3,384,586号;および第3,492,231号に見いだされる。これらの特許の内容は、促進剤の開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0038】
この酸性物質を反応塊の残りの部分と接触させる温度は、大部分、用いられる促進剤に依存する。フェノール性促進剤を用いると、温度は、通常、約80℃〜約300℃、好ましくは、約100℃〜約200℃の範囲である。この促進剤として、アルコールまたはメルカプタンを用いるとき、この温度は、反応混合物の還流温度を超えない。
【0039】
酸性有機化合物、促進剤、金属化合物および反応媒体の混合物と反応する酸性物質もまた、上で引用した特許、例えば、米国特許第2,616,904号に開示されている。有用な酸性物質の公知の群には、ギ酸、酢酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸、カルバミド酸、置換カルバミド酸などが挙げられる。酢酸は、非常に有用な酸性物質である。酸性物質としては、無機酸性化合物(例えば、HCl、SO、SO、CO、HS、Nなど)もまた、この酸性物質として使用され得る。好ましい酸性物質は、SO、SO、二酸化炭素および酢酸であり、さらに好ましくは、二酸化炭素である。
【0040】
これらのオーバーベース化物質の調製方法は、先行文献にて周知であり、例えば、以下の米国特許に開示されている:第2,616,904号;第2,616,905号;第2,616,906号;第3,242,080号;第3,250,710号;第3,256,186号;第3,274,135号;第3,492,231号;および第4,230,586号。これらの特許は、オーバーベース化方法、オーバーベース化され得る物質、適当な金属塩基、促進剤、および酸性物質を開示している。これらの特許の内容は、このような開示について、本明細書中で参考として援用されている。塩基性スルホン酸塩の他の記述、およびそれらの製造方法は、以下の米国特許に見いだされ得る:第2,174,110号;第2,202,781号;第2,239,974号;第2,319,121号;第2,337,552号;第3,488,284号;第3,595,790号;および第3,798,012号。これらの内容は、このことに関する開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0041】
上記のように、このアルカリ金属またはアルカリ土類金属オーバーベース化組成物は、モリブデン含有アニオンと反応して、酸性有機化合物のモリブデン含有オーバーベース化金属塩を形成し得る。このモリブデンアニオンは、モリブデン酸として、またはモリブデン酸のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩(これには、(NHMo24、(NHMoおよび種々の水和物(例えば、(NHMo24・4HO)が含まれる)として供与される。1実施形態では、この反応は、素練り促進剤の使用により、促進される。素練り促進剤には、ここで記述の1種またはそれ以上の分散剤が挙げられる。この方法およびこのモリブデン含有オーバーベース化組成物は、米国特許第3,541,014号(LeSuer)に記述されている。この特許の内容は、この開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0042】
他の実施形態では、このモリブデン含有オーバーベース化組成物は、少なくとも1種の有機モリブデン錯体の存在下にて、このオーバーベース化方法で使用する成分を反応させることにより、調製される。このモリブデン含有有機錯体は、好ましくは、アミン−モリブデン錯体であり、これは、典型的には、酸性有機モリブデン化合物とアミンとを反応させることにより、調製される。このモリブデン化合物には、モリブデン酸、モリブデン酸アルカリ金属塩、モリブデン酸水素ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、MoOCl、および三酸化モリブデンが挙げられる。モリブデン酸ナトリウムおよびモリブデン酸アンモニウムは、好ましい。このアミン−モリブデン錯体は、一般に、水性媒体中で調製される。このアミンは、無機モリブデン化合物の水溶液に添加される。この反応混合物は、このアミンの添加後、約20℃と約100℃の間の温度、好ましくは、約50℃と約90℃の間の温度で、約0.5時間〜約3時間保持される。この反応混合物を中和するのに必要な量の酸が、このアミンの導入前または後に、添加される。強力な鉱酸(好ましくは、硫酸)が使用される。このアミン−モリブデン錯体は、沈殿する。それは、濾過し、水洗し、そして適当なら、乾燥することにより、回収される。この錯体は、使用するアミンのタイプに依存して、固形状またはペースト状の外観を有する。その色は、白色から青色まで変わる。それは、事実上、炭化水素に不溶または難溶である。
【0043】
この錯体中のモリブデンに対する窒素の原子比は、一般に、約0.25〜約4、好ましくは、約0.5〜約2である。この錯体のモリブデン含量は、使用するアミンの性質に依存して、変わる。それは、約10%と約45%の間である。この有機モリブデン錯体のうち、酸素含有化合物を用いた錯体もまた、使用できる。1,2−、1,3−および1,4−グリコールは、非常に適当である。エチレングリコールおよびプロピレングリコールは、好ましく使用される。これらのポリオールには、グリセロールおよびトリメチロールプロパンがある。
【0044】
ある種のアミン、または好ましくは、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドでアルコキシル化したポリアミンもまた、適当である。ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンの誘導体が言及できる。
【0045】
このモリブデン含有オーバーベース化組成物の調製は、モリブデン化合物(例えば、モリブデン酸アンモニウム)の存在下にて、この酸素含有化合物を約90℃〜100℃で加熱することにより、行うことができる。この反応により生成する水は、窒素流を用いて、除去される。得られた錯体のモリブデン含量は、未反応酸素含有化合物を除去した程度に依存して、約7重量%と約50重量%の間で変わる。
【0046】
この有機モリブデン錯体は、例えば、約40℃と約100℃の間の温度で、芳香族溶媒(例えば、キシレンまたはトルエン)中にて、この錯体の懸濁液に対する硫化水素(HS)の作用により、硫化できる。硫化水素の導入から、この懸濁液の色は、青緑色から橙色に変わり、次いで、赤色に変わる。導入する硫化水素の量は、モリブデンに対するイオウの原子比が約1と約3の間になるような量である。
【0047】
本発明に従って得られたモリブデン含有オーバーベース化生成物は、透明であり、安定であり、スルホン酸塩の場合、褐色に着色しており、フェノール塩の場合、深緑色に着色しており、そしてサリチル酸塩の場合、黒色に着色している。この色は、一般に、硫化錯体の存在下では、このオーバーベース化清浄剤については、赤色である。この添加剤に含有させるモリブデンの割合は、100%に近く、無機モリブデン誘導体の含入中に得られる割合よりも高い。この添加剤は、約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは、約1重量%〜約4重量%のモリブデンを含有する。本発明に従ったオーバーベース化添加剤は、炭化水素に溶解性または分散性である。モリブデン−アミン錯体を用いて調製したモリブデン含有オーバーベース化塩は、米国特許第5,143,633号に記述されている。この特許の内容は、このモリブデン含有オーバーベース化塩およびそれらの製造方法に記述について、本明細書中で参考として援用されている。
【0048】
以下の実施例は、モリブデン含有オーバーベース化組成物およびそれらの製造方法に関する。本実施例だけでなく、本明細書および添付の請求の範囲を通じて、他に指示がなければ、部およびパーセントは重量基準であり、温度は摂氏であり、そして圧力は大気圧である。本実施例では、これらのオーバーベース化添加剤の塩基度は、それらの中和価またはAV(アルカリ価)(これは、生成物1グラムあたりのKOHのmgで表わされる)により、特徴づけられる。それは、標準的なASTM D−2896に従って、強酸を用いた滴定により、測定される。
【実施例】
【0049】
(実施例M−1)
(a)モリブデン酸ナトリウム(NaMoO・2HO)41.17gの水100ml溶液を、温度制御および撹拌装置を取り付けた反応器にて、調製する。この混合物を、30%HSO(55.6g)を添加することにより、酸性化し、次いで、60℃まで加熱する。これに続いて、CECA SAのDinoram C(21g)を添加する。Dinoram Cは、式R−N−H−(CH−NHに相当し、ここで、Rは、60%のC12、20%のC14、10%のC16および5%のC18を含有する直鎖飽和アルキル基の混合物である。濾過し、次いで、乾燥前に、水およびメタノールで洗浄することにより、この青色沈殿物を回収する。最終的に、モリブデン32.6%および窒素4.4%を含有する青色の固形物47.1gを回収する。
【0050】
(b)反応容器に、キシレン520mlおよび上記のDinoram C/モリブデン錯体30gを充填する。この混合物を撹拌する。次いで、この混合物に、C16−18直鎖アルキル鎖および分子量430を有し活性物質96%を含有するアルキルキシレンスルホン酸131.8g、希釈油である100Neutral溶媒168g、純度96%の消和石灰113.24gおよびメタノール48mlを添加する。このスルホン酸をこの石灰で中和した後(これは、適当には、この反応混合物を60℃で30分間加熱することにより、行うことができる)、この混合物に、二酸化炭素ガス55.2gを導入し、42℃の温度で保持する。
【0051】
炭酸化、および部分真空下での水およびメタノールの除去の後、この固体残留物を、遠心分離により除去する。この溶媒を留去した後、モリブデン含有超塩基性スルホン酸塩448gを回収する。中和価は、300であり、そのカルシウム含量は、11.7%であり、そしてそのモリブデン含量は、2.17%である。それは、潤滑油で希釈しても、安定である。
【0052】
(実施例M−2)
(a)実施例M−1で調製した錯体20gのキシレン200ml分散液を、温度制御、撹拌機および通気系を取り付けた250ml反応器にて、調製する。80℃で保持したこの分散液に、HS(6.7g)を注入する。この溶媒の除去後に集めた深赤色の固形物は、モリブデン28.4%、窒素3.8%およびイオウ23.7%を含有する。
【0053】
(b)実施例M−1と同様の操作を行うが、硫化Dinoram C/モリブデン錯体(実施例M−2(a))28gをキシレン520mlに懸濁し、これを、他の反応物の導入前に行う。操作の順序は、その残留物を遠心分離で除去すること以外は、実施例M−1と同じである。モリブデン含有超塩基性スルホン酸塩を集める。AVは、304であり、そのモリブデン含量、イオウ含量およびカルシウム含量は、それぞれ、1.63%、3.4%および11.7%である。得られた生成物は、赤茶色であり、そして潤滑油で希釈しても、安定である。
【0054】
(実施例M−3)
(a)以下のようにして、2−エチルヘキシルアミン/モリブデン錯体を調製する:実施例M−1と同様の操作を行うが、加熱および酸性化前に、60℃で、98%の2−エチルヘキシルアミン9.9gを添加し、20分間にわたって、モリブデン酸ナトリウム15.44gを含有する水溶液に導入し、そして60℃で保持する。60℃で45分間加熱した後、この混合物を、生成物の洗浄および乾燥前に、30%硫酸23.1gで酸性化する。後者は、モリブデン36.8%および窒素4.38%を含有する白色の固形物の形状である。
【0055】
(b)実施例M−1と同様の操作を行うが、実施例M−3(a)で調製した2−エチルヘキシルアミン錯体28gを、他の反応物の導入前に、キシレン520mlに懸濁させる。操作は、その残留物を遠心分離で除去すること以外は、実施例M−1と同じである。AVが353の褐色の生成物を集める。そのカルシウム含量およびモリブデン含量は、それぞれ、12.2%および1.97%である。潤滑油で希釈した際の安定性は、完全である。
【0056】
(実施例M−4)
実施例M−1(b)と同様の操作を行うが、キシレン600ml、分子量520を有し活性物質70%を含有するジドデシルベンゼンスルホン酸132g、実施例M−1(a)で調製した錯体30g、消石灰104g、メタノール52ml、アンモニア4.4mlおよび希釈油90gを、この反応器に、連続的に導入する。集めた生成物は、褐色で透明であり、そしてオイル中で安定である。そのカルシウム含量およびモリブデン含量は、それぞれ、10%および2.35%である。
【0057】
実施例M−1と同様の操作を行うが、実施例M−1(a)で調製した錯体30gを、他の反応物の添加前に、トルエン520mlに導入する。操作の順序は、この炭酸化の前にCO(52.7g)を導入すること以外は、実施例M−1と同じである。遠心分離した後、モリブデン含有超塩基性スルホン酸塩448gを集める。AVは、298である。そのカルシウム含量およびモリブデン含量は、それぞれ、11.7%および2.1%である。
【0058】
(実施例M−5)
