モレキュラーシーブ及び関連する方法及び構造指向剤
モレキュラーシーブを調製する方法及びそれにより得られるモレキュラーシーブが記載される。該方法は、構造指向剤、四価元素の少なくとも1つの酸化物の少なくとも1つの供給源、所望により、三価元素、五価元素及びそれらの混合物の酸化物からなる群から選択される1つ又は複数の酸化物の1つ又は複数の供給源、所望により、周期表の第1及び第2族から選択される元素の少なくとも1つの供給源、並びに所望によって、水酸化物イオン又はフッ化物イオンを含む反応混合物を調製するステップと、該モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な条件下で反応混合物を保持するステップを含む。該方法において、種々のイミダゾリウム陽イオンを構造指向剤として用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照。
本出願は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれている、2009年4月9日に出願した米国仮出願第61/167,968号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、モレキュラーシーブ及び関連する方法及び構造指向剤(structure directing agent)に関する。
【背景技術】
【0003】
モレキュラーシーブは、化学産業においてガス流精製及び炭化水素変換工程などの工程に用いられている重要な物質の一群である。モレキュラーシーブは、同じ又は異なるサイズの相互に連結した細孔を有する多孔質固体である。モレキュラーシーブは、一般的に、細孔に入ることができる分子を選択的に吸着し、大きすぎる分子を排除する1個又は複数の分子の大きさの細孔を有する一、二又は三次元結晶性細孔構造を有する。細孔の大きさ、細孔の形状、間隙又はチャンネル、組成、結晶の形状及び構造は、種々の炭化水素吸着及び変換工程におけるそれらの使用を決定するモレキュラーシーブのいくつかの特性である。
【発明の概要】
【0004】
モレキュラーシーブ、並びに関連する方法及び構造指向剤を本明細書で述べる。特に、いくつかの実施形態において、種々のイミダゾリウム陽イオンなどの構造指向剤を用いる、水酸化物媒体中で種々のモレキュラーシーブを調製する方法により得られるモレキュラーシーブを記載する。
【0005】
本開示の実施形態によれば、モレキュラーシーブを調製する方法及びそれにより得られるモレキュラーシーブが提供される。該方法は、四価元素の少なくとも1つの酸化物の少なくとも1つの供給源、及び以下のイミダゾリウム陽イオン(I)
【化1】
[式中、Rは、イソプロピル以外の直鎖若しくは分枝アルキル、シクロオレフィン(環状オレフィン)、二環式アルキル及び三環式アルキル又はアリールであり得る置換基である]を含む構造指向剤を含む反応混合物を調製するステップを含む。反応混合物は、所望により、三価元素、五価元素及びそれらの混合物の酸化物からなる群から選択される1つ又は複数の酸化物の1つ又は複数の供給源、所望により、周期表の第1及び第2族から選択される元素の少なくとも1つの供給源、並びに所望により、水酸化物イオン又はフッ化物イオンを所望により含でいてよく、続いて、反応混合物を、モレキュラーシーブの結晶を形成し、それにより、合成されたままの状態のモレキュラーシーブを得るのに十分な条件下で保持する。
【0006】
本開示の実施形態によれば、モレキュラーシーブの調製の工程に有用な様々な構造指向剤、具体的には以下のイミダゾリウム陽イオン(I)
【化2】
[式中、Rは、イソプロピル以外の直鎖若しくは分枝アルキル、シクロオレフィン、二環式アルキル及び三環式アルキル又はアリールであり得る置換基である]を含む構造指向剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本開示の一実施形態による1つの合成されたままの状態の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0008】
【図2】本開示の一実施形態による1つの焼成済み生成物のXRDパターンを示す図である。
【0009】
【図3】本開示の一実施形態による他の一の合成されたままの状態の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0010】
【図4】本開示の一実施形態による他の一の焼成済み生成物のXRDパターンを示す図である。
【0011】
【図5】本開示の実施形態によるいくつかの生成物の流し時間(time on stream)の関数としての分解速度を示す図である。
【0012】
【図6】本開示の実施形態によるいくつかの生成物の流し時間の関数としての束縛指数(constraint index)を示す図である。
【0013】
【図7】本開示の一実施形態による追加の合成されたままの状態の生成物のXRDパターンの追加の実例を示す図である。
【0014】
【図8】本開示の一実施形態による追加の合成されたままの状態の生成物(SSZ−25(上)、Al−SSZ−70(F)(中)及びAl−SSZ−70(OH)(下))のXRDパターンを示す図である。
【0015】
【図9】本開示の一実施形態による追加の合成されたままの状態の生成物(SSZ−25(上)、Al−SSZ−70(F)(中)及びAl−SSZ−70(OH)(下))のXRDパターンを示す図である。
【0016】
【図10】本開示の一実施形態による追加の焼成済み生成物(Si−SSZ−70(F)(上)、Al−SSZ−70(F)(中)及びB−SSZ−70(F)(下))のXRDパターンを示す図である。
【0017】
【図11】本開示の一実施形態により得られた生成物Si−SSZ−70の固体状態29SiNMRスペクトルを示す図である。上から下へ:Si−SSZ−70(OH)CP−MAS、Si−SSZ−70(OH)BD−MAS、Si−SSZ−70(F)CPMAS及びSi−SSZ−70(F)BD−MAS。
【0018】
【図12】本開示の一実施形態により得られた焼成済み生成物Si−SSZ−70(F)の固体状態29SiBD−MAS NMRを示す図である。
【0019】
【図13】本開示の実施形態により得られた合成されたままの状態のSi−SSZ−70(F)(左)及び焼成済みAl−SSZ−70(OH)(右)の走査型電子顕微鏡写真である。スケールバーは、左右の画像に対してそれぞれ10及び1マイクロメートルを表す。
【0020】
【図14】本開示の一実施形態による1つの合成されたままの状態の生成物の透過型電子顕微鏡写真である。
【0021】
【図15】本開示の一実施形態により合成されたSSZ−70固体の13CCP−MASを示す図である。上から下へ:DMSO−d6中親SDA(*は溶媒を示す)、B−SSZ−70(OH)、B−SSZ−70(F)、Al−SSZ−70(F)及びAl−SSZ−70(OH)。
【0022】
【図16】本開示の実施形態により得られた合成されたままの状態の生成物Si−SSZ−70(F)のTGAを示す図である。
【0023】
【図17】合成後処理の前後における、本開示の実施形態により得られたAl−SSZ−70(OH)のTGAを示す図である。
【0024】
【図18】合成後処理の前後における、本開示の一実施形態により合成されたAl−SSZ−70(OH)のXRDパターンを示す図である。下から上へ:親物質、DMF抽出済み及び350℃処理済み。
【0025】
【図19】本開示の実施形態により得られたSSZ−70及びSSZ−25物質の炭化水素吸着対時間を示す図である。3−MPは、3−メチルペンタンであり、2,2−DMBは、2,2−ジメチルブタンである。
【0026】
【図20】本開示の実施形態により得られたAl−SSZ−70物質のCI試験分解速度対流し時間を示す図である。
【0027】
【図21】本開示の実施形態により得られたAl−SSZ−70物質の束縛指数対流し時間を示す図である。Al−SSZ−70(OH−1)=SDA1を用いて合成されたAl−SSZ−70(OH)であり、Al−SSZ−70(OH−2)=SDA2を用いて合成されたAl−SSZ−70(OH)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
モレキュラーシーブ及び関連する方法及び構造指向剤を本明細書に記載する。
【0029】
「モレキュラーシーブ」という用語は、同じ又は異なるサイズの相互に連結した細孔を有する多孔性固体を示し、(a)中間及び(b)最終又は目標モレキュラーシーブ、並びに(1)直接合成又は(2)結晶化後処理(二次合成)により製造されるモレキュラーシーブを含む。二次合成法は、酸浸出又は他の同様な脱アルミニウム法による中間物質からのより高いSi:Al比を有する目標物質の合成を可能にする。
【0030】
石油及び石油化学産業などの産業において特に有用なモレキュラーシーブは、ゼオライトである。ゼオライトは、[SiO4]及び[AlO4]四面体又は八面体の酸素原子を共有する開骨格構造を有するアルミノケイ酸塩である。可動性骨格外陽イオン(mobile extra framework cation)は、ゼオライト骨格に沿った電荷の均衡を保たせるために細孔内に存在する。これらの電荷は、四面体骨格陽イオン(例えば、Si4+)の三価又は五価陽イオンによる置換の結果である。骨格外陽イオンは、これらの電荷を平衡させ、骨格の電気的中性を保ち、これらの陽イオンは、他の陽イオン及び/又はプロトンと交換可能である。
【0031】
合成モレキュラーシーブ、特にゼオライトは、しばしば構造指向剤又は鋳型剤の存在下で、水性媒体中でアルミナ及びシリカの供給源を混合することにより一般的に合成される。生成するモレキュラーシーブの構造は、種々の供給源の溶解度、シリカ対アルミナ比、陽イオンの性質、合成条件(温度、圧力、混合撹拌)、添加の順序、鋳型剤(temprate agent)の種類などによって一部決定される。
【0032】
SSZ−70と呼ばれている具体例としてのモレキュラーシーブ、及び構造指向剤(一般的に鋳型剤とも呼ばれている)の存在下で製造するための関連する方法は、その全体として参照により本明細書に組み込まれている、2006年9月19日にZones及びBurtonに発行された米国特許第7,108,843号に記載されている。
【0033】
本開示は、様々な構造指向剤(SDA)を用いてモレキュラーシーブを製造する方法を対象とする。本開示の実施形態によれば、用いる構造指向剤は、イミダゾリウム陽イオンを含む。
【0034】
一般的に、本開示のモレキュラーシーブは、以下の手順を用いることによって調製される。最初に、以下の成分を混ぜ合わせることによって、反応混合物を調製する:
構造指向剤;
四価元素の少なくとも1つの酸化物の少なくとも1つの供給源;
所望により、周期表の第1及び第2族から選択される元素の少なくとも1つの供給源;
所望により、水酸化物イオン、又はその代わりに、フッ化物イオン;
所望により、三価元素、五価元素及びそれらの混合物の1つ又は複数の酸化物の1つ又は複数の供給源;並びに
水。
【0035】
本明細書で述べる各実施形態について、モレキュラーシーブ反応混合物は、複数の所定の薬品の供給源により供給することができる。例えば、いくつかの実施形態において、シリカは、ヒュームドシリカ源及びAl源を供給するために添加される他のゼオライトの両方により反応に供給することができる。供給されるゼオライトは、多少のシリカも供給する。また、一実施形態において、例えば、Al SSZ−70を製造するためのAl源を供給するためにゼオライトを用いる場合のように、2つ以上の反応成分を1つの供給源により供給することができる。本明細書で述べるモレキュラーシーブの結晶の大きさ、形態及び結晶化時間は、反応混合物の性質及び結晶化条件によって異なり得る。
【0036】
そのように調製された反応混合物を次にモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な条件下で保持する。これらの条件は、下でより詳細に述べる。
【0037】
上で述べたように、本開示の実施形態で用いるSDAsは、以下の一般構造(I)
【化3】
を有するイミダゾリウム陽イオンを含む。
【0038】
一般構造Iにおいて、Rは、イソプロピルを除く直鎖若しくは分枝アルキル(例えば、メチル、エチル、イソブチル、tert−ブチル、分枝アミル若しくは分枝オクチル)、シクロオレフィン(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル若しくはシクロオクチル)、二環式アルキル及び三環式アルキル(アダマンチル等など)、又はアリール(例えば、非置換若しくは置換フェニル)であってよい置換基である。
【0039】
「アルキル」という用語は、本明細書では、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシルなどの必ずではないが通常、1個から約10個の炭素原子、例えば、1個から約6個の炭素原子を含む直鎖、分枝又は環状飽和炭化水素基、並びにシクロペンチル、シクロヘキシルなどの例えば3個から8個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。同じく必ずではないが通常、本明細書におけるアルキル基は、1個から約6個の炭素原子を含む。「シクロアルキル」という用語は、一般的に4個から8個の炭素原子を有する環状アルキル基を意味する。
【0040】
「アリール」という用語は、本明細書では、また特に指定しない限り、単芳香環又は一緒に縮合した、直接結合した、若しくは間接的に結合した(異なる芳香環がメチレン若しくはエチレン部分(moiety)などの共通基に結合しているような)多芳香環を有する芳香族基を意味する。典型的には、アリール基は、5個から24個の炭素原子、例えば、5個から14個の炭素原子を含む。具体例としてのアリール基は、1つの芳香環又は2つの縮合若しくは結合芳香環、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノンなどを含む。
【0041】
上の一般構造Iにおける置換基Rの種々の選択は、種々のSDAsをもたらし得る。典型的には、置換基Rは、水性合成混合物の残りのものにおけるある程度の溶解度を有することができるSDAを有するように選択される。
【0042】
「オレフィン」という用語は、本明細書ではそれらの間に二重結合(sp2混成結合)を含む、互いに共有結合した2つの炭素を示す。
【0043】
用いることができる一般構造(I)のイミダゾリウム陽イオンのいくつかの特定の非限定的な例は、以下の陽イオン(1)〜(15)を含む。
【化4−1】
【化4−2】
【0044】
イミダゾリウム陽イオンは、一般的に対応する陰イオンと会合している。適切な陰イオンの非限定的な例は、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン(すなわち、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン又はヨウ化物イオン)、酢酸イオン、硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン及びカルボン酸イオンなどである。対応する陰イオンと会合したイミダゾリウム陽イオンを含む系は、合成有機化学の公知の方法に従って調製することができる。これらの合成手順及びそのようにして得られる化合物の特性は、下の本出願の「実施例」部分に示す。
【0045】
上で述べたように、反応混合物は、四価元素の少なくとも1つの酸化物の少なくとも1つの供給源を含む。四価元素(以下、「T」とも呼ぶ)は、周期表の第4〜14族の元素であり得る。
【0046】
「周期表」という用語は、元素のIUPAC周期表の2007年6月22日付けの版を意味し、周期表の族の付番スキームは、Chemical and Engineering News、63巻(5号)、27頁(1985年)に記載されているとおりである。
【0047】
本開示の実施形態によれば、Tは、ケイ素、ゲルマニウム又はチタンのいずれであってもよい。一実施形態において、Tは、ケイ素である。組成変数(composition variable)Tの選択される元素の供給源は、Tに選ばれる元素(単数又は複数)の酸化物、水酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩、アンモニウム塩及び硫酸塩などである。
【0048】
一実施形態において、組成変数Tに選ばれる元素(単数又は複数)の各供給源は、酸化物である。Tがケイ素である場合、ケイ素の本明細書において有用な供給源は、ヒュームドシリカ、沈殿ケイ酸塩、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイドシリカ、オルトケイ酸テトラアルキル(例えば、オルトケイ酸テトラエチル)及びシリカ水酸化物などである。本開示のモレキュラーシーブの高シリカ形を製造するのに有用なシリカ源の例としては、ヒュームドシリカ(例えば、CAB−O−SIL M−5、キャボットコーポレーション(Cabot Corporation))、水和シリカ(例えば、HI−SIL233、PPG Industries)、シリカテトラアルコキシド及びそれらの混合物などがある。固体含量が30〜40重量%のSiO2であるコロイドシリカも有用であり、これらの物質は、少量のナトリウム又はアンモニウム陽イオンにより安定化することができる。さらに、アルミニウムがシリカゾル中に分散しているコロイドゾルは、望ましい当該SiO2/Al2O3比を得るために用いることができる。ゲルマニウムの本明細書において有用な供給源は、酸化ゲルマニウム及びゲルマニウムエトキシドなどである。
【0049】
上記のように、反応混合物は、周期表の第1及び第2族から選択される元素(以下、「M」とも呼ぶ)の少なくとも1つの供給源及び水酸化物イオンをさらに所望により含む。典型的には、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムをこの目的のために用いることができるが、同等の塩基性が維持されている限り、この成分は、除外することができる。したがって、例えば、ハロゲン化物を水酸化物イオンにイオン交換し、それにより、必要なアルカリ金属水酸化物の量を減少させる又はなくすことが有益であり得る。アルカリ金属陽イオン又はアルカリ土類金属陽イオンは、それにおける原子価電子の電荷の均衡を保つために合成されたままの結晶性酸化物物質の一部であり得る。
【0050】
上で述べたように、反応混合物は、三価元素、五価元素(以下、「X」とも呼ぶ)及びそれらの混合物の1つ又は複数の酸化物の少なくとも1つ又は複数の供給源をさらに所望により含む。本明細書で述べる各実施形態について、Xは、周期表の第3〜13族の元素からなる群から選択される。より具体的には、Xは、ガリウム、アルミニウム、鉄又はホウ素のいずれかであり得る。場合による組成変数Xに選ばれる元素の供給源は、Xに選ばれる元素(単数又は複数)の酸化物、水酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩、アンモニウム塩及び硫酸塩などである。酸化アルミニウムの一般的な供給源は、アルミン酸塩、アルミナ、並びにAlCl3、Al2(SO4)3、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、カオリン粘土及び他のゼオライトなどのアルミニウム化合物などである。酸化アルミニウムの供給源の例は、LZ−210ゼオライト(Yゼオライトの一種)である。ホウ素、ガリウム及び鉄は、それらのアルミニウム及びケイ素対応物に相当する形で加えることができる。
【0051】
生成したモレキュラーシーブが中間物質である場合、本開示の方法は、酸浸出などの合成後技術により目標モレキュラーシーブを合成するさらなるステップを含む。通常、イオン交換によりアルカリ金属イオンを除去し、それを水素、アンモニウム又は所望の金属イオンで置換することが望ましい。モレキュラーシーブは、キレート化剤、例えば、EDTA又は希酸溶液で浸出して、シリカ対アルミナモル比を増加させることができる。モレキュラーシーブは、水蒸気処理することもできる。水蒸気処理は、酸による攻撃に対して結晶格子を安定化させる助けとなる。
【0052】
出発SDAs及び無機化合物を変化させることにより、本開示の方法を用いて種々のモレキュラーシーブを得ることができる。得られるそのようなモレキュラーシーブの一例は、SSZ−70である。得ることができるさらなるモレキュラーシーブ相は、それぞれが国際ゼオライト協会構造委員会により承認された規則に従って定義されている、TON、MFI、MTT、MTW、BEA*、MOR、CFI、AFX及びSTFなどである。SSZ−70、TON、MFI、MTT、MTW、BEA*、MOR、CFI、AFX及びSTFのそれぞれの構造及び特性に関する完全な情報は、全内容が参照により本明細書に組み込まれるwww.iza−structure.org/databasesに見いだすことができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、モレキュラーシーブは、約150℃から約170℃までの温度でフッ化物媒体又は水酸化物媒体中で本明細書で述べる方法を用いて調製することができる。SiO2とAl2O3との比、及び用いることができる他の成分間の比は、下の表3及び4に示す。
【0054】
他の実施形態において、モレキュラーシーブは、H2O/SiO2モル比を約3.5から14.5として約150℃又は約175℃における純シリカフッ化物反応により本明細書で述べる方法を用いて調製することができる。
【0055】
他の実施形態において、モレキュラーシーブは、SiO2/B2O3モル比を約8から100として約150℃、又はそれ以上におけるホウケイ酸塩水酸化物反応により本明細書で述べる方法を用いて調製することができる。
【0056】
さらに他の実施形態において、モレキュラーシーブは、SiO2/Al2O3モル比を約35から100として約150℃におけるアルミノケイ酸塩水酸化物反応により本明細書で述べる方法を用いて調製することができる。特にそれらの実施形態のいくつかにおいて、以下の陽イオン1〜3を用いることができる。
【化5】
【0057】
陽イオン1〜3を用いる実施形態のいくつかにおいて、関連する方法は、十分なAlの取込みを有し、及び/又はSDAの除去後に得られる生成物の高い空隙容積を有するモレキュラーシーブSSZ−70生成物の製造を可能にする。
【0058】
モレキュラーシーブを生成させる反応混合物のモル比による組成の概観を下の表1に示す。
【表1】
【0059】
成分がTO2/X2Oaを含み、Xが三価(例えば、アルミニウム又はホウ素)である、いくつかの実施形態において、モル比は、約20対1及びそれより大きい、特に約25〜60対1であり得る。
【0060】
成分がTO2/X2Oaを含み、Xが四価(例えば、ゲルマニウム)である、いくつかの実施形態において、モル比は、8対1及びそれより大きい、特に約8〜60対1であり得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、モレキュラーシーブは、SiO2/B2O3モル比を約20〜200対1以上の値として、或いはSiO2/Al2O3モル比を約30〜50対1、30〜45対1以上の値として水酸化物合成により本明細書で述べる方法を用いて調製することができる。それらの実施形態のいくつかにおいて、水酸化物合成は、約170℃の温度で実施することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、モレキュラーシーブは、SiO2/Al2O3のモル比を約30〜500対1及びSiO2/GeO2のモル比を約2〜50、特に約2〜20対1としてフッ化物媒介反応により本明細書で述べる方法を用いて調製することができる。モレキュラーシーブをSiO2/GeO2から調製する実施形態において、反応は、フッ化物を用いて、又は用いずに実施することができる。
