説明

モータのステータの組立方法

【課題】 モータのステータの環状のステータ本体を低コストで製造可能にする。
【解決手段】 円筒状の周壁37aの軸方向一端に径方向内向きに突出する第1フランジ37bを有するケーシング37の内部に、該周壁37aの内面に沿うように複数のステータピース38を配置した後に、ケーシング37の周壁37aの軸方向他端に第1フランジ37bと対向する第2フランジ37bをボルト39で締結し、第1、第2フランジ37b,37cで複数のステータピース38を軸方向に圧縮することで、該複数のステータピース38を径方向外向きに付勢して周壁37aの内面に圧接するので、複数のステータステータピース38を強固に一体化して環状のステータ本体を構成することができる。また単一部材でステータ本体を構成する場合に比べて、成形金型の小型化や加工性の向上を可能にして製造コストを削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状のステータ本体を円周方向に分割した複数のステータピースで構成したモータのステータの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータのステータは、所定の形状に打ち抜いた多数の鋼板を軸方向に積層した積層鋼板よりなるステータ本体と、このステータ本体に巻き付けた巻線とで構成されていた(例えば、下記特許文献1参照)。また積層鋼板よりなるステータ本体に代えて、微細な磁性粉末に樹脂等のバインダを混合してプレス成形したものを焼成した圧粉材製のステータ本体も知られている。
【特許文献1】特公平5−56100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでステータ本体は環状のステータコアから複数のティースを径方向に突出させ、隣接するティース間に巻線を収納するスロットを形成した複雑な形状を有しているため、圧粉材製のステータ本体を一部材で構成しようとすると、大型で複雑な成形金型が必要になってコストアップの要因となる問題があった。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、モータのステータの環状のステータ本体を低コストで製造可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、環状のステータ本体を円周方向に分割した複数のステータピースで構成したモータのステータの組立方法であって、円筒状の周壁の軸方向一端に径方向内向きに突出する第1フランジを有するケーシングの内部に、該周壁の内面に沿うように複数のステータピースを配置する工程と、ケーシングの周壁の軸方向他端に第1フランジと対向する第2フランジを締結し、第1、第2フランジで複数のステータピースを軸方向に圧縮することで、該複数のステータピースを径方向外向きに付勢して周壁の内面に圧接する工程とを含むことを特徴とするモータのステータの組立方法が提案される。
【0006】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記複数のステータステータピースの全て若しくは一部が軸方向逆向きにテーパーする一対のテーパー面を有しており、第1、第2フランジで該複数のステータピースを軸方向に圧縮したときに、各ステータステータピースのテーパー面どうしが密着して前記径方向外向きの付勢力を発生することを特徴とするモータのステータの組立方法が提案される。
【0007】
また請求項3に記載された発明によれば、環状のステータ本体を円周方向に分割した複数のステータピースで構成したモータのステータの組立方法であって、複数のステータピースを環状に配置する工程と、円周方向の一部を切断したスリットを有する固定リングを環状に配置した複数のステータピースの外周面に嵌合させる工程と、固定リングのスリットの幅を狭めるように締めつけて複数のステータピースを一体化する工程とを含むことを特徴とするモータのステータの組立方法が提案される。
【0008】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、前記複数のステータステータピースの全て若しくは一部が軸方向逆向きにテーパーする一対のテーパー面を有しており、固定リングで複数のステータピースを締めつけたときに、各ステータピースが軸方向に整列してテーパー面どうしが密着することで、各ステータピースの外周面を固定リングに押し付ける径方向外向きの付勢力を発生することを特徴とするモータのステータの組立方法が提案される。