(A)実施例M−4(b)の生成物44部(全ての部は、重量部を表わす)、鉱油10部、およびポリイソブテン(Mn=750)置換無水コハク酸とテトラエチレンペンタミンに相当する平均組成を有するポリエチレンポリアミン市販混合物との反応生成物(これは、米国特許第3,172,892号の方法(例えば、その実施例12)に従って、1:1の当量比で反応させた)24部の混合物を調製し、そして1.5時間にわたって、約75℃まで加熱する。素練り促進剤とオーバーベース化物質との重量比は、5:95である。この溶液に、モリブデン酸アンモニウム水溶液(これは、水265重量部と市販のモリブデン酸アンモニウム(これは、式(NHMoに相当する組成を有し約56.5重量%のモリブデンを含有するジモリブデン酸アンモニウムであり、そしてthe Climax Molybdenum Companyから販売されている)265重量部とを、温度を約70〜80℃に維持しつつ、1.5時間にわたって混合することにより、調製した)520部を添加して、バリウムとモリブデンのモル比1:1.53を得る。得られた反応塊を、還流条件下にて、約150℃で約8.8時間加熱する。続いて、この混合物に、1時間あたり約5部の割合で窒素を吹き付け、この間、この温度を、約150℃でさらに1.3時間維持する。その後、この窒素の吹き付けを停止し、この混合物を、約150℃でさらに1時間維持し、この全反応塊を濾過する。この濾液は、所望のモリブデン含有錯体を含有し、モリブデン19.67重量%およびバリウム21.81重量%を有することにより、特徴づけられる。
【0059】
(B)実施例M−4(b)のオーバーベース化生成物2,285gおよび上で挙げた素練り促進剤(実施例M−5(a))125gの混合物に、3時間にわたって、パラモリブデン酸アンモニウム(これは、このモリブデン酸塩1300gと水1300gとを混合することにより、調製した)の水溶液2600gをゆっくりと添加し、この間、70℃より僅かに高い温度を維持する。素練り促進剤とオーバーベース化生成物の重量比は、5:95であり、バリウムとモリブデンのモル比は、1:1.47である。付随して起こる反応中に、アンモニア、二酸化炭素および水が発生する。その後、この反応塊に窒素を泡立たせて、水および気体を除去し、この間、この生成物を4時間にわたって170℃まで加熱する。次いで、市販の濾過助剤を添加し、この塊を濾過する。この濾液は、2,710gの重量があり、モリブデン20.2重量%、バリウム21.6重量%およびオイル25.3重量%を含有する。
【0060】
(リン含有化合物)
上で記述のように、このモリブデン含有組成物塩は、チオリン酸金属、リン酸エステルまたはその塩、リン含有カルボン酸、そのエステル、そのエーテルまたはそのアミド、および亜リン酸エステルから選択した少なくとも1種のリン含有耐摩耗/極圧剤と組み合わせて、使用される。このリン含有またはホウ素含有試薬は、典型的には、潤滑剤および機能流体中にて、この潤滑剤、機能流体またはグリースの全重量を基準にして、約20重量%までのレベル、好ましくは、約10重量%までのレベルで、存在している。典型的には、このリン含有耐摩耗/極圧剤は、潤滑剤および機能流体中にて、約0.1重量%から、または約0.5重量%から、または約0.8重量%からのレベルで、存在している。このリン含有またはホウ素含有の耐摩耗剤または極圧剤は、約10重量%まで、または約3重量%まで、または約2重量%までの量で、存在している。1実施形態では、この潤滑組成物、機能流体およびグリースは、0.01%より多いリン、または0.05%より多いリンを含有する。
【0061】
リン含有耐摩耗/極圧剤の例には、チオリン酸金属;リン酸エステルまたはその塩;亜リン酸エステル;リン含有カルボン酸、そのエステル、エーテルまたはアミド;ホウ酸塩分散剤;アルカリ金属ホウ酸塩;ホウ酸塩化オーバーベース化金属塩;ホウ酸塩化脂肪アミン;ホウ酸塩化リン脂質;およびホウ酸エステルが挙げられる。これらのリン含有酸には、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸およびチオリン酸(これには、ジチオリン酸およびモノチオリン酸が含まれる)、チオホスフィン酸およびチオホスホン酸が挙げられる。
【0062】
1実施形態では、リン含有耐摩耗/極圧剤は、1種またはそれ以上のリン含有酸またはその無水物と、1個から、または約3個からの炭素原子を含有するアルコールとを反応させることにより、調製したリン含有酸エステルである。このアルコールは、一般に、約30個まで、または約24個まで、または約12個までの炭素原子を含有する。このリン含有酸またはその無水物は、一般に、無機リン含有試薬(例えば、五酸化リン、三酸化リン、四酸化リン、リン酸、亜リン酸、ハロゲン化リン、低級リン含有エステル、または硫化リン(五硫化リンを含めて)など)である。低級リン含有酸エステルは、一般に、各エステル基中に、1個〜約7個の炭素原子を含有する。このリン含有酸エステルは、モノリン酸エステル、ジリン酸エステルまたはトリリン酸エステルであり得る。このリン含有酸エステルを調製するのに用いられるアルコールには、ブチルアルコール、アミルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、およびオレイルアルコール、およびフェノール(例えば、クレゾール)が挙げられる。市販のアルコールの例には、Alfol 810(8個〜10個の炭素原子を有する、主として直鎖の第一級アルコールの混合物);Alfol 1218(12個〜18個の炭素原子を含有する、合成の第一級直鎖アルコールの混合物);Alfol 20+アルコール(GLC(気液クロマトグラフィー)により決定される、ほとんどがC20アルコールを有するC18〜C28第一級アルコールの混合物);Alfol 22+アルコール(主としてC22アルコールを含有するC18〜C28第一級アルコール)が挙げられる。Alfolアルコールは、Continental Oil Companyから市販されている。
【0063】
市販のアルコール混合物の他の例には、Adol 60(これは、約75重量%の直鎖C22第一級アルコール、約15重量%のC20第一級アルコール、および約8重量%のC18およびC24アルコールから構成されている)およびAdol 320(オレイルアルコール)がある。これらのAdolアルコールは、Ashland Chemicalから販売されている。
【0064】
天然に生じるトリグリセリドから誘導されかつC〜C18の鎖長範囲の一価脂肪アルコールの種々の混合物は、Procter & Gamble Companyから入手できる。これらの混合物は、主として、12個、14個、16個または18個の炭素原子を含有する脂肪アルコールを、種々の量で含有する。例えば、CO−1214は、0.5%のC10アルコール、66.0%のC12アルコール、26.0%のC14アルコールおよび6.5%のC16アルコールを含有する脂肪アルコール混合物である。
【0065】
市販の混合物の他の群には、Shell Chemical Co.から入手できる「Neodol」製品が挙げられる。例えば、Neodol 23は、C12およびC13アルコールの混合物;Neodol 25は、C12およびC15アルコールの混合物;そしてNeodol 45は、C14〜C15線状アルコールの混合物である。Neodol 91は、C、C10およびC11アルコールの混合物である。
【0066】
脂肪隣接ジオールには、Adol 114およびAdol 158の一般商品名でAshland Oilから入手できるものが挙げられる。前者はC11〜C14の直鎖α−オレフィン画分から誘導され、そして後者はC15〜C18α−オレフィン画分から誘導される。
【0067】
有用なリン含有酸エステルの例には、リン酸またはその無水物とクレゾールアルコールとを反応させることにより調製されるリン酸エステルが挙げられる。これらのリン含有酸エステルの例には、リン酸トリクレジルがある。
【0068】
他の実施形態では、このリン含有耐摩耗/極圧剤は、チオリン含有酸エステルまたはそれらの塩である。このチオリン含有酸エステルは、硫化リン(例えば、上記のもの)と、アルコール(例えば、上記のもの)とを反応させることにより、調製され得る。このチオリン含有酸エステルは、モノチオリン含有酸エステルまたはジチオリン含有酸エステルであり得る。チオリン含有酸エステルはまた、一般に、チオリン酸と呼ばれている。
【0069】
1実施形態では、このリン含有酸エステルは、モノチオリン酸エステルである。モノチオリン酸エステルは、イオウ源と亜リン酸ジヒドロカルビルとの反応により、調製され得る。このイオウ源は、例えば、元素イオウであり得る。このイオウ源はまた、モノスルフィド(例えば、イオウがカップリングしたオレフィンまたはイオウがカップリングしたジチオリン酸エステル)であり得る。元素イオウは、好ましいイオウ源である。モノチオリン酸エステルの調製は、米国特許第4,755,311号およびPCT公報WO87/07638号に開示され、それらの内容は、モノチオリン酸エステル、イオウ源、およびモノチオリン酸エステルの製造方法の開示に関して、本明細書中で参考として援用されている。モノチオリン酸エステルは、潤滑剤ブレンドにて、イオウ源(例えば、硫化オレフィン)を含有する潤滑組成物に亜リン酸ジヒドロカルビルを加えることにより、形成され得る。この亜リン酸エステルは、ブレンド条件(すなわち、約30℃〜約100℃、またはそれより高い温度)下にて、イオウ源と反応されて、モノチオリン酸エステルを形成し得る。
【0070】
他の実施形態では、このリン含有耐摩耗剤または極圧剤は、ジチオリン酸またはホスホロジチオ酸である。このジチオリン酸は、式(RO)PSSHにより表わされ得、ここで、各Rは、独立して、約3個〜約30個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基である。Rは、一般に、約18個まで、または約12個まで、または約8個までの炭素原子を含有する。Rの例には、イソプロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、種々のアミル基、n−ヘキシル基、メチルイソブチルカルビニル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、ベヘニル基、デシル基、ドデシル基およびトリデシル基が挙げられる。例示の低級アルキルフェニル基Rには、ブチルフェニル、アミルフェニル、ヘプチルフェニルなどが挙げられる。R基の混合物の例には、以下が挙げられる:1−ブチルおよび1−オクチル;1−ペンチルおよび2−エチル−1−ヘキシル;イソブチルおよびn−ヘキシル;イソブチルおよびイソアミル;2−プロピルおよび2−メチル−4−ペンチル;イソプロピルおよびsec−ブチル;およびイソプロピルおよびイソオクチル。
【0071】
1実施形態では、このジチオリン酸は、エポキシドまたはグリコールと反応され得る。この反応生成物は、単独で使用されるか、または、リン含有酸、その無水物または低級エステルとさらに反応され得る。このエポキシドは、一般に、脂肪族エポキシドまたはスチレンオキシドである。有用なエポキシドの例には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、オクテンオキシド、ドデセンオキシド、スチレンオキシドなどが挙げられる。プロピレンオキシドが好ましい。このグリコールは、1個〜約12個の炭素原子、または約2個〜約6個の炭素原子、または2個または3個の炭素原子を有する脂肪族グリコール、または芳香族グリコールであり得る。グリコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、カテコール、レソルシノールなどが挙げられる。これらのジチオリン酸、グリコール、エポキシド、無機リン含有試薬、およびそれらの反応方法は、米国特許第3,197,405号および第3,544,465号に記述され、これらの内容は、それらの開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0072】
以下の実施例B−1およびB−2は、有用なリン含有酸エステルの調製を例示する。
【0073】
(実施例B−1)
五酸化リン(64グラム)を、58℃で45分間にわたり、O,O−ジ(4−メチル−2−ペンチル)ホスホロジチオ酸ヒドロキシプロピル514グラム(これは、25℃にて、ジ(4−メチル−2−ペンチル)ホスホロジチオ酸と、1.3モルのプロピレンオキシドとを反応させることにより、調製した)に加える。この混合物を、75℃で2.5時間加熱し、ケイソウ土と混合し、そして70℃で濾過する。この濾液は、11.8重量%のリン、15.2重量%のイオウ、および87の酸価(ブロモフェノールブルー)を含有する。
【0074】
(実施例B−2)
五酸化リン667グラム、およびジイソプロピルホスホロジチオ酸3514グラムとプロピレンオキシド986グラムとの50℃での反応生成物の混合物を、85℃で3時間加熱し、そして濾過する。この濾液は、15.3重量%のリン、19.6重量%のイオウ、および126の酸価(ブロモフェノールブルー)を含有する。
【0075】
酸性リン酸エステルは、アミン化合物または金属塩基とさらに反応して、アミンまたは金属塩を形成し得る。これらの塩は、別々に形成され、次いで、このリン含有酸エステルの塩が、潤滑組成物に添加され得る。他方、酸性のリン含有酸エステルが他の成分と配合されて、充分に調合された潤滑組成物を形成するとき、これらの塩はまた、その場で形成され得る。
【0076】
このリン含有酸エステルのアミン塩は、アンモニアまたはアミン(モノアミンおよびポリアミンを含めて)から形成され得る。これらのアミンは、第一級アミン、第二級アミンまたは第三級アミンであり得る。1実施形態では、これらのアミンは、ジチオカーバメートを調製するための1種またはそれ以上の上記アミンである。有用なアミンには、米国特許第4,234,435号の21欄、4行〜27欄、50行に開示のアミンが挙げられ、これらの節の内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0077】
これらのモノアミンは、一般に、1個から約24個までの炭素原子、または約12個までの炭素原子、または約6個までの炭素原子を含有する。モノアミンの例には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、およびドデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、エチルヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジブチルアミンなどが挙げられる。