【0063】
本明細書で上述したように反応混合物を調製した後、それをモレキュラーシーブを形成するのに十分な結晶化条件下で保持する。そのような条件は、一般的に公知である。(Harry Robson、Verified Syntheses of Zeolitic Materials、第2改訂版、Elsevier、Amsterdam(2001年)を参照)。
【0064】
例えば、反応混合物は、モレキュラーシーブが数日から数週間の期間にわたって形成されるまで高温に保持することができる。水熱結晶化は、50〜200PSI(0.34〜1.38MPa)の自原性圧力(autogenous pressure)下で、通常反応混合物が125℃から200℃までの温度で自原性圧力を受けるようにオートクレーブ中で通常行わせる。
【0065】
反応混合物は、結晶化ステップ中に緩やかなかき混ぜ又は撹拌を受けさせることができる。本明細書で述べるモレキュラーシーブが非晶質物質、モレキュラーシーブと一致しない骨格トポロジーを有する単位胞及び/又は他の不純物(例えば、有機炭化水素)などの不純物を含み得ることは、当業者により理解されるであろう。水熱結晶化ステップ中、モレキュラーシーブ結晶は、反応混合物から自発的に核生成させることができる。
【0066】
モレキュラーシーブの結晶を種子材料として用いることは、完全な結晶化が起こるのに必要な時間を低減するのに有利であり得る。さらに、接種(seeding)は、核生成を促進することにより得られる生成物の純度の増大及び/又は所望の相にわたるモレキュラーシーブの形成をもたらし得る。種子として用いる場合、種結晶は、反応混合物中の用いるケイ素の供給源の重量の1%から10%までの量で加える。モレキュラーシーブが生成したならば、ろ過などの標準的な機械的分離技術により固体生成物を反応混合物から分離する。結晶を水洗し、次いで、乾燥して、合成されたままの状態のモレキュラーシーブ結晶を得る。乾燥ステップは、大気圧又は真空中で実施することができる。
【0067】
モレキュラーシーブは、合成されたままの状態で用いることができるが、一般的に熱処理する(焼成する)。「合成されたままの状態」という用語は、構造指向剤の除去の前の結晶化後のその形のモレキュラーシーブを意味する。構造指向剤は、好ましくは酸化的雰囲気(例えば、空気、0kPaより大きい酸素分圧を有するガス)中でのモレキュラーシーブから構造指向剤を除去するのに十分な当業者が容易に決定できる温度における熱処理(例えば、焼成)により除去することができる。構造指向剤は、2005年11月1日に発行されたNavrotsky及びParikhへの米国特許第6,960,327号に記載されているような光分解法(例えば、モレキュラーシーブから有機化合物を選択的に除去するのに十分な条件下で可視光より短い波長を有する光又は電磁放射線に構造指向剤含有モレキュラーシーブ生成物を曝露する)によっても除去することができる。
【0068】
モレキュラーシーブは、その後、1時間から48時間以上の範囲の時間にわたり約200℃から約800℃までの範囲の温度で水蒸気、空気又は不活性ガス中で焼成することができる。通常、イオン交換又は他の公知の方法により骨格外陽イオン(例えば、H+)を除去し、それを水素、アンモニウム又は所望の金属イオンで置換することが望ましい。
【0069】
生成するモレキュラーシーブが中間物質である場合、目標モレキュラーシーブは、酸浸出又は同様な脱アルミニウム法により中間物質からのより高いSi:Al比を有する目標物質の合成を可能にする合成後技術を用いて得ることができる。
【0070】
本開示の方法により調製されるモレキュラーシーブは、成分間のモル比を表2に示す、合成されたままの状態で、無水状態にある組成を有する。
【表2】
【0071】
成分がTO2/X2Oaを含み、Xが三価(例えば、アルミニウム又はホウ素)である、いくつかの実施形態において、モル比は、約20対1又はそれより大きいことがあり得る。
【0072】
成分がTO2/X2Oaを含み、Xが四価(例えば、ゲルマニウム)である、いくつかの実施形態において、モル比は、約2対1又はそれより大きいことがあり得る。
【0073】
モレキュラーシーブがSiO2/Al2O3に由来する、実施形態において、生成物中のSiO2/Al2O3比は、一般的に出発比の値の約80〜90%である。モレキュラーシーブがSiO2/B2O3に由来する、実施形態において、生成物中のSiO2/B2O3比は、一般的に出発比の値の約125〜200%である。
【0074】
本開示の方法により合成されるモレキュラーシーブは、それらのXRDパターンにより特性評価される。1つのそのような生成物SSZ−70のXRDパターンは、2006年9月19日にZones及びBurtonに発行された米国特許第7,108,843号に記載されている。回折パターンの軽微な変動は、格子定数の変化による個々の試料の骨格種のモル比の変動に起因し得る。さらに、十分に小さい結晶は、ピークの形状及び強度に影響を及ぼし、著しいピークの広がりをもたらす。回折パターンの軽微な変動は、調製に用いる有機化合物の変動及び試料ごとのSi/Alモル比の変動にも起因し得る。焼成もXRDパターンの軽微な変動を引き起こし得る。これらの軽微な摂動にもかかわらず、基本結晶格子構造は不変のままである。
【0075】
本明細書に示した粉末X線回折パターンは、標準的技術により収集された。放射線は、CuK−α放射線であった。2θ(θはブラッグ角)の関数としてのピークの高さ及び位置は、ピークの相対強度(バックグラウンドについて調整した)から読み取り、記録された線に対応するオングストローム単位の面間隔dを計算することができる。
【0076】
本開示のモレキュラーシーブ触媒は、1つ又は複数の触媒担体、活性卑金属、他のモレキュラーシーブ、助触媒及びそれらの混合物と所望により併用することができる。そのような物質の例及びそれらを用いることができる方法は、1990年5月20日にZonesらに発行された米国特許第4,910,006号及び1994年5月31日にNakagawaに発行された米国特許第5,316,753号に開示されている。
【0077】
本開示のモレキュラーシーブと併用できる触媒担体は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ベリリウム、アルミナ−シリカ、非晶質アルミナ−シリカ、アルミナ−酸化チタン、アルミナ−酸化マグネシウム、シリカ−酸化マグネシウム、シリカ−ジルコニア、シリカ−酸化トリウム、シリカ−酸化ベリリウム、シリカ−酸化チタン、酸化チタン−ジルコニア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−酸化トリウム、シリカ−アルミナ−酸化チタン又はシリカ−アルミナ−酸化マグネシウム、好ましくはアルミナ、シリカ−アルミナ、粘土及びそれらの組合せなどである。
【0078】
本明細書において有用な具体例としての活性卑金属は、周期表の第6族及び第8〜10族の元素から選択されるもの、それらの対応する酸化物及び硫化物、並びにそれらの混合物などである。一実施形態において、各卑金属は、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、タングステン及びそれらの組合せからなる群から選択される。他の実施形態において、水素化触媒は、少なくとも1つの第6族卑金属及び周期表の第8〜10族から選択される少なくとも1つの卑金属を含む。具体例としての金属の組合せは、Ni/Mo/W、Mi/Mo、Mo/W、Co/Mo、Co/W及びW/Niなどである。助触媒は、リン、ホウ素、ケイ素、アルミニウム及びそれらの組合せなどから選択されるものを含む。
【0079】
金属は、当技術分野で公知の標準的イオン交換技術によりモレキュラーシーブにおける陽イオンの一部を金属陽イオンで置換することによってもモレキュラーシーブに導入することができる。一般的な置換陽イオンは、金属陽イオン、例えば、希土類、IA族、IIA族及びVIII族金属、並びにそれらの混合物などであり得る。置換金属陽イオンの例としては、希土類、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、チタン、アルミニウム、スズ及び鉄などの金属の陽イオンなどがある。
【0080】
水素、アンモニウム及び金属成分は、本開示のモレキュラーシーブにイオン交換させることができる。本開示のモレキュラーシーブは、金属を含浸させることもでき、或いは当技術分野で公知の標準的方法を用いて金属を本開示のモレキュラーシーブと物理的に、緊密に混合することができる。
【0081】
典型的なイオン交換技術は、合成モレキュラーシーブを所望の置換陽イオン又は陽イオン(複数)の塩を含む溶液と接触させるステップを含む。種々の塩を用いることができるが、塩化物及び他のハロゲン化物、酢酸塩、硝酸塩、並びに硫酸塩が特に好ましい。モレキュラーシーブは、通常、イオン交換処置の前に焼成して、チャンネル内及び表面上に存在する有機物を除去する。その理由は、このアプローチがより効果的なイオン交換をもたらすためである。代表的なイオン交換技術は、当技術分野で公知である。
【0082】
所望の置換陽イオンの塩溶液との接触の後に、モレキュラーシーブを一般的に水で洗浄し、65℃から約200℃までの範囲の温度で乾燥する。洗浄後、上述のようにモレキュラーシーブを空気中又は不活性ガス中で焼成して、炭化水素変換工程に特に有用な触媒的に活性な生成物を製造することができる。本開示のモレキュラーシーブの合成されたままの形に存在する陽イオンにかかわりなく、モレキュラーシーブの基本結晶格子を構成する原子の空間的配置は、本質的に不変のままである。
【0083】
本開示の方法により製造されるモレキュラーシーブは、種々の物理的形状に成形することができる。一般的に言えば、モレキュラーシーブは、粉末、顆粒、又は2メッシュ(タイラー)ふるいを通過し、400メッシュ(タイラー)ふるい上に保持されるのに十分な粒径を有する押出し成形体などの成形物の形であってよい。有機結合剤を用いた押出し成形などにより触媒を成形する場合、モレキュラーシーブは、乾燥の前に押出し成形するか、又は乾燥若しくは部分的に乾燥し、次に押出し成形することができる。
【0084】
本開示の方法により製造されるモレキュラーシーブは、有機物変換工程に用いられる温度及び他の条件に抵抗性を示す他の物質と複合させることができる。そのようなマトリクス材は、活性及び不活性物質、並びに合成又は天然ゼオライト、並びに粘土、シリカ及び金属酸化物などの無機物質などである。そのような物質の例及びそれらを用いることができる方法は、全体として参照により本明細書に組み込まれている、1990年5月20日にZonesらに発行された米国特許第4,910,006号及び1994年5月31日にNakagawaに発行された米国特許第5,316,753号に開示されている。
【0085】
本開示の方法により製造されるモレキュラーシーブは、水素化分解、脱ろう、異性化などの種々の炭化水素変換反応用の触媒に有用である。本開示の方法により製造されるモレキュラーシーブはまた、吸着剤として、及び低誘電率K物質として有用であり得る。低誘電率Kポテンシャル(low dielectric K potential)を有するモレキュラーシーブの具体例としての使用は、全体として参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,138,099号に記載されている。
【実施例】
【0086】
本明細書で述べるモレキュラーシーブ、構造指向剤、並びに関連する方法及びシステムを、例示の目的で記載するものであって限定するものではない以下の実施例で、さらに説明する。
【0087】
特に、以下の実施例は、イミダゾリウム構造指向剤を用いるモレキュラーシーブの具体例としての合成及び使用を説明するものである。当業者は、本開示及び関連モレキュラーシーブに照らして異なる置換基を有するさらなるSDAに対するSDA1〜12及び関連モレキュラーシーブの詳細に述べた特徴の適用性を十分に理解するであろう。
【0088】
以下の実験手順及び特性評価データは、ここに例示したすべての化合物及びそれらの前駆体について用いた。
【0089】
構造指向剤の一般的合成手順
すべての薬品を販売業者から購入し、受け取ったままの状態で使用した。化合物6及び7は、適切なハロゲン化アルキルによりイミダゾールを四級化することにより合成した。化合物14(すなわち、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリウムクロリド)及び15(すなわち、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロリド)は、Sigma−Aldrichから購入し、受け取ったままの状態で使用した。他のすべてのSDAsは、公知且つ公表された手順(W.A.Herrmann、V.P.W.Bohm、C.W.K.Gstottmayr、M.Grosche、C.P.Reisinger、T.Weskamp、J.Organomet.Chem.、617巻(1号)(2001年)616〜628頁。W.A.Herrmann、C.Kocher、L.J.Goossen、複素環式カルベンを調製する方法、米国特許第6,025,496号、2000年2月15日)を適応することにより合成した。
【0090】
粗テトラフルオロホウ酸塩は、再結晶化により精製した。ハロゲン化物塩についての同様な再結晶化の試みは、大部分は不成功であり、したがって、水性活性炭処理を用いた(A.K.Burrell、R.E.Del Sesto、S.N.Baker、T.M.McCleskey、G.A.Baker、Green Chem.、9巻(5号)(2007年)449〜454頁)。液体NMRスペクトルは、300MHz Varian Mercury分光計で記録した。燃焼分析は、Chevron Energy Technology Center(Richmond、CA)においてCarlo−Erba Combustion Elemental Analyzerを用いて実施した。
【0091】
すべてのSDAsをDowex Monosphere 550A UPW水酸化物樹脂(Supelco)を用いて水酸化物形に交換した。最終的な水酸化物濃度は、フェノールフタレイン終点までの0.01N HCl溶液による滴定により測定した。1,3−ビス(シクロヘキシル)イミダゾリウム(化合物3)及び1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾリウム(化合物11)とのいくつかの反応は、市販のテトラフルオロホウ酸塩(Sigma−Aldrich)によるイオン交換の後に得られたSDA+OH−溶液を用いて行わせた。テトラフルオロホウ酸1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾリウムのイオン交換は、親塩(parent salt)の溶解度が低いため室温で約1週間を要した(滴定による>90%イオン交換)。
【0092】
無機反応に関する一般的合成手順
すべての反応を23mL又は45mL PTFE裏打ちステンレススチールオートクレーブ(Parr Instruments)中で行わせた。水酸化物媒介反応は、対流オーブン中に組み込まれたスピット(spits)を用いて約40rpmで転動させた。フッ化物媒介反応は、転動させなかった。ケイ素源は、フッ化物反応についてはテトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS、Sigma−Aldrich、98%)であり、水酸化物反応についてはCab−O−Sil M5ヒュームドシリカ(Cabot)であった。ホウ酸(J.T.Baker、ACS Reagent)をホウケイ酸塩反応に用い、Reheis F−2000(50〜53重量%Al2O3)又はNaYゼオライト(Tosoh HSZ−320NAA、SiO2/Al2O3=5.5、Na/Al=1)をアルミノケイ酸塩反応に用いた。ゲルマノケイ酸塩反応には二酸化ゲルマニウム(99.98%、Alfa−Aesar)及びTEOSを用いた。
【0093】
フッ化物反応用ゲルは、ホウ酸又は水酸化アルミニウムゲル(必要な場合)をSDA+OH−溶液に加え、次にTEOSを加えることにより調製した。容器を覆い、一夜撹拌して、完全なTEOSの加水分解を保証し、次に40℃オーブン中で覆いを取り除いたままとして、必要な水及びエタノールを蒸発させた。所望の質量に達したならば、48重量%フッ化水素酸(Mallinckrodt)及び必要量の水を注意して加え、ゲルを撹拌して、堅いペーストを形成させた。オートクレーブを密閉し、150℃(又は175℃)オーブン中に入れ、7〜10日ごとに開けて、反応の進行を評価した。均質化した後、小試料を10mLの水に分散させ、光学顕微鏡下で検査した。H2O/SiO2=7.5及び14.5での特定の反応について、小結晶がしばしば見えた。光学顕微鏡により結晶性の明らかな兆候を認めることができなかった場合、小結晶を定期的にろ過し、XRDパターンを検査した(Scintag XDS−2000又はSiemens D−500、Cu Ka)。すべての反応を少なくとも60日までモニターし、結晶性物質が認められない場合には、生成物を非晶質と表示した。
【0094】
水酸化物反応用ゲルは、水、1N水酸化ナトリウム溶液(必要な場合)、ホウ素又はアルミニウム源、次にシリカを加え、手により均質化することにより調製した。NaOHの代わりにLiOH又はKOHを用い、150℃で化合物3を用いた純シリカ水酸化物反応により、NaOH反応と同じ生成物が得られたため、下で述べる生成物11を除いて、LiOH又はKOHを用いた追加の実験は実施しなかった。ホウケイ酸反応は、アルカリ水酸化物を用いずにSiO2/B2O3=8で行わせ(ゲル組成1.0SiO2:0.125B2O3:0.25SDA+OH−:23H2O)、残りの反応では、水含量をわずかに増加させて水酸化ナトリウムを加えた(ゲル組成1.0SiO2:xB2O3:0.20SDA+OH−:0.10NaOH:30.0H2O、ここで0.00 6 x 6 0.02)。
【0095】
SAR=35のNaYを用いたアルミノケイ酸塩反応でのゲル組成は1.0SiO2:0.029Al2O3:0.20SDA+OH−:yNaOH:30.0H2Oであり、y=0.25又は0.05であった(別のシリーズでNaOH含量を変化させた場合を除く)。残りの反応ではアルミニウム源として非構造化Reheis F−2000水酸化アルミニウムゲルを用い、ゲル組成は1.0SiO2:zAl2O3:0.20SDA+OH−:0.10NaOH:30.0H2Oであり、z=0.02又は0.01であった。最後に、いくつかのゲルマノケイ酸塩反応をゲル組成を1.0SiO2:0.11GeO2:0.5SDA+OH−:3.5H2Oとして170℃で実施した(転動せず)(A.Jackowski、S.I.Zones、S.J.Hwang、A.W.Burton、J.Am.Chem.Soc.、131巻(3号)(2009年)1092〜1100頁)。
【0096】
150℃での反応は、溶液のpHを測定し、相分離の兆候について確認することにより4〜6日ごとにモニターした(170℃反応については2日ごとに確認した)。pH最大値が認められるまで反応を確認し、次いでろ過した。pH最大値が認められなかった場合、持続的なpH低下(SDAの分解を示す)が認められるまで反応を継続させた。SiO2/B2O3=8でのいくつかの反応でpH測定を適用できなかった堅いペーストが生じた。これらの反応は45日後に停止させ、加熱し、他の反応と同様にろ過した。すべての粗生成物を水と少量のアセトン及びメタノールで洗浄し、次いで室温で乾燥した。
【0097】
特性評価
粉末X線回折(XRD)パターンは、Scintag XDS−2000及びSiemens D−500回折計(Cu Kα放射線)を用いて収集した。走査型電子顕微鏡検査法(SEM)は、JEOL JSM−6700F機器を用いて実施した。透過型電子顕微鏡検査法(TEM)は、JEOL 2010機器を用いて200kVの加速電圧で実施した。
【0098】
(例1)
構造指向剤1,3−ジイソブチルイミダゾリウムブロミド(1)の合成
【化6】
100mLのトルエン中イソブチルアミン(100mモル)を室温の水浴中に入れ、次に強く撹拌しながらパラホルムアルデヒド(100mモル)を加えた。溶液を室温で30分間撹拌し、次に氷を水浴に加えた。臭化水素酸溶液(100mモル、48重量%水溶液)を水で20重量%に希釈し、次に氷上に約1時間置いた。トルエン溶液を1時間冷却した後、別の7.32g(100mモル)のイソブチルアミンを滴下漏斗を介して滴下した。冷臭化水素酸溶液を滴下漏斗を介して滴下した。氷浴を除去し、溶液を約2時間加温し、次にグリオキサール溶液(100mモル、水中40重量%)を滴下した。反応物を室温で約36時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮して、粘稠な黄色/橙色油を得た。
【0099】
精製は、125mLの水及び20mLの飽和KHCO3を加え、ジエチルエーテル(2×100mL)で抽出することにより達成された。水相を1.55gの活性炭で処理し、室温で一夜撹拌した。炭素をろ別し、少量の水で洗浄した。ろ液が肉眼で無色になるまで、この処理過程を3回繰り返した。ろ液をロータリーエバポレーターにより濃縮し、残留物をクロロホルム(2×100mL)で抽出し、次にろ過した。クロロホルム抽出物を合わせ、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーターにより濃縮して、ワックス状残留物を得た。高真空中でのさらなる乾燥により、20.57gの灰色がかった白色の固体(78.7mモル、収率79%)を得た。
【化7】
【0100】
(例2)
構造指向剤1,3−ビス(シクロペンチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート(2)の合成
【化8】
147mLのトルエン中シクロペンチルアミン(147mモル)を室温の水浴中に入れ、次に強く撹拌しながらパラホルムアルデヒド(147mモル)を加えた。溶液を室温で30分間撹拌し、次に氷を水浴に加えた。1時間冷却した後、別の147mモルのシクロペンチルアミンを滴下漏斗を介して滴下した。テトラフルオロホウ酸(147mモル、水中48重量%)を30重量%に希釈し、次に滴下漏斗を介して滴下した。氷浴を除去し、溶液を約30分間加温し、次にグリオキサール溶液(147mモル、水中40重量%)を滴下した。フラスコを40℃で一夜加熱し、次に室温に冷却した。溶液を分液漏斗に移し、150mLのジエチルエーテル及び75mLの飽和NaHCO3溶液を加えた。上のエーテル/トルエン層を捨て、水相と油状残留物をクロロホルム(3×100mL)で抽出した。
【0101】
クロロホルム抽出物を合わせ、食塩水(100mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーターにより濃縮して、暗色のろう状残留物を得た。高真空中でのさらなる乾燥により、ろう状残留物は変化しなかった。残留物を乳鉢と乳棒を用いて微細に粉砕し、次にソックスレー装置を用いてジエチルエーテルで抽出した。抽出済み固体を4:1テトラヒドロフラン/酢酸エチルから再結晶化して、16.09gの淡黄褐色固体を得た。上の化合物1について述べた活性炭処理を用いたさらなる精製により、15.33gの淡黄色固体(52.5mモル、収率36%)を得た。
【0102】
【化9】
【0103】
(例3)
構造指向剤1,3−ビス(シクロヘキシル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート(3)の合成
【化10】
シクロヘキシルアミン(2×200mモル)を用いて、化合物2を合成するために例2で用いた手順に従った。冷却後、固体沈殿物が見られたため、沈殿物をろ別し、150mLの水で、次に150mLのジエチルエーテルで洗浄し、高真空中で一夜乾燥した。2:1酢酸エチル/ジクロロメタンから再結晶し、高真空中で乾燥した後に33.72gの灰色がかった白色の固体を得た(105.3mモル、収率53%)。