【0009】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項4の構成に加えて、前記複数のステータステータピースの外周面に形成した傾斜面と固定リングに形成した傾斜面との当接により、各ステータピースを軸方向に整列させる付勢力を発生することを特徴とするモータのステータの組立方法が提案される。
【0010】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項1〜請求項5の何れか1項の構成に加えて、前記複数のステータピースは全て同一形状であることを特徴とするモータのステータの組立方法が提案される。
【0011】
また請求項7に記載された発明によれば、請求項1〜請求項6の何れか1項の構成に加えて、前記複数のステータピースを圧粉材で構成したことを特徴とするモータのステータの組立方法が提案される。
【0012】
また請求項8に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記ケーシングの内部に、少なくとも2個のステータ本体を軸方向に積層したことを特徴とするモータのステータの組立方法が提案される。
【0013】
尚、実施例のステータコア31、ティース32…、U相ステータリング51、V相ステータリング52およびW相ステータリング53は本発明のステータ本体に対応する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の構成によれば、円筒状の周壁の軸方向一端に径方向内向きに突出する第1フランジを有するケーシングの内部に、該周壁の内面に沿うように複数のステータピースを配置した後に、ケーシングの周壁の軸方向他端に第1フランジと対向する第2フランジを締結し、第1、第2フランジで複数のステータピースを軸方向に圧縮することで、該複数のステータピースを径方向外向きに付勢して周壁の内面に圧接するので、複数のステータステータピースを強固に一体化して環状のステータ本体を構成することができる。また単一部材でステータ本体を構成する場合に比べて、成形金型の小型化や加工性の向上を可能にして製造コストを削減することができる。
【0015】
請求項2の構成によれば、複数のステータピースの全て若しくは一部が軸方向逆向きにテーパーする一対のテーパー面を有しているため、第1、第2フランジで複数のステータピースを軸方向に圧縮したときに、各ステータピースのテーパー面どうしが密着して径方向外向きの付勢力を発生し、この付勢力で各ステータピースをケーシングの周壁の内面に密着させることができる。
【0016】
請求項3の構成によれば、複数のステータピースを環状に配置し、続いて円周方向の一部を切断したスリットを有する固定リングを前記複数のステータピースの外周面に嵌合させ、続いて固定リングのスリットの幅を狭めるように締めつけて複数のステータピースを一体化するので、複数のステータピースを強固に一体化して環状のステータ本体を構成することができる。また単一部材でステータ本体を構成する場合に比べて、成形金型の小型化や加工性の向上を可能にして製造コストを削減することができる。
【0017】
請求項4の構成によれば、複数のステータピースの全て若しくは一部が軸方向逆向きにテーパーする一対のテーパー面を有しているため、固定リングで複数のステータピースを締めつけたときに、各ステータピースが軸方向に整列してテーパー面どうしが密着することで、各ステータピースの外周面を固定リングに押し付ける径方向外向きの付勢力を発生することができる。
【0018】
請求項5の構成によれば、複数のステータピースの外周面に形成した傾斜面と固定リングに形成した傾斜面とが当接して各ステータピースを軸方向に整列させる付勢力が発生するので、固定リングで複数のステータピースを締めつけるだけで各ステータピースの外周面を固定リングに押し付ける径方向外向きの付勢力を発生することができる。
【0019】
請求項6の構成によれば、複数のステータピースを全て同一形状としたので、形状の異なる複数種類のステータピースを製造する場合に比べて加工コストを削減することができる。
【0020】
請求項7の構成によれば、複数のステータピースを圧粉材で構成したので、複雑な形状のステータピースを切削や鋳造に比べて低コストで製造することができる。
【0021】