【0078】
1実施形態では、このアミンは、脂肪(C8−30)アミンであり得、これらには、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。また、有用な脂肪アミンには、市販の脂肪アミン、例えば、「Armeen」アミン(Akzo Chemicals(Chicago、Illinois)から入手できる生成物)が挙げられ、例えば、ArmakのArmeen−C、Armeen−O、Armeen−OL、Armeen−T、Armeen−HT、Armeen S、およびArmeen SDがあり、ここで、アルファベットの名称は、脂肪基(例えば、ココア基、オレイル基、タロ基またはソヤ基)に関する。
【0079】
他の有用なアミンには、第一級エーテルアミン(例えば、式R"(OR')NHにより表わされるもの)が挙げられ、ここで、R'は、約2個〜約6個の炭素原子を有する二価アルキレン基;xは、1〜約150の数(好ましくは、1);そしてR"は、約5個〜約150個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。エーテルアミンの一例は、SURFAM(登録商標)アミン(これは、Mars Chemical Company(Atlanta、Georgia)により製造され販売されている)の名称で入手できる。好ましいエーテルアミンは、SURFAM P14B(デシルオキシプロピルアミン)、SURFAM P16A(線状C16)、SURFAM P17B(トリデシルオキシプロピルアミン)として同定されるものにより、例示される。上で記述されこの後で用いられるSURFAM類の炭素鎖長(すなわち、C14などの炭素鎖長)は、およその値であり、酸素−エーテル結合を含む。
【0080】
1実施形態では、このアミンはヒドロキシアミンであり得る。典型的には、このヒドロキシアミンは、第一級、第二級または第三級のアルカノールアミンまたはそれらの混合物である。このようなアミンは、次式により表わされる:H−N−R'−OH、H(R')N−R'−OH、および(R'−N−R'−OH。ここで、各R'は、独立して、1個〜約8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、または1個〜約8個の炭素原子、または1個〜約4個の炭素原子を有するヒドロキシヒドロカルビル基であり、そしてR'は、約2個〜約18個の炭素原子、または2個〜約4個の炭素原子を有する二価ヒドロカルビル基である。このような式の−R'−OH基は、ヒドロキシヒドロカルビル基を表わす。R'は、非環式基、脂環族基または芳香族基であり得る。典型的には、R'は、非環式の直鎖または分枝鎖アルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基、1,2−ブテン基、1,2−オクタデセン基など)である。同じ分子内に2個のR'基が存在する場合、それらは、直接の炭素−炭素結合により、またはヘテロ原子(例えば、酸素、窒素またはイオウ)を介して結合し、五員環構造、六員環構造、七員環構造または八員環構造を形成できる。このような複素環アミンの例には、N−(ヒドロキシル低級アルキル)−モルホリン、−チオモルホリン、−ピペリジン、−オキサゾリジン、−チアゾリジンなどが挙げられる。しかしながら、典型的には、各R'は、独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基である。これらのアルカノールアミンの例には、モノ−、ジ−およびトリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミンなどが挙げられる。
【0081】
このヒドロキシアミンはまた、エーテル−N−(ヒドロキシヒドロカルビル)アミンであり得る。これらは、上記ヒドロキシアミンのヒドロキシポリ(ヒドロカルビルオキシ)類似物(これらの類似物には、ヒドロキシル置換されたオキシアルキレン類似物も挙げられる)である。このようなN−(ヒドロキシヒドロカルビル)アミンは、1種またはそれ以上の上記エポキシドと上記アミンとの反応により、都合よく調製でき、そして次式により表わされる:HN−(R'O)−H、H(R')−N−(R'O)−H、および(R'N−(R'O)−H。ここで、xは、約2〜約15の数であり、そしてR'およびR'は、上で記述のものと同じである。R'はまた、ヒドロキシポリ(ヒドロカルビルオキシ)基であり得る。
【0082】
これらのアミンは、ヒドロキシアミン(例えば、次式により表されるもの)であり得る:
【0083】
【化2】


ここで、Rは、一般に、約6個〜約30個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基である;Rおよび各Rは、独立して、約5個までの炭素原子を含有するアルキレン基、好ましくは、エチレン基またはプロピレン基である;aは0または1である;そして各zは、少なくとも1である。これらのヒドロキシアミンは、当該技術分野で周知の方法により調製でき、このようなヒドロキシアミンの多くは市販されている。これらのヒドロキシアミンには、脂肪油(例えば、獣脂油、まっこう鯨油、ココナッツ油など)の加水分解により得られるアミン混合物が挙げられる。約6個〜約30個の炭素原子を含有する脂肪アミンの特定の例には、飽和脂肪族アミンおよび不飽和脂肪族アミン(例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ドデシルアミンおよびオクタデシルアミン)が挙げられる。
【0084】
上式のaが0である有用なヒドロキシアミンには、2−ヒドロキシエチルヘキシルアミン、2−ヒドロキシエチルオクチルアミン、2−ヒドロキシエチルペンタデシルアミン、2−ヒドロキシエチルオレイルアミン、2−ヒドロキシエチルソヤアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキシルアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)オレイルアミン、およびそれらの混合物が挙げられる。上の式でzの少なくとも1個が少なくとも2である類似の要素、例えば、2−ヒドロキシエトキシエチルヘキシルアミンもまた、挙げられる。
【0085】
上の式でaが0である多くのヒドロキシアミンは、Akzona,Inc.(Chicago、Illinois)のAkzo Chemical Divisionから、「Ethomeen」および「Propomeen」の一般的な商品名称で入手できる。このような生成物の特定の例には、以下が挙げられる:Ethomeen C/15(これは、ココナッツ脂肪酸のエチレンオキシド縮合物であり、約5モルのエチレンオキシドを含有する);Ethomeen C/20およびC/25(これらもまた、ココナッツ脂肪酸のエチレンオキシド縮合生成物であり、それぞれ、約10モルおよび15モルのエチレンオキシドを含有する);Ethomeen O/12(これは、オレイルアミンのエチレンオキシド縮合生成物であり、1モルのアミンあたり、約2モルのエチレンオキシドを含有する);Ethomeen S/15およびS/20(これらは、ステアリルアミンのエチレンオキシド縮合生成物であり、それぞれ、1モルのアミンあたり、約5モルおよび10モルのエチレンオキシドを含有する);Ethomeen T/12、T/15およびT/25(これらは、獣脂アミンのエチレンオキシド縮合生成物であり、それぞれ、1モルのアミンあたり、約2モル、5モルおよび15モルのエチレンオキシドを含有する);およびPropomeen O/12(これは、1モルのオレイルアミンと2モルのプロピレンオキシドとの縮合生成物である)。
【0086】
上の式のaが1であるアルコキシル化アミンの市販の例には、Ethoduomeen T/13およびT/20が挙げられ、これらは、N−タロトリメチレンジアミンのエチレンオキシド縮合生成物であり、それぞれ、1モルのジアミンあたり、3モルおよび10モルのエチレンオキシドを含有する。
【0087】
このアミンはまた、ポリアミンであり得る。このポリアミンには、アルコキシル化ジアミン、脂肪ポリアミンジアミン、アルキレンポリアミン、ヒドロキシ含有ポリアミン、縮合ポリアミン、アリールポリアミンおよび複素環ポリアミンが挙げられる。アルコキシル化ジアミンの市販の例には、上の式のyが1であるアミンが挙げられる。これらのアミンの例には、Ethoduomeen T/13およびT/20が挙げられ、これらは、N−タロトリメチレンジアミンのエチレンオキシド縮合生成物であり、それぞれ、1モルのジアミンあたり、3モルおよび10モルのエチレンオキシドを含有する。
【0088】
他の実施形態では、このポリアミンは脂肪ジアミンである。この脂肪ジアミンには、モノアルキルまたはジアルキルの対称または非対称エチレンジアミン、プロパンジアミン(1,2または1,3)、および上のポリアミン類似物が挙げられる。適当な市販の脂肪ポリアミンには、Duomeen C(N−ココ−1,3−ジアミノプロパン)、Duomeen S(N−ソヤ−1,3−ジアミノプロパン)、Duomeen T(N−タロ−1,3−ジアミノプロパン)、およびDuomeen O(N−オレイル−1,3−ジアミノプロパン)がある。「Duomeen」類は、Armak Chemical Co.(Chicago、Illinois)から市販されている。
【0089】
他の実施形態では、このアミンは、アルキレンポリアミンである。アルキレンポリアミンは、式H(R)N−(Alkylene−N)−(Rにより表わされ、ここで、各Rは、独立して、水素、または約30個までの炭素原子を有する脂肪族基またはヒドロキシ置換脂肪族基である;nは、1〜約10の数、または約2〜約7の数、または約2〜約5の数であり、そしてこの「Alkylene」基は、1個〜約10個の炭素原子、または約2個〜約6個の炭素原子、または約2個〜約4個の炭素原子を有する。他の実施形態では、Rは、上記のR'と同様に定義される。このようなアルキレンポリアミンには、メチレンポリアミン、エチレンポリアミン、ブチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ペンチレンポリアミンなどが挙げられる。これより高級な同族体および関連した複素環アミン(例えば、ピペラジン)およびN−アミノアルキル置換されたピペラジンもまた、挙げられる。このようなポリアミンの特定の例には、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、トリプロピレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどがある。2種またはそれ以上の上記アルキレンアミンの縮合により得られるより高級な同族体は、2種またはそれ以上の上記ポリアミンの混合物と同様に、有用である。
【0090】
1実施形態では、このポリアミンは、エチレンポリアミンである。このようなポリアミンは、Kirk Othmerの「Encyclopedia of Chemical Technology」(2d版、7巻、22〜37ページ、Interscience Publishers、New York(1965年))に、「Ethylene Amines」の表題で詳細に記述されている。エチレンポリアミンは、しばしば、環状縮合生成物を含めたポリアルキレンポリアミンの錯体混合物である。他の有用なタイプのポリアミン混合物には、上記ポリアミン混合物のストリッピングにより、しばしば「ポリアミンボトムス」と呼ばれる残留物を残して得られるものがある。一般に、アルキレンポリアミンボトムスは、約200℃より低い温度で沸騰する物質を、2重量%より少ない量、通常は1重量%より少ない量で含有するものとして、特徴づけられ得る。Dow Chemical Company(Freeport、Texas)から得られるこのようなエチレンポリアミンボトムスの典型的な試料(これは、「E−100」と命名されている)は、15.6℃で1.0168の比重、33.15重量%の窒素割合、および40℃で121センチストークスの粘度を有する。このような試料のガスクロマトグラフィー分析によれば、これは、約0.93重量%の「Light Ends」(おそらく、ジエチレントリアミンである)、0.72重量%のトリエチレンテトラミン、21.74重量%のテトラエチレンペンタミン、および76.61重量%のペンタエチレンヘキサミンおよびそれより高級な類似物を含有する。これらのアルキレンポリアミンボトムスには、環状の縮合生成物(例えば、ピペラジン)、およびジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンなどのより高級な類似物が挙げられる。これらのアルキレンポリアミンボトムスは、アシル化剤とだけ反応され得るか、または他のアミン、ポリアミンまたはそれらの混合物と併用できる。
【0091】
他の有用なポリアミンは、少なくとも1種のヒドロキシ化合物と、少なくとも1個の第一級アミノ基または第二級アミノ基を含有する少なくとも1種のポリアミン反応物との間の縮合反応物である。このヒドロキシ化合物は、好ましくは、多価アルコールおよび多価アミンである。これらの多価アルコールは、以下で記述されている。1実施形態では、このヒドロキシ化合物は、多価アミンである。多価アミンには、2個〜約20個の炭素原子、または2個〜約4個の炭素原子を有するアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)と反応した上記モノアミンのいずれかが挙げられる。多価アミンの例には、トリ−(ヒドロキシプロピル)アミン、トリス−(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、およびN,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、好ましくは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(THAM)が挙げられる。