【0104】
【化11】
【0105】
(例4)
構造指向剤1,3−ビス(シクロヘプチル)イミダゾリウムブロミド(4)の合成
【化12】
シクロヘプチルアミン(2×110.4mモル)を用いて、化合物1を合成するために例1で用いた手順に従い、高真空中での乾燥の後に23.60gの白色固体を得た(69.1mモル、収率63%)。
【化13】
【0106】
(例5)
構造指向剤1,3−ビス(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)イミダゾリウムブロミド(5)の合成
【化14】
エキソ−2−アミノノルボルナン(2×19.1mモル)を用いて、化合物1を合成するために例1で用いた手順に従って3.69gの灰色がかった白色のろう状固体を得た(10.9mモル、収率57%)。
【化15】
【0107】
(例6)
構造指向剤1,3−ジメチルイミダゾリウムヨーダイド(6)の合成
【化16】
50mLの酢酸エチル(J.T.Baker、HPLC用)中1−メチルイミダゾール(4.11g、50mモル、Sigma−Aldrich、99%)を氷浴中で0℃に冷却した。冷却した時点で、ヨードメタン(7.77g、54.7mモル、Sigma−Aldrich、99%)を滴下漏斗を介して滴下した。溶液を室温に徐々に加温した。撹拌を約60時間継続し、次に溶液をろ過し、残留物をジエチルエーテルで洗浄した。生成物を高真空中で一夜乾燥して、10.74g(47.9mモル、収率96%)の白色固体を得た(さらに精製せずに用いた)。
【0108】
【化17】
【0109】
(例7)
構造指向剤1,3−ジエチルイミダゾリウムヨーダイド(7)の合成
【化18】
50mLの酢酸エチル中1−エチルイミダゾール(4.81g、50mモル、Sigma−Aldrich、99%)を氷浴中で0℃に冷却した。冷却した時点で、ヨードエタン(8.69g、55.7mモル、Sigma−Aldrich、99%)を滴下漏斗を介して滴下した。溶液を室温に徐々に加温し、次に一夜撹拌した。沈殿物をろ別し、ジエチルエーテルで洗浄した。ろ液を収集し、追加の8.96g(57.4mモル)のヨードエタンを加え、室温で6日間撹拌を継続した。溶液を再びろ過し、残留物をジエチルエーテルで洗浄した。合わせた固体を高真空中で一夜乾燥して、さらに精製せずに用いた9.76gの白色固体(38.7mモル、収率77%)を得た。
【0110】
【化19】
【0111】
(例8)
構造指向剤1,3−ビス(tert−ブチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート(8)の合成
【化20】
100mLのトルエン(EMD、ACS Reagent)中tert−ブチルアミン(7.32g、100mモル、Alfa−Aesar、98%)を室温の水浴中に入れ、次に強く撹拌しながらパラホルムアルデヒド(3.16g、100mモル、Fisher、95%)を加えた。溶液を室温で30分間撹拌し、次に氷を水浴に加えた。1時間冷却した後、別の7.32g(100mモル)のtert−ブチルアミンを滴下漏斗を介して滴下した。テトラフルオロホウ酸(18.30g、100mモル、Alfa−Aesar、水中48重量%)を9.16gの水で30重量%に希釈し、次に滴下漏斗を介して滴下した。氷浴を除去し、溶液を30分間加温し、次にグリオキサール溶液(14.488g、100mモル、Alfa−Aesar、水中40重量%)を滴下した。フラスコを40℃で一夜加熱し、次に室温に冷却した。溶液をろ過し、残留物を50mLの水及び100mLのジエチルエーテルで洗浄し、次に高真空中で一夜乾燥して、さらに精製せずに用いた13.28gの白色固体(49.5mモル、収率50%)を得た。
【0112】
【化21】
【0113】
(例9)
構造指向剤1,3−ビス(ペンタン−3−イル)イミダゾリウムブロミド(9)の合成
【化22】
3−アミノペンタン(2×70mモル、Alfa−Aesar、98%)を用いて、上の化合物1について述べた手順に従って14.82gの白色固体を得た(51.2mモル、収率73%)。
【化23】
【0114】
(例10)
構造指向剤1,3−ビス(シクロヘキシルメチル)イミダゾリウムブロミド(12)の合成
【化24】
シクロヘキサンメチルアミン(2×110.4mモル、Alfa−Aesar、98%)を用いて、上の化合物1についての手順に従って26.57g灰色がかった白色のろう状固体を得た(77.8mモル、収率70%)。活性炭処理を実施したとき、250mLの水と50mLのメタノールを用いて残留物を溶解した。
【0115】
【化25】
【0116】
(例11)
構造指向剤1,3−ビス(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート(1,3−ビス(イソオクチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート)(13)の合成
【化26】
2−アミノ−2,4,4−トリメチルペンタン(2×120mモル、TCI America、95%)を用い、上の化合物2についての手順に従い、ソックスレー抽出を省略した。ジクロロメタン/テトラヒドロフランからの再結晶化により、11.76gの灰色がかった白色の固体(30.9mモル、収率26%)を得た。
【0117】
【化27】
【0118】
(例12)
構造指向剤1,3−ビス(シクロオクチル)イミダゾリウムブロミド(10)の合成
【化28】
シクロオクチルアミン(2×98.3mモル、Alfa−Aesar、97+%)を用いて、化合物1についての手順に従って20.315gの灰色がかった白色の固体を得た(55.0mモル、収率56%)。化合物12についての手順と同様に、活性炭処理時にメタノールを加えて、残留物を溶解した。
【化29】
【0119】
(例13)
構造指向剤1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾリウムブロミド(11)の合成
【化30】
1−アダマンチルアミン塩酸塩(Alfa−Aesar、99%)の水溶液を水酸化カリウムで処理し、トルエンで抽出し、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーターにより濃縮して、30.3gの1−アダマンチルアミン(200mモル)を得た。反応物を45℃で一夜加熱したことを除いて、上の化合物1についての手順に従って26.23gの白色固体(62.8mモル、収率63%)を得た。活性炭処理を実施したとき、2:1水/無水エタノールを用いて残留物を溶解した。
【0120】
【化31】
【0121】
(例14〜26)
モレキュラーシーブの調製
アルミニウム含有モレキュラーシーブは、表1及び2に記載したモル比を有するゲル組成物を調製することにより、水酸化物の形のSDAs1〜5を用いて調製した。例7及び9〜13ではNaYゼオライトをアルミニウム源として用いている。ゲルをPTFE裏打ちParrオートクレーブ中に封入し、対流オーブン中で、表示した温度で加熱する。
【0122】
表3におけるすべての実験は静的であったが、表4における実験では40rpmで回転した。生成物を粉末X線回折により分析して、存在する相(単数又は複数)を確定した。
【表3】
【表4】
【0123】
X線回折
例14の合成されたままの状態のモレキュラーシーブのXRDパターンを図1に示す。540℃での焼成の後のXRDパターンを図2に示す。例18の合成したままの状態のモレキュラーシーブのXRDパターンを図3に示す。550℃での焼成の後のXRDパターンを図4に示す。
【0124】
束縛指数に関する結果
例24の合成されたままの状態の生成物を1N HClで100℃で48時間処理して(固体1gに対してHCl溶液10mL)、残留NaYゼオライトを中和し、次に焼成した。例14、15及び18の合成されたままの状態の物質を焼成して、収蔵有機物質を除去した。焼成済み物質を1M NH4NO3溶液と接触させ、ろ過し、水で洗浄し、次に乾燥した。アンモニウム交換物質をペレットとし、破砕し、20〜40メッシュにふるい分けした。物質を流通He中で≧350℃で一夜処理して、水素形(hydrogen form)を得た。束縛指数試験の結果を図5(例14、15、18及び24についての流し時間の関数としての分解速度を示す)、並びに図6(例14、15、18及び24についての流し時間の関数としての束縛指数を示す)に示す。
【0125】
ミクロ細孔容積
例14及び18の焼成済み物質のミクロ細孔容積は、Micromeritics ASAP 2000機器で77Kの窒素を用いて得た。アンモニウム交換焼成済み物質を分析の前に350℃で一夜脱気した。ミクロ細孔容積は、機器ソフトウエアにおけるtプロット法オプションを選択することにより計算した。結果を表5に示す。
【表5】
【0126】
(例27〜72)
最初の無機反応により得られた相
150℃での最初の無機反応スクリーニングから得られた相を表5〜9に示し、図7及び8によりさらに示す。図7に最初のSSZ−70の特性評価に関する追加データを示し、SDA化合物1を用いたフッ化物反応により合成されたままの状態のSSZ−70のXRDパターンを示す。図7における図は、上から下にAl−SSZ−70、B−SSZ−70及びSi−SSZ−70を示す。図7におけるSSZ−70のXRDパターンは、2θが約3.3、6.6、7.2及び8.6°の低角度反射を示す。最初の反射は、約27Åのd間隔に対応し、比較的広い形状は、各微結晶に含まれている繰返し単位が少数であることを示唆している。
【0127】
これらの特徴は、層状物質と一致しており、これは、SDA化合物3を用いたフッ化物反応によるSi−SSZ−70の走査型電子顕微鏡写真である、図8に示すような薄い相互貫入面を示すSEM像によりさらに裏付けられている。
【0128】
純シリカフッ化物反応条件を用いることによる結果を表6に示し、SSZ−70がSDA化合物1〜5により形成されることを示している。わかるように、BEA*及びMTWのような相が頻繁に出現し、BEA*がH2O/SiO2=3.5で特に一般的である。H2O/SiO2=14.5におけるビス(シクロペンチル)SDA(すなわち、化合物2)の欄は、52日における層状SSZ−70+EUOから72日までのさらなる加熱によるEUO+少量のSSZ−70への転換を示した。中間希釈反応物も72日まで加熱したが、SSZ−70のみが現れた。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0129】
(例73)
SSZ−70の合成及び特性評価
表11及び12にSSZ−70を合成するために用いた条件を示す。可能な場合、同じSDAを用いて合成したSSZ−70物質について特性評価を行った。大部分の反応にビス−(イソブチル)SDA1を用いた。その理由は、この分子が、純シリカ、ホウケイ酸塩及びアルミノケイ酸塩SSZ−70を合成することができたためであった。高い水対シリカ比でSDA1を用いた純シリカフッ化物反応も化学分析による比較に含めた。SDA1は、水酸化物媒介反応条件下で純Si−SSZ−70をもたらさず、したがって、ビス−(シクロヘキシル)SDA3又はビス−(シクロヘプチル)SDA4を用いたSi−SSZ−70(OH)を用いた。生成物は、適切な合成条件を示すために(OH)又は(F)で表示した。窒素吸着実験は、SDA3を用いて合成したSi−SSZ−70(OH)を用いて行い、一方、29Si NMR分析は、SDA4を用いて合成したSi−SSZ−70(F)及びSi−SSZ−70(OH)を用いて行った。炭化水素吸着は、SDA1を用いて合成したAl−SSZ−70(F)を用いて実施した(表11の5番目)。
【表11】
【表12】
【0130】
粉末XRDパターンを調製されたままの状態及び焼成済みのSSZ−70について図8〜10に示す。粉末XRDパターンの検討により、MWW前駆物質から得られたものとの類似性が明らかである。図8にSDA1を用いてフッ化物及び水酸化物媒体中で合成されたままの状態のAl−SSZ−70(それぞれAl−SSZ−70(F)及びAl−SSZ−70(OH))のXRDパターンを示す。また図8に代表的MWW物質としての調製されたままの状態のSSZ−25のXRDパターンを含める。
【0131】
3つの物質のすべてが2θ26°にかなり鋭い反射を示し、このことから類似の構造的特徴が両物質に存在し得ることが示唆される。XRDパターンからMWWとSSZ−70との間のいくつかの類似性が明らかである(図8に示すように)が、160種の無機反応を通して試験された16種のイミダゾリウムSDAsを用いて実施された多くの合成のいずれからもMWWの例は存在しなかった(Archer R.H.;Zones S.I.;Davis M.E.、Microporous Mesoporous Mater.、130巻(2010年)255〜265頁)。
【0132】
図9は、2〜12°の2θ範囲における図8に示したXRDパターンの拡大である。調製されたままの状態の生成物のパターンは、大きいd間隔(2θが3.22°、27.4オングストローム)を有する1つの反射を示し、いくつかの整数の約数も存在する。Al−SSZ−70(OH)のパターンは、SSZ−25及びAl−SSZ−70(F)よりかなり広く、低角度反射は、弱いショルダーとして出現する。水酸化物物質における広い反射は、より小さい結晶径(SEM結果から)に起因している可能性がある。図9における低角度の特徴の検討により、MWW材料と比較してSSZ−70のd間隔がより高いことが明らかである。MWWと比較してXRDパターンのこの領域におけるより高いd間隔がITQ−30についても報告された(Corma A.;Diaz−Cabanas M.J.;Moliner M.;Martinez C.J.Catal.、2006年、241巻(2号)、312〜318頁)。水酸化物及びフッ化物媒介生成物のパターンを比較することにより、フッ化物生成物について2θが8.7°における1つの広い反射があり、一方、水酸化物生成物は2θが7.9及び9.5°に2つの反射を示すことを除いて、すべての反射が同じd間隔であることを明らかにした。
【0133】
この回折強度の差は、MCM−22及びMCM−56のDIFFaXシミュレーション(Juttu G.G.;Lobo R.F.、Microporous Mesoporous Mater.、2000年、40巻(1〜3号)、9〜23頁)で認められたようにc方向(層に対して直角)に沿った結晶サイズの差に起因する可能性がある。図10にSDA1を用いてフッ化物媒体中で合成した焼成済みSSZ−70物質のXRDパターンを示す。純シリカ(Si−SSZ−70(F))、ホウケイ酸塩(B−SSZ−70(F))及びアルミノケイ酸塩(Al−SSZ−70(F))物質を示す。Si−SSZ−70(F)及びAl−SSZ−70(F)について、調製されたままの状態の物質に存在する2つの低角度反射(2θ3.2及び6.5°)は、焼成後の強度の低下に伴って不存在又は出現する。最初の大きな反射は、両物質において7.0°の2θ(約12.5オングストローム)に存在する。これと対照的に、相対強度はより低かったが、B−SSZ−70(F)については低角度反射(2θ3.2及び6.5°)が焼成後に存続している。両低角度反射は、B−SSZ−70(OH)を焼成した後には認められなかった。
【0134】
固体状態29Si NMRは、Si−SSZ−70(F)及びSi−SSZ−70(OH)について実施した。スペクトルは、ビス(シクロヘプチル)SDA4を用いて得られた試料について収集した。図11に調製されたままの状態の1H−29Si交差分極マジック角スピニング(CP MAS)及び29Siブロッホ減衰(BD MAS)スペクトルを示す。
【0135】
Si−SSZ−70試料。調製されたままの状態の固体の両スペクトルは、大きいQ3ケイ素含量を示している(−94ppm共鳴)。CP及びBDスペクトルの比較により、CP条件(接触時間2m秒)下での−116及び−120ppm共鳴の相対強度がより高く、−108ppm共鳴の相対強度が低いことが明らかである。フッ化物媒介試料における共鳴は、はっきりしており、ITQ−1について報告されているもの(Camblor M.A.;Corma A.;Diaz−Cabanas M.J.;Baerlocher C.J.Phys.Chem.B、1998年、102巻(1号)、44〜51頁、Camblor M.A.;Corell C.;Corma A.;Diaz−Cabanas M.J.;Nicolopoulos S.;Gonzalez−Calbet J.M.;Vallet−Regi M.、Chem.Mater.、1996年、8巻(10号)、2415〜2417頁)と同様な化学シフト範囲に及んでいる。図12に示す焼成済みSi−SSZ−70(F)のスペクトルは、6つの十分に分解された共鳴を示し、少量のQ3ケイ素がまだ存在している。
【0136】
表13に調製されたままの状態のSi−SSZ−70物質の観測された化学シフトを示す。相対強度は、BD MASスペクトルの積分により求めた。
【表13】
【0137】
一般的に、Si−SSZ−70試料の共鳴は、ITQ−1の共鳴ほど十分に分解されていない。これは、水酸化物媒介試料について特に当てはまる。それらの不十分な分解能はデコンボリューション(deconvolution)するに値するものでなかったので、スペクトルをデコンボリューションする試みはしなかった。したがって、より少数の化学シフトが表13に含められている。相対強度の検討により、水酸化物及びフッ化物媒介試料の両方においてQ3シリカ種の大きい集団があることがわかる。各試料の<−100ppmの共鳴は、Q3によるものとすることができるが、−105ppmに近い共鳴に関して多少の不明確さがあった。図12に示す焼成済みSi−SSZ−70(F)のスペクトルは、−105ppm共鳴を明確に示しているが、−95ppm共鳴は、著しく減弱している。この結果は、調製されたままの状態の物質における約10%の相対的なQ3の存在度を与えるためには、−105ppm共鳴がQ4であることを示唆するものである。
【0138】
水酸化物媒介物質の−104ppmに中心がある広い共鳴は、Q3又はQ4に確定的に帰属させることができず、推定される相対的Q3集団は約22〜28%となる。水酸化物媒介試料におけるQ3含量の推定値の上限は、ITQ−1について報告されたもの(29〜33%)と概して一致している。調製されたままの状態のSi−SSZ−70(F)については、フッ化物反応は一般的に非常に少ない欠陥を有する固体を生成する(低Q3)ので、相対的Q3集団を比較するための類似物質は存在しなかった。さらに、調製されたままの状態のSi−SSZ−70(F)中に−130ppmと−150ppmとの間にSiO4/2F種の証拠は認められなかった。化学分析では、下で述べるようにフッ素の取込みは示されなかった。
【0139】
アルカリフッ化物塩を用いたMWWの合成の報告でSiO3/2Fが存在し得ることが提唱された(Aiello R.;Crea F.;Testa F.;Demortier G.;Lentz P.;Wiame M.;Nagy J.B.、Microporous Mesoporous Mater.、2000年、35〜6巻、585〜595頁)が、Si−SSZ−70に存在するフッ化物種の正確な性質は明確には理解されていない。この解釈により、フッ素が表面ヒドロキシル基を置換し、したがって、相対的Q3/Q4比をゆがませ得る。19F MAS NMRで−69ppmにおける1つの優勢な共鳴が示され(データは示さず)、これがSiO4/2Fの予想された範囲内にあることは注目すべきである(Koller H.;Wolker A.;Villaescusa L.A.;Diaz−Cabanas M.J.;Valencia S.;Camblor M.A.、J.Am.Chem.Soc.、1999年、121巻(14号)、3368〜3376頁)。
【0140】
表14に示す焼成済みSi−SSZ−70(F)の化学シフト及び相対強度は、いくつかの相違点を示している。
【表14】
【0141】
上述のように、焼成によりすべてのQ3種が完全に除去されなかった。さらに、−108.3ppmにおける調製されたままの状態の生成物の共鳴は、焼成済み生成物のスペクトルには見られない。これらの所見と1H−29Siスペクトルの強度の相対的低下という事実は、SiO3/2F種の存在を示し得るものである。観測された化学シフト及び相対強度は、ITQ−1との類似性を示している。
【0142】
Si−SSZ−70(F)及びAl−SSZ−70(OH)のSEM像を図13に示す。薄い六角形の平面がフッ化物媒介反応生成物に見られた。比較すると、水酸化物媒介生成物は、著しくより小さい微結晶を示した。MWW物質は、同様な形態を有する結晶を形成する。観察された結晶の形態は、MWW物質との類似性を裏付けている(類似性はXRD及び29Si NMRによっても認められた)。図14に結晶面の縁を通しての視野を有するB−SSZ−70の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。層が明確に認められる。より高倍率の像は、MCM−22(Leonowicz M.E.;Lawton J.A.;Lawton S.L.;Rubin M.K.、Science、1994年、264巻(5167号)、1910〜1913頁)及びSSZ−25(Chan I.Y.;Labun P.A.;Pan M.;Zones S.I.、Microporous Mater.、1995年、3巻(4〜5号)、409〜418頁)について認められたような細孔の特徴を示さなかった。
【0143】
化学分析は、さらなる洞察を得るためにSSZ−70物質について実施した。すべての試料をビス(イソブチル)SDA1を用いて合成した。典型的なフッ化物媒介反応生成物を代表するH2O/SiO2=14.5で合成した純シリカMTWも含めた。表15にフッ化物媒介反応による純シリカ生成物の化学分析データを示し、表16にB−SSZ−70及びAl−SSZ−70物質の化学分析を含める。
【表15】
【表16】
【0144】
炭素対窒素モル比の計算値は、親SDA(parent SDA)について予想されたものと一致している。さらに、イミダゾリウム(135〜120ppm)及びアルキル共鳴(60〜20ppm)がSSZ−70固体における13C CP−MAS NMRにより観測された(図15)。これらの結果は、SDAが完全であったことを確認するものである。
【0145】
フッ素対窒素モル比の計算値を表15及び16に示し、すべてのF/N比をSDA+F−塩の理論的F/N値(試験したすべてのイミダゾリウムSDAsについて0.50)と比較することができる。この値は、有機陽イオンの電荷の均衡を保つための骨格欠陥を持たない中性生成物に対応する。1を用いて合成したMTWは、無骨格欠陥について予測された値に非常に近かったF/N=0.55を示した。比較すると、2つのSi−SSZ−70生成物は、著しくより低いF/N比を示し、これがホウ素及びアルミニウムを含む物質に及んでいる。フッ素が存在しないことは、上で29Si NMRにより観測されたようにシラノール欠陥により有機電荷の均衡を保たなければならないことを意味する(Koller H.;Lobo R.F.;Burkett S.L.;Davis M.E.、J.Phys.Chem.、1995年、99巻(33号)、12588〜12596頁)。
【0146】
表16におけるB−SSZ−70(F)、Al−SSZ−70(F)及びAl−SSZ−70(OH)の化学分析は、7つの生成物にわたり非常に類似した有機物含量を示している。炭素対窒素モル比は、5.6から5.8までの間にあり、5.5という予測された比とよく一致している。純シリカ及びアルミノケイ酸塩試料と比較してホウケイ酸塩試料でわずかにより高いフッ素含量が測定された。三価格子置換(B又はAl)により、骨格電荷が導入され、陽イオンの電荷の均衡を保つのにフッ素はもはや必要でない。しかし、F/N比の計算値は、それぞれホウ素及びアルミニウムの両方の取込みのための格子置換によりほとんど変動を示していない。さらに、3つすべてのアルミノケイ酸塩試料のF/N比は、純シリカ生成物とほぼ同じである。以前に公表されたヘキサメチレンイミンとアルカリフッ化物塩を用いたMCM−22の合成の報告で、様々な量のフッ化物がアルミノケイ酸塩生成物に組み込まれたことが示された(Aiello R.;Crea F.;Testa F.;Demortier G.;Lentz P.;Wiame M.;Nagy J.B.、Microporous Mesoporous Mater.、2000年、35〜6巻、585〜595頁)。ほぼ中性反応条件下では、第二級アミンはプロトン化され、類似の陽イオン/骨格電荷理論が適用できるはずである。