請求項8の構成によれば、ケーシングの内部に少なくとも2個のステータ本体を軸方向に積層したので、複数のステータ本体を組み合わせて強固に一体化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0023】
図1〜図9は本発明の第1実施例を示すもので、図1は三相モータを備えたハイブリッド車両のパワーユニットを示す図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は図2の3部拡大断面図、図4は図3の4−4線矢視図、図5はステータ本体の一部破断斜視図、図6はステータ本体のスロットと巻線との関係を示す図、図7はステータの分解斜視図、図8はステータピースの組立時の作用説明図、図9は前記図4に対応する模式図である。
【0024】
図1に示すように、ハイブリッド車両のパワーユニットは、エンジンEおよびトランスミッションT間に配置された三相モータMを備える。エンジンEのシリンダブロック11およびクランクケース12の右側面にモータケース13、トルクコンバータケース14およびミッションケース15が結合されており、シリンダブロック11およびクランクケース12間に支持されたクランクシャフト16の軸端にモータMのロータ17が固定される。ロータ17の外周に固定した複数の永久磁石18…に環状のステータ19が所定のエアギャップを介して対向しており、ステータ19を支持するステータホルダ20がシリンダブロック11およびクランクケース12とモータケース13との割り面に挟まれて固定される。
【0025】
トルクコンバータケース14に収納されたトルクコンバータ21は、タービンランナー22とポンプインペラ23とを備えており、タービンランナー22に結合されてポンプインペラ23を覆うサイドカバー24がドライブプレート25を介してモータMのロータ17に接続される。トルクコンバータ14のポンプインペラ23は、ミッションケース15に支持されたメインシャフト26の左端に結合される。
【0026】
次に、図2〜図9を参照してモータMのステータ19の構造を説明する。
【0027】
モータMのステータ19は、環状のステータコア31と、ステータコア31の内周面から径方向内向きに突出する複数個(実施例では24個)のティース32…と、ティース32…間に形成されたスロット33…を通過するように波巻されたU相巻線34、V相巻線35およびW相巻線36と、ステータコア31の周囲を覆うケーシング37(図7参照)とを備える。ステータコア31およびティース32…よりなるステータ本体は焼結した圧粉材よりなる24個のステータピース38…を組み合わせて構成される。
【0028】
図7に最も良く示されているように、本実施例のステータ本体は同一形状の24個のステータステータピース38…を組み合わせて構成される。各々のステータピース38はスロット33の中心面で切断された概ね楔形状を有しており、それぞれが1個のティース32を含んでいる。そして各々のステータピース38は、軸線L方向に対して逆向きに傾斜する一対のテーパー面38a,38aを持ち、隣り合うステータピース38のテーパー面38a,38aどうしが相互に密着する。
【0029】
24個のステータピース38…を一体に保持するケーシング37は、円筒状の周壁37aと、その軸線L方向一端から径方向内向きに一体に延びる第1フランジ37bと、周壁37aの軸線L方向他端に複数のボルト39…で着脱自在に固定される第2フランジ37cとで構成される。ケーシング37の周壁37aの軸線L方向の高さL1は、ステータピース38…の軸線L方向の高さL2と等しく設定されている。
【0030】
それぞれのステータピース38…をケーシング37の周壁37aの内面に沿うように環状に配置した状態で、第1フランジ37bと反対側の周壁37aの端面に第2フランジ37cをボルト39…で締結すると、図8に示すように第1、第2フランジ37b,37c間にステータピース38…が挟まれて軸線L方向に整列し、その際に第1、第2フランジ37b,37cから受ける軸線L方向の荷重F1でステータピース38…のテーパー面38a…どうしが密着することで、円周方向の荷重F2が発生する。この荷重F2はステータステータピース38…を円周方向に付勢するだけでなく径方向外側にも付勢するため、ステータピース38…が周壁37aの内面に押し付けられて強固に一体化される。
【0031】
このとき、第1、第2フランジ37b,37cはステータ本体の径方向外側のステータコア31に当接し、ステータ本体の径方向内側のティース32…には当接しないため、ティース32…間に形成されたスロット33…を通過するように波巻されたU相巻線34、V相巻線35およびW相巻線36が第1、第2フランジ37b,37cと干渉することはない。