【0092】
この多価アルコールまたはアミンと反応して縮合生成物または縮合アミンを形成し得るポリアミンは、上で記述されている。好ましいポリアミンには、ポリアルキレンポリアミン、例えば、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、およびポリアミン混合物(例えば、上記の「アミンボトムス」)が挙げられる。このポリアミン反応物とこのヒドロキシ化合物との縮合反応は、酸触媒の存在下にて、高温(通常、約60℃〜約265℃、または約220℃〜約250℃)で行われる。
【0093】
このアミン縮合物およびその製造方法は、PCT公報WO86/05501および米国特許第5,230,714号(Steckel)に記述され、その内容は、この縮合物およびその製造方法の開示について、本明細書中で参考として援用されている。特に有用なアミン縮合物は、HPA Taft Amines(Union Carbide Co.から市販されているアミンボトムスであり、典型的には、窒素34.1重量%を有し、第一級アミン12.3重量%、第二級アミン14.4重量%および第三級アミン7.4重量%を有する)、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(THAM)から調製される。
【0094】
他の実施形態では、このポリアミンは、ポリオキシアルキレンポリアミン、例えば、約200〜約4000または約400〜約2000の範囲の平均分子量を有するポリオキシアルキレンジアミンおよびポリオキシアルキレントリアミンである。好ましいポリオキシアルキレンポリアミンには、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンジアミン、およびポリオキシプロピレントリアミンが挙げられる。このポリオキシアルキレンポリアミンは、市販されており、例えば、Jefferson Chemical Companyから、「Jeffamines D−230、D−400、D−1000、D−2000、T−403など」の商品名で得られる。米国特許第3,804,763号および第3,948,800号の内容は、例えば、ポリオキシアルキレンポリアミンおよびそれから製造されるアシル化生成物の開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0095】
他の実施形態では、これらのポリアミンは、ヒドロキシ含有ポリアミンである。ヒドロキシモノアミンのヒドロキシ含有ポリアミン類似物、特に、アルコキシル化アルキレンポリアミン(例えば、N,N(ジエタノール)エチレンジアミン)もまた、使用できる。このようなポリアミンは、上記アルキレンアミンと、1種またはそれ以上の上記アルキレンオキシドとを反応させることにより、製造できる。類似のアルキレンオキシド−アルカノールアミン反応生成物(例えば、上記の第一級、第二級または第三級アルカノールアミンと、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはより高級なエポキシドとを、1.1〜1.2のモル比で反応させることにより製造した生成物)もまた、使用できる。このような反応を行うための反応物比および温度は、当業者に公知である。ヒドロキシ含有ポリアミンの特定の例には、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N'−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、モノ(ヒドロキシプロピル)置換テトラエチレンペンタミン、N−(3−ヒドロキシブチル)テトラメチレンジアミンなどが挙げられる。上で例示のヒドロキシ含有ポリアミンのアミノ基または水酸基を介した縮合により得られる高級な同族体は、同様に、有用である。アミノ基を介した縮合により、アンモニアの除去を伴って、高級なアミンが得られるのに対して、水酸基を介した縮合により、水の除去を伴って、エーテル結合を含有する生成物が得られる。上記ポリアミンのいずれか2種またはそれ以上の混合物もまた、有用である。
【0096】
他の実施形態では、このアミンは、複素環ポリアミンである。この複素環ポリアミンには、アジリジン、アゼチジン、アゾリジン、テトラ−およびジヒドロピリジン、ピロール、インドール、ピペリジン、イミダゾール、ジ−およびテトラヒドロイミダゾール、ピペラジン、イソインドール、プリン、モルホリン、チオモルホリン、N−アミノアルキルモルホリン、N−アミノアルキルチオモルホリン、N−アミノアルキルピペラジン、N,N'−ジアミノアルキルピペラジン、アゼピン、アゾシン、アゾニン、アゼシンおよび上記物質のそれぞれのテトラ−、ジ−およびパーヒドロ誘導体、およびこれら複素環アミンの2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。好ましい複素環アミンは、複素環中に窒素、酸素および/またはイオウだけを含有する飽和の五員環および六員環複素環アミンであり、特に、ピペリジン、ピペラジン、チオモルホリン、モルホリン、ピロリジンなどである。ピペリジン、アミノアルキル置換ピペリジン、ピペラジン、アミノアルキル置換ピペラジン、モルホリン、アミノアルキル置換モルホリン、ピロリジン、およびアミノアルキル置換ピロリジンは、特に好ましい。通常、このアミノアルキル置換基は、複素環の窒素原子形成部分の上で、置換される。このような複素環アミンの特定の例には、N−アミノプロピルモルホリン、N−アミノエチルピペラジン、およびN,N'−ジアミノエチルピペラジンが挙げられる。ヒドロキシ複素環ポリアミンもまた、有用である。例には、N−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミン、3−ヒドロキシシクロペンチルアミン、パラヒドロキシアニリン、N−ヒドロキシエチルピペラジンなどが挙げられる。
【0097】
このリン含有酸エステルの金属塩は、金属塩基とリン含有酸エステルとの反応により、調製される。この金属塩基は、金属塩を形成できるいずれかの金属化合物であり得る。金属塩基の例には、金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩などが挙げられる。この金属塩基の金属には、第IA族、第IIA族、第IB族から第VIIB族、および第VIII族(元素の周期表のCAS型)金属が挙げられる。これらの金属には、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属が挙げられる。1実施形態では、この金属は、第IIA族金属(例えば、カルシウムまたはマグネシウム);第IIB族金属(例えば、亜鉛)または第VIIB族金属(例えば、マンガン)である。好ましくは、この金属は、マグネシウム、カルシウム、マンガンまたは亜鉛である。このリン含有酸と反応し得る金属化合物の例には、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、水酸化銅、酸化銅などが挙げられる。
【0098】
1実施形態では、リン含有耐摩耗/極圧剤は、チオリン酸金属、好ましくは、ジチオリン酸金属である。このチオリン酸金属は、当業者に公知の方法により調製され、そして1種またはそれ以上の上記チオリン酸から調製され得る。ジチオリン酸金属の例には、イソプロピルメチルアミルジチオリン酸亜鉛、イソプロピルイソオクチルジチオリン酸亜鉛、ジ(ノニル)ジチオリン酸バリウム、ジ(シクロヘキシル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(イソブチル)ジチオリン酸亜鉛、ジ(ヘキシル)ジチオリン酸カルシウム、イソブチルイソアミルジチオリン酸亜鉛、およびイソプロピル第二級ブチルジチオリン酸亜鉛が挙げられる。
【0099】
以下の実施例B−3〜B−6は、有用なリン含有酸エステル塩の調製を例示する。
【0100】
(実施例B−3)
反応容器に、実施例B−1の濾液217グラムを充填する。市販の脂肪族第一級アミン(66グラム)(これは、191の平均分子量を有し、ここで、この脂肪族基は、11個〜14個の炭素原子を含有する第三級アルキル基の混合物である)を、25〜60℃で20分間にわたって、加える。得られる生成物は、分析により、10.2重量%のリン含量、1.5重量%の窒素含量、および26.3の酸価を有する。
【0101】
(実施例B−4)
実施例B−1およびB−3の方法に従って、B−1に記述の生成物1320部を、B−3のアミン584部と反応させた。この最終生成物は、リン8.4%およびイオウ10%を有する。
【0102】
(実施例B−5)
実施例B−2の濾液(1752グラム)を、25〜82℃で、実施例B−3で用いた脂肪族第一級アミン764グラムと混合する。得られる生成物は、分析により、9.95%のリン、2.72%の窒素、および12.6%のイオウを有する。
【0103】
(実施例B−6)
五酸化リン(852グラム)を、3時間にわたって、イソオクチルアルコール2340グラムに加える。温度を室温から上げるが、65℃以下に維持する。この添加が完了した後、この反応混合物を90℃まで加熱し、そしてこの温度を3時間維持する。この混合物にケイソウ土を加え、その混合物を濾過する。この濾液は、分析により、12.4%のリン、192の酸中和価(ブロモフェノールブルー)および290の酸中和価(フェノールフタレイン)を有する。
【0104】
上記濾液を、トルエン200グラム、鉱油130グラム、酢酸1グラム、水10グラム、および酸化亜鉛45グラムと混合する。この混合物を、30mmHgの圧力下にて、60〜70℃まで加熱する。得られる生成物の混合物を、ケイソウ土を用いて濾過する。この濾液は、8.58%の亜鉛および7.03%のリンを有する。
【0105】
(実施例B−7)
Alfol 8−10(2628部、18モル)を、約45℃の温度まで加熱し、そこに、45分間にわたって、五酸化リン852部(6モル)を添加し、この間、この反応温度を約45℃と65℃の間に維持する。この混合物を、この温度でさらに0.5時間撹拌し、その後、70℃で約2〜3時間撹拌する。この温度を約30℃と50℃の間に維持しつつ、この反応混合物に、Primene 81−R(2362部、12.6モル)を滴下する。全てのアミンを添加したとき、この反応混合物を濾過助剤で濾過すると、その濾液は、リン7.4%(理論値、7.1%)を含有する所望のアミン塩である。
【0106】
(実施例B−8)
プロピレンオキシド280グラムとO,O'−ジイソブチルホスホロジチオ酸1184グラムとを30〜60℃で反応させることにより調製した生成物に、五酸化リン(208グラム)を加える。この添加は、50〜60℃の温度で行い、得られる混合物を、次いで、80℃まで加熱し、この温度で2時間保持する。温度を30〜60℃の範囲に維持しつつ、この混合物に、実施例P−3で同定した市販の脂肪族第一級アミン(384グラム)を加える。この反応混合物をケイソウ土で濾過する。この濾液は、9.31%のリン、11.37%のイオウ、2.50%の窒素、および6.9の塩基価(ブロモフェノールブルー指示薬)を有する。
【0107】
他の実施形態では、このリン含有耐摩耗/極圧剤は、(a)少なくとも1種のジチオリン酸、および(b)少なくとも1種の脂肪族または脂環族カルボン酸の金属塩である。このジチオリン酸は、上で記述されている。このカルボン酸は、通常、1個〜約3個のカルボン酸基、またはちょうど1個のカルボン酸基を含有するモノカルボン酸またはポリカルボン酸であり得る。好ましいカルボン酸は、式RCOOHを有するものであり、ここで、Rは、好ましくは、アセチレン性不飽和を含有しない脂肪族または脂環族ヒドロカルビル基である。Rは、一般に、約2個から、または約4個からの炭素原子を含有する。Rは、一般に、約40個まで、または約24個まで、または約12個までの炭素原子を含有する。1実施形態では、Rは、4個から、または約6個から、約12個まで、または約8個までの炭素原子を含有する。1実施形態では、Rはアルキル基である。適当な酸には、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸およびアラキン酸だけでなく、オレフィン酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸およびリノール酸ダイマー)が挙げられる。好ましいカルボン酸は、2−エチルヘキサン酸である。
【0108】
この金属塩は、ジチオリン酸の金属塩とカルボン酸の金属塩とを、所望の割合で単に混合することにより、調製され得る。カルボン酸に対するジチオリン酸の当量比は、約0.5〜約400:1である。この比は、0.5〜約200または約100または約50または約20:1であり得る。1実施形態では、この比は、0.5〜約4.5:1であり、または約2.5〜約4.25:1である。本目的上、ジチオリン酸の当量は、その分子量を、その中の−PSSH基の数で割った値であり、そしてカルボン酸の当量は、その分子量を、その中のカルボキシ基の数で割った値である。
【0109】
本発明で有用な金属塩を調製する第二の好ましい方法には、所望割合の酸(例えば、個々の金属塩について上で記述のもの)の混合物を調製し、そしてこの酸混合物を上記金属化合物の1種と反応させることがある。この調製方法を用いるとき、しばしば、存在する酸の当量数に関して過剰の金属を含有する塩を調製することが可能である。それゆえ、酸1当量あたり、2当量程度の金属、特に、約1.5当量までの金属を含有する金属塩が調製され得る。本目的上の金属の当量は、その原子量をその原子価で割った値である。この金属塩が調製される温度は、一般に、約30℃と約150℃の間であり、好ましくは、約125℃までである。米国特許第4,308,154号および第4,417,990号は、これらの金属塩の調製方法を記述し、そしてこのような金属塩の多くの例を開示している。これらの特許の内容は、それらの開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0110】