【0147】
調製されたままの状態の生成物において測定されたSi/B及びSi/Al比の検討により、反応ゲル中に存在するよりも少ないホウ素の取込みが明らかである。比較すると、フッ化物及び水酸化物状態を経て合成されたアルミノケイ酸塩生成物は、反応ゲルにおけるのとほぼ同じSi/Al比を示している。これらのデータは、同じSDAを用いた水酸化物反応による生成物におけるホウ素及びアルミニウムの取込みの報告された傾向(Zones S.I.;Hwang S.−J.、Microporous Mesoporous Mater.、2003年、58巻(3号)、263〜277頁)と一致している。両水酸化物媒介生成物の化学分析で、多少のナトリウムの取込みが示されている。実測Na/Al値は、Si/Al=50及びSi/Al=25についてそれぞれ約0.25及び0.11に対応しており、骨格電荷がアルカリよりむしろSDAによって主として補償されていたことが示唆される。これは、大きいアダマンチルSDAが洞様(sinusoidal)10MRに適合すると予想されなかったSSZ−25(Zones S.I.;Hwang S.J.;Davis M.E.、Chem.−Eur.J.、2001年、7巻(9号)、1990〜2001頁)と対照的に、有機物がSSZ−70内の空隙のほとんどを占有することを示唆する。
【0148】
化学分析に加えて、TGAをSSZ−70生成物について実施した。図16でSDA1及びSDA3を用いて合成したSi−SSZ−70(F)のTGプロファイルを比較する。両物質は200℃から620℃までに非常に類似した質量損失を示す(SDA1については19.3%、SDA3については20.4%)が、質量損失プロファイルは異なっている。より小さいビス(イソブチル)SDA1は、約250℃で始まる1つの質量損失を有するが、より大きいビス(シクロヘキシル)SDA3については2つの質量損失領域が認められる。最初の質量損失がSDA1により約250℃で始まり、約425℃の変曲点があり、続いてもう1つの質量損失がある。より大きいSDAについて2つの質量損失領域が観測されることは、2つの異なる有機環境を示している可能性がある。合成されたままの状態のSSZ−70については層状物質である可能性が最も高く、第1の質量損失は、層間に収蔵された有機物に帰すことができ、第2の質量損失は、層内に収蔵された有機物に帰せられた。より小さいSDAについて1つの質量損失が観測されることは、より低い熱防護をもたらす骨格内のより弱いはめ合いに起因していた可能性がある。各有機環境の相対的寄与への洞察を得るために、SDA3を用いて合成したAl−SSZ−70試料についていくつかの合成後実験を実施した。試料は、SAR=35のNaYをアルミニウム源として用いる反応条件から得て、実験の項で述べるように残留FAU種を中和するために生成物を1N HClで処理した。
【0149】
最初の実験では、DMF抽出によるSDAの除去を検討した。SSZ−25についての同様な実験で、DMF抽出後の有機物の除去及びXRDパターンの著しい変化が示された(Zones S.I.;Hwang S.J.;Davis M.E.、Chem.−Eur.J.、2001年、7巻(9号)、1990〜2001頁)。試験したAl−SSZ−70物質については抽出後の有機物の除去はTGAにより検出されなかった。さらに、XRDパターンは、親物質と同じであった。DMF抽出により有機物が除去できなかったことから、抽出により有機物が一般的に除去されない伝統的なゼオライトと同様な有機/骨格環境が示唆される。第2の実験では、低温重量損失領域に関連する有機物種を除去するために調製されたままの状態のAl−SSZ−70物質を熱処理した(図17)。
【0150】
TGAプロファイルの検討により、350℃は第1の環境に存在する有機物を除去するのに十分なものであり、350℃は第2の環境の質量損失の始まりより約75℃低いことが示された。試料を空気中350℃で5時間加熱した後に、425℃以下のすべての有機物が除去され、XRDパターンが明らかな相違を示した。DMF抽出及び熱処理後の試料のTGAプロファイル及びXRDパターンをそれぞれ図17及び18に示す。約7重量%の有機物が収蔵されたままであったが、XRDパターンは焼成済みAl−SSZ−70(OH)に類似していた。この熱処理済み物質をアンモニウム交換し、下記のようにミクロ細孔容積及び触媒活性について評価した。
【0151】
SSZ−70生成物のミクロ細孔容積は、窒素吸着を用いて得た。検討したすべてのSSZ−70試料は、SDA3を用いたSi−SSZ−70(OH)及びSDA3を用いて合成した試料を350℃で処理したAl−SSZ−70(OH)を除いて、SDA1を用いて合成した。表17に各SSZ−70物質のミクロ細孔容積を示す。
【表17】
【0152】
表17におけるデータは、フッ化物媒介生成物と水酸化物媒介生成物との間に明らかな差異を示しており、3つすべてのフッ化物媒介生成物について0.20cm3g−1のミクロ細孔容積が観測され、水酸化物媒介生成物について0.09〜0.14cm3g−1が得られた。フッ化物生成物のミクロ細孔容積は、MWW物質について報告されたもの(0.17〜0.18cm3g−1)(Camblor M.A.;Corell C.;Corma A.;Diaz−Cabanas M.−J.;Nicolopoulos S.;Gonzalez−Calbet J.M.;Vallet−Regi M.、Chem.Mater.、1996年、8巻(10号)、2415〜2417頁)と同様である。350℃で処理した物質は、焼成済みAl−SSZ−70(OH)物質のミクロ細孔容積の約2/3を示す。この有機物が層間領域に存在すると仮定すると、これが、約0.12cm3g−1のミクロ細孔容積が層間に形成された大きいケージに帰せられたSSZ−25について報告されたのと同様な寄与をもたらす。
【0153】
可能な細孔径への洞察を得るために、炭化水素吸着を実施した。図19にSSZ−70及びSSZ−25におけるn−ヘキサン、3−メチルペンタン及び2,2−ジメチルブタンの吸着容量の時間依存性を示す。これらの3つの分子の動力学的直径は、n−ヘキサンで4.4オングストローム、3−メチルペンタンで5.0オングストローム、2,2−ジメチルブタンで6.2オングストロームである。SSZ−70及びSSZ−25におけるn−ヘキサン及び3−メチルペンタン(両方が下で述べる束縛指数試験の反応物である)の速やかな取込みは、これらの2つの吸着物の分子の拡散がこれらの2つのゼオライトのチャンネル系において妨げられないことを示すものである。これらの結果はまた、SSZ−70及びSSZ−25の束縛指数試験において起こるn−ヘキサン及び3−メチルペンタンの接触分解反応が、反応物の形状選択性によって支配されないことを意味する。SSZ−70及びSSZ−25で認められた2,2−ジメチルブタンの遅い取込みは、10員環ゼオライトについて以前に報告されたように(Chen C.Y.;Zones S.I.、Microporous Mesoporous Mater.、2007年、104巻(1〜3号)、39〜45頁、Zones S.I.;Chen C.Y.;Corma A.;Cheng M.T.;Kibby C.L.;Chan I.Y.;Burton A.W.、J.Catal.、2007年、250巻(1号)、41〜54頁)、SSZ−70及びSSZ−25の細孔の開口部の有効サイズが、よりかさばった2,2−ジメチルブタン分子の拡散性に特に決定的に重要な意味を持つようになることを示すものである。したがって、これらの結果から、SSZ−70が中間細孔ゼオライトであることが示唆される。
【0154】
触媒活性。束縛指数試験は、モデル酸触媒炭化水素反応として用いた。4つのAl−SSZ−70物質、すなわち、SDA1を用いて合成したAl−SSZ−70(F、Si/Al=26)及びAl−SSZ−70(OH、Si/Al=22)とSDA2を用いて合成したAl−SSZ−70(OH)及び350℃処理物質を試験した。SSZ−70について上で略述した物理化学的特性評価で、MWW物質との類似性が示され、したがって、SSZ−25を比較のために含めた(SSZ−25のCI試験反応は330℃で実施した)。図20に流し時間(TOS)の関数としての分解速度を示す。CI試験挙動に関するより包括的な試験の結果として、BEA*と同等であり、MFIより大きく、その後に速やかな不活性化が続くSSZ−25の高い初期活性が報告された(Carpenter J.R.;Yeh S.;Zones S.I.;Davis M.E.、J.Catal.印刷中)。
【0155】
ここに示した3つのSSZ−70物質は、同様に挙動する。TOSに伴う不活性化は、SSZ−25と同様の経路をたどる。350℃処理物質は、初期速度は活性部位の数がより低いために他のすべての物質より著しく低かったが、同じ不活性化傾向を示す。これらのデータから、MWW物質との類似性が示唆されるが、図21に示すCI値対TOS関係は、SSZ−70とSSZ−25との間の明らかな差異を示している。すべての物質が1未満の初期CI値を示し、SSZ−25は、以前に記載されたように速やかな増加をもたらす(Zones S.I.;Harris T.V.、Microporous Mesoporous Mater.、2000年、35〜6巻、31〜46頁)。それに反して、すべてのSSZ−70物質は、反応を通して1.2未満のCI値を維持している。SSZ−25のTOS挙動に関して、2つの独立した細孔系の不活性化速度が異なり、これが、変化するCI値を生じさせるとみなされた。両細孔系が初期の反応性に寄与し、より出入りし易いMWWケージが洞様細孔系を支配していると思われる。ケージ内にある活性部位による高い初期活性が洞様細孔の反応性を覆い隠している可能性がある。付着物によりケージ内の活性部位が不活性化されたとき、洞様細孔が、中間細孔物質について予測される範囲(1<CI<12)へのCI値の増加をもたらす比較的により高い反応性に関与し得る。350℃でのn−ヘプタン分解におけるMWWの不活性化は、スーパーケージ内にのみ形成される炭素質の沈着物を示し、洞様チャンネルにおける不活性化は認められなかった(Matias P.;Lopes J.M.;Laforge S.;Magnoux P.;Guisnet M.;Ribeiro F.R.、Appl.Catal.、A 2008、351巻(2号)、174〜183頁)。すべてのSSZ−70物質が、同様の空洞の存在を示唆する同様の分解速度の不活性化を示すが、物質が不意活性化するときのCI値の増加がないことは、MWWで認められた洞様10MR細孔と異なる第2の細孔系を示唆するものである。
【0156】
要約すると、いくつかの実施形態において、モレキュラーシーブを調製する方法及びそれにより得られたモレキュラーシーブを記述している。本方法は、構造指向剤、三価元素の少なくとも1つの酸化物の少なくとも1つの供給源、所望により、三価元素、五価元素及びそれらの混合物の酸化物からなる群から選択される1つ又は複数の酸化物の1つ又は複数の供給源、所望により、周期表の第1及び第2族から選択される元素の少なくとも1つの供給源、並びに所望により、水酸化物イオン又はフッ化物イオンを含む反応混合物を調製するステップ、並びに反応混合物をモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な条件下で保持するステップを含む。本方法において、種々のイミダゾリウム陽イオンを構造指向要素として用いる。
【0157】
上で示した実施例は、モレキュラーシーブ、構造剤の実施形態をどのように調製し、使用するかの完全な開示及び記述、本開示の方法及びシステムを当業者に示すために記載するものであって、発明者らがそれらの開示とみなすものの範囲を限定するものではない。当業者に明らかである該開示を実施する上述の態様の変更は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
【0158】
本明細書で言及したすべての特許及び刊行物は、本開示が属する分野の技術者の技術水準を示すものである。
【0159】
背景、概要、詳細な説明及び実施例において引用した各文書(特許、特許出願、雑誌論文、要約、実験マニュアル、書籍又は他の開示)の全開示は、各参考文献がその全体として個別に参照により本明細書に組み込まれたのと同じ程度に、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0160】
本開示は、もちろん変化し得る特定の組成物又は化学的システムに限定されないことを理解すべきである。本明細書で用いた用語は、特定の実施形態のみを記述する目的のためであって、限定されるものでないことも理解すべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いているように、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が他の状態を明確に示すものでない限り、複数の指示対象を含む。「複数」という用語は、内容が他の状態を明確に示すものでない限り、2つ以上の指示対象を含む。特に定義しない限り、本明細書で用いたすべての技術及び科学用語は、本開示が属する分野の技術者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0161】
さらに、特に指定しない限り、個々の成分又は成分の混合物を選択することができる、元素、物質又は他の成分の属の列挙は、列挙された成分及びそれらの混合物のすべての可能な下位の属の組合せを含むものである。また、「含む」、「包含する」及びそれらの変形は、リストにおける項目の列挙が、本開示の物質、組成物及び方法においても有用であり得る他の同様な項目の排除につながらないような非限定的であるものとする。
【0162】
本明細書で述べたものと同様又は同等の方法及び物質を本開示の生成物、方法及びシステムの試験の実施に用いることができるが、具体例としての適切な物質及び方法を、例として、また手引きの目的のために本明細書に記載する。
【0163】
本開示の多くの実施形態を記載した。それにもかかわらず、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることは理解されるであろう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照。
本出願は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれている、2009年4月9日に出願した米国仮出願第61/167,968号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、モレキュラーシーブ及び関連する方法及び構造指向剤(structure directing agent)に関する。
【背景技術】
【0003】
モレキュラーシーブは、化学産業においてガス流精製及び炭化水素変換工程などの工程に用いられている重要な物質の一群である。モレキュラーシーブは、同じ又は異なるサイズの相互に連結した細孔を有する多孔質固体である。モレキュラーシーブは、一般的に、細孔に入ることができる分子を選択的に吸着し、大きすぎる分子を排除する1個又は複数の分子の大きさの細孔を有する一、二又は三次元結晶性細孔構造を有する。細孔の大きさ、細孔の形状、間隙又はチャンネル、組成、結晶の形状及び構造は、種々の炭化水素吸着及び変換工程におけるそれらの使用を決定するモレキュラーシーブのいくつかの特性である。
【発明の概要】
【0004】
モレキュラーシーブ、並びに関連する方法及び構造指向剤を本明細書で述べる。特に、いくつかの実施形態において、種々のイミダゾリウム陽イオンなどの構造指向剤を用いる、水酸化物媒体中で種々のモレキュラーシーブを調製する方法により得られるモレキュラーシーブを記載する。
【0005】
本開示の実施形態によれば、モレキュラーシーブを調製する方法及びそれにより得られるモレキュラーシーブが提供される。該方法は、四価元素の少なくとも1つの酸化物の少なくとも1つの供給源、及び以下のイミダゾリウム陽イオン(I)
【化1】
[式中、Rは、イソプロピル以外の直鎖若しくは分枝アルキル、シクロオレフィン(環状オレフィン)、二環式アルキル及び三環式アルキル又はアリールであり得る置換基である]を含む構造指向剤を含む反応混合物を調製するステップを含む。反応混合物は、所望により、三価元素、五価元素及びそれらの混合物の酸化物からなる群から選択される1つ又は複数の酸化物の1つ又は複数の供給源、所望により、周期表の第1及び第2族から選択される元素の少なくとも1つの供給源、並びに所望により、水酸化物イオン又はフッ化物イオンを所望により含でいてよく、続いて、反応混合物を、モレキュラーシーブの結晶を形成し、それにより、合成されたままの状態のモレキュラーシーブを得るのに十分な条件下で保持する。
【0006】
本開示の実施形態によれば、モレキュラーシーブの調製の工程に有用な様々な構造指向剤、具体的には以下のイミダゾリウム陽イオン(I)
【化2】
[式中、Rは、イソプロピル以外の直鎖若しくは分枝アルキル、シクロオレフィン、二環式アルキル及び三環式アルキル又はアリールであり得る置換基である]を含む構造指向剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本開示の一実施形態による1つの合成されたままの状態の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0008】
【図2】本開示の一実施形態による1つの焼成済み生成物のXRDパターンを示す図である。
【0009】
【図3】本開示の一実施形態による他の一の合成されたままの状態の生成物のXRDパターンを示す図である。
【0010】
【図4】本開示の一実施形態による他の一の焼成済み生成物のXRDパターンを示す図である。
【0011】
【図5】本開示の実施形態によるいくつかの生成物の流し時間(time on stream)の関数としての分解速度を示す図である。
【0012】
【図6】本開示の実施形態によるいくつかの生成物の流し時間の関数としての束縛指数(constraint index)を示す図である。
【0013】
【図7】本開示の一実施形態による追加の合成されたままの状態の生成物のXRDパターンの追加の実例を示す図である。
【0014】
【図8】本開示の一実施形態による追加の合成されたままの状態の生成物(SSZ−25(上)、Al−SSZ−70(F)(中)及びAl−SSZ−70(OH)(下))のXRDパターンを示す図である。
【0015】
【図9】本開示の一実施形態による追加の合成されたままの状態の生成物(SSZ−25(上)、Al−SSZ−70(F)(中)及びAl−SSZ−70(OH)(下))のXRDパターンを示す図である。
【0016】
【図10】本開示の一実施形態による追加の焼成済み生成物(Si−SSZ−70(F)(上)、Al−SSZ−70(F)(中)及びB−SSZ−70(F)(下))のXRDパターンを示す図である。
【0017】
【図11】本開示の一実施形態により得られた生成物Si−SSZ−70の固体状態29SiNMRスペクトルを示す図である。上から下へ:Si−SSZ−70(OH)CP−MAS、Si−SSZ−70(OH)BD−MAS、Si−SSZ−70(F)CPMAS及びSi−SSZ−70(F)BD−MAS。
【0018】
【図12】本開示の一実施形態により得られた焼成済み生成物Si−SSZ−70(F)の固体状態29SiBD−MAS NMRを示す図である。
【0019】
【図13】本開示の実施形態により得られた合成されたままの状態のSi−SSZ−70(F)(左)及び焼成済みAl−SSZ−70(OH)(右)の走査型電子顕微鏡写真である。スケールバーは、左右の画像に対してそれぞれ10及び1マイクロメートルを表す。
【0020】
【図14】本開示の一実施形態による1つの合成されたままの状態の生成物の透過型電子顕微鏡写真である。
【0021】
【図15】本開示の一実施形態により合成されたSSZ−70固体の13CCP−MASを示す図である。上から下へ:DMSO−d6中親SDA(*は溶媒を示す)、B−SSZ−70(OH)、B−SSZ−70(F)、Al−SSZ−70(F)及びAl−SSZ−70(OH)。
【0022】
【図16】本開示の実施形態により得られた合成されたままの状態の生成物Si−SSZ−70(F)のTGAを示す図である。
【0023】
【図17】合成後処理の前後における、本開示の実施形態により得られたAl−SSZ−70(OH)のTGAを示す図である。
【0024】
【図18】合成後処理の前後における、本開示の一実施形態により合成されたAl−SSZ−70(OH)のXRDパターンを示す図である。下から上へ:親物質、DMF抽出済み及び350℃処理済み。
【0025】
【図19】本開示の実施形態により得られたSSZ−70及びSSZ−25物質の炭化水素吸着対時間を示す図である。3−MPは、3−メチルペンタンであり、2,2−DMBは、2,2−ジメチルブタンである。
【0026】
【図20】本開示の実施形態により得られたAl−SSZ−70物質のCI試験分解速度対流し時間を示す図である。
【0027】
【図21】本開示の実施形態により得られたAl−SSZ−70物質の束縛指数対流し時間を示す図である。Al−SSZ−70(OH−1)=SDA1を用いて合成されたAl−SSZ−70(OH)であり、Al−SSZ−70(OH−2)=SDA2を用いて合成されたAl−SSZ−70(OH)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
モレキュラーシーブ及び関連する方法及び構造指向剤を本明細書に記載する。
【0029】
「モレキュラーシーブ」という用語は、同じ又は異なるサイズの相互に連結した細孔を有する多孔性固体を示し、(a)中間及び(b)最終又は目標モレキュラーシーブ、並びに(1)直接合成又は(2)結晶化後処理(二次合成)により製造されるモレキュラーシーブを含む。二次合成法は、酸浸出又は他の同様な脱アルミニウム法による中間物質からのより高いSi:Al比を有する目標物質の合成を可能にする。
【0030】
石油及び石油化学産業などの産業において特に有用なモレキュラーシーブは、ゼオライトである。ゼオライトは、[SiO4]及び[AlO4]四面体又は八面体の酸素原子を共有する開骨格構造を有するアルミノケイ酸塩である。可動性骨格外陽イオン(mobile extra framework cation)は、ゼオライト骨格に沿った電荷の均衡を保たせるために細孔内に存在する。これらの電荷は、四面体骨格陽イオン(例えば、Si4+)の三価又は五価陽イオンによる置換の結果である。骨格外陽イオンは、これらの電荷を平衡させ、骨格の電気的中性を保ち、これらの陽イオンは、他の陽イオン及び/又はプロトンと交換可能である。
【0031】
合成モレキュラーシーブ、特にゼオライトは、しばしば構造指向剤又は鋳型剤の存在下で、水性媒体中でアルミナ及びシリカの供給源を混合することにより一般的に合成される。生成するモレキュラーシーブの構造は、種々の供給源の溶解度、シリカ対アルミナ比、陽イオンの性質、合成条件(温度、圧力、混合撹拌)、添加の順序、鋳型剤(temprate agent)の種類などによって一部決定される。
【0032】