【0032】
このようにして、ケーシング37でステータピース38…を一体化したものにU相巻線34、V相巻線35およびW相巻線36を波巻きして完成したステータ19は、そのケーシング37の周壁37aの外周に固定したステータホルダ20を介して、シリンダブロック11およびクランクケース12とモータケース13との割り面に挟まれて固定される(図1参照)。
【0033】
径方向に見たティース32…は二等辺三角形であって軸線L方向にテーパーしており、隣接するティース32…間に形成される12個のスロット33…は軸線L方向に対して交互に逆方向にスキューしている。スロット33…のスキュー角は、電気角で例えば60°とされる。
【0034】
U相巻線34は円周方向に3個ずつ離間したスロット33…を通過するように波巻される。このとき、U相巻線34の巻きかたは、図9に実線で示す方向と鎖線で示す方向とがあるが、ティース32…の軸線L方向の両端面に露出するU相巻線34の渡り部分34a…が短くなるように、実線で示す方向が採用される。
【0035】
V相巻線35はU相巻線34に対して円周方向に1ピッチずれたスロット33…を通過するように波巻され、W相巻線36はV相巻線35に対して円周方向に1ピッチずれたスロット33…を通過するように波巻される。V相巻線35およびW相巻線36も、それらの渡り部分35a…,36a…が短くなる方向に波巻される。尚、図6ではU相、V相およびW相の各複数本の巻線34,35,36のうち、各1本ずつが示されている。
【0036】
以上のように、ステータ19のスロット33…をスキューさせたので、スロット33…によるトルクリップルや異常高調波トルクの発生を抑制してモータMをスムーズに回転させることができる。また全てのスロット33…を軸線L方向に対して交互に逆方向にスキューさせたので、図9に実線で示すように、渡り部分34a,35a,36aの長さを短縮して巻線34,35,36の抵抗を減少させるとともに、その渡り部分34a,35a,36aの両端のb部を鈍角に屈曲させて巻線34,35,36の巻き付けを容易化し、かつ渡り部分34a,35a,36aの軸線L方向の突出高さHを減少させてステータ19の軸線L方向の寸法を小型化することができる。
【0037】
またステータ19のスロット33…をスキューさせてスロット33…によるトルクリップルや異常高調波トルクの発生を抑制すると、スキュー係数が小さくなってモータMのトルクが減少するが、渡り部分34a,35a,36aの長さの減少による巻線34,35,36の抵抗の減少や巻線34,35,36の巻数の増加により、上述したトルクの減少を補うことができる。
【0038】
またステータコア31およびティース32…よりなるステータ本体に圧粉材を用いたことで複雑な形状のステータ本体を容易に成形することができ、しかもステータ本体を同一形状の複数のステータピース38…を組み立てて構成したので、そのステータ本体を一部材で成形する場合に比べて成形金型を小型化し、かつ加工性を向上させてコストダウンに寄与することができる。
【0039】
図10〜図12は本発明の第2実施例を示すもので、図10はステータの一部破断斜視図、図11は図10の11−11線断面図、図12はステータピースの組立時の作用説明図である。
【0040】
第1実施例では複数のステータピース38…をケーシング37に収納して一体化していたが、第2実施例では複数のステータピース38…を固定リング41を用いて一体化する。複数のステータピース38…は第1実施例と同様に全て同一形状であるが、その外周面の軸線L方向中央に、二つの傾斜面P,Pを有する台形状の突起38b…が突設される。突起38b…はステータピース38…の円周方向に延びており、複数のステータピース38…を組み立てたときにステータ本体の外周面を環状に取り囲む。
【0041】
弾性体で構成された固定リング41はステータ本体の外周面に嵌合する部材であり、円周方向の1カ所を切断して形成したスリット41aを挟むように一対の締結部41b,41bが突設され、これらの締結部41b,41bをボルト42およびナット43で締結することでスリット41aの幅を縮小可能である。固定リング41の内周面に台形断面の環状溝41cが形成されており、この環状溝41cをステータピース38…の突起38b…に係合させたとき、突起38b…の二つの傾斜面P,Pが環状溝41cの二つの傾斜面Q,Qに当接する。
【0042】