1実施形態では、このリン含有耐摩耗/極圧剤は、リン含有アミドである。このリン含有アミドは、上記リン含有酸の1種(好ましくは、ジチオリン酸)と不飽和アミドとの反応により、調製される。不飽和アミドの例には、アクリルアミド、N,N'−メチレンビス(アクリルアミド)、メタクリルアミド、クロトンアミドなどが挙げられる。このリン含有酸および不飽和アミドの反応生成物は、結合化合物またはカップリング化合物(例えば、ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド)とさらに反応され得る。このリン含有アミドは当該技術分野で公知であり、米国特許第4,670,169号、第4,770,807号および第4,876,374号に開示されており、これらの内容は、リン含有アミドおよびそれらの調製の開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0111】
1実施形態では、このリン含有耐摩耗/極圧剤は、リン含有カルボン酸エステルである。このリン含有カルボン酸エステルは、上記リン含有酸(好ましくは、ジチオリン酸)の1種と、不飽和カルボン酸またはそのエステルとの反応により、調製される。不飽和カルボン酸およびその無水物の例には、アクリル酸またはそのエステル、メタクリル酸またはそのエステル、イタコン酸またはそのエステル、フマル酸またはそのエステル、およびマレイン酸、その無水物またはエステルが挙げられる。このカルボン酸を使用するなら、そのエステルは、このリン酸−不飽和カルボン酸付加物とアルコール(例えば、ここで記述のもの)との引き続く反応により、形成され得る。
【0112】
1実施形態では、このリン含有耐摩耗/極圧剤は、リン含有酸(好ましくは、ジチオリン酸)と上記ビニルエーテルの1種との反応生成物である。このビニルエーテルは、式R−CH=CH−ORにより表わされ、ここで、Rは、独立して、水素、または1個から約30個まで、または約24個まで、または約12個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基である。Rは、Rと同様に定義されるヒドロカルビル基である。ビニルエーテルの例には、メチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0113】
上記のように、これらの潤滑組成物および濃縮物は、少なくとも1種の亜リン酸エステルを含有する。この亜リン酸エステルは、亜リン酸ジヒドロカルビルまたはトリヒドロカルビルであり得る。好ましくは、各ヒドロカルビル基は、1個〜約24個の炭素原子、または1個〜約18個の炭素原子、または約2個〜約8個の炭素原子を含有する。各ヒドロカルビル基は、独立して、アルキル、アルケニル、アリールおよびそれらの混合物であり得る。このヒドロカルビル基がアリール基のとき、それは、少なくとも約6個の炭素原子、または約6個〜約18個の炭素原子を含有する。このアルキル基またはアルケニル基の例には、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、オレイル、リノレイル、ステアリルなどが挙げられる。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、ヘプチルフェノールなどが挙げられる。好ましくは、各ヒドロカルビル基は、独立して、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オレイルまたはフェニル、またはブチル、オレイルまたはフェニルおよび/またはブチルまたはオレイルである。亜リン酸エステルの1調製方法は、低級(C1−8)亜リン酸エステルを反応させる工程を包含し、それらの調製は公知であり、多くの亜リン酸エステルが市販されている。特に有用な亜リン酸エステルには、亜リン酸ジブチル水素、亜リン酸ジオレイル水素、亜リン酸ジ(C14−18)水素、および亜リン酸トリフェニルがある。
【0114】
(分散剤)
これらのモリブデン含有化合物およびリン含有化合物と共に、この潤滑組成物は、分散剤を含有する。1実施形態では、この分散剤は、(a)アシル化窒素分散剤、(b)ヒドロカルビル置換アミン、(c)カルボン酸エステル分散剤、(d)マンニッヒ分散剤および(e)それらの混合物から選択される。この分散剤は、一般に、約0.1重量%〜約5重量%、または約0.2重量%〜約3重量%、または約0.3重量%〜約0.8重量%の量で存在している。1実施形態では、この分散剤は、3重量%未満、または2重量%未満、または1.5重量%未満、または1重量%未満の量で、存在している。
【0115】
これらのアシル化窒素分散剤には、1種またはそれ以上のカルボン酸アシル化剤(例えば、ヒドロカルビル置換カルボン酸アシル化剤)およびアミンの反応生成物が挙げられる。1実施形態では、これらのヒドロカルビル基は、1種またはそれ以上のポリアルケンから誘導される。このポリアルケンには、重合可能オレフィンまたはポリオレフィン性モノマー(好ましくは、ジオレフィン性モノマー(例えば、1,3−ブタジエンおよびイソプレン))の単独重合体およびインターポリマーが挙げられる。これらのオレフィンは、上で記述されている。1実施形態では、このインターポリマーは、単独重合体である。好ましい単独重合体の一例には、ポリブテン、またはその重合体の約50%がイソブチレンから誘導されたポリブテンが挙げられる。これらのポリアルケンは、通常の手順により、調製される。
【0116】
このポリアルケンは、一般に、少なくとも約8個で約300個までの炭素原子、または約30個から約200個の炭素原子、または約35個から約100個までの炭素原子を含有することにより、特徴付けられる。1実施形態では、このポリアルケンは、約400より大きいMn(数平均分子量)、または約500より大きいMnにより、特徴付けられる。一般に、このポリアルケンは、約500から約5000までのMn、または約700から約2500までのMn、または約800から約2000までのMn、または約900から約1500までのMnにより、特徴付けられる。他の実施形態では、このポリアルケンは、約1300までのMn、または約1200までのMnを有する。
【0117】
これらの重合体の数平均分子量は、重量平均分子量および全分子量分布と同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られる。本発明の目的では、イソブテン、ポリイソブテンの一連の分画された重合体が、GPCの較正標準として用いられる。重合体のMn値およびMw値を決定する方法は、周知であり、非常に多くの文献および論文に記述されている。例えば、重合体のMnおよび分子量分布を決定する方法は、W.W.Yan、J.J.KirklandおよびD.D.Blyの「Modern Size Exclusion Liquid Chromatographs」(J.Wiley & Sons、Inc.、1979年)に記述されている。
【0118】
他の実施形態では、このポリアルケンは、約1300から約5000までのMn、または約1500から約4500までのMn、または約1700から約3000までのMnを有する。このポリアルケンはまた、一般に、約1.5〜約4のMw/Mn、または約1.8〜約3.6のMw/Mn、または約2.0〜約3.4のMw/Mnを有する。このヒドロカルビル置換カルボン酸アシル化剤は、米国特許第3,219,666号および第4,234,435号に記述されており、これらの開示内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0119】
他の実施形態では、このアシル化剤は、1種またはそれ以上の上記ポリアルケンと過剰の無水マレイン酸とを反応させて置換コハク酸アシル化剤を提供することにより、調製され得、ここで、各当量の置換基、すなわち、ポリアルケニル基に対するコハク酸基の数は、少なくとも1.3である。その最大数は、一般に、4.5を越えない。適当な範囲は、1当量の置換基あたり、約1.3個から約3.5個までのコハク酸基であり、または約1.4個から約2.5個までのコハク酸基である。
【0120】
上記カルボン酸アシル化剤は、アミンと反応されて、このアシル化窒素分散剤を形成する。
【0121】
アシル化窒素分散剤およびそれらを調製する方法は、米国特許第3,219,666号;第4,234,435号;第4,952,328号;第4,938,881号;第4,957,649号;および第4,904,401号に記述されている。アシル化窒素分散剤の開示内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0122】
この分散剤はまた、ヒドロカルビル置換アミンから誘導され得る。これらのヒドロカルビル置換アミンは、当業者に周知である。これらのアミンは、米国特許第3,275,554号;第3,438,757号;第3,454,555号;第3,565,804号;第3,755,433号;および第3,822,289号に開示されている。これらの特許の内容は、ヒドロカルビルアミンおよびそれらの製造方法の開示に関して、本明細書中で参考として援用されている。
【0123】
典型的には、ヒドロカルビル置換アミンは、オレフィンおよびオレフィン重合体(上のポリアルケンおよびそれらのハロゲン化誘導体を含めて)とアミン(モノアミンまたはポリアミン)とを反応させることにより、調製される。これらのアミンは、上記アミンのいずれか(好ましくは、アルキレンポリアミン)であり得る。ヒドロカルビル置換アミンの例には、ポリ(プロピレン)アミン;N,N−ジメチル−N−ポリ(エチレン/プロピレン)アミン(モノマーのモル比は50:50);ポリブテンアミン;N,N−ジ(ヒドロキシエチル)−N−ポリブテンアミン;N−(2−ヒドロキシプロピル)−N−ポリブテンアミン;N−ポリブテン−アニリン;N−ポリブテンモルホリン;N−ポリ(ブテン)エチレンジアミン;N−ポリ(プロピレン)トリメチレンジアミン;N−ポリ(ブテン)ジエチレントリアミン;N',N'−ポリ(ブテン)テトラエチレンペンタミン;N,N−ジメチル−N'−ポリ(プロピレン)−1,3−プロピレンジアミンなどが挙げられる。
【0124】
他の実施形態では、この分散剤はまた、カルボン酸エステル分散剤から誘導され得る。このカルボン酸エステル分散剤は、上記ヒドロカルビル置換カルボン酸アシル化剤と、少なくとも1種の有機ヒドロキシ化合物、および必要に応じて、アミンとを反応させることにより、調製される。他の実施形態では、このカルボン酸エステル分散剤は、このアシル化剤と上記ヒドロキシアミンの少なくとも1種とを反応させることにより、調製される。
【0125】
この有機ヒドロキシ化合物には、一般式R”(OH)の化合物が挙げられ、ここで、R”は、炭素結合を介して−OH基に結合した一価または多価有機基であり、そしてmは、1〜約10の整数であり、ここで、このヒドロカルビル基は、少なくとも約8個の脂肪族炭素原子を含有する。これらのヒドロキシ化合物は、脂肪族化合物(例えば、一価または多価アルコール)、または芳香族化合物(例えば、フェノールおよびナフトール)であり得る。これらのエステルが誘導され得る芳香族ヒドロキシ化合物は、以下の特定の例により、例示される:フェノール、β−ナフトール、α−ナフトール、クレゾール、レソルシノール、カテーテルロール、p,p'−ジヒドロキシビフェニル、2−クロロフェノール、2,4−ジブチルフェノールなど。
【0126】
これらのエステルが誘導され得るアルコールは、一般に、約40個、または2個〜約30個、または2個〜約10個の脂肪族炭素原子を含有する。それらは、一価アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソオクタノール、ドデカノール、シクロヘキサノールなど)であり得る。1実施形態では、これらのヒドロキシ化合物は、多価アルコール(例えば、アルキレンポリオール)である。好ましくは、これらの多価アルコールは、2個〜約40個の炭素原子、2個〜約20個の炭素原子;および/または2個〜約10個の水酸基、または2個〜約6個の水酸基を含有する。多価アルコールには、エチレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールを含めて);プロピレングリコール(ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールおよびテトラプロピレングリコールを含めて);グリセロール;ブタンジオール;ヘキサンジオール;ソルビトール;アラビトール;マンニトール;スクロース;フルクトース;グルコース;シクロヘキサンジオール;エリスリトール;およびペンタエリスリトール(ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールを含めて)が挙げられ、好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールが挙げられる。
【0127】
これらの多価アルコールは、2個〜約30個の炭素原子、または約8個〜約18個の炭素原子を有するモノカルボン酸とエステル化され得るが、但し、少なくとも1個の水酸基は、エステル化されないまま残る。モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸および脂肪カルボン酸が挙げられる。これらの脂肪モノカルボン酸は、約8個〜約30個の炭素原子を有し、これらには、オクタン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、ドデカン酸およびトール油酸が挙げられる。これらのエステル化多価アルコールの特定の例には、ソルビトールオレエート(モノ−およびジオレエートを含めて)、ソルビトールステアレート(モノ−およびジステアレートを含めて)、グリセロールオレエート(グリセロールモノ−、ジ−およびトリオレエートを含めて)およびエリスリトールオクタノエートが挙げられる。