SSZ−70と呼ばれている具体例としてのモレキュラーシーブ、及び構造指向剤(一般的に鋳型剤とも呼ばれている)の存在下で製造するための関連する方法は、その全体として参照により本明細書に組み込まれている、2006年9月19日にZones及びBurtonに発行された米国特許第7,108,843号に記載されている。
【0033】
本開示は、様々な構造指向剤(SDA)を用いてモレキュラーシーブを製造する方法を対象とする。本開示の実施形態によれば、用いる構造指向剤は、イミダゾリウム陽イオンを含む。
【0034】
一般的に、本開示のモレキュラーシーブは、以下の手順を用いることによって調製される。最初に、以下の成分を混ぜ合わせることによって、反応混合物を調製する:
構造指向剤;
四価元素の少なくとも1つの酸化物の少なくとも1つの供給源;
所望により、周期表の第1及び第2族から選択される元素の少なくとも1つの供給源;
所望により、水酸化物イオン、又はその代わりに、フッ化物イオン;
所望により、三価元素、五価元素及びそれらの混合物の1つ又は複数の酸化物の1つ又は複数の供給源;並びに
水。
【0035】
本明細書で述べる各実施形態について、モレキュラーシーブ反応混合物は、複数の所定の薬品の供給源により供給することができる。例えば、いくつかの実施形態において、シリカは、ヒュームドシリカ源及びAl源を供給するために添加される他のゼオライトの両方により反応に供給することができる。供給されるゼオライトは、多少のシリカも供給する。また、一実施形態において、例えば、Al SSZ−70を製造するためのAl源を供給するためにゼオライトを用いる場合のように、2つ以上の反応成分を1つの供給源により供給することができる。本明細書で述べるモレキュラーシーブの結晶の大きさ、形態及び結晶化時間は、反応混合物の性質及び結晶化条件によって異なり得る。
【0036】
そのように調製された反応混合物を次にモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な条件下で保持する。これらの条件は、下でより詳細に述べる。
【0037】
上で述べたように、本開示の実施形態で用いるSDAsは、以下の一般構造(I)
【化3】
を有するイミダゾリウム陽イオンを含む。
【0038】
一般構造Iにおいて、Rは、イソプロピルを除く直鎖若しくは分枝アルキル(例えば、メチル、エチル、イソブチル、tert−ブチル、分枝アミル若しくは分枝オクチル)、シクロオレフィン(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル若しくはシクロオクチル)、二環式アルキル及び三環式アルキル(アダマンチル等など)、又はアリール(例えば、非置換若しくは置換フェニル)であってよい置換基である。
【0039】
「アルキル」という用語は、本明細書では、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシルなどの必ずではないが通常、1個から約10個の炭素原子、例えば、1個から約6個の炭素原子を含む直鎖、分枝又は環状飽和炭化水素基、並びにシクロペンチル、シクロヘキシルなどの例えば3個から8個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。同じく必ずではないが通常、本明細書におけるアルキル基は、1個から約6個の炭素原子を含む。「シクロアルキル」という用語は、一般的に4個から8個の炭素原子を有する環状アルキル基を意味する。
【0040】
「アリール」という用語は、本明細書では、また特に指定しない限り、単芳香環又は一緒に縮合した、直接結合した、若しくは間接的に結合した(異なる芳香環がメチレン若しくはエチレン部分(moiety)などの共通基に結合しているような)多芳香環を有する芳香族基を意味する。典型的には、アリール基は、5個から24個の炭素原子、例えば、5個から14個の炭素原子を含む。具体例としてのアリール基は、1つの芳香環又は2つの縮合若しくは結合芳香環、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノンなどを含む。
【0041】
上の一般構造Iにおける置換基Rの種々の選択は、種々のSDAsをもたらし得る。典型的には、置換基Rは、水性合成混合物の残りのものにおけるある程度の溶解度を有することができるSDAを有するように選択される。
【0042】
「オレフィン」という用語は、本明細書ではそれらの間に二重結合(sp2混成結合)を含む、互いに共有結合した2つの炭素を示す。
【0043】
用いることができる一般構造(I)のイミダゾリウム陽イオンのいくつかの特定の非限定的な例は、以下の陽イオン(1)〜(15)を含む。
【化4−1】
【化4−2】
【0044】
イミダゾリウム陽イオンは、一般的に対応する陰イオンと会合している。適切な陰イオンの非限定的な例は、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン(すなわち、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン又はヨウ化物イオン)、酢酸イオン、硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン及びカルボン酸イオンなどである。対応する陰イオンと会合したイミダゾリウム陽イオンを含む系は、合成有機化学の公知の方法に従って調製することができる。これらの合成手順及びそのようにして得られる化合物の特性は、下の本出願の「実施例」部分に示す。
【0045】
上で述べたように、反応混合物は、四価元素の少なくとも1つの酸化物の少なくとも1つの供給源を含む。四価元素(以下、「T」とも呼ぶ)は、周期表の第4〜14族の元素であり得る。
【0046】
「周期表」という用語は、元素のIUPAC周期表の2007年6月22日付けの版を意味し、周期表の族の付番スキームは、Chemical and Engineering News、63巻(5号)、27頁(1985年)に記載されているとおりである。
【0047】
本開示の実施形態によれば、Tは、ケイ素、ゲルマニウム又はチタンのいずれであってもよい。一実施形態において、Tは、ケイ素である。組成変数(composition variable)Tの選択される元素の供給源は、Tに選ばれる元素(単数又は複数)の酸化物、水酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩、アンモニウム塩及び硫酸塩などである。
【0048】
一実施形態において、組成変数Tに選ばれる元素(単数又は複数)の各供給源は、酸化物である。Tがケイ素である場合、ケイ素の本明細書において有用な供給源は、ヒュームドシリカ、沈殿ケイ酸塩、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイドシリカ、オルトケイ酸テトラアルキル(例えば、オルトケイ酸テトラエチル)及びシリカ水酸化物などである。本開示のモレキュラーシーブの高シリカ形を製造するのに有用なシリカ源の例としては、ヒュームドシリカ(例えば、CAB−O−SIL M−5、キャボットコーポレーション(Cabot Corporation))、水和シリカ(例えば、HI−SIL233、PPG Industries)、シリカテトラアルコキシド及びそれらの混合物などがある。固体含量が30〜40重量%のSiO2であるコロイドシリカも有用であり、これらの物質は、少量のナトリウム又はアンモニウム陽イオンにより安定化することができる。さらに、アルミニウムがシリカゾル中に分散しているコロイドゾルは、望ましい当該SiO2/Al2O3比を得るために用いることができる。ゲルマニウムの本明細書において有用な供給源は、酸化ゲルマニウム及びゲルマニウムエトキシドなどである。
【0049】
上記のように、反応混合物は、周期表の第1及び第2族から選択される元素(以下、「M」とも呼ぶ)の少なくとも1つの供給源及び水酸化物イオンをさらに所望により含む。典型的には、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムをこの目的のために用いることができるが、同等の塩基性が維持されている限り、この成分は、除外することができる。したがって、例えば、ハロゲン化物を水酸化物イオンにイオン交換し、それにより、必要なアルカリ金属水酸化物の量を減少させる又はなくすことが有益であり得る。アルカリ金属陽イオン又はアルカリ土類金属陽イオンは、それにおける原子価電子の電荷の均衡を保つために合成されたままの結晶性酸化物物質の一部であり得る。
【0050】
上で述べたように、反応混合物は、三価元素、五価元素(以下、「X」とも呼ぶ)及びそれらの混合物の1つ又は複数の酸化物の少なくとも1つ又は複数の供給源をさらに所望により含む。本明細書で述べる各実施形態について、Xは、周期表の第3〜13族の元素からなる群から選択される。より具体的には、Xは、ガリウム、アルミニウム、鉄又はホウ素のいずれかであり得る。場合による組成変数Xに選ばれる元素の供給源は、Xに選ばれる元素(単数又は複数)の酸化物、水酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩、アンモニウム塩及び硫酸塩などである。酸化アルミニウムの一般的な供給源は、アルミン酸塩、アルミナ、並びにAlCl3、Al2(SO4)3、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、カオリン粘土及び他のゼオライトなどのアルミニウム化合物などである。酸化アルミニウムの供給源の例は、LZ−210ゼオライト(Yゼオライトの一種)である。ホウ素、ガリウム及び鉄は、それらのアルミニウム及びケイ素対応物に相当する形で加えることができる。
【0051】
生成したモレキュラーシーブが中間物質である場合、本開示の方法は、酸浸出などの合成後技術により目標モレキュラーシーブを合成するさらなるステップを含む。通常、イオン交換によりアルカリ金属イオンを除去し、それを水素、アンモニウム又は所望の金属イオンで置換することが望ましい。モレキュラーシーブは、キレート化剤、例えば、EDTA又は希酸溶液で浸出して、シリカ対アルミナモル比を増加させることができる。モレキュラーシーブは、水蒸気処理することもできる。水蒸気処理は、酸による攻撃に対して結晶格子を安定化させる助けとなる。
【0052】
出発SDAs及び無機化合物を変化させることにより、本開示の方法を用いて種々のモレキュラーシーブを得ることができる。得られるそのようなモレキュラーシーブの一例は、SSZ−70である。得ることができるさらなるモレキュラーシーブ相は、それぞれが国際ゼオライト協会構造委員会により承認された規則に従って定義されている、TON、MFI、MTT、MTW、BEA*、MOR、CFI、AFX及びSTFなどである。SSZ−70、TON、MFI、MTT、MTW、BEA*、MOR、CFI、AFX及びSTFのそれぞれの構造及び特性に関する完全な情報は、全内容が参照により本明細書に組み込まれるwww.iza−structure.org/databasesに見いだすことができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、モレキュラーシーブは、約150℃から約170℃までの温度でフッ化物媒体又は水酸化物媒体中で本明細書で述べる方法を用いて調製することができる。SiO2とAl2O3との比、及び用いることができる他の成分間の比は、下の表3及び4に示す。
【0054】
他の実施形態において、モレキュラーシーブは、H2O/SiO2モル比を約3.5から14.5として約150℃又は約175℃における純シリカフッ化物反応により本明細書で述べる方法を用いて調製することができる。
【0055】
他の実施形態において、モレキュラーシーブは、SiO2/B2O3モル比を約8から100として約150℃、又はそれ以上におけるホウケイ酸塩水酸化物反応により本明細書で述べる方法を用いて調製することができる。
【0056】
さらに他の実施形態において、モレキュラーシーブは、SiO2/Al2O3モル比を約35から100として約150℃におけるアルミノケイ酸塩水酸化物反応により本明細書で述べる方法を用いて調製することができる。特にそれらの実施形態のいくつかにおいて、以下の陽イオン1〜3を用いることができる。
【化5】
【0057】
陽イオン1〜3を用いる実施形態のいくつかにおいて、関連する方法は、十分なAlの取込みを有し、及び/又はSDAの除去後に得られる生成物の高い空隙容積を有するモレキュラーシーブSSZ−70生成物の製造を可能にする。
【0058】
モレキュラーシーブを生成させる反応混合物のモル比による組成の概観を下の表1に示す。
【表1】
【0059】
成分がTO2/X2Oaを含み、Xが三価(例えば、アルミニウム又はホウ素)である、いくつかの実施形態において、モル比は、約20対1及びそれより大きい、特に約25〜60対1であり得る。
【0060】
成分がTO2/X2Oaを含み、Xが四価(例えば、ゲルマニウム)である、いくつかの実施形態において、モル比は、8対1及びそれより大きい、特に約8〜60対1であり得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、モレキュラーシーブは、SiO2/B2O3モル比を約20〜200対1以上の値として、或いはSiO2/Al2O3モル比を約30〜50対1、30〜45対1以上の値として水酸化物合成により本明細書で述べる方法を用いて調製することができる。それらの実施形態のいくつかにおいて、水酸化物合成は、約170℃の温度で実施することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、モレキュラーシーブは、SiO2/Al2O3のモル比を約30〜500対1及びSiO2/GeO2のモル比を約2〜50、特に約2〜20対1としてフッ化物媒介反応により本明細書で述べる方法を用いて調製することができる。モレキュラーシーブをSiO2/GeO2から調製する実施形態において、反応は、フッ化物を用いて、又は用いずに実施することができる。
【0063】
本明細書で上述したように反応混合物を調製した後、それをモレキュラーシーブを形成するのに十分な結晶化条件下で保持する。そのような条件は、一般的に公知である。(Harry Robson、Verified Syntheses of Zeolitic Materials、第2改訂版、Elsevier、Amsterdam(2001年)を参照)。
【0064】
例えば、反応混合物は、モレキュラーシーブが数日から数週間の期間にわたって形成されるまで高温に保持することができる。水熱結晶化は、50〜200PSI(0.34〜1.38MPa)の自原性圧力(autogenous pressure)下で、通常反応混合物が125℃から200℃までの温度で自原性圧力を受けるようにオートクレーブ中で通常行わせる。
【0065】
反応混合物は、結晶化ステップ中に緩やかなかき混ぜ又は撹拌を受けさせることができる。本明細書で述べるモレキュラーシーブが非晶質物質、モレキュラーシーブと一致しない骨格トポロジーを有する単位胞及び/又は他の不純物(例えば、有機炭化水素)などの不純物を含み得ることは、当業者により理解されるであろう。水熱結晶化ステップ中、モレキュラーシーブ結晶は、反応混合物から自発的に核生成させることができる。
【0066】
モレキュラーシーブの結晶を種子材料として用いることは、完全な結晶化が起こるのに必要な時間を低減するのに有利であり得る。さらに、接種(seeding)は、核生成を促進することにより得られる生成物の純度の増大及び/又は所望の相にわたるモレキュラーシーブの形成をもたらし得る。種子として用いる場合、種結晶は、反応混合物中の用いるケイ素の供給源の重量の1%から10%までの量で加える。モレキュラーシーブが生成したならば、ろ過などの標準的な機械的分離技術により固体生成物を反応混合物から分離する。結晶を水洗し、次いで、乾燥して、合成されたままの状態のモレキュラーシーブ結晶を得る。乾燥ステップは、大気圧又は真空中で実施することができる。
【0067】
モレキュラーシーブは、合成されたままの状態で用いることができるが、一般的に熱処理する(焼成する)。「合成されたままの状態」という用語は、構造指向剤の除去の前の結晶化後のその形のモレキュラーシーブを意味する。構造指向剤は、好ましくは酸化的雰囲気(例えば、空気、0kPaより大きい酸素分圧を有するガス)中でのモレキュラーシーブから構造指向剤を除去するのに十分な当業者が容易に決定できる温度における熱処理(例えば、焼成)により除去することができる。構造指向剤は、2005年11月1日に発行されたNavrotsky及びParikhへの米国特許第6,960,327号に記載されているような光分解法(例えば、モレキュラーシーブから有機化合物を選択的に除去するのに十分な条件下で可視光より短い波長を有する光又は電磁放射線に構造指向剤含有モレキュラーシーブ生成物を曝露する)によっても除去することができる。
【0068】
モレキュラーシーブは、その後、1時間から48時間以上の範囲の時間にわたり約200℃から約800℃までの範囲の温度で水蒸気、空気又は不活性ガス中で焼成することができる。通常、イオン交換又は他の公知の方法により骨格外陽イオン(例えば、H+)を除去し、それを水素、アンモニウム又は所望の金属イオンで置換することが望ましい。
【0069】
生成するモレキュラーシーブが中間物質である場合、目標モレキュラーシーブは、酸浸出又は同様な脱アルミニウム法により中間物質からのより高いSi:Al比を有する目標物質の合成を可能にする合成後技術を用いて得ることができる。
【0070】
本開示の方法により調製されるモレキュラーシーブは、成分間のモル比を表2に示す、合成されたままの状態で、無水状態にある組成を有する。
【表2】
【0071】
成分がTO2/X2Oaを含み、Xが三価(例えば、アルミニウム又はホウ素)である、いくつかの実施形態において、モル比は、約20対1又はそれより大きいことがあり得る。
【0072】
成分がTO2/X2Oaを含み、Xが四価(例えば、ゲルマニウム)である、いくつかの実施形態において、モル比は、約2対1又はそれより大きいことがあり得る。
【0073】
モレキュラーシーブがSiO2/Al2O3に由来する、実施形態において、生成物中のSiO2/Al2O3比は、一般的に出発比の値の約80〜90%である。モレキュラーシーブがSiO2/B2O3に由来する、実施形態において、生成物中のSiO2/B2O3比は、一般的に出発比の値の約125〜200%である。
【0074】
本開示の方法により合成されるモレキュラーシーブは、それらのXRDパターンにより特性評価される。1つのそのような生成物SSZ−70のXRDパターンは、2006年9月19日にZones及びBurtonに発行された米国特許第7,108,843号に記載されている。回折パターンの軽微な変動は、格子定数の変化による個々の試料の骨格種のモル比の変動に起因し得る。さらに、十分に小さい結晶は、ピークの形状及び強度に影響を及ぼし、著しいピークの広がりをもたらす。回折パターンの軽微な変動は、調製に用いる有機化合物の変動及び試料ごとのSi/Alモル比の変動にも起因し得る。焼成もXRDパターンの軽微な変動を引き起こし得る。これらの軽微な摂動にもかかわらず、基本結晶格子構造は不変のままである。
【0075】
本明細書に示した粉末X線回折パターンは、標準的技術により収集された。放射線は、CuK−α放射線であった。2θ(θはブラッグ角)の関数としてのピークの高さ及び位置は、ピークの相対強度(バックグラウンドについて調整した)から読み取り、記録された線に対応するオングストローム単位の面間隔dを計算することができる。
【0076】
本開示のモレキュラーシーブ触媒は、1つ又は複数の触媒担体、活性卑金属、他のモレキュラーシーブ、助触媒及びそれらの混合物と所望により併用することができる。そのような物質の例及びそれらを用いることができる方法は、1990年5月20日にZonesらに発行された米国特許第4,910,006号及び1994年5月31日にNakagawaに発行された米国特許第5,316,753号に開示されている。
【0077】
本開示のモレキュラーシーブと併用できる触媒担体は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ベリリウム、アルミナ−シリカ、非晶質アルミナ−シリカ、アルミナ−酸化チタン、アルミナ−酸化マグネシウム、シリカ−酸化マグネシウム、シリカ−ジルコニア、シリカ−酸化トリウム、シリカ−酸化ベリリウム、シリカ−酸化チタン、酸化チタン−ジルコニア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−酸化トリウム、シリカ−アルミナ−酸化チタン又はシリカ−アルミナ−酸化マグネシウム、好ましくはアルミナ、シリカ−アルミナ、粘土及びそれらの組合せなどである。
【0078】
本明細書において有用な具体例としての活性卑金属は、周期表の第6族及び第8〜10族の元素から選択されるもの、それらの対応する酸化物及び硫化物、並びにそれらの混合物などである。一実施形態において、各卑金属は、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、タングステン及びそれらの組合せからなる群から選択される。他の実施形態において、水素化触媒は、少なくとも1つの第6族卑金属及び周期表の第8〜10族から選択される少なくとも1つの卑金属を含む。具体例としての金属の組合せは、Ni/Mo/W、Mi/Mo、Mo/W、Co/Mo、Co/W及びW/Niなどである。助触媒は、リン、ホウ素、ケイ素、アルミニウム及びそれらの組合せなどから選択されるものを含む。
【0079】
金属は、当技術分野で公知の標準的イオン交換技術によりモレキュラーシーブにおける陽イオンの一部を金属陽イオンで置換することによってもモレキュラーシーブに導入することができる。一般的な置換陽イオンは、金属陽イオン、例えば、希土類、IA族、IIA族及びVIII族金属、並びにそれらの混合物などであり得る。置換金属陽イオンの例としては、希土類、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、チタン、アルミニウム、スズ及び鉄などの金属の陽イオンなどがある。
【0080】
水素、アンモニウム及び金属成分は、本開示のモレキュラーシーブにイオン交換させることができる。本開示のモレキュラーシーブは、金属を含浸させることもでき、或いは当技術分野で公知の標準的方法を用いて金属を本開示のモレキュラーシーブと物理的に、緊密に混合することができる。
【0081】
典型的なイオン交換技術は、合成モレキュラーシーブを所望の置換陽イオン又は陽イオン(複数)の塩を含む溶液と接触させるステップを含む。種々の塩を用いることができるが、塩化物及び他のハロゲン化物、酢酸塩、硝酸塩、並びに硫酸塩が特に好ましい。モレキュラーシーブは、通常、イオン交換処置の前に焼成して、チャンネル内及び表面上に存在する有機物を除去する。その理由は、このアプローチがより効果的なイオン交換をもたらすためである。代表的なイオン交換技術は、当技術分野で公知である。
【0082】
所望の置換陽イオンの塩溶液との接触の後に、モレキュラーシーブを一般的に水で洗浄し、65℃から約200℃までの範囲の温度で乾燥する。洗浄後、上述のようにモレキュラーシーブを空気中又は不活性ガス中で焼成して、炭化水素変換工程に特に有用な触媒的に活性な生成物を製造することができる。本開示のモレキュラーシーブの合成されたままの形に存在する陽イオンにかかわりなく、モレキュラーシーブの基本結晶格子を構成する原子の空間的配置は、本質的に不変のままである。
【0083】
本開示の方法により製造されるモレキュラーシーブは、種々の物理的形状に成形することができる。一般的に言えば、モレキュラーシーブは、粉末、顆粒、又は2メッシュ(タイラー)ふるいを通過し、400メッシュ(タイラー)ふるい上に保持されるのに十分な粒径を有する押出し成形体などの成形物の形であってよい。有機結合剤を用いた押出し成形などにより触媒を成形する場合、モレキュラーシーブは、乾燥の前に押出し成形するか、又は乾燥若しくは部分的に乾燥し、次に押出し成形することができる。