ステータ本体の組み立てに際し、環状に配列した複数のステータピース38…の外周面に固定リング41を装着し、その環状溝41cをステータピース38…の突起38b…に係合させた状態で、ボルト42およびナット43でスリット41aの幅を狭めるように締めつけると、複数のステータピース38…のテーパー面38a…が相互に密着して一体化される。
【0043】
ステータピース38…はテーパー面38a…を介して相互に係合しているため、固定リング41により径方向内向きの締めつけ力を受けると、図12(A)に示すようにテーパー面38a…が滑ってステータピース38…が軸線L方向に交互に突出しようとするが、固定リング41の環状溝41cの二つの傾斜面Q,Qがステータピース38…の突起38b…の二つの傾斜面P,Pに当接し、図12(B)に示すように複数のステータピース38…を軸線L方向に整列させる荷重が発生することで、ステータピース38…を径方向外向きに付勢して固定リング41の内周面に密着させ、強固に一体化したステータ本体を構成することができる。
【0044】
しかして、この第2実施例によっても、上述した第1実施例と同様の作用効果を達成することができる。
【0045】
図13〜図15は本発明の第3実施例を示すもので、図13はステータの一部破断斜視図、図14は図13の14−14線断面図、図15はステータピースの組立時の作用説明図である。
【0046】
第3実施例は第2実施例の変形であり、ステータピース38…の外周面に突設された突起38c…の形状が第2実施例と異なっている。即ち、第2実施例のステータピース38…は、その外周面の軸線L方向中央に台形状の突起38b…を備えていたが、第3実施例のステータピース38…は、その外周面の軸線L方向先細側に三角形状の突起38c…を備えている。また固定リング44はそれ自体が断面台形状であり、その傾斜面Q,Qがステータステータピース38…の突起38c…の傾斜面P,Pに係合可能である。
【0047】
従って、ステータ本体の組み立てに際し、環状に配列した複数のステータピース38…の外周面に固定リング44を装着し、その固定リング44をステータピース38…の突起38c…に係合させた状態で、ボルト42およびナット43でスリット44aの幅を狭めるように締めつけると、複数のステータピース38…のテーパー面38a…が相互に密着して一体化される。
【0048】
ステータピース38…はテーパー面38a…を介して相互に係合しているため、固定リング44により径方向内向きの締めつけ力を受けると、図15(A)に示すようにテーパー面38a…が滑ってステータピース38…が軸線L方向に交互に突出しようとするが、固定リング44の二つの傾斜面Q,Qがステータピース38…の突起38c…の二つの傾斜面P,Pに当接し、図15(B)に示すように複数のステータピース38…を軸線L方向に整列させる荷重が発生することで、ステータピース38…を径方向外向きに付勢して固定リング44の内周面に密着させ、強固に一体化したステータ本体を構成することができる。
【0049】
しかして、この第3実施例によっても、上述した第2実施例と同様の作用効果を達成することができる。
【0050】
次に、図16に基づいて本発明の第4実施例を説明する。
【0051】
第4実施例は三相クローポール型モータのステータ19に関するもので、そのステータ19は圧粉材でそれぞれ分割成形されたU相ステータリング51、V相ステータリング52およびW相ステータリング53と、1個のU相巻線54と、2個の第1、第2V相巻線55A,55Bと、1個のW相巻線56とを備える。U相ステータリング51、V相ステータリング52およびW相ステータリング53は軸線L方向に重ね合わされる。
【0052】
U相ステータリング51は、環状に形成されたリターンパス51aと、このリターンパス51aの周方向等間隔位置から径方向内向きに延びる複数個のU相ティース51b…と、これらのU相ティース51b…の径方向内端から更に径方向内向きに延びる複数個の突起51c…とを備える。そして各々の突起51cの径方向内端は、L字状に屈曲して径方向の高さが基端側から先端側に向かってテーパー状に減少しながら軸線L方向片側に延びている。U相ティース51bは巻線54,55A,55B,56の径方向の高さに対応する部分であり、それよりも径方向内側の部分は突起51cとなる。
【0053】