【0128】
これらのカルボン酸エステル分散剤は、いくつかの公知方法のいずれかにより、調製され得る。利便性および生成するエステルの特性が優れているために好ましい方法は、上記カルボン酸アシル化剤と1種またはそれ以上のアルコールまたはフェノールとを、アシル化剤1当量あたり約0.5当量〜約4当量のヒドロキシ化合物の比で反応させる工程を包含する。このエステル化は、通常、約100℃より高い温度、または150℃と300℃の間の温度で、実行される。副生成物として形成される水は、このエステル化が進行するにつれて、蒸留により除去される。有用なカルボン酸エステル分散剤の調製は、米国特許第3,522,179号および第4,234,435号で記述されており、それらの開示内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0129】
これらのカルボン酸エステル分散剤は、さらに、上記アミンの少なくとも1種、好ましくは、上記ポリアミンの少なくとも1種と反応され得る。このアミンは、任意の非エステル化カルボキシ基を中和するのに十分な量で、添加される。1実施形態では、これらの窒素含有カルボン酸エステル分散剤は、アシル化剤1当量あたり、約1.0〜2.0当量、または約1.0〜1.8当量のヒドロキシ化合物と、約0.3当量まで、または約0.02〜約0.25当量のポリアミンとを反応させることにより、調製される。
【0130】
他の実施形態では、このカルボン酸アシル化剤は、このアルコールおよびアミンの両方と同時に反応され得る。一般に、少なくとも約0.01当量のアルコールおよび少なくとも0.01当量のアミンが存在しているものの、その組合せの全当量は、アシル化剤1当量あたり、少なくとも約0.5当量であるべきである。これらの窒素含有カルボン酸エステル分散剤組成物は、当該技術分野で公知であり、それらの誘導体の多数の調製は、例えば、米国特許第3,957,854号および第4,234,435号で記述されており、それらの内容は、本明細書中で参考として先に援用されている。
【0131】
他の実施形態では、この分散剤はまた、マンニッヒ分散剤から誘導され得る。マンニッヒ分散剤は、一般に、少なくとも1種のアルデヒド、少なくとも1種の上記アミンおよび少なくとも1種のアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を反応させることにより、形成される。この反応は、室温から225℃、通常、50℃〜約200℃(75℃〜150℃が最も好ましい)で起こり得、この試薬の量は、ヒドロキシ芳香族化合物とホルムアルデヒドとアミンとのモル比が、約(1:1:1)〜約(1:3:3)の範囲となるような量である。
【0132】
この第一の試薬は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物である。この用語には、フェノール(これが好ましい)、炭素−、酸素−、イオウ−および窒素で架橋したフェノールなどだけでなく、共有結合を介して直接結合したフェノール(例えば、4,4'−ビス(ヒドロキシ)ビフェニル)、縮合環炭化水素から誘導したヒドロキシ化合物(例えば、ナフトールなど);およびポリヒドロキシ化合物(例えば、カテコール、レソルシノールおよびヒドロキノン)が含まれる。1種またはそれ以上のヒドロキシ芳香族化合物の混合物は、この第一の試薬として使用できる。
【0133】
これらのヒドロキシ芳香族化合物は、少なくとも1個または2個以下の脂肪族または脂環族基(これは、少なくとも約6個(通常、少なくとも約30個または少なくとも50個)の炭素原子であって約400個までの炭素原子、または約300個までの炭素原子、または約200個までの炭素原子を有する)で置換したものである。これらの基は、上記ポリアルケンから誘導され得る。1実施形態では、このヒドロキシ芳香族化合物は、約420〜約10,000のMnを有する脂肪族または脂環族炭化水素ベースの基で置換したフェノールである。
【0134】
第二の試薬は、炭化水素ベースのアルデヒド、好ましくは、低級脂肪族アルデヒドである。適当なアルデヒドには、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヒドロキシブチルアルデヒドおよびヘプタナールだけでなく、反応条件下にてアルデヒドとして反応するアルデヒド前駆体(例えば、パラホルムアルデヒド、パラアルデヒド、ホルマリンおよびメタール)が挙げられる。ホルムアルデヒドおよびその前駆体(例えば、パラホルムアルデヒド、トリオキサン)は、好ましい。アルデヒドの混合物は、第二の試薬として用いられ得る。
【0135】
第三の試薬は、上記のいずれかのアミンである。好ましくは、このアミンは、上記のポリアミンである。マンニッヒ分散剤は、以下の特許で記述されている:米国特許第3,980,569号;第3,877,899号;および第4,454,059号(これらの開示内容は、本明細書中で参考として援用されている)。
【0136】
1実施形態では、この分散剤は、ホウ酸塩化分散剤である。このホウ酸塩化分散剤は、1種またはそれ以上の上記分散剤をホウ酸塩化剤と反応させることにより、調製される。以下の実施例は、ホウ酸塩化分散剤に関する。
【0137】
(実施例C−1)
ホウ酸372グラム(6当量のホウ素)およびアシル化窒素組成物(これは、1当量のポリブテニル(n=850)無水コハク酸(これは、500の当量に対応する113の酸価を有する)と2当量の市販のエチレンアミン混合物(これは、テトラエチレンに相当する平均組成を有する)とを反応させることにより、得た)3111グラム(6当量の窒素)を、150℃で、3時間加熱し、次いで、濾過する。その濾液は、1.64%のホウ素含量および2.56%の窒素含量を有することが分かる。
【0138】
(実施例C−2)
(a)反応容器に、オイル275グラムおよびポリアミン市販混合物(これは、85%のE−100アミンボトムスおよび15%のジエチレントリアミンに相当する)の混合物と共に、ポリブテニル(Mn=1000)置換無水コハク酸1000部を充填する。この反応混合物を150〜160℃まで加熱し、その反応温度を4時間維持する。この反応系に窒素を吹き込んで、水を除去する。
【0139】
(b)反応容器に、実施例C−3(a)の生成物1405部、ホウ酸229部および希釈油398部を充填する。この混合物を100〜150℃まで加熱し、その温度を、水の蒸留が止まるまで維持する。その最終生成物は、2.3%の窒素、1.9%のホウ素、33%の100ニュートラル鉱油および60の全塩基価を含む。
【0140】
(潤滑粘性のあるオイル)
この潤滑剤および濃縮物は、潤滑粘性のあるオイルを使用する。この潤滑粘性のあるオイルは、一般に、主要量(すなわち、約50重量%より多い量)で存在する。1実施形態では、この潤滑粘性のあるオイルは、この組成物の約60重量%より多い量、または約70重量%より多い量、または約80重量%より多い量で、存在する。この潤滑粘性のあるオイルには、天然または合成の潤滑油およびそれらの混合物が挙げられる。天然油には、動物油、植物油、鉱物性潤滑油、および溶媒処理されたまたは酸処理された鉱油が挙げられる。合成潤滑油には、炭化水素油(ポリアルファオレフィン)、ハロ置換炭化水素油、アルキレンオキシド重合体、ジカルボン酸およびポリオールのエステル、リン含有酸のエステル、重合体テトラヒドロフランおよびシリコーンベース油が挙げられる。未精製油、精製油および再精製油は、天然油または合成油のいずれであれ、本発明の組成物で用いられ得る。潤滑粘性のあるオイルの記述は、米国特許第4,582,618号(2欄、37行から3欄、63行まで、これらの行を含めて)に見いだされ、これらの内容は、潤滑粘性のあるオイルの開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0141】
1実施形態では、この潤滑粘性のあるオイルは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。典型的には、このポリアルファオレフィンは、約3個〜約30個の炭素原子、または約4個〜約20個の炭素原子、または約6個〜約16個の炭素原子を有するモノマーから誘導される。有用なPAOの例には、デセンから誘導したものが挙げられる。これらのPAOは、100℃にて、約3〜約150cSt、または約4〜約100cSt、または約4〜約8cStの粘度を有し得る。PAOの例には、4cStのポリオレフィン、6cStのポリオレフィン、40cStのポリオレフィン、および100cStのポリオレフィンが挙げられる。
【0142】
1実施形態では、この潤滑粘性のあるオイルは、100℃で少なくとも約3.5cStまたは少なくとも約4.0cStの動粘度を有する潤滑組成物を提供するべく、選択される。1実施形態では、この潤滑組成物は、少なくとも約SAE 75WのSAEギアオイル粘度番号を有する。この潤滑組成物はまた、いわゆるマルチグレード等級(例えば、SAE 75W−80、75W−90、75W−140、80W−90、80W−140、85W−90または85W−140)を有し得る。
【0143】
1実施形態では、この潤滑粘性のあるオイルは、鉱油である。この鉱油は、9未満のヨウ素価および/または少なくとも約45%の飽和物(saturates)(これは、脂肪族飽和物として存在している)を有する。ヨウ素価は、ASTM D−460に従って、決定される。1実施形態では、この鉱油は、約8未満のヨウ素価、または約6未満のヨウ素価、または約4未満のヨウ素価を有する。これらの飽和物のレベルは、質量分析計で決定される。質量分析法により、第I族ストックは、約70%の飽和物を有し、第II族ストックは、約95%〜約98%の飽和物を有し、そして第III族ストックは、約98%〜100%の飽和物を有する。第II族ストックは、シクロパラフィン化合物として存在しているそれらの飽和物の50%より多い量を有する。本発明で使用される鉱油の飽和物は、典型的には、少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%の脂肪族飽和物を有する。これらの脂肪族飽和物は、しばしば、パラフィン飽和物と呼ばれる。これらの環状飽和物は、一般に、シクロパラフィン飽和物と呼ばれる。環状飽和物は、これらの鉱油中の飽和物の残りを構成する。本発明者は、高い割合の脂肪族飽和物を有する鉱油ほど、良好な酸化特性および低温特性を有することを発見した。
【0144】
本明細書中で使用する「鉱油」との用語は、石油粗製物から誘導された潤滑粘性のあるオイルを意味する。これらの石油粗製物は、水素処理(hydroprocessing)、水素化分解および異性化のような処理を受け得る。水素処理は、連続的なアイソクラッキング(isocracking)、アイソデワックシング(isodewaxing)および水素仕上げ(hydrofinishing)のような工程を含む。これらの鉱油は、第III族ベースストックまたは鉱油と呼ばれるものである。1実施形態では、この鉱油は、0.3%未満または0.1%未満のイオウを有する。他の実施形態では、これらの潤滑粘性のあるオイルは、一般に、120またはそれ以上の粘度指数を有する。
【0145】
有用な潤滑粘性のあるオイルの例には、HVIおよびXHVIベースストック、例えば、異性化ワックス基油およびUCBO(Unconventional Base Oils)基油が挙げられる。これらの基油の特定の例には、100N異性化ワックスベースストック(0.01%のイオウ/141VI)、120N異性化ワックスベースストック(0.01%のイオウ/149VI)、170N異性化ワックスベースストック(0.01%のイオウ/142VI)および250N異性化ワックスベースストック(0.01%のイオウ/146VI);精製ベースストック(例えば、250N溶媒精製パラフィン鉱油(0.16%のイオウ/89VI)、200N溶媒精製ナフテン鉱油(0.2%のイオウ/60VI)、100N溶媒精製/水素処理パラフィン鉱油(0.01%のイオウ/98VI)、240N溶媒精製/水素処理パラフィン鉱油(0.01%のイオウ/98VI)、80N溶媒精製/水素処理パラフィン鉱油(0.08%のイオウ/127VI)および150N溶媒精製/水素処理パラフィン鉱油(0.17%のイオウ/127VI))が挙げられる。これらの鉱油のさらに別の例には、Texaco製の第III族ベースストック、例えば、TEXHVIベースストックが挙げられ、これには、TEXHVI−100N(95%の飽和物、125の粘度指数および0.02%のイオウ);TEXHVI−70N(97.8%の飽和物、123の粘度指数および0.02%のイオウ);Texaco「MOTIVA」TEXHVI 90N−100N(100%の飽和物、125の粘度指数および0.01%のイオウ);および「MOTIVA」TEXHVI 75N(100%の飽和物、125の粘度指数および0.0%のイオウ)が挙げられる。Chevron製の有用な第III族ベースストックの例には、UCBO 200N(100%の飽和物、142の粘度指数および0.005%のイオウ);UCBO 100N(100%の飽和物、129の粘度指数および0.004%のイオウ)が挙げられる。
【0146】
(重合体)
しばしば、このマルチグレード潤滑組成物には、少なくとも1種の重合体が存在する。この重合体は、一般に、この潤滑組成物の約5重量%〜約30重量%の量、または約10重量%〜約25重量%の量、または約12重量%〜約20重量%の量で存在する。この重合体には、ポリアルケンまたはそれらの誘導体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン重合体、α−オレフィン不飽和カルボン酸試薬共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アルケニルアリーレンおよび共役ジエンの水素化インターポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。ここで、および本明細書および請求の範囲の他の箇所にて、ある属(リスト)のいずれかの構成要素を、その請求の範囲から除外してもよい。