【0084】
本開示の方法により製造されるモレキュラーシーブは、有機物変換工程に用いられる温度及び他の条件に抵抗性を示す他の物質と複合させることができる。そのようなマトリクス材は、活性及び不活性物質、並びに合成又は天然ゼオライト、並びに粘土、シリカ及び金属酸化物などの無機物質などである。そのような物質の例及びそれらを用いることができる方法は、全体として参照により本明細書に組み込まれている、1990年5月20日にZonesらに発行された米国特許第4,910,006号及び1994年5月31日にNakagawaに発行された米国特許第5,316,753号に開示されている。
【0085】
本開示の方法により製造されるモレキュラーシーブは、水素化分解、脱ろう、異性化などの種々の炭化水素変換反応用の触媒に有用である。本開示の方法により製造されるモレキュラーシーブはまた、吸着剤として、及び低誘電率K物質として有用であり得る。低誘電率Kポテンシャル(low dielectric K potential)を有するモレキュラーシーブの具体例としての使用は、全体として参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,138,099号に記載されている。
【実施例】
【0086】
本明細書で述べるモレキュラーシーブ、構造指向剤、並びに関連する方法及びシステムを、例示の目的で記載するものであって限定するものではない以下の実施例で、さらに説明する。
【0087】
特に、以下の実施例は、イミダゾリウム構造指向剤を用いるモレキュラーシーブの具体例としての合成及び使用を説明するものである。当業者は、本開示及び関連モレキュラーシーブに照らして異なる置換基を有するさらなるSDAに対するSDA1〜12及び関連モレキュラーシーブの詳細に述べた特徴の適用性を十分に理解するであろう。
【0088】
以下の実験手順及び特性評価データは、ここに例示したすべての化合物及びそれらの前駆体について用いた。
【0089】
構造指向剤の一般的合成手順
すべての薬品を販売業者から購入し、受け取ったままの状態で使用した。化合物6及び7は、適切なハロゲン化アルキルによりイミダゾールを四級化することにより合成した。化合物14(すなわち、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリウムクロリド)及び15(すなわち、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロリド)は、Sigma−Aldrichから購入し、受け取ったままの状態で使用した。他のすべてのSDAsは、公知且つ公表された手順(W.A.Herrmann、V.P.W.Bohm、C.W.K.Gstottmayr、M.Grosche、C.P.Reisinger、T.Weskamp、J.Organomet.Chem.、617巻(1号)(2001年)616〜628頁。W.A.Herrmann、C.Kocher、L.J.Goossen、複素環式カルベンを調製する方法、米国特許第6,025,496号、2000年2月15日)を適応することにより合成した。
【0090】
粗テトラフルオロホウ酸塩は、再結晶化により精製した。ハロゲン化物塩についての同様な再結晶化の試みは、大部分は不成功であり、したがって、水性活性炭処理を用いた(A.K.Burrell、R.E.Del Sesto、S.N.Baker、T.M.McCleskey、G.A.Baker、Green Chem.、9巻(5号)(2007年)449〜454頁)。液体NMRスペクトルは、300MHz Varian Mercury分光計で記録した。燃焼分析は、Chevron Energy Technology Center(Richmond、CA)においてCarlo−Erba Combustion Elemental Analyzerを用いて実施した。
【0091】
すべてのSDAsをDowex Monosphere 550A UPW水酸化物樹脂(Supelco)を用いて水酸化物形に交換した。最終的な水酸化物濃度は、フェノールフタレイン終点までの0.01N HCl溶液による滴定により測定した。1,3−ビス(シクロヘキシル)イミダゾリウム(化合物3)及び1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾリウム(化合物11)とのいくつかの反応は、市販のテトラフルオロホウ酸塩(Sigma−Aldrich)によるイオン交換の後に得られたSDA+OH−溶液を用いて行わせた。テトラフルオロホウ酸1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾリウムのイオン交換は、親塩(parent salt)の溶解度が低いため室温で約1週間を要した(滴定による>90%イオン交換)。
【0092】
無機反応に関する一般的合成手順
すべての反応を23mL又は45mL PTFE裏打ちステンレススチールオートクレーブ(Parr Instruments)中で行わせた。水酸化物媒介反応は、対流オーブン中に組み込まれたスピット(spits)を用いて約40rpmで転動させた。フッ化物媒介反応は、転動させなかった。ケイ素源は、フッ化物反応についてはテトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS、Sigma−Aldrich、98%)であり、水酸化物反応についてはCab−O−Sil M5ヒュームドシリカ(Cabot)であった。ホウ酸(J.T.Baker、ACS Reagent)をホウケイ酸塩反応に用い、Reheis F−2000(50〜53重量%Al2O3)又はNaYゼオライト(Tosoh HSZ−320NAA、SiO2/Al2O3=5.5、Na/Al=1)をアルミノケイ酸塩反応に用いた。ゲルマノケイ酸塩反応には二酸化ゲルマニウム(99.98%、Alfa−Aesar)及びTEOSを用いた。
【0093】
フッ化物反応用ゲルは、ホウ酸又は水酸化アルミニウムゲル(必要な場合)をSDA+OH−溶液に加え、次にTEOSを加えることにより調製した。容器を覆い、一夜撹拌して、完全なTEOSの加水分解を保証し、次に40℃オーブン中で覆いを取り除いたままとして、必要な水及びエタノールを蒸発させた。所望の質量に達したならば、48重量%フッ化水素酸(Mallinckrodt)及び必要量の水を注意して加え、ゲルを撹拌して、堅いペーストを形成させた。オートクレーブを密閉し、150℃(又は175℃)オーブン中に入れ、7〜10日ごとに開けて、反応の進行を評価した。均質化した後、小試料を10mLの水に分散させ、光学顕微鏡下で検査した。H2O/SiO2=7.5及び14.5での特定の反応について、小結晶がしばしば見えた。光学顕微鏡により結晶性の明らかな兆候を認めることができなかった場合、小結晶を定期的にろ過し、XRDパターンを検査した(Scintag XDS−2000又はSiemens D−500、Cu Ka)。すべての反応を少なくとも60日までモニターし、結晶性物質が認められない場合には、生成物を非晶質と表示した。
【0094】
水酸化物反応用ゲルは、水、1N水酸化ナトリウム溶液(必要な場合)、ホウ素又はアルミニウム源、次にシリカを加え、手により均質化することにより調製した。NaOHの代わりにLiOH又はKOHを用い、150℃で化合物3を用いた純シリカ水酸化物反応により、NaOH反応と同じ生成物が得られたため、下で述べる生成物11を除いて、LiOH又はKOHを用いた追加の実験は実施しなかった。ホウケイ酸反応は、アルカリ水酸化物を用いずにSiO2/B2O3=8で行わせ(ゲル組成1.0SiO2:0.125B2O3:0.25SDA+OH−:23H2O)、残りの反応では、水含量をわずかに増加させて水酸化ナトリウムを加えた(ゲル組成1.0SiO2:xB2O3:0.20SDA+OH−:0.10NaOH:30.0H2O、ここで0.00 6 x 6 0.02)。
【0095】
SAR=35のNaYを用いたアルミノケイ酸塩反応でのゲル組成は1.0SiO2:0.029Al2O3:0.20SDA+OH−:yNaOH:30.0H2Oであり、y=0.25又は0.05であった(別のシリーズでNaOH含量を変化させた場合を除く)。残りの反応ではアルミニウム源として非構造化Reheis F−2000水酸化アルミニウムゲルを用い、ゲル組成は1.0SiO2:zAl2O3:0.20SDA+OH−:0.10NaOH:30.0H2Oであり、z=0.02又は0.01であった。最後に、いくつかのゲルマノケイ酸塩反応をゲル組成を1.0SiO2:0.11GeO2:0.5SDA+OH−:3.5H2Oとして170℃で実施した(転動せず)(A.Jackowski、S.I.Zones、S.J.Hwang、A.W.Burton、J.Am.Chem.Soc.、131巻(3号)(2009年)1092〜1100頁)。
【0096】
150℃での反応は、溶液のpHを測定し、相分離の兆候について確認することにより4〜6日ごとにモニターした(170℃反応については2日ごとに確認した)。pH最大値が認められるまで反応を確認し、次いでろ過した。pH最大値が認められなかった場合、持続的なpH低下(SDAの分解を示す)が認められるまで反応を継続させた。SiO2/B2O3=8でのいくつかの反応でpH測定を適用できなかった堅いペーストが生じた。これらの反応は45日後に停止させ、加熱し、他の反応と同様にろ過した。すべての粗生成物を水と少量のアセトン及びメタノールで洗浄し、次いで室温で乾燥した。
【0097】
特性評価
粉末X線回折(XRD)パターンは、Scintag XDS−2000及びSiemens D−500回折計(Cu Kα放射線)を用いて収集した。走査型電子顕微鏡検査法(SEM)は、JEOL JSM−6700F機器を用いて実施した。透過型電子顕微鏡検査法(TEM)は、JEOL 2010機器を用いて200kVの加速電圧で実施した。
【0098】
(例1)
構造指向剤1,3−ジイソブチルイミダゾリウムブロミド(1)の合成
【化6】
100mLのトルエン中イソブチルアミン(100mモル)を室温の水浴中に入れ、次に強く撹拌しながらパラホルムアルデヒド(100mモル)を加えた。溶液を室温で30分間撹拌し、次に氷を水浴に加えた。臭化水素酸溶液(100mモル、48重量%水溶液)を水で20重量%に希釈し、次に氷上に約1時間置いた。トルエン溶液を1時間冷却した後、別の7.32g(100mモル)のイソブチルアミンを滴下漏斗を介して滴下した。冷臭化水素酸溶液を滴下漏斗を介して滴下した。氷浴を除去し、溶液を約2時間加温し、次にグリオキサール溶液(100mモル、水中40重量%)を滴下した。反応物を室温で約36時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮して、粘稠な黄色/橙色油を得た。
【0099】
精製は、125mLの水及び20mLの飽和KHCO3を加え、ジエチルエーテル(2×100mL)で抽出することにより達成された。水相を1.55gの活性炭で処理し、室温で一夜撹拌した。炭素をろ別し、少量の水で洗浄した。ろ液が肉眼で無色になるまで、この処理過程を3回繰り返した。ろ液をロータリーエバポレーターにより濃縮し、残留物をクロロホルム(2×100mL)で抽出し、次にろ過した。クロロホルム抽出物を合わせ、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーターにより濃縮して、ワックス状残留物を得た。高真空中でのさらなる乾燥により、20.57gの灰色がかった白色の固体(78.7mモル、収率79%)を得た。
【化7】
【0100】
(例2)
構造指向剤1,3−ビス(シクロペンチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート(2)の合成
【化8】
147mLのトルエン中シクロペンチルアミン(147mモル)を室温の水浴中に入れ、次に強く撹拌しながらパラホルムアルデヒド(147mモル)を加えた。溶液を室温で30分間撹拌し、次に氷を水浴に加えた。1時間冷却した後、別の147mモルのシクロペンチルアミンを滴下漏斗を介して滴下した。テトラフルオロホウ酸(147mモル、水中48重量%)を30重量%に希釈し、次に滴下漏斗を介して滴下した。氷浴を除去し、溶液を約30分間加温し、次にグリオキサール溶液(147mモル、水中40重量%)を滴下した。フラスコを40℃で一夜加熱し、次に室温に冷却した。溶液を分液漏斗に移し、150mLのジエチルエーテル及び75mLの飽和NaHCO3溶液を加えた。上のエーテル/トルエン層を捨て、水相と油状残留物をクロロホルム(3×100mL)で抽出した。
【0101】
クロロホルム抽出物を合わせ、食塩水(100mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーターにより濃縮して、暗色のろう状残留物を得た。高真空中でのさらなる乾燥により、ろう状残留物は変化しなかった。残留物を乳鉢と乳棒を用いて微細に粉砕し、次にソックスレー装置を用いてジエチルエーテルで抽出した。抽出済み固体を4:1テトラヒドロフラン/酢酸エチルから再結晶化して、16.09gの淡黄褐色固体を得た。上の化合物1について述べた活性炭処理を用いたさらなる精製により、15.33gの淡黄色固体(52.5mモル、収率36%)を得た。
【0102】
【化9】
【0103】
(例3)
構造指向剤1,3−ビス(シクロヘキシル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート(3)の合成
【化10】
シクロヘキシルアミン(2×200mモル)を用いて、化合物2を合成するために例2で用いた手順に従った。冷却後、固体沈殿物が見られたため、沈殿物をろ別し、150mLの水で、次に150mLのジエチルエーテルで洗浄し、高真空中で一夜乾燥した。2:1酢酸エチル/ジクロロメタンから再結晶し、高真空中で乾燥した後に33.72gの灰色がかった白色の固体を得た(105.3mモル、収率53%)。
【0104】
【化11】
【0105】
(例4)
構造指向剤1,3−ビス(シクロヘプチル)イミダゾリウムブロミド(4)の合成
【化12】
シクロヘプチルアミン(2×110.4mモル)を用いて、化合物1を合成するために例1で用いた手順に従い、高真空中での乾燥の後に23.60gの白色固体を得た(69.1mモル、収率63%)。
【化13】
【0106】
(例5)
構造指向剤1,3−ビス(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)イミダゾリウムブロミド(5)の合成
【化14】
エキソ−2−アミノノルボルナン(2×19.1mモル)を用いて、化合物1を合成するために例1で用いた手順に従って3.69gの灰色がかった白色のろう状固体を得た(10.9mモル、収率57%)。
【化15】
【0107】
(例6)
構造指向剤1,3−ジメチルイミダゾリウムヨーダイド(6)の合成
【化16】
50mLの酢酸エチル(J.T.Baker、HPLC用)中1−メチルイミダゾール(4.11g、50mモル、Sigma−Aldrich、99%)を氷浴中で0℃に冷却した。冷却した時点で、ヨードメタン(7.77g、54.7mモル、Sigma−Aldrich、99%)を滴下漏斗を介して滴下した。溶液を室温に徐々に加温した。撹拌を約60時間継続し、次に溶液をろ過し、残留物をジエチルエーテルで洗浄した。生成物を高真空中で一夜乾燥して、10.74g(47.9mモル、収率96%)の白色固体を得た(さらに精製せずに用いた)。
【0108】
【化17】
【0109】
(例7)
構造指向剤1,3−ジエチルイミダゾリウムヨーダイド(7)の合成
【化18】
50mLの酢酸エチル中1−エチルイミダゾール(4.81g、50mモル、Sigma−Aldrich、99%)を氷浴中で0℃に冷却した。冷却した時点で、ヨードエタン(8.69g、55.7mモル、Sigma−Aldrich、99%)を滴下漏斗を介して滴下した。溶液を室温に徐々に加温し、次に一夜撹拌した。沈殿物をろ別し、ジエチルエーテルで洗浄した。ろ液を収集し、追加の8.96g(57.4mモル)のヨードエタンを加え、室温で6日間撹拌を継続した。溶液を再びろ過し、残留物をジエチルエーテルで洗浄した。合わせた固体を高真空中で一夜乾燥して、さらに精製せずに用いた9.76gの白色固体(38.7mモル、収率77%)を得た。
【0110】
【化19】
【0111】
(例8)
構造指向剤1,3−ビス(tert−ブチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート(8)の合成
【化20】
100mLのトルエン(EMD、ACS Reagent)中tert−ブチルアミン(7.32g、100mモル、Alfa−Aesar、98%)を室温の水浴中に入れ、次に強く撹拌しながらパラホルムアルデヒド(3.16g、100mモル、Fisher、95%)を加えた。溶液を室温で30分間撹拌し、次に氷を水浴に加えた。1時間冷却した後、別の7.32g(100mモル)のtert−ブチルアミンを滴下漏斗を介して滴下した。テトラフルオロホウ酸(18.30g、100mモル、Alfa−Aesar、水中48重量%)を9.16gの水で30重量%に希釈し、次に滴下漏斗を介して滴下した。氷浴を除去し、溶液を30分間加温し、次にグリオキサール溶液(14.488g、100mモル、Alfa−Aesar、水中40重量%)を滴下した。フラスコを40℃で一夜加熱し、次に室温に冷却した。溶液をろ過し、残留物を50mLの水及び100mLのジエチルエーテルで洗浄し、次に高真空中で一夜乾燥して、さらに精製せずに用いた13.28gの白色固体(49.5mモル、収率50%)を得た。
【0112】
【化21】
【0113】
(例9)
構造指向剤1,3−ビス(ペンタン−3−イル)イミダゾリウムブロミド(9)の合成
【化22】
3−アミノペンタン(2×70mモル、Alfa−Aesar、98%)を用いて、上の化合物1について述べた手順に従って14.82gの白色固体を得た(51.2mモル、収率73%)。
【化23】
【0114】
(例10)
構造指向剤1,3−ビス(シクロヘキシルメチル)イミダゾリウムブロミド(12)の合成
【化24】
シクロヘキサンメチルアミン(2×110.4mモル、Alfa−Aesar、98%)を用いて、上の化合物1についての手順に従って26.57g灰色がかった白色のろう状固体を得た(77.8mモル、収率70%)。活性炭処理を実施したとき、250mLの水と50mLのメタノールを用いて残留物を溶解した。
【0115】
【化25】
【0116】
(例11)
構造指向剤1,3−ビス(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート(1,3−ビス(イソオクチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレート)(13)の合成
【化26】
2−アミノ−2,4,4−トリメチルペンタン(2×120mモル、TCI America、95%)を用い、上の化合物2についての手順に従い、ソックスレー抽出を省略した。ジクロロメタン/テトラヒドロフランからの再結晶化により、11.76gの灰色がかった白色の固体(30.9mモル、収率26%)を得た。
【0117】
【化27】
【0118】
(例12)
構造指向剤1,3−ビス(シクロオクチル)イミダゾリウムブロミド(10)の合成
【化28】
シクロオクチルアミン(2×98.3mモル、Alfa−Aesar、97+%)を用いて、化合物1についての手順に従って20.315gの灰色がかった白色の固体を得た(55.0mモル、収率56%)。化合物12についての手順と同様に、活性炭処理時にメタノールを加えて、残留物を溶解した。
【化29】
【0119】
(例13)
構造指向剤1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾリウムブロミド(11)の合成
【化30】
1−アダマンチルアミン塩酸塩(Alfa−Aesar、99%)の水溶液を水酸化カリウムで処理し、トルエンで抽出し、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーターにより濃縮して、30.3gの1−アダマンチルアミン(200mモル)を得た。反応物を45℃で一夜加熱したことを除いて、上の化合物1についての手順に従って26.23gの白色固体(62.8mモル、収率63%)を得た。活性炭処理を実施したとき、2:1水/無水エタノールを用いて残留物を溶解した。
【0120】
【化31】
【0121】
(例14〜26)
モレキュラーシーブの調製
アルミニウム含有モレキュラーシーブは、表1及び2に記載したモル比を有するゲル組成物を調製することにより、水酸化物の形のSDAs1〜5を用いて調製した。例7及び9〜13ではNaYゼオライトをアルミニウム源として用いている。ゲルをPTFE裏打ちParrオートクレーブ中に封入し、対流オーブン中で、表示した温度で加熱する。
【0122】
表3におけるすべての実験は静的であったが、表4における実験では40rpmで回転した。生成物を粉末X線回折により分析して、存在する相(単数又は複数)を確定した。
【表3】
【表4】
【0123】
X線回折
例14の合成されたままの状態のモレキュラーシーブのXRDパターンを図1に示す。540℃での焼成の後のXRDパターンを図2に示す。例18の合成したままの状態のモレキュラーシーブのXRDパターンを図3に示す。550℃での焼成の後のXRDパターンを図4に示す。
【0124】
束縛指数に関する結果
例24の合成されたままの状態の生成物を1N HClで100℃で48時間処理して(固体1gに対してHCl溶液10mL)、残留NaYゼオライトを中和し、次に焼成した。例14、15及び18の合成されたままの状態の物質を焼成して、収蔵有機物質を除去した。焼成済み物質を1M NH4NO3溶液と接触させ、ろ過し、水で洗浄し、次に乾燥した。アンモニウム交換物質をペレットとし、破砕し、20〜40メッシュにふるい分けした。物質を流通He中で≧350℃で一夜処理して、水素形(hydrogen form)を得た。束縛指数試験の結果を図5(例14、15、18及び24についての流し時間の関数としての分解速度を示す)、並びに図6(例14、15、18及び24についての流し時間の関数としての束縛指数を示す)に示す。
【0125】
ミクロ細孔容積
例14及び18の焼成済み物質のミクロ細孔容積は、Micromeritics ASAP 2000機器で77Kの窒素を用いて得た。アンモニウム交換焼成済み物質を分析の前に350℃で一夜脱気した。ミクロ細孔容積は、機器ソフトウエアにおけるtプロット法オプションを選択することにより計算した。結果を表5に示す。
【表5】
【0126】
(例27〜72)
最初の無機反応により得られた相
150℃での最初の無機反応スクリーニングから得られた相を表5〜9に示し、図7及び8によりさらに示す。図7に最初のSSZ−70の特性評価に関する追加データを示し、SDA化合物1を用いたフッ化物反応により合成されたままの状態のSSZ−70のXRDパターンを示す。図7における図は、上から下にAl−SSZ−70、B−SSZ−70及びSi−SSZ−70を示す。図7におけるSSZ−70のXRDパターンは、2θが約3.3、6.6、7.2及び8.6°の低角度反射を示す。最初の反射は、約27Åのd間隔に対応し、比較的広い形状は、各微結晶に含まれている繰返し単位が少数であることを示唆している。
【0127】
これらの特徴は、層状物質と一致しており、これは、SDA化合物3を用いたフッ化物反応によるSi−SSZ−70の走査型電子顕微鏡写真である、図8に示すような薄い相互貫入面を示すSEM像によりさらに裏付けられている。
【0128】