V相ステータリング52は、環状に形成されたリターンパス52aと、このリターンパス52aの周方向等間隔位置から径方向内向きに延びる複数個のV相ティース52b…と、これらのV相ティース52b…の径方向内端から更に径方向内向きに延びる複数個の突起52c…とを備える。そして各々の突起52cの径方向内端は、T字状に屈曲して径方向の高さが基端側から先端側に向かってテーパー状に減少しながら軸線L方向両側に延びている。V相ティース52bは巻線54,55A,55B,56の径方向の高さに対応する部分であり、それよりも径方向内側の部分は突起52cとなる。
【0054】
W相ステータリング53はV相ステータリング52に関してU相ステータリング51と鏡面対称な部材であり、かつ裏返すことでU相ステータリング51と互換可能な同一形状を有している。W相ステータリング53の各部の符号は、U相ステータリング51の各部の符号の「51」を「53」に変更したものである。
【0055】
本実施例のモータMは三相交流で作動するものであり、U相、V相およびW相の突起51c…,52c…,53c…は電気角で360°/3=120°ずつ周方向にずれて配置される。
【0056】
U相ステータリング51のU相ティース51b…とV相ステータリング52のV相ティース52b…との間に環状スロットが形成されており、この環状スロットに予め巻回されたU相巻線54と第1V相巻線55Aとが収納される。またW相ステータリング53のW相ティース53b…とV相ステータリング52のV相ティース52b…との間に環状スロットが形成されており、この環状スロットに予め巻回されたW相巻線56と第2V相巻線55Bとが収納される。
【0057】
U相ステータリング51は軸線L方向にテーパーする複数個のU相ステータピース57…に分割され、V相ステータリング52は軸線L方向にテーパーする複数個のV相ステータピース58…に分割され、W相ステータリング53は軸線L方向にテーパーする複数個のW相ステータピース59…に分割される。このとき、中央に位置するV相ステータリング52の複数個のV相ステータピース58…は全て同一形状となるが、一方の端部に位置するU相ステータリング51の複数個のU相ステータピース57…(他方の端部に位置するW相ステータリング53の複数個のW相ステータピース59…も同様)はテーパーの方向が異なる2種類の部材で構成される。
【0058】
しかして、複数個のU相ステータピース57…を環状に配置したU相ステータリング51と、U相巻線54および第1V相巻線55Aと、複数個のV相ステータピース58…を環状に配置したV相ステータリング52と、W相巻線56および第2V相巻線55Bと、複数個のW相ステータピース59…を環状に配置したW相ステータリング53とを軸線L方向に積層したものを、図7に示すケーシング37の内部に収納し、第1、第2フランジ37b,37c間に挟圧することで、U相ステータピース57…、V相ステータピース58…およびW相ステータピース59…を径方向外向きに付勢してケーシング37の周壁37aに押し付け、強固に一体化することができる。
【0059】
この第4実施例によっても、上述した第1〜第3実施例と同様の作用効果を達成することができる。
【0060】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0061】
例えば、実施例ではモータMをハイブリッド車両の走行用モータとして使用しているが、その用途は任意である。
【0062】
また実施例のモータMはステータ19の内部にロータ17を配置したインナーロータ型であるが、本発明はステータの外部にロータを配置したアウターロータ型のモータに対しても適用することができる。
【0063】
また実施例のステータピース38…は圧粉材で構成されているが、その材質は任意である。
【0064】
また第4実施例のクローポール型モータのU相ステータリング51、V相ステータリング52およびW相ステータリング53を、それぞれ第2実施例あるいは第3実施例の固定リング41を用いて一体化することができる。
【0065】
また全てのステータピース38が楔形状である必要はなく、図17の第5実施例に示すように、テーパーの向きが異なる楔形状のステータピース38(1)と平行四辺形状のステータピース38(2)とを併用しても同様の作用効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】三相モータを備えたハイブリッド車両のパワーユニットを示す図
【図2】図1の2−2線拡大断面図
【図3】図2の3部拡大断面図
【図4】図3の4−4線矢視図
【図5】ステータ本体の一部破断斜視図
【図6】ステータ本体のスロットと巻線との関係を示す図