【0147】
1実施形態では、この重合体は、約50,000未満、または約45,000未満、または約40,000未満のMw(重量平均分子量)に特徴がある。1実施形態では、この重合体は、約25,000未満、または約10,000未満、または約7,000未満のMwを有する。典型的には、この重合体は、少なくとも約1,000、または少なくとも約2,000、または少なくとも約3,000のMwを有する。1実施形態では、この重合体は、約6000まで、または約5000までのMn(数平均分子量)に特徴がある。一般に、この重合体は、約800〜約6000、または約900〜約5000、または約1000〜4000のMnを有することに特徴がある。他の実施形態では、この重合体は、約1300〜約5000、または約1500〜約4500、または約1700〜約3000のMnを有する。この重合体はまた、一般に、約1.5〜約8、または約1.8〜約6.5、または約2〜約5.5のMw/Mnを有する。
【0148】
1実施形態では、この重合体は、高い分子量(Mw=10,000より高い)のものをせん断した重合体であり得る。本実施形態では、この重合体は、所望の分子量(例えば、上記のもの)にせん断される。このせん断は、いずれかの適当な装置(例えば、押出機、射出器、FZG装置など)で行われ得る。
【0149】
略字MwおよびMnは、それぞれ、重量平均分子量および数平均分子量を表わす普通の記号である。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、重合体の両方の分子量を知る方法であるだけでなく、この重合体の全分子量分布を知る方法でもある。本発明の目的では、イソブテン、ポリイソブテンの一連の分画された重合体が、GPCの較正標準として用いられる。重合体のMn値およびMw値を決定する方法は、周知であり、非常に多くの文献および論文に記述されている。例えば、重合体のMnおよび分子量分布を決定する方法は、W.W.Yan、J.J.KirklandおよびD.D.Blyの「Modern Size Exclusion Liquid Chromatographs」(J.Wiley & Sons、Inc.、1979年)に記述されている。
【0150】
1実施形態では、この重合体は、ポリアルケンである。このポリアルケンには、2個〜約40個の炭素原子、または3個〜約24個の炭素原子、または4個〜約12個の炭素原子を有するオレフィンの単独重合体およびインターポリマーが挙げられる。これらのオレフィンは、モノオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、α−オレフィン)、またはジオレフィンモノマー(例えば、1,3−ブタジエンおよびイソプレン)を含めたポリオレフィン性モノマーであり得る。このα−オレフィンは、一般に、約4個〜約30個の炭素原子、または約8個〜約18個の炭素原子を有する。これらのオレフィンは、時には、モノ−1−オレフィンまたは末端オレフィンと呼ばれる。このα−オレフィンおよび異性化α−オレフィンには、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ヘンエイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセンなどが挙げられる。使用できる市販のα−オレフィン留分には、C15−18α−オレフィン、C12−16α−オレフィン、C14−16α−オレフィン、C14−18α−オレフィン、C16−18α−オレフィン、C16−20α−オレフィン、C18−24α−オレフィン、C22−28α−オレフィンなどが挙げられる。これらのポリアルケンは、通常の方法により調製される。これらのポリアルケンは、米国特許第3,219,666号および第4,234,435号に記述され、その開示内容は、本明細書中で参考として援用されている。ポリアルケンの例には、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソプレンおよびポリブタジエンが挙げられる。1実施形態では、このポリアルケンは、単独重合体(例えば、ポリブテン)である。有用なポリブテンの一例には、その重合体の約50%がイソブチレンから誘導される重合体がある。有用なポリブテンには、約3,000〜約9,000、または約4,000〜約8,000、または約6,700のMwを有するものが挙げられる。
【0151】
1実施形態では、このポリアルケンは、1種またはそれ以上のジエンから誘導される。このジエンには、1,3−ペンタジエン、イソプレン、メチルイソプレン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、線状1,3−共役ジエン(例えば、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、および1,3−ヘキサジエン)および環状ジエン(例えば、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、フルベン(fulvene)、1,3−シクロヘキサジエン、1,3,5−シクロヘプタトリエン、およびシクロオクタトリエン)が挙げられる。このポリアルケンは、ジエンの単独重合体、ジエンと他のジエンまたは1種またはそれ以上の上記モノオレフィンとの共重合体または三元共重合体であり得る。このポリアルケンは、水素化され得る。少なくとも1種のジエンから誘導した市販のポリアルケンには、LIR−290があり、これは、クラレ株式会社から市販されている水素化ポリイソプレン(Mw=25,000)である。
【0152】
他の実施形態では、この重合体は、ポリアルケンの誘導体である。この誘導体は、典型的には、1種またはそれ以上のポリアルケンまたはそれらの水素化誘導体と不飽和試薬とを反応させることにより、調製される。この水素化ポリアルケンは、ポリアルケンとハロゲンガス(例えば、塩素)とを反応させることにより、調製される。これらの物質の調製は、当業者に公知である。この不飽和試薬には、不飽和アミン、エーテル、および不飽和カルボン酸試薬(例えば、不飽和酸、エステルおよび無水物)が挙げられる。不飽和アミンの例には、不飽和アミド、不飽和イミド、および窒素含有アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルが挙げられる。不飽和アミンの特定の例には、アクリルアミド、N,N'−メチレンビス(アクリルアミド)、メタクリルアミド、クロトンアミド、N−(3,6−ジアザヘプチル)マレイミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)マレイミド、N−(2−メトキシエトキシエチル)マレイミド、N−ビニルピロリジノン、2−または4−ビニルピリジン、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどが挙げられる。
【0153】
1実施形態では、この不飽和カルボン酸試薬は、酸、無水物、エステル、またはそれらの混合物である。エステルが望ましいとき、それは、不飽和カルボン酸またはその無水物とポリアルケンまたはそれらの水素化誘導体とを反応させ、引き続いて、この反応生成物をアルコールと反応させてエステルを形成することにより、調製できる。この不飽和カルボン酸試薬には、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、2−フェニルプロペン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、イタコン酸およびシトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびシトラコン酸のエステルおよび無水物(可能な場合)が挙げられる。このエステルは、次式の1つにより表わされる:(RC=C(R)C(O)OR、またはRO−(O)C−HC=CH−C(O)ORであり、ここで、各RおよびRは、独立して、水素、または1個から約30個までの炭素原子、または約12個までの炭素原子、または約8個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、Rは、水素、または1個〜約6個の炭素原子を有するアルキル基である。1実施形態では、Rは、好ましくは、水素またはメチル基である。他の実施形態では、Rは、約1個〜約30個の炭素原子、または2個〜約24個の炭素原子、または約3個〜約18個の炭素原子を有するアルキル基またはヒドロキシアルキル基である。Rは、1種またはそれ以上の下記アルコールから誘導され得る。不飽和カルボン酸エステルには、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、マレイン酸エチル、マレイン酸ブチルおよびマレイン酸2−エチルヘキシルが挙げられる。上記のリストには、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸のモノエステルおよびジエステル、およびそれらの無水物が含まれる。
【0154】
このポリアルケン誘導体は、当業者に周知の方法により、調製される。これらの物質は、ヒドロカルビル置換カルボン酸アシル化剤と呼ばれており、以下に記述されている。米国特許第3,219,666号および第4,234,435号は、このポリアルケン誘導体およびそれらを製造する方法を記述しており、その内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0155】
他の実施形態では、この重合体は、エチレン−α−オレフィン共重合体である。典型的には、この共重合体は、ランダム共重合体である。この共重合体は、一般に、約30モル%〜約80モル%のエチレン、または約50モル%〜約75モル%のエチレンを有する。このα−オレフィンには、ブテン、ペンテン、ヘキセン、または上記α−オレフィンの1種以上が挙げられる。1実施形態では、このα−オレフィンは、約3個〜約20個の炭素原子、または約4個〜約12個の炭素原子を含有する。1実施形態では、このエチレン−α−オレフィン共重合体は、約10,000から約40,000までのMw、または約15,000から約35,000までのMw、または約20,000から約30,000までのMwを有する。他の実施形態では、このエチレン−α−オレフィン共重合体は、約800〜約6000のMn、または約1500〜約5000のMn、または約2000〜約4500のMnを有する。エチレン−α−オレフィン共重合体の例には、エチレン−ブテン共重合体およびエチレン−オクテン共重合体が挙げられる。市販の共重合体の例には、Lucant HC 600およびLucant HC 2000(Mw=25,000)(これらは、Mitsui Petrochemical Co.,Ltdから入手できる)が挙げられる。
【0156】
他の実施形態では、この重合体は、エチレン−プロピレン重合体である。これらの重合体には、エチレン−プロピレン共重合体およびエチレン−プロピレン三元共重合体が挙げられる。このエチレン−プロピレン重合体が、エチレン−プロピレン共重合体(EPM、また、EPR重合体とも呼ばれる)のとき、それは、周知の条件(例えば、チーグラー−ナッタ反応条件)下における、エチレンおよびプロピレンの共重合により、形成され得る。好ましいエチレン−プロピレン共重合体は、約40モル%〜約70モル%の量、または約50モル%〜約60モル%の量、または約55モル%の量で、エチレンから誘導した単位を含有し、残りは、プロピレンから誘導される。その分子量分布は、約1〜約8、または約1.2〜約4の多分散性(Mw/Mn)に、特徴があり得る。
【0157】
他の実施形態では、このエチレン−プロピレン重合体は、エチレン、プロピレンおよびジエンモノマーの三元共重合体である。1実施形態では、このジエンは、共役ジエンである。これらのジエンは、上で開示されている。この三元共重合体は、このエチレン−プロピレン共重合体の条件と類似の条件下にて、生成される。好ましい三元共重合体は、約10モル%〜約90モル%の量、または約25モル%〜約85モル%の量、または約35モル%〜約60モル%の量で、エチレンから誘導した単位を含有し、約15モル%〜約70モル%の量、または約30モル%〜約60モル%の量で、プロピレンから誘導した単位を含有し、そして約0.5モル%〜約20モル%の量、または約1モル%〜約10モル%の量、または約2モル%〜約8モル%の量で、第三のジエンモノノマーから誘導した単位を含有する。以下の表は、エチレン−プロピレン三元共重合体の例を含む。
【0158】
【表1】


* パーセントは、モル基準である。
【0159】
1実施形態では、このエチレン−プロピレン重合体は、エチレン、プロピレンおよびジシクロペンタジエンまたはエチリデンノルボルネンの三元共重合体であり、これは、Uniroyal CorporationからTrileneエラストマーとして市販されている。有用なエチレン−プロピレン三元共重合体には、Trilene CP−40がある。このエチレン−プロピレン重合体は、当該技術分野で周知の方法により、調製される。米国特許第3,691,078号は、エチレン−プロピレン重合体およびそれらの調製方法を記述しており、その内容は、このような開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0160】