純シリカフッ化物反応条件を用いることによる結果を表6に示し、SSZ−70がSDA化合物1〜5により形成されることを示している。わかるように、BEA*及びMTWのような相が頻繁に出現し、BEA*がH2O/SiO2=3.5で特に一般的である。H2O/SiO2=14.5におけるビス(シクロペンチル)SDA(すなわち、化合物2)の欄は、52日における層状SSZ−70+EUOから72日までのさらなる加熱によるEUO+少量のSSZ−70への転換を示した。中間希釈反応物も72日まで加熱したが、SSZ−70のみが現れた。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0129】
(例73)
SSZ−70の合成及び特性評価
表11及び12にSSZ−70を合成するために用いた条件を示す。可能な場合、同じSDAを用いて合成したSSZ−70物質について特性評価を行った。大部分の反応にビス−(イソブチル)SDA1を用いた。その理由は、この分子が、純シリカ、ホウケイ酸塩及びアルミノケイ酸塩SSZ−70を合成することができたためであった。高い水対シリカ比でSDA1を用いた純シリカフッ化物反応も化学分析による比較に含めた。SDA1は、水酸化物媒介反応条件下で純Si−SSZ−70をもたらさず、したがって、ビス−(シクロヘキシル)SDA3又はビス−(シクロヘプチル)SDA4を用いたSi−SSZ−70(OH)を用いた。生成物は、適切な合成条件を示すために(OH)又は(F)で表示した。窒素吸着実験は、SDA3を用いて合成したSi−SSZ−70(OH)を用いて行い、一方、29Si NMR分析は、SDA4を用いて合成したSi−SSZ−70(F)及びSi−SSZ−70(OH)を用いて行った。炭化水素吸着は、SDA1を用いて合成したAl−SSZ−70(F)を用いて実施した(表11の5番目)。
【表11】
【表12】
【0130】
粉末XRDパターンを調製されたままの状態及び焼成済みのSSZ−70について図8〜10に示す。粉末XRDパターンの検討により、MWW前駆物質から得られたものとの類似性が明らかである。図8にSDA1を用いてフッ化物及び水酸化物媒体中で合成されたままの状態のAl−SSZ−70(それぞれAl−SSZ−70(F)及びAl−SSZ−70(OH))のXRDパターンを示す。また図8に代表的MWW物質としての調製されたままの状態のSSZ−25のXRDパターンを含める。
【0131】
3つの物質のすべてが2θ26°にかなり鋭い反射を示し、このことから類似の構造的特徴が両物質に存在し得ることが示唆される。XRDパターンからMWWとSSZ−70との間のいくつかの類似性が明らかである(図8に示すように)が、160種の無機反応を通して試験された16種のイミダゾリウムSDAsを用いて実施された多くの合成のいずれからもMWWの例は存在しなかった(Archer R.H.;Zones S.I.;Davis M.E.、Microporous Mesoporous Mater.、130巻(2010年)255〜265頁)。
【0132】
図9は、2〜12°の2θ範囲における図8に示したXRDパターンの拡大である。調製されたままの状態の生成物のパターンは、大きいd間隔(2θが3.22°、27.4オングストローム)を有する1つの反射を示し、いくつかの整数の約数も存在する。Al−SSZ−70(OH)のパターンは、SSZ−25及びAl−SSZ−70(F)よりかなり広く、低角度反射は、弱いショルダーとして出現する。水酸化物物質における広い反射は、より小さい結晶径(SEM結果から)に起因している可能性がある。図9における低角度の特徴の検討により、MWW材料と比較してSSZ−70のd間隔がより高いことが明らかである。MWWと比較してXRDパターンのこの領域におけるより高いd間隔がITQ−30についても報告された(Corma A.;Diaz−Cabanas M.J.;Moliner M.;Martinez C.J.Catal.、2006年、241巻(2号)、312〜318頁)。水酸化物及びフッ化物媒介生成物のパターンを比較することにより、フッ化物生成物について2θが8.7°における1つの広い反射があり、一方、水酸化物生成物は2θが7.9及び9.5°に2つの反射を示すことを除いて、すべての反射が同じd間隔であることを明らかにした。
【0133】
この回折強度の差は、MCM−22及びMCM−56のDIFFaXシミュレーション(Juttu G.G.;Lobo R.F.、Microporous Mesoporous Mater.、2000年、40巻(1〜3号)、9〜23頁)で認められたようにc方向(層に対して直角)に沿った結晶サイズの差に起因する可能性がある。図10にSDA1を用いてフッ化物媒体中で合成した焼成済みSSZ−70物質のXRDパターンを示す。純シリカ(Si−SSZ−70(F))、ホウケイ酸塩(B−SSZ−70(F))及びアルミノケイ酸塩(Al−SSZ−70(F))物質を示す。Si−SSZ−70(F)及びAl−SSZ−70(F)について、調製されたままの状態の物質に存在する2つの低角度反射(2θ3.2及び6.5°)は、焼成後の強度の低下に伴って不存在又は出現する。最初の大きな反射は、両物質において7.0°の2θ(約12.5オングストローム)に存在する。これと対照的に、相対強度はより低かったが、B−SSZ−70(F)については低角度反射(2θ3.2及び6.5°)が焼成後に存続している。両低角度反射は、B−SSZ−70(OH)を焼成した後には認められなかった。
【0134】
固体状態29Si NMRは、Si−SSZ−70(F)及びSi−SSZ−70(OH)について実施した。スペクトルは、ビス(シクロヘプチル)SDA4を用いて得られた試料について収集した。図11に調製されたままの状態の1H−29Si交差分極マジック角スピニング(CP MAS)及び29Siブロッホ減衰(BD MAS)スペクトルを示す。
【0135】
Si−SSZ−70試料。調製されたままの状態の固体の両スペクトルは、大きいQ3ケイ素含量を示している(−94ppm共鳴)。CP及びBDスペクトルの比較により、CP条件(接触時間2m秒)下での−116及び−120ppm共鳴の相対強度がより高く、−108ppm共鳴の相対強度が低いことが明らかである。フッ化物媒介試料における共鳴は、はっきりしており、ITQ−1について報告されているもの(Camblor M.A.;Corma A.;Diaz−Cabanas M.J.;Baerlocher C.J.Phys.Chem.B、1998年、102巻(1号)、44〜51頁、Camblor M.A.;Corell C.;Corma A.;Diaz−Cabanas M.J.;Nicolopoulos S.;Gonzalez−Calbet J.M.;Vallet−Regi M.、Chem.Mater.、1996年、8巻(10号)、2415〜2417頁)と同様な化学シフト範囲に及んでいる。図12に示す焼成済みSi−SSZ−70(F)のスペクトルは、6つの十分に分解された共鳴を示し、少量のQ3ケイ素がまだ存在している。
【0136】
表13に調製されたままの状態のSi−SSZ−70物質の観測された化学シフトを示す。相対強度は、BD MASスペクトルの積分により求めた。
【表13】
【0137】
一般的に、Si−SSZ−70試料の共鳴は、ITQ−1の共鳴ほど十分に分解されていない。これは、水酸化物媒介試料について特に当てはまる。それらの不十分な分解能はデコンボリューション(deconvolution)するに値するものでなかったので、スペクトルをデコンボリューションする試みはしなかった。したがって、より少数の化学シフトが表13に含められている。相対強度の検討により、水酸化物及びフッ化物媒介試料の両方においてQ3シリカ種の大きい集団があることがわかる。各試料の<−100ppmの共鳴は、Q3によるものとすることができるが、−105ppmに近い共鳴に関して多少の不明確さがあった。図12に示す焼成済みSi−SSZ−70(F)のスペクトルは、−105ppm共鳴を明確に示しているが、−95ppm共鳴は、著しく減弱している。この結果は、調製されたままの状態の物質における約10%の相対的なQ3の存在度を与えるためには、−105ppm共鳴がQ4であることを示唆するものである。
【0138】
水酸化物媒介物質の−104ppmに中心がある広い共鳴は、Q3又はQ4に確定的に帰属させることができず、推定される相対的Q3集団は約22〜28%となる。水酸化物媒介試料におけるQ3含量の推定値の上限は、ITQ−1について報告されたもの(29〜33%)と概して一致している。調製されたままの状態のSi−SSZ−70(F)については、フッ化物反応は一般的に非常に少ない欠陥を有する固体を生成する(低Q3)ので、相対的Q3集団を比較するための類似物質は存在しなかった。さらに、調製されたままの状態のSi−SSZ−70(F)中に−130ppmと−150ppmとの間にSiO4/2F種の証拠は認められなかった。化学分析では、下で述べるようにフッ素の取込みは示されなかった。
【0139】
アルカリフッ化物塩を用いたMWWの合成の報告でSiO3/2Fが存在し得ることが提唱された(Aiello R.;Crea F.;Testa F.;Demortier G.;Lentz P.;Wiame M.;Nagy J.B.、Microporous Mesoporous Mater.、2000年、35〜6巻、585〜595頁)が、Si−SSZ−70に存在するフッ化物種の正確な性質は明確には理解されていない。この解釈により、フッ素が表面ヒドロキシル基を置換し、したがって、相対的Q3/Q4比をゆがませ得る。19F MAS NMRで−69ppmにおける1つの優勢な共鳴が示され(データは示さず)、これがSiO4/2Fの予想された範囲内にあることは注目すべきである(Koller H.;Wolker A.;Villaescusa L.A.;Diaz−Cabanas M.J.;Valencia S.;Camblor M.A.、J.Am.Chem.Soc.、1999年、121巻(14号)、3368〜3376頁)。
【0140】
表14に示す焼成済みSi−SSZ−70(F)の化学シフト及び相対強度は、いくつかの相違点を示している。
【表14】
【0141】
上述のように、焼成によりすべてのQ3種が完全に除去されなかった。さらに、−108.3ppmにおける調製されたままの状態の生成物の共鳴は、焼成済み生成物のスペクトルには見られない。これらの所見と1H−29Siスペクトルの強度の相対的低下という事実は、SiO3/2F種の存在を示し得るものである。観測された化学シフト及び相対強度は、ITQ−1との類似性を示している。
【0142】
Si−SSZ−70(F)及びAl−SSZ−70(OH)のSEM像を図13に示す。薄い六角形の平面がフッ化物媒介反応生成物に見られた。比較すると、水酸化物媒介生成物は、著しくより小さい微結晶を示した。MWW物質は、同様な形態を有する結晶を形成する。観察された結晶の形態は、MWW物質との類似性を裏付けている(類似性はXRD及び29Si NMRによっても認められた)。図14に結晶面の縁を通しての視野を有するB−SSZ−70の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。層が明確に認められる。より高倍率の像は、MCM−22(Leonowicz M.E.;Lawton J.A.;Lawton S.L.;Rubin M.K.、Science、1994年、264巻(5167号)、1910〜1913頁)及びSSZ−25(Chan I.Y.;Labun P.A.;Pan M.;Zones S.I.、Microporous Mater.、1995年、3巻(4〜5号)、409〜418頁)について認められたような細孔の特徴を示さなかった。
【0143】
化学分析は、さらなる洞察を得るためにSSZ−70物質について実施した。すべての試料をビス(イソブチル)SDA1を用いて合成した。典型的なフッ化物媒介反応生成物を代表するH2O/SiO2=14.5で合成した純シリカMTWも含めた。表15にフッ化物媒介反応による純シリカ生成物の化学分析データを示し、表16にB−SSZ−70及びAl−SSZ−70物質の化学分析を含める。
【表15】
【表16】
【0144】
炭素対窒素モル比の計算値は、親SDA(parent SDA)について予想されたものと一致している。さらに、イミダゾリウム(135〜120ppm)及びアルキル共鳴(60〜20ppm)がSSZ−70固体における13C CP−MAS NMRにより観測された(図15)。これらの結果は、SDAが完全であったことを確認するものである。
【0145】
フッ素対窒素モル比の計算値を表15及び16に示し、すべてのF/N比をSDA+F−塩の理論的F/N値(試験したすべてのイミダゾリウムSDAsについて0.50)と比較することができる。この値は、有機陽イオンの電荷の均衡を保つための骨格欠陥を持たない中性生成物に対応する。1を用いて合成したMTWは、無骨格欠陥について予測された値に非常に近かったF/N=0.55を示した。比較すると、2つのSi−SSZ−70生成物は、著しくより低いF/N比を示し、これがホウ素及びアルミニウムを含む物質に及んでいる。フッ素が存在しないことは、上で29Si NMRにより観測されたようにシラノール欠陥により有機電荷の均衡を保たなければならないことを意味する(Koller H.;Lobo R.F.;Burkett S.L.;Davis M.E.、J.Phys.Chem.、1995年、99巻(33号)、12588〜12596頁)。
【0146】
表16におけるB−SSZ−70(F)、Al−SSZ−70(F)及びAl−SSZ−70(OH)の化学分析は、7つの生成物にわたり非常に類似した有機物含量を示している。炭素対窒素モル比は、5.6から5.8までの間にあり、5.5という予測された比とよく一致している。純シリカ及びアルミノケイ酸塩試料と比較してホウケイ酸塩試料でわずかにより高いフッ素含量が測定された。三価格子置換(B又はAl)により、骨格電荷が導入され、陽イオンの電荷の均衡を保つのにフッ素はもはや必要でない。しかし、F/N比の計算値は、それぞれホウ素及びアルミニウムの両方の取込みのための格子置換によりほとんど変動を示していない。さらに、3つすべてのアルミノケイ酸塩試料のF/N比は、純シリカ生成物とほぼ同じである。以前に公表されたヘキサメチレンイミンとアルカリフッ化物塩を用いたMCM−22の合成の報告で、様々な量のフッ化物がアルミノケイ酸塩生成物に組み込まれたことが示された(Aiello R.;Crea F.;Testa F.;Demortier G.;Lentz P.;Wiame M.;Nagy J.B.、Microporous Mesoporous Mater.、2000年、35〜6巻、585〜595頁)。ほぼ中性反応条件下では、第二級アミンはプロトン化され、類似の陽イオン/骨格電荷理論が適用できるはずである。
【0147】
調製されたままの状態の生成物において測定されたSi/B及びSi/Al比の検討により、反応ゲル中に存在するよりも少ないホウ素の取込みが明らかである。比較すると、フッ化物及び水酸化物状態を経て合成されたアルミノケイ酸塩生成物は、反応ゲルにおけるのとほぼ同じSi/Al比を示している。これらのデータは、同じSDAを用いた水酸化物反応による生成物におけるホウ素及びアルミニウムの取込みの報告された傾向(Zones S.I.;Hwang S.−J.、Microporous Mesoporous Mater.、2003年、58巻(3号)、263〜277頁)と一致している。両水酸化物媒介生成物の化学分析で、多少のナトリウムの取込みが示されている。実測Na/Al値は、Si/Al=50及びSi/Al=25についてそれぞれ約0.25及び0.11に対応しており、骨格電荷がアルカリよりむしろSDAによって主として補償されていたことが示唆される。これは、大きいアダマンチルSDAが洞様(sinusoidal)10MRに適合すると予想されなかったSSZ−25(Zones S.I.;Hwang S.J.;Davis M.E.、Chem.−Eur.J.、2001年、7巻(9号)、1990〜2001頁)と対照的に、有機物がSSZ−70内の空隙のほとんどを占有することを示唆する。
【0148】
化学分析に加えて、TGAをSSZ−70生成物について実施した。図16でSDA1及びSDA3を用いて合成したSi−SSZ−70(F)のTGプロファイルを比較する。両物質は200℃から620℃までに非常に類似した質量損失を示す(SDA1については19.3%、SDA3については20.4%)が、質量損失プロファイルは異なっている。より小さいビス(イソブチル)SDA1は、約250℃で始まる1つの質量損失を有するが、より大きいビス(シクロヘキシル)SDA3については2つの質量損失領域が認められる。最初の質量損失がSDA1により約250℃で始まり、約425℃の変曲点があり、続いてもう1つの質量損失がある。より大きいSDAについて2つの質量損失領域が観測されることは、2つの異なる有機環境を示している可能性がある。合成されたままの状態のSSZ−70については層状物質である可能性が最も高く、第1の質量損失は、層間に収蔵された有機物に帰すことができ、第2の質量損失は、層内に収蔵された有機物に帰せられた。より小さいSDAについて1つの質量損失が観測されることは、より低い熱防護をもたらす骨格内のより弱いはめ合いに起因していた可能性がある。各有機環境の相対的寄与への洞察を得るために、SDA3を用いて合成したAl−SSZ−70試料についていくつかの合成後実験を実施した。試料は、SAR=35のNaYをアルミニウム源として用いる反応条件から得て、実験の項で述べるように残留FAU種を中和するために生成物を1N HClで処理した。
【0149】
最初の実験では、DMF抽出によるSDAの除去を検討した。SSZ−25についての同様な実験で、DMF抽出後の有機物の除去及びXRDパターンの著しい変化が示された(Zones S.I.;Hwang S.J.;Davis M.E.、Chem.−Eur.J.、2001年、7巻(9号)、1990〜2001頁)。試験したAl−SSZ−70物質については抽出後の有機物の除去はTGAにより検出されなかった。さらに、XRDパターンは、親物質と同じであった。DMF抽出により有機物が除去できなかったことから、抽出により有機物が一般的に除去されない伝統的なゼオライトと同様な有機/骨格環境が示唆される。第2の実験では、低温重量損失領域に関連する有機物種を除去するために調製されたままの状態のAl−SSZ−70物質を熱処理した(図17)。
【0150】
TGAプロファイルの検討により、350℃は第1の環境に存在する有機物を除去するのに十分なものであり、350℃は第2の環境の質量損失の始まりより約75℃低いことが示された。試料を空気中350℃で5時間加熱した後に、425℃以下のすべての有機物が除去され、XRDパターンが明らかな相違を示した。DMF抽出及び熱処理後の試料のTGAプロファイル及びXRDパターンをそれぞれ図17及び18に示す。約7重量%の有機物が収蔵されたままであったが、XRDパターンは焼成済みAl−SSZ−70(OH)に類似していた。この熱処理済み物質をアンモニウム交換し、下記のようにミクロ細孔容積及び触媒活性について評価した。
【0151】
SSZ−70生成物のミクロ細孔容積は、窒素吸着を用いて得た。検討したすべてのSSZ−70試料は、SDA3を用いたSi−SSZ−70(OH)及びSDA3を用いて合成した試料を350℃で処理したAl−SSZ−70(OH)を除いて、SDA1を用いて合成した。表17に各SSZ−70物質のミクロ細孔容積を示す。
【表17】
【0152】
表17におけるデータは、フッ化物媒介生成物と水酸化物媒介生成物との間に明らかな差異を示しており、3つすべてのフッ化物媒介生成物について0.20cm3g−1のミクロ細孔容積が観測され、水酸化物媒介生成物について0.09〜0.14cm3g−1が得られた。フッ化物生成物のミクロ細孔容積は、MWW物質について報告されたもの(0.17〜0.18cm3g−1)(Camblor M.A.;Corell C.;Corma A.;Diaz−Cabanas M.−J.;Nicolopoulos S.;Gonzalez−Calbet J.M.;Vallet−Regi M.、Chem.Mater.、1996年、8巻(10号)、2415〜2417頁)と同様である。350℃で処理した物質は、焼成済みAl−SSZ−70(OH)物質のミクロ細孔容積の約2/3を示す。この有機物が層間領域に存在すると仮定すると、これが、約0.12cm3g−1のミクロ細孔容積が層間に形成された大きいケージに帰せられたSSZ−25について報告されたのと同様な寄与をもたらす。
【0153】
可能な細孔径への洞察を得るために、炭化水素吸着を実施した。図19にSSZ−70及びSSZ−25におけるn−ヘキサン、3−メチルペンタン及び2,2−ジメチルブタンの吸着容量の時間依存性を示す。これらの3つの分子の動力学的直径は、n−ヘキサンで4.4オングストローム、3−メチルペンタンで5.0オングストローム、2,2−ジメチルブタンで6.2オングストロームである。SSZ−70及びSSZ−25におけるn−ヘキサン及び3−メチルペンタン(両方が下で述べる束縛指数試験の反応物である)の速やかな取込みは、これらの2つの吸着物の分子の拡散がこれらの2つのゼオライトのチャンネル系において妨げられないことを示すものである。これらの結果はまた、SSZ−70及びSSZ−25の束縛指数試験において起こるn−ヘキサン及び3−メチルペンタンの接触分解反応が、反応物の形状選択性によって支配されないことを意味する。SSZ−70及びSSZ−25で認められた2,2−ジメチルブタンの遅い取込みは、10員環ゼオライトについて以前に報告されたように(Chen C.Y.;Zones S.I.、Microporous Mesoporous Mater.、2007年、104巻(1〜3号)、39〜45頁、Zones S.I.;Chen C.Y.;Corma A.;Cheng M.T.;Kibby C.L.;Chan I.Y.;Burton A.W.、J.Catal.、2007年、250巻(1号)、41〜54頁)、SSZ−70及びSSZ−25の細孔の開口部の有効サイズが、よりかさばった2,2−ジメチルブタン分子の拡散性に特に決定的に重要な意味を持つようになることを示すものである。したがって、これらの結果から、SSZ−70が中間細孔ゼオライトであることが示唆される。
【0154】
触媒活性。束縛指数試験は、モデル酸触媒炭化水素反応として用いた。4つのAl−SSZ−70物質、すなわち、SDA1を用いて合成したAl−SSZ−70(F、Si/Al=26)及びAl−SSZ−70(OH、Si/Al=22)とSDA2を用いて合成したAl−SSZ−70(OH)及び350℃処理物質を試験した。SSZ−70について上で略述した物理化学的特性評価で、MWW物質との類似性が示され、したがって、SSZ−25を比較のために含めた(SSZ−25のCI試験反応は330℃で実施した)。図20に流し時間(TOS)の関数としての分解速度を示す。CI試験挙動に関するより包括的な試験の結果として、BEA*と同等であり、MFIより大きく、その後に速やかな不活性化が続くSSZ−25の高い初期活性が報告された(Carpenter J.R.;Yeh S.;Zones S.I.;Davis M.E.、J.Catal.印刷中)。
【0155】