【図7】ステータの分解斜視図
【図8】ステータピースの組立時の作用説明図
【図9】前記図4に対応する模式図
【図10】第2実施例に係るステータの一部破断斜視図
【図11】図10の11−11線断面図
【図12】ステータピースの組立時の作用説明図
【図13】第3実施例に係るステータの一部破断斜視図
【図14】図13の14−14線断面図
【図15】ステータピースの組立時の作用説明図
【図16】第4実施例に係るステータの一部分解斜視図
【図17】第5実施例に係るステータピースの配置を示す模式図
【符号の説明】
【0067】
31 ステータコア(ステータ本体)
32 ティース(ステータ本体)
37 ケーシング
37a 周壁
37b 第1フランジ
37c 第2フランジ
38 ステータピース
38a テーパー面
41 固定リング
41a スリット
44 固定リング
44a スリット
51 U相ステータリング(ステータ本体)
52 V相ステータリング(ステータ本体)
53 W相ステータリング(ステータ本体)
57 U相ステータピース
58 V相ステータピース
59 W相ステータピース
P 傾斜面
Q 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のステータ本体を円周方向に分割した複数のステータピースで構成したモータのステータの組立方法であって、
円筒状の周壁の軸方向一端に径方向内向きに突出する第1フランジを有するケーシングの内部に、該周壁の内面に沿うように複数のステータピースを配置する工程と、
ケーシングの周壁の軸方向他端に第1フランジと対向する第2フランジを締結し、第1、第2フランジで複数のステータピースを軸方向に圧縮することで、該複数のステータピースを径方向外向きに付勢して周壁の内面に圧接する工程と、
を含むことを特徴とするモータのステータの組立方法。
【請求項2】
前記複数のステータピースの全て若しくは一部が軸方向逆向きにテーパーする一対のテーパー面を有しており、第1、第2フランジで該複数のステータピースを軸方向に圧縮したときに、各ステータピースのテーパー面どうしが密着して前記径方向外向きの付勢力を発生することを特徴とする、請求項1に記載のモータのステータの組立方法。
【請求項3】
環状のステータ本体を円周方向に分割した複数のステータピースで構成したモータのステータの組立方法であって、
複数のステータピースを環状に配置する工程と、
円周方向の一部を切断したスリットを有する固定リングを環状に配置した複数のステータステータピースの外周面に嵌合させる工程と、
固定リングのスリットの幅を狭めるように締めつけて複数のステータピースを一体化する工程と、
を含むことを特徴とするモータのステータの組立方法。
【請求項4】
前記複数のステータピースの全て若しくは一部が軸方向逆向きにテーパーする一対のテーパー面を有しており、固定リングで複数のステータピースを締めつけたときに、各ステータステータピースが軸方向に整列してテーパー面どうしが密着することで、各ステータピースの外周面を固定リングに押し付ける径方向外向きの付勢力を発生することを特徴とする、請求項3に記載のモータのステータの組立方法。
【請求項5】
前記複数のステータピースの外周面に形成した傾斜面と固定リングに形成した傾斜面との当接により、各ステータピースを軸方向に整列させる付勢力を発生することを特徴とする、請求項4に記載のモータのステータの組立方法。
【請求項6】
前記複数のステータピースは全て同一形状であることを特徴とする、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のモータのステータの組立方法。
【請求項7】
前記複数のステータピースを圧粉材で構成したことを特徴とする、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のモータのステータの組立方法。
【請求項8】
前記ケーシングの内部に、少なくとも2個のステータ本体を軸方向に積層したことを特徴とする、請求項1に記載のモータのステータの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−109672(P2006−109672A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296224(P2004−296224)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】