他の実施形態では、この重合体は、α−オレフィンおよび不飽和試薬(例えば、上記不飽和カルボン酸試薬)の共重合体である。このα−オレフィンは、上述のもののいずれかであり得、これには、プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロペン、2−メチル−1−オクテン、および1−デセンが挙げられる。この不飽和試薬には、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイン酸エステルおよびフマル酸エステルが挙げられ、上で記述されている。このα−オレフィン−不飽和カルボン酸試薬重合体は、当該技術分野で周知の方法により、調製される。α−オレフィン−不飽和カルボン酸試薬共重合体の例には、ポリ(オクテン−co−アクリル酸エチル)、ポリ(デセン−co−メタクリル酸ブチル)、ポリ(ヘキセン−co−無水マレイン酸)、ポリ(オクテン−co−フマル酸メチル)などが挙げられる。
【0161】
他の実施形態では、この重合体は、ポリアクリレートまたはポリメタクリレートである。これらのポリアクリレートおよびポリメタクリレートには、上記アクリル酸またはメタクリル酸またはそれらのエステルの1種またはそれ以上の単独重合体およびインターポリマーが挙げられる。これらのポリアクリレートおよびポリメタクリレートには、Acryloid 1019(これは、Rohm and Hass Companyから入手できる)、Garbacryl 6225(これは、Societe Francaise d’Organo−Sythese(SFOS)から入手できる)、LZ 7720C(これは、The Lubrizol Corporationから入手できる)およびViscoplex 0−101(これは、Rohm Darmstadtから入手できる)が挙げられる。
【0162】
他の実施形態では、この重合体は、ビニル置換芳香族化合物および共役ジエンの水素化インターポリマーである。このインターポリマーには、ジブロックインターポリマー、トリブロックインターポリマーおよびランダムブロックインターポリマーが挙げられる。このビニル置換芳香族化合物は、一般に、約8個〜約20個の炭素原子、または約8個〜約18個の炭素原子、または約8個〜約12個の炭素原子を有する。ビニル置換芳香族物質の例には、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンが挙げられ、スチレンが好ましい。この共役ジエンは、上で記述されている。イソプレンおよび1,3−ブタジエンは、好ましい共役ジエンである。
【0163】
これらの共重合体のビニル置換芳香族含量は、約20重量%〜約70重量%の範囲、または約40重量%〜約60重量%の範囲である。それゆえ、この共役ジエン含量は、約30重量%〜約80重量%、または約40重量%〜約60重量%の範囲である。これらのインターポリマーは、当該技術分野で周知の通常方法により、調製される。このような共重合体は、通常、例えば、重合触媒として、アルカリ金属炭化水素(例えば、第二級ブチルリチウム)を用いたアニオン重合により、調製される。ビニル置換芳香族化合物および共役ジエンの適当な水素化共重合体の例には、Shellvis−40およびShellvis−50が挙げられ、これらは、共に、Shell Chemicalsから入手できる水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体である。
【0164】
(流動化剤)
この潤滑組成物は、さらに、少なくとも1種の流動化剤を含有し得る。一般に、この流動化剤は、約30重量%までの量で存在する。典型的には、この流動化剤は、この潤滑組成物の約3重量%〜約30重量%、または約5重量%〜約28重量%、約10重量%〜約27重量%、または約15重量%〜約25重量%の量で存在する。この流動化剤の量は、この潤滑組成物中の流動化剤の全量に等しい。
【0165】
1実施形態では、この流動化剤は、アルキル化芳香族炭化水素、ナフテン油、100℃で約3〜約20cStの動粘度を有するポリ−α−オレフィン、カルボン酸エステル、およびそれらの2種またはそれ以上の混合物から選択した少なくとも1種の構成要素である。このアルキル化芳香族炭化水素は、典型的には、モノ−またはジ(さらに好ましくは、モノ)置換したベンゼンを含有し、ここで、この置換基は、約8個〜約30個の炭素原子、または約10個〜約14個の炭素原子を有する炭化水素ベースの基である。一例には、Monsantoから入手できるAlkylate A−215(237の分子量のアルキル化ベンゼン)およびAlkylate A−230(230の分子量のアルキル化ベンゼン)がある。
【0166】
このナフテン油は、Louisiana地方に見られるようなナフテンクルードから誘導したものである。このようなナフテン油の粘度は、40℃で、一般に、4センチストークス未満、さらに一般的には、約3.0〜約3.8センチストークスの範囲内である。100℃では、所望のナフテンクルードの粘度は、約0.8〜約1.6センチストークスの範囲内である。
【0167】
このポリ−α−オレフィン(PAO)は、上で記述されている。有用なPAOの例には、上記オレフィン(例えば、α−オレフィン)から誘導したものが挙げられる。これらのPAOは、100℃で、約3〜約150cSt、または約4〜約100cSt、または約4〜約8cStの粘度を有し得る。PAOの例には、4cStのポリ−α−オレフィン、6cStのポリ−α−オレフィン、および8cStのポリ−α−オレフィンが挙げられる。特に有用なPAOは、デセンから誘導される。
【0168】
このカルボン酸エステル流動化剤は、ジカルボン酸エステルと、約1個〜約30個の炭素原子、または約2個〜約18個の炭素原子、または約3個〜約12個の炭素原子を有するアルコールとの反応生成物である。このアルコールは、以下で記述され、これには、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコールおよびドデシルアルコールが挙げられる。このジカルボン酸は、一般に、約4個〜約18個の炭素原子、または約4個〜約12個の炭素原子、または約4個〜約8個の炭素原子を含有する。ジカルボン酸の例には、フタル酸、コハク酸、アルキル(C1−24)コハク酸、アゼライン酸、アジピン酸、およびマロン酸が挙げられる。特に有用なエステルは、C1−12アルコールのジカルボン酸エステル(例えば、アゼライン酸と、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコールおよびオクチルアルコールとのエステル)である。1実施形態では、この潤滑組成物は、約20重量%未満、または約15重量%未満のカルボン酸エステル流動化剤を含有する。
【0169】
上記鉱油は、市販のギアおよび変速機濃縮物(例えば、Exxon社、Lubrizol社、Ethyl社およびMobil社から販売されているもの)と併用され得る。本実施形態では、これらの市販濃縮物は、それらのベースストックで希釈されて、これらの変速機およびギア調合物を形成する。
【0170】
これらの組合せは、潤滑剤または濃縮物中で使用できる。この濃縮物は、上記組合せおよび/または完全に調合した潤滑剤を調製する際に使用される他の成分を含有し得る。この濃縮物はまた、実質的に不活性で通常液状の有機希釈剤を含有し、これには、灯油、鉱物留出物、または1種またはそれ以上の以下で述べる潤滑粘性のあるオイルが挙げられる。これらの組合せは、潤滑組成物中で耐摩耗剤、耐溶接(antiweld)剤および/または極圧剤として作用するのに有効な任意の量で、最終生成物、ブレンドまたは濃縮物中にて存在する。
【0171】
1実施形態では、この潤滑組成物は、硫化オレフィンおよび脂肪酸またはそれらのエステルを含まない。他の実施形態では、この潤滑組成物は、上記モリブデンオーバーベース化塩以外のオーバーベース化金属塩を含まない。他の実施形態では、この潤滑組成物は、ジチオリン酸亜鉛を含まない。他の実施形態では、この潤滑組成物は、添加した鉛化合物(例えば、ナフトエ酸鉛(lead napthanates)、ジチオリン酸鉛およびジチオカルバミン酸鉛)を含まない。他の実施形態では、この潤滑組成物は、オレフィンまたはポリオレフィンとアンモニアまたはモノアミンとから誘導したスクシンイミドを含まない。
【0172】
(他の添加剤)
本発明はまた、上記組合せと共に、他の添加剤の使用を考慮している。これらの添加剤には、例えば、清浄剤および分散剤、腐食防止剤および酸化防止剤、流動点降下剤、極圧剤、耐摩耗剤、色安定化剤および消泡剤が挙げられる。
【0173】
この清浄剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と、スルホン酸、カルボン酸、フェノールまたは有機リン含有酸(例えば、上で記述のもの)との油溶性の中性塩および塩基性塩(すなわち、オーバーベース化塩)により、例示される。このアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の油溶性の中性塩または塩基性塩はまた、ホウ素含有化合物と反応され得る。これらのオーバーベース化金属塩およびホウ酸塩化オーバーベース化金属塩は、上で記述されている。有用なオーバーベース化およびホウ酸塩化オーバーベース化金属塩には、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムのオーバーベース化およびホウ酸塩化オーバーベース化スルホン酸塩およびカルボン酸塩(上記のヒドロカルビル置換カルボン酸アシル化剤を含めて)が挙げられる。
【0174】
本発明の潤滑剤に含有され得る補助の極圧剤および腐食防止剤および酸化防止剤は、以下により例示され得る:塩素化脂肪族炭化水素(例えば、塩素化ワックス);硫化アルキルフェノール;リン硫化炭化水素(例えば、硫化リンとテルペンチンまたはオレイン酸メチルとの反応生成物);チオカルバミン酸金属(例えば、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛、およびジヘプチルフェニルジチオカルバミン酸バリウム);無灰ジチオカーバメート(例えば、ジチオカルバミン酸と、不飽和酸エステル、無水物、アミド、エーテルまたはイミドとの反応生成物)。上記の極圧剤および腐食防止剤および酸化防止剤の多くはまた、耐摩耗剤としても役立つ。
【0175】
流動点降下剤は、ここで記述の潤滑油にしばしば含有される添加剤である。有用な流動点降下剤の例には、ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;ポリアクリルアミド;ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物;ビニルカルボキシレート重合体;およびフマル酸ジアルキル、脂肪酸のビニルエステルおよびアルキルビニルエーテルの重合体がある。本発明の目的上で有用な流動点降下剤、それらの調製方法およびそれらの用途は、米国特許第2,387,501号;第2,015,748号;第2,655,479号;第1,815,022号;第2,191,498号;第2,666,746号;第2,721,877号;第2,721,878号;および第3,250,715号に記述され、その内容は、関連した開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0176】
消泡剤は、安定した泡の形成を低減するかまたは防止するために用いられる。典型的な消泡剤には、シリコーンまたは有機重合体が挙げられる。さらに他の消泡組成物は、「Foam Control Agents」(Henry T.Kerner、Noyes Data Corporation、1976年)の125〜162ページに記述されている。
【0177】
以下の実施例は、ジチオカーバメート化合物および有機ポリスルフィドの組合せを含有する潤滑組成物に関する。
【0178】
(実施例1)
80W−90ギアオイル基油に、0.8重量部のMolyvan 807、1.1重量部の実施例B−3の生成物および1.2部の実施例C−2の生成物を含有させることにより、潤滑剤を調製する。
【0179】
(実施例2)
手動変速機ベースストックに、0.5部のMolyvan 807、0.5部の実施例B−3の生成物および0.75部の実施例C−2の生成物をブレンドすることにより、手動変速機潤滑剤を調製する。
【0180】
(実施例3)
0.75部のジノニルジフェニルアミンおよび0.25部のエトキシ化フェノール酸化防止剤を添加して、実施例2で記述のようにして、潤滑組成物を調製する。
【0181】
(実施例4)
実施例B−3の生成物に代えて、実施例B−2の生成物0.7%を使用すること以外は、実施例3で記述のようにして、潤滑組成物を調製する。
【0182】
(実施例5)
Molyvan 807に代えて、Sakura Lube 500を0.2重量%で使用すること以外は、実施例3で記述のようにして、潤滑組成物を調製する。
【0183】
(実施例6)
実施例B−3の生成物に代えて、亜リン酸ジブチル0.5%を使用すること以外は、実施例3で記述のようにして、潤滑組成物を調製する。
【0184】
本発明は、その好ましい実施形態に関連して説明しているものの、それらの種々の変更は、本明細書を読めば、当業者に明らかなことが理解されるべきである。従って、ここで開示の発明は、添付の請求の範囲に入るこれらの変更を含むと解釈されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【公開番号】特開2011−208161(P2011−208161A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−162537(P2011−162537)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【分割の表示】特願2001−546850(P2001−546850)の分割
【原出願日】平成12年12月22日(2000.12.22)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】