ここに示した3つのSSZ−70物質は、同様に挙動する。TOSに伴う不活性化は、SSZ−25と同様の経路をたどる。350℃処理物質は、初期速度は活性部位の数がより低いために他のすべての物質より著しく低かったが、同じ不活性化傾向を示す。これらのデータから、MWW物質との類似性が示唆されるが、図21に示すCI値対TOS関係は、SSZ−70とSSZ−25との間の明らかな差異を示している。すべての物質が1未満の初期CI値を示し、SSZ−25は、以前に記載されたように速やかな増加をもたらす(Zones S.I.;Harris T.V.、Microporous Mesoporous Mater.、2000年、35〜6巻、31〜46頁)。それに反して、すべてのSSZ−70物質は、反応を通して1.2未満のCI値を維持している。SSZ−25のTOS挙動に関して、2つの独立した細孔系の不活性化速度が異なり、これが、変化するCI値を生じさせるとみなされた。両細孔系が初期の反応性に寄与し、より出入りし易いMWWケージが洞様細孔系を支配していると思われる。ケージ内にある活性部位による高い初期活性が洞様細孔の反応性を覆い隠している可能性がある。付着物によりケージ内の活性部位が不活性化されたとき、洞様細孔が、中間細孔物質について予測される範囲(1<CI<12)へのCI値の増加をもたらす比較的により高い反応性に関与し得る。350℃でのn−ヘプタン分解におけるMWWの不活性化は、スーパーケージ内にのみ形成される炭素質の沈着物を示し、洞様チャンネルにおける不活性化は認められなかった(Matias P.;Lopes J.M.;Laforge S.;Magnoux P.;Guisnet M.;Ribeiro F.R.、Appl.Catal.、A 2008、351巻(2号)、174〜183頁)。すべてのSSZ−70物質が、同様の空洞の存在を示唆する同様の分解速度の不活性化を示すが、物質が不意活性化するときのCI値の増加がないことは、MWWで認められた洞様10MR細孔と異なる第2の細孔系を示唆するものである。
【0156】
要約すると、いくつかの実施形態において、モレキュラーシーブを調製する方法及びそれにより得られたモレキュラーシーブを記述している。本方法は、構造指向剤、三価元素の少なくとも1つの酸化物の少なくとも1つの供給源、所望により、三価元素、五価元素及びそれらの混合物の酸化物からなる群から選択される1つ又は複数の酸化物の1つ又は複数の供給源、所望により、周期表の第1及び第2族から選択される元素の少なくとも1つの供給源、並びに所望により、水酸化物イオン又はフッ化物イオンを含む反応混合物を調製するステップ、並びに反応混合物をモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な条件下で保持するステップを含む。本方法において、種々のイミダゾリウム陽イオンを構造指向要素として用いる。
【0157】
上で示した実施例は、モレキュラーシーブ、構造剤の実施形態をどのように調製し、使用するかの完全な開示及び記述、本開示の方法及びシステムを当業者に示すために記載するものであって、発明者らがそれらの開示とみなすものの範囲を限定するものではない。当業者に明らかである該開示を実施する上述の態様の変更は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
【0158】
本明細書で言及したすべての特許及び刊行物は、本開示が属する分野の技術者の技術水準を示すものである。
【0159】
背景、概要、詳細な説明及び実施例において引用した各文書(特許、特許出願、雑誌論文、要約、実験マニュアル、書籍又は他の開示)の全開示は、各参考文献がその全体として個別に参照により本明細書に組み込まれたのと同じ程度に、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0160】
本開示は、もちろん変化し得る特定の組成物又は化学的システムに限定されないことを理解すべきである。本明細書で用いた用語は、特定の実施形態のみを記述する目的のためであって、限定されるものでないことも理解すべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いているように、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が他の状態を明確に示すものでない限り、複数の指示対象を含む。「複数」という用語は、内容が他の状態を明確に示すものでない限り、2つ以上の指示対象を含む。特に定義しない限り、本明細書で用いたすべての技術及び科学用語は、本開示が属する分野の技術者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0161】
さらに、特に指定しない限り、個々の成分又は成分の混合物を選択することができる、元素、物質又は他の成分の属の列挙は、列挙された成分及びそれらの混合物のすべての可能な下位の属の組合せを含むものである。また、「含む」、「包含する」及びそれらの変形は、リストにおける項目の列挙が、本開示の物質、組成物及び方法においても有用であり得る他の同様な項目の排除につながらないような非限定的であるものとする。
【0162】
本明細書で述べたものと同様又は同等の方法及び物質を本開示の生成物、方法及びシステムの試験の実施に用いることができるが、具体例としての適切な物質及び方法を、例として、また手引きの目的のために本明細書に記載する。
【0163】
本開示の多くの実施形態を記載した。それにもかかわらず、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることは理解されるであろう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成されたままの状態のモレキュラーシーブを調製する方法であって、
以下のイミダゾリウム陽イオン(I)
【化1】
[式中、Rは、イソプロピル以外の直鎖若しくは分枝アルキル、シクロオレフィン、二環式アルキル及び三環式アルキル又はアリールであり得る置換基である]を含む構造指向剤、
四価元素の少なくとも1つの酸化物の少なくとも1つの供給源、
所望により、三価元素、五価元素及びそれらの混合物の酸化物からなる群から選択される1つ又は複数の酸化物の1つ又は複数の供給源、
所望により、周期表の第1及び第2族から選択される元素の少なくとも1つの供給源、並びに
所望により、水酸化物イオン又はフッ化物イオン
を含む反応混合物を調製するステップと、
モレキュラーシーブの結晶を形成するのに適した時間及び条件に該反応混合物を保持するステップと
を含み、それにより、該合成されたままの状態のモレキュラーシーブを得る上記方法。
【請求項2】
前記イミダゾリウム陽イオンが、以下の構造(I)
【化2】
[式中、Rは、メチル、エチル、イソブチル、tert−ブチル、分枝アミル、分枝オクチル、シクロオレフィン、アリール、二環式アルキル及び三環式アルキルからなる群から選択される置換基である]を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イミダゾリウム陽イオンが、以下の陽イオン(1)〜(15)
【化3−1】
【化3−2】
からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
イミダゾリウム陽イオンが、以下の陽イオン(1)〜(5)
【化4】
からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
イミダゾリウム陽イオンが、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン及びカルボン酸イオンからなる群から選択される陰イオンと会合している、請求項2から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記四価元素が、ケイ素、ゲルマニウム及びチタンからなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記四価元素がケイ素である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記四価元素の供給源が、該四価元素の酸化物、水酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩、アンモニウム塩及び硫酸塩からなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記周期表の第1及び第2族から選択される元素の供給源が、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選択される、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム及び水酸化ルビジウムからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アルカリ土類金属水酸化物が、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記三価元素が、ホウ素、アルミニウム、ガリウム及び鉄からなる群から選択される、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記三価元素がホウ素である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記反応混合物が、水酸化物イオン、SiO2及びB2O3を含み、SiO2とB2O3とのモル比が約20〜200対1以上である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応混合物が、水酸化物イオン、SiO2及びAl2O3を含み、SiO2とAl2O3とのモル比が約30〜45対1以上である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応混合物が、水酸化物イオン又はフッ化物イオン、SiO2及びGeO2を含み、SiO2とGeO2とのモル比が約2〜50対1である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物が、フッ化物イオン、SiO2及びAl2O3を含み、SiO2とAl2O3とのモル比が約30〜500対1である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記モレキュラーシーブの結晶を形成するのに適する条件が、該モレキュラーシーブが形成されるまで前記反応混合物を約125℃から約200℃までの温度に保持することを含む、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記反応混合物を約0.34MPaから約1.38MPaまでの範囲内の圧力下で保持することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
酸化的雰囲気中での熱処理により前記合成されたままの状態のモレキュラーシーブを焼成することをさらに含む、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記焼成の過程を少なくとも1時間の期間にわたり約200℃から約800℃までの温度で水蒸気、空気及び不活性ガスからなる群から選択される雰囲気中で実施する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか一項に記載の方法により調製されたモレキュラーシーブ。
【請求項23】
前記モレキュラーシーブが、SSZ−70、TON、MFI、MTT、MTW、BEA*、MOR、CFI、AFX及びSTFからなる群から選択される、請求項22に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項24】
前記合成されたままの状態のモレキュラーシーブが、SSZ−70である、請求項22に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項25】
TO2、X2Oa、金属、フッ化物及び構造指向剤を含む合成されたままの状態の無水モレキュラーシーブ構造であって、
TO2とX2Oaとのモル比が約2以上であり、
該金属とTO2とのモル比が約0から約0.03であり、
該構造指向剤とTO2とのモル比が約0.02から約0.06であり、
該フッ化物とTO2とのモル比が約0から約0.08であり、
Tが周期表の第4〜14族の元素又はそれらの組合せから選択され、
Xが三価元素を除く周期表の第3〜13族の元素又はそれらの組合せから選択され、
Xが四価である場合、a=1又は2であり、Xが三価である場合、a=3であり、Xが五価である場合、a=5であり、
該金属が第1及び第2族の金属を除くアルカリ金属及びアルカリ土類金属、又はそれらの組合せからなる群から選択され、
構造指向剤が、以下の構造(I)
【化5】
[式中、Rは、イソプロピル以外の直鎖若しくは分枝アルキル、シクロオレフィン、二環式アルキル及び三環式アルキル又はアリールであり得る置換基である]を有するイミダゾリウム陽イオンである、上記モレキュラーシーブ。
【請求項26】
前記イミダゾリウム陽イオンが、以下の構造(I)
【化6】
[式中、Rは、メチル、エチル、イソブチル、tert−ブチル、分枝アミル、分枝オクチル、シクロオレフィン、アリール、二環式アルキル及び三環式アルキルからなる群から選択される置換基である]を有する、請求項25に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項27】
Tが、ケイ素、ゲルマニウム及びチタンからなる群から選択される、請求項25又は26に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項28】
Xが、ガリウム、アルミニウム、鉄及びホウ素からなる群から選択される、請求項25から27までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項29】
前記イミダゾリウム陽イオンが、以下の陽イオン(1)〜(15)
【化7−1】
【化7−2】
からなる群から選択される、請求項25から28までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項30】
前記イミダゾリウム陽イオンが、以下の陽イオン(1)〜(5)
【化8】
からなる群から選択される、請求項25から28までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項1】
合成されたままの状態のモレキュラーシーブを調製する方法であって、
以下のイミダゾリウム陽イオン(I)
【化1】
[式中、Rは、イソプロピル以外の直鎖若しくは分枝アルキル、シクロオレフィン、二環式アルキル及び三環式アルキル又はアリールであり得る置換基である]を含む構造指向剤、
四価元素の少なくとも1つの酸化物の少なくとも1つの供給源、
所望により、三価元素、五価元素及びそれらの混合物の酸化物からなる群から選択される1つ又は複数の酸化物の1つ又は複数の供給源、
所望により、周期表の第1及び第2族から選択される元素の少なくとも1つの供給源、並びに
所望により、水酸化物イオン又はフッ化物イオン
を含む反応混合物を調製するステップと、
モレキュラーシーブの結晶を形成するのに適した時間及び条件に該反応混合物を保持するステップと
を含み、それにより、該合成されたままの状態のモレキュラーシーブを得る上記方法。
【請求項2】
前記イミダゾリウム陽イオンが、以下の構造(I)
【化2】
[式中、Rは、メチル、エチル、イソブチル、tert−ブチル、分枝アミル、分枝オクチル、シクロオレフィン、アリール、二環式アルキル及び三環式アルキルからなる群から選択される置換基である]を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イミダゾリウム陽イオンが、以下の陽イオン(1)〜(15)
【化3−1】
【化3−2】
からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
イミダゾリウム陽イオンが、以下の陽イオン(1)〜(5)
【化4】
からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
イミダゾリウム陽イオンが、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン及びカルボン酸イオンからなる群から選択される陰イオンと会合している、請求項2から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記四価元素が、ケイ素、ゲルマニウム及びチタンからなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記四価元素がケイ素である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記四価元素の供給源が、該四価元素の酸化物、水酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩、アンモニウム塩及び硫酸塩からなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記周期表の第1及び第2族から選択される元素の供給源が、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選択される、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム及び水酸化ルビジウムからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アルカリ土類金属水酸化物が、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記三価元素が、ホウ素、アルミニウム、ガリウム及び鉄からなる群から選択される、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記三価元素がホウ素である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記反応混合物が、水酸化物イオン、SiO2及びB2O3を含み、SiO2とB2O3とのモル比が約20〜200対1以上である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応混合物が、水酸化物イオン、SiO2及びAl2O3を含み、SiO2とAl2O3とのモル比が約30〜45対1以上である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応混合物が、水酸化物イオン又はフッ化物イオン、SiO2及びGeO2を含み、SiO2とGeO2とのモル比が約2〜50対1である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物が、フッ化物イオン、SiO2及びAl2O3を含み、SiO2とAl2O3とのモル比が約30〜500対1である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記モレキュラーシーブの結晶を形成するのに適する条件が、該モレキュラーシーブが形成されるまで前記反応混合物を約125℃から約200℃までの温度に保持することを含む、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記反応混合物を約0.34MPaから約1.38MPaまでの範囲内の圧力下で保持することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
酸化的雰囲気中での熱処理により前記合成されたままの状態のモレキュラーシーブを焼成することをさらに含む、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記焼成の過程を少なくとも1時間の期間にわたり約200℃から約800℃までの温度で水蒸気、空気及び不活性ガスからなる群から選択される雰囲気中で実施する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか一項に記載の方法により調製されたモレキュラーシーブ。
【請求項23】
前記モレキュラーシーブが、SSZ−70、TON、MFI、MTT、MTW、BEA*、MOR、CFI、AFX及びSTFからなる群から選択される、請求項22に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項24】
前記合成されたままの状態のモレキュラーシーブが、SSZ−70である、請求項22に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項25】
TO2、X2Oa、金属、フッ化物及び構造指向剤を含む合成されたままの状態の無水モレキュラーシーブ構造であって、
TO2とX2Oaとのモル比が約2以上であり、
該金属とTO2とのモル比が約0から約0.03であり、
該構造指向剤とTO2とのモル比が約0.02から約0.06であり、
該フッ化物とTO2とのモル比が約0から約0.08であり、
Tが周期表の第4〜14族の元素又はそれらの組合せから選択され、
Xが三価元素を除く周期表の第3〜13族の元素又はそれらの組合せから選択され、
Xが四価である場合、a=1又は2であり、Xが三価である場合、a=3であり、Xが五価である場合、a=5であり、
該金属が第1及び第2族の金属を除くアルカリ金属及びアルカリ土類金属、又はそれらの組合せからなる群から選択され、
構造指向剤が、以下の構造(I)
【化5】
[式中、Rは、イソプロピル以外の直鎖若しくは分枝アルキル、シクロオレフィン、二環式アルキル及び三環式アルキル又はアリールであり得る置換基である]を有するイミダゾリウム陽イオンである、上記モレキュラーシーブ。
【請求項26】
前記イミダゾリウム陽イオンが、以下の構造(I)
【化6】
[式中、Rは、メチル、エチル、イソブチル、tert−ブチル、分枝アミル、分枝オクチル、シクロオレフィン、アリール、二環式アルキル及び三環式アルキルからなる群から選択される置換基である]を有する、請求項25に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項27】
Tが、ケイ素、ゲルマニウム及びチタンからなる群から選択される、請求項25又は26に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項28】
Xが、ガリウム、アルミニウム、鉄及びホウ素からなる群から選択される、請求項25から27までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項29】
前記イミダゾリウム陽イオンが、以下の陽イオン(1)〜(15)
【化7−1】
【化7−2】
からなる群から選択される、請求項25から28までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項30】
前記イミダゾリウム陽イオンが、以下の陽イオン(1)〜(5)
【化8】
からなる群から選択される、請求項25から28までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2012−523367(P2012−523367A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504903(P2012−504903)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/030615
【国際公開番号】WO2010/118377
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(508032284)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (17)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/030615
【国際公開番号】WO2010/118377
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(508032284)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (17)
【Fターム(参考)】
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